JP5370289B2 - 非水系電池用セパレーター及びそれを用いた非水系電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池等の非水系電池において用いられるセパレーター及び該セパレーターを用いた非水系電池に関する。
近年、電子機器の発達にともない、小型化、軽量化はめざましく、またエネルギー密度が高く繰り返しの充電可能回数が多い二次電池の開発が望まれている。この種の電池として水溶液電解液ではなく有機電解液(非水電解液)を使用するリチウムイオン二次電池等の非水系電池が注目されている。
非水系リチウムイオン二次電池のセパレーターは、電池の発火を防止するためにシャットダウン機能を有している。シャットダウン機能とは、電極が外部短絡し大電流が流れて発熱した場合に、電池温度が180℃まで達してLiが溶融し発火するのを防止する機能で、具体的には、Liが発火する以前にセパレーターが溶融し、その開孔部を目詰まりさせることによって、電池反応を停止させ、発熱を抑えるというものである。
特許文献1には、エチレン−シクロオレフィン共重合体等の熱可塑性高分子材料を、セパレーターとして用いたリチウムイオン二次電池が記載されている。また、特許文献2には、ポリプロピレン等の樹脂繊維からなる不織布に、ポリシクロオレフィン、架橋ポリスチレン等の有機微粒子及びバインダーを含むスラリーを塗布してセパレーターを作製することが記載されている。また、特許文献3には、ポリオレフィン系樹脂等の繊維からなる不織布、無機粒子、及び結合剤を含むセパレーターが記載されている。
特許第4379642号 特開2008−41581号公報 特開2009−123399号公報
しかしながら、発明者らの検討によれば、特許文献1〜3に記載のセパレーターは、セパレーター内に含まれる不純物が多いため、該セパレーターを用いて電池を作製すると、電池の容量維持率と出力特性が低下するという問題があることが分かった。
したがって、本発明は、良好なシャットダウン機能を有し、得られる非水系電池の容量維持率及び出力特性に優れる非水系電池用セパレーター、及び該セパレーターを用いた非水系電池を提供することを目的としている。
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)樹脂繊維を含有してなる不織布と、非導電性フィラーと、結着剤とを含んでなり、
前記樹脂繊維が、2−ノルボルネンを含むノルボルネン系単量体を開環重合して得られる開環重合体の、炭素−炭素二重結合の99%以上を水素添加してなる、融点が110〜145℃の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を主成分とするものである、非水系電池用セパレーター。
(2)前記樹脂繊維の含有量が50〜98質量%であり、前記非導電性フィラーの含有量が1〜50質量%であり、前記結着剤の含有量が0.5〜10質量%である(1)に記載の非水系電池用セパレーター。
(3)前記非導電性フィラーが、平均粒子径5nm〜10μmかつ平均円形度0.90〜0.995の微粒子である(1)または(2)に記載の非水系電池用セパレーター。
(4)正極、負極、電解液及び(1)〜(3)のいずれかに記載のセパレーターを備えてなる非水系電池。
本発明によれば、樹脂繊維を含有してなる不織布と、非導電性フィラーと、結着剤とを含んでなり、前記樹脂繊維が、2−ノルボルネンを含むノルボルネン系単量体を開環重合して得られる開環重合体の、炭素−炭素二重結合の99%以上を水素添加してなる、融点が110〜145℃の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を主成分とするものである非水系電池用セパレーターを用いることで、該樹脂繊維には不純物が少ないことに起因して、容量維持率及び出力特性に優れた非水系電池を得ることができる。また、本発明の非水系電池用セパレーターは、良好なシャットダウン機能を示す。
本発明の非水系電池用セパレーターは、特定の樹脂繊維を含有してなる不織布と、非導電性フィラーと、結着剤とを含む。
不織布
本発明に用いる不織布は、後述する結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を主成分とする樹脂繊維を含有してなる。樹脂繊維は、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
樹脂繊維は、引張強度が高いことが好ましい。JIS L1015に従って測定した好適な引張強度は、1デシテックスあたり、1×10−3N以上、好ましくは1×10−2〜10Nである。引張強度の範囲が1×10−2〜10Nであるときに、形状追従性および形状保持性がもっとも良好である。
本発明に用いる樹脂繊維は、繊度あたりの引張強度が、無延伸の一般的な結晶性オレフィン重合体繊維の引張強度に比べ、高いという特徴を有しており、不織布に好適である。
本発明に用いる不織布は、結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を主成分とする樹脂繊維と、その他の繊維とを組み合わせて形成されたものであってもよい。その他の繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリカーボネート繊維、アクリル繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、炭素繊維などが挙げられる。他の繊維を組み合わせた場合、他の繊維の含有量は、不織布全体の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
本発明に用いる不織布は、上記の樹脂繊維を用いて、公知の方法によって得ることができる。例えば、樹脂繊維を水あるいは接着剤に分散させて抄紙機で漉いて形成する方法(湿式法)、樹脂繊維層(ウェブ)を形成し、繊維同士を結合して得る方法(乾式法)、溶融紡糸した繊維をそのまま堆積させて形成する方法(スパンボンド法)、樹脂を高圧で押し出すと共に熱風で吹き飛ばし極細繊維シートを得る方法(メルトブロー法)、樹脂溶液を口金より噴出させ、独特の網状フィブリルを形成させる方法(フラッシュ紡糸法)、などが挙げられる。
本発明に用いる不織布の好適な製法は、樹脂繊維層(ウェブ)を形成し、繊維同士を結合して得る方法(乾式法)である。樹脂繊維層(ウェブ)の形成には、例えば、繊維を所定の長さに切断し、開綿し、ウェブとよばれる繊維の集積層を紡績用カード機などを用いて形成する方法(カード法)、繊維を空気流で飛散させ降下させて繊維を一定方向またはランダムに並べて形成する方法(エアレイ法(エアレイド法と称されることもある))などがある。その他にトウ開繊法、バーストファイバー法と呼ばれる方法がある。繊維同士の結合方法としては、接着剤で接合する方法(ケミカルボンド法)、低融点ポリマー及び自己溶融繊維で熱によって接合する方法(サーマルボンド法)、特殊針でウェブがほぐれないように糸で縫い込む方法(ニードルパンチ法)、高圧水流で繊維同士を絡ませて接合する方法(ウォーターパンチ法あるいはウォータージェット法)、ウェブを縫合して接合(ステッチボンド法)、超音波融着、エンボス処理など挙げられる。緻密で反発特性に優れた不織布を得るためにはニードルパンチ法が好ましい。
また、後述するセパレーターとして非導電性フィラー含有不織布を用いる際は、樹脂繊維を水あるいは接着剤に分散させて抄紙機で漉いて不織布を形成する方法(湿式法)が好ましい。湿式法において漉き上げた際に樹脂繊維同士を結合させる方法としては、結着剤で接合する方法(ケミカルボンド法)、低融点ポリマー及び自己溶融繊維で熱によって接合する方法(サーマルボンド法)、高圧水流で繊維同士を絡ませて接合する方法(ウォーターパンチ法あるいはウォータージェット法)等が挙げられる。
本発明の非水系電池用セパレーターにおける不織布の含有量は、セパレーターの乾燥重量100質量部に対して、好ましくは50〜100質量部、より好ましくは55〜100質量部、特に好ましくは60〜100質量部である。不織布の含有量が上記範囲であることにより、得られるセパレーターの機械的強度が優れる。
(樹脂繊維)
本発明に用いる樹脂繊維は、2−ノルボルネンを含むノルボルネン系単量体を開環重合して得られる開環重合体の、炭素−炭素二重結合の99%以上を水素添加してなる、融点が110〜145℃の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を主成分とする。なお、本発明における「結晶性」は、示差走査熱量計を用いてDSC測定することにより判定することができる。具体的には、DSC測定によりDSC曲線を得、当該DSC曲線がショルダーを有さず、かつ、1つの最大吸熱ピークを示し、単一の吸熱ピーク温度(融点Tm)を特定できる場合に、「結晶性」であると判定することができる。
本発明に用いる樹脂繊維における結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の含有量は、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは70〜100質量%である。結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の含有量が上記範囲であることにより、本発明の非水系電池用セパレーターを備える非水系電池の容量維持率及び出力特性を向上させることができる。
本発明の非水系電池用セパレーターにおける前記樹脂繊維の含有量は、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは55〜90質量%、特に好ましくは60〜80質量%である。樹脂繊維の含有量が上記範囲であることにより、得られるセパレーターの機械的強度が優れる。
本発明に用いる不織布における樹脂繊維の含有量は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは55〜100質量%、特に好ましくは60〜100質量%である。樹脂繊維の含有量が上記範囲であることにより、本発明の非水系電池用セパレーターを備える非水系電池の容量維持率及び出力特性を向上させることができる。
