JP5372556B2 - α付加型アリル化反応による選択的ホモアリルアルコール誘導体の製造法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これまでにα−イミノエステルを含むイミン類に対する触媒的不斉アリル化反応は幾つか報告がなされているが、そのほとんどが厳密な無水条件下での反応であり(非特許文献1〜10参照)、水中または水と有機溶媒の混合溶媒中などの穏和な条件下での高選択的不斉アリル化反応の例は限られている。
山本らのグループはパラジウム触媒を用いる水共存下でのイミンの高選択的なアリル化反応を報告しているが、α−イミノエステル類を基質とする検討例がないことや用いているアリルスズ誘導体に強い有害性があることなどにおいて改善の余地がある(非特許文献11参照)。
アリルホウ素によるアリル化は、通常は、γ位から反応が起こり、γ−選択的に付加するが、本発明者らは特殊な反応条件下においてはα位から反応することを報告してきた(非特許文献14、及び15参照)。非特許文献14の記載の方法は、グリオキシル酸エステル(HOC−COOR)のヒドラゾンを、フッ化亜鉛及びキラルなジアミン誘導体の存在下にアリルホウ素化合物と反応させるものであり、非特許文献15に記載の方法は、水中でケトン類を0価のインジウムの存在下でアリルホウ素化合物と反応させるものである。
これらのα付加型アリル化反応は、限られた反応条件での方法を開示するものであり、より一般的な手法の開発が望まれていた。
また、本発明は、前記した方法で製造された光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物の窒素−窒素結合を切断して対応するアミノ化合物を製造する方法に関する。
(1) 水と有機溶媒との混合溶媒中で、金属触媒の存在下で、かつリガンドの存在下又は不存在下で、アリルボラン化合物と、カルボニル化合物やそのヒドラゾン誘導体とを反応させる触媒的不斉α付加型アリル化反応により、立体選択的にα付加型アリル化化合物を製造する方法。
(2) 金属触媒が、0価金属、酸化金属、金属水酸化物、又はハロゲン化金属からなる金属触媒である前記(1)に記載の方法。
(3) 金属触媒が、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素からなる金属触媒である前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4) リガンドが、アキラルなリガンドである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) アキラルなリガンドが、置換基を有してもよい1,10−フェナントロリンである前記(4)に記載の方法。
(6) アキラルなリガンドが、次の一般式(1)、
R2−NH−R1−NH−R2 (1)
(式中、R1は、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、R2はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基を表し、R1の一部とR2の一部が隣接する窒素原子と共に飽和又は不飽和の環を形成してもよい。)
で表されるアルキレンジアミン誘導体である前記(4)に記載の方法。
(7) 一般式(1)におけるアキラルなアルキレンジアミン誘導体のR1が、エチレン基である前記(6)に記載の方法。
(8) カルボニル化合物が、次の一般式(2)、
R3−CO−R4 (2)
(式中、R3は置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい複素環基、又は炭化水素オキシカルボニル基を表し、R4は水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表す。)
で表される化合物である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9) カルボニル化合物のヒドラゾン誘導体が、次の一般式(3)、
R3−C(=N−NH−X−Ra)−R4 (3)
(式中、R3は置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、R4は水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、Xは−CO−又は−SO2−を表し、Raは置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
で表されるヒドラゾン化合物である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(10) α付加型アリル化化合物が、シン体又はアンチ体のいずれかのエナンチオマーが過剰に存在しているものである前記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) 前記(10)に記載の方法で製造された光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物の窒素−窒素結合を切断して対応するアミノエステル類を製造する方法。
(12) 窒素−窒素結合の切断が、還元的切断である前記(11)に記載の方法。
本発明のカルボニル化合物としては、カルボニル基(−CO−)の両端が炭素原子又は水素原子が結合したものであればよい。好ましいカルボニル化合物としては、前記した一般式(2)で表されるカルボニル化合物が挙げられる。
本発明のカルボニル化合物のヒドラゾン誘導体としては、前記した本発明のカルボニル化合物のヒドラゾン誘導体であり、好ましいヒドラゾン誘導体としては、前記した一般式(3)で表されるヒドラゾン誘導体が挙げられる。
