以下、本発明の光導波路、光導波路構造体、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
[光導波路および光導波路構造体]
まず、本発明の光導波路および光導波路構造体の実施形態について説明する。
図1は、本発明の光導波路構造体の実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2および図3は、図1のX−X線断面図である。なお、以下の説明では、図1〜3中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1〜3は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
(光導波路および光導波路構造体の構成)
図1に示す光導波路構造体1は、光導波路(本発明の光導波路)6と、その下方に積層された支持フィルム(第1の支持層)2と、光導波路6の上方に積層されたカバーフィルム(第2の支持層)7とを有する帯状の部材である。
このような光導波路構造体1は、光導波路6により、一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線部材として機能する。
また、光導波路構造体1から支持フィルム2を剥離することにより、支持フィルム2を除く光導波路6およびカバーフィルム7を、電気配線パターンが形成された回路基板等に貼り付けることができる。これにより、回路基板と光導波路6とを有する光電気混載基板を簡単に製造することができる。
以下、光導波路構造体1の各部について詳述する。
光導波路6は、図1中の下側からクラッド層(第1のクラッド層)61、コア層63およびクラッド層(第2のクラッド層)62をこの順で積層してなるものであり、コア層63には、長尺状のコア部64と、このコア部64に隣接する側面クラッド部65とが形成されている。図1に示す光導波路6には、並列する2つのコア部64と並列する3つの側面クラッド部65とが交互に設けられている。これにより、各コア部64は、側面クラッド部65および各クラッド層61、62で囲まれた状態となる。なお、図1に示す各コア部64には密なドットを付し、各側面クラッド部65には疎なドットを付している。
図1に示す光導波路6では、一方の端部のコア部64に入射された光を、コア部64とクラッド部(各クラッド層61、62および各側面クラッド部65)との界面で全反射させ、他方側に伝搬させることにより、他方の端部のコア部64から取り出すことができる。
コア部64の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよいが、その差は、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部64の屈折率をA”、クラッド部の屈折率をB”としたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A”/B”−1|×100
また、図1に示す構成では、コア部64は、平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等してもよく、その形状は任意である。
また、図1に示すコア部64は、その横断面形状が正方形または矩形(長方形)のような四角形をなしている。
コア部64の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
コア層63の構成材料は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
一方、クラッド層61および62は、それぞれ、コア層63の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、各コア部64は、その外周をクラッド部に囲まれた導光路として機能する。
クラッド層61、62の平均厚さは、コア層63の平均厚さ(各コア部64の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層61、62の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路6が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
また、クラッド層61および62の構成材料としては、例えば、前述したコア層63の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
また、コア層63の構成材料およびクラッド層61、62の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア部64とクラッド層61、62との境界において光を確実に全反射させるため、コア部64の構成材料の屈折率が十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路6の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部64からクラッド層61、62に光が漏れ出るのを抑制することができる。
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層63の構成材料とクラッド層61、62の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
支持フィルム(第1の支持層)2は、光導波路6の下面を支持して、保護・補強するものである。これにより、光導波路構造体1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
