以下、本発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、記憶回路部に有機化合物を含む半導体装置の記憶回路部へのデータの書き込み方法について図1〜図4を用いて説明する。
図1(A)は、複数のメモリセル221がマトリクス状に設けられたメモリセルアレイ222、カラムデコーダ226aと読み出し回路226bとセレクタ226cを有するビット線駆動回路226、ロウデコーダ224aとレベルシフタ224bを有するワード線駆動回路224、書き込み回路等を有し外部とのやりとりを行うインターフェース223を有する半導体装置の模式図である。なお、ここで示す記憶回路216の構成はあくまで一例であり、センスアンプ、出力回路、バッファ等の他の回路を有していてもよいし、書き込み回路をビット線駆動回路に設けてもよい。
該複数のメモリセル221のそれぞれは、少なくとも、トランジスタ240と記憶素子(有機メモリ素子)241を有しており、当該トランジスタ240はワード線Wy(1≦y≦n)を構成する第1の配線とビット線Bx(1≦x≦m)を構成する第2の配線に電気的に接続されている。なお、有機メモリ素子241は、第1の導電層と有機化合物層と第2の導電層との積層構造を有する。
ここで、図1(B)に、メモリセルアレイ222の上面構造の一例を示す。メモリセルアレイ222は、第1の方向に延びた第1の配線231と、第1の方向と異なる第2の方向(ここでは、垂直方向)に延びた第2の配線232とがマトリクス状に設けられている。また、ここでは、第2の配線232はトランジスタ240のソース領域またはドレイン領域と電気的に接続されており、第1の配線231はトランジスタ240のゲート電極に電気的に接続されている。さらに、第2の配線232と接続されていないトランジスタ240のソース領域またはドレイン領域は、第1の導電層243と電気的に接続されている。なお、図1(B)には図示しないが、第1の導電層243と有機化合物層と第2の導電層との積層構造によって図1(A)に示す有機メモリ素子241が複数形成されている。
本実施の形態において、有機メモリ素子へのデータの書き込みは図2に示すレーザ照射装置を用いて行う。図2において、レーザ照射装置1001は、レーザビームを照射する際の各種制御を実行するコンピュータ(以下、PCと称す。)1002と、レーザビームを出力するレーザ発振器1003と、偏向器1004と、コリメートレンズ1005と、透過型の回折光学素子1006と、投影レンズ1007と、ミラー1008と、X軸ステージおよびY軸ステージを有する搬送ステージ1012、1013を備えている。
レーザ発振器1003としては、紫外光、可視光、又は赤外光を発振することが可能なレーザ発振器を用いることができる。レーザ発振器としては、KrF、ArF、KrCl、XeCl、XeF等のエキシマレーザ発振器、He−Cd、Ar、He−Ne、等の気体レーザ発振器、YAG、GdVO4、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶にYb、Cr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti又はTmをドープした結晶を使った固体レーザ発振器、GaN、GaAs、GaAlAs、InGaAsP等の半導体レーザ発振器を用いることができる。なお、固体レーザ発振器においては、基本波か第2高調波〜第5高調波を適用するのが好ましい。
まず、レーザ発振器1003から射出したレーザビームは偏向器1004を通過する。本実施の形態では、偏向器としてAOD(音響光学偏向器)を用いる例を示す。なお偏向器1004はこれに限定されず、例えば、ガルバノミラーを使用してレーザビームの進行方向を制御してもよい。AODとは、光学媒体内での音響光学効果によりレーザビームの偏向を行うものである。なお、この際の偏向角度は、下記の式(1)で表される。
θ=λfa/Va・・・(1)
ここで、λは波長、faは音響周波数、Vaは音響波速度をあらわす。なお、光学媒体は波長や偏向方向、レーザパワーなどに応じて適宜選択する。例えば、可視領域では、ガリウムリン、二酸化テルル、インジウムリンなどの材質を使用することができる。
次に、偏向器1004によって音響周波数に比例した偏向角度で偏向されたレーザビームはコリメートレンズ1005に入射する。コリメートレンズ1005の焦点距離はfcとし、偏向器1004から距離fc離れた位置に配置する。これによりコリメートレンズ1005を通過したレーザビームは偏向器1004の偏向角度によらず、すべて光軸と平行方向に進行することになる。なお、ここでコリメートレンズ1005は、レーザビームの進行方向を制御することで回折光学素子の設計を容易にし、回折効率を上げるために使用しているものである。したがって、露光プロセスに対して十分に許容される回折効率や、ビーム特性が得られる回折光学素子が設計できる場合、コリメートレンズ1005は使用しなくてもよい。
続いて、コリメートレンズ1005を通過したレーザビームは、透過型の回折光学素子1006に入射する。なお、ここで用いる回折光学素子は、屈折や反射により光をコントロールするのではなく、その面構造の回折現象によりレーザビームの挙動をコントロールするものである。回折光学素子の設計は、ORA(Optimal Rotation Angle)法などにより、位相分布を最適化することにより行われる。また、波動光学的解析を行うことのできる光学設計ソフトで自動設計することも可能である。回折光学素子としては、2値位相格子、あるいは、多値位相格子または連続位相格子などを適用することができる。なお、本実施の形態において、透過型の回折光学素子1006はレーザビームを分岐させる機能を持たせて設計する。
また、回折光学素子1006で分岐させたレーザビームは、すべて、図中の1009の領域に集光させるように設計する。なお、本実施の形態において、領域1009において集光された複数のビームスポットは紙面垂直方向に並んで形成されている。そして、領域1009を通過したレーザビームは投影レンズ1007に入射する。投影レンズ1007は、領域1009に形成されたビームスポットを基板1010上の照射面に投影するために設置したものである。領域1009と該照射面は互いに共役の関係となっており、領域1009から投影レンズ1007までの距離をa、投影レンズ1007から該照射面までの距離をb、投影レンズ1007の焦点距離をfとおくと、式(2)の共役方程式が成立している。
1/f=1/a+1/b・・・(2)
なお、投影レンズ1007は、領域1009に形成された点を該照射面に転送することにより、縮小投影などを可能にし、該照射面に対してより微細な加工ができるように設置するものである。したがって、領域1009に所望のビームスポットが形成されている場合、投影レンズ1007は設置しなくともかまわない。また、ここでは回折光学素子1006に集光機能を持たせたが、コリメート光のままレーザビームを分岐させ、投影レンズ1007を集光レンズとして使って照射面である基板1010に集光させてもよい。
続いて、投影レンズ1007を通過したレーザビームはミラー1008により、基板1010上の照射面の方向にその進行方向が偏向される。なお、基板1010上には、導電層、有機化合物層、絶縁層などが積層されており、上記の光学系を通過したレーザビームが照射される。ここで照射されるレーザビームのパターンは、回折光学素子1006を構成する個々の回折光学素子のパターンに応じて形成される。
ここで、図3に、図2の紙面に平行な方向から見たときの基板1010の断面の模式図を示す。なお、図3は、図1(B)に示したメモリセルアレイ222のaとbとを結ぶ破線における基板1010の断面図を示している。本実施の形態において、基板1010上には、記憶素子部のスイッチング素子として機能するトランジスタ240、層間絶縁膜270、トランジスタ240のソース電極又はドレイン電極として機能する第1の導電層243、第1の絶縁層249、有機化合物層244、第2の導電層245、第2の絶縁層256が設けられている。また、第1の導電層243と有機化合物層244と第2の導電層245とを有する領域が有機メモリ素子241に対応する。本実施の形態では、有機メモリ素子241が5個形成された形態について説明するが、有機メモリ素子241の個数は任意に設定することができる。
次に、ミラー1008で偏向されたレーザビームは、透光性を有する導電層側(ここでは第2の導電層245とする)から、有機化合物層244に照射される(図3(B))。ここでは、所望の部分の有機メモリ素子241に含まれる有機化合物層244にレーザ照射装置を用いて複数箇所に選択的にレーザビームを照射して当該有機化合物層244の状態を部分的(選択的)に変化させる。つまり、該複数の有機メモリ素子241のうちの少なくとも2つ以上の有機メモリ素子を選択してレーザビームを照射し、選択された該有機メモリ素子を構成する有機化合物層にレーザビームを照射する。該レーザビームが照射された部分の有機化合物層は、炭化して絶縁化するため、当該破壊された有機化合物層を含む有機メモリ素子と破壊されていない有機化合物層を含む有機メモリ素子とを比較した場合、第1の導電層と第2の導電層間の電気抵抗が大幅に大きくなる。なお、図3(B)において、炭化して絶縁化された有機化合物層を領域201として示す。このように、レーザビームの照射により、有機化合物層244を挟んで設けられた2つの導電層間の電気抵抗が変化することを利用してデータの書き込みを行う。例えば、レーザビームを照射していない有機化合物層を含む有機メモリ素子を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、所望の部分の有機化合物層に選択的にレーザビームを照射して破壊することによって電気抵抗を大きくする。なお、本実施の形態では、レーザビームを第2の導電層245側から有機化合物層244に照射する構造としたが、第1の導電層243側から照射する構造としてもよい。その場合、基板1010、導電層243等は透光性を有しており、基板1010側から有機化合物層244へ選択的にレーザビームを照射して有機化合物層244を部分的に絶縁化する。また、第2の導電層245を形成する前に有機化合物層244にレーザビームを照射してもよい。
レーザビームを照射する場合、有機メモリ素子の電気抵抗の変化は、メモリセル221の大きさによるが、レンズ等の光学系を用いてビームスポットの直径を数マイクロメートル程度に絞ったレーザビームの照射により実現する。例えば、径が1μmのレーザビームが10m/secの速度で通過するとき、1つのメモリセル221に含まれる有機メモリ素子にレーザビームが照射される時間は100nsecとなる。100nsecという短い時間内で有機化合物層の相を変化させるためには、例えばレーザパワーは10mW、パワー密度は10kW/mm2とするとよい。
なお、基板1010は吸着ステージ1011に吸着されており、吸着ステージ1011は搬送ステージ1012により図2のX軸方向に沿って搬送される。また、基板をステージに固定する手段は吸着ステージに限らず、単純に固定具などで基板をステージに押しつけて固定してもよい。このときの搬送速度は所望のレーザ照射パターンの間隔に応じて適宜決定するとよい。例えば、X軸方向にDX(μm)の間隔でレーザ照射を行いたい場合、パルスレーザのレーザ発振器の発振周波数をH(Hz)とすると、搬送ステージ1012の搬送速度VX(m/sec)は下記の式(3)で決定できる。
VX=DX×H×10−6・・・(3)
例えば、発振周波数が1kHzのレーザを用いてX軸方向に100μm間隔でレーザ照射を行う場合、搬送速度は10cm/secとすればよい。X軸方向の走査が終わったら、搬送ステージ1013で基板をY軸方向に動作させる。所望の位置までY軸方向の動作が終わったら、再びX軸方向に搬送ステージ1012を動作させながらレーザ照射を行う。
