以下、本発明の実施形態を図1〜図10を用いて説明する。本実施形態では、現像装置1を含む電子写真方式のタンデム型のプリンター100(画像形成装置に相当)を例に挙げ説明する。但し、本実施形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
(画像形成装置の概略)
まず、図1、図2を用いて、実施形態に係るプリンター100の概略を説明する。図1はプリンター100の構成を示す断面図である。図2は、画像形成ユニット40の断面図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンター100は本体内に、給紙部2、搬送部3、画像形成部4、中間転写部5、定着部6等を含む。
例えば、給紙部2は普通紙(OA用紙)、OHPシート、ラベル用紙等の各種シートを収容する。給紙部2には、モーター等の駆動機構(不図示)により回転し、1枚ずつ用紙を搬送部3に送り出す給紙ローラー21が設けられる。そして、搬送部3は給紙部2から供給されたシートを、中間転写部5、定着部6を経て排出トレイ31まで導く。搬送部3には、搬送ローラー対32、ガイド33、搬送されてくるシートを中間転写部5の手前で待機させ、タイミングをあわせて送り出すレジストローラー対34や排出ローラー対35等が設けられる。
形成すべき画像の画像データに基づき、画像形成部4はトナー像を形成する。そして、画像形成部4は4色分の画像形成ユニット40Bk〜40Mと露光装置41を含む。具体的に、画像形成部4はブラックの画像を形成する画像形成ユニット40Bkと、イエローの画像を形成する画像形成ユニット40Yと、シアンの画像を形成する画像形成ユニット40Cと、マゼンタの画像を形成する画像形成ユニット40M、を含む。
ここで、図2に基づき、各画像形成ユニット40Bk〜40Mを詳述する。尚、各画像形成ユニット40Bk〜40Mは形成するトナー像の色が異なるが、いずれも基本的に同様の構成である。そこで、以下では画像形成ユニット40Bkを例に挙げて説明するが、以下の説明では、色を示すBk、Y、C、Mの符号は特に説明する場合を除き省略する。又、共通する部材には、画像形成ユニット40で共通の符号を付して説明する。
画像形成ユニット40は感光体ドラム42を含む。感光体ドラム42は回転可能に支持される。感光体ドラム42はモーター74(図3参照)の駆動力を受け、所定の周速度で回転駆動される。例えば、感光体ドラム42はアルミニウム等の金属を基体とし、OPC(アモルファスシリコン等でもよい)による感光層を外周面に有する。そして、感光体ドラム42は帯電、露光、現像のプロセスを経て周面にトナー像を担持する(像担持体)。尚、本実施形態の感光体ドラム42は正帯電型である(そのため、トナーも正帯電するものを用いる)。
画像形成ユニット40の帯電装置43は帯電ローラー43aを有する。帯電ローラー43aは対応する感光体ドラム42に接し、感光体ドラム42に合わせて回転する。又、帯電ローラー43aには、感光体ドラム42を帯電させるための電圧が印加される。そして、帯電装置43は感光体ドラム42の表面を一定の電位で帯電させる。尚、帯電装置43は、コロナ放電式や、ブラシ等を用いて感光体ドラム42を帯電させるものでも良い。
画像形成ユニット40の下方の露光装置41は各感光体ドラム42に向けてレーザー光を出力する。例えば、露光装置41は内部に、複数の半導体レーザー装置(レーザーダイオード)、ポリゴンミラー、ポリゴンモーター、fθレンズ、ミラー(不図示)等を含む。露光装置41はこれらの光学系の部材を用いて、画像データをカラー色分解した画像信号に基づいた光信号(レーザー光)(破線で図示)を、帯電後の感光体ドラム42に照射する。このように、露光装置41は走査露光を行い、それぞれの感光体ドラム42の周面に画像データに併せた静電潜像を形成する。具体的に、本実施形態の感光体ドラム42は正帯電し、光の照射部分は電位が下がる。感光体ドラム42の電位の低下部分に正帯電トナーが付着する。尚、アレイ状のLEDを用いたもの等、レーザー方式以外の露光装置41を用いてもよい。
画像形成ユニット40の現像装置1は、トナーと磁性体のキャリアを含む現像剤(いわゆる2成分現像剤)を収納する(画像形成ユニット40Bkのものブラック、画像形成ユニット40Yのものイエロー、画像形成ユニット40Cのものはシアン、画像形成ユニット40Mのものはマゼンタの現像剤を収納)。尚、現像装置1はトナーを収容するコンテナー(不図示)と接続され、トナーの消費に伴い、逐次、トナーの補給が現像装置1に対してなされる。
現像装置1は現像ローラー11と、磁気ローラー12と、搬送部材13を含む。そして、現像ローラー11は対応する感光体ドラム42と対向し、互いの軸線が平行とされる。又、現像ローラー11と対応する感光体ドラム42との間に、ギャップ(隙間)が設けられる。ギャップは所定の幅とされる(例えば、1mm以下)。
印刷の際、現像ローラー11の周面にはトナーの薄層が形成され、現像ローラー11は帯電するトナーを担持する。感光体ドラム42に向けてトナーを飛翔させて静電潜像を現像するため、電圧が現像ローラー11に印加される(図4等参照、詳細は後述)。
現像装置1の磁気ローラー12は対応する現像ローラー11と対向し、互いの軸線が平行とされる。現像ローラー11へのトナーの供給やトナーの回収、剥離のため、磁気ローラー12には、電圧が印加される(図4等参照、詳細は後述)。
本実施形態の現像装置1には、搬送部材13が2本設けられる。搬送部材13は磁気ローラー12の下方に設けられる。例えば、搬送部材13は螺旋状の羽根を有し、トナーとキャリアを含む現像剤を攪拌しつつ搬送する。この搬送に伴うキャリアとの摩擦によりトナーが帯電する。2本の搬送部材13は回転方向がそれぞれ異なる。
現像ローラー11のローラー軸11aと磁気ローラー12のローラー軸12aは、支軸部材(不図示)等で固定して支持される。そして、現像ローラー11のローラー軸11aには、軸線方向にのび、断面略矩形の磁石11bが取り付けられる。又、磁気ローラー12のローラー軸12aにも軸線方向にのび、断面略扇形の磁石12bが取り付けられる。又、現像ローラー11と磁気ローラー12は、それぞれ、磁石11b、磁石12bとは非接触に配置され、磁石11b、磁石12bを覆う円筒状のスリーブ11c、12cを有する。スリーブ11c、12cは不図示の駆動機構により回転される。
そして、現像ローラー11の磁石11bと磁気ローラー12の磁石12bとは、現像ローラー11と磁気ローラー12の対向位置で異極が向かい合う。これにより、現像ローラー11と、磁気ローラー12間に、磁性体のキャリアによる磁気ブラシが形成される。磁気ブラシを担持した磁気ローラー12のスリーブ12cの回転や磁気ローラー12への電圧印加等で、トナーが現像ローラー11に供給され、現像ローラー11のスリーブ11c上にトナーの薄層が形成される。又、トナーにより感光体ドラム42の表面に形成された静電潜像を現像した後に現像ローラー11表面に残るトナーを、磁気ブラシは引き剥がして回収する。
