JP5381900B2 - 耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、建物の耐震補強材として用いられるブレースを構成する耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管及びその製造方法に関するものである。
建物の耐震補強材として用いられるブレースとして、鋼管を用いた鋼管ブレース(特許文献1)が知られている。ブレースは地震の発生時に建物の倒壊を防ぐためのものであり、耐座屈特性が要求される。地震の振動は繰り返されるため、繰り返し載荷時に荷重低下の小さいものが有利である。特許文献1の鋼管ブレースは二重鋼管構造とすることにより耐座屈特性を高めたものであるが、構造が複雑化するためコスト高となる。そこで単一鋼管によるブレースが求められている。
非特許文献1である日本建築学会論文報告集260号の104頁には、シームレス鋼管よりも安価に製造できる電縫鋼管を、ブレースとして使用することが記載されている。しかし一般的な電縫鋼管は繰り返し載荷時の荷重低下が大きく、単一鋼管でブレースとして用いるには耐座屈特性が不十分であった。
特開2008−223415号公報
日本建築学会論文報告集260号、昭和52年10月発行、99〜108頁「鉄構造筋違付骨格の復元力特性」
本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解決し、単一鋼管でブレースとして用いるに十分な耐座屈特性を備えたブレース用電縫鋼管及びその製造方法を提供することである。
上記の課題を解決するためになされた本発明の耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管は、質量%で、C:0.03〜0.25、Si:0.05〜1.0、Mn:0.3〜1.6、P:0.03以下、S:0.015以下、Sol.Al:0.005〜0.1、N:0.0005〜0.006、残部Fe及び不可避的不純物からなり、組織は軟質相であるフェライトと硬質相であるマルテンサイト又はベイナイトからなる二相組織であり、硬質相の分率が3〜20%、硬質相の平均粒径が5μm以下であり、かつ溶接部を除き、最大板厚と最小板厚との差td(μm)と、外表面の10点平均粗さRz(μm)が、0≦td×√Rz≦40000の条件を満たすことを特徴とするものである。
また上記の課題を解決するためになされた本発明の耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管の製造方法は、質量%で、C:0.03〜0.25、Si:0.05〜1.0、Mn:0.3〜1.6、P:0.03以下、S:0.015以下、Sol.Al:0.005〜0.1、N:0.0005〜0.006、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼スラブを、1070℃以上1300℃以下に加熱した後、仕上げ圧延終了温度を800℃以上1070℃以下とする熱間圧延を施し、巻取り温度500℃以上700℃以下で熱延鋼板とした後、ロール成形により巻いて鋼管とし、4ロールサイジングでの縮径歪の合計が0.2%以上0.6%以下となる整形を行い、その後、740℃以上850℃以下に1s以上7200s以下加熱したうえ、30℃/S以上の冷却速度で焼き入れ、二相組織とすることを特徴とするものである。
なお何れの発明においても、ブレース用電縫鋼管を構成する鋼がさらに、焼入れ性向上元素群として、Cu:0.005〜1.0、Ni: 0.005〜1.0、Cr:0.03〜1.0、Mo:0.1〜0.5、B:0.0001〜0.01、結晶微細化元素群として、Ti:0.005〜0.1、Nb:0.003〜0.2、V:0.001〜0.2、W:0.001〜0.1、介在物形態制御元素として、Ca:0.0001〜0.2、Mg:0.0001〜0.2、Zr:0.0001〜0.02、REM:0.0001〜0.02の中から選択された1種または2種以上の元素を含有することが好ましい。
