JP2020151046A - 鉗子用樹脂製アーム - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来樹脂製アームと同じ樹脂を、同じ量を用いて、しかも高強度・低変形の鉗子用樹脂製アームを提供することにある。【解決手段】 本発明の鉗子用樹脂製アームは、枢軸4を中心にして開閉揺動自在となる第一アーム1と第二アーム2において、第一・第二アームは合成樹脂製であり、各アームは中心部に嵌合部14,24を備え、該嵌合部より前方側柄部1a,2aの先部に把持部11,21を、嵌合部より後方側柄部1b,2bの尾部に握り部13,23を各々備え、握り部の相対向側に、第一・第二アームの閉じ方向側に作動するラチェット機構9を備え、前方側柄部と後方側柄部の少なくとも一方の長手方向に直交する断面形状8が五角形〜八角形の多角形5又は菱形7であることを特徴とする。【選択図】 図1
Description
本発明は、主に医療分野等で使用される鉗子に用いる合成樹脂製アーム(以下、樹脂製アームとする。)に関するもので、一対のアームは、中心部を相互に交差し、該交差部を枢軸にて離反不能に且つ回動自在に保持するもので、アーム先部に把持部を、アーム後部に前記把持部を開閉操作するための握り部を備えている。
医療分野等で使用される代表的な医療用鉗子は、図1と図2の如く一対のアーム先部に設けた把持部にて患者(以下、負傷者を含む。)の血管を挟んで止血したり、生体組織を採取し、或いは把持部にて消毒綿を保持し、消毒綿で切開部分やその周囲を消毒する等の目的で使用されている。
この医療用鉗子には、樹脂製アーム又は金属製アームが用いられている。その内、金属製アームを用いる鉗子にあっては、十分な強度を備えていることから、操作による変形(たわみ、ねじれ等)を考量する必要はなく、反復使用されるものであったが、反復使用するための維持保管を必要とした。(特許文献1,5)
この医療用鉗子には、樹脂製アーム又は金属製アームが用いられている。その内、金属製アームを用いる鉗子にあっては、十分な強度を備えていることから、操作による変形(たわみ、ねじれ等)を考量する必要はなく、反復使用されるものであったが、反復使用するための維持保管を必要とした。(特許文献1,5)
他方、従来の樹脂製鉗子は、一対の合成樹脂製アーム(以後、従来樹脂製アームとする。)を交差し、その交差部を金属製ピンで枢軸するものであるが、使用時に図9の如く力が加わると、枢軸より先端までのアーム長さ、或いは枢軸より後端までのアーム長さが長くなる程、アームの各部位が単独/及び又は複合的にたわんだり、捩じれたり等の変形をすることがあった。
これらの変形を緩和するため、或いは十分な強度を確保するために、例えば、合成樹脂(主にナイロン)にガラス繊維等の添加物を加えた樹脂製アーム(以後、強化樹脂製アームとする。)を用いて構成する鉗子も様々に工夫され、使用されるに至っている。
(特許文献2,3,4)
これらの変形を緩和するため、或いは十分な強度を確保するために、例えば、合成樹脂(主にナイロン)にガラス繊維等の添加物を加えた樹脂製アーム(以後、強化樹脂製アームとする。)を用いて構成する鉗子も様々に工夫され、使用されるに至っている。
(特許文献2,3,4)
金属製アームを用いた鉗子にあっては、アームが十分な強度を有しているため、確実に把持して容易に開閉操作し得るし、反復使用し得る利点はあるものの、使用毎に洗浄、滅菌、消毒、乾燥等を繰り返さなければならず、緊急時の患者に対する手術、治療等に極めて不便であるばかりか、金属製であるが故に錆を発生する大きな問題点もあった。
錆の発生を防ぐために、材料にステンレスを用いることも試みられているが、高価になる問題点があった。
錆の発生を防ぐために、材料にステンレスを用いることも試みられているが、高価になる問題点があった。
従来樹脂製アームにあっては、アーム長さが長くなるほど、操作時に変形を生じやすくなる問題点があった。その変形は、主に把持方向と、把持方向に対して垂直方向に大きくたわんだり、ねじれとして発生する。この現象は合成樹脂の種類(性質)によって異なるし、同じ種類の合成樹脂であっても、アーム長さと肉厚に左右されるものであった。
