以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の実施の形態を、実施例に基づいて以下の順序で説明する。
1.電気自動車の全体構成
2.水素の補給に関わる構成
3.水素の補給の際に行なわれる制御
4.電気自動車のその他の構成
(1)電気自動車の全体構成:
はじめに、本発明の実施例としての電気自動車の構成について説明する。図1は、本発明の一実施例としての電気自動車10の全体構成を示す説明図である。この電気自動車10は、燃料タンク20,燃料電池30,コネクタ受け部40,制御部50を備え、その他にモータ70などの所定の車両構造を備えている。以下、電気自動車10が備えるこれらの各構成要素について順次説明する。
燃料タンク20は、外部から供給される水素ガスを貯蔵するものであり、必要に応じて水素ガスを燃料電池30に供給する。燃料タンク20は、その内部に水素吸蔵合金を備えており、この水素吸蔵合金に吸蔵することによって水素ガスを貯蔵する構成となっている。水素吸蔵合金は、その種類によって、水素吸蔵合金自身の重量、吸蔵可能な水素量、水素吸蔵時に発生する熱量、水素放出時に要する熱量、取り扱い時に要する圧力等が異なる。自動車車載用途としては、比較的低温(100℃以下)、低圧(10kg/cm2 以下)で水素の充填・放出が可能な合金を用いることが望ましい(例えばチタン系合金または希土類系合金)。
燃料タンク20には、この燃料タンク20内部に水素ガスを供給するための水素ガス導入路47と、燃料タンク20内の水素吸蔵合金から取り出された水素ガスを燃料電池30に導くための燃料供給路22が接続されている。後述するように、電気自動車10には、外部に設けられた所定の水素供給装置から水素ガスが供給されるが、この水素供給装置から供給される水素ガスは、コネクタ受け部40および水素ガス導入路47を介して燃料タンク20内に供給され、水素吸蔵合金に吸蔵されることによって燃料タンク20内に貯蔵される。また、燃料タンク20内の水素吸蔵合金から放出された水素ガスは、燃料供給路22を介して燃料ガスとして燃料電池30に供給される。
燃料供給路22にはバルブ22Aが設けられている。このバルブ22Aは制御部50と接続しており、制御部50によってその開閉状態が制御される。バルブ22Aの開放状態を調節することによって、燃料電池30に供給される燃料ガス量を増減することができ、これによって燃料電池30での発電量が制御される。
さらに、燃料供給路22には加湿器66が設けられており、燃料供給路22を通過する燃料ガスを加湿している。このように、加湿器66によって燃料ガスを加湿することで、燃料電池が備える後述する固体高分子膜が乾燥してしまうのを防いでいる。本実施例の加湿器66では、多孔質膜を利用して燃料ガスの加湿を行なっている。すなわち、燃料タンク20から供給された燃料ガスと温水とを所定の圧力の下で多孔質膜によって隔てることで、所定量の水蒸気を温水側から燃料ガス側へと多孔質膜を介して供給している。ここで、加湿に用いる温水としては、例えば燃料電池30の冷却水を挙げることができる。本実施例の燃料電池30は、後述するように固体高分子型燃料電池であり、運転温度を80〜100℃の温度範囲に保つために周囲に冷却水を循環させている。この燃料電池30によって昇温された温水を、燃料ガスの加湿に利用することができる。
上記燃料タンク20への水素の貯蔵は、燃料タンク20が備える水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることによって行なうが、その際に発熱が起こる。そこで燃料タンク20は、水素を貯蔵する際に生じる熱を排出する構造として、熱交換部26を備えている。熱交換部26は、内部に冷却水を循環させる冷却水路45によって形成されており、この冷却水路45は、コネクタ受け部40において開口している。すなわち、冷却水路45の端部は、コネクタ受け部40において水流路接続部42を形成している。また、冷却水路45は、燃料タンク20の熱交換部26を形成した後、冷却水路43となり、この冷却水路43の端部は、水流路接続部44を形成してコネクタ受け部40において開口している。燃料タンク20内の水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる際には、冷却水は、水流路接続部42を介して熱交換部26に導入され、水素吸蔵合金との間で熱交換を行ない、水素の吸蔵に伴って生じた熱によって昇温する。昇温した冷却水は、水流路接続部44を介して外部に排出され、このようにして燃料タンク20から熱を取り除くことで、上記水素を吸蔵させる動作を促すと共に、燃料タンク20が非所望の温度に昇温するのを防止している。
また、電気自動車10において、冷却水路45および冷却水路43はその所定の箇所で分岐しており、これら分岐した流路は燃料電池30内に配管して燃料電池30内で熱交換部39を形成し、この熱交換部39においてこれらの流路は接続している。また、冷却水路45および冷却水路43から熱交換部39側に流路が分岐する位置には、流路を切り替える切り替えバルブが設けられている。冷却水路45の分岐点には切り替えバルブ42Aが設けられており、冷却水路43の分岐点には切り替えバルブ44Aが設けられている。これらの切り替えバルブ42A,44Aは制御部50に接続されており、制御部50が出力する駆動信号によって流路の切り替えが行なわれる。水素供給装置から燃料タンク20へ水素が供給されるときには、コネクタ受け部40を介して接続される外部の燃料供給装置側と、熱交換部26側との間で冷却水が流通するように、切り替えバルブ42A,44Aが制御され、熱交換部39に至る流路は閉鎖される。
