JP5381902B2 - 表面処理鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、家電製品、その他の用途に使用される、美麗で耐食性の優れた表面処理鋼板及びその製造方法に関する。
鋼板に亜鉛めっきを施し、亜鉛の犠牲防食作用によって鋼板の耐食性を向上させることは、古くから行われてきた。しかし、亜鉛は、鉄に比べて非常に卑な金属であるために、犠牲防食作用を発揮する際、溶解速度が大きく、寿命が短いという欠点があった。そこで、亜鉛めっき鋼板の寿命を延ばす方法として、亜鉛めっきの厚目付化の他、亜鉛と、鉄、ニッケル等との合金めっきが提案されてきた。
Zn−Ni合金めっき鋼板は、特に、未塗装耐食性に優れ、更に、塗装後耐食性や加工性にも優れることから、自動車用防錆鋼板等として実用化された。Zn−Ni合金めっき鋼板の性能を更に向上させるために、第3成分添加による多元合金化、及び、複合めっき等の種々の改良方案が開示されている。
例えば、Zn−Ni合金めっき中に、Ti又はTi化合物を含有させるもの(特許文献1)、Al23を含有させるもの(特許文献2)等が挙げられる。また、製造方法に関しては、Zn−Ni合金めっきで生じ易い表面の光沢むらを防止するために、めっき浴中にSrSO4を添加する方法(特許文献3)等が開示されている。
しかし、特許文献1及び2で開示されためっき鋼板は、耐食性の向上に主眼が置かれて開発されたものであって、外観については、特に考慮されておらず、二元系のZn−Ni合金めっき鋼板と同様に、金属光沢のない灰色の外観であって、美麗とは言えない。
従って、外観を重視する用途に用いるためには、厚塗り塗装等の、隠蔽性が高く、それ自体が意匠性の高い塗膜を施す必要がある。
特許文献3に開示された方法によって得られるめっき鋼板も、金属光沢と言える外観ではない。
特許文献4には、鋼板側から順に、0.05〜10.0g/m2のNiめっき、0.05〜2.8g/m2のSnめっき、更に、0.02〜1.5g/m2のZnめっきを施した後、200〜800℃の加熱処理によって、該めっき層の少なくとも一部を合金化させることで、表層にZn含有率が5〜80質量%、Ni含有率が40質量%以下で、かつ、全量が0.05〜3.0g/m2のSn−Zn二元合金層、又は、Sn−Zn−Ni三元合金層を形成させたことを特徴とした表面処理鋼板の製造方法が開示されている。
この方法によれば、最表層にSn−Zn合金層、又は、Sn−Zn−Ni合金層が形成されるため、白色半光沢の比較的美麗な外観が得られる。しかし、耐白錆性については、亜鉛めっき鋼板を凌駕するものの、耐赤錆性については、亜鉛めっき鋼板に及ばない。
このように、従来提案されている技術では、美麗な金属光沢外観と、耐白錆性及び耐赤錆性を満足するめっき鋼板は得られていない。
特開昭58−104194号公報 特開昭61−235600号公報 特公昭58−39236号公報 特公平6−53957号公報
本発明は、上記実情に鑑み、美麗で耐食性の優れた表面処理鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討し、美麗で耐食性の優れた表面処理鋼板及びその製造方法を構築して、本発明に至った。
本発明の主旨は、次のとおりである。
(1)鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、Sn層、Sn−Zn合金層からなる表面処理層、又は、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、SnとSn−Zn合金の混合層からなる表面処理層を有する鋼板であって、該表面処理層中の全Zn量が7〜20g/m2であり、かつ、全Zn量と全Ni量の質量比Zn/Niが4〜10であり、前記表面処理層上に有機化合物を主体とする塗膜を有することを特徴とする表面処理鋼板。
(2)前記表面処理層中の全Sn量が0.5〜5.6g/m2であることを特徴とする前記(1)に記載の表面処理鋼板。
