JP4209620B2 - 光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬などのファインケミカルの中間体などとして有用な光学活性なトランス−2−アミノシクロペンタノール等のトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法、ならびに光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トランス−2−アミノシクロアルカノール類の製造法として、例えばSynth. Commun., 1992年、第3003-3012頁や、J. Org. Chem., 1985年、第4154-4155頁には、シクロペンテンオキシドをトリメチルアルミニウム存在下で(R)−α−メチルベンジルアミンと反応させることによりトランス−2−アミノシクロペンタノールを得る方法が開示されている。しかし、この方法では、反応における立体選択性が低く、高い光学純度を有する目的化合物を得るには精製工程に問題があることから、工業的に有利な方法とはいえない。
【0003】
Biosci. Biotechnol. Biochem. 1999年、第2150-2156頁には、シクロペンテンオキシドをアジ化ナトリムによりアジド化した後、リパーゼにより光学活性なアジド化合物を得る方法が開示されている。また、J. Org. Chem., 1997年、第4197-4199頁には、シクロペンテンオキシドを光学活性な配位子の存在下でアジ化トリメチルシリルと反応させて光学活性なアジド化合物を得る方法が開示されている。このアジド化合物はアミノ化合物に変換可能である。しかし、これらの方法は、取扱いに注意を要するアジド化合物を製造する必要があるので、工業的に有利な方法とはいえない。
【0004】
さらに、Tetrahedron : Asymmetry, 1999年、第473-486頁、Tetrahedron, 1991年、第4941-4958頁には、β−ケトアミドやβ−ケトエステルをMortierella isabellinaやBaker's yeastを用いてバイオ還元し、光学活性なヒドロキシアミド、ヒドロキシ酸を得た後、転位反応を行い光学活性なトランス−2−アミノシクロペンタノールを得る方法が報告されている。しかし、この方法は、転位反応においてアジド化合物や水銀系の試薬を使用するため、やはり工業的に有利な方法とはいえない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその誘導体を取扱いやすい原料を用いて工業的に効率よく製造できる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、光学純度の高いトランス−2−アミノシクロアルカノールやその誘導体を簡易に製造できる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討の結果、シクロアルケンオキシド(1,2−エポキシシクロアルカン)と特定のアミンとを特定の化合物の存在下で反応させた後、還元反応に付すと、光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩を簡易に効率よく製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化13】
(式中、環Zは炭素数3〜8のシクロアルカン環を示す)
で表されるシクロアルケンオキシドと、下記式(2)
【化14】
(式中、Arはアリール基を示し、R1 は炭素数1〜3のアルキル基を示す)
で表される光学活性なアミンとを、ルイス酸及び光学活性な配位子の存在下で反応させて、下記式(3a)又は(3b)
【化15】
(式中、環Z、Ar及びR1は前記に同じ)
で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩を得、次いでこれを還元反応に付して、下記式(4a)又は(4b)
【化16】
(式中、環Zは前記に同じ)
で表される化合物又はその塩を得ることを特徴とする光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法を提供する。
【0008】
前記式(2)で表される光学活性なアミンとして、(R)−α−フェネチルアミン、又は(S)−α−フェネチルアミンなどが挙げられる。ルイス酸にはチタニウムテトラアルコキシドなどが含まれる。光学活性な配位子として1,1′−ビ−2−ナフトールなどが挙げられる。
【0009】
本発明は、また、前記式(1)で表されるシクロアルケンオキシドと、前記式(2)で表される光学活性なアミンとを、ルイス酸及び光学活性な配位子の存在下で反応させて得られた、前記式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体を下記式(5)
HX (5)
(式中、Hは水素原子、HXはプロトン酸を示す)
で表される酸と反応させて、下記式(6a)又は(6b)
【化17】
(式中、環Z、Ar、R1及びHXは前記に同じ)
で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の塩とし、次いでこの塩を再結晶することにより光学純度を向上させることを特徴とする光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の精製方法を提供する。
【0010】
本発明は、さらに、前記式(1)で表されるシクロアルケンオキシドと、前記式(2)で表される光学活性なアミンとを、ルイス酸及び光学活性な配位子の存在下で反応させて得られた、前記式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩を還元反応に付して、前記式(4a)又は(4b)で表される化合物又はその塩を得ることを特徴とする光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において、式(1)中、環Zは炭素数3〜8のシクロアルカン環を示す。具体的には、環Zはシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環又はシクロオクタン環を示す。これらの中でも、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環、特にシクロペンタン環が好ましい。
【0012】
式(2)中、Arで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基;ピリジル基などの芳香族複素環式基が挙げられる。アリール基における芳香族性環は置換基を有していてもよい。該置換基としては、反応を損なわないものであれば特に限定されず、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子など)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などのC1-6アルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などのC1-6アルコキシ基など)、ニトロ基、シアノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル基など)、複素環式基などが挙げられる。前記保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基が挙げられる。
