JP5386259B2 - 歯ブラシ - Google Patents

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Description

本発明は、歯ブラシに関する。
従来、歯ブラシに毛束を植毛する技術として、植毛台の上面に形成された植毛穴に、複数本のブリッスルを束ねた毛束を、平線と呼ばれる金属製又は合成樹脂製の小片を用いて2つ折りにして打ち込み固定する平線植毛の技術が知られている。
平線植毛に関する従来技術としては、例えば、特許文献1〜4の技術が知られている。
特許文献1には、平線の打ち込み方向を植毛台の長手方向に対して垂直方向にすることによって、長手方向における反りを防止した歯ブラシが開示されている。特許文献2には、平線の厚さを0.1〜0.22mmとすることによって、植毛台への負荷を軽減する技術が提案されている。特許文献3には、平線の長さLと植毛穴径Dとを、(L−D)/Dが0.033〜0.80となるように設計した歯ブラシが提案されている。また、特許文献4では、植毛台の厚さに対する植毛穴の底面から植毛台の下面までの厚さの割合を0.04〜0.16とすることによって、植毛台の反りを防止した歯ブラシが記載されている。
特開2006−223426号公報 再公表2005−60788号公報 特開2000−325145号公報 特開平8−19423号公報
ところで、植毛台に植毛する毛束を、歯間に入りやすくしたり、植毛密度を高めて十分な刷掃能力を得つつ、かつ歯や歯ぐきを傷つけにくいソフトな感触を得るためには、植毛台に多数の小さな植毛穴を高密度に形成し、それぞれの植毛穴に細い毛束を植毛することが考えられる。
しかしながら、平線を用いて毛束を植毛する場合、植毛台に小さな植毛穴を高密度に形成した場合には、多数の平線の打ち込みによって、植毛台が、前記柄部の長手方向と同方向に反りやすい。植毛台が反ると、見た目の問題だけでなく植毛穴に植毛されたブリッスルが抜けやすくなる場合がある。
この点、特許文献1の歯ブラシのように、平線の打ち込み方向を植毛台の長手方向に対して垂直方向とした場合には、反りをある程度抑制することができるが、その一方において、歯ブラシの毛先が植毛台の幅方向に毛先が広がりやすくなるという欠点がある。即ち、平線により毛束を植毛した場合には、植毛穴に固定された毛束の根元(平線の近傍)において、平線の領域には毛束はないため、平線で固定された毛束は、平線の上方の空間において、平線と平行な方向に傾いたり広がる傾向がある。特に、平線を打ち込む際に、平線が植毛穴を削って形成される植毛穴からはみ出た部分があり、このはみ出た部分の上方にも毛束が広がる傾向がある。そのため、植毛された毛束を上から見ると、毛束は平線に沿った方向に拡がり、植毛穴が小さいほどその傾向は強くなる。特許文献1の歯ブラシのように、平線の打ち込み方向を植毛台の長手方向に対して垂直方向とした場合には、毛先が植毛台の短軸方向に広がり易くなる。
そして、毛先が植毛台の短軸方向に広がると、歯ブラシが、すでに使われた歯ブラシのような印象を与えるものとなったり、ブラッシング圧が外方向に逃げ易くなることによって効率の良いブラッシングを妨げることにもなる。
また、歯ブラシの個々の植毛穴の構成や平線の構成を、特許文献2,4のように設計しても、植毛台に小さな植毛穴を高密度に形成した場合、植毛台の反りを十分には防止することができない。例えば、特許文献2では、平線の厚みを薄くして植毛台への負荷を軽減しているが、平線の厚みが薄くなっても、植毛台にうちこまれた平線の数が増えれば植毛台の負荷が高くなり、植毛台が反る場合がある。このため、特許文献2に示された実施例は、植毛面積の小さな電動歯ブラシ、あるいは植毛台の長手方向に対して直交する方向に平線を打ち込んだ歯ブラシにより歯ブラシの反りを評価している。また、特許文献4は、植毛穴の底部における厚みと植毛台の厚みを特定しているが、植毛穴を小径とし、植毛台に設けられた多数の植毛穴に植毛する場合には、植毛穴の底部の厚みを調整するだけでは、平線の打ち込みによる植毛台の負荷を十分に解決することはできない。また、特許文献3に提案された歯ブラシは、植毛穴の径は1.5〜2.0mmと比較的大きなものを想定しており、小さな植毛穴を数多く設けた場合を想定していない。