なお、レーザ発振器1003にパルス発振レーザを用い、パルスごとに偏向器1004の偏向角度を変えてレーザ照射を行う場合、レーザ発振器1003の発振間隔と、偏向器1004の偏向周期とは完全に同期させて行う必要がある。また、基板面内に精密に位置決めしてレーザ照射を行うためには、搬送ステージ1012、または1013の動作とレーザ発振器1003および偏向器1004とを連動して動作させる必要がある。その場合、コンピューター1002によりこれらの動作を制御するとよい。具体的には、搬送ステージ1012、1013には、その位置を確認することのできるエンコーダーが付属しており、コンピューター1002でエンコーダーからの位置情報を把握する。さらに、所望の位置に搬送ステージが到達した時点で、レーザ発振器1003に対して動作信号を出力する。レーザ発振器1003には内部シャッターが備えられており、動作信号を受けた瞬間に、シャッターが開き、レーザ照射が開始される。また、コンピューター1002は、基板面内のレーザ照射パターンを記憶したメモリから、X軸方向に並んだ照射ユニットの照射パターンをあらかじめ読み込んでおく。搬送ステージ1012をX軸方向に動作させ、レーザ発振器1003を発振させたところで、この読み込んだパターン順に偏向器1004の偏向角度を制御する。なお、レーザ発振器1003と偏向器1004の動作を同期させるためには、レーザ発振器1003からレーザ発振周期で発生するトリガー信号をモニターし、これに合わせて偏向器1004を動作させるとよい。または、レーザ発振器1003から射出するレーザビームの一部を光電素子などでモニターし、これによる電気信号に同期させて偏向器1004を動作させる構成としてもよい。なお、ここでは1つのレーザパルスで1箇所の照射パターンを照射する例について示したが、本発明のレーザ照射装置の構成はこれに限定されない。例えば、感光性が悪い材料にレーザ照射する場合などには、1つのレーザ照射パターンにつき複数のレーザパルスを重ねて照射する構成としてもよい。図2に示すレーザ照射装置を用いることにより、一度の照射で有機半導体層上の複数箇所へレーザビームを照射することが可能となる。なお、レーザ照射装置の構成は、図2に示すものに限られず、レーザ発振器1003から射出したレーザビームを照射面上で複数に分岐できるものであればよい。
次に、データの読み出しを行う際の動作について説明する。本実施の形態において、データの読み出しは、電気的作用により行い、有機メモリ素子241の電気特性がデータ「0」を有するメモリセルとデータ「1」を有するメモリセルとで異なることを利用して行う。例えば、データ「0」を有するメモリセルを構成する記憶素子の電気抵抗が読み出し電圧においてR0、データ「1」を有するメモリセルを構成する記憶素子の電気抵抗が読み出し電圧においてR1とし、電気抵抗の差を利用して読み出す方法を説明する。なお、R1<<R0とする。読み出し回路226bは、読み出し部分の構成として、例えば、図4(A)に示す抵抗素子246と差動増幅器247を用いたビット線駆動回路226を考えることができる。抵抗素子は抵抗値Rrを有し、R1<Rr<R0であるとする。抵抗素子246の代わりに、トランジスタ248を用いても良いし、差動増幅器の代わりにクロックドインバータ229を用いることも可能である(図4(B))。勿論、回路構成は図4(A)、(B)に限定されない。
y行x列目メモリセル221からデータの読み出しを行う場合、まず、インターフェース223を介してロウデコーダ224a、カラムデコーダ226aおよびセレクタ226cによってメモリセル221を選択する。具体的には、ロウデコーダ224aによって、メモリセル221に接続されるワード線Wyに所定の電圧V24を印加する。また、カラムデコーダ226aとセレクタ226cによって、メモリセル221に接続されるビット線Bxを読み出し回路226bの端子Pに接続する。その結果、端子Pの電位Vpは、Vcomと抵抗素子246の一端に印加されたV0が抵抗素子246(抵抗値Rr)と有機メモリ素子241(抵抗値R0もしくはR1)による抵抗分割によって決定される値となる。従って、メモリセル221がデータ「0」を有する場合には、Vp0=Vcom+(V0−Vcom)×R0/(R0+Rr)となる。また、メモリセル221がデータ「1」を有する場合には、Vp1=Vcom+(V0−Vcom)×R1/(R1+Rr)となる。その結果、図4(A)では、VrefをVp0とVp1の間となるように選択することで、図4(B)では、クロックトインバータの変化点をVp0とVp1の間となるように選択することで、出力電位Voutが、データ「0」/「1」に応じて、Lo/Hi(もしくはHi/Lo)となり、読み出しを行うことができる。
例えば、差動増幅器をVdd=3Vで動作させ、Vcom=0V、V0=3V、Vref=1.5Vとする。仮に、R0/Rr=Rr/R1=9とすると、メモリセルのデータが「0」の場合、Vp0=2.7VとなりVoutとしてハイの電圧が出力され、メモリセルのデータが「1」の場合、Vp1=0.3VとなりVoutとしてローの電圧が出力される。こうして、メモリセルの読み出しを行うことができる。
上記の方法によると、有機メモリ素子の抵抗値の相違と抵抗分割を利用して、電圧値で読み取っている。勿論、読み出し方法は、この方法に限定されない。例えば、電気抵抗の差を利用する以外に、電流値の差を利用して読み出しても構わない。また、メモリセルの電気特性が、データ「0」と「1」とで、しきい値電圧が異なるダイオード特性を有する場合には、しきい値電圧の差を利用して読み出しても構わない。
上記構成を有する有機メモリおよび当該有機メモリを備えた半導体装置は、不揮発性メモリであるため、データを保持するための電源を内蔵する必要がない。従って、小型、薄型、軽量の半導体装置を提供することができる。また、有機化合物材料を有機化合物層として用いることによって、データの書き込み(追記)は可能であるが、データの書き換えを行うことはできない記憶素子とすることができる。従って、偽造を防止し、セキュリティを確保した半導体装置を提供することができる。
なお、本実施の形態では、アクティブマトリクス型の有機メモリおよび当該有機メモリを備えた半導体装置を例に挙げて説明を行ったが、パッシブマトリクス型の記憶回路を有する場合であっても、同様にデータの書き込みまたは読み出しを行うことができる。
本実施の形態において、一度の照射で有機化合物層上の複数箇所にレーザビームを照射することが可能であるため、有機化合物層を含む記憶素子を有する半導体装置へのデータの書き込み速度を向上させ、該半導体装置の生産性を向上することが可能となる。また、例えばIDチップ等に該半導体装置を用いることでIDチップの生産性を向上させ、IDチップを安価に量産することが可能となる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、有機化合物層にレーザビームを照射するための図2に示したレーザ照射装置とは異なる構成のレーザ照射装置の構成について説明する。図5を用いて、回折光学素子として反射型の回折光学素子を用いる装置構成及びレーザ照射方法について説明する。
図5は、本実施の形態のレーザ照射装置の模式図である。レーザ発振器401から射出したレーザビームは、偏向器を通過する。本実施の形態では、偏向器として音響光学偏向器(AOD)402を使用した例について示す。なお、本発明で使用する偏向器はAODに限定されない。例えば、ガルバノミラーを使用してレーザビームの進行方向を制御してもよい。AODとは、光学媒体内での音響光学効果によりレーザビームの偏向を行うものである。AODに加えられた音響周波数に比例した偏向角度で偏向されたレーザビームは反射型の回折光学素子403に入射する。なお、回折光学素子403はレーザビームを基板方向に偏向させ、かつ分岐させる機能を持たせて設計する。AOD402で偏向されたレーザビームは、それぞれのパターンを形成する回折光学素子のいずれかに入射させるようにする。また、反射型回折光学素子403で分岐させたレーザビームは、すべて、図中の領域404に集光させるように設計する。なお、本実施の形態において、領域404において集光された複数のビームスポットは、紙面垂直方向に並んで形成されている。そして、領域404を通過したレーザビームは投影レンズ405に入射する。投影レンズ405は、領域404に形成されたビームスポットを照射面に投影するために設置したものである。領域404と照射面は互いに共役の関係となっており、領域404から投影レンズ405までの距離をa、投影レンズ405から照射面までの距離をb、投影レンズ405の焦点距離をfとおくと、式(4)の共役方程式が成立している。
1/f=1/a+1/b・・・(4)
なお、投影レンズ405は、領域404に形成された点を照射面に転送することにより、縮小投影などを可能にし、照射面に対してより微細な加工ができるように設置するものである。したがって、領域404に所望のビームスポットが形成されている場合、投影レンズ405は設置しなくともかまわない。また、この例では回折光学素子403に集光機能を持たせたが、この機能を付与せずに投影レンズ405を集光レンズとして用い基板406に集光させてもよい。投影レンズ405を通過したレーザビームは照射面である基板406に照射される。基板406には、半導体膜、導電膜、レジスト層などが積層されており、上記の光学系によりレーザビームが照射される。ここで照射されるレーザビームのパターンは、回折光学素子403を構成する個々の回折光学素子のパターンに応じて形成される。基板406は吸着ステージ407に吸着されており、吸着ステージ407は搬送ステージ408により図中のX軸に沿って搬送される。また、基板をステージに固定する手段は吸着ステージに限らず、単純に固定具などで基板をステージに押しつけて固定してもよい。このときの搬送速度は所望のレーザ照射パターンの間隔に応じて適宜決定するとよい。例えば、X軸方向にDX(μm)の間隔でレーザ照射を行いたい場合、パルスレーザのレーザ発振器の発振周波数をH(Hz)とすると、搬送ステージ408の搬送速度VX(m/sec)は下記の式(5)で決定できる。
VX=DX×H×10−6・・・(5)
例えば発振周波数が1kHzのレーザを用いてX軸方向に100μm間隔でレーザ照射を行う場合、搬送速度は10cm/secとすればよい。X軸方向の走査が終わったら、搬送ステージ409で基板をY軸方向に動作させる。所望の位置までY軸方向の動作が終わったら、再びX軸方向に搬送ステージ408を動作させながらレーザ照射を行う。
なお、レーザ発振器401にパルス発振レーザを用い、パルスごとにAOD402の偏向角度を変えてレーザ照射を行う場合、レーザ発振器401の発振間隔と、AOD402の偏向周期とは完全に同期させて行う必要がある。また、基板面内に精密に位置決めしてレーザ照射を行うためには、ステージ408、または409の動作とレーザ発振器401およびAOD402とを連動して動作させる必要がある。その場合、コンピューター410によりこれらの動作を制御するとよい。具体的には、ステージ408、409には、その位置を確認することのできるエンコーダーが付属しており、コンピューター410でエンコーダーからの位置情報を把握する。さらに、所望の位置に搬送ステージが到達した時点で、レーザ発振器401に対して動作信号を出力する。レーザ発振器401には内部シャッターが備えられており、動作信号を受けた瞬間に、シャッターが開き、レーザ照射が開始される。また、コンピューター410は、基板面内のレーザ照射パターンを記憶したメモリから、X軸方向に並んだ照射ユニットの照射パターンをあらかじめ読み込んでおく。搬送ステージ408をX軸方向に動作させ、レーザ発振器401を発振させたところで、この読み込んだパターン順にAOD402の偏向角度を制御する。なお、レーザ発振器401とAOD402の動作を同期させるためには、レーザ発振器からレーザ発振周期で発生するトリガー信号をモニターし、これに合わせてAOD402を動作させるとよい。または、レーザ発振器から射出するレーザビームの一部を光電素子などでモニターし、これによる電気信号に同期させてAOD402を動作させる構成としてもよい。なお、ここでは1つのレーザパルスで1箇所の照射パターンを照射する例について示したが、本発明のレーザ照射装置の構成はこれに限定されない。それぞれの有機化合物材料に最適な方法で照射するために、1つのレーザ照射パターンにつき複数のレーザパルスを重ねて照射する構成としてもよい。
