JP5383345B2 - ハードコート液及びプラスチックレンズの製造方法 - Google Patents
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しかしながら、アミン類の添加量が多くなると黄変が生じてしまい、すなわち黄色みの指標であるYI(Yellowness Index)値が増加してしまうという問題が生じる。
また、酸化チタンと酸化ジルコニウムから構成される複合酸化物を予め用意する場合、チタニアとジルコニアとの含有量比組成比)を調製内容に合わせて自由に選定しにくい。このため、高屈折率化と耐候性の確保とを考慮して、用途に合わせて容易に組成比を制御できるようにすることが求められている。
(1)ルチル型チタニアゾルと、ジルコニアゾルとを用意する工程と、
(2)ルチル型チタニアゾルか、ジルコニアゾルのうちいずれか一方に、アルミ系触媒を添加する工程と、
(3)更に、前記アルミ系触媒を添加した前記ルチル型チタニアゾル又はジルコニアゾルに、もう一方の前記ジルコニアゾル又はルチル型チタニアゾルを添加する工程と、
(4)前記ルチル型チタニアゾル、前記アルミ系触媒及び前記ジルコニアゾルを含む材料と、有機ケイ素化合物を1種以上含む材料と、を混合する工程と、を含み、
(5)前記ハードコート液を前記レンズ基材上に被着した後硬化する
ものである。
(1´)ルチル型チタニアゾルと、ジルコニアゾルとを用意する工程と、
(2´)前記ルチル型チタニアゾルか、ジルコニアゾルのうちいずれか一方に、アルミ系触媒を添加する工程と、
(3´)更に、前記アルミ系触媒を添加した前記ルチル型チタニアゾル又はジルコニアゾルに、もう一方の前記ジルコニアゾル又はルチル型チタニアゾルを添加する工程と、
(4´)前記ルチル型チタニアゾル、前記アルミ系触媒及び前記ジルコニアゾルを含む材料と、有機ケイ素化合物を1種以上含む材料と、を混合する工程と、を含む
ものである。
このように、両方の材料を混合した後ではなく、どちらか一方の材料にアルミ系触媒を添加しておくことで、pHを適切に調整することができる。このようなアルミ系触媒としては、Al原子に少なくとも1つの配意結合を有するアルミキレートを用いることができる。したがって、これらの材料を混合したときの凝集を十分に抑制でき、ないしは回避することができる。また、アミン類等の添加量を抑制、ないしは回避できるので、黄変を抑制することが可能となる。
本発明によるハードコート液の製造方法及びプラスチックレンズの製造方法は、眼鏡用のプラスチックレンズに好ましく適用できるが、その他のプラスチックレンズにも適用可能である。例えば眼鏡用のプラスチックレンズに適用する場合は、プラスチックより成るレンズ基材上に、必要に応じて密着性、耐衝撃性を向上させるプライマー層が形成され、その上に、本発明を適用して製造されるハードコート層が形成され、更に、少なくとも反射防止膜が形成されて構成される。
特にレンズ基材の材料として、屈折率が1.6以上程度の比較的高屈折率な材料を用いてレンズを構成する場合に、本発明を好ましく適用することができる。
前記R2の炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられ、アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられ、アシル基としては、例えばアセチル基などが挙げられる。
前記R3及びR4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、炭素数2〜4のアシル基としては、例えばアセチル基などが挙げられる。
前記炭化水素基の官能基としては、例えば、ハロゲン原子、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基などが挙げられる。
一般式(2)において、a及びbは、それぞれ0又は1の整数を示し、複数のOR3はたがいに同一でも異なっていてもよいし、複数のOR4はたがいに同一でも異なっていてもよい。
また他の有機ケイ素化合物として、アミノ系、イソシアネート系のシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種以上含むことが望ましい。
一般式(3)において、R8は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は炭素数2〜10のアシル基であり、これら各基の例としては、前記R2と同様の例が挙げられる。
また一般式(3)において、nは1又は2の整数を示し、R7が複数ある場合には複数のR7はたがいに同一でも異なっていてもよく、複数のOR8はたがいに同一でも異なっていてもよい。
また一般式(4)において、nは1又は2の整数を示し、R9が複数ある場合には複数のR9はたがいに同一でも異なっていてもよく、複数のOR10はたがいに同一でも異なっていてもよい。