本発明に用いる樹脂繊維は、後述の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を主成分とする樹脂を紡糸することによって得ることができる。紡糸方法としては、乾式紡糸、湿式紡糸、溶融紡糸、エマルジョン紡糸法を挙げることができる。これらの紡糸法の中でも特に溶融紡糸法が好適である。溶融紡糸法は後述の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を主成分とする樹脂を、融解温度(Tm)以上且つ分解温度未満の温度で、好ましくは90〜300℃の温度で溶融し、これをノズルから押し出し、押し出されたモノフィラメントを冷却しながら巻き取る方法である。紡糸の際に他の樹脂を同時に押し出して、芯鞘構造、サイドバイサイド構造などのような複数層からなる複合繊維を得ることができる。他の樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル樹脂などが上げられる。
<ノルボルネン系単量体>
本発明に用いるノルボルネン系単量体は、オレフィンとのメタセシス反応により直鎖構造を生成する、ノルボルネン構造を有する単量体であり、2−ノルボルネンと、脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含まない置換基を有する2−ノルボルネンとで構成されることが好ましい。開環重合体に分岐構造を導入するには、後述するように分岐剤存在下で重合すればよい。
これらの合計量を100重量%としたとき、2−ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン):90〜100重量%、脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含まない置換基を有する2−ノルボルネン:10〜0重量%からなることが好ましい。2−ノルボルネンの割合は、より好ましくは95〜100重量%、特に好ましくは97〜100重量%であり、オレフィンメタセシス反応しうる置換基以外の置換基を有する2−ノルボルネンの割合は、より好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0〜3重量%である。2−ノルボルネンまたはオレフィンメタセシス反応しうる置換基以外の置換基を有する2−ノルボルネンの割合が上記範囲に含まれることにより、不織布の成形性、樹脂繊維の機械的強度に優れ、樹脂繊維を含むセパレーターの機械的強度に優れる。また、樹脂繊維中に含まれる不純物が少なく、優れた出力特性を示す。
2−ノルボルネンは公知の化合物であり、例えば、シクロペンタジエンとエチレンとを反応させることにより得ることができる。
脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含まない置換基を有する2−ノルボルネンは、2−ノルボルネン環と縮合する環を有しない、脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含まない置換基を有するノルボルネン単量体と、分子内ノルボルネン環に縮合した環構造を有する、脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含まない置換基を有する3環以上の多環式ノルボルネン単量体とに大別される。
上記分子内にノルボルネン環と縮合する環を有しない、脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含まない置換基を有するノルボルネン単量体の具体例としては、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(5−メチル−2−ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−デシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のアルキル基を有するノルボルネン類;
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(5−フェニル−2−ノルボルネン)等の芳香環を有するノルボルネン類;
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン)、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチルプロピオン酸5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチルオクタン酸5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシイソプロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−カルボキシ−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;
5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−カルボキシ−5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;等が挙げられる。
脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含まない置換基を有する3環以上の多環式ノルボルネン単量体は、分子内にノルボルネン環と、該ノルボルネン環と縮合している1つ以上の環とを有するノルボルネン単量体である。
具体的には、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン類;
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンとも言う)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(「1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセン」ともいう。)等の芳香環を有するノルボルネン類;
テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン等の無置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;
8−フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;
8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
8−クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の無置換又はアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−クロロヘキサシクロヘプタデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;等が挙げられる。
脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含まない置換基を有するノルボルネン単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
2−ノルボルネン及び置換基含有ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体; シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状ジエン及びその誘導体;等が挙げられる。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物は一部分岐構造を有することが好ましい。この分岐構造は、分岐剤存在下で、ノルボルネン系単量体を開環重合することにより生成させることができる。結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物が分岐構造を有することで、セパレーターの可とう性を向上させることができ、融点の制御が可能である。
分岐剤は、カルベン錯体触媒存在下、2種のオレフィンの結合の組み替えが起こり、新たなオレフィンが生成するオレフィンメタセシス反応に寄与する。分岐剤は、脂肪族性の炭素−炭素二重結合を有するものであり、シクロアルカン構造又はシクロアルケン構造を有するものである。具体的には、(1)分子内に2つ以上のシクロアルケン構造を有する化合物、(2)分子内にシクロアルケン構造及び脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含む置換基を1つ以上有する化合物、(3)脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含む置換基を分子内に3つ以上有するシクロアルカン化合物である。
脂肪族性の炭素−炭素二重結合を含む置換基としては、炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜4のアルケニル基が挙げられる。具体的には、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、5−ヘプチル基等である。これらの中でも、より流動性に優れるノルボルネン系開環重合体水素化物が得られることから、ビニル基とアリル基が好ましい。
また、これらのアルケニル基は、任意の基を介して母核に結合していても良く、任意の基を介して母核に結合し環構造を形成してもよい。任意の基は、具体的には、アルキレン基、−O−、−S−、−O−CO−、−O−CH−O−CO−、フェニレン等が挙げられる。任意の基を構成する元素の数は、より流動性に優れるノルボルネン系開環重合体水素化物が得られることから、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下であり、また、アルキル基以外の二価の基を有しないものが好ましい。
このような分岐剤としては、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(VNB)、5−アリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニルオキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−アリル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルオキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のようなオレフィンメタセシス反応しうる置換基を有するノルボルネン構造を有する単量体;