一方、燃料タンク20内の水素を利用して電気自動車10が走行するときには、切り替えバルブ42A,44Aの開閉状態が制御されて、熱交換部26を形成する流路と熱交換部39を形成する流路とが連通する。このような場合には、冷却水は、燃料タンク20が備える熱交換部26と、燃料電池30が備える熱交換部39との間を循環する。このような構成とすることによって本実施例の電気自動車10では、燃料電池30で発生する熱量を利用して水素吸蔵合金から水素を取り出している。すなわち、燃料電池30による発電が行なわれるときには、電気エネルギに変換されなかったエネルギが熱エネルギとして放出されるため熱が発生するが、熱交換部39を通過する冷却水は、燃料電池30との間で熱交換を行なうことによって、燃料電池30の運転温度を80〜100℃の温度範囲に保つと共に、冷却水自身は昇温する。また、燃料タンク20において、水素吸蔵合金に吸蔵させた水素を取り出すには外部から熱量を与える必要があるが、熱交換部39で昇温した冷却水は熱交換部26に導入されることによって燃料タンク20に必要な熱量を与えて水素を取り出し可能とし、これに伴って熱交換部26を通過する冷却水は降温する。このように、冷却水は、熱交換部39と熱交換部26との間を循環することによって、燃料電池30で生じた熱を燃料タンク20において利用可能としている。
また、冷却水路45にはポンプ29が設けられており、このポンプ29は、制御部50の制御を受けて、冷却水路45およびこれと接続する流路内で冷却水を循環させる。なお、本実施例では、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる際に、冷却水路45内に冷却水を循環させて燃料タンク20を冷却する構成としたが、水以外の流体を循環させることによって冷却を行なうこととしてもよい。また、燃料タンク20の冷却を空冷によって行なうこととしても良い。
さらに、本実施例の電気自動車10では、燃料タンク20に加熱装置25が設けられている。この加熱装置25は、燃料タンク20を加熱するための装置である。上記したように、電気自動車10では、燃料タンク20が備える水素吸蔵合金に蓄えた水素を取り出す際に、燃料電池30で生じた熱を利用しているが、冷却水によって燃料電池30から伝えられる熱だけでは不足する場合、あるいは、電気自動車10の始動時などにおいて燃料電池30が充分に昇温していないときに燃料タンク20に供給する熱を補う必要がある場合などに、この加熱装置25を用いて燃料タンク20の加熱を行なう。加熱装置25は、例えば、ヒータによって構成することができ、電気自動車10が備える後述する2次電池から供給される電力を用いて加熱を行なうこととすればよい。加熱装置25は、制御部50に接続されており、制御部50によって加熱状態を制御することで、所望の水素を取り出すために必要な熱を確保することができる。あるいは、加熱装置25は、燃焼反応によって熱を生じることとしても良い。この場合には、燃料タンク20から取り出した水素や、燃料電池30から排出される後述する燃料排ガスを、燃焼の燃料として用いることができる。
燃料タンク20には、さらに、水素残量モニタ27が設けられている。水素残量モニタ27は、燃料タンク20から燃料電池30へ供給された水素量と供給時間とを積算するものであり、この値を基に制御部50は燃料タンク20における水素残量を演算する。燃料タンク20から燃料電池30に供給された水素量は、燃料供給路22を通過する水素ガスの流量を直接測定する他、燃料電池30からの出力などを基に間接的に推定することもできる。水素残量モニタ27からの信号に基づいて、燃料タンク20内の水素残量が所定量以下に成ったと判断されると、制御部50は、車両の使用者が認識可能となるように設けた所定の警告装置に信号を出力する。このように、水素残量が残り少ないことを使用者に知らせることによって、使用者が水素を補給する動作を促す。
また、燃料タンク20には、水素充填量モニタ28が設けられている。水素充填量モニタ28は、圧力センサとして構成されており、燃料タンク20内の水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる際に、水素吸蔵合金に充分量の水素が吸蔵されたときにこれを検出する。水素充填時、すなわち、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる際には、燃料タンク20内は外部から水素を供給することで所定の圧力に加圧されているが、水素吸蔵合金に充分量の水素が吸蔵されて、水素が吸蔵される速度が低下したときには、燃料タンク20内の圧力が上昇する。したがって、燃料タンク20内に圧力センサを設け、上記圧力の上昇を検出することによって、充分量の水素が充填されたことを知ることができる。水素充填量モニタ28は制御部50に接続されており、水素充填の動作の終了に関わる信号は、制御部50に入力される。
燃料電池30は、固体高分子電解質型の燃料電池であり、構成単位である単セル38を複数積層したスタック構造を有している。燃料電池30は、アノード側に水素からなる燃料ガスの供給を受け、カソード側には酸素を含有する酸化ガスの供給を受けて以下に示す電気化学反応によって起電力を得る。
H2 → 2H++2e− …(1)
(1/2)O2+2H++2e− → H2O …(2)
H2+(1/2)O2 → H2O …(3)
(1)式は燃料電池のアノード側における反応、(2)式は燃料電池のカソード側における反応を示し、(3)式は電池全体で起こる反応を表わす。図2は、この燃料電池30を構成する単セル38の構成を例示する断面図である。単セル38は、電解質膜31と、アノード32およびカソード33と、セパレータ34,35とから構成されている。
