JP5387904B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、活物質として鉄酸化物を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
正極と負極との間をリチウムイオンが行き来することによって充電および放電するリチウムイオン二次電池が知られている。この種のリチウムイオン二次電池の一つの典型的な構成では、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出し得る材料(活物質)が導電性部材(集電体)に保持された構成の電極を備える。現在、負極用の活物質としてはグラファイトが広く用いられている。しかし、グラファイトでは6個の炭素原子当たり1個のLiがインターカレートするため、その充放電容量には372mAh/gの上限がある。
そこで、グラファイト以上の充放電容量を実現し得るものと期待される活物質が種々検討されている。かかる活物質の一例として、Fe等の鉄酸化物(鉄を構成元素として含む酸化物)を含む組成のものが挙げられる。例えば、特許文献1には、気相または液相から基板上に堆積して形成した鉄酸化物薄膜を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池が記載されている。リチウムイオン二次電池における鉄酸化物の利用に関する他の技術文献として特許文献2〜5が挙げられる。
特開2002−298864号公報 特開昭62−219465号公報 特開平11−111294号公報 特開2003−257426号公報 特開平3−112070号公報
しかし、Fe等の鉄系酸化物は、通常、充放電の可逆性が低く、二次電池への適用が困難な物質であることが知られている(特許文献4の第0006項等)。そこで本発明は、鉄酸化物を含む活物質を備え、より充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明により提供されるリチウムイオン二次電池は、正極と負極と非水電解質とを備える。前記正極および前記負極のうち一方は、リチウム(Li)を可逆的に吸蔵および放出可能な鉄酸化物膜(典型的には、α−Feの結晶を含む鉄酸化物膜。)が導電性基体に保持された構成の鉄酸化物膜付電極である。ここで、前記鉄酸化物膜付電極を構成する前記導電性基体の表面のうち少なくとも一部は多数の微細な凸部を有する粗面であり、その粗面上に前記鉄酸化物膜が設けられている。前記鉄酸化物膜付電極は、前記凸部の平均間隔をS(μm)とし、1モルのFeがリチウムと反応して3モルのLiOと2モルのFeに変換される場合における体積膨張率をαとし、前記鉄酸化物膜付電極のリチウムイオンに対する電位が0.01Vになるまで前記鉄酸化物膜にリチウムを吸蔵させたときの膜厚増加量の実測値b1を理論上予測される膜厚増加量b0で除して求められる電極多孔率をβとしたとき、前記平均凸部間隔S,膨張率αおよび多孔率βと前記鉄酸化物膜の厚みTA(μm)との関係が、次式:TA<S/(2αβ)を満たす。
このような鉄酸化物膜付電極を用いて構築されたリチウムイオン二次電池は、粉末状の鉄酸化物を備える電極(例えば、鉄酸化物粉末を導電材や結着剤とともにペレット状に成形してなる電極)を用いて構築されたリチウムイオン二次電池に比べて、充放電の可逆性が大幅に改善されたものとなり得る。また、上記鉄酸化物膜が多数の微細な凸部を有する粗面上に設けられていることにより、一般的な金属箔の表面(平滑面)に鉄酸化物膜を設けた構成の電極に比べて、より充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池が構築され得る。例えば、充放電の可逆性が高い、および、活物質膜の質量当たりの充放電容量(質量容量密度)が大きい、のうち少なくとも一方(好ましくは両方)の効果が実現され得る。そして、前記鉄酸化物膜付電極の厚みTAをS/(2αβ)よりも小さくすることにより、上記充放電特性の耐久性に優れた(例えば、充放電の繰り返しに対する容量維持率の高い)リチウムイオン二次電池となり得る。
なお、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間のリチウムイオンの移動により充放電する二次電池をいう。ここに開示される技術は、典型的には、金属リチウム(単体)を電極構成材料に使用しない形態のリチウムイオン二次電池に適用される。
前記鉄酸化物膜は、前記粗面に鉄酸化物を堆積させてなる膜であり得る。かかる堆積にあたっては、例えば、鉄酸化物をターゲットとする蒸着法、スパッタリング法等を好ましく適用することができる。ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記鉄酸化物膜が、酸素イオンビームアシストデポジション法により前記粗面に鉄酸化物を堆積(典型的には蒸着)してなる膜である。上記酸素ビームアシストを行うことにより、鉄酸化物(特にα−Fe)の結晶がよりよく成長した膜を形成することができる。したがって、かかる鉄酸化物膜を備えるリチウムイオン二次電池によると、より優れた性能(充放電特性等)が実現され得る。
ここに開示される技術の一態様では、前記鉄酸化物膜の厚みTAが0.1μm〜1.0μmである。上記範囲よりもTAが小さすぎると、電極体積に占める鉄酸化物膜(活物質膜)の割合が小さくなることから、電池の容量エネルギー密度が低くなりがちである。上記範囲よりもTAが大きすぎると、TA<S/(2αβ)を満たし得るSの下限値が大きくなる傾向にあることから、上記鉄酸化物膜を粗面上に設ける効果が少なくなることがあり得る。