本実施の形態に示したレーザ照射装置は、一度の照射で有機化合物層上の複数箇所にレーザビームを照射することが可能であるため、有機化合物層を含む記憶素子を有する半導体装置へのデータの書き込み速度を向上させ、該半導体装置の生産性を向上することが可能となる。また、例えばIDチップ等に該半導体装置を用いることでIDチップの生産性を向上させ、IDチップを安価に量産することが可能となる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、図2、図5に示したレーザ照射装置とは異なる構成のレーザ照射装置の構成について説明する。本実施の形態では、様々な照射パターンを形成することのできる光学系を複数配置し、複数の照射点に対して効率的にレーザビームを照射することが可能であるレーザ照射装置及びレーザ照射方法について説明する。
図6は、本実施の形態のレーザ照射装置の斜視図を示したものである。図6に示すレーザ照射装置は、素子設置台510上に4組の光学系が設置されている。本実施の形態において、1組の光学系はレーザ発振器501、偏向器502、コリメートレンズ503、回折光学素子504、ミラー505、投影レンズ506をそれぞれ1つずつ有している。レーザ発振器501から射出したレーザビームは、偏向器を通過する。本実施例では、偏向器としてAOD(音響光学偏向器)502を使用した例について示す。なお、本発明で使用する偏向器はAODに限定されない。例えばガルバノミラーを使用し、レーザビームの進行方向を制御してもよい。AODとは、光学媒体内での音響光学効果によりレーザビームの偏向を行うものである。
次に、AODに加えられた音響周波数に比例した偏向角度で偏向されたレーザビームはコリメートレンズ503に入射する。コリメートレンズ503の焦点距離はfcとし、AOD502から距離fc離れた位置に配置する。これによりコリメートレンズ503を通過したレーザビームはAODの偏向角度によらず、すべて光軸と平行方向に進行することになる。なお、ここでコリメートレンズ503は、レーザビームの進行方向を制御することで回折光学素子の設計を容易にし、回折効率を上げるために使用しているものである。したがって、露光プロセスに対して十分に許容される回折効率や、ビーム特性が得られる回折光学素子が設計できる場合、コリメートレンズ503は使用しなくてもよい。
次に、レーザビームは透過型の回折光学素子504に入射する。回折光学素子504はレーザビームを分岐させる機能を持たせて設計する。ここで、AOD502で偏向されたレーザビームは、それぞれのパターンを形成する回折光学素子のいずれかに入射させるようにする。4台のレーザ発振器501から射出された4本のレーザビームはそれぞれ1本ずつ4枚の回折光学素子504のいずれかに入射する。そして、それぞれのレーザビームは、回折光学素子504を通過することにより複数のレーザビームに分岐される。つまり、複数のレーザ発振器から射出したレーザビームそれぞれは異なる複数の偏向器に入射され、前記偏向器を通過した複数のレーザビームそれぞれは異なる複数の回折光学素子に入射され、前記回折光学素子を通過することで1本の前記レーザビームは複数に分岐されている。
また、回折光学素子で分岐させたレーザビームは、ミラー505により、照射面の方向にその進行方向が偏向される。ミラー505により偏向されたレーザビームは投影レンズ506を通過する。投影レンズは回折光学素子により形成されたビームスポットを照射面である基板507上に投影するために使用するものである。前記の投影を縮小投影とすると、照射面に対して微細な加工が可能となる。なお、上記の光学素子は、素子設置台510に配置されている。また、上記と同じ素子構成からなる複数の光学系を素子設置台510に並べて設置する。図6は同じ素子構成からなる4つの光学系を設置した例について示しているが、光学系の構成についてはこれに限定されない。
図6に示すレーザ照射装置を用いることにより、4台のレーザ発振器から射出された複数のレーザビームを同一基板上に同時にレーザ照射することが可能であり、レーザ照射工程のスループットを向上させることができる。なお、レーザ照射装置内に設置する光学系の数についてはこれに限定されない。光学系を構成する素子サイズや、所望の量産性等を勘案し適宜決定するとよい。
基板507には、導電層、有機化合物層、絶縁層などが積層されており、上記の光学系によりレーザビームが照射される。ここで照射されるレーザビームのパターンは、回折光学素子504を構成する個々の回折光学素子のパターンに応じて形成される。基板507は吸着ステージ508に吸着されており、吸着ステージ508は搬送ステージ509により図中のX軸に沿って搬送される。また、基板をステージに固定する手段は吸着ステージに限らず、単純に固定具などで基板をステージに押しつけて固定してもよい。このときの搬送速度は所望のレーザ照射パターンの間隔に応じて適宜決定するとよい。例えば、X軸方向にDX(μm)の間隔でレーザ照射を行いたい場合、パルスレーザのレーザ発振器の発振周波数をH(Hz)とすると、搬送ステージ509の搬送速度VX(m/sec)は下記の式(6)で決定できる。
VX=DX×H×10−6・・・(6)
例えば、発振周波数が1kHzのレーザを用いてX軸方向に100μm間隔でレーザ照射を行う場合、搬送速度は10cm/secとすればよい。X軸方向の走査が終わったら、素子設置台510を載せた搬送ステージ511をY軸方向に動作させる。所望の位置までY軸方向の動作が終わったら、再びX軸方向に搬送ステージ509を動作させながらレーザ照射を行う。
本実施の形態に示したレーザ照射装置は、一度の照射で有機化合物層上の複数箇所にレーザビームを照射することが可能であるため、有機化合物層を含む記憶素子を有する半導体装置へのデータの書き込み速度を向上させ、該半導体装置の生産性を向上することが可能となる。また、例えばIDチップ等に該半導体装置を用いることでIDチップの生産性を向上させ、IDチップを安価に量産することが可能となる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、図2、図5〜6とは異なる構成のレーザ照射装置について説明する。図7を用いて、透過型回折光学素子によりレーザビームを多数に分割してデジタルマイクロミラーデバイス(以下、DMDという)に入射して、基板表面に選択的にレーザビームを照射する例について示す。なお、DMDとは、微小なマイクロミラーを2次元的に配列した光変調器の一種である。
図7において、破線矢印はレーザビームの進行方向を示している。ここで、レーザ発振器101から射出したレーザビームは、ミラー102で偏向され、エキスパンダ103に入射する。エキスパンダ103は、例えば凸レンズを2枚配置することにより、レーザビームのビーム径を拡大する機能を有するものである。エキスパンダ103を通過したレーザビームは回折光学素子104に入射する。なお、ここでエキスパンダ103は、ビーム径を広げることにより、回折光学素子104の切削間隔などの、設計上の制約を緩和するために使用するものである。したがって、レーザ発振器から射出するレーザビームのビーム径が十分大きい場合にはエキスパンダ103は使用しなくともかまわない。回折光学素子104はレーザビームを分割し、複数のビームスポットを形成するために使用する。なお、ここでは回折光学素子104として透過型の回折光学素子を使用した例について示すが、本発明のレーザ照射装置はこの構成に限定されない。例えば反射型の回折光学素子を光学系内に配置する構成としてもよい。
回折光学素子104は、分割された複数のビームスポットそれぞれが等しいビームパラメータを持つように設計する。これにより、例えばガウシアン状のエネルギー分布を持つビームを使用したとしても、回折光学素子を使用することにより、等しいエネルギーを持つ複数のビームスポットを形成することができる。なおここで用いる回折光学素子は、その面構造の回折現象によりレーザビームの挙動をコントロールするものである。回折光学素子の設計は、ORA(Optimal Rotation Angle)法などにより、位相分布を最適化することにより行われる。また、波動光学的解析を行うことのできる光学設計ソフトで自動設計することも可能である。回折光学素子としては、2値位相格子、あるいは、多値位相格子または連続位相格子などを適用することができる。
次に、回折光学素子104により分割されたレーザビームがDMD105に集光される。DMDを構成するマイクロミラーの数は、回折光学素子により分割されたレーザビームの数と等しく、それぞれのレーザビームはマイクロミラー面上に集光される。一般的に、DMDを構成する複数のマイクロミラー間には隙間が存在し、該マイクロミラー間の隙間にレーザビームが入射すると迷光の原因になる。また、上記のマイクロミラー間の隙間により、デバイス内部にレーザビームが入り込むことで温度上昇やデバイスの損傷が起こり、チャタリングなどの動作不良を引き起こす問題もある。そこで、図7に示すレーザ照射装置では、回折光学素子により、ビームスポットを分岐し、マイクロミラーよりも小さいスポットサイズにレーザビームを集光する。ここで、マイクロミラーに形状的な歪みがある場合、歪みはマイクロミラーの四隅において特に大きくなる。したがって、上記の構成により、歪みに起因するビームスポット形状の変動を防止できる。なお、マイクロミラー中央部の領域は、マイクロミラーの角度調整機構であるヨークに接続するポストが形成されている領域である。したがって、中央部の領域を避けるようにビームスポットをマイクロミラー中心部とビーム端の間の位置などに集光させる構成としてもよい。なおこのような位置にビームスポットを形成させたい場合、ビームスポットを数μm程度まで集光する必要がある。この場合、回折光学素子104により形成されるビームスポットを投影光学系によりDMD105上に縮小投影する構成としてもよい。以上の構成により、DMD105におけるレーザビームの損失を防止し、レーザビームの利用効率を向上させることが可能である。
次に、DMD105で照射面方向に偏向されたレーザビームは、投影レンズ106に入射する(図7)。投影レンズはDMD105上に形成されたビームスポットを照射面である基板108に投影するために配置するものである。そのため、DMD105と基板108は互いに共役となる位置に配置されている。ここで、DMD105を構成するマイクロミラーは、デジタル的にその設置角度が制御される。例えば、基板上にレーザ照射を行う場合、マイクロミラーの傾斜角度を+10度とし、基板上にレーザ照射を行わない場合、マイクロミラーの傾斜角度を−10度とする。ここで、マイクロミラーの傾斜角度が−10度のときは、マイクロミラーにより反射されたレーザビームは遮光板107上に到達し遮光されるため、基板108表面に照射されない。上記の構成によりレーザビームの基板108への照射(オン)と照射しない(オフ)を制御することができるため、基板108上に所望の照射パターンを形成することができる。
