JP5387338B2 - 分岐化芳香族ポリカーボネート - Google Patents
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α=p2ρ/[1−p2(1−ρ)] 式(1)
(但し、式(1)中、αは分子終端が分岐単位である確立を表し、pはn個の連鎖が生成する確率を表し、ρは分岐単位数を表す。)
[分岐化芳香族ポリカーボネートの製造方法]
本発明の分岐化芳香族ポリカーボネートは、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用い、エステル交換触媒の存在下、溶融重縮合させることにより得ることができる。
[炭酸ジエステル]
本発明で使用される炭酸ジエステルは下記の一般式(4)で表される。
上記一般式(4)で表される炭酸ジエステルは、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネート、及びジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは単独、あるいは2種以上を混合してもよい。
[芳香族ジヒドロキシ化合物]
本発明で用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、通常、下記式(5)で表される。
上記式(5)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」ともいう)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が例示されるが、特に好ましくは、ビスフェノールAが挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物
は、単独でも2種以上の混合物でもよい。
本発明で、エステル交換触媒としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が単独で使用されことが特に好ましい。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
また、最終横型重合槽の滞留時間は50〜140分の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、60〜130℃の範囲である。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよいが、連続式の方が特に好ましい。
本発明の分岐化芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量16,000以上であることが必要であり、好ましくは、20,000以上であり、さらに好ましくは、21,000以上である。粘度平均分子量が16,000未満のものは、耐衝撃性等の機械的強度が低下するので好ましくない。
また、分岐化芳香族ポリカーボネートの末端OH基量は、製品の熱安定性、耐加水分解性、色相等に大きな影響を及ぼし、実用的な物性を維持せるためには、分岐化芳香族ポリカーボネートの重量に対して、100〜1,500ppmの範囲内であることが必要であり、好ましくは、150〜1,200ppmの範囲内であり、さらに好ましくは、200〜1,000ppmの範囲内である。
α=p2ρ/[1−p2(1−ρ)] 式(1)
(但し、式(1)中、αは分子終端が分岐単位である確立を表し、pはn個の連鎖が生成する確率を表し、ρは分岐単位数を表す。)
上記式(1)は、P.J.フローリーのゲル化理論に記載されている関係式として知られている(例えば、丸善株式会社 高分子化学(下)p325参照)
αがこの範囲にあると、溶融特性が改良され、さらに色相も向上した分岐化芳香族ポリカーボネートが得られる。
ここで、αが0.3を越えるとP.J.フローリーのゲル化理論にもあるようにゲル化することは知られている。ゲル化が起きると、シートやボトルなどの成形表面にフィッシュアイが多量に析出したり、流動性が悪化し成形性が低下する。また、αが0.03未満であると、目的とする溶融特性が得られず、シートやボトルなどの押出成形ができなくなる。
〔η〕=1.23×10-4×(Mv)0.83
p=1−1/Mn 式(6)
化合物を用いたポリカーボネートの溶融法(エステル交換法)の製造方法におい
て、重合反応系中で転位反応を併発することにより生成することが従来より知ら
れている(例えばEncyclopedia of Polymer Science and Technology,vol.10,p.
723(1969)。一方、さらに特定の反応条件で溶融法によりポリカーボネートを製
造した場合に式(9)及び/又は式(10)の構造単位が生ずることが見出され
た。式(9)、(10)の構造単位の生成過程は必ずしも明確ではないが、以下
のような経路を経て生成しているものと推定している。
本発明の分岐化芳香族ポリカーボネートは、JIS K 7210に準拠し、下記式(16)で表されるフローレイト比(MVR−R)が15〜45の範囲であることが好まし
く、さらに好ましくは、MVR−Rが18〜40の範囲である。MVR−Rが上記範囲より小さいと、溶融張力が得られず、目標とする溶融特性の優れた分岐化芳香族ポリカーボネートが製造できない。また、上記範囲より大きいと、溶融張力が大きすぎて、流動性が劣り、目標とする溶融特性の優れた分岐化芳香族ポリカーボネートが製造できない。
MVR−R=MVR(21.6)/MVR(2.16) 式(16)
以下の実施例及び比較例で、得られた芳香族ポリカーボネートの分析は、以下の測定法により行った。
(1)粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ粘度計を用いて、芳香族ポリカーボネート(試料)の塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より求めた。
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp)
〔η〕=1.23×10-4×(Mv)0.83
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としては、ポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる。)
サンプル0.02gを0.4mlの重クロロホルムに溶解し、30℃で1H−NMR(日本電子社製JNM−Al400)を用いて末端水酸基量(μeq/g)および末端フェニル基数(μeq/g)を測定した。両者を足し合わせることにより、分子総末端数を求め、さらに、次式のように、数平均分子量(Mn)を算出する。
末端水酸基量(μeq/g)+末端フェニル基数(μeq/g)=分子総末端数(μeq/g)
Mn=2×106/(分子総末端数)
