JP5376231B2 - サイズ剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、紙を製造する際に用いられる2−オキセタノン化合物を含有するサイズ剤組成物に関する。
2−オキセタノン化合物を含有するサイズ剤組成物は、一般にアルキルケテンダイマーサイズ剤組成物と呼ばれ、アルキルケテンダイマーをカチオン化澱粉や高分子系分散剤を含む水性連続相に分散せしめられた水性分散液として市販され、使用されている。従来、アルキルケテンダイマーサイズ剤は、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸など炭素数16から22の長鎖脂肪酸を反応して得られるアルキルケテンダイマーを使用していた。これらのケテンダイマーは融点が40℃以上であり、室温で固体である。これらのケテンダイマーサイズ剤でサイジングされた紙は、摩擦係数が低下するため、紙が滑り易く、コピー機やプリンターで紙の重送が起きることがあった。また、過剰なケテンダイマー分子がマイグレーションし、紙表面に結晶物を生成するという性質があるため、紙粉の発生や、加工工程での汚れの原因となることがあった。さらに、水性分散液の機械的安定性が不良であるために、抄紙工程において、サイズ剤添加後の配管汚れやプレスロールあるいはスムーザーロール汚れを引き起こすことがあった。また塗工工程に使用される場合、塗工ロールを汚すことがあった。上記の問題を解決するため、近年、室温で液状のケテンダイマーの水性分散液である液状ケテンダイマーサイズ剤が開発された(例えば、非特許文献1参照)。液状ケテンダイマーはその化学構造によって3つに分類される。一つは、オレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸を反応して得られるケテンダイマーである。もう一つは、イソステアリン酸などの分岐脂肪酸を反応して得られるケテンダイマーである。さらにもう一つは、ラウリン酸、ミリスチン酸など炭素鎖の短い中鎖脂肪酸を反応して得られるケテンダイマーである(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、開示されているサイズ剤組成物では、これらの液状ケテンダイマーサイズ剤は得られる紙質、使用時の操業性について問題がある。不飽和脂肪酸を反応して得られるケテンダイマーおよび中鎖脂肪酸を反応して得られるケテンダイマーは、サイズ性能が劣る。特に、不飽和脂肪酸を反応して得られるケテンダイマーでは経時的に不飽和結合(炭素炭素二重結合)が酸化されてサイズが低下する問題があった。分岐脂肪酸を反応して得られるケテンダイマーは、摩擦係数が低下し易い問題があった。
特表2000−506941号公報
紙パ技協誌 vol.61 No.10 16〜23頁 (2007)
本発明の課題は、良好なサイズ剤組成物の保存安定性を有し、使用時の汚れが発生し難く、紙に優れた経時的なサイズ効果を付与し、摩擦係数の低下が少ないサイズ剤組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の2−オキセタノン化合物を使用したサイズ剤組成物を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
<1>紙の製造に使用する2−オキセタノン化合物を含有するサイズ剤組成物であって、以下の(1)〜(3)を満たすことを特徴とするサイズ剤組成物。
(1)炭素数8〜10の脂肪酸8〜20質量%、炭素数12〜18である脂肪酸が92〜80質量%である脂肪酸混合物を反応させて得られる2−オキセタノン化合物
(2)前記(1)の脂肪酸混合物のうちの不飽和脂肪酸が2質量%以下である脂肪酸混合物を反応させて得られる2−オキセタノン化合物
(3)25℃で液状である2−オキセタノン化合物
<2>上記(1)の脂肪酸混合物が水素添加反応により不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸に変換されたココヤシ油脂肪酸である前記<1>の製紙用サイズ剤組成物
を提供する。
本発明のサイズ剤組成物は、公知のサイズに比べて、良好なサイズ剤組成物の保存安定性を有し、使用時の汚れが発生し難く、紙を滑りやすくしないとともに紙に優れたサイズ性能を付与するサイズ剤組成物を提供することができる。
本発明のサイズ剤組成物は、紙の製造に使用する2−オキセタノン化合物を含有するサイズ剤組成物であって、以下の(1)〜(3)を満たすことを特徴とするサイズ剤組成物。
(1)炭素数8〜10の脂肪酸8〜20質量%、炭素数12〜18である脂肪酸が92〜80質量%である脂肪酸混合物を反応させて得られる2−オキセタノン化合物
(2)前記(1)の脂肪酸混合物のうちの不飽和脂肪酸が2質量%以下である脂肪酸混合物を反応させて得られる2−オキセタノン化合物
(3)25℃で液状である2−オキセタノン化合物
