JP2010204456A - 光学物品およびその製造方法 - Google Patents

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Shuji Naito
修二 内藤
Yosuke Sugihara
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Abstract

【課題】実質的に高屈折率層と低屈折率層の2層からなる有機系反射防止層を有する光学物品およびその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】光学物品は、基材表面の少なくとも一部に反射防止層が形成され、前記反射防止層は、下記(A)〜(C)成分を配合してなるコーティング組成物から形成されている。
(A)最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン
(B)金属酸化物微粒子
(C)有機ケイ素化合物
【選択図】なし

Description

本発明は、眼鏡やカメラ等のプラスチックレンズとして使用される光学物品および光学物品の製造方法に関する。
プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、成形性、加工性、染色性等に優れ、しかも割れにくく安全性も高いため、眼鏡レンズ分野において急速に普及し、その大部分を占めている。また、近年では薄型化、軽量化のさらなる要求に応えるべく、チオウレタン系樹脂やエピスルフィド系樹脂等の高屈折率素材が開発されている。
一方、プラスチックレンズは、表面反射を防止する目的でレンズ基材の表面に無機系あるいは有機系の反射防止層を形成することも行われている。例えば、チオウレタン系樹脂やチオエポキシ系樹脂のような高屈折率のレンズ基材上に、レンズ基材より屈折率が0.1以上低い有機系の低屈折率反射防止層を形成したプラスチックレンズが提案されている(特許文献1参照)。ただし、特許文献1に記載されたような、高屈折率のレンズ基材は、耐熱性が低いという課題を有している。また、低屈折率のレンズ基材は、安価で耐熱性はあっても、反射防止層との屈折率差が小さく十分な反射防止特性が得られない。そこで、高屈折率層と低屈折率層の2層からなる有機系反射防止層を有するレンズが提案されている(特許文献2参照)。このような2層からなる有機系反射防止層を用いると、基材の屈折率によらず、優れた反射防止性能を発揮するプラスチックレンズを提供できる。
特開2003−222703号公報 特開2008−046264号公報
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、低屈折率層形成用および高屈折率層形成用の2種のコーティング組成物を準備しなければならず、また、コーティングも2度行う必要がある。それ故、製造上やや煩雑であり、製造コスト面からも問題がある。
そこで、本発明の目的は、実質的に高屈折率層と低屈折率層の2層からなる有機系反射防止層を備えた光学物品およびその簡便な製造方法を提供することにある。
本発明の光学物品は、基材表面の少なくとも一部に反射防止層を形成してなる光学物品であって、前記反射防止層は、下記(A)〜(C)成分を配合してなるコーティング組成物から形成されていることを特徴とする。
(A)最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン
(B)金属酸化物微粒子
(C)有機ケイ素化合物
本発明の光学物品によれば、反射防止層を形成するコーティング組成物として、最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン(A成分)、金属酸化物微粒子(B成分)および有機ケイ素化合物(C成分)を用いている。それ故、結果として、基材側より高屈折部分と低屈折部分からなるコーティング層(反射防止層)が形成された光学物品を提供できる。すなわち、この光学物品は、実質的に高屈折率層と低屈折率層の2層からなる反射防止層を有し、基材の屈折率にかかわりなく優れた反射防止性能を発揮する。
ここで、上述のコーティング層が実質的に2層構成となる理由は必ずしも明確ではないが、A成分の最低造膜温度が所定の温度以下であるので、コーティング後の固形分のうち金属酸化物微粒子(B成分)の濃度が基材近傍から遠ざかるにつれて低くなっている、すなわち濃度勾配をなしているということが考えられる。
本発明では、前記樹脂エマルジョンにおける樹脂は、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコーン系樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
この発明によれば、最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン用として所定の樹脂を用いているので、高屈折層と低屈折層の2層からなる反射防止層が形成された光学物品をより容易に提供できる。また、この樹脂エマルジョンにおける樹脂としては、効果の点でウレタン系樹脂であることがより好ましい。
本発明では、前記樹脂エマルジョンを構成する樹脂の平均粒子径が1〜100nmであることが好ましい。
この発明によれば、必ずしもその機構は明確ではないが、樹脂エマルジョンを構成する樹脂の平均粒子径が所定の範囲内にあるので、コーティング後の金属酸化物微粒子の濃度が、基材の近傍付近と基材から離れた場所とで勾配を示すようになり、その屈折率差により優れた反射防止効果を示すようになる。なお、上記した粒子の平均粒子径は、光散乱法により求められる