exo−trans−exo−ペンタシクロ[8.2.1.14,7.02,9.03,8]テトラデカ−5,11−ジエン(以下、「NB−dimer」ということがある。)、4,4a,4b,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1,4:5,8−ビスメタノ−1H−フルオレン、1α,4α:5α,8α−ジメタノ−1,4,4a,5,8,8a,9,9a,10,10a−デカヒドロアントラセン、5,5’−ビ(ノルボルナ−2−エン)、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4,9−ジエン、1,4,4a,5,8,8a,9,9a,10,10a−デカヒドロ−1,4:5,8:9,10−トリメタノアントラセン等のような分子内に2つのノルボルネン構造を有する単量体;
1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、4−(2−プロペニル)−1,6−ヘプタジエン、3−ビニル−1,4−ペンタジエン、3−ビニル−1,5−ヘキサジエン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2,4,5−テトラビニルベンゼン等のような分子内に3つ以上の末端炭素−炭素二重結合を有する単量体;等が挙げられる。
分岐剤を用いた開環重合は、例えば、WO2009/107784号公報に特に記載された機構で起こり、分岐ポリマーが生成される。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の分岐指数は、好ましくは0.3〜0.98、より好ましくは0.40〜0.95である。開環重合における分岐剤の配合量を適宜調節することにより、所望の分岐指数を有する結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を得ることができる。分岐指数を0.3以上とすることにより、樹脂繊維を有機溶剤に溶解する際のゲル化を抑制することができる。また、分岐指数を0.98以下とすることにより、セパレーターの可とう性を保持することができる。
分岐指数は、g=[η]Bra/[η]Linによって定義される。
[η]Braは分岐状の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の極限粘度、[η]Linは同一の重量平均分子量である直鎖状の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の極限粘度である。ここで極限粘度[η]は、シクロヘキサンに溶解した試料を60℃で測定した値である。
分岐剤の配合量は、ノルボルネン系単量体の合計100モル%としたときに、好ましくは、0.01〜5モル%、より好ましくは0.05〜5モル%、特に好ましくは0.1〜5モル%である。
<開環重合>
ノルボルネン系単量体の開環共重合は、無溶媒又は適当な溶媒中で、メタセシス重合触媒の存在下に実施することができる。
ノルボルネン系単量体の開環共重合に関しては、例えば、WO2009/107784号公報に特に記載された方法で行うことができる。
<水素添加反応>
得られたノルボルネン系開環重合体は、次の水素添加反応工程へ供される。後述するように、開環重合を行った反応溶液に水素添加触媒を添加して、ノルボルネン系開環重合体を単離することなく、連続的に水素添加反応を行うこともできる。
ノルボルネン系開環重合体の水素添加反応は、ノルボルネン系開環重合体の主鎖又は/及び側鎖に存在する炭素−炭素二重結合に水素添加する反応である。
この水素添加反応は、ノルボルネン系開環重合体の不活性溶媒溶液に水素添加触媒を添加し、反応系内に水素を供給して行う。
水素添加触媒としては、オレフィン化合物の水素添加に際して一般に使用されているものであれば、均一系触媒、不均一系触媒のいずれも使用することができる。得られる重合体中の残留金属の除去等を考慮すると、不均一系触媒が好ましい。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネ−ト/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、又はこれらの金属をカ−ボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒系が挙げられる。
触媒の使用量は、ノルボルネン系開環重合体100質量部に対し、通常0.05〜10質量部である。
水素添加反応に用いる不活性有機溶媒としては、前述した開環重合において用いることができる有機溶媒として例示したものと同様の、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン系芳香族炭化水素類、含窒素炭化水素類、エーテル類等が挙げられる。
水素添加反応の温度は、使用する水素添加触媒によって適する条件範囲が異なるが、通常、−20〜+300℃、好ましくは0〜+250℃である。水素添加温度が低すぎると反応速度が遅くなるおそれがあり、高すぎると副反応が起こる可能性がある。
水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。水素圧力が低すぎると水素添加速度が遅くなり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となるので好ましくない。
水素添加反応終了後は、反応溶液から水素添加触媒等を濾別し、濾別後の重合体溶液から溶媒等の揮発成分を除去することにより、目的とする結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を得ることができる。また、水素添加反応液に、必要に応じて酸化防止剤(安定剤)、核剤、発泡剤、難燃剤、熱可塑性樹脂や軟質重合体等のその他の重合体、滑剤等の配合剤や、染料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、ワックス等の樹脂工業分野で通常使用されるその他の配合剤を添加し、必要に応じて加熱した後、濾別を行うこともできる。
溶媒等の揮発成分を除去する方法としては、凝固法や直接乾燥法等の公知の方法を採用することができる。
凝固法は、重合体溶液を重合体の貧溶媒と混合することにより、重合体を析出させる方法である。用いる貧溶媒としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等の極性溶媒が挙げられる。
凝固して得られた粒子状の成分は、例えば、真空中又は窒素中若しくは空気中で加熱して乾燥させて粒子状にするか、さらに必要に応じて溶融押出機から押し出してペレット状にすることができる。
直接乾燥法は、重合体溶液を減圧下加熱して溶媒を除去する方法である。この方法には、遠心薄膜連続蒸発乾燥機、掻面熱交換型連続反応器型乾燥機、高粘度リアクタ装置等の公知の装置を用いて行うことができる。真空度や温度はその装置によって適宜選択され、限定されない。
以上のようにして、本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を得ることができる。
<結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物>
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物は、ノルボルネン系開環重合体中の炭素−炭素二重結合の水素添加率が通常99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.9%以上である。上記の範囲にあると、結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物中に残留二重結合がほとんど含まれないため、電池の充放電時の耐酸化性に優れる。水素添加率が上記範囲未満であると、電池の充放電時の電気化学的酸化に対する耐性が低下し、サイクル寿命特性等の電池特性が低下する。
結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素添加率は、溶媒に重クロロホルムを用い、H−NMRにより測定して求めることができる。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の異性化率は、通常25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。異性化率を25%以下とすることで、結晶性が付与され、セパレーターの耐熱性及び機械的強度が適正な範囲に保たれる。
異性化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、13C−NMRにより測定した33.0ppmピーク積分値/(31.8ppmピーク積分値+33.0ppmピーク積分値)×100から算出することができる。13C−NMRスペクトルにおいて、31.8ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネン由来の繰り返し単位のシス体由来のもの、33.0ppmピークは、該重合体中の2−ノルボルネン由来の繰り返し単位のトランス体由来のものである。
