JP2013250345A - 光学物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチック基材10と、プラスチック基材の表面に設けられ、nを屈折率、λを設計波長、dを膜厚とすると、nd=(λ/4)の関係を満たす反射低減層11と、反射低減層の表面に設けられ、ポリウレタン樹脂と、金属酸化物微粒子とを含む傾斜層12と、傾斜層の表面に設けられたハードコート層13と、を含み、傾斜層12は、反射低減層11からハードコート層13に向かって屈折率が連続的または段階的に低下する。
【選択図】図1
Description
レンズ基材の屈折率を高くした場合、干渉縞の発生を防止するために、プライマー層やハードコート層についてもレンズ基材に合わせて屈折率を高くすることが必要とされる。そのため、酸化チタン等の金属酸化物をフィラーとしてハードコート層に含有させ、高屈折率化することが一般的に行われているが、屈折率は1.67程度が限界であり、干渉縞が低減できなかった。
つまり、高屈折率のレンズ基材を用いた場合に干渉縞の低減を図るにはプライマー層の屈折率を上げなければならず、そのためには金属酸化物フィラーの量を多くしなければならない。しかし、金属酸化物フィラーの量を多くすると、耐衝撃性が低下するという課題が生じる。
しかも、プラスチック基材の上に、nd=(λ/4)の関係を満たす反射低減層を設けることで、この点からも、干渉縞を低減することができる。これにより、反射低減層が無い場合と比較して、傾斜層の反射低減層に近い側の屈折率を低くすることが可能となる。そのため、反射低減層が無い場合と比較して、傾斜層の金属酸化物微粒子の配合量を少なくできる。
従って、ポリウレタン樹脂の配合量を多くできるので、耐衝撃性が向上する。
すなわち、干渉縞の低減、耐衝撃性の向上に加えて耐光性に優れた光学物品を提供できる。
従って、より耐衝撃性に優れた光学物品を提供できる。
図1は本実施形態の眼鏡用プラスチックレンズの要部の断面を示す。
図1において、本実施形態の光学物品は、眼鏡用プラスチックレンズ1であって、プラスチック基材10と、プラスチック基材10の表面に設けられた反射低減層11と、反射低減層11の表面に設けられた傾斜層12と、傾斜層12の表面に設けられたハードコート層13と、ハードコート層13の表面に設けられた反射防止層14とを有する。本実施形態では、傾斜層12がプライマー層として機能する。
以下、プラスチック基材10、反射低減層11、傾斜層12、ハードコート層13、反射防止層14について説明する。
プラスチック基材10の材質として、プラスチック樹脂であれば特に限定されないが、眼鏡レンズの薄型化の観点、あるいは、プラスチック基材10の上層に形成される反射防止層14との屈折率差を得るために、好ましくは1.65以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは1.74以上、もっとも好ましくは1.76以上の屈折率を有する材料が用いられる。
屈折率が1.65以上のレンズ素材としては、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチック、あるいはエピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを重合硬化して製造される、エピスルフィド系プラスチック等が挙げられる。
メルカプト基を持つ化合物としても、公知の化合物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。
さらに、エピスルフィド化合物を主成分とする重合性組成物を重合硬化して、屈折率を1.7以上、好ましくは1.7を超えるようにしたものも好適に用いられる。
重合に用いられる触媒としては、アミン類、フォスフィン類、第4級アンモニウム塩類、第4級ホスホニウム塩類、第3級スルホニウム塩類、第2級ヨードニウム塩類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸類等を挙げることができる。
用いられる触媒は、使用するモノマーの種類に応じて選択し、添加量も調整する必要があるが、一般的にはプラスチック基材原料の全量を基準にして0.001〜0.1質量%が好ましい範囲である。
重合温度は、5〜120℃程度が好ましく、反応時間は、1〜72時間程度である。重合後は、プラスチック基材の歪みを除去するために50〜150℃で10分間〜5時間程度アニール処理を行うことが好ましい。
エピスルフィド化合物だけでなく、ポリイソシアナート化合物やポリチオール化合物も重合に関与することにより、染色性や耐熱性にさらに優れたプラスチック基材を得ることが可能になる。
重合性組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、内部離型剤、酸化防止剤、染料、フォトクロミック染料、顔料、帯電防止剤等の公知の各種添加剤を配合してもよい。