本発明では、前記(B)成分が、アルキル基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された金属酸化物微粒子であることが好ましい。
この発明によれば、所定の樹脂エマルジョンと、メチル基等のアルキル基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された金属酸化物微粒子を用いることにより、樹脂成分と金属酸化物微粒子成分との相溶性が向上し、屈折率が基材側から傾斜して減少しながらも安定した反射防止層を形成できる。また、得られる反射防止層のヘイズも小さく、透明性に優れる反射防止層を形成できる。
本発明では、前記(B)成分が、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子であることが好ましい。
この発明によれば、(B)成分として、ルチル型の結晶構造を有する高屈折率を発現する酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子を用いるので、基材の近傍付近と基材から離れた場所とで屈折率の勾配が大きくなり、反射防止性能が向上する。また、ルチル型の結晶構造を有する耐光性に優れるチタンを主成分とする金属酸化物微粒子を用いているので、反射防止層の耐光性が向上する。特に、(A)成分としてウレタン系樹脂のエマルジョンを用いると耐光性の向上に大きく寄与する。
本発明では、前記(C)成分が、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。
この発明によれば、有機ケイ素化合物がエポキシ基を有しているので、反射防止層がプラスチック基材との密着性に優れている。また、反射防止層の架橋密度が向上し過ぎることがなく、適度に制御される為、光学物品としての耐衝撃性にも優れる。
本発明では、前記(C)成分がオルガノアルコキシシラン化合物であり、加水分解を施さない単量体として用いられることが好ましい。
この発明によれば、オルガノアルコキシシラン化合物が加水分解を施さない単量体として用いられるので、加水分解を施して高分子量化させた場合に比べて、反射防止層中の空隙部分に充填され易い。従って、基材近傍の反射防止層の屈折率がより向上し、屈折率が1.7以上のプラスチック基材を用いたような場合であっても、反射防止効果に優れた光学物品を提供できる。
本発明の光学物品は、プラスチックレンズであることが好ましい。
この発明によれば、屈折率がたとえば1.7以上のいわゆる高屈折率のレンズ基材を用いた場合でも、上述した(A)〜(C)成分により反射防止層を形成しているため、非常に薄型で、反射防止効果に優れるプラスチックレンズを提供することができる。それ故、本発明のプラスチックレンズは、眼鏡レンズをはじめ、カメラレンズ、望遠鏡用レンズ、顕微鏡用レンズ、ステッパー用集光レンズなど各種の薄型光学レンズとして幅広く使用することができる。
本発明は、プラスチック基材からなる光学物品の製造方法であって、重合性組成物を重合硬化してプラスチック基材を製造する基材製造工程と、前記プラスチック基材の表面に、反射防止層を形成するコーティング工程とを備え、前記コーティング工程では、下記(A)〜(C)成分を含むコーティング組成物を用いることを特徴とする。
(A)最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン
(B)金属酸化物微粒子
(C)有機ケイ素化合物
本発明の光学物品の製造方法によれば、所定の重合性組成物を重合硬化してプラスチック基材を製造するので、ただ一度のコーティングにより、屈折率が傾斜したコーティング層を形成できる。そしてこのコーティング層は、実質的に、基材近傍の高屈折率層とこれに隣接する低屈折率層の2層から構成される。それ故、前記したコーティング層は反射防止層として機能する。従って、本発明によれば、簡便な方法で、優れた反射防止効果を有する光学物品を提供できる。
実施例における眼鏡レンズの反射率を示す図。
以下、本発明の光学物品および光学物品の製造方法について実施形態を詳細に説明する。本実施形態の光学物品は、眼鏡用のプラスチックレンズであって、プラスチックレンズ基材(以下、単に「レンズ基材」ともいう)と、レンズ基材表面に形成された反射防止層とを有する。
(1.レンズ基材)
レンズ基材としては、プラスチック樹脂であれば特に限定されないが、眼鏡レンズの薄型化の観点より、好ましくは屈折率を1.65以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは1.74以上、もっとも好ましくは1.76以上としたものが用いられる。
屈折率が1.65以上のレンズ素材としては、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチック、あるいはエピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを重合硬化して製造される、エピスルフィド系プラスチック等が挙げられる。
ポリチオウレタン系プラスチックの主成分となるイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物としては、公知の化合物を用いることができる。イソシアネート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