)鋼板に、電気Zn−Ni合金めっき、次いで、電気Snめっきを行った後、該めっき後の鋼板を加熱し、Snめっき層の溶融処理と同時に、Zn−Ni合金めっき層とSnめっき層との合金化処理を施し、めっき層を鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、Sn層、Sn−Zn合金層となる積層構造、又は、めっき層を鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、SnとSn−Zn合金の混合層となる積層構造を形成した後、得られた表面処理層の上に、有機化合物を主成分とするコーティング剤を塗布、焼き付けて塗膜を形成することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の表面処理鋼板の製造方法。
本発明によれば、美麗な外観と良好な耐食性を具備した表面処理鋼板及びその製造方法を提供することができる。
本発明の表面処理を施す鋼板は、特に限定されるものではなく、用途によって、適切な鋼種、厚さ、硬度、表面粗さの鋼板を選択すればよい。
鋼板の表面には、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、Sn層、Sn−Zn合金層からなる表面処理層、又は、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、SnとSn−Zn合金の混合層からなる表面処理層を有することが必要である。
このような層構造は、めっき層断面の元素分布を、EPMAなど公知の手段により分析することで確認できるが、グロー放電発光分光分析(GDS)を用いても、簡便に確認することができる。
本発明の表面処理鋼板における、それぞれの層の担う役割は、以下の通りである。
最下層のZn−Ni合金層は、鋼板に対する犠牲防食作用を有し、赤錆発生を長期にわたって抑制する。Zn−Ni合金層の好ましい厚み範囲は1.0〜3.5μmであり、Niが9〜20質量%であることが望ましい。
Sn−Zn−Ni合金層は、Zn−Ni合金層の腐食促進を緩和する。これは、Sn層とZn−Ni合金層が直接接すると、電位差が大きくて、相対的に卑なZn−Ni合金層の腐食が促進してしまうので、Sn層とZn−Ni合金層の中間の電位を有するSn−Zn−Ni合金層でZn−Ni合金層を覆い、その上層に、Sn層を設けて、Zn−Ni合金層の腐食促進を緩和する。
Sn−Zn−Ni合金層の好ましい厚みは、0.05〜1.8μmであり、Sn:20〜40質量%、Zn:40〜75質量%、Ni:5〜20質量%が好ましい。
Sn−Zn−Ni合金層の上層として形成するSn層により、優れたバリヤー効果が得られ、該効果による耐食性と美麗な外観が発現する。Sn層は、酸性浴からの電気めっきをしたままでは、光沢の少ない白色外観であるが、加熱溶融処理を施して表面を平滑化すると、優れた金属光沢外観を呈する。
上層に設けるSn−Zn合金層は、白色半光沢外観であり、これら二層によって、美麗な白色光沢外観の表面処理鋼板となる。
Sn層の厚みは0.006〜0.8μm、Sn−Zn合金層の厚みは0.03〜0.1μmであることが好ましい。Sn−Zn合金層中のZnは5〜30質量%が好ましい。Sn−Zn合金層は、厚すぎると、光沢不良の原因になり得るが、後述の製造方法で製造する限り、この層を厚く生成させることは困難である。
Sn層の上層に形成されるSn−Zn合金層は、Sn層に対する犠牲防食能を有することで、Snの耐食性を向上させるとともに、塩化物環境でも白錆発生が少ないという作用効果を奏する。
このように、鋼板の表面に、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、Sn層、Sn−Zn合金層からなる表面処理層を有することで、美麗で耐食性に優れる鋼板となる。
