JP5384204B2 - 高分子トランスデューサ - Google Patents
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Description
[1]一対の電極と、当該一対の電極の間に配設され、イオン液体および高分子を含む高分子固体電解質とを有する高分子トランスデューサであって、一対の電極のうちの少なくとも一方が導電性物質、バインダーおよび有機化処理が施されている層状ケイ酸塩であるイオン交換能を有する添加剤を含む高分子トランスデューサ、
[2]前記導電性物質が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノシート、ポリアセン、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛および活性炭からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]の高分子トランスデューサ、
に関する。
本発明の高分子トランスデューサは、一対の電極と、当該一対の電極の間に配設され、イオン液体および高分子を含む高分子固体電解質とを有する。
電極における導電性物質の含有率は、多すぎると電極自体が硬くなって高分子トランスデューサの柔軟性が損なわれる場合があり、一方、少なすぎると高分子アクチュエータとして使用した場合に変位が小さくなったり、変形センサとして使用した場合に起電力が小さくなる傾向があることから、各電極の質量に基づいて1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。
電極におけるバインダーの含有率に特に制限はないが、電極の抵抗とイオンの拡散の起こりやすさの観点から、各電極の質量に基づいて1〜20質量%の範囲内であることが好ましく、3〜15質量%の範囲内であることがより好ましい。
これらのうちでも、イオン液体のイオン伝導率、入手容易性の観点から、PF6 −、ClO4 −、CF3SO3 −、C4F9SO3 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、(CN)2N−が好ましく、特にBF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−がより好ましい。
上記の層状ケイ酸塩としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;3八面体型バーミキュライト、2八面型バーミキュライト等のバーミキュライト;白雲母、金雲母、黒雲母、鱗雲母、ソーダ雲母、テニオライト、テトラシリシックマイカ等の純雲母などが挙げられる。
これらの層状ケイ酸塩やリン酸ジルコニウムは上記したカチオン交換能を有する添加剤として機能することができる。
一方、アニオン交換能を有する添加剤としては、例えば、ハイドロカルマイト、ハイドロタルサイト等を挙げることができる。
また、上記したもの以外にもイオン交換能を有する添加剤としては、層状ケイ酸塩以外の鉱物(例えば、ホウ酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、リン酸塩鉱物等)や、シリカ等の粒子の表面がイオン交換能を有する官能基で置換された変性無機添加剤;リグニンスルホン酸またはその誘導体等のカチオン交換樹脂粉末(ただし、上記バインダーとして機能していないもの);アニオン交換樹脂粉末(ただし、上記バインダーとして機能していないもの)などを挙げることができる。
上記の極性官能基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基、ニトロ基、ハロゲン原子、エポキシ基等が挙げられ、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基が好ましい。
また、イオン交換能を有する添加剤は、電極内において均一に存在していてもよいし、例えば、電極の高分子固体電解質側に偏在していてもよい。
上記のイオン液体と非相溶性の重合体ブロックの具体例としては、使用されるイオン液体の種類などにもよるが、ポリエチレンブロック、ポリプロピレンブロック等のポリオレフィンブロック;ポリスチレンブロック等の芳香族ビニル系重合体ブロック;ポリメタクリル酸イソボルニルブロック等の脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステルから構成される重合体ブロックなどが挙げられる。一方、上記のイオン液体と相溶性の重合体ブロックの具体例としては、使用されるイオン液体の種類などにもよるが、ポリメタクリル酸メチルブロック、ポリアクリル酸メチルブロック、ポリアクリル酸エチルブロック、ポリアクリル酸メトキシメチルブロック等の(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロック;ポリエチレングリコールブロック等のポリオキシアルキレンブロック;ポリε−カプロラクトン等のポリエステルブロックなどが挙げられる。
高分子固体電解質が含む高分子は1種類であっても、2種類以上であってもよいが、2種類以上とする場合には、製造工程の煩雑化を避けるため、通常2〜5種類程度であることが好ましい。
また、高分子固体電解質は、イオン液体および高分子のみからなっていてもよいが、これらの成分以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、電極が含む上記イオン交換能を有する添加剤や、後述する他の成分などが挙げられる。高分子固体電解質の全体の質量に対するイオン液体および高分子の合計の占める割合としては、60〜100質量%の範囲内であることが好ましく、70〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、80〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