また、強化樹脂製アームは、合成樹脂に添加物としてガラス繊維を加えているため、剛性は改善されるものの衝撃値が低下し、割れや欠損する等の深刻な問題もあるし、その生産金型の消耗も早くなる結果、高価に成る問題もあった。
また、強化樹脂製アームは、合成樹脂に添加物としてガラス繊維を加えているため、剛性は改善されるものの衝撃値が低下し、割れや欠損する等の深刻な問題もあるし、その生産金型の消耗も早くなる結果、高価に成る問題もあった。
そこで本発明は、従来樹脂製アームと同じ合成樹脂を用い、しかも樹脂の使用量も同じでありながら剛性を向上し得ないものかと工夫を重ねた結果、その問題点を改善した高強度・低変形の鉗子用樹脂製アームを発明するに至ったものである。
上記目的を達成するために、本発明の鉗子用樹脂製アーム(以下、樹脂製アームとする。)は、請求項1として、枢軸を中心にして開閉揺動自在となる第一アームと第二アームにおいて、第一・第二アームは合成樹脂製であり、各アームは中心部に嵌合部を備え、該嵌合部より前方側柄部の先部に把持部を、嵌合部より後方側柄部の尾部に握り部を各々備え、握り部の相対向側に、第一・第二アームの閉じ方向側に作動するラチェット機構を備え、少なくとも前方側柄部と後方側柄部の長手方向に直交する断面形状が五角形〜八角形の多角形であることを特徴とする。
ここで樹脂製アームとは、鉗子を構成する合成樹脂製のアームを言い、鉗子とは、本発明の樹脂製アーム(第一アームと第二アーム)を用いて構成するもので、第一・第二アームの中心部を交差し、その交差部を枢軸にて離脱不能に、且つ開閉揺動自在に保持するペンチ状のものを言い、特に手術等で使用する医療器具、緊急時に使用する医療用器具の鉗子や摂子等を言う。
ここで第一アームとは、中心部に嵌合部を備え、該嵌合部より前方側に前方側柄部を、その先部に把持部を備え、嵌合部より後方側に後方側柄部を、その尾部に握り部を備えるものを言い、第二アームとは、第一アームと略対象形を成し、第一アームと一対を成すものを言う。以後、第一アームの説明には第二アームを含むものとする。
ここで枢軸とは、向かい合って嵌合する嵌合部を離脱不能に、且つ一対のアームの開閉揺動を自在に支承するものを言う。
ここで第一アームとは、中心部に嵌合部を備え、該嵌合部より前方側に前方側柄部を、その先部に把持部を備え、嵌合部より後方側に後方側柄部を、その尾部に握り部を備えるものを言い、第二アームとは、第一アームと略対象形を成し、第一アームと一対を成すものを言う。以後、第一アームの説明には第二アームを含むものとする。
ここで枢軸とは、向かい合って嵌合する嵌合部を離脱不能に、且つ一対のアームの開閉揺動を自在に支承するものを言う。
ここで嵌合部とは、第一アームの中心部に設ける第一嵌合部と、第二アームの中心部に設ける第二嵌合部を言い、第一・第二アームの中心部において相対するようにアーム肉厚さの1/2まで凹欠し、向かい合って嵌合するものを言う。
ここで把持部とは、一対のアームの前方側柄部の先部に設けるもので、前方側柄部から先端に向けて先細となる先細タイプと、前方側柄部の先部において輪状を成すリングタイプがあり、先細タイプは主に患者(以下、負傷者を含む。)の血管を挟んで止血したり、或いは生体組織を採取する際に用い、リングタイプは主に消毒綿を把握して切開部分やその周囲を消毒等する際に用いる。
ここで握り部とは、一対のアームの後方側柄部の尾部から開放揺動側に突出し、略左右対称形状を成すもので、一対のアームを開閉揺動する際に手指を掛ける部位を言い、例えば第一アームの握り部に親指を、第二アームの握り部の外側に人指し指を、該握り部の中に中指を掛け、一対のアームを開閉操作するものを言う。
ここで把持部とは、一対のアームの前方側柄部の先部に設けるもので、前方側柄部から先端に向けて先細となる先細タイプと、前方側柄部の先部において輪状を成すリングタイプがあり、先細タイプは主に患者(以下、負傷者を含む。)の血管を挟んで止血したり、或いは生体組織を採取する際に用い、リングタイプは主に消毒綿を把握して切開部分やその周囲を消毒等する際に用いる。
ここで握り部とは、一対のアームの後方側柄部の尾部から開放揺動側に突出し、略左右対称形状を成すもので、一対のアームを開閉揺動する際に手指を掛ける部位を言い、例えば第一アームの握り部に親指を、第二アームの握り部の外側に人指し指を、該握り部の中に中指を掛け、一対のアームを開閉操作するものを言う。