本発明の2−オキセタノン化合物は、炭素数8〜10の脂肪酸8〜20質量%、炭素数12〜18である脂肪酸が92〜80質量%である脂肪酸混合物を利用して製造され、前記不飽和脂肪酸混合物が2質量%以下である脂肪酸混合物である脂肪酸を利用して製造されるアルキルケテンダイマー又はアルキルケテンダイマーとアルケニルケテンダイマーの混合物であって、25℃で液状である2−オキセタノン化合物をいう。
前記の炭素数8〜10の脂肪酸8〜20質量%、炭素数12〜18である脂肪酸が92〜80質量%である脂肪酸混合物は前記範囲内であればよく、効果を損なわない範囲で炭素数8〜10及び12〜18以外の炭素数の脂肪酸を合計が100質量%となるように用いることができる。例えば、炭素数8〜10の脂肪酸8質量%で炭素数12〜18である脂肪酸が90質量%であるときに炭素数8〜10及び12〜18以外の脂肪酸は2質量%使用することができる。
前記の具体的な原料である炭素数8〜10及び12〜18である脂肪酸として、カプリル酸(炭素数8)、ペラルゴン酸(炭素数9)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、ペンタデシル酸(炭素数15)、パルミチン酸(炭素数16)、パルミトイル酸(炭素数16)、マルガリン酸(炭素数17)、ステアリン酸(炭素数18)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、リノレン酸(炭素数18)などの脂肪酸からなることが好ましい。炭素数8〜10の脂肪酸8〜20質量%であって、かつ、炭素数8の脂肪酸を3〜10質量%、炭素数10の脂肪酸を3〜12質量%、炭素数12と炭素数14の脂肪酸を58〜78質量%、炭素数16と炭素数18の脂肪酸を6〜20質量%であることがさらに好ましい。前記の条件を満たすためココヤシ油脂肪酸の不飽和脂肪酸が水素添加反応によって飽和脂肪酸に変換されている脂肪酸を原料とすることがさらに好ましい。
炭素数8〜18以外の脂肪酸としては、酪酸(炭素数4)、吉草酸(炭素数5)、カプロン酸(炭素数6)、エナント酸(炭素数7)、ツベルクロステアリン酸(炭素数19)、アラキジン酸(炭素数20)、エイコセン酸(炭素数20)、ベヘン酸(炭素数22)、エルシン酸(炭素数22)、リグノセリン酸(炭素数24)などを挙げることができるが、炭素数が多い脂肪酸を用いると25℃で液状である2−オキセタノン化合物とならなくなる場合がある。
前記不飽和カルボン酸を必ず含有する原料を水素添加する反応は一般的な水素ガスを還元剤として用いる還元反応であり、通常、主にニッケル、銅−酸化クロム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、白金などの金属の微粉末、もしくはそれらを活性炭、アルミナ、珪藻土などの不溶性の担体に吸着させたものが触媒を用いて一般的な方法で行うことができる。
前記2−オキセタノン化合物は、上記の原料を用いて通常の有機合成法により合成することができ、又、市販品として容易に得ることもできるものもある。例えばステアリルケテンダイマーは、ステアリン酸にホスゲン、三塩化リン、塩化チオニルなどの塩素化剤を反応させ、ステアリン酸クロライドにし、次いでトリエチルアミンで脱塩酸処理した後、トリエチルアミン塩酸塩を除去することで得られる。
2−オキセタノン化合物に使用する脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸の割合が2重量%を超えると二重結合の酸化により2−オキセタノン化合物の貯蔵安定性及び分散安定性及びサイズ性能が悪くなる。
本発明のサイズ剤組成物は、通常、2−オキセタノン化合物と分散剤を用いて水性媒体に分散させた水性分散液としたものを用いることが好ましい。
前記の分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩等のアニオン性乳化剤などを挙げることができ、両性澱粉、酸化澱粉、及びカチオン化澱粉などの澱粉類、カチオン性、アニオン性、あるいは両性のアクリルアミド系ポリマー、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂等の高分子系分散剤、界面活性剤等が挙げられ、界面活性剤として従来公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤あるいはノニオン性界面活性剤を使用できる。なかでも、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は、相乗的に優れた効果をもたらすため好ましい。また、澱粉類を用いることが好ましく、カチオン化澱粉を用いることが更に好ましい。