従って、本発明は、毛束を平線により植毛する歯ブラシにおいて、植毛穴を小さくして該植毛台に数多くの植毛穴を形成しつつ、柄部の長手方向に直交する方向への毛束の広がり及び植毛台の長手方向の反りを抑制した歯ブラシに関する。
本発明は、植毛台と柄部をと備え、植毛台の上面に開口する植毛穴に、複数本のブリッスルを束ねた毛束が、平線を用いて2つ折りにして植毛されており、該植毛台の植毛穴の中心によって囲まれた植毛領域の面積が70〜150mm2である歯ブラシであって、前記植毛穴に打ち込まれた平線における該植毛穴の内周面より外方にはみ出した部分の面積の総和は、前記植毛領域の面積に対する割合が0.02〜0.08であり、前記植毛台を構成する樹脂の曲げ応力が60〜120Mpaであり、前記植毛台の上面から下面までの厚みが3〜4.8mmであり、前記植毛穴の底部から前記植毛台の下面までの厚みが0.5〜3mmであり、前記平線は、前記植毛台の長手方向に対する角度が0度超90度未満である歯ブラシを提供するものである。
本発明の歯ブラシによれば、毛束を平線により植毛する歯ブラシにおいて、植毛穴を小さくして植毛台に数多くの植毛穴を形成しつつ、柄部の長手方向に直交する方向への毛束の広がり及び植毛台の長手方向の反りを効果的に抑制することができる。
図1は、本発明の一実施形態である歯ブラシを示す側面図である。 図2は、図1に示す歯ブラシにおける植毛穴の配置を示す拡大図である。 図3は、図1に示す歯ブラシにおける植毛台の植毛穴近辺の平線に沿う垂直断面を示す模式断面図である(図6のIII−III線断面図)。 図4は、平線を用いてブリッスル束を植毛する様子を示す斜視図である。 図5は、植毛領域の面積の求め方の説明図である。 図6は、図1に示す歯ブラシにおける植毛台の一部を拡大して示す拡大平面図である。 図7は、本発明の他の実施形態を示す図で、(a)は実施例2,3の歯ブラシにおける植毛穴の配置を示す平面図、(b)は実施例4,5の歯ブラシにおける植毛穴の配置を示す平面図である。 図8は、植毛台の長手方向の反り量の評価方法の説明図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態である歯ブラシ1を示す側面図である。
歯ブラシ1は、植毛台21と柄部3を備えており、該植毛台21の片面には、複数本のブリッスル22を束ねた毛束が植毛されてブラシ部2が形成されている。柄部3は、歯磨きをする際に使用者が手に持つ部分である。より具体的には、柄部3は、使用者が手で握りやすい形状に形成された把持部31と、植毛台21と把持部31との間を連絡する細幅に形成された首部32とを有している。植毛台21と柄部3とは、熱可塑性樹脂の射出成形により一体成形されている。柄部3には、エラストマー材料を用いて滑り止め部を形成することもできる。
歯ブラシ1の植毛台21には、図2に示すように、多数の植毛穴23,23・・が形成されている。各植毛穴23には、図4に示すように、複数本のブリッスル22を束ねた毛束が、平線25を用いて2つ折りにして植毛されている。なお、図4には、見やすさを考慮して2つ折りした一本のブリッスル22のみを示してある。植毛穴23に植毛するブリッスルの本数(2つ折りする前の本数)は、例えば5〜25本程度であり、好ましくは5〜20本、さらに好ましくは5〜15本である。