このような支持フィルム2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、支持フィルム2として金属箔が好ましく用いられる。
また、支持フィルム2の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路6を確実に支持するとともに、光導波路構造体1の適度な柔軟性が確保される。
なお、支持フィルム2と光導波路6との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路構造体1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
一方、光導波路6の上面には、カバーフィルム(第2の支持層)7が積層されている。
カバーフィルム7は、光導波路6を保護するとともに、光導波路6を上方から支持するものである。これにより、汚れや傷などから光導波路6が保護され、光導波路構造体1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
このようなカバーフィルム7の構成材料としては、支持フィルム2の構成材料と同様であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、カバーフィルム7として金属箔が好ましく用いられる。また、光導波路6の途中にミラーを形成した場合には、カバーフィルム7を光が透過することになるので、カバーフィルム7の構成材料は実質的に透明であるのが好ましい。
また、カバーフィルム7の平均厚さは、特に限定されないが、3〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。カバーフィルム7の厚さを前記範囲内とすることにより、カバーフィルム7は光通信において十分な光透過率を有するとともに、光導波路6を確実に保護するために十分な剛性を有するものとなる。
なお、カバーフィルム7と光導波路6との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。このうち、接着剤としては前述したようなものを用いることができる。
以上説明したような支持フィルム2、光導波路6およびカバーフィルム7を有する光導波路構造体1は、全体が十分な柔軟性(可撓性)を有しており、折れ曲がることなく湾曲し得るものとなる。
ところで、光導波路構造体1は、支持フィルム2側(クラッド層61)側が内側になるように湾曲させることも、反対に、カバーフィルム7側(クラッド層62)側が内側になるように湾曲されることも可能であるが、これらの曲げ易さが異なることを特徴とする。
具体的には、光導波路構造体1は、支持フィルム2側およびカバーフィルム7側のうちの一方が内側になるように曲げたときの曲げこわさ(強さ)と、他方が内側になるように曲げたときの曲げこわさとが異なっている。そして、支持フィルム2側が内側になるように光導波路構造体1を曲げたときの曲げこわさをA’とし、カバーフィルム7側が内側になるように光導波路構造体1を曲げたときの曲げこわさをB’としたとき、A’>B’であることを特徴とする。
すなわち、このような光導波路構造体1は、曲げこわさがB’となるような曲げ方向には、相対的に容易に曲げることができるため、優れた屈曲性を有する。一方、この光導波路構造体1は、曲げこわさがA’となるような曲げ方向には、相対的な曲げ難いため、比較的高い剛性を有する。
したがって、光導波路構造体1は、曲げ易い方向を限定することで、一方向への屈曲性には優れているとともに、反対方向への曲げ易さを犠牲にしたことで、折れ曲がりに対する耐久性を保持している。これにより、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とを高度に両立し得るものとなる。このため、光導波路構造体1は、小さな曲率半径での屈曲を可能にし、実装スペースの効率的な利用を可能にする。また、屈曲と伸張とを繰り返したとしても、光導波路構造体1は、その断線を確実に防止することができる。
さらに、光導波路構造体1がある程度の剛性を有することにより、光導波路構造体1と発光素子や受光素子、光ファイバー、光コネクタ等の各種光部品とを接続する場合には、接続作業の作業性が向上する。例えば、光導波路構造体1を光コネクタに挿入する場合には、挿入作業に伴って光導波路構造体1が曲がってしまったり、折れてしまうのを確実に防止することができるため、作業効率の向上が図られる。
なお、本実施形態では、クラッド層61が第1のクラッド層に相当し、クラッド層62が第2のクラッド層に相当する。また、支持フィルム2が第1の支持層に相当し、カバーフィルム7が第2の支持層に相当する。
このような光導波路構造体1では、(I)クラッド層61の形成条件とクラッド層62の形成条件との間、および、(II)支持フィルム2の形成条件とカバーフィルム7の形成条件との間の少なくとも一方が異なっている。
したがって、前述したような曲げ方向による曲げこわさの違いは、主に、前述した形成条件の相違点(I)および相違点(II)の少なくとも一方を有していることによって発現したものであると言える。以下、相違点(I)および相違点(II)について詳述する。
(I)
相違点(I)では、光導波路構造体1が有する光導波路6のうち、クラッド層61の形成条件とクラッド層62の形成条件とが異なる。このような相違点があると、例えば光導波路構造体1を曲げたときにクラッド層61が内側になるとした場合、クラッド層61は曲げ操作に伴って圧縮されるように変形し、一方、クラッド層62は、曲げ操作に伴って引っ張られるように変形する。したがって、上記の場合、このような変形の種類(圧縮変形または引っ張り変形)が異なることを踏まえて、クラッド層61およびクラッド層62の形成条件を適宜選択すればよい。