前記粗面としては、電解銅箔の電析面(電析時における外側面)を好ましく利用し得る。ここに開示される技術の好ましい一態様として、前記基体が電解銅箔であり、該銅箔の少なくとも電析面に前記鉄酸化物膜が設けられた態様が挙げられる。電解銅箔としては、平均凸部間隔Sが適度な範囲にある(例えば、Sが5μm〜20μm程度の)ものが市販されており、かかるSを有する電解銅箔を作製することも容易である。また、長尺状のものを容易に入手可能であるので、長尺シート状の正極と負極とが重ね合わせて捲回された形態の電極体(捲回電極体)を備えた電池の構成要素としても好適である。
ここに開示される技術には、前記鉄酸化物膜付電極を負極として備えるリチウムイオン二次電池、および、前記鉄酸化物膜付電極を正極として備えるリチウムイオン二次電池、の双方が含まれる。鉄酸化物膜付電極を負極として備える形態のリチウムイオン二次電池がより好ましい。かかる形態は、より作動電圧の高い電池の提供に適している。また、対極(すなわち正極)の活物質をより広い範囲から選択し得るので好ましい。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、上述のように充放電特性およびその耐久性に優れたものとなり得ることから、車両に搭載されるリチウムイオン二次電池として好適である。例えば、上記リチウムイオン二次電池の複数個を直列に接続した組電池の形態で、自動車等の車両のモータ(電動機)用の電源として好適に利用され得る。したがって、本発明によると、ここに開示されるいずれかのリチウムイオン二次電池を備えた車両が提供される。
鉄酸化物膜付電極の表面付近を拡大して示す模式的断面図である。 電極サンプルA1〜A4における鉄酸化物膜の厚みTAと容量維持率との関係を示す特性図である。 本発明に係るリチウムイオン二次電池の一構成例を示す縦断面図である。 性能評価用に作製したコインセルを模式的に示す部分断面図である。 リチウムイオン二次電池を搭載した車両(自動車)を模式的に示す側面図である。 電極サンプルA3の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。 電極サンプルA3の、より高倍率のSEM像である。 電極サンプルB1のSEM像である。 電極サンプルB1の、より高倍率のSEM像である。 電極サンプルA3,B1の鉄酸化物膜および市販のFe粉末のXRDスペクトルを、FeおよびCuのX線回折パターンと比較して示した図である。 電極サンプルA3の充放電特性を示す電圧チャートである。 電極サンプルB1の充放電特性を示す電圧チャートである。 電極サンプルB2の充放電特性を示す電圧チャートである。 電極サンプルA3,B2につき、サイクル試験に伴う容量維持率の推移を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される技術における鉄酸化物膜付電極の典型的な構成を図1に例示する。この図に示す鉄酸化物膜付電極30は、リチウムを可逆的に吸蔵および放出可能な鉄酸化物膜32と、導電性基体34とを有する。導電性基体34の表面のうち少なくとも一部は、多数の微細な凸部36a(ここでは四つを示している。)を有する粗面36となっている。その粗面36上に鉄酸化物膜32が設けられている。図1中の符号Sは凸部36aの平均間隔を示し、符号TAは鉄酸化物膜32の厚みを示している。
ここに開示される技術における導電性基体としては、一般的なリチウムイオン二次電池用電極の集電体と同様の材質および形状を有する導電性部材を用いることができる。例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の導電性材料(典型的には金属材料)を主体とする棒状体、板状体、シート状(箔状)体、網状体等を用いることができる。後述する蒸着法等によって鉄酸化物膜を形成しやすいことおよび高容量の電池に適用しやすいことから、シート状の導電性基体(典型的には金属箔)を好ましく採用することができる。かかるシート状基体の厚みは特に限定されないが、電池の容量密度と基体の強度との兼ね合いから、好ましい厚みとして5μm〜200μm(より好ましくは10μm〜50μm)程度の範囲が例示される。
ここに開示される技術の典型的な態様では、上記導電性基体の表面のうち少なくとも一部の範囲(領域)が、多数の微細な凸部を有する粗面となっている。このような粗面上に鉄酸化物が設けられた構成によると、該鉄酸化物膜が平滑な表面(例えば、一般的な金属箔の表面)上に設けられた構成に比べて、より高い充放電特性を示すリチウムイオン二次電池が実現され得る。また、粗面上に設けられた鉄酸化物膜は、平滑な表面上に設けられた鉄酸化物に比べて、導電性基体との密着性が良好なものとなり得る(アンカー効果)。さらに、上記粗面上に鉄酸化物膜を形成することにより、該鉄酸化物膜の比表面積が増大し、これにより反応面積を増大させることができる。かかる反応面積の増大は、電池反応を効率よく行う上で有利である。
上記粗面は、導電性基体の実質的に全表面(例えば、シート状基体の両面のほぼ全範囲)であってもよく、一部範囲(例えば、シート状基体の片面のほぼ全範囲、片面のうち一辺に沿う部分を帯状に残した範囲、両面の一辺に沿う部分を帯状に残した範囲等)であってもよい。実質的に全表面が粗面となっている導電性基体には、該基体のより広い範囲に鉄酸化物膜を形成し得るという利点がある。また、片面のほぼ全範囲が粗面となっているシート状基体(例えば電解銅箔)は、製造または入手が容易であるため、コスト面で有利である。なお、導電性基体の表面の一部が粗面となっている場合、鉄酸化物膜は上記粗面上のみに形成されていてもよく、鉄酸化物膜の一部が粗面以外の部分に形成されていてもよい。好ましい一態様では、鉄酸化物膜の実質的に全部が粗面上に形成されている。