カチオン化澱粉としては、種々のものが使用することができ、例えば過硫酸塩や過酸化水素、次亜塩素酸塩などにより酸化またはα−アミラーゼなどの酵素変性により糖鎖の重合度を低下させた澱粉にカチオン化剤を反応させて得ることができ、カチオン化澱粉を酸化、酵素変性などで重合度を低下させることもできる。モノマーを重合させるためにはカチオン化澱粉の重合度を低下させた方がモノマー重合体の配合量の調整しやすさから低粘度のものが好ましい。
本発明で使用されるカチオン化澱粉としては、コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ、甘薯、小麦、米などの生澱粉を公知の手段により第一級、第二級、第三級アミノ基および第四級アンモニウム基の中から選択される一種以上を導入した形態の塩基性窒素原子を有する各種のカチオン化変性澱粉を用いることができる。
このカチオン化の度合は、置換度DS(DS=無水グルコース1モル当りの置換基のモル数)として表わしたとき、0.01<DS<0.5であることが好ましく、0.01<DS≦0.2であることが更に好ましい。
本発明の製紙用サイズ組成物は、固形分10〜40質量%の水性分散液であり、固形分として、2−オキセタノン化合物が50〜95質量%、分散剤が5〜50質量%であることが好ましく、2−オキセタノン化合物が50〜90質量%、分散剤が10〜50質量%であることがさらに好ましい。分散剤が5質量%より少ない場合、十分な分散安定性が得られない場合があり、またサイズ効果が低下する場合がある。
本発明の製紙用サイズ剤組成物は、前記した2−オキセタノン化合物を含有するものであるが、サイズ効果を阻害しない限り、その他のサイズ剤、例えば炭化水素樹脂、ロジン系物質、油脂誘導体などを適量配合することが出来る。
本発明のサイズ剤組成物は、次のようにして調製することができる。即ち、例えば、2−オキセタノン化合物が液状となっている25℃以上で、2−オキセタノン化合物等と上記分散剤等と水性媒体とを、例えば、スタティックミキサー、攪拌翼付混合機等で混合し、ホモミキサー、高圧吐出ホモジナイザー、超音波乳化機、高せん断型回転乳化機等の各種乳化機乃至乳化装置で均一に2−オキセタノン化合物を水性媒体中に分散させることによって製造されることができる。 このようにして調製されたサイズ剤組成物は、粒子の平均粒径が0.1以上3μm未満、好ましくは0.3以上1μm未満である。前記サイズ剤組成物における2−オキセタノン化合物含有の粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA910(堀場製作所製)を用いて測定し、メジアン径(50%径)を平均粒径とする。必要に応じてこの水性分散液に塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の水溶性無機物を添加することができる。
(作用)
本発明者らにおいて、本発明の製紙用サイズ剤組成物が優れた安定性と優れた効果を発現する理由について必ずしも十分に解明していないが、次のように推察している。
2−オキセタノン化合物の原料脂肪酸の炭素数を限定することで、2−オキセタノン化合物のアルキル基およびアルケニル基の炭素数が適切な割合で存在するために、サイズ効果が優れ、摩擦係数の低下を防ぎ、25℃で液状であるために機械的安定性が向上すると考えられる。
また、2−オキセタノン化合物の原料脂肪酸の不飽和脂肪酸を少量に限定することで、経時的な酸化によって2−オキセタノン化合物のアルケニル基が親水化され、サイズ剤組成物の分散安定性およびサイズ効果の低下を防止していると考えられる。
以上により、2−オキセタノンの水性分散液が、パルプ繊維に均一に作用することができ、優れた効果が発現されるものと考えられる。
本発明においては、前記サイズ剤組成物を調製し、次いで、調製されたサイズ剤組成物をパルプスラリー又は表面塗工液に添加することができる。
本発明において、パルプスラリー中に含まれるパルプ原料は、特に限定されない。パルプ原料としては、クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ、あるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプのいずれも使用することができる。また、パルプスラリー中に填料、染料、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留まり向上剤等の添加剤も必要に応じて含まれても良い。
パルプスラリーに添加する場合のサイズ剤組成物の添加量は、絶乾パルプ質量に対する固形分質量%で0.002〜3が好ましく、0.005〜2がさらに好ましい。
本発明において、表面塗工液には、前記サイズ剤組成物以外に酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉及び両性澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、並びにアルギン酸ソーダ等の水溶性高分子、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の無機塩等を塗工液に混合して使用することもできる。また、他の表面サイズ剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、染料、及び顔料等の添加物を併用できる。