反射低減層11は、下記(A)及び(B)成分を含むコーティング組成物から形成される。
(A)ポリウレタン樹脂
(B)金属酸化物微粒子
ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応して得られる水溶性または水分散性のポリウレタン樹脂を使用することができる。また、ポリウレタン樹脂は1種あるいは2種以上を用いることができる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルエンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物など)等が挙げられる。
なお、微粒子としてのポリウレタン樹脂の平均粒子径は光散乱法により測定される。例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製作所製、商品名LB−550)を使用して、粒径分布と平均粒子径を測定することができる。
ポリウレタン樹脂の配合量は、組成物全体に対して20〜60質量%の範囲が好ましく、特に、30〜50質量%であることがより好ましい。ポリウレタン樹脂の配合量が20質量%未満であると、最終的に眼鏡レンズを構成したときの耐衝撃性や耐光性が不十分となるおそれがある。ポリウレタン樹脂の配合量が60質量%を超えると、プライマー層の屈折率が低下して干渉縞が発生しやすくなり眼鏡レンズの外観が悪化するおそれがある。
ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子を使用することで、耐候性や耐光性がより向上し、また屈折率はアナターゼ型の結晶よりもルチル型の結晶の方が高いので、比較的屈折率の高い金属酸化物微粒子(複合微粒子)が得られる。
アルキル基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された金属酸化物微粒子を用いることにより、ポリウレタン樹脂との相溶性が向上し、結果として均質性が向上することから、干渉縞の発生が抑制されるとともに、最終的に眼鏡レンズの耐衝撃性も向上する。
(B)成分の金属酸化物微粒子としては、平均粒子径が5〜50nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。この平均粒子径が10nm未満、あるいは50nmを超えると、反射低減層11の屈折率を効果的に向上させることが困難となる。なお、金属酸化物微粒子の平均粒子径は(A)成分と同様の方法で測定できる。
(B)成分の配合量としては、コーティング組成物において、(B)成分の組成物全体における割合が40〜70質量%であることが好ましく、50〜60質量%の範囲であることがより好ましい。配合量が少なすぎると、層の屈折率及び耐摩耗性が不十分となる場合がある。一方、配合量が多すぎると、耐衝撃性が低下したり、層にクラックが生じたりするおそれもある。また、染色する際に、染色性が低下するおそれもある。
nd=(λ/4)の関係が満たされる。
ここで、設計波長λは500nm以上550nm以下、例えば、530nmである。屈折率nは適宜設定できるが、例えば、n=1.70である。
傾斜層12は下記(A)〜(C)成分を含むコーティング組成物から形成される。
(A)ポリウレタン樹脂
(B)金属酸化物微粒子
(C)有機ケイ素化合物
傾斜層12の膜厚は、400nm以上1000nm以下、好ましくは600nmであり、反射低減層11の膜厚dより大きい。
傾斜層12の(A)成分及び(B)成分は、反射低減層11の(A)成分及び(B)成分と同様である。
R1R2 nSiX1 3−n (1)
(式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
ここで、表面領域121とは、プラスチック基材側とは反対側の傾斜層12の表面、つまり、ハードコート層側の表面を指す。内部領域122とは、表面領域121を除く傾斜層12を指す。
このような内部層122における屈折率傾斜の発現機構は、以下のように推定される。すなわち、コーティング後の乾燥時に、表面層121において、(A)成分であるポリウレタン樹脂が相対的に早く硬化し、その後徐々に内部層に向かい、(A)成分とともに(B)成分である金属酸化物微粒子が硬化していくことで、表面層121に(A)成分が相対的に多く、内部層122に(B)成分が相対的に多い硬化膜が形成される。
なお、干渉縞の抑制の観点より、傾斜層12のプラスチック基材近傍における屈折率とプラスチック基材10の屈折率との差は0.01以下であることが好ましく、また、傾斜層12のハードコート層近傍における屈折率とハードコート層13の屈折率との差も0.01以下であることが好ましい。
ハードコート層13は、例えば、金属酸化物微粒子と有機ケイ素化合物とを含んだ組成物により、前述の傾斜層12の上に塗布されて形成される。これらの金属酸化物微粒子と有機ケイ素化合物は、前述の傾斜層12に用いたものと同様のものを使用することができる。