本発明の一般式(2)又は(3)で表されるカルボニル化合物又はそのヒドラゾン誘導体における基R3及び基R4の「炭化水素基」としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)などが挙げられ、このようなアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、などが挙げられ、脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ビシクロ[1.1.0]ブチル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[2.2.2.]オクチル基、アダマンチル基(トリシクロ[3.3.1.1]デカニル基)、ビシクロ[4.3.2]ウンデカニル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカニル基、などが挙げられ、炭素環式芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、などが挙げられ、アリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチル−メチル基などが挙げられる。好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基、又は炭素数7〜15のアリールアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基などが挙げられる。
これらの炭化水素基や複素環基は、本発明のアリル化反応に悪影響を与えない各種の官能基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば、前記してきたアルキル基、前記してきたアルケニル基、前記してきたシクロアルキル基、前記してきたアリール基、前記してきたアラルキル基、塩素原子などのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、1個〜4個の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる異種原子を含有する3〜8員の環を有する複素環基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜21のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜37のアリール−カルボニルオキシ基、炭素数8〜41のアラルキルカルボニルオキシ基、炭素数2〜21のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜37のアリールオキシカルボニル基、炭素数8〜41のアラルキルオキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアミノ基、アルキルシリル基、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
カルボニル化合物又はそのヒドラゾン誘導体における特に好ましい基R4としては、水素原子、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。
本発明の一般式(3)で表されるヒドラゾン誘導体の基Xとしては、−CO−(アシル基)や、−SO2−(スルホニル基)などが挙げられる。
本発明の一般式(3)で表されるヒドラゾン誘導体の基X−Raの好ましい例としては、アセチル基、フェニルカルボニル基、p−メチルフェニルカルボニル基、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−メチルベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
本発明の好ましいカルボニル化合物のヒドラゾン誘導体としては、前記したカルボニル化合物とN−アシルヒドラジンから誘導されるN−アシルヒドラゾン誘導体が挙げられる。好ましいヒドラゾン誘導体としては、芳香族アルデヒド、芳香脂肪族アルデヒド、複素環式アルデヒドなどのアルデヒド化合物から誘導されるヒドラゾン誘導体が挙げられる。
で表されるアリルボラン化合物が挙げられる。
本発明の一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR5及びR6の「炭化水素基」としては、前記した炭化水素基が挙げられ、これらの炭化水素基は前記した置換基で置換されていてもよい。一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR5及びR6の好ましい基としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。これらのR5及びR6は同一であっても異なっていてもよい。
本発明の一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR7、R8、R9、及びR10の「脂肪族炭化水素基」としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基などが挙げられるが、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。好ましいR7、R8及びR9としては、水素原子が挙げられ、R10としては、水素原子又は炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。