植毛台21は、その長手方向(図中X方向)の長さL1が、該長手方向に直交する方向(Y方向)の長さL2以上である。一般に、植毛台21における前記長さL2に対する前記長さL1の比(L1/L2)が1以上、特に1超であると、植毛台21が、長手方向に反り易くなるが、本実施形態の歯ブラシ1によれば、後述する構成を有することによって、植毛台21の長手方向における反りが顕著に軽減されている。
ここで、植毛台21の長手方向とは、歯ブラシの先端1aと柄部3とを結ぶ方向であり、図中のX方向である。従って、仮に図2中の長さL2が長さL1と等しい場合であっても、柄部3の軸方向に沿った図中X方向が植毛台21の長手方向であり、図中Y方向が植毛台21の長手方向に直交する方向である。また、長さL1を決定する際の、植毛台21の柄部3側の端部21eは、柄部3に最も近い位置にある植毛穴23eの柄部3側の端部の位置とする。
植毛穴23は、図2に示すように、複数個(図示例では4〜8個)の植毛穴23が植毛台21の長手方向(図中X方向)に沿って等間隔に直列配置されてなる植毛穴列が、植毛台21の長手方向に直交する方向(図中Y方向)に複数列(図示例では5列)形成されるように配置されている。隣り合う植毛穴列においては、植毛穴23が、X方向に半ピッチ分ずらして形成されており、全体として植毛穴が千鳥状に配置されている。
植毛穴列を構成する植毛穴23の個数は、適宜変更可能であり、例えば、4〜15個程度とすることができる。また、4〜15個の植毛穴からなる植毛穴列の本数は、例えば、5列に代えて、3,4,6〜10列等とすることもできる。
図2に示す例では、異なる植毛穴列の相隣接する植毛穴間の距離L4(図6参照)は、同じ植毛穴列の相隣接する植毛穴間の距離L3(図6参照)と同じか、やや広くなっている。
また、植毛穴23は、図3に示すように、植毛台21の上面21a側から底部23dのやや上の位置P2までは直径が均一の円筒状の内周面24を有し、位置P2から底部23dまでは、底部23dに近づくに連れて直径が漸減するテーパー面とされている。
本実施形態の歯ブラシ1は、植毛台21の植毛穴23の中心によって囲まれた植毛領域の面積S1が70〜150mm2である。
ここで、植毛穴23の中心によって囲まれた植毛領域とは、図5に示すように、植毛台21の植毛された範囲の外周部に位置する隣り合う植毛穴23の中心点どうしを直線で結んで形成される枠4の内側の領域であり、その植毛領域の面積は、その枠4の内側の領域の全面積である。
植毛穴23の中心によって囲まれた植毛領域は、隣接する植毛穴23aの中心同士を結んだ三角形の3つの角の各々が鋭角(90度未満)となるように植毛穴23aの中心同士を結んだ三角形を複数形成していった場合に、これらの三角形の集合からなる形状の最外周によって囲まれた領域となる。
従って、図5中の植毛穴23aと植毛穴23b、23fの中心を結んだ三角形ように、一つの角が鈍角(90度以上)となるような三角形は形成しないため、植毛穴23aは直毛穴23fと、植毛穴bも植毛穴23fと中心点どうしを直線で結んだ線が、本願における植毛穴23の中心によって囲まれた植毛領域の外縁となる。
電動歯ブラシは、一般に、植毛領域の面積S1が小さいため、平線植毛による反りの問題を生じにくいが、毛束が電気で振動したり揺動したりしない手動式の歯ブラシは、植毛領域の面積がある程度大きいものが多く、反りの問題を生じる。特に、手動式歯ブラシは植毛台が長手方向に長く、例えば長方形や長円、カプセル形状の植毛台の場合には、植毛台の長手方向の反りが問題となりやすい。本実施形態の歯ブラシ1によれば、植毛領域の面積が70mm2以上の植毛台であっても、植毛台の長手方向の反りを効果的に防止することができる。
また、植毛領域の面積が70mm2以上であると、ブリッスルが植毛された範囲が十分に広くなり、歯磨きを効率よく行うことができる。他方、植毛領域の面積が150mm2であると、口腔内に適用するために植毛台の長さも一般に長くなり、反りを生じる虞がある。