ここで、有機ケイ素化合物は、ハードコート層におけるバインダー剤としての役割を果たすが、前記した式(1)におけるR2としては、良好な密着性を得る目的からは、エポキシ基が好ましく、前記した式(1)におけるR2としては、良好な耐擦傷性を得る目的からは、メチル基が好ましい。
このようにして得られるハードコート層形成用の組成物は、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。また、ハードコート層形成用の組成物は、必要に応じて、少量の金属キレート化合物、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料、油溶染料、顔料、フォトクロミック化合物、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール系等の耐光耐熱安定剤等を添加し、コーティング液の塗布性、硬化速度及び硬化後の被膜性能を改良することもできる。
反射防止層14は、必要に応じてハードコート層13の上に形成される薄層である。反射防止層14は、例えば、屈折率が1.3〜1.5である低屈折率層と、屈折率が1.8〜2.3である高屈折率層とを交互に積層して形成することができる。層数としては、5層あるいは7層程度が好ましい。
反射防止層14を構成する各層に使用される無機物の例としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、TaO2、Ta2O5、NbO、Nb2O3、NbO2、Nb2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3などが挙げられる。これらの無機物は単独で用いるかもしくは2種以上を混合して用いる。例えば、低屈折率層をSiO2の層とし、高屈折率層をZrO2の層としてもよい。
このような反射防止層14を形成する方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
含フッ素シラン化合物は、有機溶剤に溶解し、所定濃度に調整した撥水処理液を用いて有機系反射防止層上に塗布する方法を採用することができる。塗布方法としては、ディッピング法、スピンコート法等を用いることができる。なお、撥水処理液を金属ペレットに充填した後、真空蒸着法などの乾式法を用いて防汚層を形成することも可能である。
防汚層の層厚は、特に限定されないが、0.001〜0.5μmが好ましい。より好ましくは0.001〜0.03μmである。防汚層の層厚が薄すぎると撥水撥油効果が乏しくなり、厚すぎると表面がべたつくので好ましくない。また、防汚層の厚さが0.03μmより厚くなると反射防止効果が低下するため好ましくない。
図2から図6では、屈折率1.74のプラスチック基材10の上に屈折率が1.70の反射低減層11を設け、この反射低減層11の上に膜厚が600nm、屈折率が1.67の傾斜層12(プライマー層)を設け、傾斜層12(プライマー層)の上に膜厚が2.2μm、屈折率が1.62のハードコート層13を設けた場合の例が示されている。
図2には、反射低減層の膜厚が、nd=(λ/4)の関係を満たすように設定された実施形態の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
図3には、反射低減層の膜厚が、nd=(λ/2)の関係を満たすように設定された場合の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
図4には、反射低減層の膜厚が、nd=(3λ/4)の関係を満たすように設定された場合の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
図5には、反射低減層の膜厚が、nd=λの関係を満たすように設定された場合の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
図6には、反射低減層の膜厚が、nd=(5λ/4)の関係を満たすように設定された場合の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
これに対して、図3から図6に示される通り、nd=(λ/4)ではない場合では、位相がずれた光が互いに重なると、光の波長の振幅に強弱、つまり、強めあう部分と弱めあう部分とができることになる。強めあう部分、つまり、振幅が大きい部分の波長は認識されやすく、弱めあう部分、つまり振幅が小さい部分の波長は認識されにくいので、振幅が大きい部分の色が目立って見えることになり、これが干渉色となる。さらに、図3から図6で示される例では、層の厚さが場所によって異なる。膜厚分布にムラがあると、強めあう波長、弱めあう波長が変化する。換言すると、図3から図6に示される例において、グラフのピークや節の位置がずれることになる。膜厚にムラがあると、場所によって違う色の干渉色が見えることになり、干渉縞が発生する。通常、膜厚には多少のムラがあるので、nd=(λ/4)となる反射低減層以外は干渉縞が見える可能性が高いものとなる。