【0013】
R1における炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0014】
式(2)で表される光学活性なアミンの代表的な例として、例えば、(R)−α−フェネチルアミン、(S)−α−フェネチルアミン、(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(S)−(1−ナフチル)エチルアミンなどが挙げられる。これらの中でも、(R)−α−フェネチルアミン、(S)−α−フェネチルアミンなどの光学活性なアミンが好ましい。光学活性なアミンを用いると、式(3a)で表される化合物と式(3b)で表される化合物とがジアステレオマーの関係となるので、式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩の光学純度を再結晶などにより容易に高めることができるという利点がある。
【0015】
前記ルイス酸とは、電子対を持つ原子(本発明においては、式(1)のエポキシ酸素)の該電子対を受け入れることが可能な原子、イオン、原子団を有する化合物を言い、反応原料の種類などに応じて適宜選択使用できる。ルイス酸の代表的な例として、塩化マグネシウムなどのマグネシウム化合物;テトライソプロポキシチタン等のチタニウムテトラアルコキシド、四塩化チタンなどのチタン化合物;テトラプロポキシジルコニウム等のジルコニウムテトラアルコキシド、塩化ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、硫化ジルコニウムなどのジルコニウム化合物;塩化鉄などの鉄化合物;塩化銅などの銅化合物;塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛などの亜鉛化合物;臭化ホウ素、塩化ホウ素、フッ化ホウ素などのホウ素化合物;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、アルキルアルミニウム、塩化アルキルアルミニウム、アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム化合物;塩化スズなどのスズ化合物などが挙げられる。これらの中でも、テトライソプロポキシチタン等のチタニウムテトラアルコキシドなどのチタン化合物が好ましい。
【0016】
式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩の生成反応においては、ルイス酸の使用量は、その種類、反応様式、反応速度などに応じて、例えば、式(1)で表されるシクロアルケンオキシド1モルに対して、0.01〜1.0モル程度の広い範囲から選択でき、通常、0.01〜0.1モル程度、好ましくは0.025〜0.1モル程度である。
【0017】
光学活性な配位子としては、前記ルイス酸の中心原子(錯体の中心原子となる)に単座配位又は多座配位結合可能な原子団を含むキラルな化合物であればよく、前記ルイス酸の種類等に応じて適宜選択使用できる。好ましい配位子には二座配位子が含まれる。光学活性な二座配位子としては、例えば、1,1′−ビ−2−ナフトール、酒石酸、酒石酸エステル(酒石酸ジメチルエステル、酒石酸ジエチルエステル、酒石酸ジプロピルエステルなど)、トランス−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4,5−ジイル)−ビス(ジフェニルエタノール)、1,6−ビス(2−クロロフェニル)−1,6−ジフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールなどの光学活性体が挙げられる。これらの中でも、1,1′−ビ−2−ナフトールの光学活性体が特に好ましい。
【0018】
式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロペンタノール誘導体又はその塩の生成反応においては、光学活性な配位子の割合は、配位子の種類、反応様式、反応速度などに応じて、例えば、式(1)で表されるシクロアルケンオキシド1モルに対して、0.01〜1.0モル程度の広い範囲から選択でき、通常、0.01〜0.1モル程度、好ましくは0.025〜0.1モル程度である。
【0019】
前記ルイス酸と光学活性な配位子とは、それぞれ別個に反応系に添加してもよく、ルイス酸と光学活性な配位子との混合物を反応系に添加してもよい。また、ルイス酸と光学活性な配位子とが反応する場合には、予め両者を反応させた反応生成物を反応系に加えてもよい。
【0020】
式(1)で表されるシクロアルケンオキシドと式(2)で表されるアミンとの反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒は、反応の進行を阻害せず、かつ反応成分を溶解するものであれば特に制限はなく、例えばエーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテルなどの環状又は鎖状エーテル)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)やスルホラン等のイオウ原子含有溶媒、脂肪族炭化水素(ペンタン、ヘキサン、オクタンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエンなど)、脂環式炭化水素(シクロヘキサンなど)、ハロゲン含有化合物(塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素など)、これらの混合溶媒等が使用できる。溶媒の量は特に限定されず、反応に用いる成分(例えば、光学活性な配位子など)が溶解できればよく、式(1)で表されるシクロアルケンオキシド1重量部に対して、例えば、1〜1000重量部程度の範囲から選択できる。
【0021】
反応は、通常、常圧〜500気圧(0.1〜50MPa)、好ましくは常圧〜100気圧(0.1〜10MPa)、さらに好ましくは常圧〜10気圧(0.1〜1MPa)程度で行われる。また、必要であれば、装置又は操作の点から、減圧下で反応を行ってもよい。反応温度は、反応条件において系の融点以上沸点以下であれば、特に制限されず、例えば、−30℃〜200℃、好ましくは−10℃〜100℃であり、さらに好ましくは0〜50℃程度である。反応は、バッチ式、セミバッチ式、連続式などの慣用の方式で行うことができる。
【0022】
上記方法によれば、シス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の副生が顕著に抑制され、トランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体が優先的に生成するだけでなく、ルイス酸と光学活性な配位子の作用により、トランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の2種の立体異性体[式(3a)で表される化合物及び式(3b)で表される化合物]のうち一方の立体異性体が優先的に生成する。また、前記配位子の立体配置に応じて、望む立体配置のトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体を作りわけることができる。