本実施の形態において、基板108は吸着ステージ109に吸着されている。さらに吸着ステージ109はX軸方向に動作する搬送ステージ110とY軸方向に動作する搬送ステージ111上に設置されている。これにより、ある露光領域の照射が終わったところで、搬送ステージ110または111を動作させ、新たな露光領域に対して所望の照射パターンでレーザ照射を行う。このサイクルを繰り返すことにより、基板全面にレーザ照射を行うことが可能になる。なお、基板をステージに固定する手段は吸着ステージに限らず、単純に固定具などで基板をステージに押しつけて固定してもよい。
本実施の形態に示したレーザ照射装置は、一度の照射で有機化合物層上の複数箇所にレーザビームを照射することが可能であるため、有機化合物層を含む記憶素子を有する半導体装置へのデータの書き込み速度を向上させ、該半導体装置の生産性を向上することが可能となる。また、例えばIDチップ等に該半導体装置を用いることでIDチップの生産性を向上させ、IDチップを安価に量産することが可能となる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、反射型の回折光学素子によりレーザビームを多数に分割してDMDに入射させレーザ照射する例について示す。
図8において、レーザ発振器301から射出したレーザビームは、エキスパンダ302に入射する。なお、図8中の破線矢印はレーザビームの進行方向を示している。エキスパンダ302は、例えば凸レンズを2枚配置することにより、レーザビームのビーム径を拡大する機能を有するものである。エキスパンダ302を通過したレーザビームは反射型の回折光学素子303に入射する。なお、ここでエキスパンダ302は、ビーム径を広げることにより、回折光学素子303の切削間隔などの、設計上の制約を緩和するために使用するものである。したがって、レーザ発振器から射出するレーザビームのビーム径が十分大きい場合にはエキスパンダ302は使用しなくともかまわない。回折光学素子303はレーザビームを分割し、複数のビームスポットを形成するために使用する。また、分割された複数のビームスポットそれぞれが等しいビームパラメータを持つように設計する。これにより、例えばガウシアン状のエネルギー分布を持つビームを使用したとしても、回折光学素子を使用することにより、等しいエネルギーを持つ複数のビームスポットを形成することができる。なおここで用いる回折光学素子は、その面構造の回折現象によりレーザビームの挙動をコントロールするものである。回折光学素子の設計は、ORA(Optimal Rotation Angle)法などにより、位相分布を最適化することにより行われる。また、波動光学的解析を行うことのできる光学設計ソフトで自動設計することも可能である。回折光学素子としては、2値位相格子、あるいは、多値位相格子または連続位相格子などを適用することができる。
次に、回折光学素子303により分割されたレーザビームがDMD304に集光される。DMDを構成するマイクロミラーの数は、回折光学素子により分割されたレーザビームの数と等しく、それぞれのレーザビームはマイクロミラー面上に集光される。
次に、DMD304で照射面方向に偏向されたレーザビームは、投影レンズ305に入射する(図8)。投影レンズはDMD304上に形成されたビームスポットを照射面である基板307に投影するために配置するものである。そのため、DMD304と基板307は互いに共役となる位置に配置されている。ここで、DMD304を構成するマイクロミラーは、デジタル的にその設置角度が制御される。例えば、基板上にレーザ照射を行う場合、マイクロミラーの傾斜角度を+10度とし、基板上にレーザ照射を行わない場合、マイクロミラーの傾斜角度を−10度とする。ここで、マイクロミラーの傾斜角度が−10度のときは、マイクロミラーにより反射されたレーザビームは遮光板306上に到達し遮光されるため、基板307表面に照射されない。上記の構成によりレーザビームの基板307表面への照射(オン)と照射しない(オフ)を制御することができるため、基板307上に所望の照射パターンを形成することができる。
本実施の形態において、基板307は、吸着ステージ308に吸着されている。さらに吸着ステージ308はX軸方向に動作する搬送ステージ309とY軸方向に動作する搬送ステージ310上に設置されている。これにより、ある露光領域の照射が終わったところで、搬送ステージ309または310を動作させ、新たな露光領域に対して所望の照射パターンでレーザ照射を行う。このサイクルを繰り返すことにより、基板全面にレーザ照射を行うことが可能になる。なお、基板をステージに固定する手段は吸着ステージに限らず、単純に固定具などで基板をステージに押しつけて固定してもよい。
本実施の形態に示したレーザ照射装置は、一度の照射で有機化合物層上の複数箇所にレーザビームを照射することが可能であるため、有機化合物層を含む記憶素子を有する半導体装置へのデータの書き込み速度を向上させ、該半導体装置の生産性を向上することが可能となる。また、例えばIDチップ等に該半導体装置を用いることでIDチップの生産性を向上させ、IDチップを安価に量産することが可能となる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、図1とは異なる構成の有機化合物層を含んだ記憶回路部の構成例を説明する。図9を用いて、記憶回路部の構成がパッシブマトリクス型の場合に関して示す。
図9(A)は、メモリセル21がマトリクス状に設けられたメモリセルアレイ22、カラムデコーダ26aと読み出し回路26bとセレクタ26cを有するビット線駆動回路26、ロウデコーダ24aとレベルシフタ24bを有するワード線駆動回路24、書き込み回路等を有し外部とのやりとりを行うインターフェース23を有する半導体装置の模式図である。なお、ここで示す記憶回路部16の構成はあくまで一例であり、センスアンプ、出力回路、バッファ等の他の回路を有していてもよいし、書き込み回路をビット線駆動回路に設けてもよい。
メモリセル21は、一対の導電層間に有機化合物層が設けられた構造(以下、「有機メモリ素子」とも記す)を有しており、ここでは、ワード線Wy(1≦y≦n)を構成する第1の導電層と、有機化合物層と、ビット線Bx(1≦x≦m)を構成する第2の導電層との積層構造を有している。有機化合物層は、第1の導電層と第2の導電層の間に単層または積層して設けられている。
図9(B)に、メモリセルアレイ22の上面構造の模式図を示す。メモリセルアレイ22は、第1の方向に延びた第1の導電層27と、第1の導電層27を覆って設けられた有機化合物層と、第1の方向と異なる第2の方向(ここでは、垂直方向)に延びた第2の導電層28とを有している。第1の導電層27と第2の導電層28との間に有機化合物層が設けられている。なお、第1の導電層27はワード線Wyに、第2の導電層28はビット線Bxにそれぞれ対応している。
次に、有機メモリ素子を含むメモリセルアレイの作製方法に関して図10を用いて説明する。なお、図10では、図9(B)に示したメモリセルアレイ22におけるA−B間の断面構造を例に挙げて示す。
まず、基板30上に導電性を有する組成物を選択的に吐出することによって、第1の導電層27を形成する(図10(A))。また、第1の導電層27は、液滴吐出法に限らず、蒸着法、スパッタ法、CVD法、スピンコート法、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等を用いて形成してもよい。例えば、スパッタ法やCVD法で導電性を有する材料を全面に形成した後にフォトリソグラフィ法を用いて選択的にエッチングすることにより第1の導電層27とすることができる。
次に、第1の導電層27を覆うように有機化合物層29を形成する(図10(B))。有機化合物層29は、液滴吐出法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、スピンコート法または蒸着法等を用いて形成することができる。これらの方法を用いることによって作業効率を向上させることができる。
次に、有機化合物層29上に導電性を有する組成物を選択的に吐出することによって、第2の導電層28を形成する(図10(C))。ここでは、第1の導電層27と有機化合物層29と第2の導電層28との積層構造で構成された有機メモリ素子を複数有する記憶素子部39が形成される。また、第2の導電層28は、上記第1の導電層の形成で示したように他の方法を用いて形成することができる。第2の導電層28は、第1の導電層27と異なる方法を用いて形成してもよく、例えば、第1の導電層27をCVD法やスパッタ法で導電性を有する材料を全面に形成した後に選択的にエッチングして第1の導電層27を形成し、第2の導電層28を液滴吐出法やスクリーン印刷法等により直接選択的に形成することができる。この場合、第2の導電層28の形成にエッチングを行わなくてよいため、有機化合物層29へのダメージを抑制することができる。
次に、第2の導電層28を覆うように保護膜として機能する絶縁層31を設ける(図10(D))。
以上の工程により、有機メモリ素子を含むパッシブマトリクス型のメモリセルアレイを形成することができる。続いて、実施の形態1〜5に示したレーザ照射装置を用いて、有機化合物層29に選択的にレーザビームを照射して有機化合物層29を部分的に破壊することにより、有機メモリ素子にデータの書き込みを行う。本実施の形態において、炭化して絶縁化されることにより破壊された有機化合物層を領域201と示す(図10(E))。当該破壊された有機化合物層を含む有機メモリ素子と破壊されていない有機化合物層を含む有機メモリ素子とを比較した場合、前者の方が第1の導電層27と第2の導電層28間の電気抵抗が大幅に大きくなる。
次に、上述した各工程で用いる材料等に関して具体的に説明を行う。基板30としては、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレスを含む金属基板または半導体基板の表面に絶縁層を形成したものを用いても良い。PET等のプラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることが可能である。なお、基板30の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいても良い。
第1の導電層27と第2の導電層28としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、炭素(C)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等から選ばれた一種の元素または当該元素を複数含む合金からなる単層または積層構造を用いることができる。上記元素を複数含んだ合金としては、例えば、AlとTiとCを含んだ合金、AlとNiを含んだ合金、AlとCを含んだ合金、AlとNiとCを含んだ合金またはAlとMoを含んだ合金等を用いることができる。他にもドーピング等で導電率を向上させた導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の錯体等も用いることができる。また、レーザビームが照射される側に形成される導電層(本実施の形態では第2の導電層28)には、レーザビームを透過する透明導電材料を用いることが好ましい。透明導電材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などその他の透光性酸化物導電材料を用いることが可能である。酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(ITSO)や、酸化珪素を含む酸化インジウムにさらに2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛(ZnO)を混合したターゲットを用いて形成されたものを用いても良い。導電層は上記材料を用いて、液滴吐出法、蒸着法、スパッタ法、CVD法、スピンコート法、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等で形成することができる。例えば、Agを液滴吐出法で選択的に形成したものや、Alを蒸着法により形成したものを用いることができる。