また、メルカプト基を持つ化合物としても、公知の化合物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、メルカプト基以外にも、硫黄原子を含むポリチオールがより好ましく用いられ、その具体例としては、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス((2−メルカプトエチル)チオ)−3−メルカプトプロパン等が挙げられる。
さらに、エピスルフィド化合物を主成分とする重合性組成物を重合硬化して、屈折率を1.7以上、好ましくは1.7を超えるようにしたものも好適に用いられる。
エピスルフィド化合物の具体例としては、公知のエピスルフィド基を持つ化合物が何ら制限なく使用できる。例えば、既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるエピスルフィド化合物が挙げられる。また、レンズ基材の高屈折率化のためには、エピスルフィド基以外にも硫黄原子を含有する化合物を用いることが好ましい。具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス−(β−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。これらのエピスルフィド化合物は単独で用いても混合して用いてもよい。
レンズ基材は、モノマーとして前記したエピスルフィド化合物と所定の触媒を、あるいはさらに硫黄と混合した上で、ガラス製または金属製の鋳型に注入し、いわゆる注型重合を行うことで得られる。硫黄の存在下で重合を行うことにより、屈折率が1.74以上の高屈折率レンズ基材を得ることが容易となる。硫黄を混合する場合は、エピスルフィド化合物100質量部に対して0.1〜25質量部であることが好ましく、1〜20質量部で
あることがより好ましい。
重合に用いられる触媒としては、アミン類、フォスフィン類、第4級アンモニウム塩類、第4級ホスホニウム塩類、第3級スルホニウム塩類、第2級ヨードニウム塩類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸類等を挙げることができる。
これらの中でも好ましい触媒の例としては、アミノエタノール、1−アミノプロパノールのようなアミン類、テトラブチルアンモニウムブロマイドのような第4級アンモニウム塩、テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラメチルホスホニウムブロマイドのような第4級ホスホニウム塩類などを挙げることができる。
また、用いられる触媒は、使用するモノマーの種類に応じて選択し、添加量も調整する必要があるが、一般的にはレンズ基材原料の全量を基準にして0.001〜0.1質量%が好ましい範囲である。
重合温度は、5〜120℃程度が好ましく、反応時間は、1〜72時間程度である。重合後は、レンズ基材の歪みを除去するために50〜150℃で10分間〜5時間程度アニール処理を行うことが好ましい。
前記した重合性組成物を調製する際に、他のモノマーとして、ポリイソシアナート化合物および/またはポリチオール化合物をさらに混合しておくことも好ましい。
エピスルフィド化合物だけでなく、ポリイソシアナート化合物やポリチオール化合物も重合に関与することにより、染色性や耐熱性にさらに優れたレンズ基材を得ることが可能になる。
また、重合性組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、内部離型剤、酸化防止剤、染料、フォトクロミック染料、顔料、帯電防止剤等の公知の各種添加剤を配合してもよい。
(2.反射防止層)
本実施形態では、反射防止層は、レンズ基材の表面に形成される。なお、レンズ基材と反射防止層との間にはハードコート層を形成してもよく、その際は、ハードコート層とレンズ基材との密着性を向上させるために、レンズ基材上にプライマー層を形成してもよい。
本実施形態における反射防止層は、下記(A)〜(C)成分を含む硬化性のコーティング組成物から形成される。
(A)最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン
(B)金属酸化物微粒子
(C)有機ケイ素化合物
(A)成分として用いられる樹脂エマルジョンは、最低造膜温度が50℃以下であることが必要であり、好ましくは30℃以下である。最低造膜温度が50℃を超える樹脂エマルジョンを用いた場合、コーティング組成物から造膜させた際に、膜形成(硬化反応)が遅く、(B)成分の濃度勾配が大きくならないため、屈折率傾斜も大きくならない。すなわち、十分な屈折率差を有する2層膜を形成できない。結果として、反射防止層としての反射防止効果に劣るようになる。ただし、樹脂エマルジョンの最低造膜温度が−5℃未満であると、コーティング組成物の保管時に硬化反応が進みやすく、ポットライフが確保できなくなるおそれがある。また、コーティング組成物を貯蔵する際に−5℃未満に維持する必要があり、保管の手間が掛かる。それ故、最低造膜温度は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
ここで、最低造膜温度は、樹脂エマルジョンの造膜性を表すパラメータであり、造膜温度試験装置(MFT)を用いてISO 2115(ASTM D2354)に準拠して測定される物性である。具体的には、温度勾配をつけた熱伝導性プレート上に、膜厚数十μm以上数百μm以下の範囲でコーティング液を拡げ、乾燥被膜を造り得る最低の造膜温度を測定する。
なお、最低造膜温度を低くするためには、樹脂エマルジョン中にいわゆる造膜剤を配合することが有効である。例えば、エマルジョン用樹脂としてポリエステル樹脂やウレタン系樹脂を用いる際、造膜剤として高沸点溶剤であるN-メチルピロリドンなどを配合することが有効である。