表面塗工液に含有しているサイズ剤組成物の塗工量は、固形分として0.001〜1g/mが好ましく、0.005〜0.5g/mが更に好ましい。
本発明のサイズ剤組成物を適用する紙は、特に制限されないが、各種の紙、板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー等の板紙が挙げられる。
特に、炭酸カルシウムを含有する、上質紙、中質紙または脱墨パルプ他種々の古紙パルプを含有する再生紙は抄紙装置が汚れ易く、本発明は有効である。
また、ミルクカートン原紙、カップ原紙等の液体容器用原紙、写真用印画紙用原紙などのエッジウィックサイズ度を要求される紙種においてはサイズ剤組成物がパルプスラリーに絶乾パルプ質量に対する固形分に対して0.2質量%以上の高率で添加されるため、抄紙装置が汚れ易く、本発明のサイズ剤組成物は有効である。
以下、本発明の効果を製造例及び実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。
(製造例1)2−オキセタノン化合物(A)の製造
四つ口フラスコに塩化チオニル1200gを入れ、温度を80℃(塩化チオニル還流条件)にした。次いで質量組成比がカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸/ミリスチン酸/パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン酸=7/7/51/18/9/8/0(不飽和脂肪酸0質量%)である水素添加ココヤシ油脂肪酸(a)205.8gを2時間かけて滴下した。その後80℃で1時間攪拌を続け、更に80℃常圧下で塩化チオニルを留去し、脂肪酸クロリド212.7gを得た。次に新たに四つロフラスコに上記脂肪酸クロリド200gおよびトルエン200mlを入れて20℃に冷却し、20℃を保ちながらトリエチルアミン108.4gを3時間かけて滴下した。滴下終了後30℃に昇温し、更に3時間反応を続けた。次に3%の希塩酸水溶液を200ml加え10分間攪拌した後、1時間静置し下層の水相を分離した後、減圧下でトルエンを留去して2−オキセタノン化合物(A)141.5gを得た。得られた2−オキセタノン化合物(A)は25℃で液状であった。
(製造例2)2−オキセタノン化合物(B)の製造
製造例1における水素添加ココヤシ油脂肪酸(a)を、カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸/ミリスチン酸/パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン酸=7/7/51/18/9/7/1(不飽和脂肪酸1質量%)である水素添加ココヤシ油脂肪酸(b)205.8gに変えて同様に反応し、脂肪酸クロリドを210.4g得た。次いで得られた脂肪酸クロリド200gとトリエチルアミン108.4gを用いて、製造例1と同様に反応させ2−オキセタノン化合物(B)を144.7g得た。得られた2−オキセタノン化合物(B)は25℃で液状であった。
(製造例3)2−オキセタノン化合物(C)の製造
製造例1における水素添加ココヤシ油脂肪酸(a)を、質量組成比がカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸/ミリスチン酸/パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン酸=7/7/51/18/9/6/2(不飽和脂肪酸2質量%)である水素添加ココヤシ油脂肪酸(c)205.8gに変えて同様に反応し、脂肪酸クロリドを211.5g得た。次いで得られた脂肪酸クロリド200gとトリエチルアミン108.4gを用いて、製造例1と同様に反応させ2−オキセタノン化合物(C)を142.3g得た。得られた2−オキセタノン化合物(C)は25℃で液状であった。
(製造例4) 比較例1用2−オキセタノン化合物(D)の製造
製造例1における水素添加ココヤシ油脂肪酸(a)を、カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸/ミリスチン酸/パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン酸=7/7/51/18/9/1/7(不飽和脂肪酸7質量%)である水素添加していないココヤシ油脂肪酸(d)205.8gに変えて同様に反応し、脂肪酸クロリドを210.6g得た。次いで得られた脂肪酸クロライド200gとトリエチルアミン108.4gを用いて、製造例1と同様に反応させ2−オキセタノン化合物(D)を140.3g得た。得られた2−オキセタノン化合物(D)は25℃で液状であった。