異性化率を上記範囲にするためには、ノルボルネン系開環重合体の水素添加反応において、反応温度を、好ましくは100〜230℃、より好ましくは130〜220℃、特に好ましくは150〜210℃とし、かつ、使用する水素添加触媒の使用量を、ノルボルネン系開環重合体100質量部に対し、好ましくは0.2〜5質量部、より好ましくは0.2〜2質量部とする。このような範囲にあると、水素添加反応速度と得られるポリマーの耐熱性のバランスに優れ、好適である。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により直角度レーザー光散乱光度測定法で測定した重量平均分子量(Mw)で、好ましくは50,000〜200,000、より好ましくは70,000〜180,000、さらに好ましくは80,000〜150,000である。重量平均分子量(Mw)が50,000未満であると、セパレーターの機械特性が低下する。また、重量平均分子量(Mw)が200,000を超えると、樹脂繊維の有機溶剤への溶解性が低下する。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物は、その分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.5〜10.0、より好ましくは2.0〜9.0、さらに好ましくは3.0〜8.0、特に好ましくは4.0〜7.0である。分子量分布(Mw/Mn)が1.5未満であると、セパレーターの機械特性が低下する。また、分子量分布(Mw/Mn)が10.0を超えると、セパレーターの可とう性が低下する。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の融点は、通常110〜145℃、好ましくは120〜145℃、より好ましくは130〜145℃である。結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の融点が110℃未満であると、結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の耐熱性が低下するため、樹脂繊維の強度が低下すると共に、電池のサイクル寿命特性が低下する。また、結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の融点が145℃を超えると、樹脂繊維の紡糸加工が難しくなると共に、セパレーターの可とう性が低下する。結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の融点は、ノルボルネン系開環重合体水素化物の、分子量、分子量分布、異性化率等によって変化する。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の、230℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートは、通常15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下である。また、280℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートは、通常100g/10分以下、好ましくは70g/10分以下である。メトロフローレートがこの範囲外であると、セパレーターの可とう性が低下する。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物は、異物が少ないことが好ましい。金属残渣や異物等は、電池特性の低下を招くおそれがある。重合反応後又は水素添加反応後に、孔径が0.2μm以下のフィルタにて重合体溶液を濾過することによって金属残査や異物等を精密に取り除くことができる。
本発明に用いる結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物は、融点を有する重合体、すなわち結晶構造を形成する重合体であるので、成形体内部に結晶部を形成(結晶化)し、これと非晶部とが相俟ってセパレーターの機械的特性が向上する。
非導電性フィラー
本発明に用いる非導電性フィラーは、非水系電池(リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池など)の使用環境下で安定に存在し、電気化学的にも安定であることが望まれる。非導電性フィラーとしては、例えば、各種の無機粒子や有機粒子を使用することができる。電池の性能に悪影響を及ぼす金属のコンタミネーションが少ない粒子を低コストで製造できる点からは、有機粒子が好ましい。
非導電性フィラーの平均粒子径は、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは10nm〜5μm、特に好ましくは50nm〜2μmである。非導電性フィラーの平均粒子径を上記範囲とすることにより、後述するセパレーター形成用スラリー及びセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーの分散状態の制御がしやすくなる。また、樹脂繊維を含有してなる不織布へのセパレーター形成用スラリーの塗布性が向上する。さらにまた、本発明のセパレーターの空隙のコントロール性に優れるため、均質な所定厚みのセパレーターの製造が容易になる。非導電性フィラーの平均粒子径が5nm未満であると、セパレーターとして十分な膜厚を得ることができず、また、平均粒子径が10μmを超えると、セパレーターが厚くなり、内部抵抗が増加する要因となる。なお、本発明における平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ粒子像100個の径を測定し、その算術平均値として算出される数平均粒子径である。
非導電性フィラーの平均円形度は、好ましくは0.90〜0.995、より好ましくは0.93〜0.995である。非導電性フィラーの平均円形度を上記範囲とすることにより、セパレーター中に等間隔の空隙を成形できるため、セパレーターを均質な厚みとすることができる。非導電性フィラーの平均円形度が0.90未満であるとセパレーター中の空隙が不均一となる怖れがあり、また、平均円形度が0.995を超えるとセパレーターから非導電性フィラーが脱離する怖れがある。
本発明の非水系電池用セパレーターにおける非導電性フィラーの含有量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは10〜45質量%、特に好ましくは20〜40質量%である。非導電性フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、得られるセパレーターの機械的強度が高くなり、加工時に高速でのセパレーターの巻回が可能になる。また、セパレーターの長期保存特性が良好になる。
(有機粒子)
非導電性フィラーとして有機粒子を用いる場合、その融解温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは180℃以上である。有機粒子の融解温度を上記範囲内とすることで、熱暴走時に不織布が溶融した際、有機粒子が形状を維持することにより、短絡せずに内部抵抗が上昇し、優れたシャットダウン特性を示すと共に本発明のセパレーターに形状保持効果を持たせることができる。
有機粒子としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子粒子や、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子粒子などが例示できる。また、これらの有機粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
有機粒子は、水系媒体中にて、有機粒子を構成するモノマーを、分散重合、乳化重合、懸濁重合あるいはマイクロサスペンジョン重合して粒子を直接に得る方法により得ることができる。
(無機粒子)
非導電性フィラーに用いる無機粒子としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン、BaTiO、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化硼素等の窒化物粒子;シリコーン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子等が用いられる。これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等されていてもよく、また単独でも2種以上の組合せからなるものでもよい。これらの中でも、非水系電池を製造した際の電解液中での安定性と電位安定性の観点から酸化物粒子であることが好ましい。
また、カーボンブラック、グラファイト、SnO、ITO、金属粉末などの導電性金属及び導電性を有する化合物や酸化物の微粉末の表面を、非電気伝導性の物質で表面処理することによって、電気絶縁性を持たせて使用することも可能である。これらの非導電性粒子は、2種以上併用して用いてもかまわない。
非導電性粒子として、金属異物の含有量が100ppm以下のものを用いることが好ましい。金属異物または金属イオンが多く含まれる非導電性粒子を用いると、後述するセパレーター形成用スラリーまたはセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーにおいて、前記金属異物又は金属イオンが溶出し、これが該スラリー中のポリマーとイオン架橋を起こし、該スラリーが凝集し、結果としてセパレーターの多孔性が下がり出力特性が悪化する恐れがある。前記金属としては、特にイオン化しやすいFe、NiおよびCr等の含有が最も好ましくない。従って、非導電性粒子中の金属含有量としては好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。上記含有量が少ないほど電池特性の劣化が起こりにくくなる。ここでいう「金属異物」とは、非導電性粒子以外の金属単体を意味する。非導電性粒子中の金属異物の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて測定することができる。
結着剤
結着剤は、非導電性フィラーを不織布に保持するための成分であり、通常結着性を有するバインダー(重合体)粒子が分散媒(水または有機溶媒)に溶解または分散された溶液または分散液の状態で用いられる(以下、これらを総称して「バインダー分散液」と記載することがある)。本発明においては、環境の観点に優れることから分散媒として水を用いることが好ましい。また、分散媒として有機溶媒を用いる場合、N−メチルピロリドン(NMP)等の有機溶剤が用いられる。
バインダー分散液が水系の場合(分散媒として水を用いた場合。以下において「重合体水分散液」と記載することがある。)は、重合体としては、例えば、ジエン系重合体、アクリル系重合体、フッ素系重合体、シリコーン系重合体などが挙げられる。非導電性フィラーや不織布との結着性および得られるセパレーターの強度や柔軟性に優れるため、ジエン系重合体、又はアクリル系重合体が好ましい。また、セパレーターは正極、負極とも接していることから高い酸化還元安定性が求められており、特に正極での酸化安定性が高いことからアクリル系重合体がもっとも好ましい。
(ジエン系重合体)
ジエン系重合体とは、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンを重合してなる単量体単位を含む重合体である。ジエン系重合体中の共役ジエンを重合してなる単量体単位の割合は通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。重合体としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエンの単独重合体;共役ジエンと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。前記共重合可能な単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類; N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物が挙げられる。