画像形成ユニット40の清掃装置44は感光体ドラム42の清掃を行う。各清掃装置44は感光体ドラム42の軸線方向に延び、例えば樹脂で形成されるブレード45や、感光体ドラム42表面を擦って残トナー等を除去する摺擦ローラー46を有する。ブレード45や摺擦ローラー46は感光体ドラム42に当接し、感光体ドラム42上の残留トナー等の汚れを掻き取って除去する。又、清掃装置44の上方に感光体ドラム42に対し光を照射して除電を行う除電装置47(例えば、アレイ状のLED)が設けられる。
図1に戻り説明を続ける。中間転写部5は感光体ドラム42からトナー像の1次転写を受けて、シートに2次転写を行う。中間転写部5は複数の1次転写ローラー51Bk〜51M、中間転写ベルト52、駆動ローラー53、従動ローラー54、55、56、2次転写ローラー57、ベルト清掃装置58等を含む。
中間転写ベルト52は誘電体樹脂等で構成され、1次転写ローラー51Bk〜51M、駆動ローラー53、従動ローラー54〜56に張架される。そして、モーター等の駆動機構(不図示)に接続される駆動ローラー53の回転駆動により、中間転写ベルト52は図1の紙面時計方向に周回する。各1次転写ローラー51Bk〜51Mと対応する感光体ドラム42は無端状の中間転写ベルト52を挟み込む。各1次転写ローラー51Bk〜51Mには、1次転写を行うための電圧が印加される。画像形成ユニット40で形成されたトナー像(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色)はずれなく順次重畳されつつ中間転写ベルト52に1次転写される。
又、駆動ローラー53と2次転写ローラー57は中間転写ベルト52を挟み、2次転写ニップを形成する。2次転写ローラー57には所定の電圧が印加される。そして、各色重ね合わされた中間転写ベルト52上のトナー像はシートに2次転写される。尚、2次転写後の中間転写ベルト52上の残トナー等はベルト清掃装置58で除去されて回収される。
定着部6は2次転写部よりもシート搬送方向下流側に配される。定着部6は発熱源を内蔵する定着ローラー61と、これに圧接される加圧ローラー62とを含む。定着部6は定着ローラー61と加圧ローラー62のニップに、トナー像が転写されたシートを通過させる。定着ニップを通過するとトナー像は加熱・加圧され、その結果、トナー像がシートに定着する。定着後のシートは排出トレイ31に排出され、1枚の用紙の印刷が完了する。
(プリンター100のハードウェア構成)
次に、図3に基づき実施形態に係るプリンター100のハードウェア構成を説明する。図3はプリンター100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係るプリンター100は制御部7を有する。制御部7は装置の各部を制御する。例えば、制御部7は、CPU71、画像処理部72等の処理を行うための回路、素子を含む。又、プリンター100には、記憶部73が設けられる。例えば、記憶部73は、ROM、RAM、フラッシュROM等の不揮発性と揮発性の記憶装置の組み合わせである。尚、本実施形態の説明では、制御部7が印刷の制御を行う例を説明するが、印刷を行う部分を制御するエンジン制御部や、全体制御や画像処理を行うメイン制御部等、機能、役割に応じて制御を行う部分(基板)を複数種、分割して設けてもよい。
CPU71は中央演算処理装置であり、記憶部73に格納され、展開される制御プログラムに基づきプリンター100の各部の制御や演算を行う。例えば、記憶部73はプリンター100の制御プログラムのほか、制御データ等、各種データを記憶できる。更に、現像ローラー11や磁気ローラー12への電圧印加でのデューティ比や直流バイアス電圧の設定値等、現像ローラー11や磁気ローラー12に対する電圧印加設定に関するプログラムやデータも記憶部73に記憶される。
そして、制御部7は、給紙部2、搬送部3、画像形成部4、中間転写部5、定着部6等と接続され、記憶部73の制御プログラムやデータに基づき適切に画像形成が行われるように各部の動作を制御する。又、制御部7はプリンター100内に1又は複数個設けられるモーター74を制御する。制御部7はモーター74を回転させて感光体ドラム42、現像ローラー11、磁気ローラー12等の各種回転体を回転させる。このモーター74の駆動を利用して、現像ローラー11及び磁気ローラー12の各スリーブ11c、12cは回転する。
又、制御部7には、I/F部75(インターフェイス部)を介し、コンピューター200(パーソナルコンピュータ等)が接続される。コンピューター200はプリンター100に印刷を行わせる内容を含む印刷用データの送信元である。例えば、印刷用データには、印刷の設定データや画像データなどが含まれる。制御部7は受信した印刷用データに基づき画像処理部72に画像処理を行わせて、露光装置41用の画像データを生成する。露光装置41は、その画像データを受信し、感光体ドラム42に静電潜像を形成する。
(現像装置1での電圧印加)
次に、図4、図5を用いて、現像装置1での電圧印加の態様の一例を説明する。図4は現像装置1の一例を示すブロック図である。図5は現像装置1の高圧電源部8での各電圧の波形の一例を示すタイミングチャートである。
上述のように、本実施形態の現像装置1には現像ローラー11と磁気ローラー12が設けられる。トナーによる静電潜像の現像や、磁気ローラー12から現像ローラー11へのトナーの供給や、現像ローラー11からのトナーの剥離のため現像ローラー11と磁気ローラー12には電圧が印加される。言い換えると、トナーを適切に移動させるため、現像ローラー11と磁気ローラー12には電圧が印加される。
現像装置1には現像ローラー11と磁気ローラー12に電圧を印加するために高圧電源部8が含まれる。高圧電源部8は供給される電圧の昇圧等を行い、現像ローラー11や磁気ローラー12に電圧を印加(出力)する。
例えば、本実施形態の高圧電源部8はコンデンサー81、トランス82、スイッチング部9、現像ローラーバイアス部83、磁気ローラーバイアス部84を含む。現像装置1が現像を開始し、終了するタイミングは異なるので、1つの現像装置1に対し(現像ローラー11と磁気ローラー12の1つの組み合わせに対し)、1つの高圧電源部8が設けられる。
例えば、コンデンサー81には電解コンデンサーが用いられる。コンデンサー81の電極の一方はスイッチング部9に接続される。又、コンデンサー81の他方の電極はトランス82の一次コイル821に接続される。これにより、コンデンサー81とトランス82は直列回路85として接続される(コンデンサー81とトランス82の直列回路85、図4において三点鎖線で図示)。コンデンサー81はスイッチング部9が出力する信号(電圧)から直流成分を除去した信号をトランス82の一次コイル821に入力する。
例えば、スイッチング部9には、制御信号生成部91、制御回路部92、第1トランジスタ93(スイッチング素子に相当)、第2トランジスタ94が含まれる。制御信号生成部91は現像ローラー11に印加する交流電圧のデューティ比等を制御する制御クロック信号S1(制御信号に相当)を出力する。制御信号生成部91はプリンター100のモードや現像の実行、不実行に応じ、制御部7の指示に基づき、制御クロック信号S1のデューティ比を変化させる。詳細は後述するが、制御信号生成部91が出力した制御クロック信号S1と同様のデューティ比の交流電圧が現像ローラー11に印加される。