請求項2は、請求項1に記載の樹脂製アームにおいて、多角形の断面形状が、主に直交する二方向からの力と、複合的に加わる多方向の力にも変形しにくい六角形であることを特徴とする。
請求項3は、請求項1に記載の樹脂製アームにおいて、少なくとも前方側柄部と後方側柄部の長手方向に直交する断面形状が多方向の力にも変形しにくい菱形であることを特徴とする。
請求項4は、請求項1,2または3に記載の樹脂製アームにおいて、把持部と握り部と嵌合部、及びラチェット機構を構成する第一腕部と第二腕部の少なくとも一つの断面形状を五角形〜八角形の多角形及び菱形に形成したことを特徴とする。
請求項3は、請求項1に記載の樹脂製アームにおいて、少なくとも前方側柄部と後方側柄部の長手方向に直交する断面形状が多方向の力にも変形しにくい菱形であることを特徴とする。
請求項4は、請求項1,2または3に記載の樹脂製アームにおいて、把持部と握り部と嵌合部、及びラチェット機構を構成する第一腕部と第二腕部の少なくとも一つの断面形状を五角形〜八角形の多角形及び菱形に形成したことを特徴とする。
ここで前方側柄部とは、嵌合部と把持部に連続するものを言い、後方側柄部とは、嵌合部と握り部に連続するものを言う。
ここで断面形状とは、例えば、前方側柄部と後方側柄部の長手方向に対し直角に横断する位置を言う。
ここで五角形〜八角形の多角形とは、五画形、六画形、七画形、八画形を言い、正五画形、正六画形、正七画形、正八画形は勿論、その変形も含まれる。
ここで菱形とは、中心を通る垂直方向の高さと、中心を通る水平方向の長さが相違するもので、高さ<長さの関係にあるものを言う。
ここでラチェット機構とは、第一腕部と第二腕部に設けたラチェット歯部によって一対のアームの一方向への開閉を困難にし、他方向への開閉を容易にするものを言う。
ここで断面形状とは、例えば、前方側柄部と後方側柄部の長手方向に対し直角に横断する位置を言う。
ここで五角形〜八角形の多角形とは、五画形、六画形、七画形、八画形を言い、正五画形、正六画形、正七画形、正八画形は勿論、その変形も含まれる。
ここで菱形とは、中心を通る垂直方向の高さと、中心を通る水平方向の長さが相違するもので、高さ<長さの関係にあるものを言う。
ここでラチェット機構とは、第一腕部と第二腕部に設けたラチェット歯部によって一対のアームの一方向への開閉を困難にし、他方向への開閉を容易にするものを言う。
本発明による樹脂製アームは、上記のとおりであるから、次に記載する効果を発揮する。
請求項1の樹脂製アームは、広く使用されている合成樹脂を用いて形成するものであるが、少なくとも前方側柄部と後方側柄部の断面形状を五角形〜八角形の多角形としたことにより、従来樹脂製アームより著しく強靭になる。その結果、金属製鉗子より軽量化し得るし、従来樹脂製アームと同様に歩留まりを高めながら簡単に量産化できるばかりか、安価に提供し得る。
特に、柔らかな生体組織をつまんでも、生体組織を傷付けることなく力強く把持し得る。即ち、止血などの把持動作を実現しながら、生体組織を安全な範囲で把持し得る。その結果、緊急時(災害、事件、紛争等)における負傷者に対する手術、治療等に使用すれば、極めて有益である。
請求項1の樹脂製アームは、広く使用されている合成樹脂を用いて形成するものであるが、少なくとも前方側柄部と後方側柄部の断面形状を五角形〜八角形の多角形としたことにより、従来樹脂製アームより著しく強靭になる。その結果、金属製鉗子より軽量化し得るし、従来樹脂製アームと同様に歩留まりを高めながら簡単に量産化できるばかりか、安価に提供し得る。
特に、柔らかな生体組織をつまんでも、生体組織を傷付けることなく力強く把持し得る。即ち、止血などの把持動作を実現しながら、生体組織を安全な範囲で把持し得る。その結果、緊急時(災害、事件、紛争等)における負傷者に対する手術、治療等に使用すれば、極めて有益である。
請求項2の樹脂製アームは、請求項1に記載の特徴に加えて、多角形の断面形状を耐久力に強いと言われるハニカム構造の六角形にしたことにより、樹脂の持つしなやかさ(割れ難さ)を活かしながら、課題となっている強度を改善することに成功したものである。即ち、断面形状を六角形にすることで、応力、曲げ弾性率が現行形状の略2倍に向上し、強化樹脂製アームに近い強度を得ることができた。