(アクリル系重合体)
アクリル系重合体とは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを重合してなる単量体単位を含む重合体である。アクリル系重合体中のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを重合してなる単量体単位の割合は、通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。重合体としては、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの単独重合体、これと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。前記共重合可能な単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;アクリルアミド、N−メチロールアクエイルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類; N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物が挙げられる。
また、バインダー分散液が非水系の場合(分散媒として有機溶媒を用いた場合)は、バインダー分散液が水系の場合で用いられるジエン系重合体、アクリル系重合体、フッ素系重合体、シリコーン系重合体などを有機溶媒中に分散又は溶解させることで使用することができる。更に、前述のバインダー分散液が水系の場合で用いられる重合体に加えて、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリアクリロニトリル、ポリメタアクリロニトリル、ポリ酢酸アリル、ポリスチレンなどのビニル系重合体;ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリ環状チオエーテル、ポリジメチルシロキサンなど主鎖にヘテロ原子を含むエーテル系重合体;ポリラクトン、ポリ環状無水物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの縮合エステル系重合体;ナイロン6、ナイロン66、ポリ−m−フェニレンイソフタラミド、ポリ−p−フェニレンテレフタラミド、ポリピロメリットイミドなどの縮合アミド系重合体などをN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させたものが挙げられる。
本発明に用いる結着剤は非水系、水系のどちらでも用いることが可能であるが、分散媒として水を用いた水系結着剤が好ましく、例えば、上記単量体を水中で乳化重合することにより製造できる。また、非水系結着剤は、前記水系結着剤を有機溶媒で置換することにより製造できる。
本発明に用いる結着剤は、製造工程において、バインダー分散液に含まれる粒子状の金属を除去する粒子状金属除去工程を経て得られたものであることが好ましい。結着剤に含まれる粒子状金属成分の含有量が10ppm以下であることにより、後述するセパレーター形成用スラリーまたはセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーにおけるポリマー間の経時での金属イオン架橋を防止し、粘度上昇を防ぐことができる。さらに電池の内部短絡や充電時の溶解・析出による自己放電増大の懸念が少なく、電池のサイクル特性や安全性が向上する。
前記粒子状金属除去工程におけるバインダー分散液から粒子状の金属成分を除去する方法は特に限定されず、例えば、濾過フィルターによる濾過により除去する方法、振動ふるいにより除去する方法、遠心分離により除去する方法、磁力により除去する方法等が挙げられる。中でも、除去対象が金属成分であるため磁力により除去する方法が好ましい。磁力により除去する方法としては、金属成分が除去できる方法であれば特に限定はされないが、生産性および除去効率を考慮すると、好ましくは結着剤の製造ライン中に磁気フィルターを配置することで行われる。
分散媒として水を用いた場合のバインダー分散液(重合体水分散液)における重合体の平均粒子径は、好ましくは50〜500nm、より好ましくは70〜400nmである。平均粒子径が上記範囲であると得られるセパレーターの強度および柔軟性が良好となる。
重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常−150〜+100℃、好ましくは−50〜+25℃、さらに好ましくは−35〜+5℃の範囲である。重合体のTgがこの範囲にあるときに、セパレーターの柔軟性及び捲回性などの特性が高度にバランスされ好適である。
重合体水分散液の固形分濃度は、通常15〜70質量%であり、20〜65質量%が好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。固形分濃度がこの範囲であるとセパレーター形成用スラリーまたはセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリー製造における作業性が良好である。
本発明の非水系電池用セパレーターにおける結着剤の含有量は、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜9質量%、特に好ましくは2〜8質量%である。結着剤の含有量が前記範囲であることにより、電池反応を阻害しないため、電池の内部抵抗の上昇を防止することができると共に、非導電性フィラーの脱落(粉落ち)を防ぐことができる。
その他の成分
本発明の非水系電池用セパレーターには、上記成分のほかに、さらに任意の成分が含まれていてもよい。かかる任意の成分としては、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、上記結着剤以外のその他の結着剤、増粘剤、消泡剤や、電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤等の成分を挙げることができる。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が例示される。分散剤は用いる非導電性フィラーに応じて選択される。セパレーター中の分散剤の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には10重量%以下である。
レベリング剤としてはアルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤を混合することにより、後述するセパレーター形成用スラリーを、樹脂繊維を含有してなる不織布に塗工する際に発生するはじきを防止することができ、また、セパレーターの平滑性を向上させることができる。
酸化防止剤としてはフェノール化合物、ハイドロキノン化合物、有機リン化合物、硫黄化合物、フェニレンジアミン化合物、ポリマー型フェノール化合物等が挙げられる。ポリマー型フェノール化合物は、分子内にフェノール構造を有する重合体であり、重量平均分子量が200〜1000、好ましくは600〜700のポリマー型フェノール化合物が好ましく用いられる。酸化防止剤を混合することにより、セパレーターの保存安定性に優れる。
その他の結着剤としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体、共役ジエンから導かれるモノマー単位と芳香族ビニルから導かれるモノマー単位とを含むジエン系軟質重合体などを用いることができる。その他の結着剤を混合することにより、セパレーター中に含まれる非導電性フィラー及び樹脂繊維同士の接着性に優れる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体水素化物などが挙げられる。増粘剤の使用量がこの範囲であると、樹脂繊維を含有してなる不織布への後述するセパレーター形成用スラリーの塗工性が良好である。本発明において、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」又は「変性ポリ」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。後述するセパレーター形成用スラリー及びセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーの溶媒が水である時に、増粘剤を混合することで、得られるスラリーの塗工性に優れ、均一性に優れたセパレーターを得ることができる。
消泡剤としては、金属石鹸類、ポリシロキサン類、ポリエーテル類、高級アルコール類、パーフルオロアルキル類などが用いられる。消泡剤を混合することにより、結着剤の消泡工程を短縮することができる。
電解液添加剤は、後述する合剤スラリー中及び電解液中に使用されるビニレンカーボネートなどを用いることができる。電解液添加剤を混合することにより、電池のサイクル寿命が優れる。
その他には、フュームドシリカやフュームドアルミナなどのナノ微粒子が挙げられる。前記ナノ微粒子を混合することによりセパレーター形成用スラリーまたはセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーのチキソ性をコントロールすることができ、さらにそれにより得られるセパレーターのレベリング性を向上させることができる。
上記任意の成分の非水系電池用セパレーター中の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には各成分10重量%以下であり、任意の成分の含有割合の合計が、40重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
(セパレーターの製造方法)