この形成条件としては、クラッド層61およびクラッド層62の各構成材料、各平均厚さ、各層に対する加工の有無等が挙げられる。このうち、構成材料および平均厚さのうちの少なくとも一方を異ならせることで、光導波路構造体1に対してより容易かつ確実に前述した効果を発揮させることができる。
本実施形態では、曲げこわさA’が曲げこわさB’より大きくなるように、相違点(I)が設定されている。
以下、相違点(I)について、(I−a)クラッド層61の構成材料とクラッド層62の構成材料とが異なる場合と、(I−b)クラッド層61の平均厚さとクラッド層62の平均厚さとが異なる場合とに分けて説明する。
(I−a)クラッド層61の構成材料とクラッド層62の構成材料とが異なる場合
クラッド層61の厚さとクラッド層62の厚さとがほぼ同じである場合には、クラッド層61の構成材料は、クラッド層62の構成材料より曲げ弾性率が大きい材料であるのが好ましい。これにより、クラッド層61は、クラッド層62に比べて撓み難くなり、柔軟性が低くなる。その結果、クラッド層61(支持フィルム2)が内側になるように光導波路構造体1を曲げたとしても、内側に位置するクラッド層61は、それに加わる圧縮力を十分に吸収することができず、クラッド層62に比べてあまり大きく変形することができない。これは、一般的な樹脂材料では、一定の力を加えたとき、圧縮に伴う変形量が、引っ張りに伴う変形量比べて小さいからである。このため、光導波路構造体1は、クラッド層61が内側になるように曲げたときには、クラッド層61の柔軟性がクラッド層62に比べて相対的に低いことから、圧縮に伴う変形量も比較的小さくなり、この方向には容易に曲げることができなくなる。
これに対し、クラッド層62について、その構成材料の曲げ弾性率が、クラッド層61の構成材料の曲げ弾性率より小さくなるようにした結果、クラッド層61に比べて撓み易くなり、柔軟性が高くなる。したがって、前述した場合とは反対方向、すなわち、クラッド層62(カバーフィルム7)が内側になるように光導波路構造体1を曲げた場合には、外側に位置するクラッド層61は、クラッド層62の柔軟性がクラッド層61に比べて相対的に高いことから、圧縮されたとしてもその変形量は比較的大きくなる。その結果、光導波路構造体1は、この方向には容易に曲げることができる。
また、外側に位置するクラッド層61は、引っ張られることになるが、一般的な樹脂材料では、前述したように、圧縮された場合に比べて引っ張られた場合には比較的容易に変形することができるため、結果的に光導波路構造体1の曲がりが阻害されるのを防止することができる。
その一方、クラッド層61は、光導波路構造体1の比較的高い剛性、耐折れ曲がり性を確保することとなり、その結果、光導波路構造体1は、曲げ操作を繰り返したとしても、十分な耐久性を有するものとなる。
以上のようにして光導波路構造体1は、クラッド層62が内側になるような方向には容易に曲げ易いものとなる。そして、クラッド層61により、光導波路構造体1は、高い剛性および高い耐折れ曲がり性を有するものとなり、十分な耐久性を有するものとなる。すなわち、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とを高度に両立し得るものとなる。
なお、各クラッド層61、62の構成材料の曲げ弾性率は、構成材料の種類が異なる場合はもちろん、分子量、合成条件、成膜条件等によっても異なる。例えば、樹脂材料の種類が同じであっても、分子量が大きいほど、曲げ弾性率が大きくなる傾向がある。したがって、この場合、クラッド層61の構成材料の曲げ弾性率が、クラッド層62の構成材料の曲げ弾性率よりも大きくなるように、樹脂材料の分子量を調整すればよい。
また、曲げ弾性率の測定方法として、JIS K 7171に規定の方法(プラスチック−曲げ特性の求め方)を用いるのが好ましい。これにより、高い精度で曲げ弾性率を測定することができる。
この方法で各曲げ弾性率を測定した場合、クラッド層61の構成材料の曲げ弾性率は、クラッド層62の構成材料の曲げ弾性率を1としたとき、1.01〜5であるのが好ましく、1.05〜4であるのがより好ましく、1.1〜3であるのがさらに好ましい。各クラッド層61、62間の構成材料の曲げ弾性率にこのような関係があれば、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とをとりわけ高度に両立し得るものとなる。
また、クラッド層62の構成材料の曲げ弾性率は、上述した方法で測定した場合、50MPa〜500GPa程度であるのが好ましく、100MPa〜300GPa程度であるのがより好ましく、200MPa〜200GPa程度であるのがさらに好ましい。
(I−b)クラッド層61の平均厚さとクラッド層62の平均厚さとが異なる場合
クラッド層61の構成材料とクラッド層62の構成材料とが同じである場合には、クラッド層61の平均厚さは、クラッド層62の平均厚さより厚いことが好ましい。これにより、クラッド層61は、クラッド層62に比べて撓み難くなり、柔軟性が低くなる。その結果、クラッド層61(支持フィルム2)が内側になるように光導波路構造体1を曲げたとしても、内側に位置するクラッド層61は、それに加わる圧縮力を十分に吸収することができず、クラッド層62に比べてあまり大きく変形することができない。このため、光導波路構造体1は、この方向には容易に曲げることができなくなる。
これに対し、クラッド層62について、その平均厚さが、クラッド層61の平均厚さよる薄くなるようにした結果、クラッド層61に比べて撓み易くなり、柔軟性が高くなる。したがって、前述した場合とは反対方向、すなわち、クラッド層62(カバーフィルム7)が内側になるように光導波路構造体1を曲げた場合には、外側に位置するクラッド層61は、クラッド層62の柔軟性がクラッド層61に比べて相対的に高いことから、圧縮に伴う変形量が比較的大きい。その結果、光導波路構造体1は、この方向には容易に曲げることができる。
