以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本発明の記録ヘッドのメンテナンス機構を搭載するインクジェットプリンタにおける画像記録状態の概念的な全体構成を示す図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタにおけるメンテナンス状態の概念的な全体構成を示す図である。
プリンタ装置100は、少なくとも、記録媒体の供給ユニット101と、記録ユニット1と、搬送ユニット109と、クリーニングユニット104と、記録媒体の排出ユニット120と、ポンプユニット130と、本体全体を制御する制御部(図示せず)を備えている。
供給ユニット101は、複数枚の記録媒体112を収容する供給トレイ102と、供給トレイ102の記録媒体112を1枚ずつ取り出すピックアップローラ200と、ピックアップローラ200によってピックアップされた記録媒体112の搬送を案内する搬送ガイド201と、搬送方向を調整するレジストローラ対202を有している。この供給ユニット101は、供給トレイ102中の記録媒体112をピックアップローラ200によって取り出し、搬送ガイド201を介してレジストローラ対202へと搬送する。そして、レジストローラ対202によって、記録媒体112の斜行を矯正すると共に、画像記録タイミングにあわせて記録媒体112を搬送ユニット109へと搬送する。
搬送ユニット109は、供給ユニット102から搬送された記録媒体112を画像記録時に搬送する搬送装置である。この搬送ユニット109は、従動ローラ210と、駆動ローラ211と、テンションローラ212と、プラテン213と、吸引部214と、ベルト215を有している。
ベルト215は、3つの従動ローラ210、駆動ローラ211及びテンションローラ212に掛け渡され、駆動ローラ211に取り付けられた不図示のモータを駆動させることによりベルト215が回転し、記録媒体112を下流側へと搬送する。なお、このベルト215には、複数の孔が形成されている。ベルト215の内側、且つ後述する記録ユニット1と対向する領域には、プラテン213が設けられている。
このプラテン213は、平板形状を成し、上面は記録媒体112が搬送される記録媒体搬送領域であり、多数の孔が開口されている。プラテン213の下方には、ファンから成る吸引部214が設けられている。この吸引部24は、負圧を発生させ、プラテン213の複数の孔、及びベルト215の複数の孔を介して記録媒体112をベルト215上に吸着する。このように搬送ユニット109は、ベルト215上に記録媒体112を吸着保持し、下流側へ搬送する。なお、搬送ユニット109は、不図示の昇降機構によって、図1に示す記録位置から図2に示すクリーニング位置まで移動可能となっている。
記録ユニット1は、搬送ユニット109と対向する位置に配置されている。この記録ユニット1は、インクを吐出するヘッドユニット220と、ヘッドユニット220にインクを供給するための分配器103と、ヘッドユニット220を保持するヘッドホルダ221とを有する。
図3は、複数の記録ヘッドが配置されたヘッドユニットをノズル面側から見た構成図であり、図4は、記録ヘッドの断面構成を示す図である。
記録ユニット1は、例えば、シアン:C、ブラック:K、マゼンタ:M、イエロー:Yの色のインクを吐出する、ヘッドユニット220(220C、220K、220M、220Y)が所定の間隔をあけて、ヘッドホルダ221に保持される。これらのヘッドユニット220は、少なくとも1つ以上の記録ヘッド222によって搬送される記録媒体の記録領域以上となるように配置されている。
本実施形態では、ヘッドユニット220Cは、一本のノズル列が例えば、6個に分割された記録ヘッド222(222−1〜222−6)を千鳥状に配置する構成のラインヘッドである。勿論、一本のノズル列の長さが記録媒体の幅を超える長さを有するラインヘッドでもよい。そして、分配器103Cは、6個の記録ヘッド222−1〜222−6にインクを供給するために設けられている。なお、他のヘッドユニット220K、220M、220Yも同様な構成である。
図4を参照して、記録ヘッド222の構成について説明する。
各ヘッドユニット220C、220K、220M及び220Yの各記録ヘッド222は、同様な構成をしているため代表して、1つの記録ヘッド222について説明する。