アノード32およびカソード33は、電解質膜31を両側から挟んでサンドイッチ構造を成すガス拡散電極である。セパレータ34,35は、このサンドイッチ構造をさらに両側から挟みつつ、アノード32およびカソード33との間に、燃料ガスおよび酸化ガスの流路を形成する。アノード32とセパレータ34との間には燃料ガス流路34Pが形成されており、カソード33とセパレータ35との間には酸化ガス流路35Pが形成されている。セパレータ34,35は、図2ではそれぞれ片面にのみ流路を形成しているが、実際にはその両面にリブが形成されており、片面はアノード32との間で燃料ガス流路34Pを形成し、他面は隣接する単セルが備えるカソード33との間で酸化ガス流路35Pを形成する。このように、セパレータ34,35は、ガス拡散電極との間でガス流路を形成するとともに、隣接する単セル間で燃料ガスと酸化ガスの流れを分離する役割を果たしている。
ここで、電解質膜31は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。本実施例では、ナフィオン膜(デュポン社製)を使用した。電解質膜31の表面には、触媒としての白金または白金と他の金属からなる合金が塗布されている。触媒を塗布する方法としては、白金または白金と他の金属からなる合金を担持したカーボン粉を作製し、この触媒を担持したカーボン粉を適当な有機溶剤に分散させ、電解質溶液(例えば、Aldrich Chemical社、Nafion Solution)を適量添加してペースト化し、電解質膜31上にスクリーン印刷するという方法をとった。あるいは、上記触媒を担持したカーボン粉を含有するペーストを膜成形してシートを作製し、このシートを電解質膜31上にプレスする構成も好適である。また、白金などの触媒は、電解質膜31ではなく、電解質膜31を接するアノード32およびカソード33側に塗布することとしてもよい。
アノード32およびカソード33は、共に炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロスにより形成されている。なお、本実施例では、アノード32およびカソード33をカーボンクロスにより形成したが、炭素繊維からなるカーボンペーパまたはカーボンフエルトにより形成する構成も好適である。
セパレータ34,35は、ガス不透過の導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンにより形成されている。セパレータ34,35はその両面に、平行に配置された複数のリブを形成しており、既述したように、アノード32の表面とで燃料ガス流路34Pを形成し、隣接する単セルのカソード33の表面とで酸化ガス流路35Pを形成する。ここで、各セパレータの表面に形成されたリブは、両面ともに平行に形成する必要はなく、面毎に直交するなど所定の角度をなすこととしてもよい。また、リブの形状は平行な溝状である必要はなく、ガス拡散電極に対して燃料ガスまたは酸化ガスを供給可能であればよい。
以上、燃料電池30の基本構造である単セル38の構成について説明した。実際に燃料電池30として組み立てるときには、セパレータ34、アノード32、電解質膜31、カソード33、セパレータ35の順序で構成される単セル38を複数組積層し(本実施例では100組)、その両端に緻密質カーボンや銅板などにより形成される集電板を配置することによって、スタック構造を構成する。なお、本実施例では、燃料電池30として固体高分子型燃料電池を用いることとしたが、りん酸型燃料電池など他種の燃料電池を電気自動車に搭載する場合にも、同様に本発明を適用することが可能である。
図1に示すように、電気自動車10では、燃料タンク20が備える水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素は、水素吸蔵合金から放出されると、燃料供給路22を介して上記燃料電池30のアノード側に燃料ガスとして供給され、上記燃料ガス流路34Pにおいて電気化学反応に供される。電解質膜31のアノード側で(1)式に示した反応によって生じたプロトンは水和してカソード側へと移動するため、カソード側では水が消費されることになるが、既述したように燃料ガスを加湿することによって電解質膜31で不足する水分を補っている。電気化学反応に供された残りの燃料排ガスは、燃料ガス流路34Pから燃料排出路24に排出されるが、この燃料排出路24は燃料供給路22に接続しており、燃料排ガスは再び燃料ガスとして燃料電池30に供給される。ここで、燃料排出路24にはポンプ68が設けられており、燃料排ガスを加圧して燃料供給路22に供給している。
一方、酸化ガス流路35Pへは、酸化ガス供給路62を介して酸化ガスである空気が供給される。酸化ガス供給路62にはコンプレッサ60が設けられており、外部から取り込んだ空気を加圧して燃料電池30に供給する構成となっている。電気化学反応に供された酸化排ガスは、酸化ガス流路35Pから酸化ガス排出路64を経由して、外部に排出される。
なお、燃料電池30には、電圧センサ23が設けられている。電圧センサ23は、燃料電池30の出力電圧を検出して、検出した電圧に関する情報を、後述する制御部50に入力する。
制御部50は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、CPU52、ROM54、RAM56および入出力ポート58からなる。CPU52は、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行する。ROM54には、CPU52で各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データなどが予め格納されており、RAM56には、同じくCPU52で各種演算処理を実行するのに必要な各種データが一時的に読み書きされる。入出力ポート58は、水素供給装置側から信号を入力すると共に、CPU52での演算結果に応じて、コンプレッサ60をはじめ、燃料電池30の運転に関わる各部に駆動信号を出力して電気自動車10を構成する各部の駆動状態を制御する。