【0023】
生成した式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体は、必要に応じて酸と反応させて塩とした後、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、イオン交換、電気透析、晶析、再結晶、吸着、膜分離、遠心分離、クロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー等)などの分離精製手段やこれらの組み合わせにより分離精製できる。また、遊離のトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体を精製した後、酸と反応させて塩とし、さらに精製することもできる。これらの精製操作により、化学純度や光学純度をさらに向上できる。
【0024】
トランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の塩の形成に用いる酸としては、鉱酸、有機酸などのプロトン酸が使用できる。鉱酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などが挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸などが例示される。酸は光学活性体であってもよい。好ましい酸には、塩酸等の鉱酸が含まれる。遊離のトランス−アミノシクロアルカノール誘導体と酸との反応は、通常、エタノール等の適宜な溶媒中、例えば0〜50℃程度の温度で行われる。
【0025】
本発明の好ましい態様では、前記式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体を式(5)で表される酸と反応させて、式(6a)又は(6b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の塩とし、次いでこの塩を再結晶する。この方法により、光学純度の高い塩[式(6a)又は(6b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の塩]が得られる。また、この塩を塩基性化合物を用いて遊離化することにより、光学純度の高い式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体を得ることができる。このような光学純度の高い光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩を次の還元反応に供することにより、光学純度の高い光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩を得ることができる。
【0026】
前記式(5)で表されるプロトン酸としては前記例示の酸を使用できる。生成した塩を再結晶する際の溶媒としては、前記塩の種類等に応じて、例えば、前記例示の溶媒、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノールなど)、エステル(酢酸エチルなど)、水、及びこれらの混合溶媒などの中から適宜選択使用できる。好ましい再結晶溶媒として、メタノール等のアルコールと、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル(特に鎖状エーテル)との混合溶媒などが挙げられる。再結晶操作は慣用の方法に従って行うことができる。
【0027】
式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩の還元(水素化分解)は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。還元に供する反応原料としては、光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の塩が好ましい。溶媒としては、反応成分の種類や還元剤の種類等に応じて適宜選択でき、式(1)で表されるシクロアルケンオキシドと式(2)で表されるアミンとの反応における溶媒として例示したもののほか、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノールなど)、エステル(酢酸エチルなど)、水及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0028】
還元剤としては、窒素原子に結合したいわゆるベンジル基を還元的に分解可能な還元剤であればよいが、一般に水素が用いられる。水素を用いた接触水素化反応は遷移金属触媒存在下で行われる。
【0029】
遷移金属触媒の金属種としては、例えば、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、ニッケル、鉄等が使用できる。遷移金属触媒は、通常、前記金属単体又は金属元素で構成された金属化合物又は錯体(錯塩を含む)として使用する。
【0030】
金属化合物としては、金属塩[無機酸塩、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸との塩(炭酸塩、炭酸水素塩など)、リン酸との塩(リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩など)、ホウ酸塩など;有機酸塩、例えば、カルボン酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、ナフテン酸塩などの脂肪酸塩;チオシアン酸塩など)]、ハロゲン化物(塩化物、臭化物など)などが例示できる。
【0031】
錯体としては、前記金属元素又は前記金属化合物などに配位子が配位した錯体などが例示できる。配位子としては、ホスフィン(例えば、トリn−ブチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン;トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン)などのリン化合物、ニトリル、OH(ヒドロキソ)、アルコキシル基(メトキシ、エトキシ基など)、アシル基(アセチル、プロピオニル基など)、アルコキシカルボニル基[メトキシカルボニル(アセタト)、エトキシカルボニル基など]、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子など)、CO、酸素原子、H2O(アコ)、窒素含有化合物(例えば、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ピリジン、フェナントロリンなど)などが例示できる。錯体又は錯塩において、同種又は異種の配位子は一種又は二種以上配位していてもよい。前記金属又は金属化合物と配位子は適当に組み合わせて錯体を構成できる。
【0032】