有機化合物層29は、導電性を有する有機化合物材料からなる層を単層または積層構造で設ける。導電性を有する有機化合物材料の具体例としては、キャリア輸送性を有する高分子化合物等が挙げられる。
キャリア輸送性を有する高分子化合物として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、[メトキシ−5−(2−エチル)ヘキシロキシ]−p−フェニレンビニレン(MEH−PPV)、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PAF)、ポリ(9−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリピレン類、ポリカルバゾール類等を用いることができる。また、上記高分子化合物より重合度が小さいオリゴマー等を用いてもよい。有機化合物層29は、これらの材料を用いて、スピンコート法、液滴吐出法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法または蒸着法等を用いて形成することができる。
絶縁層31としては、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)等の酸素または窒素を有する無機材料等の単層構造またはこれらの積層構造を用いることができる。他にも、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ、シロキサン等の有機材料等により、単層又は積層構造で形成する。また、無機材料と有機材料を積層させて設けてもよい。シロキサン材料とは、Si−O−Si結合を含む材料に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。
なお、図10に示した構成はあくまで一例であり、この構成に限られない。上記構成と異なる場合に関して図11に示す。
図10では、第1の導電層27を覆うように全面に有機化合物層29を形成しているが、隣接する各々のメモリセル間において横方向への電界の影響が懸念される場合は、各メモリセルに設けられた有機化合物層を分離するため、各メモリセルに設けられた有機化合物層間に絶縁層32を設けてもよい(図11(A))。つまり、メモリセルごとに有機化合物層29を選択的に設ける。この場合、液滴吐出法、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等を用いて有機化合物層を各メモリセルに選択的に形成することによって効率よく設けることができる。
また、第1の導電層27を覆って有機化合物層29を設ける際に、第1の導電層27間の段差により生じる有機化合物層29の段切れや各メモリセル間における横方向への電界の影響を防止するために第1の導電層27の端部を覆うように、第1の導電層27間に絶縁層37を設けてもよい(図11(B))。この場合、液滴吐出法を用いることによって、複数の第1の導電層27間に選択的に絶縁層37を形成することができる。
また、図10の構成において、第1の導電層27と有機化合物層29との間に、整流性を有する素子を設けてもよい(図11(C))。整流性を有する素子とは、代表的には、ショットキーダイオード、PN接合を有するダイオード、PIN接合を有するダイオード、あるいはゲート電極とドレイン電極を接続したトランジスタである。もちろん、他の構成のダイオードでも構わない。ここでは、第1の導電層と有機化合物層の間に、半導体層34、35を含むPN接合ダイオードを設けた場合を示す。半導体層34、35のうち、一方はN型半導体であり、他方はP型半導体である。このように、整流作用を有する素子を設けることにより、読み出しや書き込み動作のマージンや正確性を向上させることができる。
また、図10では基板30上に有機メモリ素子を複数有する記憶素子部39を設ける構成を示したが、これに限られず、基板30上に薄膜トランジスタ(TFT)779を設けてその上方に記憶素子部39を形成してもよい(図11(D))。また、基板30としてSi等の半導体基板やSOI基板を用いて当該基板をトランジスタチャネル領域として利用する電界効果トランジスタ(FET)778を形成し、その上方に記憶素子部39を形成してもよい(図11(E))。なお、ここでは、記憶素子部39を薄膜トランジスタ779または電界効果トランジスタ778の上方に形成する例を示したが、記憶素子部39と薄膜トランジスタ779または電界効果トランジスタ778を貼り合わせることによって設けてもよい。この場合、記憶素子部39と薄膜トランジスタ779または電界効果トランジスタ778は、別工程で作製し、その後、導電性フィルム等を用いて貼り合わせることによって設けることができる。また、薄膜トランジスタ779または電界効果トランジスタ778の構成はどのような構成を用いてもよい。
このように、本実施の形態では、記憶素子に含まれる有機化合物層としてキャリア輸送性を有する高分子材料を液滴吐出法、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法またはスピンコート法等により設けることができるため、作製が容易であり安価な記憶装置または半導体装置を作製することができる。また、本実施の形態で示した記憶素子部は微細な構造で作製することが可能であるため、大きい容量を有する記憶回路を有する半導体装置を得ることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる半導体装置の一例に関して図面を用いて説明する。
本実施の形態で示す半導体装置は、非接触でデータの読み出しと書き込みが可能であることを特徴としており、データの伝送形式は、一対のコイルを対向に配置して相互誘導によって交信を行う電磁結合方式、誘導電磁界によって交信する電磁誘導方式、電波を利用して交信する電波方式の3つに大別されるが、いずれの方式を用いてもよい。また、データの伝送に用いるアンテナは2通りの設け方があり、1つは複数の素子および記憶素子が設けられた基板上にアンテナを設ける場合、もう1つは複数の素子および記憶素子が設けられた基板に端子部を設け、当該端子部に別の基板に設けられたアンテナを接続して設ける場合がある。
まず、複数の素子および記憶素子が設けられた基板上にアンテナを設ける場合の半導体装置の一構成例を図12を用いて説明する。
図12(A)はパッシブマトリクス型で構成される有機メモリを有する半導体装置を示しており、基板350上に複数のトランジスタ451を含む素子形成層351が設けられ、素子形成層351の上方に複数の有機メモリ素子を含んだ記憶素子部352とアンテナ部353が設けられている。なお、ここでは素子形成層351の上方に記憶素子部352またはアンテナ部353を設けた場合を示しているが、この構成に限られず記憶素子部352またはアンテナ部353を、素子形成層351の下方や同一の層に設けることも可能である。
基板350としては、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレスを含む金属基板または半導体基板の表面に絶縁層を形成したものを用いても良い。PET等のプラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることが可能である。なお、基板350の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいても良い。
記憶素子部352に含まれる複数の有機メモリ素子は、第1の導電層361と有機化合物層362と第2の導電層363とが積層して設けられ、第2の導電層363を覆って保護膜として機能する絶縁層366が形成されている。ここでは、各メモリセル間(複数の有機メモリ素子同士の間)に絶縁層364を設けて有機化合物層362をメモリセルごとに設けているが、有機化合物層362は第1の導電層361を覆うように全面に形成してもよい。なお、記憶素子部352は上記実施の形態で示した材料または作製方法を用いて形成することができる。
また、記憶素子部352において、上記実施の形態で示したように、第1の導電層361と有機化合物層362との間、または有機化合物層362と第2の導電層363との間に整流性を有する素子を設けてもよい。
アンテナ部353は、アンテナとして機能する導電層355が設けられている。ここでは、導電層355は第1の導電層361と同一の層に設けられており、導電層355と第1の導電層361を同一の材料を用いて一緒に形成してもよい。また、導電層355は、絶縁層364または絶縁層366上に形成してもよい。絶縁層364上に設ける場合は、第2の導電層363と同じ材料を用いて一緒に形成することができる。
アンテナとして機能する導電層355は、波形整形回路や整流回路を構成するトランジスタに接続されている。ここでは、アンテナとして機能する導電層355は複数のトランジスタ451のいずれかに電気的に接続されている。また、非接触で外部から送られてきたデータは波形整形回路や整流回路で処理された後、読み込み回路や書き込み回路を介して有機メモリ素子とデータのやりとり(データの書き込みや読み込み)が行われる。
導電層355の材料としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)等から選ばれた一種の元素または当該元素を複数含む合金等を用いることができる。また、導電層355は、蒸着法、スパッタ法、CVD法、液滴吐出法、スクリーン印刷法またはグラビア印刷等を用いて形成することができる。
素子形成層351は、少なくともトランジスタを有している。当該トランジスタにより、CPU(central processing unit)、メモリまたはマイクロプロセッサ等のありとあらゆる集積回路を設けることができる。また、本実施の形態において、素子形成層351に含まれるトランジスタ451は、pチャネル型TFT、nチャネル型TFTとすることができる。また、トランジスタ451に含まれる半導体層の構造もどのようなものを用いてもよく、例えば不純物領域(ソース領域、ドレイン領域、LDD領域を含む)を形成してもよい。また、ゲート電極の側面と接するように絶縁層(サイドウォール)を形成してもよいし、ソース領域、ドレイン領域、ゲート電極にシリサイド層を形成してもよい。シリサイド層の材料としては、ニッケル、タングステン、モリブデン、コバルト、白金等を用いることができる。
また、素子形成層351に含まれるトランジスタ451は、当該トランジスタのチャネル領域を有機材料で形成した有機トランジスタで設けてもよい。この場合、基板350としてプラスチック等の可撓性を有する基板上に、直接印刷法や液滴吐出法等を用いて有機トランジスタを有する素子形成層351を形成することができる。またこの際、上述したように記憶素子部352も液滴吐出法、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等を用いて形成することによってより低コストで半導体装置を作製することが可能となる。
図12(B)にアクティブマトリクス型の有機メモリを有する半導体装置の一例を示す。なお、図12(B)については、図12(A)と異なる部分に関して説明する。