コネクタ受け部40は、電気自動車10の外表面の所定の位置に設けられた構造であり、外部に設けた所定の水素供給装置が備えるコネクタと接続可能な構造を有している。コネクタ受け部40は、水素流路接続部46と、接続端子48と、水流路接続部42,44とを備えている。水素流路接続部46は水素ガス導入路47の端部構造であり、接続端子48は制御部50と接続する信号線49の端部構造であり、水流路接続部42,44はそれぞれ冷却水路45,43の端部構造である。水素供給装置が備えるコネクタをコネクタ受け部40に接続し、上記各接続部を上記コネクタが備える所定の接続部に接続することによって、水素供給装置側と電気自動車10側との間で、水素ガスおよび冷却水が流通可能となる。また、コネクタをコネクタ受け部40に接続し、接続端子48を水素供給装置側の所定の端子に接続することによって、水素供給装置と電気自動車10との間で、制御部50が実行する制御に関わる情報のやり取りが可能となる。なお、水素流路接続部46および水流路接続部42,44のそれぞれには、電磁バルブが備えられている。これらの電磁バルブは、制御部50と接続しており、制御部50が出力する駆動信号によって開閉される。これらの電磁バルブを閉状態にすることで、電気自動車10と水素供給装置との間の水素ガスや冷却水の流通を、電気自動車側で停止することができる。
燃料電池30における電気化学反応によって生じた電力はモータ70に供給され、モータ70において回転駆動力を発生させる。この回転駆動力は、電気自動車10の車軸を介して、車両の前輪および/または後輪に伝えられ、車両を走行させる動力となる。このモータ70は、制御装置72の制御を受ける。制御装置72は、アクセルペダル72aの操作量を検出するアクセルペダルポジションセンサ72bなどとも接続されている。また、制御装置72は、制御部50とも接続しており、この制御部50との間でモータ70の駆動などに関する種々の情報のやり取りをしている。
なお、電気自動車10は、図示しない2次電池を備えており、電気自動車10の坂道登坂時や高速走行時などのように負荷が増大した場合には、この2次電池によってモータ70に供給する電力を補い、高い駆動力を得ることが可能となっている。この2次電池は、電気自動車10の燃料タンク20に水素を供給する際に、制御部50が動作したり冷却水路45内に水を循環させるために要する電力を供給するなど、燃料電池30による発電が行なわれない場合を含めて、電気自動車10の各部で要する電力を供給するエネルギ源として働く。
(2)水素の補給に関わる構成:
以上、本実施例の電気自動車10の構成について説明したが、次に、電気自動車10の燃料タンク20内に水素を充填する動作に関わる構成についてさらに詳しく説明する。図3は、電気自動車10と、これに水素を補給するための水素供給装置80の様子を表わす説明図である。電気自動車10の車体外表面の所定の位置には、既述したコネクタ受け部40が設けられているが、図3では、このコネクタ受け部40が設けられた位置を領域Fで表わしている。車両外表面の領域Fに設けたコネクタ受け部40の様子は、図4に示した。車両に水素ガスを供給する水素供給装置80は、外部に延出する2本の管状構造である水素供給部82および冷却水供給部84を有しており、これら供給部によって水素ガスあるいは冷却水を電気自動車10に供給可能となっている。この水素供給部82および冷却水供給部84の様子は、図4においてさらに詳しく示した。水素供給装置80が備える水素供給部82は、その端部に第1コネクタ86を備えている。また、水素供給装置80が備える冷却水供給部84は、その端部に第2コネクタ88を備えている。
図4に示すように、コネクタ受け部40は、水素補給口14と冷却水補給口12とを備えている。電気自動車10の車体の外表面に開口する水素補給口14は、既述した水素流路接続部46を備えており(図4では図示せず)、電気自動車10内部に設けられた水素ガス導入路47を介して、燃料タンク20に接続している。さらに、水素補給口14は、制御部50に接続する既述した接続端子48を備えている(図4では図示せず)。また、同じく電気自動車10の車体の外表面に開口する冷却水補給口12は、冷却水路43,45を介して熱交換部26に接続する既述した水流路接続部42,44を備えている(図4では図示せず)。コネクタ受け部40が備える水素補給口14は、上記第1コネクタ86を、はめ込みによって取り付け可能な構成を有しており、コネクタ受け部40が備える冷却水補給口12は、第2コネクタ88を、はめ込みによって取り付け可能な構成を有している。
図5は、水素供給装置80の要部の構成を表わす説明図である。第1コネクタ86は、水素流路接続部96と接続端子98とを備えている。第1コネクタ86を上記水素補給口14に取り付けたときには、水素流路接続部96は、電気自動車10側の既述した水素流路接続部46に接続され、接続端子98は、電気自動車10側の接続端子48に接続される。また、第2コネクタ88は、水流路接続部92,94を備えている。第2コネクタ88を上記冷却水補給口12に取り付けたときには、水流路接続部92は、電気自動車10側の水流路接続部42に接続され、水流路接続部94は、電気自動車10側の水流路接続部44に接続される。
第1コネクタ86が備える水素流路接続部96では、水素供給装置80内に設けられた水素ガス導入路97の一方の端部が開口している。水素ガス導入路97の他方の端部は、図示しない水素貯蔵部に連通している。本実施例の水素供給装置80は、充分量の水素を貯蔵する水素貯蔵部を備え、この水素貯蔵部に貯蔵した水素を、上記第1コネクタ86およびコネクタ受け部40を介して電気自動車に供給する。あるいは、水素供給装置は、このように充分量の水素を貯蔵し、これを外部に供給する装置とする他に、炭化水素や炭化水素化合物などの原燃料を改質して水素を含有するガスを製造すると共に、製造したガスから水素を精製して外部に供給する装置とする構成も可能である。