本発明の非水系電池用セパレーターを製造する方法としては、(1)非導電性フィラー、結着剤及び溶媒を含むセパレーター形成用スラリーを、樹脂繊維を含有してなる不織布上に塗布し、次いで乾燥する方法;(2)非導電性フィラー、結着剤及び溶媒を含むセパレーター形成用スラリーを、樹脂繊維を含有してなる不織布に浸漬後、これを乾燥する方法;(3)樹脂繊維、非導電性フィラー及び結着剤を溶媒中に分散してセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーを得、その後漉き上げることにより本発明のセパレーターとして用いることができる非導電性フィラー含有不織布を製造する方法;が挙げられる。この中でも、(1)セパレーター形成用スラリーを不織布に塗布し、次いで乾燥する方法と(3)セパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーを漉き上げることによりセパレーターを形成する方法が、(1)はセパレーターの厚みを制御しやすいため厚み精度に優れることから好ましく、(3)はセパレーターの厚みを薄くすることができ、更に非導電性フィラーをセパレーター中に均一に存在させることから膜強度が向上するため好ましい。その中でも特に(3)が最も好ましい。
(セパレーター形成用スラリー及びセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリー)
セパレーター形成用スラリーは、固形分として上述の非導電性フィラー、結着剤及び任意の成分を、溶媒に均一に分散したものである。また、セパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーは、固形分として上述の樹脂繊維、非導電性フィラー、結着剤及び任意の成分を、溶媒に均一に分散したものである。溶媒としては、固形分(樹脂繊維、非導電性フィラー、結着剤及び任意の成分)、を均一に分散し得るものであれば特に制限されない。上記スラリーに用いる溶媒としては、水および有機溶媒のいずれも使用できる。
有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのケトン類;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素など塩素系脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類があげられる。
これらの溶媒は、単独で使用しても、これらを2種以上混合して混合溶媒として使用してもよい。これらの中でも特に、スラリーの分散性にすぐれ、沸点が低く揮発性が高い溶媒が、短時間でかつ低温で除去できるので好ましい。具体的には、アセトン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、キシレン、水、若しくはN−メチルピロリドン、またはこれらの混合溶媒が好ましい。
スラリーの固形分濃度は、該スラリーの塗布、浸漬が可能な程度でかつ、流動性を有する粘度になる限り特に限定はされないが、一般的には10〜50重量%程度である。固形分以外の成分は、乾燥の工程により揮発する成分であり、前記溶媒に加え、例えば、非導電性フィラーや結着剤の調製及び添加に際し、これらを溶解または分散させていた媒質をも含む。
セパレーター形成用スラリーは、本発明の非水系電池用セパレーターを形成するためのものであるので、該スラリーの固形分全量中の、非導電性フィラー及び結着剤の含有割合は、当然ながら、本発明のセパレーターについて上述した通りとされる。即ち、非導電性フィラーの含有割合は1〜50質量%が好ましく、結着剤の含有割合は0.5〜10質量%が好ましい。また、セパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーの固形分全量中の、樹脂繊維の含有割合は50〜98質量%が好ましく、非導電性フィラーの含有割合は1〜50質量%が好ましく、結着剤の含有割合は0.5〜10質量%が好ましい。
また、上記スラリーには、非導電性フィラー、結着剤及び溶媒のほかに、さらに前述するセパレーター中に含まれてもよいその他の成分が含まれていてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
(セパレーター形成用スラリー及びセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーの製法)
セパレーター形成用スラリーの製法は、特に限定はされず、上記非導電性フィラー、結着剤、溶媒、及び必要に応じ添加される任意の成分を混合して得られる。また、セパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーの製法は、特に限定されず、上記樹脂繊維、非導電性フィラー、結着剤、溶媒、及び必要に応じ添加される任意の成分を混合して得られる。本発明においては上記成分を用いることにより混合方法や混合順序にかかわらず、非導電性フィラーが高度に分散されたセパレーター用スラリーを得ることができる。
混合装置は、上記成分を均一に混合できる装置であれば特に限定されず、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどを使用することができるが、中でも高い分散シェアを加えることができる、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置を使用することが特に好ましい。
スラリーの粘度は、均一塗工性、スラリー経時安定性の観点から、好ましくは10〜10,000mPa・S、更に好ましくは50〜500mPa・sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
本発明のセパレーターは、前述の(1)〜(3)の方法で製造されるが、その詳細な製造方法を以下に説明する。
(1)の方法では、セパレーター形成用スラリーを、樹脂繊維を含有してなる不織布上に塗布し、乾燥することで本発明のセパレーターは製造される。該スラリーを不織布上に塗布する方法は特に制限されず、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。中でも、均一なセパレーターが得られる点でグラビア法が好ましい。
乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥温度は、使用する溶媒の種類によって変えることができる。溶媒を完全に除去するために、例えば、N−メチルピロリドン等の揮発性の低い溶媒を用いる場合には送風式の乾燥機で120℃以上の高温で乾燥させることが好ましい。逆に揮発性の高い溶媒を用いる場合には100℃以下の低温において乾燥させることもできる。
(2)の方法では、セパレーター形成用スラリーを不織布に浸漬し、乾燥することで本発明のセパレーターは製造される。該スラリーを不織布に浸漬する方法は特に制限されず、例えば、ディップコーター等でディップコーティングすることで浸漬することができる。
乾燥方法としては、上述の(1)の方法での乾燥方法と同じ方法が挙げられる。
(3)の方法では、セパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーを網状のネット等で漉き上げ、乾燥することで本発明のセパレーターは製造される。漉き上げた際に樹脂繊維同士を結合させる方法としては、結着剤で接合する方法(ケミカルボンド法)、低融点ポリマー及び自己溶融繊維で熱によって接合する方法(サーマルボンド法)、高圧水流で繊維同士を絡ませて接合する方法(ウォーターパンチ法あるいはウォータージェット法)等が挙げられるが、本発明のセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリー中に結着剤が含まれることから、漉き上げることにより結着剤により接合されるケミカルボンド法で接合する方法が好適である。
乾燥方法としては、上述の(1)の方法での乾燥方法と同じ方法が挙げられる。
(1)〜(3)の方法で得られたセパレーターは、次いで、必要に応じ、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により膜厚を均一にすることもできる。ただし、この際、過度に加圧処理を行うと、セパレーターの空隙率が損なわれることがあるため、圧力および加圧時間を適宜に制御する。
セパレーターの厚さは、通常0.5〜40μm、好ましくは1〜30μm、更に好ましくは1〜10μmである。この範囲であると電池内でのセパレーターによる抵抗が小さくなり、また電池作成時の作業性に優れる。
上記のように製造された本発明の非水系電池用セパレーターは、樹脂繊維を含有してなる不織布の含有割合が好ましくは50〜98質量%であり、非導電性フィラーの含有割合が好ましくは1〜50質量%であり、結着剤の含有割合が好ましくは0.5〜10質量%である。
(非水系電池)
本発明の非水系電池は、正極、負極、電解液及び上記のセパレーターを備えてなる。非水系電池としては、リチウム金属電池やリチウムイオン二次電池等が挙げられるが、長期サイクル特性の向上・出力特性の向上等の性能向上が最も求められていることから用途としてはリチウムイオン二次電池が好ましい。以下、リチウムイオン二次電池に使用する場合について説明する。
正極、負極は、一般に、電極活物質を必須成分として含む電極活物質層が、集電体に付着してなる。
(電極活物質)
リチウムイオン二次電池用電極に用いられる電極活物質は、電解質中で電位をかける事により可逆的にリチウムイオンを挿入放出できるものであればよく、無機化合物でも有機化合物でも用いることができる。
リチウムイオン二次電池正極用の電極活物質(正極活物質)は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVOなどのリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13などの遷移金属酸化物が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。正極活物質の粒子径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、50%体積累積径が、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μmである。50%体積累積径がこの範囲であると、充放電容量が大きい二次電池を得ることができ、かつ電極用スラリーおよび電極を製造する際の取扱いが容易である。50%体積累積径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる。