図12(B)に示す半導体装置は、基板350上にトランジスタ451、354を含む素子形成層351が設けられ、素子形成層351の上方に記憶素子部356とアンテナ部353が設けられている。なお、ここではトランジスタ451と同一の層に記憶素子部356のスイッチング素子として機能するトランジスタ354を設け、素子形成層351の上方に記憶素子部356とアンテナ部353を設けた場合を示しているが、この構成に限られずトランジスタ354を素子形成層351の上方や下方に設けてもよいし、記憶素子部356やアンテナ部353を、素子形成層351の下方や同一の層に設けることも可能である。
記憶素子部356に含まれる複数の有機メモリ素子は、第1の導電層371と有機化合物層372と第2の導電層373が積層して設けられており、第2の導電層373を覆うように保護膜として絶縁層376が形成されている。また、ここでは、第1の導電層371の端部を覆うように絶縁層374が形成され、有機化合物層372が各メモリセルに選択的に形成されているが、第1の導電層371および絶縁層374を覆うように全面に形成してもよい。なお、記憶素子部356は上記実施の形態で示した材料または作製方法を用いて形成することができる。また、記憶素子部356においても、上述したように、第1の導電層371と有機化合物層372との間、または有機化合物層372と第2の導電層373との間に整流性を有する素子を設けてもよい。
アンテナ部353に設けられた導電層355は、第1の導電層371と同一の層に形成してもよいし、絶縁層374または絶縁層376上に形成してもよい。導電層355を第1の導電層371または第2の導電層373と同一の層上に設ける場合は、それぞれ第1の導電層371または第2の導電層373と同じ材料を用いて一緒に形成することもできる。アンテナとして機能する導電層355は、波形整形回路や整流回路を構成するトランジスタに接続されている。ここでは、アンテナとして機能する導電層355は波形整形回路や整流回路を構成するトランジスタ451に電気的に接続されている。また、非接触で外部から送られてきたデータは波形整形回路や整流回路で処理された後、読み込み回路や書き込み回路を介して有機メモリ素子とデータのやりとり(データの書き込みや読み込み)が行われる。
素子形成層351に設けられたトランジスタ354は、記憶素子部356に含まれる有機メモリ素子へのデータの書き込みまたは読み込みを行う場合にスイッチング素子として機能する。そのため、トランジスタ354はpチャネル型TFTまたはnチャネル型TFTのどちらか一方の構成を用いて設けることが好ましい。また、トランジスタ354に含まれる半導体層の構造は、どのような構成としてもよく、例えば不純物領域(ソース領域、ドレイン領域、LDD領域を含む)を形成してもよいし、pチャネル型またはnチャネル型のどちらで形成してもよい。また、ゲート電極の側面と接するように絶縁層(サイドウォール)を形成してもよいし、ソース領域、ドレイン領域、ゲート電極にシリサイド層を形成してもよい。シリサイド層の材料としては、ニッケル、タングステン、モリブデン、コバルト、白金等を用いることができる。
また、素子形成層351、記憶素子部356、アンテナ部353は、上述したように蒸着、スパッタ法、CVD法、液滴吐出法、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等を用いて形成することができる。なお、各場所によって異なる方法を用いて形成してもかまわない。例えば、高速動作が必要とされるトランジスタ451は基板上にSi等からなる半導体層を形成した後に熱処理により結晶化させて設け、その後、素子形成層351の上方にスイッチング素子として機能するトランジスタ354を液滴吐出法、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等を用いて有機トランジスタとして設けることができる。
なお、図12(B)に示す記憶素子部356において、第1の導電層371は絶縁層を介して素子形成層351のトランジスタ354のソース電極またはドレイン電極と接続する構成を示しているが、トランジスタのソース電極またはドレイン電極と同一の層に形成することも可能である。また、図12(B)では、メモリセルごとに有機化合物層372を選択的に設けているが、全面に形成してもよい。メモリセルごとに有機化合物層を設ける場合には液滴吐出法、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等を、全面に有機化合物層を設ける場合にはスピンコート法や蒸着法等を用いることが好ましい。
次に、複数の素子および記憶素子が設けられた基板に端子部を設け、当該端子部に別の基板に設けられたアンテナを接続して設ける場合の半導体装置の一構成例に関して図13を用いて説明する。なお、図13に関しては図12と異なる部分に関して説明を行う。
図13(A)は、パッシブマトリクス型の有機メモリを有する半導体装置を示している。基板350上に複数のトランジスタ451を含む素子形成層351が設けられ、素子形成層351の上方に有機メモリ素子を複数有する記憶素子部352が設けられ、基板365に設けられたアンテナ部357が素子形成層351のトランジスタ451と接続するように設けられている。なお、ここでは素子形成層351の上方に記憶素子部352またはアンテナ部357を設けた場合を示しているが、この構成に限られず記憶素子部352を素子形成層351の下方や同一の層に、またはアンテナ部357を素子形成層351の下方に設けることも可能である。
記憶素子部352に含まれる有機メモリ素子は、第1の導電層361と有機化合物層362と第2の導電層363が積層して設けられている。また、有機化合物層362の段切れや隣接するメモリセルにおいて横方向への電界の影響が懸念される場合は、メモリセルごとに有機化合物層を分離するための絶縁層を設けてもよい。なお、記憶素子部352は上記実施の形態で示した材料または作製方法を用いて形成することができる。
また、素子形成層351と記憶素子部352とが形成される基板と、アンテナ部357が設けられた基板365は、接着性を有する樹脂375により貼り合わされている。そして、素子形成層351と導電層358とは樹脂375中に含まれる導電性微粒子359を介して電気的に接続されている。また、銀ペースト、銅ペースト、カーボンペースト等の導電性接着剤や半田接合を行う方法を用いて素子形成層351と記憶素子部352とが形成される基板と、アンテナ部357が設けられた基板365とを貼り合わせてもよい。
図13(B)は、アクティブマトリクス型の有機メモリが設けられた半導体装置を示している。基板350上にトランジスタ451、354を含む素子形成層351が設けられ、素子形成層351の上方に有機メモリ素子を複数有する記憶素子部356が設けられ、基板365に設けられたアンテナ部357が素子形成層と接続するように設けられている。なお、ここでは素子形成層351においてトランジスタ451と同一の層にトランジスタ354を設け、素子形成層351の上方にアンテナ部357を設けた場合を示しているが、この構成に限られず記憶素子部356を素子形成層351の下方や同一の層に、またはアンテナ部357を素子形成層351の下方に設けることも可能である。
記憶素子部356に含まれる有機メモリ素子は、第1の導電層371と有機化合物層372と第2の導電層373が積層して設けられている。また、隣接するメモリセルにおいて横方向への電界の影響が懸念される場合は、隣接する有機化合物層を分離するために絶縁層を設けてもよい。なお、記憶素子部356は上記実施の形態で示した材料または作製方法を用いて形成することができる。
また、図13(B)においても素子形成層351と記憶素子部356とが設けられた基板と、アンテナ部357が設けられた基板は、導電性微粒子359を含む樹脂375により貼り合わせることにより設けることができる。
このように、有機メモリおよびアンテナを備えた半導体装置を形成することができる。また、本実施の形態では、トランジスタ354、451として、基板350上に薄膜トランジスタを形成して設けているが、基板350としてSi等の半導体基板を用いて、基板をチャネル部として用いた電界効果トランジスタ(FET)を形成することによって設けてもよい。また、基板350としてSOI基板を用いて、当該基板に作り込んで設けてもよい。この場合、SOI基板はウェハの貼り合わせによる方法や酸素イオンをSi基板内に打ち込むことにより内部に絶縁層を形成するSIMOXと呼ばれる方法を用いて形成することができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、薄膜トランジスタ、記憶素子およびアンテナを含む本発明の半導体装置の作製方法について、図面を参照して説明する。
まず、基板701の一表面に、剥離層702を形成する(図14(A))。基板701は、ガラス基板、石英基板、金属基板やステンレス基板の一表面に絶縁層を形成したもの、本工程の処理温度に耐えうる耐熱性があるプラスチック基板等を用いるとよい。このような基板701であれば、その面積や形状に大きな制限はないため、基板701として、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。このような利点は、円形のシリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。なお、本工程では、剥離層702は、基板701の全面に設けているが、必要に応じて、基板701の全面に剥離層を設けた後に、フォトリソグラフィ法を用いて選択的に設けてもよい。また、基板701に接するように剥離層702を形成しているが、必要に応じて、基板701に接するように下地となる絶縁層を形成し、当該絶縁層に接するように剥離層702を形成してもよい。
剥離層702は、スパッタリング法やプラズマCVD法等により、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、鉛(Pb)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる層を、単層又は積層して形成する。珪素を含む層の構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれの場合でもよい。
剥離層702が単層構造の場合、例えば、タングステン層、モリブデン層またはタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成する。あるいは、タングステンの酸化物若しくは酸化窒化物を含む層、モリブデンの酸化物若しくは酸化窒化物を含む層またはタングステンとモリブデンの混合物の酸化物若しくは酸化窒化物を含む層を形成する。なお、タングステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する。また、タングステンの酸化物は、酸化タングステンと表記することがある。
剥離層702が積層構造の場合、1層目としてタングステン層、モリブデン層またはタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成し、2層目として、タングステン、モリブデンまたはタングステンとモリブデンの混合物の酸化物、窒化物、酸化窒化物又は窒化酸化物を形成する。