記録ヘッド222は、分配器103からのインクを流入するインク流入口11と、流入したインクに混入する異物を除去するフィルタ12と、インクを所定の電気信号に従ってノズルプレート17に形成されたノズル16からインクドロップを吐出するインク室15と、フィルタ12を通過して記録ヘッド222内に流入したインクを各インク室15に供給する共通インク室14と、異物を記録ヘッド222外に排出する液体排出口40と、該液体排出口40の排出口を開閉する液体排出コック42とが設けられている。尚、液体排出口40は、後述する液体排出ポンプ41に接続されている。
図5を参照して、本実施形態における記録ユニットにインクを供給する経路について説明する。ここでは、代表例として、記録ユニット220Cのインク供給経路を示しているが、他のヘッドユニットについても同様であり、これらの説明は省略する。
図5に示すように、メインタンク230は、インクを貯留する交換可能なカートリッジである。このメインタンク230内のインクが弁231を通過してサブタンク110に供給される。サブタンク110は、供給されたインクを一時的に貯留すると共に、分配器103を介してヘッドユニット220C(記録ヘッド222)にインクを供給する。
さらに詳細には、サブタンク110は、図4に示したように、記録ヘッド222のノズル16に所定のメニスカスを形成させるために、ノズルプレート17より重力方向で低い位置に配置されている。また、サブタンク110には、サブタンク110内を大気開放可能とするための大気開放弁88が設けられている。この大気開放弁88を開放することで、ノズルプレート17とサブタンク110内のインク液面高さの高低差(水頭差)によってノズル16には所定の負圧が掛かり、メニスカスが形成される。
さらにサブタンク110には、加圧弁86及び加圧エアータンク87を介して加圧ポンプ85と接続されている。この加圧ポンプ85は、後述する記録ヘッド222のクリーニング時に、記録ヘッド222を加圧するために設けられている。尚、図示していないが、サブタンク110内には、貯留されるインク量を一定に保つために用いられる液面センサが設けられている。この液面センサがサブタンク110内のインクが減少を検知すると、弁231を開放して、メインタンク230からサブタンク110にインクが供給される。
図1に戻り説明する。排出ユニット120は、排出ローラ対240と排出トレイ241を有している。記録ユニット1で画像記録された記録媒体112は、排出ローラ対240によって排出トレイ241に排出される。そして、排出トレイ241は、複数枚の画像記録済みの記録媒体112を収容可能となっている。また、排出トレイ241は、複数段のトレイと分配機構で構成されたソータ機能を有するものであってもよい。
このように構成されたプリンタ本体100は、供給トレイから記録媒体112を供給し、レジストローラ対202で搬送方向、及びタイミング調整が行われ、ベルト215上に吸着されながらヘッドユニット220と対向する位置へと搬送される。
そして、記録媒体112が所定の位置まで搬送されるとヘッドユニット220は、不図示の駆動回路を駆動してインクを吐出し、所望の画像を記録する。記録済みの記録媒体112は、排出ローラ対240を通じて排出トレイ241へ排出される。
プリンタ本体100は、予め設定された枚数の記録媒体112に画像記録を行った場合、又は設定時間経過後に、ヘッドユニット220の記録ヘッド222のクリーニングを行う必要がある。
そこで、本実形態のクリーニング部について詳細に説明する。
クリーニング部は、クリーニングユニット104と、メンテナンスキャリッジ84と、クリーニングユニット移動部107と、ポンプユニット130と、廃液ボトル111を有している。
図6に示すように、クリーニングユニット104は、各色のヘッドユニットに対応してクリーニングユニット104C,104K、104M、104Yを有している。これらクリーニングユニット104C〜104Yは、メンテナンスキャリッジ84に保持されている。
また、クリーニングユニット移動部107は、メンテナンスキャリッジ84(メンテナンスユニット104)を移動可能としている。メンテナンスユニット104の移動の仕方については後述する。
ここで、図7乃至図9を参照して、クリーニングユニット104の詳細な構成について説明する。なお、図7乃至図9は、クリーニングユニット104Cを示しているが、他のクリーニングユニット104K,104M、104Yについても同様なため説明は省略する。
図7は、クリーニングユニット104Cの構成例を示す。
クリーニングユニット104Cは、筐体を兼ねたクリーニングパン80と、該クリーニングパン80上にヘッドユニット220Cの各記録ヘッド222に対応して設けられた吸引部260及び液体貯留部5が配置されている。
図8には、吸引部260の構成を示す。この図8を参照して、吸引部260について説明する。