前記遷移金属触媒は、均一系触媒であってもよく、不均一系触媒であってもよい。また、担体に触媒成分が担持された固体触媒であってもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ(シリカゲルなど)、アルミナ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体などが例示できる。
【0033】
遷移金属触媒として、特にパラジウム化合物(パラジウム単体を含む)が好ましい。パラジウム化合物としては、金属パラジウム(パラジウムブラックなど)、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウム、テトラニトロパラジウム(II)酸カリウム、ジクロロビス(トリアルキルホスフィン)パラジウム(II)、ジメチルビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ビスシクロペンタジエニルパラジウム(II)、トリカルボニルシクロペンタジエニルパラジウム(I)、ジクロロ−μ−ビス[ビス(ジメチルホスフィノ)メタン]二パラジウム(I)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリエチルホスフィト)パラジウム(0)、カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(シクロオクタ−1.5−ジエン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)などが挙げられる。好ましくはパラジウムブラックなどの金属パラジウム(活性炭などの担体に担持されたものを含む)が用いられる。触媒を構成するパラジウムの価数は特に制限されず、通常、0〜4価、好ましくは0〜2価程度である。
【0034】
また、例えば、2価のパラジウムと適当な還元剤を系に添加し、系中で0価のパラジウムを発生させて反応に供することもできる。適当な還元剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、ヒドラジンなどのヒドラジン類、水素等を例示することができる。
【0035】
式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩の還元反応では、好ましくはパラジウム−カーボン(Pd−C)と水素の組み合わせが用いられる。
【0036】
遷移金属触媒の使用量は、通常、式(3a)又は(3b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩1モルに対して、0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.2モル程度である。
【0037】
還元反応は、通常、常圧〜500気圧(0.1〜50MPa)、好ましくは常圧〜100気圧(0.1〜10MPa)、さらに好ましくは常圧〜10気圧(0.1〜1MPa)程度で行われる。また、必要であれば、装置又は操作の点から、減圧下で反応を行ってもよい。反応温度は、反応条件において、系の融点以上沸点以下であれば特に制限されず、例えば、−30℃〜200℃、好ましくは−10℃〜100℃であり、さらに好ましくは50℃〜80℃である。
【0038】
還元反応は、バッチ式、セミバッチ式、連続式などの慣用の方式により行うことができる。
【0039】
反応により生成した式(4a)又は式(4b)で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、イオン交換、電気透析、晶析、再結晶、吸着、膜分離、遠心分離、クロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィーなど)などの分離精製手段やこれらの組み合わせにより分離精製できる。また、遊離の光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノールとその塩とは、慣用の方法により相互に変換できる。
【0040】
上記のようにして得られる光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩は、医薬、農薬などのファインケミカルの合成中間体などとして有用である。
【0041】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその誘導体を取扱いやすい原料を用いて工業的に効率よく製造できる。また、光学純度の高いトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその誘導体を簡易に製造できる。本発明の方法は汎用性が高く、工業的にも有利である。
【0042】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、「BINOL」は1,1′−ビ−2−ナフトールの略号であり、「Pr−i」はイソプロピル基の略号である。また、下記分析において、塩は遊離のアミンの形態で分析を行った。
【0043】
NMRスペクトルは、「BRUKER AM500」(装置名)を用い、500MHz(1H−NMR)にて、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として測定した。
【0044】
シクロペンタンオキシドとトランス−2−(α−メチルベンジルアミノ)シクロペンタノールの定量はガスクロマトグラフィーにより行った。分析条件は以下の通りである。
カラム;J&W scientific DB-1 30.0m×0.25mm×0.25μm
キャリアガス;He
カラム温度;160℃→200℃、Init. 5min、10℃/min
Split Ratio;1:100
Flow Rate;1.1ml/min
【0045】
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールと(1S,2S)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの生成比の決定は液体クロマトグラフィーにより行った。分析条件は以下の通りである。
カラム;Inertsil SIL 4.6×250mm
移動相;ヘキサン/エタノール=95/5、0.1%ジエチルアミン
カラム温度;40℃
流速;1.0ml/min
【0046】
(1R,2R)−トランス−2−アミノシクロペンタノールの化学純度の決定はガスクロクロマトグラフィーにより行った。分析条件は以下の通りである。
カラム;J&W scientific DB-1 30.0m×0.25mm×0.25μm
キャリアガス;He
カラム温度;100℃
Split Ratio;1:100
Flow Rate;1ml/min
【0047】
(1R,2R)−トランス−2−アミノシクロペンタノールの光学純度の決定はガスクロマトグラフィーにより行った。分析条件は以下の通りである。
カラム;CHIRALDEXTM G-PN 20m×0.25mm
キャリアガス;He
カラム温度;135℃
Split Ratio;1:50
Flow Rate;1ml/min
【0048】
実施例1
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノール塩酸塩の製造