制御回路部92は各トランジスタにあわせて電圧値等を調整した制御クロック信号S1を第1トランジスタ93と第2トランジスタ94に与える(制御クロック信号S1の周波数は数kHz程度とできる。例えば、3〜5kHz程度)。そして、例えば、第1トランジスタ93はpnp型のトランジスタである。第1トランジスタ93は制御クロック信号S1がHighのときOFFであり、LowのときONとなる。
そして、第1トランジスタ93のエミッタは電源装置76と接続される。電源装置76はプリンター100の内部に設けられ、商用電源が入力される。電源装置76は整流、平滑等を行って直流電圧を出力する。例えば、電源装置76はDC24Vを出力し、第1トランジスタ93に印加する。又、第1トランジスタ93のベースには制御回路部92が接続される。又、第1トランジスタ93のコレクタには第2トランジスタ94とコンデンサー81が接続される。
第2トランジスタ94はnpn型のトランジスタである。第2トランジスタ94のベースは制御回路部92に接続され、コレクタは第1トランジスタ93のコレクタとコンデンサー81に接続され、エミッタはグランドに接続される。第2トランジスタ94は制御クロック信号S1がHighのときONであり、LowのときOFFとなる。従って、第1トランジスタ93がON状態のとき第2トランジスタ94はOFF状態であり、第1トランジスタ93がOFF状態のとき第2トランジスタ94はON状態である。
ここで、第1トランジスタ93はpnp型であり、第1トランジスタ93のコレクタにコンデンサー81が接続されるので、コンデンサー81には、制御クロック信号S1が反転した論理の電圧が印加される。言い換えると、第1トランジスタ93のコレクタには、制御クロック信号S1の論理を反転させ、増幅した信号が生ずる。コンデンサー81に印加される電圧は、制御クロック信号S1と周波数が同じで、そのデューティ比が(1−制御クロック信号S1のデューティ比)となる。従って、コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比と制御クロック信号S1のデューティ比を足すと1となる関係となる。例えば、制御クロック信号S1のデューティ比が10%ならば、コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比は90%となる。
コンデンサー81は第1トランジスタ93のコレクタと接続される。又、コンデンサー81はトランス82の一次側(一次コイル821)に接続される。コンデンサー81は第1トランジスタ93のON/OFFにより印加される電圧から直流成分を除去した信号(電圧)をトランス82に入力する。言い換えると、トランス82に交流波形を入力する。
トランス82は一次側に入力された電圧を昇圧した電圧を出力する。そして、二次側は少なくとも2系統の出力を有し、一方が現像ローラー11、他方が磁気ローラー12に接続される。尚、昇圧比は各出力で異なっていてもよい。又、現像ローラー11側の出力には、現像ローラー11に印加する交流電圧をバイアスする現像ローラーバイアス部83が設けられる。同様に、又、磁気ローラー12側の出力にも、磁気ローラー12に印加する交流電圧をバイアスする磁気ローラーバイアス部84が設けられる。現像ローラーバイアス部83により直流電圧でバイアスされた交流電圧が現像ローラー11に印加される。又、磁気ローラーバイアス部84により、直流電圧でバイアスされた交流電圧が磁気ローラー12に印加される。
例えば、現像ローラーバイアス部83や磁気ローラーバイアス部84は電源装置76の出力電圧を受けて昇圧を行うコンバーターである。そして、現像ローラーバイアス部83と磁気ローラーバイアス部84は出力を変化させることができる回路である。言い換えると、現像ローラーバイアス部83と磁気ローラーバイアス部84は、バイアスする電圧の大きさを変化させられる。
ここで、図5を用いて、現像装置1の高圧電源部8での各電圧の波形の一例を説明する。図5で最上段に示すチャートは制御クロック信号S1を示すチャートである。尚、第2トランジスタ94のON/OFFも最上段に示すチャートと同様となる。そして、図5で2段目に示すチャートは第1トランジスタ93のON/OFFを示すチャートである。図5に示すように、第1トランジスタ93のON/OFFのタイミングと制御クロック信号S1の論理は反転する。図5で3段目に示すチャートはコンデンサー81のプラス側の電極の電圧の推移を示すチャートである。図5で4段目に示すチャートはコンデンサー81のマイナス側の電極の電圧の推移を示すチャートである。3段目と4段目のチャートで示すように、第1トランジスタ93がONのとき電源装置76の出力電圧がコンデンサー81に印加され、第1トランジスタ93がOFFすると第2トランジスタ94がONし、コンデンサー81からの放電がなされる。そして、本実施形態では、コンデンサー81は制御クロック信号S1が生成されると、制御クロック信号S1のデューティ比に応じた電荷を蓄える。
又、図5の最下段に示すチャートは、現像ローラー11側の二次コイル822の出力波形の一例である。図5に示すように、本実施形態のトランス82はコンデンサー81に印加される電圧の論理と反対の論理の波形を出力するタイプである(反転出力)。言い換えると、コンデンサー81に印加される電圧とHighとLowが逆転した波形を2次コイルは出力する。従って、現像ローラー11に印加される交流電圧の波形と制御クロック信号S1の波形は同様となり、現像ローラー11に印加される交流電圧のデューティ比は制御クロック信号S1のデューティ比と同様となる。
(現像装置1での電圧印加のモード)
次に、図6を用いて、本実施形態の現像装置1での電圧印加のモードを説明する。図6は電圧印加のモードの遷移の一例を示す説明図である。
本実施形態の現像装置1は、モードとして、トナーにより静電潜像の現像を行う現像実行モードと、静電潜像の現像を行わない現像不実行モードを有する。又、現像不実行モードは第1モード、第2モードを含む。現像装置1の高圧電源部8は、各モードにより、現像ローラー11や磁気ローラー12に印加する直流電圧の大きさや、制御クロック信号S1のデューティ比(コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比)を変化させる。尚、印刷を行わないのであれば現像ローラー11や磁気ローラー12に電圧を印加する必要は無いので、現像装置1の状態(モード)としては、上記の3つのモード(現像実行モード、第1モード、第2モード)の他に、現像ローラー11や磁気ローラー12に電圧を印加しない印加無しの状態もある。
現像実行モードはトナーを飛翔させ、感光体ドラム42上の静電潜像の現像を行うときのモードである。第1モード(現像未実行モードの一種)は現像実行モードに移行する前のモードであり、現像ローラー11にトナーを供給し現像ローラー11表面(スリーブ11c)のトナーの薄層を整えるモードである。第2モード(現像未実行モードの一種)は現像ローラー11の表面からトナーを剥離、回収するモードであり、現像ローラー11の表面のトナーを入れ替え、現像ローラー11へのトナーの固着を防ぐモードである。