以上のようにして光導波路構造体1は、クラッド層62が内側になるような方向には曲げ易いものとなる。そして、クラッド層61により、光導波路構造体1は、高い剛性および高い耐折れ曲がり性を有するものとなり、十分な耐久性を有するものとなる。すなわち、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とを高度に両立し得るものとなる。
なお、クラッド層61の平均厚さは、クラッド層62の平均厚さを1としたとき、1.01〜5であるのが好ましく、1.05〜4であるのがより好ましく、1.1〜3であるのがさらに好ましい。各クラッド層61、62間の平均厚さにこのような関係があれば、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とをとりわけ高度に両立し得るものとなる。
また、上記相違点(I)については、クラッド層61とクラッド層62との間では、構成材料と平均厚さの双方が互いに異なっていてもよく、構成材料および平均厚さの少なくとも一方とそれ以外の形成条件(例えば溝加工の有無等)が互いに異なっていてもよい。すなわち、前者の場合は、クラッド層61の構成材料の曲げ弾性率がクラッド層62の構成材料より大きく、かつ、クラッド層61の平均厚さがクラッド層62の平均厚さより厚い場合である。また、後者の場合には、例えば、クラッド層61の構成材料の曲げ弾性率がクラッド層62の構成材料より大きく、かつ、クラッド層62に溝加工が施されている場合や、クラッド層61の平均厚さがクラッド層62の平均厚さより厚く、かつ、クラッド層62に溝加工が施されている場合が挙げられる。なお、光導波路構造体1全体の曲げこわさが前記大小関係(A’>B’)を満たせば、上記場合に限られない。
(II)
相違点(II)では、光導波路構造体1のうち、支持フィルム2の形成条件とカバーフィルム7の形成条件とが異なる。このような相違点があると、例えば光導波路構造体1を曲げたときに支持フィルム2が内側になるとした場合、支持フィルム2は曲げ操作に伴って圧縮されるように変形し、一方、カバーフィルム7は、曲げ操作に伴って引っ張られるように変形する。したがって、上記の場合、このような変形の種類が異なることを踏まえて、支持フィルム2およびカバーフィルム7の形成条件を適宜選択すればよい。
この形成条件としては、支持フィルム2およびカバーフィルム7の各構成材料、各平均厚さ、各層に対する加工の有無等が挙げられる。このうち、構成材料および平均厚さのうちの少なくとも一方を異ならせることで、光導波路構造体1に対して容易かつ確実に前述した効果を発揮させることができる。
本実施形態では、曲げこわさA’が曲げこわさB’より大きくなるように、相違点(II)が設定されている。
以下、相違点(II)について、(II−a)支持フィルム2の構成材料とカバーフィルム7の構成材料とが異なる場合と、(II−b)支持フィルム2の平均厚さとカバーフィルム7の平均厚さとが異なる場合とに分けて説明する。
(II−a)支持フィルム2の構成材料とカバーフィルム7の構成材料とが異なる場合
支持フィルム2の厚さとカバーフィルム7の厚さとがほぼ同じである場合には、支持フィルム2の構成材料は、カバーフィルム7の構成材料より曲げ弾性率が大きい材料であるのが好ましい。これにより、支持フィルム2は、カバーフィルム7に比べて撓み難くなり、柔軟性が低くなる。その結果、支持フィルム2が内側になるように光導波路構造体1を曲げたとしても、内側に位置する支持フィルム2は、それに加わる圧縮力を十分に吸収することができず、カバーフィルム7に比べてあまり大きく変形することができない。これは、一般的な樹脂材料では、一定の力を加えたとき、圧縮に伴う変形量が、引っ張りに伴う変形量比べて小さいからである。このため、光導波路構造体1は、支持フィルム2が内側になるように曲げたときには、支持フィルム2の柔軟性がカバーフィルム7に比べて相対的に低いことから、圧縮に伴う変形量も比較的小さくなるため、この方向には容易に曲げることができなくなる。
これに対し、カバーフィルム7について、その構成材料の曲げ弾性率が、支持フィルム2の構成材料の曲げ弾性率より小さくなるようにした結果、支持フィルム2に比べて撓み易くなり、柔軟性が高くなる。したがって、前述した場合とは反対方向、すなわち、カバーフィルム7が内側になるように光導波路構造体1を曲げた場合には、外側に位置する支持フィルム2は、カバーフィルム7の柔軟性が支持フィルム2に比べて相対的に高いことから、圧縮されたとしてもその変形量は比較的大きくなる。その結果、光導波路構造体1は、この方向には容易に曲げることができる。
また、外側に位置する支持フィルム2は、引っ張られることになるが、一般的な樹脂材料では、前述したように、圧縮された場合に比べて引っ張られた場合には比較的容易に変形することができるため、結果的に光導波路構造体1の曲がりが阻害されるのを防止することができる。
その一方、支持フィルム2は、光導波路構造体1の比較的高い剛性、耐折れ曲がり性を確保することとなり、その結果、光導波路構造体1は、曲げ操作を繰り返したとしても、十分な耐久性を有するものとなる。
以上のようにして光導波路構造体1は、カバーフィルム7が内側になるような方向には容易に曲げ易いものとなる。そして、支持フィルム2により、光導波路構造体1は、高い剛性および高い耐折れ曲がり性を有するものとなり、十分な耐久性を有するものとなる。すなわち、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とを高度に両立し得るものとなる。