窒素気流下、500ml三口フラスコに(R)−BINOL(2.553g)とTi(OPr−i)4(2.535g)を加え、室温(24℃)下で10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(43.22g)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(30g)を加え、室温下(24℃)24時間撹拌した。得られた混合溶液にエタノール(30ml)を加え、次いで35重量%塩酸水溶液(55.73g)を加え、30分間撹拌後、減圧下溶媒を留去した。残渣にトルエン(70ml)を加え、還流下30分間撹拌した。これを2時間かけて放冷し、析出した結晶を濾別した。得られた結晶を乾燥することにより、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノール塩酸塩を41.37g得た(収率48%、86%de)。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.47−1.57(1H,m),1.62−1.70(1H,m),1.78−1.88(1H,m),1.92(3H,d,J=6.8Hz),1.95−2.12(3H,m),2.79−2.88(1H,m),4.23(1H,brs.),4.64−4.73(2H,m),7.40−7.48(3H,m),7.53−7.56(2H,m),9.65(1H,brs.),10.16(1H,brs.)
【0049】
実施例2
(1S,2S)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノール塩酸塩の製造
窒素気流下、フラスコに(S)−BINOL(0.17g)、Ti(OPr−i)4(0.18ml)及びヘキサン−トルエン(9/1)混合溶媒(1ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度40℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液から、実施例1の方法に準じて、(1S,2S)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノール塩酸塩を得た。
【0050】
実施例3
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.17g)、Ti(OPr−i)4(0.18ml)及びヘキサン−トルエン(9/1)混合溶媒(2ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度40℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC(ガスクロマトグラフィー)分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが40%deで生成していた。
【0051】
実施例4
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.17g)、Ti(OPr−i)4(0.18ml)及びテトラヒドロフラン(1ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度24℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが38%deで生成していた。
【0052】
実施例5
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.17g)、Ti(OPr−i)4(0.18ml)及びテトラヒドロフラン(1ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度40℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが52%deで生成していた。
【0053】
実施例6
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.17g)、Ti(OPr−i)4(0.18ml)及びテトラヒドロフラン(1ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(1.16ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度15℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが66%deで生成していた。
【0054】
実施例7
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.17g)、Ti(OPr−i)4(0.18ml)及びジイソプロピルエーテル(1ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度21℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが54%deで生成していた。
【0055】
実施例8
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.17g)とTi(OPr−i)4(0.18ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(1.16ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度24℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが64%deで生成していた。
【0056】
実施例9
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.68g)とTi(OPr−i)4(0.72ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(2.45ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(2.0g)を加え、温度24℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが60%deで生成していた。
【0057】
実施例10
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.17g)とTi(OPr−i)4(0.35ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度24℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが38%deで生成していた。
【0058】
実施例11
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.34g)とTi(OPr−i)4(0.18ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度24℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが50%deで生成していた。