まず、現像実行モードでは、予め定められたピーク間電圧の交流電圧が現像ローラー11に印加される。又、現像実行モードでは、現像ローラー11にトナーを補給するため、現像ローラーバイアス部83と磁気ローラーバイアス部84は、現像ローラーバイアス部83の出力電圧値が磁気ローラーバイアス部84の出力電圧値よりも小さくなるように、直流電圧を出力する。言い換えると、「磁気ローラーバイアス部84の出力電圧>現像ローラーバイアス部83の出力電圧」として、正帯電しているトナーを磁気ローラー12から現像ローラー11方向に移動しやすくする。
次に、第1モードは、印刷前に現像ローラー11の周面にトナーの薄層を形成するモードである。そのため、磁気ローラー12から現像ローラー11に帯電したトナーが移動するようにバイアスを印加する必要がある。そのため、現像実行モードと同様に、現像ローラーバイアス部83と磁気ローラーバイアス部84は、現像ローラーバイアス部83の出力電圧値が磁気ローラーバイアス部84の出力電圧値よりも小さくなるように、直流電圧を出力する。又、第1モードでは、予め定められたピーク間電圧の交流電圧を現像ローラー11に印加してもよい。
又、第2モードは、現像ローラー11の周面からトナーを剥離し、磁気ローラー12側にトナーを回収してしまうモードである。そのため、現像ローラー11から磁気ローラー12に向けてトナーが移動しやすくなるようにバイアスを印加する必要がある。そのため、第2モードでは、現像ローラーバイアス部83と磁気ローラーバイアス部84は、現像ローラーバイアス部83の出力電圧値が磁気ローラーバイアス部84の出力電圧値よりも大きくなるように、直流電圧を出力する。これにより、正帯電しているトナーは現像ローラー11から磁気ローラー12方向に向けて移動する。又、第2モードでも、予め定められたピーク間電圧の交流電圧を現像ローラー11に印加してもよい。
尚、第1モードや第2モードになってから現像ローラー11が、例えば、1周する時間が経過した後に他のモードに移行する。言い換えると、少なくとも現像ローラー11の、例えば、1周に要する時間は、第1モードや第2モードは継続する。
例えば、制御部7はプリンター100の状態に応じて現像ローラーバイアス部83や磁気ローラーバイアス部84にモードを指示する信号を入力する。現像ローラーバイアス部83と磁気ローラーバイアス部84は指示されたモードに応じて出力電圧値の大きさを切り替える。
そして、図6では3種類のモード遷移例を示している。まず、図6のうち最上段には、1枚のみ印刷するときの状態遷移を示している。1枚のみ印刷するとき、制御部7は高圧電源部8を制御して、現像開始前の印加無しの状態から、現像装置1を第1モードとし、トナーの薄層を現像ローラー11の表面(スリーブ11c)に形成させる。その後、制御部7は高圧電源部8を制御して、現像装置1を現像実行モードとし、磁気ローラー12から現像ローラー11へのトナー補給を継続させる。そして、現像完了(印刷完了)に伴い、制御部7は高圧電源部8を制御して、現像装置1を第2モードとし、現像ローラー11からトナーを回収させる。その後、現像装置1は印加無しの状態となる。
次に、図6のうち中段には、25枚未満の範囲で、複数ページに連続して印刷を行うときの状態遷移を示している。現像開始までは1枚のみ印刷するときと同様である。そして、1ページ目に対応するトナー像の現像が開始されると、制御部7は高圧電源部8を制御し、紙間では現像装置1を第1モードとする。そのため、第1モードと現像実行モードが繰り返される。そして、ジョブでの現像(印刷)が完了すると、制御部7は高圧電源部8を制御して、現像装置1を第2モードとする。その後、現像装置1は印加無しの状態となる。
次に、図6のうち下段には、25枚以上複数ページに連続して印刷を行うときの状態遷移を示している。現像開始までは1枚のみ印刷するときと同様である。そして、1ページ目に対応するトナー像の現像が開始されると、原則、制御部7は高圧電源部8を制御して、紙間では現像装置1を第1モードとする。そのため、第1モードと現像実行モードが繰り返される。そして、25枚印刷を実行すると、制御部7は高圧電源部8を制御して、現像装置1を第2モードとし、現像ローラー11の周面のトナーをリフレッシュする。尚、25枚印刷するごとに第2モードが行われる。第2モードの後、再び、制御部7は高圧電源部8を制御して、現像装置1を第1モードとした後、現像が再開される。現像(印刷)完了したとき、制御部7は高圧電源部8を制御し、現像装置1を第2モードとし、その後、現像装置1は印加無しの状態となる。尚、本説明では、25枚を基準として第2モードを実行する例を示すが25枚に限られず、基準は26枚以上でもよいし、24枚以下でもよい。
(各モードでのデューティ比)
次に、図7を用いて、本実施形態の現像装置1での電圧印加のモードとデューティ比の変更を説明する。図7は現像ローラー11に印加する電圧のデューティ比の差による影響を説明するための説明図である。
本実施形態のプリンター100では、制御クロック信号S1のデューティ比を変化させて、現像ローラー11に印加する交流電圧のデューティ比や、コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比を変化させる。具体的には、制御信号生成部91は現像装置1のモードによって制御クロック信号S1のデューティ比(第1トランジスタ93のスイッチングのデューティ比)を変化させる。そして、制御信号生成部91は、現像実行モードでは第1モード、第2モードよりも制御クロック信号S1(現像ローラー11への印加電圧)のデューティ比を大きくする。この場合、出力反転の関係から、コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比は小さくなる。
まず、図7を用いてデューティ比によってトナーの飛翔が異なる点を説明する。図7は現像ローラー11に印加する電圧波形の一例を示している。図7での上側のタイミングチャートに示す現像ローラー11に印加する電圧のデューティ比(40%程度)は、下側のタイミングチャートに示す現像ローラー11に印加する電圧のデューティ比(30%程度)よりも大きい。
まず、図7の各タイミングチャートでの実線は、現像ローラー11に印加される電圧変動を示す波形である。従って、各タイミングチャートでの縦軸は電圧の振幅を示す。この波形でのピーク間電圧は、例えば、1kV〜2kVの範囲で設定される。そして、図7のV0(破線で示すライン)は、0V(グランド)である。
コンデンサー81は直流成分を除去する。そのため、現像ローラー11に印加される電圧変動を示す波形のピーク間電圧のうち、V0のラインの位置は、1周期でのHighである時間と振幅の積とLowである時間と振幅の積が等しくなるような位置となる(面積中心)。例えば、矩形波でデューティ比が40%であり、ピーク間電圧が1000Vであれば、V0のラインからプラス側のピークまでの電位差は600Vとなり、V0のラインからマイナス側のピークまでの電位差は400Vとなる。