ここに開示される技術における鉄酸化物膜は、Liを可逆的に吸蔵および放出可能な膜(すなわち、リチウムイオン二次電池の電極活物質として機能し得る膜)であって、鉄酸化物(Fe,Fe,FeO等)を主成分とする膜を指し、鉄および酸素以外の元素を副成分として意図的に含有させた膜を包含する意味である。好ましい一態様では、上記鉄酸化物膜が、鉄および酸素以外の元素を実質的に含有しない(かかる元素を少なくとも意図的には含有させないことをいい、鉄および酸素以外の元素を非意図的または不可避的に含有することは許容され得る。)膜である。なお、ここでいう鉄酸化物膜の組成は、該鉄酸化物膜が電池反応に使用される前の組成(初回のLi吸蔵前、すなわち電池組立て時の組成であって、通常は鉄酸化物膜付電極の製造時に形成される鉄酸化物膜の組成と概ね一致する。)の組成を意味するものとする。
上記鉄酸化物膜は、少なくともα−Feの結晶を含むことが好ましい。α−Fe結晶の存在は、一般的なX線回折測定(XRD)により確認することができる。このXRDスペクトルにおいて、Feに由来する回折強度がより高い鉄酸化物膜が好ましい。かかる鉄酸化物膜によると、より良好な充放電特性を示す電池が実現され得る。
かかる鉄酸化物膜を上記粗面上に形成する方法としては、めっき法や蒸着法等の従来公知の各種成膜手法を、単独で、あるいは適宜組み合わせて使用することができる。これらのうち蒸着法を好ましく用いることができる。ここでいう蒸着法の概念には、物理蒸着法(PVD法、例えばスパッタリング法)、化学蒸着法(CVD法、例えばプラズマCVD法)、反応性蒸着法等の各種蒸着法が包含される。かかる蒸着法による鉄酸化物膜の形成は、典型的には減圧条件下(例えば、圧力10−3Pa〜10−5Pa程度)で行われる(すなわち真空蒸着法)。
ここに開示される技術の一態様では、鉄酸化物を含むターゲット(蒸着源)を用いた蒸着法により鉄酸化物膜を形成する。上記ターゲットとしては、鉄酸化物(典型的にはFe)を主成分とするものを好ましく使用し得る。通常は、実質的に鉄酸化物からなるターゲットを使用することにより好適な鉄酸化物が形成され得る。例えば、平均粒径0.5mm〜20mm(好ましくは1mm〜10mm、例えば2mm〜5mm)程度の粒状Feを用いることができる。かかるターゲットを気化させる方法としては、電子ビーム、イオンビーム、レーザ等の各種高エネルギー線を照射して加熱する方法を好ましく採用し得る。あるいは、抵抗加熱、誘導加熱等の加熱方法を用いてもよい。
ここに開示される技術における鉄酸化物膜形成方法としては、減圧条件下においてターゲットに電子ビームを照射して蒸着膜を形成する方法(電子ビーム蒸着法)を好ましく採用することができる。かかる電子ビーム蒸着は、一般的な真空蒸着装置を用いて好適に実施することができる。特に限定するものではないが、蒸着時の圧力は、例えば10−3Pa〜10−5Pa程度とすることができる。また、電子ビームの照射は、一般的な電子銃を用いて、例えば500W〜1000W程度の出力で行うことができる。
上記鉄酸化物の堆積は、被堆積面(すなわち、鉄酸化物膜を形成しようとする面)にイオンビームを照射しつつ行うことができる。酸素イオンビームを照射することが特に好ましい(すなわち、酸素イオンビームアシスト蒸着法)。かかる酸素イオンビーム照射を行うことにより、鉄酸化物結晶(例えば、α−Fe結晶)の成長促進が効果的に促進され得る。このことによって、より優れた充放電性能を実現可能な鉄酸化物膜が形成され得る。
ここに開示される技術の典型的な態様では、上記鉄酸化物膜付電極における鉄酸化物膜の厚みTAが、次式:TA<S/(2αβ);を満たす。ここで、鉄酸化物膜の厚みTA(凸部の形状に沿った厚みをいう。図1参照。)は、該鉄酸化物膜が電池反応に使用される前の厚み(初回のLi吸蔵前、すなわち電池組立て時の厚みであって、通常は鉄酸化物膜付電極の製造時に形成される鉄酸化物膜の厚みと概ね一致する。)を意味するものとする。この厚みTAは、鉄酸化物膜の形成された基体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより把握することができる。あるいは、鉄酸化物膜の形成前後における導電性基体の質量変化、鉄酸化物膜形成範囲の基体表面積(例えば、レーザ顕微鏡により測定することができる。)、および鉄酸化物膜の密度から、鉄酸化物膜の厚みTAを算出してもよい。
以下、上記不等式の右辺にあるS、αおよびβの各々について詳細に説明する。
上記粗面における上記凸部の平均間隔(平均凸部間隔)Sは、隣接する凸部の概ね対応する箇所同士の間隔(例えば、各凸部の頂点の間隔。図1参照。)の算術平均値として求められる。上記粗面における凸部の(配置)形成密度が該粗面の広がり方向(面方向)に対してほぼ均一であれば、該粗面の所定面積当たりに含まれる凸部の数から平均凸部間隔Sを算出してもよい。上記凸部の対応する箇所同士の間隔や、所定面積内に含まれる凸部の数は、例えば、上記粗面をSEMで観察することにより把握することができる。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記平均凸部間隔Sが3μm〜50μm(より好ましくは5μm〜20μm)である。上記範囲よりもSが大きすぎると、鉄酸化物膜を粗面上に設けることの効果(典型的には、充放電特性を向上させる効果)が少なくなる場合があり得る。Sが小さすぎると、TA<S/(2αβ)を満たし得るTAの上限値が小さくなって、電池の容量エネルギー密度が低下傾向となることがあり得る。
ここに開示される技術における典型的な鉄酸化物であるFeは、下記反応式(1)によりLiを吸蔵し得る(理論容量;1008mAh/g)。
Fe+6Li→3LiO+2Fe (1)