第2コネクタ88が備える水流路接続部92,94では、それぞれ、水素供給装置80内に設けられた冷却水路95,93が開口している。冷却水路95,93は、熱交換部90において互いに連通している。また、冷却水路95には、冷却水を循環させるためのポンプ91が設けられている。熱交換部90は、ラジエータ構造を有しており、上記冷却水路に導かれて内部を通過する冷却水を降温させる。電気自動車10の燃料タンクに水素を補給する動作は発熱を伴うため燃料タンク20の冷却を行なうが、これら熱交換部90およびポンプ91は、燃料タンク20を冷却することで昇温した冷却水を、水素供給装置80側で降温させるための構造である。
水素供給装置80は、さらに、制御部150を備えている。制御部150は、電気自動車10が備える制御部50と同様に、CPU152,ROM154,RAM156,入出力ポート158を備えている。第1コネクタ86に設けられた既述した接続端子98は、信号線99を介して制御部150と接続している。したがって、第1コネクタ86を水素補給口14に取り付けたときには、制御部150は、電気自動車10が備える制御部50との間で情報のやり取りが可能となる。制御部150は、上記ポンプ91とも接続しており、これに対して駆動信号を出力する。また、水素流路接続部96および水流路接続部92,94のそれぞれには、電磁バルブが備えられているが、これらの電磁バルブは、制御部150と接続しており、制御部150が出力する駆動信号によって開閉される。これらの電磁バルブを閉状態にすることで、電気自動車10と水素供給装置80との間の、水素ガスや冷却水の流通を、水素供給装置80側で停止することができる。
また、電気自動車10側に設けられたコネクタ受け部40は、ヒンジ15を介して開閉自在に車体外表面に取り付けられ、上記冷却水補給口12および水素補給口14を覆う蓋体であるフューエルリッド18を備えている。このフューエルリッド18と、コネクタ受け部40が設けられた車体側には、互いに対応する位置に、それぞれ爪部19と係合部17とが設けられている(図4参照)。燃料の補給を行なわないときには、コネクタ受け部40は、上記爪部19および係合部17とを係合させることによって、フューエルリッド18が閉じた状態となっている。
本実施例の電気自動車10では、その運転席の近傍に、オープナレバーが設けられている。オープナレバーは、上記係合部17と所定のリレーを介して電気的に接続されており、オープナレバーに操作力が加えられると、この操作力が係合部17に伝達され、係合部17と爪部19との係合状態が解除されることによってフューエルリッド18が開く。なお、上記オープナレバーに加えられた操作力を伝える機構は、上記した電気式のものに代えて、所定のケーブルによって上記係合部17と接続する機械式とすることもできる。
水素の補給を行なう際には、オープナレバーを操作して上記係合部17と爪部19との係合状態の解除を行なってフューエルリッド18を開け、冷却水補給口12および水素補給口14に対して、それぞれ、第2コネクタ88および第1コネクタ86を接続する。このように各コネクタが電気自動車10側に接続され、互いに通信し合う制御部50および制御部150のそれぞれから駆動信号が出力されて、各接続部が備える既述した電磁バルブが開状態となると、水素供給装置80から燃料タンク20内に水素が供給可能となると共に、水素供給装置80と電気自動車10との間で冷却水が流通可能となる。その際、制御部50および制御部150のそれぞれから駆動信号を出力されるポンプ29およびポンプ91が駆動されることで、電気自動車10と水素供給装置80との間で冷却水が循環する。この冷却水は、熱交換部26を通過する際に、水素吸蔵合金が水素を吸蔵するのに伴って発熱する燃料タンク20を冷却することで昇温し、水素供給装置80側の熱交換部90を通過することで降温する。水素補給の動作の終了を検出する水素充填量モニタ28からの信号を入力すると、制御部50および制御部150は、ポンプ29および91の駆動を停止すると共に、各接続部が備える電磁バルブを閉状態にして、水素供給装置80から燃料タンク20内への水素の供給を停止すると共に、水素供給装置80と電気自動車10との間の冷却水の循環を停止する。
なお、本実施例では、熱交換部90を水素供給装置80に設け、水素を補給する動作を行なう際には、電気自動車10と水素供給装置80との間で冷却水を循環させて燃料タンク20を冷却することとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、燃料タンク20を冷却する冷却水は、電気自動車10と水素供給装置80との間で循環させて水素供給装置80で繰り返し降温させる代わりに、電気自動車から取り出して、所定量の熱を有する温水として他の用途に用いることとしても良い。この場合には、電気自動車に対しては、水素の補給を行なう間、充分に低温である冷却水を電気自動車の外部から供給し続ければよい。
(3)水素の補給の際に行なわれる制御:
次に、電気自動車10に対して水素の補給を行なう際に実行される制御について説明する。図6は、電気自動車10に水素の補給を行なおうとする際に実行される燃料補給時処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、電気自動車10への水素の補給の動作に先立って、既述したフューエルリッド18を開けるために車両の使用者によってオープナレバーが操作されたときに、電気自動車10の制御部50によって実行される。