(1)スチレン:
キシダ化学株式会社より購入した特級スチレンをアルミナに接触させて重合禁止剤を除去し、使用前に十分に窒素でバブリングを行って溶存酸素を除去してから用いた。
(2)メチルメタクリレート:
株式会社クラレ製のメチルメタクリレートをゼオラムに接触させて重合禁止剤を除去し、使用前に十分に窒素でバブリングを行って溶存酸素を除去してから用いた。
(3)テトラヒドロフラン:
キシダ化学株式会社より購入した特級テトラヒドロフランをナトリウム−ベンゾフェノンケチル存在下に蒸留することにより精製したものを用いた。
(4)1,1−ジフェニルエチレン:
アルドリッチ社より購入した1,1−ジフェニルエチレンを水素化カルシウム存在下に減圧蒸留することにより精製したものを用いた。
(5)塩化リチウム:
アルドリッチ社より購入した塩化リチウム(99.998%)をそのまま用いた。
(6)α,α’−ジブロモ−p−キシレン:
アルドリッチ社より購入したα,α’−ジブロモ−p−キシレンをテトラヒドロフランで希釈し、0.095M溶液として用いた。
(7)ポリ(フッ化ビニリデン−ran−ヘキサフルオロプロピレン)[PVDF/HFP]:
アルケマ社製「カイナー#2801」をそのまま用いた。
(8)エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[EMITFSI]:
日本合成化学工業株式会社より購入し、そのまま用いた。
(9)活性炭:
クラレケミカル株式会社製「YP−50F」をそのまま用いた。
(10)アセチレンブラック:
電気化学工業株式会社製「デンカブラック」をそのまま用いた。
(11)有機化処理が施された膨潤性雲母:
コープケミカル株式会社製「ソマシフ−MEE」をそのまま用いた。
(12)リグニンスルホン酸ナトリウム:
東京化成工業株式会社より購入したリグニンスルホン酸ナトリウムをそのまま用いた。
その他の材料については、目的に応じて精製を行い使用した。
高分子トランスデューサの高分子アクチュエータとしての性能試験
図1に示すとおり、15mm×5mmの大きさに切り出した高分子トランスデューサ膜10について、長さ方向に10mmを金製端子11および12で挟み、高分子アクチュエータとして動作する長さ5mmを空気中に出して測定セルとした。金製端子11と12に、ポテンショスタット13(北斗電工株式会社製「HAB−151」)の電位制御端子、および電流制御端子を接続した。金製端子11は作用電極、金製端子12は対向電極でありかつ参照電極である。高分子トランスデューサ10の金製端子11側の面の空気中に出た部分の先端から1mmの位置Pにレーザー変位計14(株式会社キーエンス製「LC−2440」)のターゲットを定めた。この状態でセルを固定し、ポテンショスタット13から金製端子11に対して、金製端子12を基準として+1Vの電圧(電位差)を印加して、30秒後にレーザー変位計14で変位量を計測し、当該変位量を高分子トランスデューサの高分子アクチュエータとしての性能を示す指標とした。なお、レーザー変位計14を設置した側への変位量を+(プラス)、レーザー変位計14を設置した側と反対側への変位量を−(マイナス)、初期状態を変位0と定義した。
(1)30mm×20mmの大きさの絶縁フィルム(熱可塑性エラストマー製、厚み約150μm)2枚のそれぞれの片面中央部に銀ペースト(日本黒鉛工業株式会社製「バニーハイトM−15A」)をスクリーン印刷で塗工することで20mm×10mmの大きさの集電体層を形成させた。
(2)図2に示すように、20mm×10mmの大きさにカットした高分子トランスデューサ膜20の両面に、それぞれ集電体層が合致するように2枚の絶縁フィルム21と22を重ね合わせ、130℃で5分間熱プレスを行って貼り合わせて測定サンプル23とした。この際、絶縁フィルム21の集電体層(図示せず)と高分子トランスデューサ膜20の間にリード線24を、および絶縁フィルム22の集電体層(図示せず)と高分子トランスデューサ膜20の間にリード線25をそれぞれ挟み込んだ。
(3)測定サンプル23を、高分子トランスデューサ膜の長さ20mmの半分の10mmが残るように固定治具26および27で挟み、リード線24および25をデータロガー28(株式会社キーエンス製「NR−ST04」)に接続した。また、与えられた変位量を測定するため、測定サンプル23の絶縁フィルム21側にレーザー変位計29(株式会社キーエンス製「LK−G155」)を設置するとともに、測定サンプル23の絶縁フィルム21側の外面の固定端から5mmの位置Pにレーザー変位計29のターゲットを定めた。この状態でレーザー変位計29側に+2mmの変位を与えたときに発生したピーク電圧をデータロガー28で測定した。上記ピーク電圧(リード線25側を基準としたリード線24側の電位)を変位量で除した値(センサ性能、単位:μV/mm)を高分子トランスデューサの変形センサとしての性能を示す指標とした。
ポリスチレン−b−ポリメチルメタクリレート−b−ポリスチレンの製造
(1)内部の水分を完全に除去した1L容ナスフラスコに磁気攪拌子を入れて、三方コックを取り付けた。アルゴン雰囲気のグローブボックス内でこのナスフラスコ内に塩化リチウム370mg(8.73mmol)を仕込んだ。ナスフラスコをグローブボックスから取り出し、ナスフラスコ内にテトラヒドロフラン560mLを仕込んだ。このナスフラスコをドライアイス/メタノールバスに浸け、−78℃に冷却したのち、sec−ブチルリチウム溶液2mL(sec−ブチルリチウムとして2.6mmol)を滴下した。この溶液にスチレン33.9mL(297mmol)をゆっくりと滴下し、−78℃で1時間重合を行った。