本発明の耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管は、軟質相であるフェライトと微細に分布した特定分率の硬質相であるマルテンサイト又はベイナイトからなる二相組織である。このため、軟質相が延性を付与し耐座屈特性を高めると同時に、硬質相が強度を高め、より大きな圧縮荷重に耐えることが可能となる。また硬質相の平均粒径が5μm以下であり、組織が微細で均一なので、変形を局所化することがなく、耐座屈特性が向上する。さらに、最大板厚と最小板厚との差td(μm)と、外表面の10点平均粗さRz(μm)が、0≦td×√Rz≦40000の条件を満たすようにしたことにより、鋼管の断面形状も均一であるので圧縮−引張の繰返し荷重を受けた際にブレース用電縫鋼管で局部的な荷重の集中がおき難く、繰り返し載荷時の荷重低下が少なくなり、地震の繰り返し振動により繰返し荷重が鋼管に負荷された際の耐座屈特性を高めることができる。
また本発明の耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管の製造方法によれば、上記した特性を備えた軟質相と硬質相からなる二相組織のブレース用電縫鋼管を効率よく製造することができる。
eとnの関係を示すグラフである。 圧縮サイクルのみを抜き出したeとnの関係を示すグラフである。 td×√Rzの値と荷重低下係数kdとの関係を示すグラフである。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管の基本的な鋼組成は、質量%で、C:0.03〜0.25、Si:0.05〜1.0、Mn:0.3〜1.6、P:0.03以下、S:0.015以下、Sol.Al:0.005〜0.1、N:0.0005〜0.006、残部Fe及び不可避的不純物からなるものである。このような組成を持つ鋼よりなる電縫鋼管に後述する加工及び熱処理を施すことにより、軟質相と硬質相を含む二相組織であり、硬質相の分率が3〜20%、硬質相の平均粒径が5μm以下の組織を容易に得ることができる。先ず各元素の数値限定の理由を説明する。
Cは鋼の強度を左右する元素であり、圧縮−引張の繰り返し荷重に耐えうる強度を得るためには0.03%以上が必要である。しかし0.25%を超えると強度が過大となるので、耐座屈特性を確保するために0.25%以下とする。Siは脱酸元素として少なくとも0.05%の添加が必要であるが、過剰に添加すると電縫溶接性が低下するため、最大でも1.0%とする。Mnは焼入れ性を確保して特定の軟質相と硬質相からなる二相組織とするために少なくとも0.3%の添加が必要であるが、過剰に添加すると電縫溶接性が低下するため1.6%以下とする。
PとSは鋼の清浄度を低下させる元素であるため、それぞれ0.03%以下、0.015%以下とする。Alは脱酸元素として添加が必要であり、またAlNを生成させて電縫鋼管での硬質相を微細化するためにも0.005%以上を添加する必要がある。しかし0.1%を超えると鋼の清浄度を低下させるため、0.005〜0.1%とする。Nも同様にAlNを生成させて硬質相を微細化するためにも0.0005%以上を添加する必要がある。しかし0.006%を超えると鋼の清浄度を低下させるため、0.0005〜0.006%とする。
上記した基本的な元素のほかに、焼入れ性向上元素群として、Cu:0.005〜1.0、Ni: 0.005〜1.0、Cr:0.03〜1.0、Mo:0.1〜0.5、B:0.0001〜0.01、結晶微細化元素群として、Ti:0.005〜0.1、Nb:0.003〜0.2、V:0.001〜0.2、W:0.001〜0.1、介在物形態制御元素群として、Ca:0.0001〜0.2、Mg:0.0001〜0.2、Zr:0.0001〜0.02、REM:0.0001〜0.02の中から選択された1種または2種以上の元素を含有させることができる。焼入れ性向上元素(Cu、Ni、Cr、Mo、B)は、いずれも焼入れ時に硬質相を生成し易くするのに有効な元素であるが、過剰に添加すると硬質相の分率が過剰になり式1の条件を満足しても耐座屈特性が低下する場合があり、またコストアップ要因ともなるので、上記の範囲とすることが好ましい。結晶微細化元素(Ti、Nb、V、W)は硬質相を微細に分散させるのに有効な元素である。しかし過剰に添加すると粗大な炭窒化物を形成し易くなり式1の条件を満足しても耐座屈特性が低下する場合があり、またコストアップ要因ともなるので、上記の範囲とすることが好ましい。