(製造例5) 比較例2用2−オキセタノン化合物(E)の製造
製造例1における水素添加ココヤシ油脂肪酸(a)を、パルチミン酸/ステアリン酸=60/40(不飽和脂肪酸0質量%)の質量比の脂肪酸混合物(e)267.0gに変え、80℃に加温して滴下する以外は同様に反応し、脂肪酸クロリドを274.2g得た。次いで得られた脂肪酸クロリド200gとトリエチルアミン85.1gを用いて、製造例1と同様に反応させ2−オキセタノン化合物(E)を152.5g得た。得られた2−オキセタノン化合物(E)は25℃でワックス状の固体であった。
(製造例6)比較例3用2−オキセタノン化合物(F)の製造
製造例1における水素添加ココヤシ油脂肪酸(a)を、ラウリン酸/パルチミン酸/ステアリン酸=50/25/25(不飽和脂肪酸0質量%)の質量比の脂肪酸混合物229.9gに変え80℃に加温して滴下する以外は同様に反応し、脂肪酸クロリドを228.3g得た。次いで得られた脂肪酸クロリド200gとトリエチルアミン97.9gを用いて、製造例1と同様に反応させ2−オキセタノン化合物(F)を147.7g得た。得られた2−オキセタノン化合物(F)は25℃でワックス状の固体であった。
(製造例7) 比較例4用2−オキセタノン化合物(G)の製造
製造例1における水素添加ココヤシ油脂肪酸(a)を、カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸/ミリスチン酸/パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン酸=11/11/47/14/9/8/0(不飽和脂肪酸0質量%)の質量比の脂肪酸混合物(g)200.3gに変えて同様に反応し、脂肪酸クロリドを204.8g得た。次いで得られた脂肪酸クロリド200gとトリエチルアミン111.2gを用いて、製造例1と同様に反応させ2−オキセタノン化合物(G)を142.1g得た。得られた2−オキセタノン化合物(G)は25℃で液状であった。
実施例1
2−オキセタノン化合物(A)100質量部、予め90℃で1時間糊化された5質量%のカチオン化澱粉水溶液(4級アンモニウム塩の導入により窒素原子を0.3質量%含有したカチオン化コーン澱粉)500質量部、及びナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物の40質量%水溶液4質量部を70℃に加熱し、ホモミキサーにて予備分散させた後、同温度に保ちながら高圧吐出型ホモジナイザーに25MPaの剪断圧力で2回処理して均一に分散させた。これにイオン交換水を適宜加えて冷却した後、325メッシュの金網にてろ過して、水性分散液であるサイズ剤組成物E−1を得た。得られたサイズ剤組成物E−1は、150℃20分乾燥後の不揮発分が20.0質量%、25℃、60rpmで測定したブルックフィールド粘度が15mPa・s、pHが3.9であった。
実施例2
実施例1において、2−オキセタノン化合物(A)100質量部に変えて2−オキセタノン化合物(B)100質量部を使用した以外は実施例1と同様にして製紙用サイズ剤組成物E−2を得た。得られたサイズ剤組成物E−2は、150℃20分乾燥後の不揮発分が20.0質量%、25℃、60rpmで測定したブルックフィールド粘度が15mPa・s、pHが3.9であった。
実施例3
実施例1において、2−オキセタノン化合物(A)100質量部に変えて2−オキセタノン化合物(C)100質量部を使用した以外は実施例1と同様にしてサイズ剤組成物E−3を得た。得られたサイズ剤組成物E−3は、150℃20分乾燥後の不揮発分が20.0質量%、25℃、60rpmで測定したブルックフィールド粘度が14mPa・s、pHが3.9であった。
比較例1
実施例1において、2−オキセタノン化合物(A)100質量部に変えて2−オキセタノン化合物(D)100質量部を使用した以外は実施例1と同様にして製紙用サイズ剤組成物E−4を得た。得られたサイズ剤組成物E−4は、150℃20分乾燥後の不揮発分が20.0質量%、25℃、60rpmで測定したブルックフィールド粘度が15mPa・s、pHが3.9であった。
比較例2
実施例1において、2−オキセタノン化合物(A)100質量部に変えて2−オキセタノン化合物(E)100質量部を使用した以外は実施例1と同様にしてサイズ剤組成物E−5を得た。得られたサイズ剤組成物E−5は、150℃20分乾燥後の不揮発分が20.0質量%、25℃、60rpmで測定したブルックフィールド粘度が10mPa・s、pHが3.8であった。
比較例3
実施例1において、2−オキセタノン化合物(A)100質量部に変えて2−オキセタノン化合物(F)100質量部を使用した以外は実施例1と同様にしてサイズ剤組成物E−6を得た。得られたサイズ剤組成物E−6は、150℃20分乾燥後の不揮発分が20.0質量%、25℃、60rpmで測定したブルックフィールド粘度が14mPa・s、pHが3.9であった。