【0059】
実施例12
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに(R)−BINOL(0.043g)とTi(OPr−i)4(0.044ml)を加え、室温(24℃)下10分間撹拌した。この溶液に(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を加え、温度24℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが64%deで生成していた。
【0060】
実施例13
(R)−BINOL−Ti(OPr−i)2の調製
(R)−BINOL(1.0g)をジクロロメタン(5ml)に溶解し、これにTi(OPr−i)4(0.99ml)を加えて1時間攪拌した。反応混合液を減圧下に濃縮して溶媒を留去し、赤褐色アモルファス状の(R)−BINOL−Ti(OPr−i)2を定量的に得た。なお、この化合物では、BINOLの2つのヒドロキシル基の水素原子が外れて酸素原子がチタン原子に結合している。
【0061】
実施例14
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに予め調製した(R)−BINOL−Ti(OPr−i)2(0.538g)を入れ、これに1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(1.0g)を加え、次いで(S)−(−)−α−フェネチルアミン(1.53ml)を滴下し、温度23℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが44%deで生成していた。
【0062】
実施例15
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールの製造
窒素気流下、フラスコに予め調製した(R)−BINOL−Ti(OPr−i)2(0.269g)を入れ、これに(S)−(−)−α−フェネチルアミン(0.77ml)を加え、次いで1,2−エポキシシクロペンタン(=シクロペンテンオキシド)(0.5g)を滴下し、温度23℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をGC分析したところ、(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノールが64%deで生成していた。
【0063】
実施例16
(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノール塩酸塩の再結晶
窒素気流下、300mlの二口フラスコに、94%deの(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノール塩酸塩(29.11g)と、メタノール(50ml)及びt−ブチルメチルエーテル(100ml)を加え、還流下30分間攪拌した。反応混合液を1時間かけて放冷し(溶液温度27℃まで)、析出した結晶を濾別した。この結晶を乾燥したところ、99.4%deの(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノール塩酸塩が15.96g得られた(収率55%)。
【0064】
実施例17
(1R,2R)−トランス−2−アミノシクロペンタノール塩酸塩の製造
500mlの二口フラスコに、実施例16で得られた(1R,2R)−トランス−2−[(S)−(α−メチルベンジル)アミノ]シクロペンタノール塩酸塩(15.96g、0.066mol)、エタノール(160ml)及びdry5重量%Pd−C(1.596g)を加え、水素雰囲気下[1atm(0.1MPa)]60℃(バス温)で4時間撹拌した。反応混合液をセライト濾過し、濾液を濃縮した。得られた粗結晶にエタノール(100ml)を加えて溶解した後、ジエチルエーテル(50ml)を加えて晶析し、(1R,2R)−トランス−2−アミノシクロペンタノール塩酸塩を6.52g得た(収率72%、99%ee)。
1H−NMR(MeOD)δ:1.57−1.64(2H,m),1.73−1.86(2H,m),1.97−2.05(1H,m),2.12−2.19(1H,m),3.24−3.32(1H,m),4.07(1H,q,J=6.4Hz)
Claims (6)
- 下記式(1)
で表されるシクロアルケンオキシドと、下記式(2)
で表される光学活性なアミンとを、ルイス酸及び光学活性な配位子の存在下で反応させて、下記式(3a)又は(3b)
で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩を得、次いでこれを還元反応に付して、下記式(4a)又は(4b)
で表される化合物又はその塩を得ることを特徴とする光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法。 - 式(2)で表される光学活性なアミンが(R)−α−フェネチルアミン、又は(S)−α−フェネチルアミンである請求項1記載の光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法。
- ルイス酸がチタニウムテトラアルコキシドである請求項1又は2記載の光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法。
- 光学活性な配位子が1,1′−ビ−2−ナフトールである請求項1〜3の何れかの項に記載の光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法。
- 下記式(1)
で表されるシクロアルケンオキシドと、下記式(2)
で表される光学活性なアミンとを、ルイス酸及び光学活性な配位子の存在下で反応させて得られた、式(3a)又は(3b)
で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体を下記式(5)
HX (5)
(式中、Hは水素原子、HXはプロトン酸を示す)
で表される酸と反応させて、下記式(6a)又は(6b)
で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の塩とし、次いでこの塩を再結晶することにより光学純度を向上させることを特徴とする光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体の精製方法。 - 下記式(1)
で表されるシクロアルケンオキシドと、下記式(2)
で表される光学活性なアミンとを、ルイス酸及び光学活性な配位子の存在下で反応させて得られた、下記式(3a)又は(3b)
で表される光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール誘導体又はその塩を還元反応に付して、下記式(4a)又は(4b)
で表される化合物又はその塩を得ることを特徴とする光学活性なトランス−2−アミノシクロアルカノール又はその塩の製造方法。
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