吸引部260は、記録ヘッド222に付着したインクやゴミなどを吸引することにより清掃する吸引手段である。吸引部260は、複数の吸引開口部260aと、ワイパーブレード260bとを具備している。また、吸引部260は、メンテナンス時に記録ヘッド222と対向する吸引部ヘッド対向面260cを有している。
この構成において、吸引開口部260aの配列方向は、ノズル列の配列方向と実質的に一致している。また、各吸引開口部260aに開口する入口孔260dは、チューブ等によりクリーニングポンプ83に接続されている。クリーニングポンプ83の負圧により、ノズル近傍のインクが入口孔260dから吸引される。
図9は、液体貯留部5及びクリーニングパン80の構成例を示している。図10は、クリーニングユニット104におけるインク経路の構成例を示している。
クリーニングパン80は、少なくとも液体貯留部5から溢れた液体を受け止める。このクリーニングパン80は、受け止めた廃液を排出する廃液排出口53が設けられている。この廃液排出口53は、廃液排出ポンプ54を経由して廃液ボトル111と接続されている。
液体貯留部5は、液体を貯留させる液体貯留パン50、液体貯留パン50に液体を送り込む液体貯留パン流入口51、エアー遮蔽部としてエアー遮蔽板70と、エアー遮蔽板70を開閉させるエアー遮蔽板駆動モータ71で構成されている。
液体貯留パン50の開口部には、記録ヘッド222のノズルプレート17に接触して密閉した空間を形成するためにパッキン73が設けられている。又、開口部は、図10で示されるクリーニンエリア85の範囲内で接触することが望ましい。また、エアー遮蔽板70は、液体貯留パン50内に貯留した液体を汚染させないように外気に対して密閉性を維持するために設けられている。
そして、エアー遮蔽板70は、記録ヘッド222のクリーニングを行う際は、エアー遮蔽板駆動モータ71によって液体貯留パン50の開口部を開放し、非クリーニング時は開口部を密閉している。
図11(a)を参照して、記録ヘッド222とクリーニングユニット104との関係を記録ヘッド222の断面を使用して説明する。
クリーニングユニット104は、メンテナンスキャリッジ84に保持され、クリーニングユニット移動部107によって搬送方向(Y方向)、搬送方向と直交する方向(X方向)、及び昇降方向(Z方向)に一体となって移動することができる。又、クリーニングパン80上に設置された液体貯留部5は、クリーニング動作時に記録ヘッド222と接触しないように吸引部260よりも低い位置に配置されている。
また、吸引部260は、液体貯留部5が記録ヘッド222と接触する際に記録ヘッド222と接触せず回避できる位置に配置されている。ポンプユニット130は、図7に示すように、クリーニングポンプ83と、廃液排出ポンプ54と、貯留液体供給ポンプ52とを有している。クリーニングポンプ83は、チューブを介して吸引部260と接続されている。そして、吸引部260は、クリーニングポンプ83によって負圧を発生させ、ノズルプレート17上のインクを吸引する。
つまり、クリーニングブレードが記録ヘッド222のノズルプレート17の表面を摺動することによってノズルプレート17に付着した付着物の掻き取りを行った直後に、吸引開口部260aに形成された入口孔260dによってノズルプレート17上の付着物を含む余剰インクの吸引を行うことができる。
廃液排出ポンプ54は、チューブを介してクリーニングパン80に接続されている。そして、廃液排出ポンプ54は、クリーニングパン80に溜まったインクを廃液ボトル111へと排出させる。
貯留液体供給ポンプ52は、図10に示すように、チューブを介して液体貯留パン50と接続されている。この貯留液体供給ポンプ52は、記録ヘッド222内から排出された異物3を含んだ液体を異物除去フィルタ60によって異物3を除去したクリーンな液体を再び液体貯留パン50に循環して供給する。
次に、異物3がノズル16に詰まって印字不良となった記録ヘッド222に対する回復方法について説明する。
[1].まず、ユーザーの指示或いは、図示しないノズルつまりの判定部、又は起動時等のあらかじめ設定された条件によりメンテナンス動作の指令がプリンタ本体100にされる。
[2].図2に示すように搬送ユニット109の下降に伴ってクリーニングユニット104も下降する。
[3].クリーニングユニット移動部107によってクリーニングユニット104を搬送方向に移動し、各色のクリーニングユニット104を対応するヘッドユニット220と対向する位置まで移動させる。