その結果、矩形断面形状を成す従来樹脂製アームと同じ樹脂材を、同じ使用量で形成しても強靭にし得る。
また、強化樹脂製アームの如く、補強を目的としたフィラー(ガラス繊維等)の添加が不要になる。その結果、金型の消耗、成形機部品の消耗、樹脂本来の性能を低下させる等の弊害を回避したり、或いは緩和し得る等の効果が期待し得るし、製品設計上の選択肢が広がり、高品質、高性能、低コスト製品が作りやすくなる。
その結果、矩形断面形状を成す従来樹脂製アームと同じ樹脂材を、同じ使用量で形成しても強靭にし得る。
また、強化樹脂製アームの如く、補強を目的としたフィラー(ガラス繊維等)の添加が不要になる。その結果、金型の消耗、成形機部品の消耗、樹脂本来の性能を低下させる等の弊害を回避したり、或いは緩和し得る等の効果が期待し得るし、製品設計上の選択肢が広がり、高品質、高性能、低コスト製品が作りやすくなる。
請求項3の樹脂製アームは、請求項1に記載の特徴に加えて、断面形状を菱形にしたことにより、耐久力が従来樹脂製アームより著しく向上するものと思われる。
請求項4の樹脂製アームは、請求項1,2および3に記載の特徴に加えて、例えば、把持部の一部又は全部を多角形にすれば、従来把持部より強靭になるので、その分、管の挟持、生体組織の採取、消毒綿の保持等が容易になる。
また、握り部の一部又は全部を多角形にすれば、例え濡れた手(手袋を含む。)で握り部を握って開閉操作しても、滑ることなく操作し得る。
更に、嵌合部の一部又は全部を多角形にすれば、一対の樹脂製アームを強力に枢軸し得るばかりか、前方側柄部から後方側柄部までを多角形に成形し得るので、樹脂製アームの成形が容易になる。
請求項4の樹脂製アームは、請求項1,2および3に記載の特徴に加えて、例えば、把持部の一部又は全部を多角形にすれば、従来把持部より強靭になるので、その分、管の挟持、生体組織の採取、消毒綿の保持等が容易になる。
また、握り部の一部又は全部を多角形にすれば、例え濡れた手(手袋を含む。)で握り部を握って開閉操作しても、滑ることなく操作し得る。
更に、嵌合部の一部又は全部を多角形にすれば、一対の樹脂製アームを強力に枢軸し得るばかりか、前方側柄部から後方側柄部までを多角形に成形し得るので、樹脂製アームの成形が容易になる。
以下、本発明による鉗子用合成樹脂製アーム(以下、樹脂製アームとする。)を用いた鉗子の基本形態を説明すると、鉗子10は図1と図2の如く、第一アーム1の中心部に設けた第一嵌合部14と、第二アーム2の中心部に設けた第二嵌合部24とを向かい合せの状態で交差嵌合し、その交差部を枢軸4にて離反不能に且つ開閉揺動自在に保持するものである。
鉗子10を構成する第一アーム1は、図2の如く第一嵌合部14より前方側柄部1aの先部に把持部11を、嵌合部14より後方側柄部1bの尾部に握り部13を備え、第二アーム2は、上記第一アーム1と略対称形状を成しており、両アーム1,2は、握り部13,23の相対向側に、第一・第二アーム1,2の閉じ方向側に作動するラチェット機構9を備えている。
鉗子10を構成する第一アーム1は、図2の如く第一嵌合部14より前方側柄部1aの先部に把持部11を、嵌合部14より後方側柄部1bの尾部に握り部13を備え、第二アーム2は、上記第一アーム1と略対称形状を成しており、両アーム1,2は、握り部13,23の相対向側に、第一・第二アーム1,2の閉じ方向側に作動するラチェット機構9を備えている。
第一アーム1の中心部に設ける第一嵌合部14は、第二アーム2に向けて段状に食い込み、第一アーム1の中心部に設ける第二嵌合部24は、第一嵌合部14に向けて段状に食い込み、その食い込み深さは、各々アーム厚さの1/2であり、第一嵌合部14と第二嵌合部24を向かい合せの状態で交差嵌合し、その交差部を枢軸4にて離反不能に且つ開閉揺動自在に保持するものである。
本発明の樹脂製アームの成形に用いる合成樹脂として、主にコポリエステル樹脂の例えば商品名トライタン(以下、トライタンとする。)を用いる。
本発明の樹脂製アームの成形に用いる合成樹脂として、主にコポリエステル樹脂の例えば商品名トライタン(以下、トライタンとする。)を用いる。
