JP2012173411A - 光学物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光学物品は、一次粒子がつながった形状の無機酸化物微粒子(数珠状微粒子)と、バインダー成分とを含んでなるコーティング液から形成されたハードコート層を有している。本発明の光学物品は、数珠状微粒子が分散したハードコート層が光学物品の表面に形成されているので、耐擦傷性と耐クラック性の双方に優れている。
【選択図】なし
Description
例えば、球状のコロイダルシリカをバインダー樹脂中に分散させたハードコート層を有するプラスチックレンズが知られている(特許文献1参照)。このプラスチックレンズでは、バインダー樹脂に対するコロイダルシリカの配合割合を上げることで、ハードコート層の耐擦傷性を向上させることが可能である。
本実施形態の眼鏡用プラスチックレンズは、透明なプラスチック製のレンズ基材と、傷を防止するためのハードコート層と、光学多層膜である反射防止層とを備えている。レンズ基材とハードコート層との間には必要に応じてプライマー層を設けてもよい。
レンズ基材としては、プラスチック樹脂であれば特に限定されないが、眼鏡レンズの薄型化の観点より、屈折率が1.6以上、好ましくは1.65以上、より好ましくは1.7以上のものが用いられる。
このようなレンズ基材としては、例えば、透明なプラスチックである(メタ)アクリル樹脂、チオウレタン系樹脂、アリル樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)、ポリ塩化ビニル樹脂、およびハロゲン含有共重合体等が使用できる。
特に、アリルカーボネート系樹脂、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、チオウレタン系樹脂、あるいはエピスルフィド系樹脂が好ましい。これらの中では、高屈折率である点でチオウレタン系樹脂またはエピスルフィド系樹脂が特に好ましい。
本実施形態におけるハードコート層は、数珠状微粒子とバインダー成分とを含んでなるコーティング液から形成される。
図1に模式的に示すように、数珠状微粒子Jは、コーティング液中にバインダー成分とともに分散している。また、図2に示すように、より好ましい実施形態では、コーティング液中にはさらに球状微粒子Kも分散している。参考までに、図3には、球状微粒子Kのみが分散している様子を示す。なお、ハードコート層が形成された後も上述した各微粒子は同様にハードコート層中に分散している。以下、詳細に説明する。
数珠状微粒子Jは、図1、2に示すように無機酸化物からなる一次粒子が数個ないし数十個化学結合により連続して数珠状(鎖状)なったものをいい、直線状に伸びた形状であっても、二次元的、もしくは三次元的に湾曲した形状であってもよい。また、途中に分岐があってもよい。
ここで、無機酸化物としては特に限定されず、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化スズ(SnO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)、および硫酸カルシウム(CaSO4)などが挙げられる。これらの無機酸化物の中では本発明の効果の観点より、酸化ケイ素が好ましく用いられる。酸化ケイ素からなる数珠状微粒子の場合は、各一次粒子同士がシロキサン結合により連なっているものと考えられる。
一次粒子の平均粒子径が5nm未満であると、耐擦傷性や耐クラック性が十分に発揮できなくなるおそれがある。一方、一次粒子の平均粒子径が70nmを超えると光学特性に悪影響をおよぼすおそれがある。
この数珠状微粒子を構成する無機酸化物微粒子の平均一次粒子径は、BET法や電子顕微鏡法によって測定できる。
電子顕微鏡法では、まず厚さ数十nmのアモルファスカーボン膜が形成された銅製メッシュ上で数珠状微粒子を分散液(ゾル)からすくいとるか、あるいはアモルファスカーボン膜上に数珠状微粒子を吸着させる。これらの微粒子を透過型電子顕微鏡により観察して平均一次粒子径を測定する。
本実施形態では、上述したようにコーティング液がさらに球状微粒子を含むことが好ましい。球状の程度としては、発明の効果の観点より真球度(粒子の最も短い径を最も長い径で割った値)が0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。真球度(相加平均)は、電子顕微鏡による観察から求められる。
球状微粒子の平均粒子径は、動的散乱法あるいは電子顕微鏡法で測定できる。
コーティング液におけるバインダー成分は、ハードコート層において、上述した数珠状微粒子や球状の無機酸化物微粒子を分散させるための媒体となるものである。
このようなバインダー成分としては、いわゆるシランカップリング剤として知られている化合物が好適である。特に、以下の式(1)で示される有機ケイ素化合物が好ましい。
R1R2nSiX1 3−n (1)
(式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は、炭素数1から6までの炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
コーティング液中において、数珠状微粒子(J)と、球状の無機酸化物微粒子(K)との質量比(J:K)は、90:10から10:90までの範囲であることが好ましく、80:20から30:70までの範囲であることがより好ましく、80:20から50:50までの範囲であることがさらに好ましい。この範囲であると、耐擦傷性と耐クラック性のバランスに非常に優れるハードコート層を提供できる。
眼鏡レンズ表面における光の反射を防止するため、ハードコート層の表面には反射防止層が形成される。反射防止層は、ハードコート層の屈折率よりも0.1以上低い屈折率を有することが好ましい。また、反射防止層の層厚としては、50nm以上150nm以下程度が好ましい。このような反射防止層としては、無機薄層、有機薄層の単層または多層で構成される。