[4].図5に示した加圧ポンプ85を駆動し、加圧されたエアーが加圧エアータンク87に貯留する。加圧ポンプ85の動作が終了すると同時に加圧弁86が開放され、加圧エアータンク87の加圧されたエアーが、サブタンク110に流入し、分配器103を経由して記録ヘッド222の内圧を高める。この時大気開放弁88は閉じている。これにより、記録ヘッド222内のインクは、ノズル16を介して記録ヘッド外に排出する。
[5].次に、クリーニングユニット移動部107によってクリーニングユニット104を移動させる。これにより、図11(a)に示すように、吸引部260のワイパーブレード260bが記録ヘッド222のノズルプレート17表面に当接する。この時にクリーニングポンプ83は、駆動されている。これにより、ワイパーブレード260bがノズルプレート17表面に付着した異物及び残留インクを掻き取る。更に、吸引部260の入口孔260dが、異物を含んだインクを完全にノズルプレート17から吸引除去する。そして、図11(b)は、上記の動作の終了の状態を示す。
[6].図11(c)に記載されている様に、クリーニングユニット移動部107によってクリーニングユニット104が下降し、液体貯留パン50が、記録ヘッド222と対峙する位置に待機する。
[7].そして、図9に示す液体貯留部5では、まずエアー遮蔽板駆動モータ71によってエアー遮蔽板回転軸70aを中心にエアー遮蔽板70が回転し、液体貯留パン50の開口部が遮蔽状態から開口状態となる。
[8].その後、図10に示される記録ヘッド222の共通インク室14に接続された液体排出口40の液体排出コック42を解放し、貯留液体供給ポンプ52を駆動することによって液体貯留パン流入口51を経由してインクを液体貯留パン50に液体貯留パン50の容量よりも多く送り込む。この時、液体貯留パン50から溢れたインクは、クリーニングパン80によって回収され、廃液排出ポンプ54により廃液ボトル111へと排出する。このようにすることで、液体貯留パン50内に貯留したインクは、クリーンな状態に保つことができる。
[9].その後、図11(d)に示すように液体貯留パン50を搭載したクリーニングユニット104をクリーニングユニット移動部107によって記録ヘッド222のノズルプレート17面に当接させる。その際、液体貯留パン50のインクは、ノズルプレート17のエリア内で、接液させることによって、液体貯留パン50内のインクのクリーン度を維持する。
[10].更に図10で示すように貯留液体供給ポンプ52を駆動させることで、クリーンなインクを記録ヘッド222のノズル16を経由して共通インク室14に逆流させることによって、ノズル16に詰まっている異物3を容易にノズル16から除去することができる。
共通インク室14に逆流した異物3は、液体排出口40から記録ヘッド222外に排出される。記録ヘッド222から排出されたインクは、図10が示すように異物除去フィルタ60を介して、再度、液体貯留パン50に戻る。このように、インクを循環させることによってインクの消費を最小限にすることができる。
また、図10に示すように循環機構を設けることによって、インクを逆流することができ、より確実のノズル16からの異物3の除去が可能となります。
[11].次に、貯留液体供給ポンプ52を停止し、記録ヘッド222の共通インク室14に接続された液体排出口40の液体排出コック42を閉鎖する。
[12].クリーニングユニット移動部107によって液体貯留パン50を記録ヘッド222から引き離し、エアー遮蔽板駆動モータ71によってエアー遮蔽板回転軸を中心にエアー遮蔽板70が回転し、液体貯留パン50の開口部が再び遮蔽状態となる。
[13].その後、記録ヘッド222のノズル16に付着した残留インクを除去する為に再度クリーニングユニット移動部107によってクリーニングユニット104の吸引部260を再び記録ヘッド222に当接させる。更にクリーニングポンプ83を駆動させ、吸引部260を記録ヘッド222のノズルプレート17に当接させながら移動させることによって、ノズルプレート17上の残留インクを除去し、正常なインクの吐出ができる状態にする。
以上説明したように、本実施形態によれば、ノズル16に液体をヘッド外部からヘッド内部に流入させることで、異物に大きな且つ継続的にノズル16から引き離す力を作用することができるので、より確実に異物を印字ノズルから除去することができる。
ノズル16から逆流させる液体を貯留する液体貯留部5の開口部に遮蔽機構を設けて液体貯留部5の内部に紙粉等のコンタミが流入しない様にすることによって、液体貯留部5に貯留された液体の汚染を防ぎ、異物除去動作によって記録ヘッド222内部に異物が侵入することを防ぎ、新たな噴射不良の発生を防ぐことができる。