上記不等式中のαは、上記式(1)における右向きの反応、すなわち1モルのFeがLiと反応して3モルのLiOと2モルのFeに変換される場合における計算上の(理論的な)体積膨張率を表す。したがって、Feの1モル当たりの体積をV(Fe2O3)、LiOの1モル当たりの体積をV(Li2O)、Feの1モル当たりの体積をV(Fe)とすると、以下の式(2)により体積膨張率αを算出することができる。
α={3V(Li2O)+2V(Fe)}/V(Fe2O3) (2)
なお、Fe、LiOおよびFeの1モル当たりの体積としては、温度25℃、圧力1atmの条件下における各物質の密度(真密度)から換算した値を採用することができる。後述する実施例では、この方法により求めた体積膨張率αの値として1.9を用いている。
一方、鉄酸化物膜がLiを吸蔵することによる実際の膜厚増加量は、通常、上記鉄酸化物膜に含まれる鉄酸化物とLiとの反応により生じるLiOとFeの量およびそれらの真密度から理論上(計算上)予測される膜厚増加量よりも多くなる。これは、Liを吸蔵した鉄酸化物膜は、LiOとFeとからなる緻密な膜に変換されるわけではなく、ある程度ポーラス(多孔質)となるためである。上記不等式中のβは、鉄酸化物膜付電極の電位が0.01V(対Li/Li)になるまで鉄酸化物膜(活物質膜)にLiを吸蔵させた状態(この鉄酸化物膜付電極を負極に用いたリチウムイオン二次電池では、該電池の満充電状態)における、該活物質膜の緻密さの程度(電極多孔率)を表す指標として把握され得る。この電極多孔率βは、初期状態(初回のLi吸蔵前)から上記電位まで鉄酸化物膜にLiを吸蔵させたときの膜厚増加量の実測値b1を、このLi吸蔵により理論上予測される膜厚増加量b0で除して求められる(すなわち、β=b1/b0)。βの値を求める具体的な方法としては、例えば、後述する実施例と同様の方法を採用することができる。
ここに開示される技術によると、鉄酸化物膜の厚みTA(μm)、平均凸部間隔S(μm)、体積膨張率α、および電極多孔率βの間に次式:TA<S/(2αβ);の関係があることにより、充放電特性の耐久性に優れた(例えば、充放電の繰り返しに対する容量維持率の高い)リチウムイオン二次電池が実現される。ここに開示される技術を実施するにあたり、かかる効果が実現される理由を明らかにする必要はないが、例えば以下のように考えられる。すなわち、導電性基体の粗面上に鉄酸化物膜を有する鉄酸化物膜付電極において、該鉄酸化物膜(活物質膜)がLiを吸蔵して膨張(膜厚が増加)すると、活物質膜のうち隣接する凸部の表面を覆う部分が互いに干渉し得る。この干渉の程度が甚だしくなると、活物質膜に応力が加わることにより該活物質膜と基体(粗面)との密着性が低下したり、Liの出入りが妨げられたりすることがあり得る。TAをS/(2αβ)よりも小さくすることにより、電池の使用時に該鉄酸化物膜(活物質膜)が最も膨張した状態(該電極を負極に用いたリチウムイオン二次電池では、電池の満充電状態)においても、凸部間における活物質膜の過剰な干渉を回避することができる。このことによって充放電特性の耐久性が向上するものと考えられる。
好ましい一態様では、鉄酸化物膜の厚みTAがS/(2αβ)の0.95倍以下であり、より好ましくは0.9倍以下、さらに好ましくは0.8倍以下(すなわち、TA≦0.8{S/(2αβ)})である。かかる態様によると、鉄酸化物膜の膨張時(Li吸蔵時)にも凸部の間にある程度の隙間が残るので、活物質膜の干渉がより効果的に抑制され、より充放電特性の耐久性に優れた電池が実現され得る。また、上記隙間により電解質と活物質膜との間の物質移動が容易となる。このことは、電池反応の効率および可逆性の向上に寄与し得る。TAの下限は特に限定されないが、導電性基体の凸部間の空間を有効に利用して容量エネルギー密度を高めるという観点から、通常はS/(2αβ)の0.1倍以上とすることが適当であり、0.2倍以上とすることが好ましい。
鉄酸化物膜の厚みTAは、また、上記粗面の表面粗さRzよりも小さいことが好ましく(すなわち、TA<Rz)、例えばRzの0.8倍よりも小さいことが好ましい。これにより、少なくとも初期状態における鉄酸化物膜の表面積をより大きくすることができる。かかる表面積の増加は、電解質と鉄酸化物膜との間の物質移動を容易にし、電池反応の効率および可逆性の向上に寄与し得るので好ましい。ここで「表面粗さRz」とは、JIS B 0601(1994)に規定する十点平均粗さをいう。好ましい一態様では、鉄酸化物膜の厚みTAがRz/(αβ)よりも小さい。TAがRz/(αβ)の0.95倍以下(例えば0.9倍以下)であることがさらに好ましい。このことによって、鉄酸化物膜の膨張時(リチウム吸蔵時)にも凸部の形状を活物質膜の形状によりよく反映させて、該活物質膜の表面積をより大きく維持することができる。
上記粗面の表面粗さRzは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上(例えば4μm以上)であることがより好ましい。Rzの上限は特に限定されないが、通常は概ね50μm以下(例えば20μm以下)とすることが好ましい。好ましいRzの範囲の上限は、導電性基体の形状および粗面の形成部位によっても異なり得る。適度な基体強度を確保するという観点から、通常は、基体のうち表面が粗面となっている部位において、該粗面のうち凸部の形成に関与しない部分(基部)の厚みが3μm以上(より好ましくは5μm以上、例えば7μm以上)あることが好ましい。例えば、全体の厚みが18μmのシート状基体において、両面のほぼ全範囲(すなわち全表面)が粗面となっている構成では、両面のRzの合計を6μm〜15μm(すなわち、基部の厚みが3μm〜12μm)とすることが好ましく、両面のRzの合計を6μm〜10μm(例えば、一面および他面のRzがいずれも3μm〜5μm)とすることがより好ましい。また、同じく全体の厚みが18μmのシート状基体において、片面のほぼ全範囲が粗面となっている構成では、該粗面のRzを15μm以下とすることが好ましく、10μm以下(例えば3μm〜8μm程度)とすることがより好ましい。