このような観点から、植毛穴の中心によって囲まれた植毛領域の面積は、75〜135mm2であることが好ましく、さらに75〜120mm2であることが好ましい。
また、本実施形態の歯ブラシ1は、平線25のはみ出し率が0.02〜0.08であり、好ましくは0.02〜0.035である。
個々の植毛穴23の大きさを小さくして植毛台に数多くの植毛穴23を形成した場合には、平線25のはみ出し率が大きくなり、また、平線25や平線25を用いた毛束の固定強度を十分に高くするためには、平線25のはみ出し率を0.02以上とすることが好ましい。
本実施形態の歯ブラシ1によれば、植毛台の構成樹脂に後述するように特定の曲げ応力を有するものを使用したり、また、上述のはみ出し率を0.08以下、好ましくは0.035以下、さらに好ましくは0.025以下とすることにより、個々の植毛穴23の大きさを小さくして植毛台に数多くの植毛穴23を形成した場合にも、植毛台21の長手方向の反りを効果的に抑制することができる。
平線のはみ出し率は、図6に示すように、植毛穴23に打ち込まれた平線25における該植毛穴の内周面24より外方にはみ出した部分25aの面積の総和S2の、植毛穴23の中心によって囲まれた植毛領域の面積S1に対する割合(S2/S1)である。平線25における植毛穴23の内周面24より外方にはみ出した部分25aは、平線25が、植毛穴23の内周面34より外方に食い込んでいる部分25aであり、平線25を打ち込む際に該平線25によって削られた部分の平面積ないし断面積と実質的に同面積である。
このはみ出した部分25aの面積は、図6に示すように、筒状の植毛穴23の中心軸と平行な方向から見た(植毛穴23の中心軸に直交する面に投影したときの)、内周面24よりはみ出した部分25aの面積であり、平線の上端位置P1(図3参照)において測定することが好ましい。植毛穴23は、円形又は楕円形であることが好ましく、特に円形であることが好ましい。ここで、平線25における、植毛穴23からはみ出した部分25a,25aとはみ出していない部分25bとの境界は、植毛穴23の形状によらず、平線を挟んでその両側に位置する植毛穴23の内周面どうしを直線26で結び、この直線26を境界とする。また、植毛台21の外周部に位置する植毛穴23に打ち込まれた平線は、平線の長さ方向25Xの両端に位置するはみ出した部分25a,25aの一方が、植毛穴23の中心によって囲まれた植毛領域の外側に位置する場合がある。はみ出した部分25a,25aの面積の総和S2を求める際には、植毛領域外に位置するはみ出した部分25aの面積は計算に入れない(合計しない)。
平線のはみ出し率には、平線25の厚みT25(図6参照)も影響するが、平線25の厚みT25は、0.15〜0.25mm、特に0.20〜0.25mmであることが好ましい。平線25の材質は特に制限されず、従来、平線に用いられている各種の材料を用いることができる。例えば、金属や合成樹脂等を用いることができるが、ステンレス、真鍮製の平線、特に真鍮製の平線を用いることが好ましい。
また、平線25の長さL25(図3,図6参照)は、植毛穴23における、平線25の長さ方向と同方向の内寸E(植毛穴23が円形の場合は植毛穴23の直径に同じ)との差(L25−E)が0.3〜0.5mm、特に0.35〜0.45mmであること好ましい。
また、平線25の高さH25(図3参照)は、0.12〜0.16mmが好ましく、さらに0.14〜0.15mmであること好ましい。
本実施形態の歯ブラシ1は、植毛穴を小さくして該植毛台に数多くの植毛穴を形成した場合であっても、植毛台21に、長手方向の反りが生じにくい。