記録ヘッド222に新たなる排出口40を設け、異物を含んだインクを排出することができ、ノズル16から引き離した異物3を再びノズル16に詰まらせることが無い。異物除去動作によって記録ヘッド外に排出されたインクを液体貯留部5に還元することによって、異物除去動作に消費するインクを削減することができる。又、還元途上に異物除去部(フィルター)を設けることによって液体貯留部内の貯留インクをクリーンに保つことができるとともに液体貯留部もクリーンに保つことができる。
図12乃至図18を参照して、第2の実施形態について説明する。ここで、図12は、第2の実施形態におけるメンテナンス機構の構成例を示す図である。図13は、メンテナンス処理における異物除去について説明するためのシーケンス例を示す図である。図14は、記録インクジェットヘッドの断面構成を示す図である。図15は、異物が混入した記録ヘッドの断面構成を示す図である。図16は、通常の記録ヘッドのメンテナンスを実施している状態を示す図である。図17は、異物除去の第1の状態を示す図である。図18は、異物除去の第2の状態を示す図である。
第2の実施形態は、前述した第1の実施形態の装置全体の説明及び印字までのシーケンスに関しては1と同等であるので詳細な説明は省略する。ここでは、説明を簡略化するために単色の一つの記録ヘッドについて説明する。
記録ヘッド222には、インクがサブタンク110から分配器103を経由して供給される。サブタンク110には、分配器103を介して、記録ヘッド222のヘッド内の圧力を加圧、又は減圧するための加圧部と負圧部が接続されている。
加圧部は、加圧にするための加圧ポンプ85、加圧したエアーを貯留する加圧エアータンク87、加圧したエアーをサブタンク110への送り込みを制御する加圧弁86が設けられている。
一方、負圧部は、負圧にするための負圧ポンプ89、負圧エアータンク91、サブタンク110から負圧タンク91へのエアーの送り込みを制御する負圧弁90が設けられている。また、記録ヘッド222のノズル面には、ノズル面上の余剰インクを吸引する為の吸引部260が接離可能に設けられており、吸引部260には、負圧にするためのクリーニングポンプ83が接続されている。
次に、図14を参照して本実施形態の記録ヘッド222について説明する。
記録ヘッド222には、インクを流入するインク流入口11、流入したインクに混入する異物を除去するフィルタ12、インクを所定の電気信号に従ってノズルプレート17に形成されたノズル16からインクドロップ2を吐出するインク室15、フィルタ12を通過して記録ヘッド222内に流入したインクを各インク室15に供給する共通インク室14、異物を記録ヘッド222外に排出する異物排出用ノズル19、前記共通インクと異物排出用ノズル19との間に両者を分離する異物排出口遮蔽板23が設けられている。
尚、異物排出口遮蔽板23は、共通インク室14から異物排出口19の方向に持続的に圧力がかけられると異物排出ノズル側に異物排出口遮蔽板23は、開く構造になっている。具体的には、異物排出口遮蔽板に質量を大きくしで慣性力を利用している。
図15では、第1の実施形態と同様に、異物の無い正常なノズル16aでは、正常なインクドロップ2が吐出されるのに対して、塊状異物31が詰まったノズル16bや、糸状の異物32が詰まったノズル16cでは、吐出不良のインクドロップ20が飛散する様に吐出している様子を示している。
次に、図13は、本実施形態の構成部位毎の異物除去の手順を示すシーケンスである。尚、図13の下部は、各部材の駆動状況を示し、上部は、下部の駆動状況による記録ヘッド222の内圧を示す。以降、図13のステップ[1]-[33]に従って説明する。
[1].通常の待機状態
[2].ユーザーの指示或いは、図示しないノズルつまりの判定部、又は起動時等のあらかじめ設定された条件によりメンテナンス動作の指令がプリンタ本体100にされる。図12に示す加圧ポンプ85が作動し、加圧されたエアーが加圧エアータンク87に貯留する。
[3].加圧ポンプ85の動作が終了すると同時に加圧弁86が開放され、加圧エアータンク87の加圧されたエアーが、サブタンク110に流入し、分配器103を経由して記録ヘッド222の内圧を高める。この時大気開放弁88は閉じている。