なお、支持フィルム2やカバーフィルム7の構成材料の曲げ弾性率は、構成材料の種類が異なる場合はもちろん、分子量、合成条件、成膜条件等によっても異なる。例えば、樹脂材料の種類が同じであっても、分子量が大きいほど、曲げ弾性率が大きくなる傾向がある。したがって、支持フィルム2の構成材料の曲げ弾性率が、カバーフィルム7の構成材料の曲げ弾性率よりも大きくなるように、樹脂材料の分子量を調整すればよい。
また、曲げ弾性率の測定方法として、JIS K 7171に規定の方法を用いるのが好ましい。これにより、高い精度で曲げ弾性率を測定することができる。
この方法で各曲げ弾性率を測定した場合、支持フィルム2の構成材料の曲げ弾性率は、カバーフィルム7の構成材料の曲げ弾性率を1としたとき、1.01〜5であるのが好ましく、1.05〜4であるのがより好ましく、1.1〜3であるのがさらに好ましい。支持フィルム2、カバーフィルム7間の構成材料の曲げ弾性率にこのような関係があれば、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とをとりわけ高度に両立し得るものとなる。
また、カバーフィルム7の構成材料の曲げ弾性率は、上述した方法で測定した場合、50MPa〜500GPa程度であるのが好ましく、100MPa〜300GPa程度であるのがより好ましく、200MPa〜200GPa程度であるのがさらに好ましい。
(II−b)支持フィルム2の平均厚さとカバーフィルム7の平均厚さとが異なる場合
支持フィルム2の構成材料とカバーフィルム7の構成材料とが同じである場合には、支持フィルム2の平均厚さは、カバーフィルム7の平均厚さより厚いことが好ましい。これにより、支持フィルム2は、カバーフィルム7に比べて撓み難くなり、柔軟性が低くなる。その結果、支持フィルム2が内側になるように光導波路構造体1を曲げたとしても、内側に位置する支持フィルム2は、それに加わる圧縮力を十分に吸収することができず、カバーフィルム7に比べてあまり大きく変形することができない。このため、光導波路構造体1は、この方向には容易に曲げることができなくなる。
これに対し、カバーフィルム7について、その平均厚さが、支持フィルム2の平均厚さより薄くなるようにした結果、支持フィルム2に比べて撓み易くなり、柔軟性が高くなる。したがって、前述した場合とは反対方向、すなわち、カバーフィルム7が内側になるように光導波路構造体1を曲げた場合には、外側に位置する支持フィルム2は、カバーフィルム7の柔軟性が支持フィルム2に比べて相対的に高いことから、圧縮に伴う変形量が比較的大きい。その結果、光導波路構造体1は、この方向には容易に曲げることができる。
以上のようにして光導波路構造体1は、カバーフィルム7が内側になるような方向には容易に曲げ易いものとなる。そして、支持フィルム2により、光導波路構造体1は、高い剛性および高い耐折れ曲がり性を有するものとなり、十分な耐久性を有するものとなる。すなわち、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とを高度に両立し得るものとなる。
なお、支持フィルム2の平均厚さは、カバーフィルム7の平均厚さを1としたとき、1.01〜5であるのが好ましく、1.05〜4であるのがより好ましく、1.1〜3であるのがさらに好ましい。支持フィルム2、カバーフィルム7間の平均厚さにこのような関係があれば、光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とをとりわけ高度に両立し得るものとなる。
また、上記相違点(II)については、支持フィルム2とカバーフィルム7との間では、構成材料と平均厚さの双方が互いに異なっていてもよく、構成材料および平均厚さの少なくとも一方とそれ以外の形成条件(例えば溝加工の有無等)が互いに異なっていてもよい。すなわち、前者の場合は、支持フィルム2の構成材料の曲げ弾性率がカバーフィルム7の構成材料より大きく、かつ、支持フィルム2の平均厚さがカバーフィルム7の平均厚さより厚い場合である。また、後者の場合には、例えば、支持フィルム2の構成材料の曲げ弾性率がカバーフィルム7の構成材料より大きく、かつ、カバーフィルム7に溝加工が施されている場合や、支持フィルム2の平均厚さがカバーフィルム7の平均厚さより厚く、かつ、カバーフィルム7に溝加工が施されている場合が挙げられる。なお、光導波路構造体1全体の曲げこわさが前記大小関係(A’>B’)を満たせば、上記場合に限られない。
以上、相違点(I)および相違点(II)について説明したが、相違点は、これらの相違点を組み合わせたものであってもよい。組み合わせの例としては、クラッド層61の形成条件とクラッド層62の形成条件が上記のように異なっており、かつ、支持フィルム2の形成条件とカバーフィルム7の形成条件も上記のように異なっているような光導波路構造体1が挙げられる。
ところで、光導波路構造体1は、前述したように、支持フィルム2側が内側になるように光導波路構造体1を曲げたときの曲げこわさをA’とし、カバーフィルム7側が内側になるように光導波路構造体1を曲げたときの曲げこわさをB’としたとき、A’>B’であることを特徴とするが、これらの曲げこわさは、いかなる方法で測定されたものでもよい。
例えば、測定方法として、JIS K 7106に規定の方法(片持ちばりによるプラスチックの曲げこわさ試験方法)を用いるのが好ましい。これにより、高い精度で曲げこわさを測定することができる。
この方法で各曲げこわさを測定した場合、曲げこわさA’は、曲げこわさB’を1としたとき、1.01〜5であるのが好ましく、1.05〜4であるのがより好ましく、1.1〜3であるのがさらに好ましい。このような曲げこわさを有する光導波路構造体1は、屈曲性と断線に対する耐久性とをとりわけ高度に両立し得るものとなる。