また、表面処理層が、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、SnとSn−Zn合金の混合層のからなる場合も、最下層のZn−Ni合金層は、鋼板に対する犠牲防食作用を有し、赤錆発生を長期にわたって抑制する。Zn−Ni合金層の好ましい厚みは1.0〜3.5μmであり、Niは、9〜20質量%であることが望ましい。
Sn−Zn−Ni合金層は、Zn−Ni合金層の腐食促進を緩和する。これは、SnとSn−Zn合金の混合層とZn−Ni合金層が直接接すると、相対的に電位の卑なZn−Ni合金層の腐食が促進してしまうので、SnとSn−Zn合金の混合層とZn−Ni合金層の中間の電位を有するSn−Zn−Ni合金層でZn−Ni合金層を覆い、その上層に、SnとSn−Zn合金の混合層を設けることで、Zn−Ni合金層の腐食促進を緩和する。
Sn−Zn−Ni合金層の好ましい厚みは、0.05〜1.8μmであり、Sn:20〜40質量%、Zn:40〜75質量%、Ni:5〜20質量%が好ましい。
Sn−Zn−Ni合金層の上層として形成されるSnとSn−Zn合金の混合層により、優れたバリヤー効果による耐食性と美麗な白色光沢外観が発現する。
SnとSn−Zn合金の混合層の厚みは、0.04〜0.9μmが好ましい。Sn−Zn合金層中のZnは、2〜15質量%が好ましい。
SnとSn−Zn合金の混合層は、ZnやZn−Ni合金と比べて、塩化物環境でも白錆発生が少ないという作用効果を奏する。
このように、鋼板の表面に、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、SnとSn−Zn合金の混合層からなる表面処理層を有することで、美麗で耐食性に優れる鋼板となる。
表面処理層中の全Zn量が、7〜20g/m2であり、かつ、全Zn量と全Ni量の質量比Zn/Niが、4〜10であることが必要である。
全Zn量が7g/m2より少ないと、鋼板に対する犠牲防食作用が不十分であり、腐食環境によっては、短期間で赤錆が発生してしまう。一方、20g/m2を超える全Zn量は、考え得る使用環境における耐食性の確保のためには過剰であるとともに、過剰なZnは、外観の劣化をもたらす。
全Zn量と全Ni量の質量比Zn/Niが4より小さいZn−Ni合金めっき鋼板を得るのは困難であり、また、得られるめっき外観もめっき焼け状の褐色ないし黒色の外観となってしまうので、上層にSn層、Sn−Zn合金層が存在しても、光沢のある外観は得難い。
一方、全Zn量と全Ni量の質量比Zn/Niが10を超える場合、この層は、実質的にZn層と同等の挙動を示し、酸性Snめっき浴への溶解が速く、溶解量が大きいので、所定の付着量を有し、良好な外観を有する表面処理鋼板が得られない。
表面処理層中の全Sn量は、0.5〜5.6g/m2が望ましい。0.5g/m2より少ないと、Sn及びSn−Zn特有の美麗な光沢外観を得ることが困難である。一方、全Sn量が5.6g/m2を超えると、製造コストが増大するばかりで、外観の向上は認められず、むしろ、Sn−Zn合金層が厚くなりすぎる恐れがある。その場合は、光沢が不十分な白色外観になってしまう。
前述の表面処理鋼板の表面には、無機化合物又は有機化合物の少なくとも1種からなる皮膜を有してもよい。塗料密着性、導電性等、必要とされる特性に適した処理層を付与すればよい。
本発明のめっき鋼板は、前述した必須要件を満足するものであれば、その製造方法を限定する必要はない。例えば、蒸着めっき等の手段により、所定の成分となるめっき層を積層する、又は、蒸着めっき、電気めっき等、公知のめっき方法を組み合わせて、所定の成分となるめっき層を積層するなどの方法で製造することが可能である。
しかし、これらの方法では大掛かりな設備投資が必要であり、製造設備以外にも、生産性、コスト等を勘案すると、実用的とは言えない。本発明で提案した方法によれば、大きな設備投資の必要はなく、簡便かつ低コストで製造することが可能となる。
次に、本発明の外観と耐食性に優れた表面処理鋼板を製造する方法について説明する。