なお、剥離層702として、タングステンを含む層とタングステンの酸化物を含む層の積層構造を形成する場合、タングステンを含む層を形成し、その上層に酸化珪素を含む層を形成することで、タングステン層と酸化珪素層との界面に、タングステンの酸化物を含む層が形成されることを活用してもよい。これは、タングステンの窒化物、酸化窒化物および窒化酸化物を含む層を形成する場合も同様であり、タングステンを含む層を形成後、その上層に窒化珪素層、酸化窒化珪素層、窒化酸化珪素層を形成するとよい。また、タングステンの酸化物は、WOxで表され、Xは2〜3であり、Xが2の場合(WO2)、Xが2.5の場合(W2O5)、Xが2.75の場合(W4O11)、Xが3の場合(WO3)などがある。タングステンの酸化物を形成するにあたり、上記に挙げたXの値に特に制約はなく、エッチングレート等を基に、どの酸化物を形成するかを決めるとよい。なお、エッチングレートとして最も良いものは、酸素雰囲気下で、スパッタリング法により形成するタングステンの酸化物を含む層(WOx、0<X<3)である。従って、作製時間の短縮のため、剥離層として、酸素雰囲気下でスパッタリング法によりタングステンの酸化物を含む層を形成するとよい。また、剥離層として金属層と金属酸化物を含む層の積層構造で設ける場合、金属層を形成後、当該金属層にプラズマ処理を行うことによって金属層上に金属酸化膜を形成してもよい。プラズマ処理を行う場合、酸素雰囲気下や窒素雰囲気下またはN2O雰囲気下等で行うことによって、金属膜上に金属酸化膜や金属酸窒化膜等を形成することができる。
次に、剥離層702を覆うように、下地となる絶縁層703を形成する。絶縁層703は、スパッタ法やプラズマCVD法等により、珪素の酸化物または珪素の窒化物を含む層を、単層又は積層で形成する。珪素の酸化物材料とは、珪素(Si)と酸素(O)を含む物質であり、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等が該当する。珪素の窒化物材料とは、珪素と窒素(N)を含む物質であり、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等が該当する。下地となる絶縁層が2層構造の場合、例えば、1層目として窒化酸化珪素層を形成し、2層目として酸化窒化珪素層を形成するとよい。下地となる絶縁層が3層構造の場合、1層目の絶縁層として酸化珪素層を形成し、2層目の絶縁層として窒化酸化珪素層を形成し、3層目の絶縁層として酸化窒化珪素層を形成するとよい。または、1層目の絶縁層として酸化窒化珪素層を形成し、2層目の絶縁層として窒化酸化珪素層を形成し、3層目の絶縁層として酸化窒化珪素層を形成するとよい。下地となる絶縁層は、基板701からの不純物の侵入を防止するブロッキング膜として機能する。
次に、絶縁層703上に、非晶質半導体層704(例えば非晶質珪素を含む層)を形成する。非晶質半導体層704は、スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等により、25〜200nm(好ましくは30〜150nm)の厚さで形成する。続いて、非晶質半導体層704をレーザ結晶化法、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法とレーザ結晶化法を組み合わせた方法等により結晶化して、結晶質半導体層を形成する。その後、得られた結晶質半導体層を所望の形状にエッチングして、結晶質半導体層706〜710を形成する(図14(B))。
結晶質半導体層706〜710の作成工程の一例を以下に簡単に説明すると、まず、プラズマCVD法を用いて、膜厚66nmの非晶質半導体層を形成する。次に、結晶化を助長する金属元素であるニッケルを含む溶液を非晶質半導体層上に保持させた後、非晶質半導体層に脱水素化の処理(500℃、1時間)と、熱結晶化の処理(550℃、4時間)を行って結晶質半導体層を形成する。その後、必要に応じてレーザビームを照射し、フォトリソグラフィ法によって結晶質半導体層706〜710を形成する。レーザ結晶化法で結晶質半導体層を形成する場合、連続発振またはパルス発振の気体レーザ又は固体レーザを用いる。気体レーザとしては、エキシマレーザ等を用いる。固体レーザとしては、Yb、Cr、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti又はTmがドーピングされたYAG、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶を使ったレーザや、ガラスレーザ、ルビーレーザ、Ti:サファイアレーザ等を用いる。
また、結晶化を助長する金属元素を用いて非晶質半導体層の結晶化を行うと、低温で短時間の結晶化が可能となるうえ、結晶の方向が揃うという利点がある一方、金属元素が結晶質半導体層に残存するためにオフ電流が上昇し、特性が安定しないという欠点がある。そこで、結晶質半導体層上に、ゲッタリングサイトとして機能する非晶質半導体層を形成するとよい。ゲッタリングサイトとなる非晶質半導体層には、リンやアルゴンの不純物元素を含有させる必要があるため、好適には、アルゴンを高濃度に含有させることが可能なスパッタ法で形成するとよい。その後、加熱処理(RTA法やファーネスアニール炉を用いた熱アニール等)を行って、非晶質半導体層中に金属元素を拡散させ、続いて、当該金属元素を含む非晶質半導体層を除去する。そうすると、結晶質半導体層中の金属元素の含有量を低減又は除去することができる。
次に、結晶質半導体層706〜710を覆うゲート絶縁層705を形成する。ゲート絶縁層705は、プラズマCVD法やスパッタリング法により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む層を、単層又は積層して形成する。具体的には、酸化珪素を含む層、酸化窒化珪素を含む層、窒化酸化珪素を含む層を、単層又は積層して形成する。
次に、ゲート絶縁層705上に、第1の導電層と第2の導電層を積層して形成する。第1の導電層は、プラズマCVD法やスパッタリング法により、20〜100nmの厚さで形成する。第2の導電層は、100〜400nmの厚さで形成する。第1の導電層と第2の導電層は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された元素又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成する。または、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素に代表される半導体材料により形成する。第1の導電層と第2の導電層の組み合わせの例を挙げると、窒化タンタル層とタングステン層、窒化タングステン層とタングステン層、窒化モリブデン層とモリブデン層等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、第1の導電層と第2の導電層を形成した後に、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層構造ではなく、3層構造の場合は、モリブデン層とアルミニウム層とモリブデン層の積層構造を採用するとよい。
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスクを形成し、ゲート電極とゲート線を形成するためのエッチング処理を行って、ゲート電極として機能する導電層716〜725(ゲート電極層とよぶことがある)を形成する。
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成して、結晶質半導体層706、708〜710に、イオンドープ法又はイオン注入法により、N型を付与する不純物元素を低濃度に添加して、N型不純物領域711、713〜715とチャネル形成領域780、782〜784を形成する。N型を付与する不純物元素は、15族に属する元素を用いれば良く、例えばリン(P)、砒素(As)を用いる。
次に、フォトリソグラフィ法によりレジストからなるマスクを形成して、結晶質半導体層707に、P型を付与する不純物元素を添加して、P型不純物領域712とチャネル形成領域781を形成する。P型を付与する不純物元素は、例えばボロン(B)を用いる。
次に、ゲート絶縁層705と導電層716〜725を覆うように、絶縁層を形成する。絶縁層は、プラズマCVD法やスパッタ法により、珪素、珪素の酸化物又は珪素の窒化物の無機材料を含む層や、有機樹脂などの有機材料を含む層を、単層又は積層して形成する。次に、絶縁層を、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより選択的にエッチングして、導電層716〜725の側面に接する絶縁層(サイドウォールともよばれる)739〜743を形成する(図14(C))。また、絶縁層739〜743の作製と同時に、絶縁層705がエッチングされた絶縁層734〜738を形成する。絶縁層739〜743は、後にLDD(Lightly Doped drain)領域を形成する際のドーピング用のマスクとして用いる。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて形成したレジストからなるマスクと、絶縁層739〜743をマスクとして用いて、結晶質半導体層706、708〜710にN型を付与する不純物元素を添加して、第1のN型不純物領域(LDD領域ともよぶ)727、729、731、733と、第2のN型不純物領域726、728、730、732とを形成する。第1のN型不純物領域(ソース領域、ドレイン領域ともよぶ)727、729、731、733が含む不純物元素の濃度は、第2のN型不純物領域726、728、730、732の不純物元素の濃度よりも低い。上記工程を経て、N型の薄膜トランジスタ744、746〜748と、P型の薄膜トランジスタ745が完成する。
なお、LDD領域を形成するためには、サイドウォールの絶縁層をマスクとして用いる手法がある。サイドウォールの絶縁層をマスクとして用いる手法は、LDD領域の幅の制御が容易であり、また、LDD領域を確実に形成することができる。
続いて、薄膜トランジスタ744〜748を覆うように、絶縁層を単層又は積層して形成する(図15(A))。薄膜トランジスタ744〜748を覆う絶縁層は、SOG法、液滴吐出法等により、珪素の酸化物や珪素の窒化物等の無機材料、ポリイミド、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ、シロキサン等の有機材料等により、単層又は積層で形成する。例えば、薄膜トランジスタ744〜748を覆う絶縁層が3層構造の場合、1層目の絶縁層749として酸化珪素を含む層を形成し、2層目の絶縁層750として樹脂を含む層を形成し、3層目の絶縁層751として窒化珪素を含む層を形成するとよい。
なお、絶縁層749〜751を形成する前、又は絶縁層749〜751のうちの1つ又は複数の薄膜を形成した後に、半導体層の結晶性の回復や半導体層に添加された不純物元素の活性化、半導体層の水素化を目的とした加熱処理を行うとよい。加熱処理には、熱アニール、レーザアニール法又はRTA法などを適用するとよい。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁層749〜751をエッチングして、N型不純物領域726、728、730、732、P型不純物領域712を露出させるコンタクトホールを形成する。続いて、コンタクトホールを充填するように、導電層を形成し、当該導電層をパターン加工して、ソースドレイン配線として機能する導電層752〜761を形成する。