図7には、反射低減層の膜厚が、nd=(λ/4)の関係を満たすように設定された実施形態の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
図8には、反射低減層の膜厚が、nd=(λ/2)の関係を満たすように設定された場合の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
図9には、反射低減層の膜厚が、nd=(3λ/4)の関係を満たすように設定された場合の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
図10には、反射低減層の膜厚が、nd=λの関係を満たすように設定された場合の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
図11には反射低減層の膜厚が、nd=(5λ/4)の関係を満たすように設定された場合の波長と反射率との関係をシミュレートした結果のグラフが示されている。
これに対して、図7から図11に示される例は、図3から図6に示される例と同様に、光の強めあう部分の波長は認識されやすく、弱めあう部分の波長は認識されにくいので、振幅が大きい部分の色が目立って見えることになる。以上のことから、反射低減層11がnd=λ/4となる実施形態では、干渉縞の発生を少ないものにできるが、nd≠λ/4となる例では、振幅を強める部分が生じるので、干渉縞が発生しやすいものとなることがわかる。
[実施例1]
プラスチック基材10:屈折率1.74(セイコープレステージ:セイコーオプティカルプロダクツ株式会社製)
反射低減層11:屈折率1.70、膜厚78nm
設計波長:530nm
傾斜層12:プラスチックレンズ基材側(内部層)の屈折率1.67
ハードコート層側(表面層)の屈折率1.62
膜厚600nm
ハードコート層13:屈折率1.62、膜厚2200nm
ステンレス製容器内に、メチルアルコール3800質量部、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液40質量部を投入し、十分に攪拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、表面処理剤γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、全固形分濃度20質量%、触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク)1400質量部を加え攪拌混合した。次いで、ポリウレタン樹脂(水分散、全固形分濃度35質量%、第一工業製薬(株)製、商品名スーパーフレックス210)700質量部を加えて攪拌混合した後、さらに、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7604)10質量部を加えて一昼夜攪拌を続けた後、2μmのフィルターで濾過を行い、反射低減用塗膜組成物を得た。
ステンレス製容器内に、メチルアルコール4000質量部、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液40質量部を投入し、十分に攪拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、表面処理剤γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、全固形分濃度20質量%、触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク)1120質量部を加え攪拌混合した。次いでポリウレタン樹脂(水分散、全固形分濃度35質量%、第一工業製薬(株)製、商品名スーパーフレックス201)960質量部を加えて攪拌混合した後、さらにシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7604)10質量部を加えて一昼夜攪拌を続けた後、2μmのフィルターで濾過を行い、傾斜層12の組成物を得た。