植毛穴を小さくして植毛台に数多くの植毛穴を形成する場合の例としては、例えば、植毛穴23の中心によって囲まれた植毛領域の面積S1を、植毛穴23の個数(植毛台に設けられた植毛穴23の全数)で除して得られる、植毛穴の一個当たりの植毛領域の面積が2.2〜3.8mm2である場合が挙げられる。但し、ここで、植毛穴23の個数は、植毛穴23の中心によって囲まれた植毛領域から外れた領域は含まないため、例えば図5における植毛穴23bは1/3個であって、植毛穴23fは2/3個となる。
また、植毛穴23の直径(非円形の場合は円相当径)は、植毛穴を多数形成して、歯ブラシの毛束を歯間に入り易くしたり、小さな植毛穴を多数設けて植毛密度を高めることによって歯や歯ぐきを傷つけにくいソフトな感触と高い刷掃能力の両立を図る観点から0.8〜1.5mmであることが好ましく、さらに1.0〜1.4mm、さらに1.0〜1.2mmが好ましい。
また、前述した植毛穴列に関し、同一の植毛穴列中の相隣接する植毛穴23間の距離L3(図6参照)は、0.5〜1.0mm、特に0.6〜0.9mmであることが好ましく、隣接する植毛穴列の植毛穴23間の距離L4(図6参照)は、0.5〜1.0mm、特に0.6〜0.9mmであることが好ましい。
本実施形態の歯ブラシ1は、植毛台21を構成する樹脂の曲げ応力が60〜120Mpaである。
従来、歯ブラシの植毛台の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)等が広く用いられているが、植毛台21の構成樹脂として、曲げ応力が低いポリプロピレン樹脂を用いた場合には、植毛台に、長手方向の反りが生じ易い。
これに対して、植毛台21の構成樹脂に曲げ応力60Mpa以上の構成樹脂を用いると、平線のはみ出し率を上記範囲としたり、植毛台の厚みや植毛穴の底部から植毛台下面までの厚みを後述する範囲としても、植毛台に長手方向の反りが生じ難くなる。また、平線を打ち込む際に、平線が樹脂に負けてしまったり、打ち込み機械の設定が一定であるにもかかわらず平線を予定の角度で打ち込むことができなくなる等の問題を抑制する観点から樹脂の曲げ応力は120Mpa以下の合成樹脂を用いる。このような観点から、植毛台21を構成する樹脂の曲げ応力は70〜100Mpaであることがより好ましい。
曲げ応力が60〜120Mpaの合成樹脂としては、当該物性を満足し得る各種公知の樹脂を特に制限なく用いることができるが、例えば、ポリアセタール樹脂(POM)、飽和ポリエステル(酸変成ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートコポリマー(PCTA)、グリコール変成ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートコポリマー(PCTG))、ポリスチレン(PS)等を用いることが好ましい。
また、植毛台21を構成する樹脂は、上記の樹脂成分に、他の樹脂成分、例えばポリカーボネート、ポリイミド等の樹脂成分を加えたブレンド樹脂であっても良い。
植毛台21を構成する樹脂の曲げ応力は、以下のようにして測定される。
<曲げ応力の測定方法>
曲げ応力は、JIS K−7203(1987)に規定された方法に従って測定される。
本実施形態の歯ブラシ1は、植毛台21の上面21aから下面21bまでの厚みA(図3参照)が3〜4.8mmであり、好ましくは3.3〜4.5mmである。
また、本実施形態の歯ブラシ1は、植毛穴23の底部23dから植毛台21の下面21bまでの厚みD(図3参照)が0.5〜3mmであり、好ましくは0.7〜2mmであり、さらに好ましくは0.7〜1.5mmである。
前述した特定の樹脂を用いると共に、厚みA及びDを、それぞれ上記の範囲とすることで、平線のはみ出し率を上記範囲としても、植毛台に、長手方向の反りが生じ難くなる。
植毛台の厚みを可能な範囲で小さくしつつ、植毛穴に毛束を強固に固定し得る植毛穴の深さを確保し、又は植毛台の反りを防止する観点から、厚みAに対する厚さDの比(D/A)は、0.25〜0.3、特に0.25〜0.28であることが好ましい。同様の観点から、植毛穴の深さ(A−D)は、2〜4mm、好ましくは2〜3.5mm、さらに好ましくは2.4〜3.3mmであることが好ましい。