本発明の一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR10の水酸基、アミノ基、又はメルカプト基は必要により適当な保護基で保護されていてもよく、このような保護基としては、本発明の方法における化学反応においては反応に関与しないように化学的に変性することができる基であって、当該反応の後は加水分解や加水素分解などにより容易に脱離してもとの官能基に復元することができる基であればよく、例えば、ペプチド合成などに使用される水酸基、アミノ基、又はメルカプト基の保護基などが挙げられる。このような保護基としては、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;ベンジル基などの炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜12のアラルキル基;t−ブチルカルボニル基などの炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基からなるアルキルアシル基;例えば、フェニルカルボニル基などの炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基からなるアリールカルボニル基;例えばベンジルカルボニル基などの炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜12のアラルキル基からなるアラルキルカルボニル基;例えば、t−ブトキシカルボニル基などの炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基からなるアルキルオキシカルボニル基;例えば、ベンジルオキシカルボニル基などの炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜12のアラルキル基からなるアラルキルオキシカルボニル基などが挙げられる。また、これらのアルキル基、アリール基、アラルキル基は、フッ素原子などのハロゲン基などで適宜置換されていてもよい。R10における好ましい「保護されていてもよい水酸基」としては、炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、より具体的にはベンジルオキシ基などが挙げられる。
で表される化合物が挙げられる。
原料化合物としてカルボニル化合物を使用した場合にはアルコール(Z=−OH)が得られ、原料化合物としてヒドラゾン誘導体を使用した場合には、ヒドラジン誘導体(Z=−NH−NH−アシル)が得られる。したがって、原料化合物としてカルボニル化合物を使用した場合には、生成物はホモアリルアルコール誘導体となり、原料化合物としてヒドラゾン誘導体を使用した場合には、ホモアリルヒドラジン誘導体となる。
アスタリスクで示される炭素原子は不斉炭素原子となることがあることを示している。この炭素原子における基ZとR10が同じ側にあるものを「シン体」と呼び、互いに反対側にあるものを「アンチ体」と呼ぶ。
また、二重結合において、R10が結合している炭素原子とR7とが同じ側にあるものをZ体と呼び、反対側にあるものをE体と呼ぶ。
また、原料化合物としてケトン化合物を使用する場合においてもリガンドの不存在下で反応を行うことができる。また、原料化合物としてケトエステルを使用する場合には、キラルなリガンドの存在下で反応を行うこともできる。キラルなリガンドとしては、2個の飽和の窒素原子を有するキラルなジアミン化合物が挙げられる。好ましいキラルなジアミン化合物としては、例えば、キラルなN,N’−ジベンジル−1,2−ジフェニル−エチレンジアミンが挙げられる。
本発明の方法は、リガンドの不存在下で行うこともできるが、好ましい態様としては、アキラルなリガンドの存在下で行うことが挙げられる。アキラルなリガンドとしては、2個又はそれ以上の窒素原子を有し、不斉炭素原子を有していない含窒素化合物が挙げられる。
好ましいアキラルなリガンドとしては、置換基を有してもよい1,10−フェナントロリン、又は次の一般式(1)、
R2−NH−R1−NH−R2 (1)
(式中、R1は、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、R2はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基を表し、R1に一部とR2の一部が隣接する窒素原子と共に飽和又は不飽和の環を形成してもよい。)
で表されるアルキレンジアミン誘導体が挙げられる。
前記一般式(1)における炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられ、これらのアルキレン基の炭素原子は不斉炭素原子となっていないものが挙げられる。これらのアルキレン基は環状となっていてもよい。直鎖状又は分岐状のアルキレン基の隣接する2個の炭素原子と共に5〜10員の脂肪族環式基を形成するものが挙げられる。形成される環は飽和であっても不飽和であってもよいが、好ましくは飽和環が挙げられる。また、このように形成された環にさらに他の環が結合または縮合したものであってもよい。好ましい例としては、隣接する炭素原子と共にシクロヘキサン環を形成する場合が挙げられる。好ましいアルキレン基としては、エチレン基、1,1−ジメチルエチレン基などが挙げられる。
前記一般式(1)における炭化水素基としては、前記してきた炭化水素基が挙げられる。好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)が挙げられる。好ましい炭化水素基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
R1の一部とR2の一部が隣接する窒素原子と共に飽和又は不飽和の環を形成してもよい場合の好ましい例としては、アルキレン基であるR1における窒素原子と隣接する炭素原子と、アルキル基であるR2の窒素原子と隣接する炭素原子が、一緒になって飽和又は不飽和の環、例えばピリジン環のような環を形成する場合が挙げられる。このような場合の典型的な例としては、置換基を有してもよい2,2’−ジピリジル又はその誘導体が挙げられる。
前記一般式(1)におけるアルキレンジアミン誘導体の好ましい例としては、
−C−N−C−C−N−
構造を有する鎖状又は環状の化合物が挙げられる。
1,10−フェナントロリンや、炭化水素基における置換基としては、前記してきた炭化水素基の置換基が挙げられる。好ましい置換基としては、メチル基やエチル基などの炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基やエトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