次に、本発明による樹脂製アームの第一実施形態を説明すると、少なくとも第一アーム1の第一嵌合部14から第一把持部11までの前方側柄部1aと、第一嵌合部14から第一第一握り部13までの後方側柄部1bの長手方向に直交する断面形状8を、図3(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の如く正五角形〜正八角形の多角形5に形成する。(以後、第一アーム1の説明には第二アーム2も含むものとする。)
多角形5の強度を試験するため、五角形、六角形、七角形、八角形の四種類を製造して試験することが望ましいが、四種類の内、主に直交する二方向からの力と、複合的に加わる多方向の力にも変形しにくいと思われる図4(イ)の如く六角形6を採用した。
尚、第二アーム2は第一アーム1と略対称形状を成すので、第一アーム1と同等の測定値が得られるものとして、試験を省略した。
多角形5の強度を試験するため、五角形、六角形、七角形、八角形の四種類を製造して試験することが望ましいが、四種類の内、主に直交する二方向からの力と、複合的に加わる多方向の力にも変形しにくいと思われる図4(イ)の如く六角形6を採用した。
尚、第二アーム2は第一アーム1と略対称形状を成すので、第一アーム1と同等の測定値が得られるものとして、試験を省略した。
本発明による樹脂製アームと他の樹脂製アームとの比較
試料甲=本発明の樹脂製アームの一部(図5(イ)の如く断面形状8が六角形6を成すアーム柄部)
試料乙=従来樹脂製アームより切断した一部(図5(ロ)の如く断面形状8が矩形を成すアーム柄部)
試料丙=強化樹脂製アームより切断した一部(試料乙と同じ断面形状8が矩形を成すアーム柄部)
上記試料甲・乙・丙の詳細を表1に示す。
試料甲=本発明の樹脂製アームの一部(図5(イ)の如く断面形状8が六角形6を成すアーム柄部)
試料乙=従来樹脂製アームより切断した一部(図5(ロ)の如く断面形状8が矩形を成すアーム柄部)
試料丙=強化樹脂製アームより切断した一部(試料乙と同じ断面形状8が矩形を成すアーム柄部)
上記試料甲・乙・丙の詳細を表1に示す。
≪試料の曲げ試験≫
試験機20(長瀬産業株式会社製)
図6の如く、表面が水平状態にある基盤21の上に、少なくとも上下面が平滑なブロック状の金属製左台22と金属製右台23(以下、左台22、右台23とする。)を40mm離して配置し、その左右台22,23を移動不能にしっかり固定しておく一方、左台22と右台23の中間位置(20mm)の上方から下方に向けて上下動するプレス24を配置している。
プレス24は、少なくとも500gまで一定間隔で加圧し得る。
その他、試料の湾曲状態を計測する測定器を準備しておく。
試験機20(長瀬産業株式会社製)
図6の如く、表面が水平状態にある基盤21の上に、少なくとも上下面が平滑なブロック状の金属製左台22と金属製右台23(以下、左台22、右台23とする。)を40mm離して配置し、その左右台22,23を移動不能にしっかり固定しておく一方、左台22と右台23の中間位置(20mm)の上方から下方に向けて上下動するプレス24を配置している。
プレス24は、少なくとも500gまで一定間隔で加圧し得る。
その他、試料の湾曲状態を計測する測定器を準備しておく。
≪試料甲の試験≫
1)試料甲の左右端部を試験機20の左台22と右台23の上に載置する。その際、六角形6の上平面6aを上にし、下平面6bを下にして左右台22,23の上に載置する。
2)左右台22,23間に掛け渡した試料甲の中間に上方から下方に向けてプレス24を下降し、重力方向の荷重を加える。
3)荷重は50g〜300gまで、50g間隔で増加し、その変形量を計測する。
≪試料乙の試験≫
前記試料甲と同様に、両端部を左右台22,23の上に載置し、その中間に重力方向の荷重を加える。
≪試料丙の試験≫
前記試料甲・乙と同様に、両端部を左右台22,23の上に載置し、その中間部に重力方向の荷重を加える。
1)試料甲の左右端部を試験機20の左台22と右台23の上に載置する。その際、六角形6の上平面6aを上にし、下平面6bを下にして左右台22,23の上に載置する。
2)左右台22,23間に掛け渡した試料甲の中間に上方から下方に向けてプレス24を下降し、重力方向の荷重を加える。
3)荷重は50g〜300gまで、50g間隔で増加し、その変形量を計測する。
≪試料乙の試験≫