比較例4
実施例1において、2−オキセタノン化合物(A)100質量部に変えて2−オキセタノン化合物(G)100質量部を使用した以外は実施例1と同様にして製紙用サイズ剤組成物E−7を得た。得られたサイズ剤組成物E−7は、150℃20分乾燥後の不揮発分が20.0質量%、25℃、60rpmで測定したブルックフィールド粘度が16mPa・s、pHが3.9であった。
(性能評価)
実施例1〜3と比較例1〜4に示した各サイズ剤組成物E−1〜7について、粘度安定性、機械的安定性、製紙用内添サイズ剤組成物としてのサイズ効果、製紙用表面サイズ剤組成物としてのサイズ効果、摩擦係数およびサイズ度の経時変化、を下記のようにして評価した。
(粘度安定性)
高温安定性は32℃の恒温槽中に1週間保存後のサイズ剤組成物E−1〜7の粘度変化を観察した。なお、次の基準で○、△、×で判断した。○は粘度変化が無く、安定である。△はやや増粘するが、使用可能である。×は増粘や分離が著しく、使用不可能である。結果を表1に示した。
(製紙用内添サイズ剤組成物のサイズ効果およびサイズ度の経時変化)
40℃に保温したLBKP(CSF414)のパルプスラリー(2.4%)の攪拌下に、炭酸カルシウムを対パルプ10%、硫酸バンドを対パルプ0.5%、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー株式会社製、CATO304)を対パルプ0.5%、サイズ剤組成物を対パルプ0.08%、歩留まり剤(星光PMC株式会社製、RD7153)を対パルプ0.02%順次添加した。薬品を添加した後のパルプスラリーの温度は40℃、pHは7.5であった。薬品添加後のパルプスラリーをノーブルアンドウッド社製抄紙機にて抄紙し、ロールプレスで搾水後にドラムドライヤーで100℃80秒の乾燥処理を行った。得られた坪量65g/mの手抄き紙を23℃、RH50%の条件で24時間調湿した後、ステキヒトサイズ度(JISP−8122)を測定した。また、経時的なサイズ度の低下を確認するため、23℃、RH50%の条件で1か月調湿を行った手すき紙についてもステキヒトサイズ度を測定した。なお前記の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比であり、ステキヒトサイズ度は値が高いほど良好であることを示す。結果を表2に示す。
(製紙用表面サイズ剤組成物のサイズ効果及び摩擦係数の評価)
市販の酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、王子エースA)を濃度15%になるように水で希釈し、90℃で糊化を行い、これに実施例、比較例のサイズ剤組成物をそれぞれ加え、酸化澱粉 12%、サイズ剤組成物 0.2%になるように添加した塗工液を未塗工のコート原紙(坪量68g/m)に、サイズプレス機にて両面塗工し、ドラムドライヤー(80℃、30秒)にて乾燥した。乾燥後、23℃、RH50%の条件に24時間調湿した後、静摩擦係数(滑り角度(静摩擦係数):JIS P−8147に準拠)、ステキヒトサイズ度(JISP−8122)を測定した。また、経時的なサイズ度の低下を確認するため、23℃、RH50%の条件で1か月調湿を行った手すき紙についてもステキヒトサイズ度を測定した。なお、静摩擦係数、ステキヒトサイズ度は、何れも、値が高いほど良好であることを示し、静摩擦係数が高いと紙が滑りやすくないことを示す。結果を表3に示した。
(機械的安定性試験)
実施例、比較例で得たサイズ剤組成物50gをマーロン法安定度試験において、20kgの荷重下、回転速度1000rpmで5分間攪拌し、この時生じた325メッシュ金網不通過の固形分重量を測定した。この重量が多いほど、粕発生量が多いこととなり、機械的安定性が不良である事を示す。なお、試験温度は、表面サイジングにおいて汚れが問題となる温度である40℃で行った。結果を表3に示す。

Claims (1)

  1. 紙の製造に使用する2−オキセタノン化合物を含有するサイズ剤組成物であって、以下の(1)〜(3)を満たすことを特徴とするサイズ剤組成物。
    (1)炭素数8〜10の脂肪酸8〜20質量%、炭素数12〜18である脂肪酸が92〜80質量%である脂肪酸混合物を反応させて得られる2−オキセタノン化合物であって、前記脂肪酸混合物が水素添加反応により不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸に変換されたココヤシ油脂肪酸である2−オキセタノン化合物
    (2)前記(1)の脂肪酸混合物のうちの不飽和脂肪酸が2質量%以下である脂肪酸混合物を反応させて得られる2−オキセタノン化合物
    (3)25℃で液状である2−オキセタノン化合物
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