置換基の置換位置としては特に制限はないが、好ましくは、アリール基のオルト位や、1,10−フェナントロリンの2位や9位が挙げられる。
これらの金属触媒は、0価金属であってもよく、また、酸化金属、金属水酸化物、又はハロゲン化金属などの金属化合物であってもよい。
金属触媒としては、例えば、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素の0価金属;酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化銀、酸化カドミウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化鉛、酸化マグネシウム、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される酸化金属;水酸化亜鉛、水酸化スズ、水酸化ゲルマニウム、水酸化カドミウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される金属水酸化物;塩化亜鉛、塩化スズ、塩化ゲルマニウム、塩化銀、塩化カドミウム、塩化マンガン、塩化鉄、塩化鉛、及び塩化マグネシウムからなる群から選択される金属塩化物;臭化亜鉛、臭化スズ、臭化ゲルマニウム、臭化銀、臭化カドミウム、臭化マンガン、臭化鉄、臭化鉛、及び臭化マグネシウムからなる群から選択される金属臭化物などが挙げられる。
好ましい金属触媒としては、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素の0価金属;酸化亜鉛、酸化スズ、水酸化亜鉛、水酸化スズ、塩化亜鉛、塩化スズ、臭化鉛などが挙げられる。
水と有機溶媒の混合比は特に制限はないが、好ましくは水:有機溶媒の比が1:1以上、より好ましくは1:1〜1:10、さらに好ましくは1:1〜1:5が挙げられる。
また、有機溶媒としてトルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、デカンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロムベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶媒:ブタノール、オクタノールなどの高級アルコール系溶媒などの水と難溶性又は不溶性の有機溶媒を使用することもできる。この場合には、溶媒系は相分離した二相系になるが、相間移動触媒などの使用により反応を行うことができるので、このような溶媒系も本発明の方法における好ましい溶媒系の例とすることができる。
反応温度としては、好ましくは−20℃〜溶媒の沸点、−20℃〜40℃程度の範囲で適宜選択することができる。室温で反応させることもできる。雰囲気は大気中もしくはアルゴンガスなどの不活性雰囲気とすることができる。
本明細書ではこの位置における(R)体又は(S)体のいずれか一方の過剰率をエナンチオマー過剰率(ee)(%)として表す。このエナンチオマー過剰率は、((R)−(S))/((R)+(S))×100、又は((S)−(R))/((R)+(S))×100として計算される値である。
これらの本発明の方法により製造される光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物は、カルボニル基の炭素原子の特定の立体配置を有する窒素原子が結合したものであり、ヒドラジノ基の窒素−窒素結合は、公知の方法により還元的方法により簡単かつ立体配置を保持したままで切断できることから、本発明の方法で得られた光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物から光学活性アミノ類を製造することができることになる。
したがって、本発明は、本発明の方法により製造された光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物を還元して、対応する光学活性ホモアリルアミノ化合物を製造する方法を提供するものである。
本発明の方法によって製造される光学活性ホモアリルヒドラジン化合物は、その窒素−窒素結合を切断することにより、対応する光学活性ホモアリルアミノ化合物に誘導することができ、様々な光学活性アミノ化合物を合成できることから光学活性医薬品や食品類などや、その中間体の製造方法として有用となる。
1H−NMRと13C−NMRは、JEOL JNM−ECX−400、JNM−ECX−500又はJNM−ECX−600を使用し、CDCl3を溶媒とし(他の溶媒を使用した場合は個別に記載)、テトラメチルシラン(δ=0、1H−NMR)又はCDCl3(δ=77.0、13C−NMR)を内部標準物質として測定した。
溶媒は定法に従い蒸留したものを使用した。
次に示す反応式にしたがって、アルデヒド(1)とアリルボラン化合物(2)とを、アキラルなリガンド(3)の存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(4)を製造した。
シン体/アンチ体比及び化合物5aのE/Z比は1H−NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。
この結果を下記の表1にエントリー6として示す。
水酸化亜鉛及び2,9−ジメチルフェナントロリンを添加しないこと以外は実施例1と同様の方法を行った。
この結果を下記の表1にエントリー1として示す。
この結果を下記の表1にエントリー2として示す。
この結果を下記の表1にエントリー3−5として示す。
これらの結果をまとめて、次の表1に示す。
次に示す反応式にしたがって、アルデヒド(1)とアリルボラン化合物(2a)とを、アキラルなリガンド(3d)の存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(4)を製造した。
シン体/アンチ体比は1H−NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。