前記試料甲と同様に、両端部を左右台22,23の上に載置し、その中間に重力方向の荷重を加える。
≪試料丙の試験≫
前記試料甲・乙と同様に、両端部を左右台22,23の上に載置し、その中間部に重力方向の荷重を加える。
試験結果、曲げ試験(n=6の平均値)における最大応力(Mpa)と曲げ弾性率(Mpa)、及び300g荷重時の変形率(%)を求めた所、表2の如く結果が得られた。
表2の最大応力をグラフで示す(表3)。
また、表2の曲げ弾性率をグラフで示す(表4)。
更に、表2の300g荷重時の変形量をグラフで示す(表5)。
試料丙の変形量を100%とした場合、試料甲・乙の200g、250g、300g荷重時における変形量を求めた所、表6の如く結果が得られた。
表6をグラフで示す(表7)。
試験結果から、試料甲が試料乙より格段に強靭で、試料丙に近いことが分かる。
その原因として、耐久力に強いと言われるハニカム構造の六角形を成していること。
また、図4(イ)の如く、六角形6の上平面6aを上に、下平面6bを下にした状態で、両平面6a,6bの一端に接続し、X―X軸を基準にして対称する斜面6c,6dを二辺とする三角部61(ハッチング部)が、補強リブの如く作用を成すためと思われる。
その原因として、耐久力に強いと言われるハニカム構造の六角形を成していること。
また、図4(イ)の如く、六角形6の上平面6aを上に、下平面6bを下にした状態で、両平面6a,6bの一端に接続し、X―X軸を基準にして対称する斜面6c,6dを二辺とする三角部61(ハッチング部)が、補強リブの如く作用を成すためと思われる。
本発明による樹脂製アームの第二実施形態を、第一実施形態と相違する点について説明すると、少なくとも前方側柄部1aと後方側柄部1bの断面形状8を図7の如く菱形7と成すものであり、図の如く中心を通る垂直方向の高さTと、中心を通る水平方向の長さHは、高さT<長さHの如く相違するものである。
菱形7は、X―X軸を基準にして対称を成す右上向斜面7cと右下向斜面7d、及び左上向斜面7eと左下向斜面7f、Y−Y軸を基準にして対称を成す右上向斜面7cと左上向斜面7e、及び右下向斜面7dと右下向斜面7fから成る。
右上向斜面7cと右下向斜面7dの交点を頂点とする三角部71(ハッチング部)、左上向斜面7eと右下向斜面7fの交点を頂点とする三角部71(ハッチング部)、及び右上向斜面7cと左上向斜面7eの交点を頂点とする三角部72(ハッチング部)、右下向斜面7dと右下向斜面7fの交点を頂点とする三角部72(ハッチング部)が、前記六角形6の三角部61と同様に補強リブの如く成る。
菱形7は、X―X軸を基準にして対称を成す右上向斜面7cと右下向斜面7d、及び左上向斜面7eと左下向斜面7f、Y−Y軸を基準にして対称を成す右上向斜面7cと左上向斜面7e、及び右下向斜面7dと右下向斜面7fから成る。
右上向斜面7cと右下向斜面7dの交点を頂点とする三角部71(ハッチング部)、左上向斜面7eと右下向斜面7fの交点を頂点とする三角部71(ハッチング部)、及び右上向斜面7cと左上向斜面7eの交点を頂点とする三角部72(ハッチング部)、右下向斜面7dと右下向斜面7fの交点を頂点とする三角部72(ハッチング部)が、前記六角形6の三角部61と同様に補強リブの如く成る。
本発明による樹脂製アームの実施形態において、第一把持部11と第二把持部21を、つかみ面(図示せず。)を相対設しているものとしたが、つかみ面の代わりに周知のリング状把持部(図示せず。)を備え、リング状把持部にて消毒液を含んだ綿球を挟み、切開部分及びその周囲の体表を消毒することも可能である。
即ち、第一・第二把持部11,21は使用目的に応じて任意の形状を採用することができる。
即ち、第一・第二把持部11,21は使用目的に応じて任意の形状を採用することができる。
本発明による樹脂製アームの材質として、実施形態においてコポリエステル樹脂の商品名トライタンを用いたのは、従来から多用されているPA(ナイロン)PC(ポリカボネート),PMMA(アクリル),ABS等に比べて極めて衝撃に強く、また割れにくいためである。
しかし、同材料に限定されるものではなく、例えばポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)等を用いることも可能である。