なお、特に不要であれば、反射防止層は形成しなくともよい。また、必要に応じて、以下に示すようなプライマー層や防汚層を形成してもよい。
プライマー層は、レンズ基材自体の最表面に形成され、レンズ基材と上述のハードコート層双方の界面に存在して、レンズ基材とハードコート層双方への密着性を発揮する性質を有し、表面処理膜全体の耐久性を向上させる役割を担う。さらに外部からの衝撃吸収層としての性質も併せ持ち、耐衝撃性を向上させる性質も有する。このようなプライマー層としては、極性を有する有機樹脂ポリマーと、酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子とを含むコーティング組成物を用いて形成されることが好ましい。なお、プライマー層の屈折率は、干渉縞の発生を避けるため、レンズ基材の屈折率に合わせることが好ましい。
レンズ基材上にプライマー層、ハードコート層および反射防止層が形成されたプラスチックレンズには、さらにプラスチックレンズ表面の撥水撥油性能を向上させる目的で、反射防止層上にフッ素を含有する有機ケイ素化合物からなる防汚層を形成することが好ましい。フッ素を含有する有機ケイ素化合物としては、例えば、特開2005−301208号公報や特開2006−126782号公報に記載されている含フッ素シラン化合物を好適に使用することができる。
以下のようにしてプラスチックレンズ基材の表面にハードコート層と反射防止層を形成して基準レンズを製造した。
ステンレス製容器内に、ブチルセロソルブ1000質量部を投入し、バインダー成分としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1200質量部を加えて十分攪拌した後、0.1モル/リットル塩酸水溶液300質量部を添加して、一昼夜攪拌を続け、シラン加水分解物を得た。このシラン加水分解物中にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)30質量部を加えて1時間攪拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、表面処理剤γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、触媒化成工業(株)製、商品名:オプトレイク)7300質量部を加えて2時間攪拌混合した。次いで、エポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名:EX−313)250質量部を加えて2時間攪拌した後、鉄(III)アセチルアセトナート20質量部を加えて1時間攪拌した。その後、2μmのフィルターで濾過を行い、ハードコート液を得た。
プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン(株)製のセイコールーシャス用(屈折率1.60))を用意した。このレンズ基材をアルカリ処理(50℃に保たれた2モル/リットルの水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬した後、純水で洗浄し、次いで25℃に保たれた1.0モル/リットル硫酸に1分間浸漬して中和処理を行った。)し、純水洗浄および乾燥、放冷を行った。
アルカリ処理したレンズ基材を、上述の工程で調製したハードコート液中に浸漬し、引き上げ速度400mm/分でディップコートし、80℃で30分間焼成した。これにより、レンズ基材の上に、層厚が2000nmのハードコート層が積層された。
ハードコート層が形成されたレンズ基材に、反射防止層を真空蒸着法にて成膜した。具体的には、プラズマ処理(アルゴンプラズマ400W×60秒)を行い、ハードコート層側から大気側に向かって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層で構成される多層の反射防止層を、真空蒸着機((株)シンクロン製)にて形成した。各層の光学的膜厚は、最初のSiO2層、次のZrO2とSiO2の等価膜層および次のZrO2層、最上層のSiO2層について、設計波長λを520nmとしてそれぞれλ/4となるように形成した。これにより、ハードコート層、および反射防止層を有するプラスチックレンズが製造された。
ハードコート液の調製に際し、複合微粒子ゾルに代えて、数珠状微粒子ゾル(日産化学製IPA-ST-UP、一次粒子の粒子径は9nmから15nm程度)を用いた以外は、基準レンズの製造例と同様にしてプラスチックレンズを製造した。ここで、数珠状微粒子ゾル(J)とバインダー成分(B)との混合質量比(固形分同士、J:B)は50:50とした。なお、ハードコート層の層厚は2000nmであった。
ハードコート液の調製に際し、数珠状微粒子ゾル(J)とバインダー成分(B)との混合質量比(固形分同士、J:B)を30:70とした以外は、実施例1と同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
ハードコート液の調製に際し、数珠状微粒子ゾル(J)とバインダー成分(B)との混合質量比(固形分同士、J:B)を60:40とした以外は、実施例1と同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
ハードコート液の調製に際し、微粒子ゾルとして、数珠状微粒子ゾル(J)に加えて、真球状の無機酸化物微粒子ゾル(K)(日産化学製IPA-ST、粒子径は10nmから15nm程度)を配合した。各微粒子ゾルとバインダー成分との混合質量比(固形分同士、J:K:B)は、40:10:50とした。それ以外は、実施例1と同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
ハードコート液の調製に際し、混合質量比(固形分同士、J:K:B)を25:25:50とした以外は、実施例3と同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