また、曲げこわさB’は、上述した方法で測定した場合、20〜500MPa程度であるのが好ましく、50〜300MPa程度であるのがより好ましい。これにより、光導波路構造体1は、とりわけ小さい曲率半径で屈曲させることが可能になるとともに、屈曲と伸張とを繰り返したとしても、十分な耐久性を有するものとなる。
ここで、図2および図3は、図1に示す光導波路構造体1のX−X線断面図である。
光導波路構造体1では、図2(a)に詳しく示すように、その長手方向の両端部66の厚さが、中央部(両端部以外の部分)67の厚さより厚くなっている。これにより、光導波路構造体1では、中央部67における屈曲性が特に高くなるとともに、両端部66における剛性が特に高くなる。その結果、光導波路構造体1は、中央部67において小さい曲率半径で曲げることができ、かつ、両端部66を光コネクタ等の光部品に対して確実に接続することができる。
また、図2(a)に示す光導波路構造体1では、その両端部66におけるコア層63の厚さが、中央部67におけるコア層63の厚さより厚くなっている。これにより、両端部66における開口数が大きくなり、光導波路構造体1を光コネクタに接続する際の結合損を低減させることができる。
一方、図2(a)に示す光導波路構造体1では、その両端部66におけるクラッド層61の厚さとクラッド層62の厚さとの和が、中央部におけるクラッド層61の厚さとクラッド層62の厚さとの和とほぼ同等になっている。
また、図2(a)に示す光導波路構造体1では、その両端部66の厚さが中央部67の厚さより厚くなっているが、両端部66と中央部67との境界付近では、両端部66の厚さと中央部67の厚さとを滑らかに繋ぐように、厚さが徐々に変化している。このように境界付近における厚さの変化を緩やかにしたことにより、光導波路構造体1を屈曲させたときに、それに伴って発生する応力が、両端部66と中央部67との境界付近に集中するのを防止することができる。その結果、光導波路構造体1は、断線に対する優れた耐久性を有するものとなる。
ここで、図2(b)、図2(c)および図3には、光導波路構造体1の他の構成例を示す。なお、図2(b)、図2(c)および図3に示す光導波路構造体1は、それぞれ、両端部66の構造が異なる以外は、図2(a)に示す光導波路構造体1と同様である。
図2(b)に示す光導波路構造体1では、図2(a)と同様、その両端部66の厚さが中央部67の厚さより厚くなっているが、一方、その両端部66におけるクラッド層61の厚さとクラッド層62の厚さとの和が、中央部67におけるクラッド層61の厚さとクラッド層62の厚さとの和より厚くなっている。これにより、両端部66における剛性をより高めることができる。
また、図2(c)に示す光導波路構造体1では、図2(b)と同様、その両端部66の厚さが中央部67の厚さより厚くなっており、かつ、両端部66におけるクラッド層61の厚さとクラッド層62の厚さとの和が、中央部におけるクラッド層61の厚さとクラッド層62の厚さとの和より厚くなっている。一方、コア層63の厚さは、光導波路構造体1全体で一定になっている。
また、図3(a)に示す光導波路構造体1は、図2(a)に示す光導波路構造体1について、その下面を平坦化したものである。
すなわち、図2(a)に示す光導波路構造体1は、前述したように、両端部66におけるコア層63が、上方および下方の双方に向かって突出するように厚くなっており、その結果、両端部66における全体の厚さも、上方および下方の双方に向かって突出するように厚くなっている。
これに対し、図3(a)に示す光導波路構造体1は、両端部66におけるコア層63が、上方のみに向かって突出するように厚くなっており、その結果、両端部66における全体の厚さも、上方のみに向かって突出するように厚くなっている。
また、これと同様、図3(b)に示す光導波路構造体1は、図2(b)に示す光導波路構造体1について、その下面を平坦化したものである。
さらに、図3(c)に示す光導波路構造体1は、図2(c)に示す光導波路構造体1について、その下面を平坦化したものである。
このような図3に示す光導波路構造体1においても、両端部66における剛性が中央部67に比べて高くなっている。また、図3に示す光導波路構造体1は、図2に示すものに比べてその構造が簡単なため、製造が容易であるという利点もある。
以上のような図2および図3に示す光導波路構造体1は、いずれも、中央部67における優れた屈曲性を犠牲にすることなく、両端部66における優れた剛性を有するものとなる。このため、かかる光導波路構造体1は、光コネクタ等の光部品に対して確実に接続し得るものとなる。
また、上記では、光導波路構造体1について、一方向に曲げたときの曲げこわさと、他方向に曲げたときの曲げこわさとが異なっている場合について説明したが、支持フィルム2およびカバーフィルム7を省略した光導波路6について考えると、光導波路構造体1の場合と同様、一方向に曲げたときの曲げこわさと、他方向に曲げたときの曲げこわさとが異なっていることが、本発明の特徴である。
すなわち、このような光導波路6を単独で用いる場合、クラッド層61側が内側になるように光導波路6を曲げたときの曲げこわさをAとし、クラッド層62側が内側になるように光導波路6を曲げたときの曲げこわさをBとしたとき、A>Bであることを特徴とする。
このような光導波路6は、曲げこわさがBとなるような曲げ方向には、相対的に容易に曲げることができるため、優れた屈曲性を有する。一方、この光導波路6は、曲げこわさがAとなるような曲げ方向には、相対的に曲げ難いため、比較的高い剛性を有する。
したがって、光導波路6は、曲げ易い方向を限定することで、一方向への屈曲性には優れているとともに、反対方向への曲げ易さを犠牲にしたことで、折れ曲がりに対する耐久性を保持している。これにより、光導波路6は、屈曲性と断線に対する耐久性とを高度に両立し得るものとなる。