また、植毛台21の前記厚みAは、植毛台21の長手方向の長さL1に対する割合(A/L1)が、0.1〜0.3、特に0.12〜0.28であることが好ましい。
また、本実施形態の歯ブラシ1においては、図6に示すように、平線25は、植毛台21の長手方向(X方向)に対する角度θが、0度超90度未満であり、より好ましくは10〜60度である。角度θが90度の場合は、毛束が平線25に沿って拡がることによって、ブラシ部2の毛先が植毛台の幅方向に拡がり易い。他方、角度θが0度の場合には、平線25が、植毛台21の長手方向(X方向)に一直線状に並ぶことによって、植毛台21は平線25の打ち込みによって長手方向に亀裂が入る虞がある。
本実施形態のように、角度θを0度超90度未満とすることにより、植毛台21の長手方向の反りを防止しつつ、長手方向への亀裂と、毛先の拡がりも防止することができる。
図2に示すように、本実施形態の歯ブラシ1においては、総ての植毛穴の平線が植毛台21の長手方向(X方向)に対して同じ方向(図6中右下がりとなる方向)に傾いているが、総ての植毛穴の平線を、図2に示す方向とは反対側(図6中左下がりとなる方向)に傾かせることもできる。何れの場合も、植毛台の長手方向(X方向)に対する角度が例えば30度であれば、植毛台21の長手方向(X方向)に対する角度θを30度とする。また、植毛台の長手方向に直交する方向において、前述した1又は複数の植毛穴列毎に、平線を傾ける方向を異ならせても良い。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されるものではない。例えば、植毛穴は、深さ方向の全域において内径が均一であっても良い。
本実施形態の歯ブラシ1は、植毛台21の長手方向(X方向)の反り量Waは(図8参照)、0〜0.5mmとすることが好ましい。植毛台21の反り量Waが大きくなると、植毛されたブリッスルが抜けやすくなり、反り量Waがさらに大きくなると平線がはずれる虞がある。このような観点から、反り量Waは、さらに0〜0.3mmが好ましく、さらに0.1mmより小さいことが好ましい。
本発明における反り量Waは、植毛台21における植毛穴23のうち柄部3に最も近い植毛穴23eの中心から、植毛台21と首部32の境である、植毛台21の幅が首部32に向かって最も狭くなった括れ部までの植毛台の下面21b’を基準面Sとして植毛台21の先端1aにおいて基準面Sより下方に突出する最大突出量を反り量Wa(mm)とする。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
図1〜図6に示す形態の歯ブラシ1を製造した。
植毛穴付きの植毛台21及び柄部3からなるブラシ本体を、酸変成ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートコポリマー(PCTA)を用いて射出成形により一体成形した(射出成形工程)。使用したPCTAは、JIS K−7203に準拠して測定した曲げ応力が90MPaであった。
得られたブラシ本体における植毛台の各植毛穴に、平線25を用いて、ナイロン樹脂からなる10本のブリッスル束を2つ折りして打ち込み固定した(植毛工程)。
平線25は、長さL25=1.6mm、高さH25=0.14mm、厚みT25=1.6mmの真鍮製のものを用いた。また、平線25は、植毛台の長手方向に対して同じ側に傾かせ、前記角度θ=15度となるように打ち込んだ。
得られた歯ブラシ1の各部の寸法等を表1に示した。
〔実施例2〜5、比較例1,2〕