リチウムイオン二次電池負極用の電極活物質(負極活物質)としては、たとえば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維などの炭素質材料、ポリアセン等の導電性高分子などがあげられる。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の金属やこれらの合金、前記金属又は合金の酸化物や硫酸塩が用いられる。加えて、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコーン等を使用できる。電極活物質は、機械的改質法により表面に導電付与材を付着させたものも使用できる。負極活物質の粒径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、初期効率、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、50%体積累積径が、通常1〜50μm、好ましくは15〜30μmである。
本発明において、電極活物質層は電極活物質の他に、結着剤(以下、「活物質層用結着剤」と記載することがある。)を含むことが好ましい。活物質層用結着剤を含むことにより電極中の電極活物質層の結着性が向上し、電極の捲回時等の工程上においてかかる機械的な力に対する強度が上がり、また電極中の電極活物質層が脱離しにくくなることから、脱離物による短絡等の危険性が小さくなる。
活物質層用結着剤としては様々な樹脂成分を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
更に、下に例示する軟質重合体も活物質層用結着剤として使用することができる。
ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体;
ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;
ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン系軟質重合体;
ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性により官能基を導入したものであってもよい。
電極活物質層における活物質層用結着剤の量は、電極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜4質量部、特に好ましくは0.5〜3質量部である。電極活物質層における活物質層用結着剤量が前記範囲であることにより、電池反応を阻害せずに、電極から活物質が脱落するのを防ぐことができる。
活物質層用結着剤は、電極を作製するために溶液もしくは分散液として調製される。その時の粘度は、通常1〜300,000mPa・Sの範囲、好ましくは50〜10,000mPa・Sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
本発明において、電極活物質層には、導電性付与材や補強材を含有していてもよい。導電付与材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボンを使用することができる。黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などが挙げられる。補強材としては、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。導電性付与材を用いることにより電極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、リチウムイオン二次電池に用いる場合に放電レート特性を改善することができる。導電性付与材の使用量は、電極活物質100質量部に対して通常0〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。
電極活物質層は、これ単独で存在していてもよいが、集電体に付着した形で存在している。
電極活物質層は、電極活物質及び溶媒を含むスラリー(以下、「合剤スラリー」と呼ぶことがある。)を集電体に付着させて形成することができる。
溶媒としては、電極活物質層に活物質層用結着剤を含有させる場合は、これを溶解または粒子状に分散するものであればよいが、溶解するものが好ましい。活物質層用結着剤を溶解する溶媒を用いると、活物質層用結着剤が表面に吸着することにより電極活物質などの分散が安定化する。
合剤スラリーは、溶媒を含有し、電極活物質、活物質層用結着剤及び導電性付与材を分散させる。溶媒としては、前記結着剤を溶解し得るものを用いると、電極活物質や導電性付与材の分散性に優れるので好ましい。活物質層用結着剤が溶媒に溶解した状態で用いることにより、活物質層用結着剤が電極活物質などの表面に吸着してその体積効果により分散を安定化させていると推測される。
合剤スラリーに用いる溶媒としては、水および有機溶媒のいずれも使用できる。有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類があげられる。これらの溶媒は、単独または2種以上を混合して、乾燥速度や環境上の観点から適宜選択して用いることができる。中でも、本発明においては水への電極膨張特性の観点から、非水性溶媒を用いることが好ましい。
合剤スラリーには、さらに増粘剤などの各種の機能を発現する添加剤を含有させることができる。増粘剤としては、合剤スラリーに用いる有機溶媒に可溶な重合体が用いられる。具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体水素化物などが用いられる。
さらに、合剤スラリーには、上記成分の他に、電池の安定性や寿命を高めるため、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、1,6−ジオキサスピロ[4,4]ノナン−2,7−ジオン、12−クラウン−4−エーテル等が使用できる。また、これらは後述する電解液に含有せしめて用いてもよい。
合剤スラリーにおける有機溶媒の量は、電極活物質や結着剤などの種類に応じ、塗工に好適な粘度になるように調整して用いる。具体的には、合剤スラリー中の、電極活物質、結着剤および他の添加剤を合わせた固形分の濃度が、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%となる量に調整して用いられる。
合剤スラリーは、電極活物質、必要に応じ添加される活物質層用結着剤、導電性付与材、その他の添加剤、および有機溶媒を、混合機を用いて混合して得られる。混合は、上記の各成分を一括して混合機に供給し、混合してもよい。合剤スラリーの構成成分として、電極活物質、活物質層用結着剤、導電性付与材及び増粘剤を用いる場合には、導電性付与材および増粘剤を有機溶媒中で混合して導電性付与材を微粒子状に分散させ、次いで活物質層用結着剤、電極活物質を添加してさらに混合することがスラリーの分散性が向上するので好ましい。混合機としては、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを用いることができるが、ボールミルを用いると導電性付与材、電極活物質の凝集を抑制できるので好ましい。
合剤スラリーの粒度は、好ましくは35μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。スラリーの粒度が上記範囲にあると、導電性付与材の分散性が高く、均質な電極が得られる。
集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有するとの観点から、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が好ましい。中でも、非水電解質リチウムイオン二次電池の正極用としてはアルミニウムが特に好ましく、負極用としては銅が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、合剤の接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、電極合剤層の接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
電極活物質層の製造方法は、前記集電体の少なくとも片面、好ましくは両面に電極活物質層を層状に結着させる方法であればよい。例えば、前記合剤スラリーを集電体に塗布、乾燥し、次いで、120℃以上で1時間以上加熱処理して電極活物質層を形成する。合剤スラリーを集電体へ塗布する方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。
次いで、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により電極の合剤の空隙率を低くすることが好ましい。空隙率の好ましい範囲は5〜15%、より好ましくは7〜13%である。空隙率が高すぎると充電効率や放電効率が悪化する。空隙率が低すぎる場合は、高い体積容量が得難かったり、合剤が剥がれ易く不良を発生し易いといった問題を生じる。さらに、硬化性の重合体を用いる場合は、硬化させることが好ましい。
電極活物質層の厚みは、正極、負極とも、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜250μmである。
(電解液)
電解液としては、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に制限はないが、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiが好ましい。これらは、二種以上を併用してもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類が好ましい。用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液中における支持電解質の濃度は、通常1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%である。また、支持電解質の種類に応じて、通常0.5〜2.5モル/Lの濃度で用いられる。支持電解質の濃度が低すぎても高すぎてもイオン導電度は低下する傾向にある。用いる電解液の濃度が低いほど重合体粒子の膨潤度が大きくなるので、電解液の濃度によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
リチウムイオン二次電池の具体的な製造方法としては、例えば、正極と負極とを本発明のセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。また、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
(実施例)