(A)成分の樹脂エマルジョンとしては、公知の各樹脂のエマルジョンを用いることが可能であるが、低い造膜温度を得る為には、予めモノマーを予備重合させ、水や有機溶剤などに分散させた樹脂エマルジョンが好適である。(A)成分の樹脂エマルジョン用の樹脂としては、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコーン系樹脂等が挙げられる。ここで、樹脂エマルジョンにおける分散樹脂の平均粒子径は、1〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。平均粒子径が1nm未満であると、比表面積が大きくなり、その結果硬化反応点が多くなり、最低造膜温度が低くならない場合がある。一方、分散樹脂の平均粒子径が100nmを超えると、乾燥膜厚が厚くなり過ぎて制御ができなかったり、塗膜にヘイズが発生し、目視評価時に曇って見える不具合が発生し易い。
なお、樹脂エマルジョンにおける分散樹脂の平均粒子径は光散乱法により測定される。例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製作所製、商品名LB−550や(株)日機装製、商品名ナノトラックUPA−UZ152))を使用して、粒径分布と平均粒子径を測定することができる。
一方、高い反射防止性能を得るためには、コーティング組成物のコーティング時(乾燥時)の平均屈折率は、低い方が好ましく、具体的には1.3〜1.6程度が好ましい。このことから、前記コーティング組成物には、低屈折率を有するフィラーを上述のエマルジョン形成用樹脂で被覆した化合物が好ましく挙げられる。低屈折率を有するフィラーとしては、多孔質シリカ、中空シリカ、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウムなどが挙げられ、当該フィラー表面に前記化合物をグラフト重合または被覆処理を行った化合物が好ましい。一例として、特開2001−233611号公報に記載されている方法等で製造することができる。例えば、平均粒径が20〜150nmの範囲にあり、かつ屈折率が1.16〜1.39の範囲にある内部空洞を有するシリカ系微粒子を使用し、その表面にエマルジョン形成用樹脂を被覆重合させた化合物が挙げられる。
上述したエマルジョン形成用樹脂としては、特に、ウレタン系樹脂が好ましい。ウレタン系樹脂は、レンズ基材に対する密着性に優れる。また、他の樹脂、例えばポリエステル樹脂などを用いた場合にくらべて耐光性の向上効果にも優れている。
ウレタン系樹脂としては、特に制限はなく、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応して得られる水溶性または水分散性のウレタン系樹脂を使用することができる。また、ウレタン系樹脂は1種あるいは2種以上を用いることができる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルエンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物など)等が挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドやテトラヒドロフラン等の複素環式エーテルを(共)重合させて得られるジオール化合物が挙げられる。かかるジオール化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。これらの中では、ポリエーテル系、ポリエステル系およびポリカーボネート系のうち1種以上が好ましい。
ウレタン系樹脂としては、望ましくは、ジオール化合物としてポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のジオールを用いて得られるポリエーテル系ウレタン系樹脂、ポリエステル系ウレタン系樹脂、ポリカーボネート系ウレタン系樹脂が挙げられる。ウレタン系樹脂の形態も特に限定されない。代表的には、エマルジョンタイプ、例えば、自己乳化エマルジョンや、自己安定化タイプが挙げられる。特に、上記の化合物のうちカルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオールを用いたり、低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加したり、酸性基を導入したウレタン樹脂、中でもカルボキシル基を有するものが望ましい。さらに、架橋処理により、これらカルボキシル基等の官能基を架橋させるのが、光沢向上、耐擦性向上等の点から望ましい。
ウレタン系樹脂の好ましい具体例としては、NeoRezR−960(ゼネカ製)、ハイドランAP−30(大日本インキ工業(株)製)、スーパーフレックス210(第一工業製薬(株)製)、アイゼラックスS−1020(保土ヶ谷化学(株)製)、ネオタンUE−5000(東亞合成(株)製)、RU−40シリーズ(スタール・ジャパン製)、WF−41シリーズ(スタール・ジャパン製)、WPC−101(日本ウレタン工業(株)製)等が挙げられる。ただし、これらを用いた場合でも、最低造膜温度が上述した所定の範囲から外れている場合には別途調製する必要がある。
エマルジョン形成用樹脂の配合量は、コーティング組成物における(A)〜(C)成分全体に対して20〜60質量%の範囲が好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。樹脂の配合量が20質量%未満であると、後述する(B)成分の濃度勾配を実現することが困難となる。また、樹脂の配合量が60質量%を超えると、コーティング層の屈折率が低下しすぎて、やはり、後述する(B)成分の濃度勾配を実現することが困難となる。