又、図7の各タイミングチャートでのVLのライン(二点鎖線で示すライン)は、露光後の感光体ドラム42の電位(例えば、100〜200V程度)を示す。又、図7の各タイミングチャートでのVoのライン(二点鎖線で示すライン)は、帯電時の感光体ドラム42の電位を示す(例えば、400〜600V程度)。さらに、図7の各タイミングチャートでのVmaxのライン(間隔が広い破線のうち上方のライン)は、現像ローラーバイアス部83によりバイアスしたときの現像ローラー11に印加される電圧のプラス側のピーク値を示す。図7の各タイミングチャートでのVminのライン(間隔が広い破線のうち下方のライン)は、現像ローラーバイアス部83によりバイアスしたときの現像ローラー11に印加される電圧のマイナス側のピーク値を示す。
現像のとき、現像ローラー11から感光体ドラム42で露光された部分に正帯電されたトナーが飛翔するので、露光後の感光体ドラム42の電位(VL)とVmaxの電位差が大きいほどトナーに働く静電力は大きくなり、トナーが動く速度が速くなる。
ここで、図7示すように、面積中心の考え方から、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比が大きいときの露光後の感光体ドラム42の電位(VL)とVmaxの電位差(図7に白抜矢印A1で示す)よりも、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比が小さいときの露光後の感光体ドラム42の電位(VL)とVmaxの電位差(図7に実線矢印A2で示す)の方が大きくなる。従って、デューティ比が小さいほど急峻にトナーを飛翔させて素早く露光されたドットにトナーを載せることができる。このため、デューティ比が小さいほど、1ドットの再現性は高くなると言われる。
しかし、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比が小さいほど、経験上、現像されたトナー像にムラが現れやすくなることが知られている。例えば、同濃度のベタ画像を印刷したとき、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比が小さいほど、印刷結果に濃淡のムラが表れやすい(「現像駆動ムラ」と呼ばれることもある)。現像駆動ムラの発生メカニズムは完全に解明されているわけではないが、現像ローラー11や感光体ドラム42には製造上の誤差や取付誤差があり、感光体ドラム42と現像ローラー11間のギャップの幅は軸線方向のどの場所でも同じではなく、更に回転に伴いギャップが変動する。そして、1ドットの再現性が高くなるほど、ギャップのフレがムラとなって現れると考えられている。
一方、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比を大きくすれば、経験上、リーク(放電)が発生しやすくなることも知られている。感光体ドラム42と現像ローラー11のギャップは微少(1mm)であり、感光体ドラム42と現像ローラー11の電位差が大きくなるほど、リークは生じやすくなる。
ここで、本実施形態の現像装置1では、現像ローラー11に印加される電圧が小さくなったときにリークが発生しやすい。そして、現像ローラー11に印加されるマイナス側のピーク電圧がより小さい(よりマイナス)であるほど、リークが発生しやすくなる。尚、トナーの帯電特性や感光体ドラム42の帯電特性などにより、現像ローラー11に印加される電圧が大きいほどリークが発生しやすくなることもあり得る。
そして、図7に示すように、面積中心の考え方から、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比が大きいときの帯電後の感光体ドラム42の電位(Vo)と現像ローラー11に印加される電圧がマイナス側のピーク時の電位(Vmin)との差(図7に白抜矢印A3で示す)は、デューティ比が小さいときの帯電後の感光体ドラム42の電位(Vo)と現像ローラー11に印加される電圧がマイナス側のピーク時の電位(Vmin)との差(図7に実線矢印A4で示す)よりも大きい。言い換えると、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比が大きいほど、本実施形態の現像装置1ではリークが生じやすい。
リークが生ずれば、感光体ドラム42の電位が低下してトナーが付着してしまうことがある。現像実行時以外に感光体ドラム42にトナーが付着すると、中間転写ベルト52や2次転写ローラー57をトナーで汚してしまうことがある。これにより用紙にトナーが付着して用紙が汚れることがある。又、リーク時の電流が大きければ、感光体ドラム42に微少な穴が開くことがあり、以後に形成されるトナー像の画質を低下させてしまうこともある。
そこで、本実施形態のプリンター100では、高圧電源部8(制御信号生成部91)は現像実行モードのとき、トナー像のムラを抑え画質を向上させるため、第1モードや第2モードの時よりも現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比を大きくする(制御クロック信号S1のデューティ比を大きくする)。一方、高圧電源部8(制御信号生成部91)はリークの発生を防ぐため第1モード、第2モードでは現像実行モードよりも現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比を小さくする(制御クロック信号S1のデューティ比を小さくする)。このように、現像実行モード、第1モード、第2モードでのデューティ比が予め定められる。
例えば、制御部7は印刷過程や、プリンター100の状態や、印刷枚数等に応じ、制御信号生成部91に現像装置1のモードを指示する。例えば、制御部7は露光装置41での露光開始に伴い、制御信号生成部91に現像実行モードへの移行を指示する。又、制御部7は露光装置41での露光終了に伴い、制御信号生成部91に第1モードや第2モードへの移行を指示する。制御信号生成部91は制御部7のモード指示に応じ、デューティ比を変化させる。あるいは、制御部7はデューティ比そのものを指示する信号を制御信号生成部91に与え、制御信号生成部91は指示に応じてデューティ比を変化させても良い。
(デューティ比の段階的変化)
次に、図8を用いて、本実施形態でのデューティ比の段階的変化を説明する。図8はデューティ比の段階的な変化の概要を示す説明図である。
本実施形態では、モードに応じてデューティ比を変化させる。例えば、本実施形態のプリンター100では、制御信号生成部91は現像実行モードのとき、制御クロック信号S1のデューティ比や現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比を40%程度とし(コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比は60%程度)、紙間や現像実行前や現像完了後の第1モードや第2モードのとき制御クロック信号S1や現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比を30%程度(コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比は70%程度)とする。尚、本実施形態の説明では、第1モードと第2モードのデューティ比は同じであるが、差を設けても良い。