先ず、有機ケイ素化合物の調製を下記の要領で行った。室温以下の温度条件、この場合30℃として、第1の容器に、有機ケイ素化合物の溶媒として、DAA(ダイアセトンアルコール)を用意した。ここに、先ず第1の有機ケイ素化合物として、γ−APS(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名A−1110)を添加し、撹拌を開始した。その後、他の有機ケイ素化合物として、γ−IPS(γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名Y−5187)を滴下し、撹拌を続けた。数時間撹拌して、これらの材料の反応を終了させた後、他の有機ケイ素化合物として、γ−GPS(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、商品名KBM403)を添加し、反応が終了するまで撹拌を続け、有機ケイ素化合物材料を完成した。
そしてこの第2の容器に蒸留水を添加し、更に、アミン系材料としてDIBA(ジイソブチルアミン)を添加した。
キレートによるpH調整の際、2番目に入れるゾルの前に蒸留水を添加しておいたほうが、よりゾルの分散安定性が優れている。また、ゾルに水を添加する際、分散溶媒として添加したメタノールと水が、混合時に熱の発生を伴うため、この段階での温度制御が重要となってくる。
室温(30℃程度)より高い状態で混合を行なった場合、ゾルの分散安定性が不安定になり、プラスチックレンズ表面に被着、硬化した際、クモリを生じやすい。したがって、室温以下、具体的には30℃以下の温度で、ルチル型チタニアゾル又はジルコニアゾルを含む材料に対して後述するようにアルミ系触媒を添加することが好ましいといえる。また、0℃未満に冷却しても特に効果は得られず、むしろコスト面で不利となる。したがって、アルミ系触媒を添加する工程の温度としては、0℃以上30℃以下とすることが望ましい。
以上の材料を、適切な時間(例えば3〜14日間、本例では8日間)かけて徐々に加水分解し、ハードコート液を調製した。
この例においては、実施例1と同様の材料を用いたが、上記表1中の実施例2の欄に示すように、上述の有機ケイ素化合物に含まれるγ−APS(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)及びγ−IPS(γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン)の混合比のみを変えてハードコート液を調製した。そしてこのハードコート液を用いてハードコート層を有するプラスチックレンズを作製した。
この例においては、実施例1及び2において用いた有機ケイ素化合物γ−APS(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)及びγ−IPS(γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン)に換えて、γ−APS(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名_A−1100)及びγ−IPS(γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名_A−1310)を用いてハードコート液を調製した。なお、その他の材料及び混合する順番等は実施例1及び2と同様とした。混合比は、上記表1の実施例3の欄に示す通りである。
この例においては、実施例3と同様の材料を用いたが、上記表1中実施例4の欄に示すように、γ−APSとγ−IPSの混合比を変え、その他の材料、混合比及び混合する順番等は実施例1〜3と同様として、ハードコート液を調製した。
この例においては、実施例1と同様の材料を用いたが、上記表1中実施例5の欄に示すように、DIBAを用いずに、その他の材料、蒸留水以外の混合比及び混合する順番等は実施例1と同様として、ハードコート液を調製した。
この例においては、実施例1及び2と同様の材料を用いたが、上記表1中比較例1欄に示すように、DIBAの添加量を、0.10質量%に増加して、ハードコート液を調製した。増加量に対応して蒸留水の混合比を減少し、その他の材料の混合割合や、混合する順番は実施例1と同様とした。
この例においては、実施例1と同様の材料、混合割合としたが、アルミ系触媒を添加する工程を、ジルコニアゾルにルチル型チタニアゾルを添加した後に行った。その他の製造工程は実施例1と同様として、ハードコート液を調製した。
[8]比較例3
この例においては、実施例1と同様の材料、混合割合としたが、室温(30℃)以下でアルミ系触媒を添加する工程を、50℃にて行った。その他の製造工程は実施例1と同様として、ハードコート液を調製した。