まず、鋼板に、電気Zn−Ni合金めっき、次いで、電気Snめっきを施す。その後、鋼板を加熱して、Snを溶融するが、この時、同時に合金化が進行し、最表面にSn−Zn層が生成し、Sn層の下層にSn−Zn−Ni合金層が形成されるか、又は、最表面にSnとSn−Znの混合層が生成し、その下層にSn−Zn−Ni合金層が形成される。
電気Zn−Ni合金めっきは、Zn(II)イオン、Ni(II)イオン、硫酸を主たる成分とする硫酸酸性めっき浴からの電解による方法で得られる。液の電導度を高めるため、硫酸ナトリウム等を加えてもよい。Zn(II)0.1〜0.5mol/L、Ni(II)0.3〜1.0mol/L、硫酸0.15〜0.4mol/Lが、良好な電気Zn−Ni合金めっきを得やすい濃度範囲である。めっき液温度は40〜65℃が好ましい。
上記のめっき液を用い、循環セルで陰極電流密度100〜300A/dm2で、好ましいZn−Niめっきが得られる。めっき量は、電解時間を変えることで調整できる。Zn−Niめっき中のZn量は、7〜20g/m2であり、かつ、Niは、9〜20質量%である。Ni量は、7〜20g/m2が好ましい。
電気Snめっきは、硫酸浴やフェノールスルホン酸浴を代表とする酸性浴で行うのが、良好なSnめっき層を得るうえで好ましい。例えば、Sn(II)0.17mol/L、フェノールスルホン酸0.35mol/L、及び、有機添加剤を含む酸性めっき浴からの電解による方法で得られる。
ただし、Zn−Ni合金めっきを施された鋼板が、酸性Snめっき浴に浸漬されると、速やかにZn−Ni合金層の溶解が起こるので、酸性浴に浸漬すると同時に電解が始まるように、アノードをめっき槽入側に配置するのがよい。
Snめっき付着量は、0.5〜5.6g/m2が好ましく、通電量で制御すればよい。0.5g/m2未満では、めっき量の低下とともに、光沢、色調が優れなくなる傾向がある。また、5.6g/m2を超えても、特に改善される性能はなく、経済的な理由から、避けた方がよい。
Snの加熱溶融は、通電加熱、誘導加熱、赤外線加熱、熱風加熱等、又は、それらを組み合わせるなどの任意の方法で行うことができる。鋼板の到達温度は240〜260℃が好ましい。この温度範囲が、最も良好な結果をもたらす。
Snの加熱溶融直後に、鋼板を水冷するが、水冷直前の錫の溶融状態によって、表面の層構造に違いが生ずる。即ち、Snが溶融状態のまま水冷すると、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、Sn層、Sn−Zn合金層からなる表面処理層が形成され、凝固又は半凝固の状態で水冷すると、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、SnとSn−Zn合金の混合層が形成される。
前述のめっき、加熱処理を施した後、有機化合物を主成分とするコーティング剤を塗布、焼き付けて、塗膜を形成すれば、塩水などの水系腐食液から鋼板の腐食を、よりよく防ぐことができる。例として、水性ポリウレタン樹脂、架橋剤、無機防錆剤を配合して、塗料用分散機を用いて攪拌して調整したコーティング剤をロールコーターで塗布し、熱風乾燥することで、目的に合った塗膜を得ることができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
厚さ0.8mmの冷延鋼帯(SPCC)を、通常の方法で、浸漬アルカリ脱脂、希硫酸酸洗し、その後、以下に示す表面処理を施した。
Zn−Ni合金めっき:Zn2+を0.1〜0.5mol/L、Ni2+を0.3〜1.0mol/L、Na+を1.4mol/Lを含む60℃の硫酸酸性めっき浴を用い、横型電解セルで鋼帯とめっき液の相対流速を200m/分にして、陰極電流密度100〜300A/dm2で電解処理を施した。陽極には、白金めっきしたチタンを用いた。
Snめっき:Sn2+を0.17mol/L、フェノールスルホン酸イオンを0.35mol/L、及び、適量の界面活性剤を含む43℃のフェロスタン浴を用いて、陰極電流密度20A/dm2で陰極電解した。陽極には、白金めっきしたチタンを用いた。Snめっきの付着量は、電解時間で調節した。