この結果を下記の表2にエントリー1として示す。
この結果を下記の表2にエントリー2−11として示す。
実施例4及び5の結果をまとめて、次の表2に示す。
次に示す反応式にしたがって、アルデヒド(1a)と、アリルボラン化合物(2a−2d)とを、アキラルなリガンド(3d)の存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(4)を製造した。
実施例6の結果をまとめて、次の表3に示す。
次に示す反応式にしたがって、ヒドラゾン誘導体と、アリルボラン化合物とを、アキラルなリガンド(1又は3)の存在下に反応させて、光学活性ホモアリルヒドラジン化合物を製造した。
この触媒溶液にN’−(3−フェニルプロピリデン)ベンゾヒドラジド(50.5mg,0.2mmol)及びα位にメチル基が置換したアリルボロネート(61μL,0.3mmol)を順次投入し室温下でさらに6時間激しく撹拌する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止した後、水層を酢酸エチルで3回抽出し、併せた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥する。有機層を濃縮し、薄層クロマトグラフィーで精製(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)することにより対応する化合物を得た。
シン体/アンチ体比は1H−NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。
この結果を下記の表4にエントリー2、5、8、又は11として示す。
この結果を下記の表4にエントリー1、4、7、又は10として示す。
この結果を下記の表4にエントリー3、6、9、又は12として示す。
実施例7〜9の結果をまとめて、次の表4に示す。
次に示す反応式にしたがって、ヒドラゾン誘導体と、アリルボラン化合物とを、アキラルなリガンドの存在下に反応させて、光学活性ホモアリルヒドラジン化合物を製造した。
下記の表5及び表6に示す各種の金属触媒を用いて、配位子を添加する場合は2,9−ジメチルフェナントロリンを用い、下記の表5及び表6の脚注に表記してある場合(a)は反応を2時間で停止すること以外は、実施例9と同様の方法を行った。
実施例10の結果をまとめて、次の表5及び表6に示す。
この結果、このようなゼロ価の金属が触媒量で有機合成反応を触媒することがほとんど知られていないにもかかわらず、スズや亜鉛を含めた種々ゼロ価金属存在下での反応性及び選択性が十分であることがわかった。特に、亜鉛、ゲルマニウムの他、カドミウムに著しい加速効果が認められ、得られた目的物もα型のものが主生成物であった。また、マグネシウムはフェナントロリン系のリガンドと組み合わせた際に、著しい反応加速効果が観測された。
次に示す反応式にしたがって、ヒドラゾン誘導体と、アリルボラン化合物とを、リガンドの不存在下に反応させて、光学活性ホモアリルヒドラジン化合物を製造した。
金属亜鉛、ゲルマニウム、カドミウム、塩化スズ、及び臭化鉛の各種の金属触媒を用いて、配位子の不存在下に、反応を8時間で停止すること以外は、実施例9と同様の方法を行った。
その結果、金属亜鉛では86%の収率で目的の生成物が得られ、ゲルマニウムでは77%の収率で目的の生成物が得られ、カドミウムでは84%の収率で目的の生成物が得られ、塩化スズでは77%の収率で目的の生成物が得られ、臭化鉛では80%の収率で目的の生成物がそれぞれ得られた。
次に示す反応式にしたがって、ケトエステル(6)と、アリルボラン化合物(2a)とを、リガンドの存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(7)を製造した。
シン体/アンチ体比は1H−NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。 エナンチオ選択性はダイセル工業株式会社製のChiralpac AS-Hをカラムとした高速液体クロマトグラフィーにて決定した。
展開液:ヘキサン/2−プロパノール=500/1、流速:0.5mL/min.、 保持時間:26.1min,(シン体 少量生成物)、
28.4min,(アンチ体 主生成物)、
35.0 min.(シン体 少量生成物)、
45.1 min.(アンチ体 主生成物)。
次に示す反応式にしたがって、アルデヒド(1a)と、アリルボラン化合物(2a)とを、リガンドの存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(4a)を製造した。
収率は75%で、4a/5a比は52/48であり、シン体/アンチ体比は97/3であり、シン体についてのeeは66%であった。
次に示す反応式にしたがって、ケトンと、アリルボラン化合物とを、リガンドの不存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコールを製造した。
シン体/アンチ体比は1H−NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。
本発明の方法によって製造される光学活性ホモアリルヒドラジン化合物は、その窒素−窒素結合を切断することにより、対応する光学活性アミノ化合物に誘導することができ、様々な光学活性α−アミノ化合物を合成できることから光学活性医薬品や食品類などや、その中間体の製造方法として有用であり、本発明は産業上の利用可能性を有している。
Claims (7)
- 水と有機溶媒との混合溶媒中で、金属触媒の存在下で、かつ、