図16には、前述したように内圧が高められた結果、ノズル16から排出インク22が排出される様子を示している。また、記録ヘッド222内部の圧力が高い状態は、極めて短い時間(例えば、0.5sec、望ましくは、0.2sec以内)に設定されているので、共通インク室14から異物排出ノズル19の方向に継続的に圧力が加わることによって開放する異物排出口遮蔽板23は、開放されず、異物排出用ノズル19から排出する排出インク22の容量を最小限にすることができる。インクの増粘防止やエアーの巻き込みによって壊れたノズル16のメニスカスの回復等のために行われる通常のメンテナンス時には、前記の様に極めて短い加圧時間とし、インクの排出は、印字用のノズル16にだけに留める。
[4].大気開放弁88を開放し、加圧したエアーをサブタンク110、加圧エアータンク87から排出し、記録ヘッド222内の圧力を減圧する。
[5].減圧時のアンダーシュートを防ぐために、サッキング時に必要な記録ヘッド222の内圧である微正圧よりも高い圧力の時点で、一度、大気開放弁88を閉じる。
[6].次にもう一度、大気開放弁88を開放し、記録ヘッド222内の圧力が、微正圧になる様に更にサブタンク110、加圧エアータンク87からエアーを排出し、記録ヘッド222内の圧力を減圧する。
[7].大気開放弁88を閉じ、記録ヘッド222の内圧を微正圧に維持する。
[8].図12に示すクリーニングポンプ83を駆動し、排出インク22を吸引できるように吸引部260を負圧にする。そして、吸引部260の昇降動作を行うクリーニングユニット移動部107によって吸引部260を記録ヘッド222のノズルプレート17に当接させる。
[9].次に、クリーニングユニット移動部107によって吸引部260を記録ヘッド222のノズルプレート17に当接させながら移動させる。この作用内容及び効果に関しては、実施の形態1で説明した内容と同等である。
[10].吸引部260が記録ヘッド222のノズルプレート17の全域をクリーニングした時点で、クリーニングユニット移動部107によるX方向の移動を停止すると共にクリーニングポンプ83の駆動を停止する。
[11].再び大気開放弁88を開放し、記録ヘッド222に印字のための最適な負圧を与え、印字に最適なメニスカスをノズル16に形成する。これまでの過程は、インクの増粘防止やエアーの巻き込みによって壊れたノズル16のメニスカスの回復等ために行われる通常のメンテナンスと同等である。
[12].加圧弁86を閉じる。
[13].液体貯留部5におけるエアー遮蔽モータ73を駆動し、液体貯留パン50を外気から遮蔽していたエアー遮蔽板70を開く。
[14].貯留液体供給ポンプ52を駆動し、本実施形態ではサブタンク110、又はメインタンク230のインクを液体貯留パン50に送り込む。この時、送り込むインク量は、液体貯留パン50の容量よりも多く送り込む。これによって液体貯留パン50をクリーニングにすると共に液体貯留パン50に貯留されたインクをクリーンにする。
[15].クリーニングユニット移動部107によって液体貯留パン50を記録ヘッド222に対して対侍した位置に移動させる。
[16].クリーニングユニット移動部107によって液体貯留パン50を記録ヘッド222のノズルプレート17に当接させ、液体貯留パン50を密閉する。
[17].図12に示す負圧ポンプ89を駆動し、負圧エアータンク91を減圧する。
[18].負圧弁90を開放して、サブタンク110、分配器103を経由して記録ヘッド222内の圧力を図13のヘッド内圧のグラフが示すように急激に減圧する。又、このステップ18のときの記録ヘッド222内の様子が図17に示されており、急激な負圧へ変化することによって、ノズル16から液体貯留パン50のインクをインク室15内に逆流させる。この動作によってノズル16に詰まっていた塊状異物31及び糸状異物32をノズル16から引き離し、インク室15、更には、共通インク室14内に移動させることができる。異物排出口遮蔽板23は、共通インク室14から異物排出用ノズル19の方向にしか開かないので、記録ヘッド222の共通インク室14内の圧力が負圧になっても異物排出用のノズルからインクが入ることがなく、液体貯留パン50のインクをノズル16に詰まった異物を引き離すために有効に使われる。
[19].再び大気開放弁88を開放し、記録ヘッド222内の圧力を通常待機時の圧力に戻す。本実施の形態での説明では、記録ヘッド222内の圧力を負圧にする回数は、1回であるが、ステップ17〜19を繰り返すことによって、複数回、ノズル16からの異物の除去動作を繰り返しても有効的である。又、ステップ19の待機開放時に負圧弁90を閉じ、負圧エアータンク91内を負圧に保ったままで、更に大気開放弁88を閉じて、再び負圧弁90を開放することを繰り返すことでも複数回の異物の除去動作をすることができ、且つ、負圧ポンプ89を駆動するステップ17を省略できるので、短時間に複数の異物の除去動作をすることができる。そして、クリーニングユニット移動部107によってクリーニングユニット104を下降させ、液体貯留パン50を記録ヘッド222から離接させる。