なお、このようにして曲げ方向による曲げこわさの違いを生じさせるためには、相違点(I)として上述したように、クラッド層61の形成条件とクラッド層62の形成条件とを異ならせるようにすればよい。
また、光導波路6の曲げこわさをJIS K 7106に規定の方法で測定した場合、曲げこわさAは、曲げこわさBを1としたとき、1.01〜5であるのが好ましく、1.05〜4であるのがより好ましく、1.1〜3であるのがさらに好ましい。このような曲げこわさを有する光導波路6は、屈曲性と断線に対する耐久性とをとりわけ高度に両立し得るものとなる。
また、曲げこわさBは、上述した方法で測定した場合、20〜500MPa程度であるのが好ましく、50〜300MPa程度であるのがより好ましい。これにより、光導波路6は、とりわけ小さい曲率半径で屈曲させることが可能になるとともに、屈曲と伸張とを繰り返したとしても、十分な耐久性を有するものとなる。
(光導波路および光導波路構造体の製造方法)
次に、光導波路6および光導波路構造体1の製造方法の一例について説明する。
光導波路構造体1は、支持フィルム2と、光導波路6と、カバーフィルム7をそれぞれ用意し、これらを積層することにより製造される。
また、光導波路6は、クラッド層61と、コア層63と、クラッド層62をそれぞれ用意し、これらを積層することにより製造される。
まず、光導波路6の製造方法について説明する。
光導波路6の製造方法では、互いに屈折率の異なる部位が物理的かつ光学的に接するように作製する必要がある。具体的には、コア部64に対して、側面クラッド部65や各クラッド層61、62が隙間を介することなく、確実に密着するように形成する必要がある。
クラッド層61、コア層63およびクラッド層62の具体的な製造方法としては、基材上に、各層の形成用組成物を塗布して液状被膜を形成した後、この基材を換気されたレベルテーブルにおいて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより形成する。
液状被膜を形成するための塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
また、図2(b)および図2(c)に示すように、光導波路6の両端部66におけるクラッド層61およびクラッド層62の厚さを部分的に厚くする場合、この部分にのみ、別途、形成用組成物を塗布または滴下して、厚さを部分的に厚くするようにすればよい。このような方法であれば、塗布または滴下した形成用組成物が、両端部66から中央部67に向かって徐々に濡れ広がることが期待できる。このため、最終的には、両端部66の厚さと中央部67の厚さとの間では、厚さの変化が自ずと緩やかなものとなる。
なお、図2(a)および図2(b)に示すように、コア層63の両端部66における厚さを部分的に厚くする場合にも、上記と同様の方法を用いることができる。
また、図3に示す光導波路6を製造する場合、両端部66の厚さを部分的に厚くするのは上面側のみでよいため、図2に示す光導波路6に比べて製造が容易である。
また、光導波路6の両端部66の厚さを部分的に厚くする場合、換言すれば、中央部67の厚さを部分的に薄くする場合には、上述したような方法の他に、均一な厚さになるように光導波路6を作製した後、中央部67を加熱しつつ、光導波路6を長手方向に沿って引っ張るようにしてもよい。これにより、加熱された中央部67が軟化し、そこに引っ張り応力が加わるため、中央部67が引き延ばされる。その結果、中央部67の厚さを、両端部66の厚さより部分的に薄くすることができる。
なお、この他、成形型を用いる方法によっても、光導波路6の両端部66の厚さを部分的に厚くすることができる。
また、同一層(コア層63)内に、コア部64と、側面クラッド部65を形成し得る方法としては、例えば、フォトブリーチング法、フォトリソグラフィー法、直接露光法、ナノインプリンティング法、モノマーディフュージョン法等が挙げられる。
そして、用意したクラッド層61、コア層63およびクラッド層62を、互いに圧着する。これにより、クラッド層61、コア層63およびクラッド層62が接合、一体化され、光導波路6が得られる。
次に、光導波路構造体1の製造方法について説明する。
光導波路構造体1の製造方法では、支持フィルム2と光導波路6との間、および、光導波路6とカバーフィルム7との間を、それぞれ接着または接合する。
ここで、最終的に得られた光導波路構造体1から支持フィルム2を剥離して、残る部分を回路基板に貼り合わせて光電気混載基板を製造する場合には、支持フィルム2を簡単に剥離し得るよう、支持フィルム2と光導波路6との接着力が調整されるのが好ましい。
以上説明したような光導波路構造体1は、一方の端部に発光素子を接続し、他方の端部に受光素子を接続することにより、光配線として機能する。このような光導波路構造体1は、その優れた柔軟性を利用し、屈曲状態において光信号を確実に授受することが可能になる。
また、断線に対する耐久性に優れていることから、発光素子と受光素子との離間距離が繰り返し変化する場合であっても、光導波路構造体1が屈曲状態と伸張状態とを繰り返すことによって、光配線としての機能が長期にわたって確実に維持されることとなる。
[光電気混載基板および電子機器]
図4は、図1に示す光導波路構造体を用いて光電気混載基板を製造する方法を説明するための図(図1のY−Y線断面図)である。
以上説明したようなカバーフィルム7、光導波路6および支持フィルム2を有する光導波路構造体1は、図4(a)に示すように、光導波路構造体1の支持フィルム2を剥離した後、その剥離面を、図4(b)に示すように、電気配線パターン12を備える回路基板11に貼り付ける。これにより、カバーフィルム7、光導波路6および回路基板11を備える、図4(c)に示す光電気混載基板10が得られる。