しかし、トランス82(コイル)を用いている場合、デューティ比の変更は、正と負が非対称な電圧をトランス82に印加することになる。正と負が非対称な電圧をトランス82に印加すると、トランス82に偏磁が生じ、直流のバイアスを印加したような状態となる。
特に、偏磁が生じている状態でトランス82に交流電圧を印加すると、磁気飽和が生じやすくなる。磁気飽和が生じてしまうと、通常、トランス82のインピーダンスは巻線抵抗分のみとなる。そうすると、コンデンサー81を介してトランス82に接続される第1トランジスタ93に大きな電流が流れ、第1トランジスタ93を壊すことがある。
デューティ比の変化量が大きいほどトランス82での偏磁の程度は大きくなる。偏磁の程度が大きな状態では磁気飽和が生じやすくなる。例えば、本実施形態の現像装置1では、現像実行モードと第1モードや第2モードで10%程度、デューティ比が異なる。そして、デューティ比を一気に10%変化させると偏磁の程度が大きくなり、第1トランジスタ93を壊す可能性が高くなる。
一方、デューティ比の変化により偏磁が生ずると、トランス82はバイアスされた状態となり、一時的にコンデンサー81とトランス82間の電位は変化する。そして、コンデンサー81とトランス82の共振により、コンデンサー81とトランス82間の電位は振動しながら時間の経過とともに偏磁が収まってゆく。従って、トランス82の偏磁は時間の経過とともに収まる傾向を示す。
そこで、本実施形態の現像装置1では、制御信号生成部91は段階的に制御クロック信号S1(コンデンサー81に印加される電圧)のデューティ比を変更して、1回あたりのデューティ比の変化量を抑えつつ、目標のデューティ比に変化させる。これにより、第1トランジスタ93を過電流で壊すことなくデューティ比を変更することができる。
そこで、図8を用いてデューティ比の変化の一例を説明する。図8の例は、連続して用紙に印刷を行い、現像実行モード→紙間による第1モード→現像実行モードとモードを遷移させるときのデューティ比の変化の一例を示している。尚、図8の例では、現像実行モードの制御クロック信号S1のデューティ比を40%程度(コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比は60%程度)として示し、第1モードの制御クロック信号S1のデューティ比を30%程度(コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比は70%程度)として示している。尚、デューティ比は上記の例に限られない。
図8に示すように、現像実行モードから第1モードの制御クロック信号S1のデューティ比に変化させるとき、制御信号生成部91はトランス82で磁気飽和が生じない刻み幅(図8で刻み幅の一例をΔDとして図示)でデューティ比を変化させる。又、第1モードの制御クロック信号S1のデューティ比から現像実行モードの制御クロック信号S1のデューティ比に戻すときも、制御信号生成部91はトランス82で磁気飽和が生じない刻み幅(図8で刻み幅の一例をΔDとして図示)でデューティ比を変化させる。例えば、図8の例では、刻み幅は2%である。この刻み幅は予め実験を行う等により、トランス82に磁気飽和が生じないような値に任意に定めることができる。
図8に示すように、変化させるべき制御クロック信号S1のデューティ比の幅が10%であり、刻み幅が2%であれば、制御信号生成部91は5段階に分けて(5回変化させて)デューティ比を変化させる。この段階数は6段階以上でもよいし、2段階〜4段階でもよいが、段階数が多いほどトランス82に磁気飽和が生じ難くなるので、例えば、5段階以上にすることが好ましい。
(デューティ比を変化させるタイミング)
次に、図9を用いてデューティ比を変化させる時間帯を説明する。図9はデューティ比を変化させる時間帯を説明するための説明図である。
上述のように、本実施形態では、制御クロック信号S1のデューティ比を段階的に変化させて、コンデンサー81に印加される電圧や現像ローラー11に印加させる電圧のデューティ比を変化させる。デューティ比を変化させてから時間が経過するほどトランス82に磁気飽和は生じ難くなるものの、現像実行モードから第1モードへの遷移や、第1モードから現像実行モードへの遷移に伴うデューティ比の変化は速やかに行うことが好ましい。
ここで、デューティ比を変化させた後次段階のデューティ比を変化させるとき(2段階目以降のデューティ比の変化のとき)、第1トランジスタ93に大きな電流が流れる時間帯(以下、「第1時間帯T1」と称する。)があることが経験的に分かっている。そのため、デューティ比を段階的に変化させるとき、第1トランジスタ93に大電流が流れないようにしつつ、速やかに目標のデューティ比に到達させる必要がある。
この第1時間帯T1について、図9を用いて説明する。図9のうち、最上段のチャートは制御クロック信号S1(現像ローラー11に印加する電圧)の波形を示す。図9では、破線の時点で制御クロック信号S1のデューティ比を40%程度から36%程度に変化させている(現像実行モードから第1モードへの遷移の一例)。
又、図9のうち、2段目のチャートはコンデンサー81に印加される電圧の波形を示す。図9では、破線の時点でコンデンサー81に印加される電圧のデューティ比は60%程度から64%程度に変化している(現像実行モードから第1モードへの遷移の一例)。
このようなデューティ比の変化により、コンデンサー81の電極間の電圧(コンデンサー81が蓄える電荷量)に変動が生ずる。例えば、図9に示すように、コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比が増えると、コンデンサー81の電極間の電圧は上昇する傾向を示す。
そして、図9のうち、最下段のチャートはコンデンサー81の電極間の電圧値の変動を示す。デューティ比を変化させると、トランス82の一次コイル821との振動により、コンデンサー81の電極間の電圧は一定の周期L1で振動する。そして、振幅は徐々に小さくなりつつ、周期L1中での変動の(振幅の)中央値V1に収束する。図9において、変動の周期をL1で示す。
そして、コンデンサー81の電極間の電圧値が振動での谷の部分(図9において斜線網掛で示す)でデューティ比を変化させると、第1トランジスタ93に大電流が流れやすいことが発明者の実験により、経験的に得られている。言い換えると、コンデンサー81の電極間の電圧値が変動(振幅)の中央値V1よりも小さい値にある時間帯が第1時間帯T1である。
第1トランジスタ93に大電流が流れるメカニズムや理由は明確ではないが、コンデンサー81とトランス82のエネルギーの振動の観点から見れば、コンデンサー81の電圧値が小さくなっている状態は、トランス82側にエネルギーが移動し、偏磁が大きくなっている可能性がある状態である。そのような状態で、更にデューティ比を変化させて、コンデンサー81の電圧を上昇させる要因を生じさせると、更なる偏磁を招き、更にクロック印加によって磁気飽和が生じやすくなることが、第1トランジスタ93に大電流が流れる要因の一つの可能性がある。