本ルーチンが実行されると、まず、制御部50のCPU52は、燃料電池30の始動を指示する所定のスタートスイッチがオン状態となっているかどうかを判断する(ステップS200)。このスタートスイッチは、従来知られるガソリンエンジンを搭載した自動車におけるイグニションスイッチに対応するスイッチであり、燃料電池30の始動および停止に関する指示を使用者によって入力するために設けられたものである。ステップS200において、スタートスイッチがオンである、すなわち、燃料電池30の始動が指示されていると判断したときには、オープナレバーが操作されたにもかかわらずフューエルリッド18を開かず、また、オープナレバーを操作したことによる信号の入力をキャンセルして本ルーチンを終了する(ステップS230)。なお、この場合には、電気自動車10において所定の位置に表示を行なう、あるいは警告音や音声を発するなどにより、スタートスイッチがオンとなっているためにフューエルリッド18が開かないことを使用者に認識させる構成とすることとが望ましい。
ステップS200において、スタートスイッチがオフであると判断したときには、燃料電池30の出力電圧が40V以下であるかどうかを判断する(ステップS210)。既述したように、燃料電池30には電圧センサ23が設けられているが、ステップS210では、この電圧センサ23から入力される信号に基づいて、燃料電池30の出力電圧が40V以下であるかどうかを判断する。ステップS210の判断を行なうときには、ステップS200においてすでにスタートスイッチがオフであること、すなわち、燃料電池30の運転が停止されていることが判断されているが、このステップS210は、水素の充填を行なう際の安全性をさらに高めるための工程である。スタートスイッチをオフにすることで燃料電池30の発電を停止して、燃料電池30へのガスの供給を停止したときには、燃料電池30の出力電圧は、定常状態の数百ボルトから直ちに出力電圧が略0となるわけではなく、燃料電池30内部に残留するガスが消費されてしまうまでの間、徐々に出力電圧が低下するという性質を有している。燃料電池30の出力電圧値が充分に小さい値であるかどうかを確かめることによって、燃料電池30から非所望の出力がある状態で水素の補給を行なうのを防いでいる。なお、ステップS210で判断に用いる値は、40Vに限るものではなく、燃料電池30からの出力電圧値が充分に小さくなったと判断できる値であれば、任意に設定することができる。
ステップS210において、燃料電池30の出力電圧値が40V以下であると判断すると、既述した所定のリレーを接続することでフューエルリッド18を開いて(ステップS220)、本ルーチンを終了する。
ステップS210において、燃料電池30の出力電圧値が40Vを越えていると判断すると、燃料電池30から放電させることによって出力電圧の低下を図る(ステップS240)。本実施例の電気自動車10では、燃料電池30に、図示しない所定の放電抵抗が接続可能となっており、ステップS240では、燃料電池30と上記放電抵抗とを所定時間のあいだ接続することによって、燃料電池30内部に残留するガスを消費する発電を積極的に行なわせ、それによって燃料電池の出力電圧値を低下させる。
ステップS240において燃料電池30の放電を行なわせると、再びステップS210に戻って出力電圧が充分に低下したかどうかを判断し、出力電圧が40V以下に低下するまで、ステップS240およびステップS210の動作を繰り返す。燃料電池の放電によって充分に出力電圧が低下すると、既述したステップS220に移行してフューエルリッド18を開き、本ルーチンを終了する。なお、上記説明では、ステップS240において燃料電池の放電を行なう際に、燃料電池を所定の放電抵抗に接続したが、放電用の抵抗を別途用意する代わりに、電気自動車10に搭載されて電力を消費する所定の装置に燃料電池を接続し、燃料電池の放電を行なわせることとしても良い。
なお、上記燃料補給時処理ルーチンが実行されたときには、ステップS200においてスタートスイッチがオフであると判断されると、オープナーレバーからの信号が入力されている状態が維持されるが、この信号は、フューエルリッド18が次回に閉じられたときにキャンセルされる。すなわち、フューエルリッド18が備える爪部19に係合する係合部17には所定のセンサが設けられており、フューエルリッド18が閉じられて爪部19が係合部17に係合し、これが検知されると、オープナーレバーから入力された信号がキャンセルされる。したがって、オープナーレバーから信号が入力されたか、あるいはこの信号がキャンセルされたかどうかを判定することで、フューエルリッド18の開閉状態を知ることができる。
上記図6に示した燃料補給時処理ルーチンは、燃料電池の運転中に水素の補給を行なうのを防止するための動作である。次に、水素の補給中に燃料電池を始動させるのを防止するための動作について説明する。図7は、電気自動車10で実行される燃料電池始動時処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池30を始動するために、既述したスタートスイッチが車両の使用者によって操作されたときに、電気自動車10の制御部50によって実行される。
本ルーチンが実行されると、制御部50のCPU52は、フューエルリッド18が開放されているかどうかを判断する(ステップS300)。フューエルリッド18が閉じていると判断したときには、燃料電池30を始動して(ステップS310)、本ルーチンを終了する。ここで、燃料電池の始動とは、燃料タンク20を加熱して水素吸蔵合金から取り出した水素を燃料ガスとして燃料電池30に供給し始めると共に、コンプレッサ60を駆動して圧縮空気を酸化ガスとして燃料電池30に供給し始めることを含む、燃料電池30の始動に関わる一連の動作の開始を指すものである。
ステップS300において、フューエルリッド18が開いていると判断したときには、燃料電池30の始動を禁止すると共に、フューエルリッド18が開いているために燃料電池30が始動しないことを使用者に認識可能となるように、警告ランプを点灯して警告音を発し、スタートスイッチを操作することによって入力された信号をキャンセルして(ステップS320)、本ルーチンを終了する。もとより、上記した使用者に認識させるための動作は、使用者が認識可能となる構成であれば、警告ランプを点灯したり警告音を発する他、異なる構成としても良い。