Snめっき後は、水、又は、Snめっき液を10倍希釈した溶液に浸漬し、ゴムロールで液切りをした後、冷風で乾燥し、通電加熱によって、6秒間で250℃まで昇温させて、Snを溶融し、通電を停止した1秒後、又は、0.2秒後に、80℃の水でクエンチした。
一部のサンプルには、次に記載の塗膜の被覆を施してから、評価試験に供した。
表面処理塗膜層を形成するためのコーティング剤は、ビスフェノールA型ジオール、ネオペンチルグリコール及びイソフタル酸から得られるポリエステルジオール、2,2ジメチロールプロピオン酸及びイソホロンジイソシアネートを反応させた後、トリエチルアミンで中和し水分散化して調製した水性ポリウレタン樹脂を74質量%、架橋剤としてジブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタンを5質量%、無機防錆剤としてコロイダルシリカ(日産化学工業社製スノーテックスN)を20質量%とりん酸水素二アンモニウムを1質量%配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。
これを、ロールコーターにより塗布し、到達板温度が150℃になるように加熱乾燥し、すぐに水冷し、その後、温風を吹きつけて乾燥した。乾燥後の塗膜厚みが1.0μmとなるようにした。
以上の方法で作製した表面処理鋼板を、次に示す(A)、(B)、及び、(C)の評価テストに供し、特性を比較した。
(A)表面処理層の構造
Zn、Ni、及び、Snの付着量は、蛍光X線強度から、予め作成した検量線を使って算出した。また、めっき層の層構造は、グロー放電発光分光分析(GDS)によって確認した。GDSのチャートにおいて、最表面のSnとZnの現れる層をSn−Zn層、次に、Snのみが現れる層をSn層、次に、Sn、Zn、及び、Niが現れる層をSn−Zn−Ni層、そして、Snがなくなり、ZnとNiのみが現れる層をZn−Ni層とした。
それぞれの層の厚みは、次のようにして求めた。GDS測定によって、エッチングされた部分の深さを触針式の粗度計で測定し、これと測定時間とから、時間と深さの関係を予め求めておき、各層のエッチングにかかる時間を厚みに換算した。また、有機化合物を主体とする塗膜の厚みを、Siの蛍光X線強度から、予め作成した検量線を使って算出した。
(B)外観
塗膜被覆処理前及び処理後の表面処理鋼板の外観を、以下の方法で評価した。
(B)−1(光沢)
鋼帯の長手方向の60°鏡面光沢度(Gs60°)を測定した。Gs60°は、300以上を◎、150以上300未満を○、100以上150未満を△、100未満を×とした。
(B)−2(色調)
分光測色計を用いて、L***表色系で表わされる供試材の色調を測定した。C*=((a*2+(b*21/2で表わされる彩度C*が2.0以下であり、かつ、明度L*が55以上を○、彩度C*、明度L*のいずれか一方のみが、前記の基準を外れる場合を△、彩度C*、明度L*のいずれもが、前記基準を外れる場合を×とした。
更に、彩度C*が1.5以下であり、かつ、明度L*が60以上である、特に優れた外観を呈する場合を◎とした。
(C)耐食性
塗膜被覆処理前及び処理後の表面処理鋼板を50mm×100mmのサイズに切り出し、エリクセン試験機で7mmの張出し加工を施した。裏面、及び、端面をテープシールして、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を行った。塩水噴霧試験は、5質量%の塩化ナトリウム水溶液を35℃で120時間噴霧した後の発錆状況を、目視評価した。
評価基準は、◎:赤錆、白錆発生なし、〇:赤錆発生極小又は白錆発生小、△:赤錆発生小又は白錆やや大、×:赤錆発生中又は白錆発生大、××:赤錆発生大、とした。
以上の性能評価結果を表1〜4に示す。
Figure 0005381902
Figure 0005381902
Figure 0005381902