[20].エアー遮蔽モータ73を駆動し、液体貯留パン50を再びエアー遮蔽板70にて遮蔽する。前記の様に異物除去動作以外の時は、液体貯留パン50を外気から遮蔽することによって通常印字時に発生する紙粉等のコンタミから液体貯留パン50を汚染することを防ぐ。
[21].加圧弁86、大気開放弁88を閉じ、加圧ポンプ85が作動し、加圧されたエアーが加圧エアータンク87に貯留する。少なくともステップ2の時の加圧ポンプ85の駆動時間よりも長くし、加圧エアータンク87圧力をステップ2の時よりも高い方が望ましい。
[22].加圧ポンプ85の動作を停止すると同時に加圧弁86が開放し、加圧エアータンク87の加圧されたエアーをサブタンク110に流入し、分配器103を経由して記録ヘッド222の内圧を高める。図13に示す記録ヘッド222の内圧グラフで示されているようにステップ3よりも圧力は高く且つ時間は長い方が良い。
図18には、前記記載によって内圧が高められた結果、ノズル16から糸状異物32を排出インク22と共に排出される様子を示している。又、塊状異物31は、異物排出口遮蔽板23を経由してノズル16よりも径の大きい異物排出用ノズル19から排出される。又、異物排出用ノズル19よりも大きな異物であっても共通インク室14から異物排出口遮蔽板23の外側に排出されれば、異物が再びノズル16を詰まらせることがないので、記録ヘッド222は、良好な印字を維持することができる。
[23]-[32].ステップ23〜ステップ32までは、ステップ4〜13の動作と基本的に同じであるので、説明を省略する。
[33].加圧弁86を閉鎖し、所定の印字信号が入れば即座に印字動作ができる待機状態となる。
以上説明したように、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態に対して、記録ヘッド222の共通インク室14に異物排出用の液体排出口40を設ける必要がないので、記録ヘッド222の構造を簡易にし、より安価に製造することができる。
更に本実施形態では、記録ヘッド222のノズル16の列の両端(インクの流れの最下流)に印字用のノズル16よりも径の大きい異物排出用ノズルを設けているが、径が大きくない異物排出用ノズル19であっても糸状異物32の様に排出可能であり、又、塊状異物31であっても最下流の領域に異物を保留しておくことで、印字用のノズル16を詰まらせることを防止することができる。
本実施形態の記録ヘッド222の構造であれば、印字用のノズル16の穴あけ加工と同等の方法で異物排出用ノズルの加工ができるので、より安価に製造することができる。
また本実施形態では、記録ヘッド222のノズル16の列の両端(インクの流れの最下流)に異物排出用ノズルを各1個設けているが、異物排出用のノズル19の数量を増やし、排出時の共通インク室14内の異物排出用ノズル19に向かう流速を増やすことによってより早く、確実に共通インク室14内からの異物の排出が可能である。前記したように記録ヘッド222のノズル加エコスト上或いは、構造上大きな異物除去用ノズル19が設けられない場合は、数量を増やすことが非常に有効である。又、本実施形態のステップ16の直前に記録ヘッド222に若干の加圧状態を保ち、ノズルプレート17にインクを滞留させておけば、ステップ16時により多くのインクをノズル近傍で逆流させることができるので、異物をノズル16から引き離す効果が更に向上する。
次に、第2の実施形態の第1の変形例について説明する。
図19は、第2の実施形態の第1の変形例となるメンテナンス機構の構成例を示す図である。本変形例は、図12に示した加圧ポンプと負圧ポンプを1台のポンプで兼用した構成例である。
記録ヘッド222のヘッド内の圧力を加圧又は負圧するために、加圧エアータンク87及び負圧エアータンク91がそれぞれ加圧弁又は負圧弁を介して接続されている。これらの加圧エアータンク87及び負圧エアータンク91の間には、例えば、加圧エアータンク87を加圧にする加圧ポンプ85を設け、その背圧(負圧)側を負圧エアータンク91に接続する。又は、加圧エアータンク87及び負圧エアータンク91には、大気開放弁をそれぞれに設ける。これらの大気開放弁は、共に閉じた状態で加圧ポンプを駆動させて、負圧エアータンク91内の気体(例えば、空気)を加圧エアータンク87に移動させることで加圧及び負圧を作り出してもよいが、ポンプ性能により圧力が不十分な場合があるため、例えば、負圧エアータンク91を大気開放した状態で加圧ポンプ85を駆動して加圧エアータンク87を加圧してもよい。また、負圧の場合には、加圧エアータンク87を大気開放して同様に駆動させる。