ハードコート液の調製に際し、混合質量比(固形分同士、J:K:B)を10:40:50とした以外は、実施例3と同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
実施例1におけるハードコート液の調製に際し、バインダー成分としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの代わりに、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いた以外は同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
実施例1におけるハードコート液の調製に際し、バインダー成分としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを単独で用いるのではなく、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(B1)とテトラメトキシシラン(B2)の混合物を用い、混合質量比(固形分同士、J:B1:B2)を50:40:10とした以外は同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
実施例3におけるハードコート液の調製に際し、バインダー成分としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを単独で用いるのではなく、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(B1)とメチルトリメトキシシラン(B3)の混合物を用い、混合質量比(固形分同士、J:K:B1:B3)を40:10:40:10とした以外は同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
ハードコート液の調製に際し、微粒子ゾルとして、数珠状微粒子ゾルに代えて、真球状の無機酸化物微粒子ゾル(K)(日産化学製IPA-ST、粒子径は10nmから15nm程度)を配合した。球状微粒子ゾル(K)とバインダー成分(B)との混合質量比(固形分同士、K:B)は、30:70とした。それ以外は、実施例1と同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
比較例1において、球状微粒子ゾル(K)とバインダー成分(B)との混合質量比(固形分同士、K:B)を50:50とした以外は、同様にしてプラスチックレンズを製造した。ハードコート層の層厚は2000nmであった。
上述の実施例・比較例で製造した各レンズ(試験品)について以下のような評価を行い、結果を表1に示した。
COLTS Laboratories社製ベイヤー試験機を用い、上述した条件で製造された試験品と基準レンズに対して質量500gのメディアで600回往復させて同時に傷をつけた(COLTS Laboratories社の指定する標準条件)。その傷の付いたレンズのヘイズ値(スガ試験機株式会社製自動ヘイズコンピュータ)を測定して、下記の式により、試験品と基準レンズのヘイズ値変化の比によりベイヤー比(Bayer Ratio)Rを算出した。
R=|HST1−HST0|/|HSA1−HSA0|
式中の記号は、H:ヘイズ値、ST:標準レンズ、SA:試験品の眼鏡レンズ、0:試験前、1:試験後である。
R値が大きいほど耐擦傷性が良好である。なお、メディアはZrO2:21〜23質量%、Al2O3:73質量%から77質量%まで、HfO2:0.3質量%から1.3質量%までの組成を有する硬質の砂状粒子である。
試験品と標準レンズ各々3枚について測定を行ってRを算出し、平均値を測定値とした。そして、以下の基準で各試験品を評価した
◎:R≧3
○:2≦R<3
△:1≦R<2
製造後のプラスチックレンズの表面を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:全くクラックが認められない。
△:わずかにクラックが認められる。
×:かなりクラックが目立つ。
比較例1、2は、球状微粒子のみをフィラー成分としてバインダー樹脂中に分散させたハードコートを形成してなるレンズであるが、表1の結果より、耐擦傷性と耐クラック性のバランスが悪い。すなわち、比較例1のレンズは耐クラック性には優れるものの、耐擦傷性は基準レンズと同程度である。一方、比較例2のレンズは、比較例1で用いたフィラー成分(球状微粒子)を増やしたものであり、確かに耐擦傷性は向上するものの、耐クラック性が悪化している。
これに対して、各実施例のレンズは、数珠状粒子がハードコート層中に分散しているので、耐擦傷性と耐クラック性がともに優れることがわかる。
K…球状微粒子
Claims (5)
- ハードコート層を有する光学物品であって、
前記ハードコート層は、一次粒子がつながった形状の無機酸化物微粒子と、バインダー成分とを含んでなるコーティング液から形成された
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項1に記載の光学物品において、
前記無機酸化物微粒子が酸化ケイ素微粒子である
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項1または請求項2に記載の光学物品において、
前記コーティング液がさらに球状の無機酸化物微粒子を含む
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項3に記載の光学物品において、
前記球状の無機酸化物微粒子が酸化ケイ素微粒子である
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項3または請求項4に記載の光学物品において、
前記コーティング液中において、前記一次粒子がつながった形状の無機酸化物微粒子(J)と、前記球状の無機酸化物微粒子(K)との質量比(J:K)が90:10から10:90までの範囲である
ことを特徴とする光学物品。
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