P.J.フローリーのゲル化の理論に記載されている関係式(下記式(1))において、pは、p=1−1/Mnで表される。
α=p2ρ/[1−p2(1−ρ)] 式(1)
(但し、式(1)中、αは分子終端が分岐単位である確立を表し、pはn個の連鎖が生成する確率を表し、ρは分岐単位数を表す。)
分岐化度Aは、上記式(5)で表される構造単位1モルに対する上記式(7)〜(10)で表される分岐構造単位の合計モル数の比(mol%)で表される。具体的には、各々の構造単位の含有量は下記のようにして、求められる。
芳香族ポリカーボネート(試料)1gを、塩化メチレン100mlに溶解した後、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液18ml及びメタノール80mlを加え、さらに純水25mlを添加した後、室温で2時間攪拌して完全に加水分解した。その後、1規定塩酸を加えて中和し、塩化メチレン層を分離して加水分解物を得た。
加水分解物0.05gをアセトニトリル10mlに溶解し、逆相の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用し測定を行った。逆相液体クロマトグラフィーは、溶離液としてアセトニトリルと10mM酢酸アンモニウム水溶液とからなる混合溶媒を用い、アセトニトリル/10mM酢酸アンモニウム水溶液比率を20/80からスタートし80/20までグラジュエントする条件下、カラム温度40℃で測定を行い、検出は波長280nmのUV検出器((株)島津製作所製、SPD−6A)を用いた。
P.J.フローリーのゲル化の理論に記載されている関係式(高分子化学(下)
p325:より、前記p,ρよを用いて、式(1)で算出される。
α=p2ρ/[1−p2(1−ρ)] 式(1)
(但し、式(1)中、αは分子終端が分岐単位である確立を表し、pはn個の連鎖が生成する確率を表し、ρは分岐単位数を表す。)
JIS K 7210に準拠し、タカラ工業(株)製メルトインデクサーを用いて、130℃で、5時間乾燥した芳香族ポリカーボネート(試料)について、280℃、荷重21.6kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(21.6)と、同様に280℃、荷重2.16kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(2.16)とを用い、下式で求めた。
MVR−R=MVR(21.6)/MVR(2.16)
130℃で、5時間乾燥した芳香族ポリカーボネート(試料)から射出成形機を用い以下の条件で成形品を得た。
360℃で射出した100mm×100mm×3mm厚のプレスシートについて、カラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)で、色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式により黄色度の指標であるYI値を計算した。
YI=(100/Y)×(1.28×X−1.06×Z)
このYI値が大きいほど着色していることを示す。
キャピラリーレオメーター(東洋精機(株)製)を用いて、130℃で、5時間乾燥した試料について、250℃で、押出速度=10mm/min、引取速度=20mm/minで測定した。
ジフェニルカーボネートとビスフェノールAとを、窒素ガス雰囲気下、一定のモル比(DPC/BPA=1.040)に混合調製した溶融液を、88.7kg/時の流量で、原料導入管を介して、220℃、1.33×104Paに制御した容量100Lの第1竪型撹拌重合槽内に連続供給し、平均滞留時間が60分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。また、上記混合物の供給を開始すると同時に、触媒として、炭酸セシウム水溶液をビスフェノールA1モルに対し、0.6μモル(金属量として、ビスフェノールA1モルに対し、1.2μモル)の割合で連続供給した。
粘度平均分子量22,000のポリカーボネートが得られ、Mv/Mn、分岐化度、p、色相(YI)、溶融張力を測定した。結果を表−1に示す。
参考例1において、表−1に記載の条件で製造した以外は参考例1と同様の方法で重合を行い、芳香族ポリカーボネートを製造した。結果を表−1に示した。
Claims (4)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換触媒の存在下、エステル交換反応させて得られる、下記式(1)で算出されるMv(粘度平均分子量)が23,500以上である、芳香族ポリカーボネートの製造方法であって、 少なくとも下記(A)〜(C)を満たすことを特徴とする、芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(A)エステル交換触媒は、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を含み、前記アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の量は芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属量として2.2〜4.8μモルの範囲である。
(B)エステル交換反応は、減圧下、140〜260℃の温度で行う反応を第一段目として、二段階以上の多段工程で実施する。
(C)少なくとも最終工程が横型重合槽であり、且つ前記横型重合槽の反応温度が282〜300℃である。
ηsp/C=〔η〕×(1+0.28ηsp) 式(1)
ここで、〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
(式中、ηspはポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液について20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としては、ポリカーボネート樹脂の濃度0.6g/dlのものを用いる。) - 前記(B)が下記であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(B)エステル交換反応は、減圧下、140〜260℃の温度で行う反応を第一段目として、二段階以上の多段工程で実施し、且つ次第に反応系の反応温度を高めて実施する。 - 前記製造方法はさらに(D)を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
(D)前記横型重合槽の滞留時間が50〜140分である。 - エステル交換反応を四段で実施することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
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