そこで、本実施形態では、デューティ比を変化させた後、次段階のデューティ比を変化させるとき、周期L1のうち第1トランジスタ93に大きな電流が流れる可能性がある第1時間帯T1を除いた第2時間帯T2で制御信号生成部91に制御クロック信号S1のデューティ比を変化させる。
ここで、デューティ比を変化させたときのコンデンサー81の電極間電圧の変動の周期L1は、予め実測することにより定めても良い。又、周期L1のうち、どの時間帯を第1時間帯T1と扱い、どの時間帯を第2時間帯T2と扱うかも予め実測することにより定めても良い。
又、コンデンサー81の電極間電圧の変動は共振現象に関するものであることから、コンデンサー81の静電容量[F]とトランス82の一次コイル821のインダクタンス値[H]から共振周波数を求め(公式:共振周波数=1/2π√LC[Hz])、1/共振周波数により求めた周期L1を、デューティ比を変化させたときのコンデンサー81の電極間電圧の変動の周期L1と定めてもよい。例えば、L=1.5mH、C=150μFであれば、周期L1は約3ms程度となる。又、演算により求めた周期L1に基づき、例えば、周期のうち、前半の約1.5msを第2時間帯T2と定め、後半の約1.5msを第1時間帯T1と定めてもよい。
そして、デューティ比を変化させたときのコンデンサー81の電極間電圧の変動の周期L1を示すデータや、デューティ比を変化させてからのどの時点を周期L1の始点とするかを示す周期L1の始点に関するデータや、周期L1のうちの第1時間帯T1の範囲を示すデータや、周期L1のうちの第2時間帯T2の範囲を示すデータを、例えば、記憶部73や、制御信号生成部91内などに設けられるメモリー91Mに記憶させておく。
そして、デューティ比を変化させてから、制御信号生成部91は、記憶部73やメモリー91M内のデータを利用して、次に到来する第2時間帯T2で、次段階のデューティ比を変化させる。これにより、第1トランジスタ93に大電流が流れないようにしつつ、速やかに目標のデューティ比にまで到達させることができる。
尚、上記の例では、制御クロック信号S1のデューティ比を小さくして、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比を小さくする(コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比を大きくする)ときの周期的に変動するコンデンサー81に印加される電圧の大きさや第1トランジスタ93での電流の流れやすさに基づき、第1時間帯T1や第2時間帯T2を定める例を示した。そして、本実施形態の現像装置1では、制御クロック信号S1のデューティ比を大きくして、コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比を小さくし、現像ローラー11に印加される電圧のデューティ比を大きくするときでも、第1時間帯T1(変動の谷の部分で)で大電流が流れやすい傾向があるので、制御クロック信号S1のデューティ比を小さくするときと、制御クロック信号S1のデューティ比を大きくするときのいずれの場合も共通した第1時間帯T1と第2時間帯T2を用いる。しかし、制御クロック信号S1のデューティ比を大きくするときと小さくするときで第1時間帯T1と第2時間帯T2を異ならせても良い。
(デューティ比変化時の処理の流れ)
次に、図10を用いて、制御クロック信号S1等のデューティ比を変化させるときの処理の流れの一例を説明する。図10は制御クロック信号S1等のデューティ比を変化させるときの処理の流れの一例を示すフローチャートである。尚、本実施形態の現像装置1では、現像実行モードから第1モード又は第2モードに移行するときや、第1モード又は第2モードから現像実行モードに移行するときがデューティ比を変化させるときに該当する。
そのため、図10のスタートは制御部7から制御信号生成部91や現像ローラーバイアス部83や磁気ローラーバイアス部84に現像実行モードから第1モードや第2モードへの遷移の指示が入力された時点や、第1モード又は第2モードから現像実行モードへの遷移の指示が入力された時点である。
現像実行モードから第1モードや第2モードへの遷移や第1モード又は第2モードから現像実行モードへの遷移の指示されたとき、現像ローラーバイアス部83は現像ローラー11に印加する直流電圧を変化させ、磁気ローラーバイアス部84は磁気ローラー12に印加する直流電圧を変化させる(ステップ♯1)。尚、現像ローラー11や磁気ローラー12に印加するバイアスを変化させないならば、ステップ♯1は必要ない。
続いて、制御信号生成部91は制御クロック信号S1のデューティ比を予め定められた刻み幅だけ変化させる(ステップ♯2)。尚、現像実行モードから第1モードや第2モードに遷移するとき、制御クロック信号S1のデューティ比は小さくされる。又、第1モード又は第2モードから現像実行モードに遷移するとき、制御クロック信号S1のデューティ比は大きくされる。デューティ比の刻み幅は変動させてもよい。その結果、コンデンサー81に印加される電圧のデューティ比や、現像ローラー11に印加する電圧のデューティ比も変化する。そして、制御信号生成部91は目標とするデューティ比に到達しているか否かを確認する(ステップ♯3)。
もし、デューティ比が目標とするデューティ比に到達していれば(ステップ♯3のYes)、本フローは終了する(エンド)。そして、制御信号生成部91や制御回路部92はモードの遷移や印加無の指示を制御部7から受けるまでデューティ比を維持しつつ第1トランジスタ93のスイッチングを行う。
一方、デューティ比が目標とするデューティ比に到達していなければ(ステップ♯3のNo)、制御信号生成部91は次にデューティ比を刻み幅だけ変化させてもよい時点に到達したか否かの確認を続ける(ステップ♯4、ステップ♯4のNo→ステップ♯4)。例えば、制御信号生成部91は内部にタイマーを有し計時機能を含む。そして、制御回路部92は先にデューティ比を変化させてから次に刻み幅だけデューティ比を変化させるべき時点に到ったか否かを確認する。
具体的には、制御信号生成部91は先にデューティ比を変化させてから、コンデンサー81の電極間電圧の変動の周期L1中、第2時間帯T2に到達したか否かを確認する。制御信号生成部91は、デューティ比を変化させてから最初の第2時間帯T2でステップ♯4をYesと判断してもよいし、コンデンサー81の電極間電圧の変動が少し落ち着くと考えられるデューティ比を変化させてから2回目以降の第2時間帯T2でステップ♯4をYesと判断してもよい。
もし、次にデューティ比を刻み幅だけ変化させる時点に到れば(ステップ♯4のYes)、フローはステップ♯2に戻る。
デューティ比を変化させたとき、コンデンサー81の電極間の電圧は周期L1で振動しつつ(正弦波的に振幅が上下しつつ)、安定してゆく。この周期L1中、デューティ比を変化させると、スイッチング部9(スイッチング素子としての第1トランジスタ93)に大電流が流れるタイミングがあることが経験的に分かっている。