しかし、同材料に限定されるものではなく、例えばポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)等を用いることも可能である。
実施形態においては樹脂製アームの断面形状8を正五角形〜正八角形の多角形5としたが、略五角形〜略八角形を成しておれば良い。
また、多角形5(六角形6を含む。)と菱形7の各角部15,16,17の先端部を図8の如くアールに成形し、特に鋭角を成す先端部の角部15,16,17にあっては、アールに成形することが望ましい。即ち、鋭角をアールに形成することによって、鉗子を取り扱う術者の手指を傷つけることもないし、鉗子が触れる血管、生体組織、切開部分やその周囲等を傷つけることもない。
実施形態においては前方側柄部1a,2aと後方側柄部1b,2bの断面形状8を五角形〜八角形の多角形5又は菱形7と成したが、対を成す把持部11,21、握り部13,23、嵌合部14,24、及びラチェット機構9を構成する第一腕部91と第二腕部92の少なくとも一対の断面形状8を五角形〜八角形の多角形5又は菱形7に形成することも可能である。
また、多角形5(六角形6を含む。)と菱形7の各角部15,16,17の先端部を図8の如くアールに成形し、特に鋭角を成す先端部の角部15,16,17にあっては、アールに成形することが望ましい。即ち、鋭角をアールに形成することによって、鉗子を取り扱う術者の手指を傷つけることもないし、鉗子が触れる血管、生体組織、切開部分やその周囲等を傷つけることもない。
実施形態においては前方側柄部1a,2aと後方側柄部1b,2bの断面形状8を五角形〜八角形の多角形5又は菱形7と成したが、対を成す把持部11,21、握り部13,23、嵌合部14,24、及びラチェット機構9を構成する第一腕部91と第二腕部92の少なくとも一対の断面形状8を五角形〜八角形の多角形5又は菱形7に形成することも可能である。
ラチェット機構9は、図2の如く第一アーム1の第一嵌合部14から第一握り部13から第二アーム2の第二握り部23に向けて突出する第一腕部91と、第二アーム2の第二握り部23から第一アーム1の第一握り部13に向けて突出し第一腕部91の片面に重なり得る第二腕部92とから成り、第一腕部91と第二腕部92の相対向面に、一対のアーム1,2を閉じ方向に揺動した際に噛み合うラチェット歯列(図示せず。)を備え、閉じた状態に保持する。
1 第一アーム、2 第二アーム
1a 前方側アーム柄部、1b 後方側アーム柄部
2a 前方側アーム柄部、2b 後方側アーム柄部
11 第一把持部、21 第二把持部
13 第一握り部、23 第二握り部
14 第一嵌合部、24 第二嵌合部
4 枢軸
5 多角形(五角形〜八角形)、15,16,17 角部
6 六角形、6a,6b 平面、6c,6d 斜面
7 菱形、7c,7d,7e,6f 斜面
61,71,72 三角部
8 断面形状
9 ラチェット機構、91 第一腕部、92 第二腕部
10 鉗子
20 試験機
21 基盤
22 左台、23 右台
24 プレス
T 菱形における垂直方向の高さ
H 菱形における水平方向の長さ
1a 前方側アーム柄部、1b 後方側アーム柄部
2a 前方側アーム柄部、2b 後方側アーム柄部
11 第一把持部、21 第二把持部
13 第一握り部、23 第二握り部
14 第一嵌合部、24 第二嵌合部
4 枢軸
5 多角形(五角形〜八角形)、15,16,17 角部
6 六角形、6a,6b 平面、6c,6d 斜面
7 菱形、7c,7d,7e,6f 斜面
61,71,72 三角部
8 断面形状
9 ラチェット機構、91 第一腕部、92 第二腕部
10 鉗子
20 試験機
21 基盤
22 左台、23 右台
24 プレス
T 菱形における垂直方向の高さ
H 菱形における水平方向の長さ
Claims (4)
- 枢軸(3)を中心にして開閉揺動自在となる第一アーム(1)と第二アーム(2)において、
第一・第二アーム(1,2)は合成樹脂製であり、各アーム(1,2)は中心部に嵌合部(14,24)を備え、該嵌合部(14,24)より前方側柄部(1a,2a)の先部に把持部(11,21)を、嵌合部(14,24)より後方側柄部(1b,2b)の尾部に握り部(13,23)を各々備え、握り部(13,23)の相対向側に、第一・第二アーム(1,2)の閉じ方向側に作動するラチェット機構(9)を備え、