(B)成分の金属酸化物微粒子は、(A)成分との相互作用により、コーティング後の反射防止層内に濃度勾配を有しながら分布する。むしろ、この(B)成分の濃度勾配により、レンズ基材側より高屈折率層と低屈折率層の2層がレンズ基材上に形成され、それが反射防止層として機能する。
金属酸化物微粒子としては、高屈折率であることにより酸化チタンを含有する微粒子が好ましく、特に耐光性の観点から、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する複合型を用いることがより好ましい。複合型の金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタンおよび酸化スズ、または酸化チタン、酸化スズおよび酸化ケイ素からなるルチル型の結晶構造を有し、平均粒径1〜200nmの微粒子を挙げることができる。
ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子を使用することで、耐候性や耐光性がより向上し、また屈折率はアナターゼ型の結晶よりもルチル型の結晶の方が高いので、比較的屈折率の高い金属酸化物微粒子(複合微粒子)が得られる。
また、(B)成分の金属酸化物微粒子は、メチル基等のアルキル基を有する有機ケイ素化合物で表面処理されていることが好ましい。アルキル基を有する有機ケイ素化合物としては、後述する(C)成分として用いられる有機ケイ素化合物のうち、アルキル基を有するものが好適に用いられる。アルキル基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された金属酸化物微粒子を用いることにより、ポリウレタン等の樹脂との相溶性が向上する。
(B)成分の種類や配合量は、目的とする屈折率等により決定される。
(B)成分の金属酸化物微粒子としては、平均粒子径が5〜50nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。この平均粒子径が10nm未満、あるいは50nmを超えると、(A)成分や、後述する(C)成分との相乗効果が発揮できず、コーティング層における濃度分布(屈折率分布)を発現することが困難となる。なお、金属酸化物微粒子の平均粒子径は(A)成分と同様の方法で測定できる。
(B)成分の配合量としては、コーティング組成物において、(B)成分の(A)〜(C)成分全体における割合が40〜70質量%であることが好ましく、50〜60質量%の範囲であることがより好ましい。配合量が少なすぎると、コーティング層中に十分な屈折率差を有する2層を形成することが困難となるおそれがある。一方、配合量が多すぎると、耐衝撃性が低下したり、コーティング層にクラックが生じるおそれもある。
(C)成分の有機ケイ素化合物は、コーティング層中の空隙部分を埋めることにより、(B)成分が濃度勾配を有しながら存在するコーティング層を安定して保持する。このような有機ケイ素化合物としては、下記式(1)で示される化合物を好適に使用することができる。
SiX 3−n (1)
(式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0または1である。)
式(1)の有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン等があげられる。これらの有機ケイ素化合物は、2種類以上を混合して用いてもよい。また、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランなど、一般式SiX(X=アルコキシル基)で示される4官能有機ケイ素化合物を用いても同様の効果を得ることができる。
また、(C)成分としては、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル
)メチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル
)ブチルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有する有機ケイ素化合物を用いることがプラスチック基材あるいはハードコート層との密着性を向上させる点で好ましい。
なお、(C)成分の有機ケイ素化合物は、加水分解を施さない単量体として用いてもよい。加水分解を施さない単量体として用いると、加水分解を施して高分子量化させた場合に比べて、反射防止層中の空隙部分に充填され易い。従って、レンズ基材近傍の反射防止層の屈折率がより向上し、屈折率が1.7以上のプラスチック基材を用いたような場合であっても、反射防止効果に優れるようになる。
(C)成分は、平均粒子径が5nm以下であることが好ましく、1nm以下であることがより好ましい。この平均粒子径が5nmを超えると、(A)成分や(B)成分との相乗効果が発揮できず、コーティング層を保持することが困難となる。なお、(C)成分の平均粒子径は(A)成分や(B)成分と同様の方法により測定できる。
コーティング組成物における(C)成分の割合は、(A)〜(C)成分全体に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。(C)成分である有機ケイ素化合物の割合が0.1質量%未満であると、レンズ基材とハードコート層との密着性が十分に発揮されない、また空隙部分を完全に充填することができず、屈折率が向上しないおそれがある。また、有機ケイ素化合物の割合が10質量%を超えると、耐摩耗性の低下、また空隙部分に対して過剰量が存在することになり、屈折率の低下をきたすおそれがある。