介在物形態制御元素(Ca、Mg、Zr、REM)は電縫鋼管で粗大な介在物の生成を抑制し、介在物を微細に分散させるので、地震でブレース用電縫鋼管の鋼管長方向に圧縮−引張荷重が繰返し載荷される時に電縫鋼管の母材部または溶接部に割れが発生する懸念を低減させるために有効な元素である。しかし過剰に添加するとCa、Mg、Zr、REMの粗大化した硫化物やクラスター化した酸化物の複合化合物が電縫鋼管の母材部と溶接部に形成し、母材部の清浄度を低下させるとともに電縫溶接部の負荷時の耐座屈特性が低下するおそれがあるので、上記の範囲とすることが好ましい。
本発明のブレース用電縫鋼管は、特定分率の軟質相と硬質相を含む二相組織からなる。軟質相はフェライトであり、硬質相はマルテンサイト又はベイナイトである。フェライトの存在によって延性が増加しまた硬質相の存在により強度が高くなり、より大きな荷重に耐えることができるので、耐座屈特性が向上する。このような特性を得るためには両相の存在形態が重要であり、硬質相の分率を3〜20%とする。硬質相分率が3%未満であると必要な強度を確保することができず、20%を超えると耐座屈特性を確保することができない。また硬質相の平均粒径は5μm以下とする。これはブレース用電縫鋼管で、地震で圧縮−引張繰返し荷重が載荷される時の変形を局所化させないためであり、十分な耐座屈特性を得るには、微細な硬質相を組織内に均一に分散させる必要がある。尚、本発明の軟質相と硬質相を含む二相組織で硬質相のマルテンサイト又はベイナイトとは、硬質相の分率が3〜20%の本発明の範囲内であれば、マルテンサイト単一のみでなく、マルテンサイトに数%程度ベイナイトを混合する場合や、ベイナイト単一のみでなくベイナイトに数%程度マルテンサイトを混合する場合も含まれる。本発明の二相組織は、電縫溶接部とそれ以外の非溶接部(前記の母材部)で満足することがより好ましいが、少なくとも非溶接部で満足されていれば本発明を満足することができる。
本発明のブレース用電縫鋼管は、溶接部を除き、最大板厚と最小板厚との差td(μm)と外表面の10点平均粗さRz(μm)が、0≦td×√Rz≦40000の式1の条件を満たすことを特徴とするものである。式1のtd×√Rzの値により荷重低下係数kdが大幅に変化するので、先ず荷重低下係数kdを説明する。鋼管に圧縮荷重と引張荷重を交互に加えて鋼管の変形履歴を求めると、図1に示すようになる。縦軸は荷重を降伏荷重(降伏応力×荷重負荷前の管肉厚断面積)で割って無次元化した値nであり、横軸は変位を降伏変位(降伏歪×荷重負荷前の鋼管長さ)で割って無次元化した値eである。この圧縮荷重側、引張荷重側の降伏応力、降伏歪は、鋼管の引張試験で求まる値を使えば良い。図2は図1のグラフから圧縮サイクルのみを抜き出し、横軸をeの積算値としたグラフである。この図2のグラフにおいて頂点を結ぶ直線の勾配が荷重低下係数kdであり、その値が小さいかつその絶対値が大きいほど繰り返し荷重に対する強度低下が大きいこととなる。なお、詳細は実施例の項で説明する。
図3は式1のtd×√Rzの値と荷重低下係数kdとの関係を示すグラフである。このグラフから明らかなように、0≦td×√Rz≦40000の範囲では荷重低下係数kdは一定であるが、40000を超えると急激に低下する。ここでtd×√Rzの値が大きいということはtdとRzの値が大きいということを意味しており、tdが大きくなると板厚の薄いところに荷重が集中し、またRzが大きくなると鋼管の外表面凹凸の凹部に荷重が集中するため、荷重低下係数kdが大幅に小さく(負の値で絶対値が大きく)なると考えられる。