なお、ステップS300におけるフューエルリッド18の開閉状態に関する判断は、既述したように、オープナレバーを操作することによる信号の入力があるかどうかによって行なう。オープナレバーが操作されて図6に示した燃料補給時処理ルーチンが実行されている場合には、例えば、ステップS220のフューエルリッド18を開く動作が行なわれる前であって、ステップS240における燃料電池30からの放電を実行中であっても、フューエルリッド18が開いていると判断される。
以上のように構成された本実施例の電気自動車10および水素供給装置80によれば、オープナレバーを操作しても、スタートスイッチがオンのときにはフューエルリッド18が開かないため、水素補給が開始されず、燃料電池30の運転中に水素補給の動作が行なわれるのを防止することができる。したがって、水素補給を行なう際の安全性を向上させることができる。特に、本実施例のように燃料電池を電気自動車などの移動体に搭載して移動のための駆動エネルギ源とする場合には、燃料電池の運転中には電気自動車の移動が行なわれる可能性があるが、燃料電池の運転中には水素補給が禁止されることにより、水素の補給中に電気自動車が移動してしまうおそれがなく、水素補給時の安全性をさらに高めることができる。
なお、上記実施例では、図6のステップS200において、燃料電池の始動を指示するためのスタートスイッチがオフであることを判断することによって、水素の補給中に電気自動車が移動してしまうのを防いでいるが、本実施例の電気自動車10においては、燃料電池が停止中であっても、既述した2次電池から供給される電力を用いて走行するモードを設定することが可能である。このような場合には、図6のステップS200において、燃料電池が運転されていないかどうかだけでなく、上記した2次電池を駆動エネルギ源とする走行モードが選択されない状態であるかどうかの判断を行なうことにより、水素補給中に電気自動車が移動してしまうのを防ぐことができる。電気自動車が移動中でないか、および、移動可能であるかどうかを判断することができれば、他の条件によってステップS200の判断を行なうこととしても良い。
さらに、本実施例では、水素の補給を行なおうとオープナレバーを操作した際に、スタートスイッチがオフであって燃料電池の運転停止が指示されている場合であっても、燃料電池の出力電圧が所定の値を超えるときには、フューエルリッド18を開くことなく水素補給の開始を禁止している。したがって、燃料電池からの出力電圧が所定値を越える状態であるときに水素の補給を行なってしまうことがなく、水素補給の動作の安全性を確保することができる。
また、本実施例の電気自動車によれば、燃料電池を始動させようとスタートスイッチをオンにしたときに、フューエルリッド18が開いている場合には、燃料電池の始動が禁止されるため、水素の補給中に燃料電池を始動してしまうのを防止することができ、水素補給の動作の安全性を確保することができる。なお、フューエルリッド18が開いているときには、燃料電池の始動を禁止するだけでなく、既述した2次電池を駆動エネルギ源として用いる走行を含めて、車両の移動を禁止する構成とすることにより、水素補給時の安全性をさらに高めることができる。
なお、既述した実施例の燃料電池始動時処理ルーチンのステップS300では、水素の補給を行なっているかどうかの判断は、フューエルリッド18が開いているかどうかに基づいて行なったが、異なる条件に基づいて判断することとしても良い。例えば、電気自動車側の制御部50と水素供給装置80側の制御部150とが通信可能に接続されているかどうかに基づいて判断することとしてもよいし、水素補給の開始を指示する所定の信号(水素供給装置80から水素を送り出す動作や冷却水を循環させる動作を開始するために、使用者が操作する所定のスイッチからの指示信号)が入力されているかどうかに基づいて判断することとしても良い。本実施例のように、フューエルリッド18の開閉状態に基づいて判断する場合には、水素供給装置80と電気自動車10との間で水素の流路の接続が行なわれる前に、水素の補給を行なっているかどうかを判断することができるので、より安全性を高めることができる。
既述した実施例では、一旦オープナレバーを操作して燃料補給時処理ルーチンが実行されると、オープナーレバーの操作時には燃料電池の出力電圧が所定値以上であってフューエルリッド18が開かない場合にも、放電の動作を繰り返して出力電圧を低下させることにより、最終的にはフューエルリッド18が開く構成となっているが、異なる構成とすることもできる。例えば、オープナレバーが操作されたときに燃料電池の出力電圧が所定値(上記実施例では40V)を越える場合には、燃料電池を放電抵抗と接続する動作のみを行なって上記ルーチンを終了することとし、フューエルリッド18を開くためには再びオープナレバーを操作することを要する構成としても良い。このような場合には、燃料電池の出力電圧が高いためにフューエルリッド18の開放を禁止していることを、使用者に認識可能となるように、所定の場所に表示を行なったり警報を発したりすることが望ましい。なお、このような場合には、放電の動作に伴って、オープナレバーを操作することによる入力信号がリセットされるため、再びオープナレバーを操作する前にスタートスイッチをオンにして、図7の燃料電池始動時処理ルーチンを実行させると、ステップS300では、フューエルリッド18は開いていないと判断されることになる。
また、既述した実施例の燃料補給時処理ルーチンでは、燃料電池が運転中であると判断したときには、オープナーレバーを操作してもフューエルリッド18を開かないことにより、水素補給の開始を禁止したが、異なる構成とすることもできる。例えば、オープナーレバーの操作によってフューエルリッド18が開いてコネクタをコネクタ受け部に接続した際にも、スタートスイッチがオン状態である場合(燃料電池が運転中の場合)には、既述した各接続部が備える電磁バルブが開かない構成とすることにより、水素補給の開始を禁止することとしてもよい。