置換基として炭素数1〜30の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2〜20の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基;炭素数3〜15の飽和若しくは不飽和の単環式、多環式若しくは縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6〜36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基;若しくは、炭素数6〜36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基に、炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40のアリールアルキル基を有してもよい1,10−フェナントロリン又は次の一般式(1)
R2−NH−R1−NH−R2 (1)
(式中、R1は、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表し、R2はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基を表し、R1の一部とR2の一部が隣接する窒素原子と共に飽和若しくは不飽和の環を形成してもよく、前記R1及びR2が置換基を有する場合の置換基は炭素数1〜30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基;炭素数2〜20の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基;炭素数3〜15の飽和若しくは不飽和の単環式、多環式若しくは縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6〜36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基;又は、炭素数6〜36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基に、炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40のアリールアルキル基である。)
で表わされるアルキレンジアミン誘導体であるアキラルなリガンドの存在下又は不存在下で、
次の一般式(4)
で表わされるアリルボラン化合物と、
次の一般式(2)
R3−CO−R4 (2)
(式中、R3は置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい複素環基、又は炭化水素オキシカルボニル基を表し、R4は水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、前記R3及びR4が置換基を有する場合の置換基は炭素数1〜30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基;炭素数2〜20の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基;炭素数3〜15の飽和若しくは不飽和の単環式、多環式若しくは縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6〜36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基;又は、炭素数6〜36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基に、炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40のアリールアルキル基である。)
で表わされるカルボニル化合物や次の一般式(3)
R3−C(=N−NH−X−Ra)−R4 (3)
(式中、R3は置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、R4は水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、Xは−CO−又は−SO2−を表し、Raは置換基を有してもよい炭化水素基を表し、前記R3、R4及びRaが置換基を有する場合の置換基は炭素数1〜30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基;炭素数2〜20の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基;炭素数3〜15の飽和若しくは不飽和の単環式、多環式若しくは縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6〜36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基;又は、炭素数6〜36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基に、炭素数1〜20のアルキル基が結合した、炭素数7〜40のアリールアルキル基である。)
で表されるカルボニル化合物のヒドラゾン誘導体とを反応させる触媒的不斉α付加型アリル化反応により、立体選択的に次の一般式(5)
- 金属触媒が、0価金属、酸化金属、金属水酸化物、又はハロゲン化金属からなる金属触媒である請求項1に記載の方法。
- 金属触媒が、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素からなる金属触媒である請求項1又は2に記載の方法。
- 一般式(1)におけるアキラルなアルキレンジアミン誘導体のR1が、エチレン基である請求項1に記載の方法。
- α付加型アリル化化合物が、シン体又はアンチ体のいずれかのエナンチオマーが過剰に存在しているものである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 請求項5に記載の方法で製造された光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物の窒素−窒素結合を切断して対応するアミノエステル類を製造する方法。
- 窒素−窒素結合の切断が、還元的切断である請求項6に記載の方法。
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