次に本発明のブレース用電縫鋼管の製造方法を説明する。本発明のブレース用電縫鋼管は、上記組成の鋼からなる鋼スラブを、1070℃以上1300℃以下に加熱した後、仕上げ圧延終了温度を800℃以上1070℃以下とする熱間圧延を施し、巻取り温度500℃以上700℃以下で熱延鋼板とした後、ロール成形により巻いて鋼管とし、4ロールサイジングでの縮径歪の合計が0.2%以上0.6%以下となる整形を行い、その後、740℃以上850℃以下に1s以上7200s以下加熱したうえ、30℃/S以上の冷却速度で焼き入れ、二相組織とする工程で製造される。ロール成形により巻いて鋼管とするには、ロール成形により鋼板幅両端部を接近せしめ、電縫溶接を施せば良い。
加熱温度を1070℃以上とするのは、鋼スラブの溶融凝固過程で析出した炭化物、窒化合物、炭窒化合物を再固溶させ、元素を均一分散させるためである。しかし加熱温度が1300℃を超えると熱間圧延工程でAlNが粗大に析出し、鋼の清浄度を低下させるので、加熱温度を1070℃以上1300℃以下とした。
熱間圧延の圧延終了温度を800℃以上とするのは、この温度よりも低温であると仕上圧延終了前にフェライトが生成し、粗大に粒成長する懸念があるためである。しかし1070℃を超えると粒成長が顕著となり結晶粒が粗大化するため、熱間圧延における圧延終了温度を800℃以上1070℃以下とした。
巻取り温度を500℃以上とするのは、この温度よりも低温であると強度が高くなり過ぎて耐座屈特性が低下するためである。しかし700℃を超えるとフェライトの核生成が不十分で粗大粒となり電縫鋼管で本発明の二相組織が安定的に得られない懸念があるため、巻取り温度を500℃以上700℃以下とした。
このようにして得られた熱延鋼板はロール成形により巻いて前記鋼板の幅両端同士を電縫溶接して電縫鋼管としたうえ、4ロールサイジングで縮径歪の合計が0.2%以上0.6%以下となる整形を行う。本発明の電縫鋼管の電縫溶接とは、電気抵抗溶接(高周波溶接、低中周波溶接、高周波誘導溶接含む)やレーザー溶接やレーザ・アークハイブリッド溶接等が可能である。4ロールサイジングを採用するのは、鋼管の周方向の均一性を確保するためであり、2ロールでは鋼管の0°位置と180°位置に歪が集中し、3ロールでは鋼管の0°位置と120°位置と240°位置に歪が集中するため、前記の式1を満足するよにtdとRzの値を小さくすることが困難である。
4ロールサイジングで縮径歪の合計を0.2%以上とするのは、縮径しながら電縫鋼管の肉厚差及び外表面粗さを均一にするためである。また0.2%以上の縮径歪を与えることにより、電縫鋼管内に転位を十分に入れて、後述の740℃〜850℃のフェライトとオーステナイトの共存温度域に加熱して逆変態する時のオーステナイトの核生成サイトを増加させ、焼入れ後の硬質相を微細化させる効果もある。しかし縮径歪が0.6%を超えると鋼管が過度に歪み、肉厚差tdと外表面粗さRzが大きくなりすぎるため、耐座屈性の式1の条件を安定的に満足することが困難になるので縮径歪の合計を0.2%以上0.6%以下とした。
その後、740℃以上850℃以下に1s以上7200s以下加熱したうえ、30℃/S以上の冷却速度で焼き入れを行う。加熱温度を740℃以上とするのは、硬質相分率を3%以上とするためであり、850℃以下とするのは硬質相分率を20%以下とするためである。また加熱時間を1s以上とするのは、硬質相を均一に分散させるためであるが、7200sを超えると表面が脱炭して強度が下がり、スケールの付着量も大量となり、コストアップにもなるため、好ましくない。冷却速度を30℃/S以上とするのは、硬質相をマルテンサイトまたはベイナイトとするためである。本発明の硬質相からなる二相組織を得るには、冷却速度が速いほうが好ましい。
本発明における各値の測定方法は次の通りである。
硬質相分率は、板厚断面を埋め込み研磨後、3%ナイタール溶液にて腐食し、光学顕微鏡にて400倍で鋼のミクロ組織を10視野観察し、マルテンサイト及びベイナイトの部分の面積率を定量化して求めた。また同時に10視野で観察された硬質相のうち30相をランダムに選び、その平均粒径を算出した。