少なくとも前方側柄部(1a,2a)と後方側柄部(1b,2b)の長手方向に直交する断面形状(8)が五角形〜八角形の多角形(5)であることを特徴とする鉗子用樹脂製アーム。 - 多角形(5)の断面形状(8)が、主に直交する二方向からの力と、複合的に加わる多方向の力にも変形しにくい六角形(6)であることを特徴とする請求項1に記載の鉗子用樹脂製アーム。
- 少なくとも前方側柄部(1a,2a)と後方側柄部(1b,2b)の長手方向に直交する断面形状(8)が多方向の力にも変形しにくい菱形(7)であることを特徴とする請求項1に記載の鉗子用樹脂製アーム。
- 把持部(11,21)と握り部(13,23)と嵌合部(14,24)、及びラチェット機構(9)を構成する第一腕部91と第二腕部92の少なくとも一つの断面形状(8)が五角形〜八角形の多角形(5)であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の鉗子用樹脂製アーム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019050631A JP2020151046A (ja) | 2019-03-19 | 2019-03-19 | 鉗子用樹脂製アーム |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2019050631A JP2020151046A (ja) | 2019-03-19 | 2019-03-19 | 鉗子用樹脂製アーム |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020151046A true JP2020151046A (ja) | 2020-09-24 |
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ID=72556534
Family Applications (1)
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JP2019050631A Pending JP2020151046A (ja) | 2019-03-19 | 2019-03-19 | 鉗子用樹脂製アーム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020151046A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022054749A1 (ja) | 2020-09-09 | 2022-03-17 | 株式会社斎藤撚糸 | コード保持装置 |
Citations (4)
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---|---|---|---|---|
US20060041274A1 (en) * | 2004-08-20 | 2006-02-23 | Li-Ming Su | Modified laparoscopic instruments and methods of use |
JP2006230767A (ja) * | 2005-02-25 | 2006-09-07 | Kawamoto Sangyo Kk | 樹脂製鉗子 |
JP2010200838A (ja) * | 2009-02-27 | 2010-09-16 | Hogi Medical:Kk | 鉗子 |
JP2010259677A (ja) * | 2009-05-08 | 2010-11-18 | Kitakyushu Foundation For The Advancement Of Industry Science & Technology | 鉗子 |
-
2019
- 2019-03-19 JP JP2019050631A patent/JP2020151046A/ja active Pending
Patent Citations (4)
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