ここに開示される技術は、例えば、鉄酸化物膜の厚みTAが1.2μm以下(好ましくは1.0μm以下)である態様で実施され得る。かかる厚みの鉄酸化物膜によると、より充放電特性に優れた(例えば、充放電の可逆性の高い)リチウムイオン二次電池が実現され得る。ここに開示される技術を実施するにあたり、TAを上記厚みとすることにより充放電特性がより向上する理由を明らかにする必要はないが、例えば以下のように考えられる。すなわち、ここに開示される技術における典型的な鉄酸化物であるFeは、上記反応式(1)によりLiを吸蔵し、その逆向き(左向き)の反応によりLiを放出する。この逆反応を可逆性よく進行させるためには、右向きの反応(すなわちLiの吸蔵)により生じたLiOが微細に分散しているほうが有利である。換言すれば、塊となったLiOはLiを放出し難く、その分のLiは不可逆容量となって電池の充放電特性(充放電効率、容量維持率等)を低下させることとなる。鉄酸化物膜の厚みTAが小さいと、Liの吸蔵により生じたLiOが広く分散した状態となりやすく(すなわち、可逆性を損なうような塊を生じ難く)、このことが充放電の可逆性向上に寄与するものと考えられる。
なお、鉄酸化物膜の厚みTAが小さすぎると、電極体積に占める鉄酸化物膜(活物質膜)の割合が小さくなることから、電池の容量エネルギー密度が低くなりがちである。かかる観点から、通常は、TAを0.1μm〜1.2μm程度とすることが適当であり、例えば0.2μm〜1.0μm程度とすることが好ましい。ここに開示される技術の好ましい一態様では、鉄酸化物膜付電極の具備する鉄酸化物膜が、以下の条件:(a)TAがS/(2αβ)よりも小さい(例えば、TAがS/(2αβ)の0.8倍以下である);および、(b)TAがRzよりも小さい(例えば、TAがRz/(αβ)の0.9倍以下である);の少なくとも一方を満たし、かつ、次の条件:(c)TAが0.1〜1.2μm(例えば0.2μm〜1.0μm)である;を満たす。かかる鉄酸化物膜を備えた電極によると、特に充放電特性およびその耐久性に優れたリチウムイオン二次電池が構築され得る。
ここに開示される技術にとり好ましい導電性基体の一例として、電解銅箔が挙げられる。通常、電解銅箔の電析面(電析時における外側面)は、多数の微細な凸部を有する粗面となっている。一般に市販されている電解銅箔は、電析面における凸部の平均間隔Sが概ね5μm〜20μmの範囲にあるものが多い。かかる平均凸部間隔Sを有する電解銅箔を好ましく採用することができる。電解銅箔の厚みは特に限定されず、例えば10μm〜50μm程度のものを用いることができる。上記厚みおよび平均凸部間隔Sを有し、かつRzが3μm〜15μm(ただし、基部の厚みが5μm以上)の電解銅箔を好ましく使用することができる。
導電性基体の他の例として、金属部材の表面の少なくとも一部範囲に、エッチング等の化学的処理、やすりがけ等の物理的処理、あるいはこれらを組み合わせた処理を施すことにより微細な凸部を形成してなる粗面を有する基体が挙げられる。例えば、電解銅箔の裏面(電析面とは反対側の面)にこのような粗化処理を施すことにより、両面が粗面となったシート状基体を得ることができる。
以下、本発明に係るリチウムイオン二次電池の一好適例として、上記のような鉄酸化物膜を有する電極を負極として用いたリチウムイオン二次電池の構成例につき説明するが、本発明の実施形態をこれに限定する意図ではない。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、上記鉄酸化物膜付電極を負極として備えることによって特徴付けられる。したがって、本発明の目的を実現し得る限り、他の電池構成材料や部材等の内容、材質あるいは組成は特に制限されず、従来のリチウムイオン二次電池と同様のもの等を用いることができる。
例えば、正極としては、Liを可逆的に吸蔵および放出可能な活物質を、結着剤(バインダ)および必要に応じて使用される導電材等とともに正極合材として集電体に付着させた形態のものを好ましく使用し得る。正極集電体としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。上記活物質(正極活物質)としては、一般的なリチウムイオン二次電池の正極に用いられる層状構造の酸化物系活物質、スピネル構造の酸化物系活物質等を好ましく用いることができる。かかる活物質の代表例として、リチウムコバルト系酸化物、リチウムニッケル系酸化物、リチウムマンガン系酸化物等のリチウム遷移金属酸化物が挙げられる。あるいは、オリビン型リン酸鉄リチウム等のような、いわゆるポリアニオン型の正極活物質を用いてもよい。導電材としては、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、グラファイト粉末等のカーボン材料、ニッケル粉末等の導電性金属粉末が例示される。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が例示される。特に限定するものではないが、正極活物質100質量部に対する導電材の使用量は、例えば1〜20質量部(好ましくは5〜15質量部)とすることができる。また、正極活物質100質量部に対するバインダの使用量は、例えば0.5〜10質量部とすることができる。