次に、第2の実施形態の第2の変形例について説明する。
図20は、第2の実施形態の第2の変形例となるメンテナンス機構の構成例を示す図である。本変形例は、図14に示した液体貯留パン50とクリーニングパン80とが一体的に二重構造に構成されている。
このクリーニングパン80は、液体貯留パン50がインクジェットヘッド1と密着した状態で記録ヘッド222内の圧力を急激に減圧する。ノズル16からインクをインク室15内に逆流させる。インクは、異物と共にインク室15から共通インク室14に移動する。
この状態で、記録ヘッド222内の圧力を加圧すると、異物排出口遮蔽板23は、異物排出ノズル側に開き、インクを流出する。流出したインクは、異物排出用ノズル19を通ってクリーニングパン80に流れ込む。
従って、ノズル16から外れた異物は、異物排出口遮蔽板23からクリーニングパン80に流れ込む。
次に第3の実施形態について説明する。
図21には、本実施形態のメンテナンス機構の構成を示す。
本実施形態は、インク流入口11とインクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッド1と前記インクジェットヘッドに対峙する位置に設けられた液体貯留パン50と液体貯留パン50の下部に設けられたクリーニングパン80から構成されている。
インクジェットヘッド1の共通インク室14と液体貯留パン50は、液体貯留パン流入口51で連結されており、インクジェットヘッド1側から順に 開閉可能な液体排出コック42、異物除去フィルタ60、液体貯留供給ポンプが設けられている。
又、クリーニングパン80と貯留液体供給ポンプ52は、廃液排出口53によって連結されており、クリーニングパン80側から廃液排出ポンプ54、異物除去フィルタ60が設けられている。
このように構成されたメンテナンス機構の動作について説明する。
作業者よりプリンタ本体に回復指示が出されると 液体貯留パン50が、インクジェットヘッド1と密着していない状態で、液体排出コック42が開く。
次に、貯留液体供給ポンプ52が駆動し、インクジェットヘッド1の共通インク室15内のインクが異物除去フィルタ60を経由して液体貯留パン50に注入する。液体貯留パン50への注入を続けることにより、異物除去フィルタ60で異物を除去したクリーンなインク9を液体貯留パン50より溢れださせることによって、液体貯留パン50内の異物を除去する。
さらに、液体貯留パン50より溢れたインク9は、液体貯留パン50の下方に設けられたクリーニングパン80に受け止められる。クリーニングパン80に溜まったインク量が、図示されていない検知部によって、予め設定された規定以上の量になった場合には、液体廃液コック42を閉じ、廃液排出ポンプ54を駆動してクリーニングパン80のインク9を廃液排出口53の流路に従って、異物除去フィルタ60及び貯留液体供給ポンプ52を経由して液体貯留パン50に供給する。
このように、液体貯留パン50とクリーニングパン80の間で、異物除去フィルタ60を介して循環させることによって液体貯留パン50内の異物を除去することができる。
所定時間のインクの循環を継続した後、廃液排出ポンプ54を停止する。又、貯留液体供給ポンプ52及び廃液排出ポンプ54には、逆流防止の図示していない一方向弁が設けられているので、液体貯留パン50には、インク9が満たされた状態で保持されている。
次に図示されていないメンテナンスユニットの昇降方向駆動手段によって液体貯留パン50とインクジェットヘッド1は、密着する。
その後、液体排出コック42を開き、貯留液体供給ポンプ52を駆動することによって インクジェットヘッド1のノズル16にインク9を逆流させることによりノズル16に詰まった異物を除去することができる。
以上説明したように第3の実施形態によれば、異物除去動作時には、インクを循環させて逆流させているので、十分な時間及び圧力をかけて異物をノズル16から引き離すことができるので、確実な異物の除去が可能で、回復を確実に実行することができる。
液体貯留パン50のクリーニング時及び異物除去時に使用するインクは、全て循環させて再利用するので、回復動作によりインクの消費をなくすことができる。
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、ノズルの異物詰まりによって不良となったヘッドを容易に回復することができる。ノズル径よりも大きな異物に対しても有効に回復させることが可能なので、非常に高価な記録ヘッド222を交換することが無く、経済的である。