上述したコーティング組成物(コーティング液)の塗布にあたっては、レンズ基材との密着性の向上を目的として、レンズ基材の表面を予めアルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、無機あるいは有機の微粒子による剥離/研磨処理、プラズマ処理を行うことが効果的である。また、コーティング用組成物の塗布/硬化方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、あるいは、フローコート法等によりコーティング用組成物を塗布した後、40〜200℃の温度で数時間加熱/乾燥することにより、反射防止層を形成できる。
また、反射防止層の層厚は、所望の反射防止性能によって適宜設定すれば良く、0.01〜50μm、特に0.1〜30μmの範囲が好ましい。反射防止層が薄すぎると、内部でうまく2層に分離できず反射防止性能が発揮できない。逆に厚すぎると、表面の平滑性が損なわれたり、光学的歪や白濁、曇りなどの外観欠点を発生する場合がある。
上述した実施形態によれば、反射防止層を形成するコーティング組成物として、最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン(A成分)、金属酸化物微粒子(B成分)および有機ケイ素化合物(C成分)を用いている。それ故、コーティング組成物を2度塗りする必要がなく、ただ1度コーティングするだけで、結果として基材側より高屈折部分と低屈折部分からなるコーティング層が形成された眼鏡用プラスチックレンズを提供できる。すなわち、この眼鏡用プラスチックレンズは、実質的に高屈折率層と低屈折率層の2層からなる反射防止層を有し、レンズ基材の屈折率にかかわりなく優れた反射防止性能を発揮する。
このような1度のコーティングによる実質的な2層の発現機構は、以下のように推定される。すなわち、コーティング後の乾燥時に、表面層において、(A)成分である所定の樹脂が相対的に早く硬化し、その後徐々に内部層に向かい、(A)成分と共に(B)成分である金属酸化物微粒子が硬化していくことで、表面層に(A)成分が相対的に多く、内部層(レンズ基材近傍)に(B)成分が相対的に多い硬化膜が形成されるものと思われる。
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。
例えば、前記した実施形態では、レンズ基材上に直接反射防止層を形成したが、レンズ基材上にハードコート層を形成し、その上に本発明の反射防止層を形成してもよい。また、ハードコート層を形成する前に、プライマー層を形成してもよい。このようなプライマー層やハードコート層は、例えば、特開2008−310005号公報に記載の方法で形成すればよい。
さらに、レンズ表面の撥水撥油性能を向上させる目的で、反射防止層の上にフッ素を含有する有機ケイ素化合物からなる防汚層を形成してもよい。フッ素を含有する有機ケイ素化合物としては、例えば、特開2005−301208号公報や特開2006−126782号公報に記載されている含フッ素シラン化合物を好適に使用することができる。
次に、本発明の実施形態に基づく実施例および比較例を説明する。具体的には、以下に示す方法で反射防止層付きのプラスチックレンズを製造して、反射防止層内部の層構成を確認するとともに、反射防止性能を測定した。
(実施例1)
(1)プラスチックレンズ基材
屈折率1.67、アッベ数32のレンズ基材(セイコーエプソン製 セイコースーパーソブリン)を用意した。
(2)反射防止層形成用コーティング組成物の調製
ステンレス製容器内に、メチルアルコール2900質量部、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液50質量部を投入し、十分に攪拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、表面処理剤γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク)1500質量部を加え攪拌混合した。次いでウレタン系樹脂(水分散、全固形分濃度35重量%、第一工業製薬(株)性、商品名スーパーフレックス210、最低造膜温度:23℃)580質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン35質量部を加えて攪拌混合した後、更にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7604)2質量部を加えて一昼夜攪拌を続けた後、孔径2μmのフィルターで濾過を行い、反射防止層形成用コーティング組成物を得た。
(3)反射防止層の形成
上述した(1)のプラスチックレンズ基材をアルカリ処理し(50℃に保たれた2モル/リットルの水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬した後、純水で洗浄し、次いで25℃に保たれた1.0モル/リットル硫酸に1分間浸漬して中和処理を行う)、純水洗浄および乾燥、放冷を行った。次に、前記(2)で調製したコーティング組成物中に浸漬し、引き上げ速度100mm/分でディップコートして、80℃で20分仮乾燥した後、100℃で60分焼成した。得られたプラスチックレンズの表面反射率(測定機器:大塚電子製FE−3000)を測定したところ、図1に示すようなW型の低反射率スペクトルを示しており、ワンコートでありながら、実質的に2層からなる反射防止層と同等の低反射率が得られた。また、反射率シミュレーション結果から、反射防止層は基材側部位が屈折率1.80、膜厚145nm、表面部位が屈折率1.52、膜厚85nmであることがわかった。高屈折率層部分と低屈折率層部分の屈折率差は、0.28である。なお、反射率シミュレーションは、実測スペクトルに対する最小二乗法によるフィッティング解析により行った。