tdは鋼管の断面を切断して板厚を周方向に測定し、溶接部を除く最大板厚と最小板厚との差をtdとした。Rzは、基準長さ(長手方向)2.5mm分のうち、高さ方向で5番目までの山頂の平均値と最深から5番目までの谷底の平均値との差を算出し、Rzとした。
このようにして製造された本発明のブレース用電縫鋼管は、ブレースとして用いるに十分な耐座屈特性を備えたものである。なお、ブレース用鋼管としては、引張強度が400MPa級、490MPa級、590MPa級の鋼管が通常使用される。本発明のブレース用電縫鋼管はこの強度レベルを十分に満足可能である。これより強度が著しく低い電縫鋼管(例えばC含有量が本発明下限値未満の降伏強度100MPa級)では、繰り返しの圧縮−引張り荷重に十分耐えることが困難である。また、これより著しく強度が高い電縫鋼管(例えばC含有量が本発明上限値超の1050MPa級、1150MPa級)では、本発明の二相組織条件と式1の双方を同時に満足することが難しく、繰り返しの圧縮−引張り荷重負荷時の圧縮最大荷重点での荷重低下が大きくなり、耐座屈特性が低下し易い。なお、本発明のブレース用電縫鋼管は、鋼組成条件や二相組織条件や式1の条件を全て満足していれば、鋼管の素鋼板として、熱延鋼板に更に冷延や焼鈍を施した鋼板を用いても、又は、表面処理を加えた鋼板を用いても、電縫溶接後に表面処理を施した電縫鋼管であっても、本発明の範囲を逸脱するものではない。本発明の電縫鋼管の管寸法は、式1の条件を満足していれば、ブレース用電縫鋼管を使用するための設計条件に応じて決めることが出来る。例えば管外径100mm〜400mm、板厚(溶接部を除く管肉厚)で3〜35mmでも構わない。
以下に本発明の実施例を比較例とともに示す。
表1に示される組成の鋼から、表2に示される製造条件でブレース用電縫鋼管を製造し、各鋼管の耐座屈特性を測定した結果を表3に示した。試験に使用した電縫鋼管の寸法は、φ244.5mm×t8.0mm×L2600mmである。耐座屈特性の測定方法は次の通りである。非特許文献1において用いられている方法と同様に、鋼管に引張−圧縮荷重を変位制御で繰り返し加えた。鋼管の降伏変位をδyとし、加える変位δとの比δ/δyをeしたとき、各サイクルで加える変位をeの値がサイクル数と等しくなるように加えていった。そのとき鋼管に加わる荷重をPとし、Pを降伏軸力Pyで除した値P/Pyをnとし、図1に例示するように各サイクルで得られるe‐nの関係を測定した。上側が圧縮、下側が引張りである。次に図2に示すように最大荷重点を結んだ近似直線を引き、その勾配を荷重低下係数kdとした。また鋼管中央部に局部座屈を生じたときのeの値も記録した。
さらに非特許文献1に記載されているkd=−0.1(√εy×λ−0.75)の式から得られた従来の電縫鋼管で予測されるkdの計算値も参考のために表3に示した。耐座屈特性は実際に局部座屈を生じたときのeの値で評価し、eが10超を良好とした。
Figure 0005381900
Figure 0005381900
Figure 0005381900
発明例の1〜24では何れも、本発明の鋼組成、二相組織条件を硬質相の微細分散も含め満足しており、変形時に転位が導入されても局部座屈を生じにくい状態となっており、またtd×√Rzが式1を満足して小さいので、鋼管の外表面凹凸の凹部への載荷荷重の集中が少ないためkdの実測値は非特許文献1の従来の電縫鋼管に基づき計算される推定値よりも大きく、その結果、座屈を起こすeの値も10超と比較例の数倍以上の優れた耐座屈特性を示す。表2に示すように、実施例ではtdは40〜70μm、Rzは10〜30μmの範囲に入る。