正極と負極との間に介在される電解質としては、非水溶媒と該溶媒に溶解可能なリチウム塩(支持電解質)とを含む液状電解質が好ましく用いられる。かかる液状電解質にポリマーが添加された固体状(ゲル状)の電解質であってもよい。上記非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等の、一般にリチウムイオン二次電池の電解質に使用し得るものとして知られている非水溶媒から選択される一種または二種以上を用いることができる。
上記支持電解質としては、LiPF,LiBF,LiN(SOCF,LiN(SO,LiCFSO,LiCSO,LiC(SOCF,LiClO等の、リチウムイオン二次電池の電解液において支持電解質として機能し得ることが知られている各種のリチウム塩から選択される一種または二種以上を用いることができる。支持電解質(支持塩)の濃度は特に制限されず、例えば従来のリチウムイオン二次電池で使用される電解質と同様とすることができる。通常は、支持電解質を凡そ0.1mol/L〜5mol/L(例えば凡そ0.8mol/L〜1.5mol/L)程度の濃度で含有する非水電解質を好ましく使用することができる。
上記正極および負極を電解質とともに適当な容器(金属または樹脂製の筐体、ラミネートフィルムからなる袋体等)に収容してリチウムイオン二次電池が構築される。ここに開示されるリチウムイオン二次電池の代表的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。セパレータとしては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるセパレータと同様のものを用いることができ、特に限定されない。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔質シート、不織布等を用いることができる。なお、固体状の電解質を用いたリチウムイオン二次電池では、該電解質がセパレータを兼ねる構成としてもよい。リチウムイオン二次電池の形状(容器の外形)は特に限定されず、例えば、円筒型、角型、コイン型等の形状であり得る。
本発明により提供されるリチウムイオン二次電池の一構成例を図10に示す。このリチウムイオン二次電池10は、正極12および負極14を具備する電極体11が、非水電解液20とともに、該電極体を収容し得る形状の電池ケース15に収容された構成を有する。
電極体11は、長尺シート状の正極集電体122上に正極合材層124を有する正極12と、長尺シート状の負極集電体(例えば電解銅箔)142の粗面上に所定厚さの鉄酸化物膜(活物質膜)144が設けられた構成の負極(鉄酸化物膜付電極)14とを、二枚の長尺シート状セパレータ13とともに捲回することにより形成される。電池ケース15は、有底円筒状のケース本体152と、上記開口部を塞ぐ蓋体154とを備える。蓋体154およびケース本体152はいずれも金属製であって相互に絶縁されており、それぞれ正負極の集電体122,142と電気的に接続されている。すなわち、このリチウムイオン二次電池10では、蓋体154が正極端子、ケース本体152が負極端子を兼ねている。
なお、ここに開示される鉄酸化物膜付電極をリチウムイオン二次電池の正極として用いる場合には、負極活物質として、例えば、グラファイト、Sn合金、Si合金等を用いることができる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
<例1>
[酸化物膜付電極の作製]
厚さ18μmの電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名「3EC−III」)を用意した。該電解銅箔の電析面(電析時における外側面)の凸部の平均間隔Sは10μmであり、表面粗さRzは5.0μmであった。
この電解銅箔の電析面(粗面)に鉄酸化物を堆積させて電極を作製した。すなわち、電子銃(日本電子株式会社製、商品名「102U0」)およびイオンビーム源(ビーコ(Veeco)社製、商品名「Mark II」)を備えた蒸着装置(株式会社シンクロン製、型式「BSC−700」)のチャンバ内に上記電解銅箔をセットし、その粗面(被蒸着面)に90V,0.8Aの条件でイオンビームを5分間照射してクリーニングを行った。
次いで、チャンバ内を1.3×10−5Torr(約1.7×10−3Pa)に減圧し、上記イオンビーム源から被蒸着面に酸素イオンビームを照射しつつ、粒径2mm〜5mmのFe粒子(蒸着源)に電子ビームを照射して蒸発させ、上記電解銅箔の粗面に堆積させて鉄酸化物膜(活物質膜)を形成した。上記酸素イオンビームの照射は、約5SCCMの酸素ガス(O)流量にて、90V,0.8Aの条件で行った。上記電子ビームの照射は、6kV、130mAの条件で行った。成膜速度は約1μm/分とし、成膜時間を調節することにより、上記鉄酸化物膜の厚みTAがそれぞれ0.5μm(サンプルA1)、1.0μm(サンプルA2)、2.0μm(サンプルA3)、5.0μm(サンプルA4)である4種類の鉄酸化物膜付電極を作製した。
なお、上記鉄酸化物膜の厚みTAは、鉄酸化物膜の形成前にレーザ顕微鏡を用いて被蒸着面の表面積を測定し、この表面積、蒸着前後における電解銅箔の質量変化、および鉄酸化物膜の密度から算出した。
[性能評価]
各電極サンプルを直径約16mmの円形に打ち抜いた試験用電極(作用極)と、対極としての金属リチウム(直径19mm、厚さ0.15mmの金属Li箔を使用した。)と、セパレータ(直径22mm、厚さ0.02mmの多孔質ポリオレフィンシートを使用した。)と、電解液とを、ステンレス製容器に組み込んで、直径20mm、厚さ3.2mm(2032型)の図4に示すコインセル50(充放電性能評価用のハーフセル)を構築した。図4中、符号51は作用極(試験用電極)を、符号52は対極を、符号53は電解液の含浸したセパレータを、符号54はガスケットを、符号55は容器(対極端子)を、符号56は蓋(作用極端子)をそれぞれ示す。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との体積比3:3:4の混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを約1モル/Lの濃度で溶解させたものを使用した。