(実施例2)
(1)プラスチックレンズ基材
実施例1と同様に、屈折率1.67、アッベ数32のレンズ基材(セイコーエプソン製 セイコースーパーソブリン)を用意した。
(2)反射防止層形成用コーティング組成物の調製
ステンレス製容器内に、メチルアルコール2900質量部、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液50質量部を投入し、十分に攪拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、表面処理剤γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク)1500質量部を加え攪拌混合した。次いでウレタン系樹脂(水分散、全固形分濃度35重量%、第一工業製薬(株)性、商品名スーパーフレックス460、最低増膜温度:5℃以下)580質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン35質量部を加えて攪拌混合した後、更にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7604)2質量部を加えて一昼夜攪拌を続けた後、孔径2μmのフィルターで濾過を行い、反射防止層形成用コーティング組成物を得た。
(3)反射防止層の形成
上述した(1)のプラスチックレンズ基材をアルカリ処理(50℃に保たれた2モル/リットルの水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬した後、純水で洗浄し、次いで25℃に保たれた1.0モル/リットル硫酸に1分間浸漬して中和処理を行う)し、純水洗浄および乾燥、放冷を行った。次に、前記(2)で調整したコーティング組成物中に浸漬し、引き上げ速度100mm/分でディップコートして、80℃で20分仮乾燥した後、100℃で60分焼成した。得られたプラスチックレンズの表面反射率(測定機器:大塚電子製FE−3000)を測定したところ、図1に示すように実施例1におけるスペクトルと重なるW型の低反射率スペクトルが得られた。また、反射率シミュレーション結果から、反射防止層は基材側部位が屈折率1.78、膜厚145nm、表面部位が屈折率1.50、膜厚85nmであることがわかった。高屈折率層部分と低屈折率層部分の屈折率差は、0.28である。すなわち、実施例1と同様にワンコートでありながら、実質的に2層からなる低反射率の反射防止層が得られた。
(比較例1)
(1)プラスチックレンズ基材
実施例1と同様に、屈折率1.67、アッベ数32のレンズ基材(セイコーエプソン製 セイコースーパーソブリン)を用意した。
(2)反射防止層形成用コーティング組成物の調製
ステンレス製容器内に、メチルアルコール2900質量部、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液50質量部を投入し、十分に攪拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、表面処理剤γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク)1500質量部を加え攪拌混合した。次いでポリエステル樹脂(水分散、全固形分濃度35重量%、最低増膜温度:62℃以下)580質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン35質量部を加えて攪拌混合した後、更にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7604)2質量部を加えて一昼夜攪拌を続けた後、2μmのフィルターで濾過を行い、反射防止コーティング組成物を得た。
(3)反射防止層の形成
上述した(1)のプラスチックレンズ基材をアルカリ処理(50℃に保たれた2モル/リットルの水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬した後、純水で洗浄し、次いで25℃に保たれた1.0モル/リットル硫酸に1分間浸漬して中和処理を行う)し、純水洗浄および乾燥、放冷を行った。次に、前記(2)で調整したコーティング組成物中に浸漬し、引き上げ速度100mm/分でディップコートして、80℃で20分仮乾燥した後、100℃で60分焼成した。反射率シミュレーション結果から、反射防止層は基材側部位が屈折率1.78、膜厚145nm、表面部位が屈折率1.69、膜厚85nmであることが判明した。それ故、実施例1,2と同様に、実質的に2層からなる反射防止層ではあるものの、高屈折率層部分と低屈折率層部分の屈折率差は、わずか0.09であり、その反射防止特性は劣るものとなった。
(比較例2)
(1)プラスチックレンズ基材の作製
実施例1と同様に、屈折率1.67、アッベ数32のレンズ基材(セイコーエプソン製 セイコースーパーソブリン)を用意した。
(2)反射防止層形成用コーティング組成物の調製