なお、既述した実施例の燃料補給時処理ルーチンでは、スタートスイッチがオフ状態であっても、燃料電池の出力電圧が所定値以下に低下するまではフューエルリッド18を開かない構成としたが、燃料電池の出力電圧値が所定値を越えるときに水素補給の開始を禁止する動作として、異なる構成をとることもできる。例えば、オープナーレバーを操作したときには、スタートスイッチがオフであればフューエルリッド18を開いてコネクタの接続を可能とし、コネクタとコネクタ受け部とが接続されて水素補給の開始のための所定の指示が入力されても、燃料電池の出力電圧が所定値以下になるまでは制御部50および制御部150に待機させて、燃料電池の出力電圧が所定値以下に低下した後に電磁バルブの開放やポンプの駆動を行なわせ、水素の補給を開始する構成とすることができる。このような構成とすれば、水素補給時の動作の操作性を向上させることができる。すなわち、水素補給を行なおうとする使用者は、燃料電池の放電電圧が所定値を越える場合に、燃料電池の放電が終了してフューエルリッド18が開ける状態になるまで待機する必要がなく、水素供給装置80と電気自動車10との間を上記コネクタおよびコネクタ受け部を介して接続し、水素補給の開始のための所定の指示を入力して、水素補給の開始に関わる動作を終えてしまうことが可能となる。このような場合には、コネクタを接続してから実際に水素の補給が開始されるまでの間(燃料電池の出力電圧が所定値以下に低下するまでの間)は、電気自動車10あるいは水素供給装置80の少なくともいずれかにおいて、電圧を降下させるために待機中であることを認識可能となるように、所定の場所に表示を行なったり警報を発したりすることとすればよい。
また、図7の燃料電池始動時処理ルーチンでは、ステップS300においてフューエルリッド18が開いていると判断した場合には、燃料電池の始動を禁止してスタートスイッチの操作がキャンセルされる構成としたが、異なる構成としても良い。例えば、ステップS320において燃料電池の始動を禁止すると共に警告ランプの点灯や警告音を発する動作を行なった後は、このルーチンを終了することなくステップS300に戻ることとし、水素充填の動作を終えてフューエルリッド18が閉じられると、ステップS310に移行して燃料電池を始動する構成としても良い。
既述した実施例の電気自動車10および水素供給装置80の構成は、種々の変形が可能である。例えば、上記実施例では、水素供給装置80は、水素を電気自動車10に供給すると共に、電気自動車10との間で冷却水の循環を行なうこととしたが、冷却水は水素供給装置80とは異なる装置から循環させることとし、水素供給のための装置と、冷却水を供給するための装置とは別体としても良い。また、水素補給時に燃料タンク20を冷却するための冷却装置(上記実施例では、水素供給装置80側に設けた熱交換部90に相当)は、電気自動車10側に搭載する構成も可能である。また、上記実施例では、単一の蓋体であるフューエルリッド18によって開閉されるコネクタ受け部40に、第1コネクタ86および第2コネクタ88を接続して水素および冷却水を電気自動車10に供給することとしたが、水素を供給するコネクタおよび冷却水を供給するコネクタは、それぞれ、離れた場所に設けた異なるコネクタ受け部に接続することとしても良い。あるいは、単一のコネクタを電気自動車10に接続することで、水素と冷却水との両方の流路を、電気自動車10と水素供給装置80との間で接続する構成としても良い。また、水素供給装置80から電気自動車10へ水素を供給する流路を開閉するために水素流路接続部96に設けた電磁バルブは、異なる位置に設けることが可能であり、水素ガス導入路97の任意の位置に設けることができる。また、燃料タンク20は、水素吸蔵合金に吸蔵させる以外の方法によって水素を蓄える構成としても良い。
(4)電気自動車のその他の構成:
既述した実施例の電気自動車10は、水素吸蔵合金を有する燃料タンク20を備え、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることによって水素を蓄える構成としたが、異なる燃料を搭載する電気自動車においても、本発明を適用することが可能である。電気自動車が備える燃料タンクには、水素に代えて炭化水素あるいは炭化水素化合物からなる燃料を蓄えることとし、このような燃料(原燃料)を改質して水素を生成するための装置を電気自動車にさらに搭載することとしても良い。水素を精製する原燃料となる炭化水素あるいは炭化水素化合物としては、天然ガス(メタン)などの気体燃料や、アルコールやガソリンといった液体燃料など、種々のものを用いることができる。これらの原燃料から水素を生成するための装置としては、貴金属系の触媒を備え、水蒸気改質反応や部分酸化反応を促進して上記燃料から水素リッチガスを生成するための改質器や、生成した水素リッチガス中の一酸化炭素濃度を低減するための一酸化炭素選択酸化触媒を備える一酸化炭素低減装置など、周知の装置を用いることができる。
このような場合にも、電気自動車が備える燃料タンクに上記原燃料を補給する際に本発明を適用し、既述した実施例と同様の動作を行ない、原燃料の補給時に燃料電池の運転を開始するのを禁止したり、燃料電池の運転中に原燃料の補給の開始を禁止することによって、原燃料を補給する際の安全性を高めることができる。
なお、上記実施例では、本発明を車両へ適用する構成を例示したが、車両の他、船舶、航空機、飛翔体など、燃料電池からの出力を利用して移動する種々の移動体に適用することができる。
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。