ステンレス製容器に、ブチルセロソルブ1900質量部を投入し、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1650質量部を加えて十分攪拌した後、0.1モル/リットル塩酸水溶液760質量部を添加して一昼夜攪拌を続け、シラン加水分解物を得た。このシラン加水分解物中にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7001)30質量部を加えて1時間攪拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、表面処理剤γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、全固形分濃度20質量%、触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク)5200質量部を加えて2時間攪拌混合した。次いでエポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名EX−313)390質量部を加えて2時間攪拌した後、鉄(III)アセチルアセトナート35質量部を加えて1時間攪拌し、2μmのフィルターで濾過を行い、ハードコート層の組成物を得た。
前記(1)で調製した反射低減層11の組成物をスピンコーティングにて膜厚78nmで形成し、その上に前記(2)で調整した傾斜層12の組成物をディップコーティングにて膜厚600nmで形成し、その上に前記(3)で調整したハードコート層13の組成物をディップコーティングにて膜厚2200nmで形成した。その後、125℃に保たれたオーブン内で3時間加熱して、反射低減層11、傾斜層12及びハードコート層13が形成された眼鏡用プラスチックレンズを得た。
実施例2は実施例1とは傾斜層12とハードコート層13とが相違し、他の構成は同じである。
プラスチック基材10及び反射低減層11:実施例1と同じ
傾斜層12:プラスチックレンズ基材側(内部層)の屈折率1.67
ハードコート層側(表面層)の屈折率1.58
膜厚600nm
ハードコート層13:屈折率1.58、膜厚2200nm
比較例1は実施例1とはハードコート層13の微粒子ゾルとして酸化ケイ素を用いた点、及び、傾斜層12の構成が相違し、他の構成は同じである。
プラスチック基材10及び反射低減層11:実施例1と同じ
傾斜層:プラスチックレンズ基材側(内部層)の屈折率1.67
ハードコート層側(表面層)の屈折率1.57
膜厚600nm
ハードコート層:屈折率1.50、膜厚2200nm
比較例2は実施例1とはハードコート層13の構成が相違し、傾斜層に代えて従来のプライマー層(層内での屈折率変化がないもの)を設けたことが相違し、他の構成は同じである。
プラスチック基材10及び反射低減層11:実施例1と同じ
プライマー層:屈折率1.67、膜厚600nm
ハードコート層:屈折率1.67、膜厚2200nm
比較例3は実施例1とは傾斜層に代えて従来のプライマー層を設けたことが相違し、他の構成は同じである。
プラスチック基材10及び反射低減層11:実施例1と同じ
プライマー層:屈折率1.67、膜厚600nm
ハードコート層13:実施例1と同じ
比較例4は実施例1とは傾斜層を省略し、反射低減層の上に直接ハードコート層を設けた点が相違し、他の構成は同じである。
プラスチック基材10及び反射低減層11:実施例1と同じ
ハードコート層13:屈折率1.67、膜厚2200nm
比較例5は実施例1とは傾斜層の構成が相違し、反射低減層を省略した点が相違し、他の構成は同じである。
プラスチック基材10:実施例1と同じ
傾斜層:プラスチックレンズ基材側(内部層)の屈折率1.74
ハードコート層側(表面層)の屈折率1.65
膜厚600nm
ハードコート層:屈折率1.65、膜厚2200nm
比較例6は実施例1とはハードコート層の構成が相違し、傾斜層及び反射低減層を省略してプライマー層を設けた点が相違し、他の構成は同じである。
プラスチック基材10:実施例1と同じ
プライマー層:屈折率1.67、膜厚600nm
ハードコート層:屈折率1.67、膜厚2200nm
比較例7は実施例1とはハードコート層の構成が相違し、傾斜層及び反射低減層を省略してプライマー層を設けた点が相違し、他の構成は同じである。
プラスチック基材10:実施例1と同じ
プライマー層:屈折率1.74、膜厚600nm
ハードコート層:屈折率1.74、膜厚2200nm
[1]干渉縞
暗箱内において三波長型蛍光灯下でプラスチックレンズの干渉縞を観察し、下記の通り評価した。
○:干渉縞の発生がほとんど観察されず、良好な水準
△:干渉縞が発生し、やや見苦しい水準
×:干渉縞の発生が激しく、見苦しい水準
[2]耐光性
キセノンランプによるサンシャインウェザーメーターに120時間照射後の密着性試験で剥離がないか評価した。
○:剥離なし
×:剥離あり
[3]耐衝撃性
米国FDA規格(21CFR801.410)による鋼球落下試験を実施した。
凸面を上(重力の作用する方向における上方)に向けたプラスチックレンズの鉛直上方から、質量16.3gの鉄球を落下させた。鉄球を落下させた高さは、67cmから始め、20cmずつ高くして試料(レンズ)が破壊された高さH(破壊高さH)を記録した。破壊高さHに基づきレンズの耐衝撃性を以下のように評価した。なお、プラスチック基材の中心厚は1.1mmとし、各実施例及び比較例について5枚のレンズに対して試験を行った。
○:127cm<H (FDA規格に合格)