この例においては、実施例1のジルコニアゾルの代わりに、ルチル型チタニアゾルを同量添加した以外は実施例1と同様とし、ハードコート液を、調製した。
1.混合液の凝集の有無
ハードコート液の調製工程において、ルチル型チタニアゾルを添加した状態で、凝集の有/無についての評価を目視にて確認した。
作製して1日が経過したプラスチックレンズにおいて、目視にてレンズのクモリ、異物の有無を確認した。評価は下記の通りとした。
○:クモリ、異物がなく製品上問題ない。
×:クモリ、異物が確認できる。
熱硬化工程1日経過後のレンズに対して、YI値を分光光度計((株)日立製作所製)にて測定し、レンズの黄色変化の程度を調べた。黄色変化の評価としては、YI値を基に4段階に分類し、下記の通りとした。
◎:2.0未満
〇:2.0以上2.5未満
△:2.5以上3.0未満
×:3.0以上
スチールウール(#0000)を使用して、4kg荷重状態でプラスチックレンズ表面を20往復擦過し、レンズ表面の擦傷状態を目視にて確認した。評価は下記の通りである。
◎:ほとんど傷がつかない。
○:10本未満の傷が入る。
△:10本以上〜30本未満の傷が入る。
×:30本以上の傷が入る。
レンズ中心部厚さが1.0mm又は2.0mm(CTと記載する)で、レンズ度数パワ−が0.00D(ディオプター)のレンズを作製して、アメリカ食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)で定められているドロップボールテストを行い、以下の基準で評価した。
○:合格
×:不合格
硬化膜を有するプラスチックレンズをキセノンロングライフウェザーメーター(スガ試験機(株)製)中に200時間照射を行い、外観の変化を目視で調べた。
○:異状なし
×:クラック有り
更に、比較例2においては、アルミ系触媒を、ジルコニアゾルとチタニアゾルとを混合した後に添加するため、チタニアゾルを添加した時点で凝集が生じることがわかる。透明性も不十分であり、耐擦傷性についても、実用上問題が有る結果が得られた。
Claims (7)
- プラスチックより成るレンズ基材上に成膜されるハードコート液の製造工程として、
ルチル型チタニアゾルと、ジルコニアゾルとを用意する工程と、
前記ルチル型チタニアゾルか、ジルコニアゾルのうちいずれか一方に、アルミ系触媒を添加する工程と、
更に、前記アルミ系触媒を添加した前記ルチル型チタニアゾル又はジルコニアゾルに、もう一方の前記ジルコニアゾル又はルチル型チタニアゾルを添加する工程と、
前記ルチル型チタニアゾル、前記アルミ系触媒及び前記ジルコニアゾルを含む材料と、有機ケイ素化合物を1種以上含む材料と、を混合する工程と、を含み、
前記ハードコート液を前記レンズ基材上に被着した後硬化する
プラスチックレンズの製造方法。 - 前記アルミ系触媒として、アルミキレートを用いる請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
- 前記アルミキレートは、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウム=モノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテートのうちいずれか1種以上である請求項2に記載のプラスチックレンズの製造方法。
- 前記アルミ系触媒を添加する工程を、室温以下で行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチックレンズの製造方法。
- 前記アルミ系触媒に加え、脂肪族アミンを添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチックレンズの製造方法。
- 前記有機ケイ素化合物が、アミノ系、イソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、ビニル系、メタクリル系、スチリル系、ウレイド系、メルカプト系のシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチックレンズの製造方法。
- ルチル型チタニアゾルと、ジルコニアゾルとを用意する工程と、
前記ルチル型チタニアゾルか、ジルコニアゾルのうちいずれか一方に、アルミ系触媒を添加する工程と、
更に、前記アルミ系触媒を添加した前記ルチル型チタニアゾル又はジルコニアゾルに、もう一方の前記ジルコニアゾル又はルチル型チタニアゾルを添加する工程と、
前記ルチル型チタニアゾル、前記アルミ系触媒及び前記ジルコニアゾルを含む材料と、有機ケイ素化合物を1種以上含む材料と、を混合する工程と、を含む
ハードコート液の製造方法。
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