ブラシ本体の射出成形に使用する樹脂、植毛穴の寸法や配置、平線の寸法や打ち込み態様、ブリッスルの寸法や本数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを製造した。表1中PPは、JIS K−7203(1987)に準拠して測定した曲げ応力が40MPaのポリプロピレン樹脂である。
実施例2〜5で形成した各ブラシ本体における植毛台の植毛穴の配置を図7に示した。図7中(a)は実施例2,3、(b)は実施例4,5における植毛穴の配置を示す。平線は、実施例1と同様に傾かせて角度θ=15度となるように打ち込んだ。
Figure 0005386259
〔評価〕
得られた各歯ブラシについて、植毛台の長手方向の反りの程度、及び植毛台の長手方向に直交する方向の毛束の拡がりの程度を評価した。
〔植毛台の長手方向の反りの評価〕
実施例及び比較例で得られた各歯ブラシに関し、植毛台の長手方向の反り量Waを測定した。植毛台の手方向の反り量Waは、下記のようにして測定した(図8参照)。
図8に示すように、植毛台21における植毛穴のうち柄部3に最も近い植毛穴23eの中心から、植毛台21と首部32の境(植毛台21の幅は首部32より広いので、首部32にいたる幅が狭くなった部分を境界とする)までの範囲の植毛台の下面21b’を、植毛台21の先端1a(歯ブラシの先端に同じ)まで延長し、その平面を基準面Sとした。図8に示すように、植毛台の下面21bが、植毛台の先端1a付近において、基準面Sより下方に突出する最大突出量を反り量Wa(mm)とした。その結果を表1に示した。
〔毛束の拡がりの程度の評価〕
歯ブラシをその先端1a側から視て、ブリッスルの毛先が、植毛台の長手方向に直交する方向(Y方向)にどの程度拡がっているかを目視観察した。結果は、何れの歯ブラシも、ブリッスル束は植毛台の上面21aに対してほぼ直立しており、植毛台の長手方向に直交する方向へのブリッスルの毛先の拡がりはほぼ観察されなかった。
これらの結果から判るように、本発明の実施例の歯ブラシは、植毛穴を小さくして植毛台に数多くの植毛穴を形成しているにも拘わらず、柄部の長手方向に直交する方向への毛束の広がり及び植毛台の長手方向の反りが効果的に抑制されていることが判る。
1 歯ブラシ
2 ブラシ部
21 植毛台
21a 上面
21b 下面
22 ブリッスル
23 植毛穴
24 植毛穴の内周面
25 平線
25a 平線における、植毛穴の内周面より外方にはみ出した部分
26 境界
3 柄部
31 把持部
32 柄部
X 植毛台の長手方向
Y 植毛台の長手方向に直交する方向

Claims (4)

  1. 植毛台と柄部とを備え、植毛台の上面に開口する植毛穴に、複数本のブリッスルを束ねた毛束が、平線を用いて2つ折りにして植毛されており、該植毛台の植毛穴の中心によって囲まれた植毛領域の面積が70〜150mm2である歯ブラシであって、
    前記植毛穴に打ち込まれた平線における該植毛穴の内周面より外方にはみ出した部分の面積の総和は、前記植毛領域の面積に対する割合が0.02〜0.08であり、
    前記植毛台を構成する樹脂の曲げ応力が60〜120Mpaであり、
    前記植毛台の上面から下面までの厚みが3〜4.8mmであり、
    前記植毛穴の底部から前記植毛台の下面までの厚みが0.5〜3mmであり、
    前記平線は、前記植毛台の長手方向に対する角度が0度超90度未満である歯ブラシ。
  2. 前記植毛領域の面積を、前記植毛穴の個数で除して得られる、植毛穴の一個当たりの植毛領域の面積が2.2〜3.8mm2である、請求項1記載の歯ブラシ。
  3. 前記植毛穴が、直径0.8〜1.5mmの円形状である、請求項1又は2記載の歯ブラシ。
  4. 前記植毛台の長手方向の反り量が、0.0〜0.5mmである、請求項1〜3の何れかに記載の歯ブラシ。
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