市販のポリエステルタイプのポリオール「デスモフェン1700」(住友バイエルウレタン(株)製)240質量部、市販のブロック型ポリイソシアネート「デスモジュールLS−2759」(ヘキサメチレンジイソシアネートの環状三量体のイソシアネート基をβ−ジケトンでブロックしたもの、住友バイエルウレタン(株)製)80質量部、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、表面処理剤γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク)300質量部、更にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名L−7604)1質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル4700質量部、メタノール4700質量部からなる混合物を均一な状態になるまで十分に攪拌し、これをコーティング組成物とした。なお、コーティング組成物に含まれるポリオール成分およびポリイソシアネート成分は、反応性ウレタン系樹脂であり、最低造膜温度は70℃である。
(3)反射防止層の形成
前記(1)で得られたプラスチックレンズ基材をアルカリ処理(50℃に保たれた2モル/リットルの水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬した後、純水で洗浄し、次いで25℃に保たれた1.0モル/リットル硫酸に1分間浸漬して中和処理を行う)し、純水洗浄および乾燥、放冷を行った。次に、前記(2)で調整したコーティング組成物中に浸漬し、引き上げ速度100mm/分でディップコートして、80℃で20分仮乾燥した後、100℃で60分焼成した。反射率シミュレーション結果から、反射防止層は基材側部位が屈折率1.78、膜厚145nm、表面部位が屈折率1.69、膜厚85nmであることがわかった。それ故、実施例1,2と同様に、実質的に2層からなる反射防止層ではあるものの、高屈折率層部分と低屈折率層部分の屈折率差は、わずか0.09であり、その反射防止特性は劣るものとなった。
本発明の光学物品は、プラスチックレンズとして好適に使用することができる。例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ、望遠鏡用レンズ、顕微鏡用レンズ、ステッパー用集光レンズ等の光学レンズを挙げることができる。

Claims (10)

  1. 基材表面の少なくとも一部に反射防止層を形成してなる光学物品であって、
    前記反射防止層は、下記(A)〜(C)成分を配合してなるコーティング組成物から形成されていることを特徴とする光学物品。
    (A)最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン
    (B)金属酸化物微粒子
    (C)有機ケイ素化合物
  2. 請求項1に記載の光学物品において、
    前記樹脂エマルジョンにおける樹脂は、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコーン系樹脂の少なくともいずれかであることを特徴とする光学物品。
  3. 請求項2に記載の光学物品において、
    前記樹脂エマルジョンにおける樹脂がウレタン系樹脂であることを特徴とする光学物品。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光学物品において、
    前記樹脂エマルジョンを構成する樹脂の平均粒子径が1〜100nmであることを特徴とする光学物品。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光学物品において、
    前記(B)成分が、アルキル基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された金属酸化物微粒子であることを特徴とする光学物品。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光学物品において、
    前記(B)成分が、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子であることを特徴とする光学物品。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光学物品において、
    前記(C)成分が、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする光学物品。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光学物品において、
    前記(C)成分がオルガノアルコキシシラン化合物であり、加水分解を施さない単量体として用いられることを特徴とする光学物品。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の光学物品がプラスチックレンズであることを特徴とする光学物品。
  10. プラスチック基材からなる光学物品の製造方法であって、
    重合性組成物を重合硬化してプラスチック基材を製造する基材製造工程と、
    前記プラスチック基材の表面に、反射防止層を形成するコーティング工程とを備え、
    前記コーティング工程では、下記(A)〜(C)成分を配合してなるコーティング組成物を用いることを特徴とする光学物品の製造方法。
    (A)最低造膜温度が50℃以下である樹脂エマルジョン
    (B)金属酸化物微粒子
    (C)有機ケイ素化合物
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