Figure 0005381902
表1〜4に示す性能評価結果において、総合評価を、◎(非常に良好)、○(良好)、△(やや不良)、×(不良)の4段階に分類し、◎、○を合格レベルとした。
本発明の実施例1〜42は、いずれも、総合評価◎又は○であり、優れた外観と耐食性を兼ね備えていた。
比較例1及び32は、Znの付着量が少ない例で、耐食性が劣っていた。比較例2〜5、及び、33〜36は、Znの付着量が少なく、かつ、Zn/Niが低い例である。光沢、色調がともに不十分であり、耐食性が劣っていた。
比較例6、10、13、14、17、18、37、41、44、45、48、及び、49は、Zn/Niが高い例である。Snめっき液によるZn−Ni層の溶解が多く、光沢、色調がともに劣化した。
比較例7、8、9、11、12、15、16、19、20、38、39、40、42、43、46、47、50、及び、51は、Zn/Niが低い例であり、光沢が不十分だった。色調の劣るものもあった。
比較例21、22、52、及び、53は、Zn付着量が多く、かつ、Zn/Niが高い例である。Zn付着量過多による光沢不良と、Snめっき液によるZn−Ni層表面の溶解によって、光沢、色調がともに劣化した。
比較例23〜25、及び、54〜56は、Zn付着量が多い例であり、光沢が劣っていた。比較例26及び57は、Zn付着量が多く、かつ、Zn/Niが低い例である。光沢、色調が不十分だった。
比較例27及び58は、Znの付着量が少なく、かつ、Zn/Niが低い例である。光沢、色調がともに劣っており、塗膜を付与しても、耐食性が不十分であった。比較例28及び59は、Zn/Niが高い例であり、Snめっき液によるZn−Ni層の溶解が多く、光沢、色調が、ともに劣化した。
比較例29及び60は、Zn付着量が多い例であり、光沢が劣っていた。比較例30及び31は、Snめっきを施さない、従って、Sn−Zn−Ni合金層、Sn層、Sn−Zn合金層のない例である。黒みがかった光沢の低い外観で、耐食性が不十分であった。
前述したように、本発明によれば、美麗な外観と良好な耐食性を具備した表面処理鋼板及びその製造方法を提供することができる。よって、本発明は、表面処理鋼板製造及び利用産業において、利用可能性が大きいものである。

Claims (3)

  1. 鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、Sn層、Sn−Zn合金層からなる表面処理層、又は、鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、SnとSn−Zn合金の混合層のからなる表面処理層を有する鋼板であって、該表面処理層中の全Zn量が7〜20g/m2であり、かつ、全Zn量と全Ni量の質量比Zn/Niが4〜10であり、前記表面処理層上に有機化合物を主体とする塗膜を有することを特徴とする表面処理鋼板。
  2. 前記表面処理層中の全Sn量が0.5〜5.6g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板。
  3. 鋼板に、電気Zn−Ni合金めっき、次いで、電気Snめっきを行った後、該めっき後の鋼板を加熱し、Snめっき層の溶融処理と同時に、Zn−Ni合金めっき層とSnめっき層との合金化処理を施し、めっき層を鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、Sn層、Sn−Zn合金層となる積層構造、又は、めっき層を鋼板側から順に、Zn−Ni合金層、Sn−Zn−Ni合金層、SnとSn−Zn合金の混合層となる積層構造を形成した後、得られた表面処理層の上に、有機化合物を主成分とするコーティング剤を塗布、焼き付けて塗膜を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理鋼板の製造方法。
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