△:87cm≦H≦127cm
×:H<87cm
比較例1では耐光性の評価及び耐光性の評価が○であったが、干渉縞の評価が×であった。
比較例1において、干渉縞の評価が低いのは、傾斜層のハードコート層側の部分の屈折率が1.57であり、ハードコート層の屈折率が1.50であり、両者の屈折率の差が大きいことに起因するものと思われる。これに対して、実施例1と実施例2とは、ともに傾斜層のハードコート層側の部分の屈折率とハードコート層の屈折率とが同じであるため、干渉縞が発生しないものと思われる。
比較例2では干渉縞と耐光性の評価が○であったが、耐衝撃性の評価が△であった。
比較例2において、耐衝撃性の評価がよくないのは、傾斜層がないことに起因するものと思われる。すなわち、実施例1と比較して、プライマー層及びハードコート層の金属酸化物微粒子が多くポリウレタン樹脂が少ないために、耐衝撃性が低下したと考えられる。
比較例3において、干渉縞の評価が低いのは、プライマー層の屈折率とハードコート層の屈折率との差が大きいことに起因するものと思われる。
比較例4では干渉縞の評価が△であり、耐光性と耐衝撃性の評価が×であった。
比較例4において、干渉縞の評価が低いのは、反射低減層の屈折率とハードコート層の屈折率との差が大きいことに起因すると思われる。また、耐光性と耐衝撃性の評価が低いのは、傾斜層やプライマー層がないことに起因するものと思われる。
比較例5では、耐光性の評価が○であったが、干渉縞と耐衝撃性の評価が△であった。
比較例5において、干渉縞の評価が高いものでないのは、プラスチック基材の屈折率とプライマー層の屈折率との差が大きいことに起因するものと思われる。耐衝撃性の評価が高いものでないのは、反射低減層がないことに起因するものと思われる。すなわち、傾斜層の表面領域の屈折率を十分に低くできないために、傾斜層とハードコート層の金属酸化物微粒子の量が多く、ポリウレタン樹脂が少ないことに起因すると思われる。
比較例6において、耐衝撃性の評価が高いものではないのは、反射低減層がないことに起因するものと思われる。干渉縞の評価が低いのは、プライマー層とプラスチック基材との屈折率の差が大きいことに起因するものと思われる。
比較例7では、干渉縞の評価が○であったが、耐光性と耐衝撃性の評価が×であった。
比較例7において、耐光性と耐衝撃性の評価が低いのは、反射低減層がないことに起因するものと思われる。
以上の実施例1,2と比較例1〜7の評価結果を表1にまとめて記載する。
(1)プラスチック基材10の上に反射低減層11を設け、反射低減層11とハードコート層13との間に傾斜層12を設け、この傾斜層12を、プラスチック基材10側(反射低減層11側)からハードコート層13に向かって屈折率が低下する構成としたので、干渉縞の発生を低減することができる。
例えば、実施形態においては、傾斜層12を、(A)ポリウレタン樹脂、(B)金属酸化物微粒子、及び(C)有機ケイ素化合物を含む組成物を反射低減層11の上に塗布することで形成される1つの層から構成したが、本発明における傾斜層12は前記実施形態に限定されるものではない。
すなわち、傾斜層12をプラスチック基材10に接する第1の層と、第1の層の表面に形成されハードコート層13に接する第2の層とを備えた構成とし、第1の層を、(A)ポリウレタン樹脂、(B)金属酸化物微粒子、及び(C)有機ケイ素化合物を含む第1の材料により形成され屈折率がプラスチック基材10から離れる方向に減少する層とし、第2の層を第1の層の表面層の屈折率と同程度とした構成としてもよい。この際、第1の層と第2の層を、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレー法などにより形成するものでもよく、さらには、インクジェット法、CVD法、イオンプレーティング法により形成するものでもよい。
Claims (4)
- プラスチック基材と、
前記プラスチック基材の表面に設けられ、nを屈折率、λを設計波長、dを膜厚とすると、nd=(λ/4)の関係を満たす反射低減層と、
前記反射低減層の表面に設けられ、ポリウレタン樹脂と、金属酸化物微粒子とを含む傾斜層と、
前記傾斜層の表面に設けられたハードコート層と、
を含み、
前記傾斜層は、前記反射低減層から前記ハードコート層に向かって屈折率が連続的または段階的に低下する、
光学物品。 - 請求項1の光学物品において、
前記金属酸化物微粒子は、酸化チタンである、
光学物品。 - 請求項1又は請求項2の光学物品において、
前記反射低減層が
(A)ポリウレタン樹脂
(B)金属酸化物微粒子
を含む組成物から形成された、光学物品。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1項の光学物品において、
前記プラスチック基材は眼鏡用プラスチックレンズ基材である、光学物品。
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