導電層752〜761は、プラズマCVD法やスパッタリング法により、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ネオジウム(Nd)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としニッケルを含む材料、又は、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素と珪素の一方又は両方とを含む合金材料に相当する。導電層752〜761は、例えば、バリア層とアルミニウムシリコン(Al−Si)層とバリア層の積層構造、バリア層とアルミニウムシリコン(Al−Si)層と窒化チタン層とバリア層の積層構造を採用するとよい。なお、バリア層とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデン、又はモリブデンの窒化物からなる薄膜に相当する。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電層752〜761を形成する材料として最適である。また、上層と下層のバリア層を設けると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生を防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを含むバリア層を形成すると、結晶質半導体層上に薄い自然酸化膜ができていたとしても、この自然酸化膜を還元し、結晶質半導体層と良好なコンタクトをとることができる。
次に、導電層752〜761を覆うように、絶縁層762を形成する(図15(B))。絶縁層762は、SOG法、液滴吐出法等を用いて、無機材料又は有機材料により、単層又は積層で形成する。また、絶縁層762は、好適には、0.75μm〜3μmの厚さで形成する。
続いて、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁層762をエッチングして、導電層757、759、761を露出させるコンタクトホールを形成する。続いて、コンタクトホールを充填するように、導電層を形成する。導電層は、プラズマCVD法やスパッタリング法を用いて、導電性材料により形成する。次に、導電層をパターン加工して、導電層763〜765を形成する。なお、導電層763、764は、記憶素子が含む一対の導電層のうちの一方の導電層となる。従って、好適には、導電層763〜765は、チタン、又はチタンを主成分とする合金材料若しくは化合物材料により、単層又は積層で形成するとよい。チタンは、抵抗値が低いため、記憶素子のサイズの縮小につながり、高集積化を実現することができる。また、導電層763〜765を形成するためのエッチング工程においては、下層の薄膜トランジスタ744〜748にダメージを与えないために、ウエットエッチング加工を行うとよく、エッチング剤にはフッ化水素(HF)又はアンモニア過水を用いるとよい。
次に、導電層763〜765を覆うように、絶縁層766を形成する。絶縁層766は、SOG法、液滴吐出法等を用いて、無機材料又は有機材料により、単層又は積層で形成する。また、絶縁層766は、好適には、0.75μm〜3μmの厚さで形成する。続いて、フォトリソグラフィ法を用いて、絶縁層766をエッチングして、導電層763〜765を露出させるコンタクトホール767〜769を形成する。
次に、導電層765に接し、アンテナとして機能する導電層786を形成する(図16(A))。導電層786は、プラズマCVD法、スパッタリング法、印刷法、液滴吐出法等を用いて、導電性材料により形成する。好ましくは、導電層786は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、銅(Cu)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。具体的には、導電層786は、スクリーン印刷法により、銀を含むペーストを用いて形成し、その後、50〜350度の加熱処理を行って形成する。又は、スパッタリング法によりアルミニウム層を形成し、当該アルミニウム層をパターン加工することにより形成する。アルミニウム層のパターン加工は、ウエットエッチング加工を用いるとよく、ウエットエッチング加工後は200〜300度の加熱処理を行うとよい。
次に、導電層763、764に接するように有機化合物層787を形成する(図16(B))。有機化合物層787は、液滴吐出法、スピンコート法、スクリーン印刷法等により形成する。続いて、有機化合物層787に接するように、導電層771を形成する。導電層771は、スパッタリング法や蒸着法等により形成する。
以上の工程を経て、導電層763、有機化合物層787および導電層771の積層体からなる記憶素子789と、導電層764、有機化合物層787および導電層771の積層体からなる記憶素子790が完成する。
なお、上記の作製工程では、有機化合物層787の耐熱性が強くないため、アンテナとして機能する導電層786を形成する工程の後に、有機化合物層787を形成する工程を行うことを特徴とする。
次に、記憶素子789、790、アンテナとして機能する導電層786を覆うように、SOG法、液滴吐出法等により、保護層として機能する絶縁層772を形成する。絶縁層772は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの炭素を含む層、窒化珪素を含む層、窒化酸化珪素を含む層、有機材料により形成し、好ましくはエポキシ樹脂により形成する。
次に、薄膜集積回路791を基板701から剥離する。ここでは、レーザビーム(例えばUV光)を照射することによって開口部773、774を形成後(図17(A))、物理的な力を用いて基板701から薄膜集積回路791を剥離することができる。また、開口部773、774を形成後、基板701から薄膜集積回路791を剥離する前に、開口部773、774にエッチング剤を導入して、剥離層702を除去した後(図17(B))に剥離してもよい。エッチング剤は、フッ化ハロゲンまたはハロゲン間化合物を含む気体又は液体を使用する。例えば、フッ化ハロゲンを含む気体として三フッ化塩素(ClF3)を使用する。そうすると、薄膜集積回路791は、基板701から剥離された状態となる。なお、剥離層702は、全て除去せず一部分を残存させてもよい。こうすることによって、エッチング剤の消費量を抑え剥離層の除去に要する処理時間を短縮することが可能となる。また、剥離層702の除去を行った後にも、基板701上に薄膜集積回路791を保持しておくことが可能となる。
薄膜集積回路791が剥離された基板701は、コストの削減のために、再利用するとよい。また、絶縁層772は、剥離層702を除去した後に、薄膜集積回路791が飛散しないように形成したものである。薄膜集積回路791は小さく薄く軽いために、剥離層702を除去した後は、基板701に密着していないために飛散しやすい。しかしながら、薄膜集積回路791上に絶縁層772を形成することで、薄膜集積回路791に重みが付き、基板701からの飛散を防止することができる。また、薄膜集積回路791単体では薄くて軽いが、絶縁層772を形成することで、巻かれた形状になることがなく、ある程度の強度を確保することができる。
次に、薄膜集積回路791の一方の面を、第1の基体776に接着させて、基板701から完全に剥離する(図18)。続いて、薄膜集積回路791の他方の面を、第2の基体775に接着させ、その後加熱処理と加圧処理の一方又は両方を行って、薄膜集積回路791を、第1の基体776と第2の基体775により封止する。第1の基体776と第2の基体775は、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなるフィルム、繊維質な材料からなる紙、基材フィルム(ポリエステル、ポリアミド、無機蒸着フィルム、紙類等)と接着性合成樹脂フィルム(アクリル系合成樹脂、エポキシ系合成樹脂等)との積層フィルムなどを用いることができる。フィルムは、熱圧着により被処理体と接着される。加熱処理と加圧処理を行う際には、フィルムの最表面に設けられた接着層か、又は最外層に設けられた層(接着層ではない)を加熱処理によって溶かし、加圧により接着する。また、第1の基体776と第2の基体775の表面には接着層が設けられていてもよいし、接着層が設けられていなくてもよい。接着層は、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂系接着剤、樹脂添加剤等の接着剤を含む層を用いることができる。
以上の工程により、記憶素子およびアンテナを有する半導体装置を作製することができる。また、上記工程により、可撓性を有する半導体装置を得ることができる。
(実施の形態9)
実施の形態1〜8に示した半導体装置はRFIDタグとしても利用可能であり、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書籍類、記録媒体、身の回り品、乗物類、食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類および電子機器等に設けて使用することができる。これらの例に関して図19を用いて説明する。
紙幣、硬貨とは、市場に流通する金銭であり、特定の地域で貨幣と同じように通用するもの(金券)、記念コイン等を含む。有価証券類とは、小切手、証券、約束手形等を指す(図19(A)参照)。証書類とは、運転免許証、住民票等を指す(図19(B)参照)。無記名債券類とは、切手、おこめ券、各種ギフト券等を指す(図19(C)参照)。包装用容器類とは、お弁当等の包装紙、ペットボトル等を指す(図19(D)参照)。書籍類とは、書物、本等を指す(図19(E)参照)。記録媒体とは、DVDソフト、ビデオテープ等を指す(図19(F)参照)。乗物類とは、自転車等の車両、船舶等を指す(図19(G)参照)。身の回り品とは、鞄、眼鏡等を指す(図19(H)参照)。食品類とは、食料品、飲料等を指す。衣類とは、衣服、履物等を指す。保健用品類とは、医療器具、健康器具等を指す。生活用品類とは、家具、照明器具等を指す。薬品類とは、医薬品、農薬等を指す。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(テレビ受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話等を指す。
紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類等にRFIDタグを設けることにより、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、書籍類、記録媒体等、身の回り品、食品類、生活用品類、電子機器等にRFIDタグを設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。乗物類、保健用品類、薬品類等にRFIDタグを設けることにより、偽造や盗難の防止、薬品類ならば、薬の服用の間違いを防止することができる。RFIDタグの設け方としては、物品の表面に貼ったり、物品に埋め込んだりして設ける。例えば、本ならば紙に埋め込んだり、有機樹脂からなるパッケージなら当該有機樹脂に埋め込んだりするとよい。また、後に光学的作用を加えて書き込み(追記)をする場合には、チップに設けられた記憶素子の部分に光が照射できるように透明な材料で形成しておくことが好ましい。さらに、一度書き込んだデータの書き換えが不可能である記憶素子を用いることによって、効果的に偽造を防止することが可能となる。また、ユーザーが商品を購入した後のプライバシー等の問題についても、RFIDタグに設けられた記憶素子のデータを消去するシステムを設けておくことによって解決することができる。
このように、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等にRFIDタグを設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。また乗物類にRFIDタグを設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。また、動物等の生き物に埋め込むことによって、個々の生き物の識別を容易に行うことができる。例えば、家畜等の生き物にセンサを備えたRFIDタグを埋め込むことによって、生まれた年や性別または種類等はもちろん体温等の健康状態を容易に管理することが可能となる。