(2)ここに1,1−ジフェニルエチレン1.54mL(8.72mmol)を滴下した。シリンジにより極少量の重合液を抜き出しGPC測定を実施したところ、Mn=18,800、Mw/Mn=1.15であった。計算により求めた開始剤効率は63.3モル%であった。
(3)上記ナスフラスコの重合液を−78℃を保持しながら、ここにメチルメタクリレート26.9mL(252mmol)をゆっくりと加えた。メチルメタクリレートの添加により、系内は濃赤色から薄い黄色へと変化した。そのまま重合を1時間継続した。シリンジにより極少量の重合液を抜き出しGPC測定を実施したところ、Mn=31,200、Mw/Mn=1.08であり、ポリスチレン−b−ポリメチルメタクリレートが生成したことを確認した。
(5)得られた重合液を大過剰のn−ヘキサンに添加してポリマーを再沈澱させることにより、残留した1,1−ジフェニルエチレンを除去し、ポリマーをろ過により回収した。得られた白色粉体状のポリマーをトルエンに再溶解させ、この溶液を水洗し残留したリチウム塩を除去し、大過剰のメタノールを用いて再沈澱させ、ポリマーをろ過により回収した。ポリマーは50℃で24時間真空乾燥し、残留した溶媒、水を除去して用いた。
(6)以上のようにして得られたポリマーを1H−NMRにて測定したところ、ポリマー中のポリスチレンブロックの含有量は58質量%、ポリメチルメタクリレートブロックの含有量は42質量%であった。
電極膜(1)の作製
(1)乳鉢に活性炭0.1g、アセチレンブラック0.06g、PVDF/HFP0.04g、EMITFSI0.3gを取り、乳棒でよくすりつぶし、塊状の電極材料とした。
(2)得られた塊状の電極材料を、厚み100μmのスペーサと金型を用いて、130℃で熱プレスすることで電極膜(1)を得た。
電極膜(2)の作製
製造例2において乳鉢で電極材料をすりつぶす際に、さらに有機化処理が施された膨潤性雲母0.3gを添加したこと以外は製造例2と同様にして電極膜(2)を得た。
電極膜(3)の作製
製造例3において有機化処理が施された膨潤性雲母0.3gの代わりにリグニンスルホン酸ナトリウム0.3gを用いること以外は製造例3と同様にして電極膜(3)を得た。
高分子固体電解質膜の作製
(1)製造例1で得られたポリスチレン−b−ポリメチルメタクリレート−b−ポリスチレンを含むポリマー10gをテトラヒドロフラン50mLに完全に溶解させた。この溶液にEMITFSI8.4gを加え均一な溶液を得た。この溶液をPETフィルム上に広げ乾燥させた。得られた透明で柔軟な固体を50℃で一晩真空乾燥して高分子固体電解質を得た。
(2)得られた高分子固体電解質を、厚み100μmのスペーサと金型を用いて、200℃で熱プレス成形を行い高分子固体電解質膜を得た。
高分子トランスデューサ膜の作製
(1)製造例2で得られた電極膜(1)2枚で、製造例5で得られた高分子固体電解質膜の両面を挟み込み、厚み300μmのスペーサと金型を用いて、150℃で熱プレスすることで、電極膜/高分子固体電解質膜/電極膜の構成で積層された高分子トランスデューサ膜を得た。
(2)この高分子トランスデューサ膜から、垂直カッター(株式会社西脇製作所製「PF−20」)を用い、膜の中央部から所定の大きさに切り出して試験用素子とした。なお、試験用素子の両側の電極間が絶縁されていることをテスターで確認した。得られた試験用素子を用いて上記した方法により高分子トランスデューサの高分子アクチュエータおよび変形センサとしての性能を評価した。結果を以下の表1に示した。
高分子トランスデューサ膜の作製
製造例2で得られた電極膜(1)の代わりに製造例3で得られた電極膜(2)を用いること以外は比較例1と同様の操作を行い、高分子トランスデューサ膜から構成される試験用素子を得た。得られた試験用素子を用いて上記した方法により高分子トランスデューサの高分子アクチュエータおよび変形センサとしての性能を評価した。結果を以下の表1に示した。
高分子トランスデューサ膜の作製
製造例2で得られた電極膜(1)の代わりに製造例4で得られた電極膜(3)を用いること以外は比較例1と同様の操作を行い、高分子トランスデューサ膜から構成される試験用素子を得た。得られた試験用素子を用いて上記した方法により高分子トランスデューサの高分子アクチュエータおよび変形センサとしての性能を評価した。結果を以下の表1に示した。
11、12 金製端子
13 ポテンショスタット
14、29 レーザー変位計
21、22 絶縁フィルム
23 測定サンプル
24、25 リード線
26、27 固定治具
28 データロガー
Claims (2)
- 一対の電極と、当該一対の電極の間に配設され、イオン液体および高分子を含む高分子固体電解質とを有する高分子トランスデューサであって、一対の電極のうちの少なくとも一方が導電性物質、バインダーおよび有機化処理が施されている層状ケイ酸塩であるイオン交換能を有する添加剤を含む高分子トランスデューサ。
- 前記導電性物質が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノシート、ポリアセン、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛および活性炭からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の高分子トランスデューサ。
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