各コインセルに対し、0.1Cの定電流にて極間電圧が0.01V(下限電圧)となるまで試験用電極にLiを吸蔵させる操作(放電)を行い、次いで0.1Cの定電流にて極間電圧が3.0V(上限電圧)となるまでLiを放出させる操作(充電)を行った。この初回充放電に続いて、0.2Cの定電流にて極間電圧0.01V〜3.0Vの間でLiの吸蔵および放出を、初回充放電との合計充放電回数が50回(50サイクル)となるまで交互に行った。そして、50サイクル目のLi吸蔵(放電)容量を初回のLi吸蔵容量で除して容量維持率を求めた。
なお、上記初回のLi吸蔵操作において、サンプルA1〜A4を用いたコインセルの容量(Li吸蔵容量)はいずれも900mAh/g以上であり、Feの理論容量に近い容量が実現された。
[電極多孔率βの算出]
電極サンプルA3(膜厚TA=2.0μm)を直径約16mmの円形に打ち抜いた試験用電極を用いて上記と同様にコインセルを構築し、0.2Cの定電流にて極間電圧が0.01VとなるまでLiを吸蔵させた。次いで、このコインセルをグローブボックス内で分解して上記試験用電極を取り出し、付着した電解液を有機溶剤で洗浄除去した。その後、この電極サンプルA3の具備する活物質膜(鉄酸化物膜がLiを吸蔵した状態にある。)の厚みTrを定圧厚さ測定器により測定し、Tr−TAにより、Li吸蔵に伴う膜厚増加量b1を求めた。
一方、電極サンプルA3の膜厚TAおよび鉄酸化物膜の膨張率αに基づいて、(TA×α)−TAにより、該鉄酸化物膜がLiを吸蔵することにより理論上予測される膜厚増加量b0を算出した。そして、b1/b0によりサンプルA3の電極多孔率βを算出したところ、2.0であった。
本例において使用した電解銅箔の電析面(粗面)の平均凸部間隔Sは10μmであり、上述のようにαは1.9である。したがって、サンプルA3のS/(2αβ)の値は1.3と算出される。また、サンプルA1〜A4の鉄酸化物膜は、成膜時間以外は同じ条件で作製したものであるため、サンプルA1,A2,A4の電極多孔率βもサンプルA3と同程度だと考えられる。したがって、いずれのサンプルについてもS/(2αβ)の値として1.3を用いることができる。
上記容量維持率の測定結果を、各サンプルにおける鉄酸化物膜の厚みTAとともに、表1および図2に示す。
これらの図表に示されるように、鉄酸化物膜の厚みTAがS/(2αβ)よりも小さい(より詳しくは、TAがS/(2αβ)の0.8倍以下の)電極サンプルA1,A2によると、TAがS/(2αβ)よりも大きい電極サンプルA3,A4に比べて明らかに高い容量維持率が実現された。すなわち、電極サンプルA1,A2は、充放電の可逆性が高く、かつ、充放電を繰り返してもその高い可逆性がよりよく維持されることが確認された。
<例2>
以下の実験は、粉末状の鉄酸化物に代えて鉄酸化物膜を用いることの利点、および、該鉄酸化物膜を多数の微細な凸部を有する粗面上に設けることの利点を示すものである、
すなわち、例1と同じ電解銅箔を使用し、ただし被蒸着面を例1とは反対側の平滑面(電析時における内側面)とした。その他の点については例1と同様にして、銅箔の平滑面に厚さ約2μmの鉄酸化物膜(活物質膜)を有する電極(サンプルB1)を作製した。
また、市販のFe粉末材料(高純度化学社製、平均粒径1μm)と、導電材としてのアセチレンブラックとを、これら材料の質量比が85:15となるように混合した。この混合物を銅メッシュ基材上にプレス成形して、直径約16mm、厚み(基材を含む)約0.5mmのペレット状電極(サンプルB2)を作製した。
[性能評価]
サンプルA3を直径約16mmの円形に打ち抜いた試験用電極(上記鉄酸化物膜約12mgを含む。)、サンプルB1を直径16mmの円形に打ち抜いた試験用電極(上記鉄酸化物膜約2mgを含む。)、サンプルB2のペレット状電極(上記Fe粉末材料約15mgを含む。)を用いて、上記と同様にコインセルを構築した。これらのコインセルに対し、0.1Cの定電流にて極間電圧が0.01V(下限電圧)となるまで試験用電極にLiを吸蔵させる操作(放電)を行い、次いで0.1Cの定電流にて極間電圧が3.0V(上限電圧)となるまでLiを放出させる操作(充電)を行った。この初回充放電におけるLi吸蔵容量とLi放出容量との比から初期充放電効率を算出した。その結果を表2に示す。また、各例に係る初回の充放電曲線を図11〜13に示す。
サンプルA3およびサンプルB2を用いたコインセルについては、上記初回充放電に続いてさらに、0.2Cの定電流にて極間電圧0.01V〜3.0Vの間でLiの吸蔵および放出を、初回充放電との合計充放電回数が50回(50サイクル)となるまで交互に行った。そして、各サイクルにおけるLi吸蔵(放電)容量を初回のLi吸蔵容量で除して容量維持率を求めた。得られた結果を図14および表3に示す。
図13および表2に示されるように、Fe粉末を用いた電極サンプルB2は、初回のLi吸蔵容量においてほぼFeの理論容量(1008mAh/g)に相当する容量が得られたものの、従来の鉄酸化物系電極の一般的な傾向と同様、不可逆容量が非常に大きいものであった。また、3Vで充電をカットした際の電圧低下幅(すなわち過電圧分)が大きく(図13)、電池反応の迅速性が不足気味であることがわかる。さらに、この電極サンプルB2は、図14に示されるように、充放電の繰り返しに伴って容量が急激に低下し、その容量維持率は10サイクル以前に40%未満まで低下した。