そこで、本実施形態の現像装置1は、トナーを担持し感光体ドラム42に対向される現像ローラー11と、現像ローラー11に対向して配され、磁気ブラシにより現像ローラー11へのトナーの供給及び現像ローラー11からのトナーの剥離を行う磁気ローラー12と、コンデンサー81と一次側にコンデンサー81が接続され、二次側から現像ローラー11に印加する交流電圧を出力するトランス82と、制御信号(制御クロック信号S1)を生成する制御信号生成部91と、コンデンサー81と接続され、コンデンサー81とトランス82の直列回路85への通電、遮断を制御信号に基づき行うスイッチング素子(第1トランジスタ93)を含むスイッチング部9と、を含み、スイッチング部9は、目標とするデューティ比に向けて、複数回にわけて段階的、連続的に制御信号のデューティ比を変化させるとき、デューティ比を変化させた後、デューティ比の変化に伴うコンデンサー81の電極間電圧の変動の周期L1中、第1時間帯T1よりもスイッチング部9に流れる電流が小さい予め定められた第2時間帯T2でデューティ比を変化させる。
これにより、デューティ比を変化させてコンデンサー81の電極間の電圧が周期的に振動していても、スイッチング素子(第1トランジスタ93)に大電流が流れないときに次のデューティ比に変化させることができる。従って、スイッチング素子を破損させることが無く、安全に所望のデューティ比に変化させることができる。
又、トランスの一次側のコイル(一次コイル821)との間でエネルギーが振動している状態のコンデンサー81の電極間電圧が小さいときにデューティ比を変化させると、スイッチング素子(第1トランジスタ93)に大きな電流が流れることが経験的に分かっている。そのメカニズムは完全に解明されている訳ではないが、通常、電力を蓄えたコンデンサー81とコイルが連結されていると、電流がコイルに流れはじめ、コンデンサー81にかかる電圧が低くなっていく。このように、コンデンサー81からの電力がコイル(トランス82の一次側)に流れ込んでいる状態でデューティ比を変化させて、コンデンサー81の電極間電圧の更なる上昇が、スイッチング部9に大電流を流す要因の一つである可能性がある。
そこで、予め定められた第1時間帯T1は、コンデンサー81の電極間電圧が変動における中央値V1よりも小さい間であり、予め定められた第2時間帯T2は、コンデンサー81の電極間電圧が変動における中央値V1以上の間であり、スイッチング部9は、第2時間帯T2で制御信号(制御クロック信号S1)のデューティ比を変化させる。これにより、スイッチング素子(第1トランジスタ93)に大電流が流れにくいと経験的に予め分かっている時間帯でデューティ比を変化させることができる。従って、スイッチング素子を破損させることが無く、安全、速やかに所望のデューティ比に変化させることができる。
又、周期L1は、コンデンサー81の静電容量とトランス82のインダクタンスから求められる共振周波数の周期である。これにより、静電容量とインダクタンスから計算により2回目以降のデューティ比の切替タイミングを定めることができる。従って、トランス82やコンデンサー81における部品のばらつきを考慮しつつ、スイッチング素子(第1トランジスタ93)に大電流が流れないようにしつつ、目標のデューティ比まで最短の時間で到達させることができる。
又、複数回にわけ段階的、連続的に制御信号(制御クロック信号S1)のデューティ比を変化させるとき、スイッチング部9は、デューティ比を変化させた後、次の第2時間帯T2に到るごとにデューティ比を変化させる。これにより、第2時間帯T2にいたると次のデューティ比への変更がなされ、スイッチング素子(第1トランジスタ93)に大電流を流して破損させることなく、短時間で目的とするデューティ比に変化させることができる。
又、印刷中と印刷していない状態では、コンデンサー81に印加する電圧のデューティ比を異ならせる方がトナー像のムラを適切に解消でき、又、現像ローラー11と感光体ドラム42間でのリークを生じにくくできる場合がある。そこで、スイッチング部9は、感光体ドラム42に形成された静電潜像の現像を行う現像実行モードでの制御信号(制御クロック信号S1)のデューティ比と、感光体ドラム42に形成された静電潜像の現像を行わない現像未実行モードでの制御信号のデューティ比を異ならせ、現像実行モードでのデューティ比は、現像未実行モードよりも大きく、現像実行モードから現像未実行モードに移行すると、スイッチング部9は、現像実行モードでのデューティ比から現像未実行モードでのデューティ比に向けて段階的に複数回にわけてデューティ比を小さくし、現像未実行モードから現像実行モードに移行すると、スイッチング部9は、現像未実行モードでのデューティ比から現像実行モードでのデューティ比に向けて段階的に複数回にわけてデューティ比を大きくする。これにより、トナー像のムラを適切に解消しつつ、リークを発生し難くすることができる。
又、スイッチング部9は、制御信号(制御クロック信号S1)のデューティ比が大きくなるようにデューティ比を複数回変化させるときと、デューティ比が小さくなるようにデューティ比を複数回変化させるときとで、同じタイミングでデューティ比を変化させる。これにより、デューティ比を大きくするときと小さくするときとで同様のタイミング(時間帯)でデューティ比を変化させれば良く、デューティ比の変え方が統一され、容易なものとなる。
又、スイッチング素子はトランジスタであり、制御信号生成部91が出力したクロック信号の論理を反転させたデューティ比でコンデンサー81に電圧を印加し、トランス82は、コンデンサー81に印加された電圧のデューティ比の論理を反転させた交流電圧を生成し、現像ローラー11に印加する。これにより、コンデンサー81、トランス82の一次側、トランス82の二次側を介し、制御信号生成部91が出力したクロック信号と同じデューティ比の交流電圧を現像ローラー11に印加することができる。従って、制御信号のデューティ比を調整すれば、現像ローラー11に印加する電圧のデューティ比を調整することができる。
又、画像形成装置(例えば、プリンター100)は、上記の現像装置1を含む。これにより、スイッチング素子(第1トランジスタ93)を破損させることが無く、安全に所望のデューティ比に変化させることができる現像装置1を画像形成装置は含む。従って、現像装置1の故障が無く、トナー像の現像を行っている時と行っていない時とで、デューティ比を滑らかに変えることができ、トナー像のムラが無くて高画質であり、リーク発生による問題が生じない画像形成装置を提供することができる。
上記の実施形態では、正帯電の感光体ドラム42やトナーを例に挙げて説明したが、本発明は負帯電の感光体ドラム42やトナーを用いた場合にも適用することができる。このとき、負帯電用に現像を実行している状態(現像実行モード)では、ムラが少なくなるようにデューティ比を定め、現像を実行していない状態(現像不実行モード)ではリークが生じないようにデューティ比を定めればよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。