一方、比較例1は、C成分値が高く硬質相が過度に多い鋼管であるので耐座屈特性が不十分である。比較例2はMn成分値が過小であり焼入れ性が不足するので、本発明の二相組織とはならず耐座屈特性が悪い。比較例3は熱間圧延の仕上圧延終了温度が低く過ぎ圧延時に析出したフェライトが粗大成長するため硬質相も粗大となり、硬質相平均粒径が過大となって耐座屈特性が悪い。比較例4は2ロールサイジングを行ったため鋼管の周方向で歪みの偏差が生じ、tdとRzが十分に小さくならず式1の条件を外れるので耐座屈特性が悪い。比較例5は4ロールサイジングではあるが縮径歪みが0.18%と不足して十分な縮径ができていないので、td×√Rzが式1を満たすまでには十分に小さくならず耐座屈特性が悪い。比較例6は焼入れ加熱温度が低いために硬質相が得られず、耐座屈特性が悪い。比較例7はC成分値が低く冷却速度も遅すぎるために硬質相が得られず、耐座屈特性が悪い。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.25、Si:0.05〜1.0、Mn:0.3〜1.6、P:0.03以下、S:0.015以下、Sol.Al:0.005〜0.1、N:0.0005〜0.006、残部Fe及び不可避的不純物からなり、組織は軟質相であるフェライトと硬質相であるマルテンサイト又はベイナイトからなる二相組織であり、硬質相の分率が3〜20%、硬質相の平均粒径が5μm以下であり、かつ溶接部を除き、最大板厚と最小板厚との差td(μm)と、外表面の10点平均粗さRz(μm)が、0≦td×√Rz≦40000の条件を満たすことを特徴とする耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管。
  2. ブレース用電縫鋼管を構成する鋼がさらに、焼入れ性向上元素群として、Cu:0.005〜1.0、Ni: 0.005〜1.0、Cr:0.03〜1.0、Mo:0.1〜0.5、B:0.0001〜0.01、結晶微細化元素群として、Ti:0.005〜0.1、Nb:0.003〜0.2、V:0.001〜0.2、W:0.001〜0.1、介在物形態制御元素として、Ca:0.0001〜0.2、Mg:0.0001〜0.2、Zr:0.0001〜0.02、REM:0.0001〜0.02の中から選択された1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管。
  3. 質量%で、C:0.03〜0.25、Si:0.05〜1.0、Mn:0.3〜1.6、P:0.03以下、S:0.015以下、Sol.Al:0.005〜0.1、N:0.0005〜0.006、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼スラブを、1070℃以上1300℃以下に加熱した後、仕上げ圧延終了温度を800℃以上1070℃以下とする熱間圧延を施し、巻取り温度500℃以上700℃以下で熱延鋼板とした後、ロール成形により巻いて鋼管とし、4ロールサイジングでの縮径歪の合計が0.2%以上0.6%以下となる整形を行い、その後、740℃以上850℃以下に1s以上7200s以下加熱したうえ、30℃/S以上の冷却速度で焼き入れ、二相組織とすることを特徴とする耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管の製造方法。
  4. ブレース用電縫鋼管を構成する鋼がさらに、焼入れ性向上元素群として、Cu:0.005〜1.0、Ni: 0.005〜1.0、Cr:0.03〜1.0、Mo:0.1〜0.5、B:0.0001〜0.01、結晶微細化元素群として、Ti:0.005〜0.1、Nb:0.003〜0.2、V:0.001〜0.2、W:0.001〜0.1、介在物形態制御元素として、Ca:0.0001〜0.2、Mg:0.0001〜0.2、Zr:0.0001〜0.02、REM:0.0001〜0.02の中から選択された1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項3に記載の耐座屈特性に優れたブレース用電縫鋼管の製造方法。
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