電極サンプルB1では、図12および表2に示されるように、初回充放電における容量自体は低かったが、初回の充放電効率は電極サンプルB2に比べて大幅に改善された。この結果には、鉄酸化物膜の薄膜化と、薄膜形成時における酸素イオンビーム照射が寄与しているものと推察される。
電極サンプルA3では、図12および表2に示されるように、初回のLi吸蔵容量において、サンプルB2と同様に、ほぼFeの理論容量に相当する容量が得られた。しかも、初回充放電における効率は90%以上と、サンプルB2に比べて著しく高い充放電効率が実現された。また、充電カット時の電圧低下幅もサンプルB2に比べて明らかに小さく(図11)、電池反応の迅速性に優れることが示唆された。そして、図14に示されるように、電極サンプルA3では、充放電の繰り返しに対する容量低下がサンプルB2に比べて大幅に改善されていた。より具体的には、10サイクル後の容量維持率が80%以上、50サイクル後においても70%以上であった。
[表面形状の観察]
電極サンプルA3につき、活物質膜が設けられた側の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。得られたSEM像を図6および図7(図6よりも高倍率の像)に示す。これらのSEM像から判るように、上記電極では電解銅箔の電析面の表面形状に沿って鉄酸化物膜が形成されており、これにより上記活物質側表面は電析面の表面形状を概ね反映した凹凸形状となっている。
電極サンプルB1の表面(活物質膜が設けられた側)をSEMで観察して得られた像を図8および図9(図8よりも高倍率の像)に示す。このサンプルB1では、被蒸着面の形状が平滑であることから、電極表面にサンプルA3のような凹凸形状は形成されていないことがわかる。
<X線回折データ>
サンプルA3およびサンプルB1の備える鉄酸化物膜のXRD測定結果を図10に示す。図10の最上段はサンプルA3、上から二段目はサンプルB1のXRDスペクトルである。図10の三段目には、市販のFe粉末(α−Fe(ヘマタイト)構造)のXRD測定結果を併せて示している。図10の下部には、FeおよびCuのX線回折パターン(JCPDSカード)を示している。
図10からわかるように、サンプルB1に比べてサンプルA3では、α−Feに帰属される回折ピークがより多く認められる。この結果から、電解銅箔の粗面上に形成されたサンプルA3の鉄酸化物膜は、平滑面上に形成されたサンプルB1の鉄酸化物膜に比べてα−Fe結晶がよりよく成長していることが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
ここに開示される技術により提供されるリチウムイオン二次電池は、上記のように優れた性能(充放電の可逆性等)を示すことから、各種用途向けのリチウムイオン二次電池として利用可能である。例えば、自動車等の車両に搭載されるモータ(電動機)用電源として好適に使用され得る。かかるリチウムイオン二次電池は、それらの複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態で使用されてもよい。したがって、ここに開示される技術によると、図5に模式的に示すように、かかるリチウムイオン二次電池(組電池の形態であり得る。)10を電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)1が提供され得る。
1 自動車
10 リチウムイオン二次電池
11 電極体
12 正極
13 セパレータ
14 負極(鉄酸化物膜付電極)
142 負極集電体(導電性基体)
144 鉄酸化物膜(活物質膜)
15 電池ケース
30 鉄酸化物膜付電極
32 鉄酸化物膜(活物質膜)
34 導電性基体
36 粗面
36a 凸部

Claims (6)

  1. 正極と負極と非水電解質とを備えたリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極および前記負極のうち一方は、リチウムを可逆的に吸蔵および放出可能な鉄酸化物膜が導電性基体に保持された構成の鉄酸化物膜付電極であり、
    ここで、前記基体の表面のうち少なくとも一部は多数の微細な凸部を有する粗面であり、該粗面上に前記鉄酸化物膜が設けられており、
    前記凸部の平均間隔をS(μm)とし、1モルのFeがリチウムと反応して3モルのLiOと2モルのFeに変換される場合における体積膨張率をαとし、前記鉄酸化物膜付電極のリチウムイオンに対する電位が0.01Vになるまで前記鉄酸化物膜にリチウムを吸蔵させたときの膜厚増加量の実測値b1を理論上予測される膜厚増加量b0で除して求められる電極多孔率をβとしたとき、前記S,αおよびβと前記鉄酸化物膜の厚みTA(μm)との関係が次式:TA<S/(2αβ)を満たす、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記鉄酸化物膜は、α−Feの結晶を含む、請求項1記載の電池。
  3. 前記鉄酸化物膜の厚みTAが0.1μm〜1.0μmである、請求項1または2に記載の電池。
  4. 前記基体が電解銅箔であり、該銅箔の少なくとも電析面に前記鉄酸化物膜が設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
  5. 前記鉄酸化物膜付電極を負極として備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の電池。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池を備える、車両。
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