図4に示す回路基板11の下面には電気配線パターン12が設けられているが、その他に、図示しない発光素子、受光素子、IC(integrated circuit)等の電子部品や、外部との接続を担う端子等も設けられており、電気配線パターン12は、これらの電子部品間や、電子部品と端子との間を電気的に接続している。これにより、電気配線パターン12を介して各電子部品に電力を供給したり、電子部品間で電気信号の授受を行う。
また、発光素子では、電気信号を光信号に変換して光導波路6に入射し、受光素子では、光導波路6により伝送された光信号を受光して電気信号に変換する。このように電気信号と光信号の相互変換を行うことにより、電気配線を光導波路6で代替することができ、その結果、高速かつ低ノイズでの信号処理を可能にする光電気混載基板10が得られる。
回路基板11には、主に、比較的可撓性の高いフレキシブル基板や、比較的剛性の高いリジッド基板が用いられる。
このうち、フレキシブル基板の具体例としては、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板、アラミド銅張フィルム基板などが挙げられる。
一方、リジッド基板の具体例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板等のガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性基板といった有機系基板や、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス基板などが挙げられる。
このような光電気混載基板10では、前述したように、光導波路6で伝送された光信号を、光デバイスにおいて電気信号に変換し、電気配線に伝達する。これにより、光導波路6の部分で、従来の電気配線よりも高速かつ大容量の情報伝送を可能にする。したがって、例えばCPUやLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間をつなぐバス等に、この光電気混載基板10を適用することにより、システム全体の性能を高めるとともに、電磁ノイズの発生を抑制することができる。
ここで、回路基板にフレキシブル基板を用いた場合には、光電気混載基板10全体も可撓性を有し、伸張状態と、これを屈曲させた屈曲状態とをとり得るものとなる。
図5は、図1に示す光導波路構造体の(a)伸張状態を示す平面図と(b)屈曲状態を示す斜視図である。
図5に示す光電気混載基板10’は、帯状のフレキシブル基板からなる回路基板13と、回路基板13の一方の面側に重ねられた光導波路構造体1と、回路基板13の両端部131の他方の面側に固定されたリジッド基板からなる2つの回路基板14とを有する。
また、回路基板13には、図示しない電気配線パターンに接続された複数の端子132が設けられている。
さらに、光導波路構造体1は、その両端部が、回路基板13の両端部131に固定されている。一方、光導波路構造体1の両端部以外は、回路基板13に固定されていない。
このような光電気混載基板10’は、図5(a)に示すように伸張させた場合、伸張した回路基板13に沿って光導波路構造体1も伸張した状態になる。
一方、図5(b)に示すように、光導波路構造体1をその中央部近傍で折り返すように屈曲させた屈曲状態においても、屈曲した回路基板13に沿って光導波路構造体1も屈曲した状態になる。この際、回路基板13の曲率半径と、光導波路構造体1の曲率半径とは、必然的に異なるはずであるが、前述したように、光導波路構造体1は、その両端部のみが回路基板13に固定されているため、上記のような曲率半径のずれを吸収することができる。
その結果、光電気混載基板10’がこのような伸張状態と屈曲状態とを繰り返す場合においても、光導波路構造体1は、回路基板13の変形に追従するように変形することが可能であるため、光配線としての機能を確実に維持することができる。
なお、かかる光電気混載基板10、10’は、例えば、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等、大容量のデータを高速に伝送する電子機器類に搭載することが考えられる。このように光電気混載基板10、10’(本発明の光電気混載基板)を備えた電子機器(本発明の電子機器)は、内部の情報処理速度に優れた高い性能を発揮するものとなる。
そして、光電気混載基板10’は優れた可撓性を有するため、電子機器内に屈曲状態で実装することにより、実装スペースの効率化を図ることができる。このため、電子機器のさらなる小型化を図ることができる。
また、光電気混載基板10’が、前述したような屈曲状態と伸張状態とをとり得ることから、例えばヒンジ部を有する携帯電話、ゲーム機、PDA、ノート型パソコン等の電子機器のヒンジ部に対して好適に用いることができる。例えば携帯電話において、ヒンジ部を介した2点間を光電気混載基板10’で接続した場合、携帯電話のヒンジ部を閉じたときには、光電気混載基板10’が屈曲状態をとり、ヒンジ部を開いたときには、光電気混載基板10’が伸張状態をとることとなる。
このようにすれば、光電気混載基板10’は、可動部を挟む2点間の電気的接続および光学的接続を、長期にわたって維持することができる。このため、光電気混載基板10’を備えた携帯電話は、その信頼性を高めることができる。
以上、本発明の光導波路、光導波路構造体、光電気混載基板および電子機器の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路、光導波路構造体または光電気混載基板を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。