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、本実施例における部および%は、特記しない限り質量基準である。
実施例および比較例において、各種物性は以下のように評価する。
<不純物量の測定>
ICPによりセパレーター中の金属元素の濃度を測定する。金属元素の濃度が1ppm以下の場合を「良好」とし、1ppmを超えた場合を「不良」とした。
<電池特性:シャットダウン特性>
得られたコイン型のリチウムイオン二次電池を用いて、25℃から200℃まで10℃/分で昇温し、180℃での電気抵抗値を測定する。電気抵抗値が大きい方がシャットダウン特性に優れている。
A:5,000Ω/cm以上
B:1,000Ω/cm以上5,000Ω/cm未満
C:100Ω/cm以上1,000Ω/cm未満
D:10Ω/cm以上100Ω/cm未満
E:1Ω/cm以上10Ω/cm未満
F:1Ω/cm未満
<電池特性:サイクル特性>
得られたコイン型のリチウムイオン二次電池を用いて、25℃及び60℃で0.1Cで3Vから4.3Vまで充電し、次いで0.1Cで4.3Vから3Vまで放電する充放電を、100サイクル繰り返し、5サイクル目の0.1C放電容量に対する100サイクル目の0.1C放電容量の割合を百分率で算出した値を容量維持率とし、下記の基準で判断する。この値が大きいほど放電容量減が少なく、サイクル特性に優れている。
A:70%以上
B:60%以上70%未満
C:50%以上60%未満
D:40%以上50%未満
E:30%以上40%未満
F:30%未満
<電池特性:出力特性>
得られたコイン型のリチウムイオン二次電池を用いて、25℃で0.1Cの定電流法によって4.3Vまで充電し、その後0.1Cにて3.0Vまで放電し、0.1C放電容量を求める。その後、0.1Cにて4.3Vまで充電し、その後10Cにて3.0Vまで放電し、10C放電容量を求める。これらの測定をコイン型のリチウムイオン二次電池10セルについて行い、各測定値の平均値を、0.1C放電容量a、10C放電容量bとする。10C放電容量bと0.1C放電容量aの電気容量の比(b/a(%))で表される容量保持率を求め、これを出力特性の評価基準とし、以下の基準により判定する。この値が高いほど出力特性に優れている。
A:50%以上
B:30%以上50%未満
C:10%以上30%未満
D:1%以上10%未満
E:1%未満
<水素添加率の測定>
結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素添加率は、溶媒に重クロロホルムを用い、H−NMRにて水素添加前の炭素−炭素二重結合に由来するピーク強度aと、水素添加後の炭素−炭素二重結合に由来するピーク強度bとを測定し、それらの比((a−b)/a(%))により求めた。
<融点の測定>
結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の融点は、示差走査熱量分析計(製品名「DSC6220SII」、ナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K 7121(1987)に基づき、試料を融点より30℃以上高い温度に加熱した後、冷却速度−10℃/分で室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で測定した
(実施例1)
結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の作製
(開環重合)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン700部に、1−ヘキセン0.89部、ジイソプロピルエーテル1.06部、トリイソブチルアルミニウム0.34部、及びイソブチルアルコール0.13部を室温で反応器に入れ混合した。そこへ、2−ノルボルネン(2−NB)250部、5−ビニル−2−ノルボルネン(以下、「VNB」とすることがある。)1.25部及び六塩化タングステン1.0%トルエン溶液26部を、55℃に保ちながら、2時間かけて連続的に添加し重合を行い、開環重合体を得た。重合転化率は、ほぼ100%であった。なお、分岐剤であるVNBの配合量は、ノルボルネン系単量体である2−NBの合計100モル%としたときに、0.39モル%であった。
(水素添加反応)
上記で得た開環重合体を含む反応溶液を耐圧の水素化反応器に移送し、そこへ、ケイソウ土担持ニッケル触媒(T8400、ニッケル担持率58%、ズードヘミー触媒社製)1.0部を加え、200℃、水素圧4.5MPaで6時間反応させた。この溶液を、珪藻土を濾過助剤としてステンレス製金網を備えた濾過器により濾過し、触媒を除去した。得られた反応溶液を3000部のイソプロピルアルコール中に撹拌下に注いで水素化物を沈殿させ、濾別して回収した。さらに、アセトン500部で洗浄したのち、0.13×10Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、重合体として結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を190部得た。
(重合体物性)
得られた結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素添加率は99.9%、融点は136℃であった。
結着剤の作製
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水300部、n−ブチルアクリレート93.8部、アクリロニトリル2部、アリルグリシジルエーテル1.0部、メタクリル酸2.0部、N−メチロールアクリルアミド1.2部および分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.05部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部を入れ、十分に撹拌した後、70℃に加温して重合し、結着剤として固形分濃度40%の重合体水分散液Aを得た。固形分濃度から求めた重合転化率はほぼ99%であった。この重合体水分散液Aのガラス転移温度は−46℃であった。
セパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーの作製
円状ノズルを用いて、上記の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を、紡糸温度200 ℃ で溶融押出し、延伸せずに巻取り、4デシテックスのフィラメントを得た後、該フィラメントを切断し長さ5mm の短繊維を得た。また、非導電性フィラーとして架橋MMA(積水化成工業社製SSX−101、平均粒子径1.0μm、平均円形度0.95)を用い、短繊維と非導電性フィラーと重合体水分散液Aとを固形分相当比で、70:25:5になるように混合し、次いで固形分濃度が3%になるように水を加えビーズミルを用いて分散させてセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーを調製した。
セパレーターの作製
得られたセパレーター形成用樹脂繊維含有スラリーを網状のネット上に漉き上げてフリースを形成した。形成したフリースをカレンダーロールに通し、セパレーター(目付け15g/m 、膜厚20μm)を得た。得られたセパレーター中の金属元素の濃度をICPにより測定した。結果を表1に示す。
正極電極の製造
正極活物質としてスピネル構造を有するマンガン酸リチウム92部と、アセチレンブラック5部、結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を固形分相当で3部とを加え、さらにNMPで固形分濃度87%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分混合した。さらにNMPで固形分濃度84%に調整した後に10分間混合してスラリー状の正極用電極組成物(正極合剤層形成用スラリー)を調製した。この正極用電極組成物を厚さ18μmのアルミニウム箔に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ50μmの正極合剤層を有する正極電極を得た。
電池の作製
次いで、得られた正極電極を直径13mmΦの円形に、厚さ0.5mmのリチウム金属箔を直径16mmΦの円形に、得られたセパレーターを18mmΦの円形に、それぞれ打ち抜いた。そして、正極電極の活物質層面にセパレーター、負極としてリチウム金属膜をこの順に積層し、積層体を作製した。この積層体をポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器中に収納した。この容器中に電解液(EC/DEC=1/2、1M LiPF)を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのコイン型のリチウムイオン二次電池を製造した(コインセルCR2032)。得られた電池について、シャットダウン特性、サイクル特性及び出力特性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
短繊維と非導電性フィラーと重合体水分散液Aとの比率を固形分相当比で、78:17:5にしたこと以外は、実施例1と同様にセパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1の非導電性フィラーとしてアルミナ粒子(平均粒子径0.8μm、平均円形度0.98)を用い、短繊維と非導電性フィラーと重合体水分散液Aとの比率を固形分相当比で、60:35:5にしたこと以外は、実施例1と同様にセパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
以下の方法でセパレーターの作製を行ったこと以外は実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
セパレーターの作製
円状ノズルを用いて、実施例1の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を、紡糸温度200℃で溶融押出し、延伸せずに巻取り、4デシテックスのフィラメントを得た。得られたフィラメントの引張クリープひずみは75%であった。該フィラメントを切断し、長さ50mmの短繊維を得、この短繊維をカード機にてウェブ化しニードルパンチで交絡させ、さらにカレンダーロールを通すことにより不織布を得た。
非導電性フィラー(架橋MMA(積水化成工業社製SSX−101、平均粒子径1.0μm、平均円形度0.95))と重合体水分散液Aとを固形分相当比で、87:13になるように混合し、次いで固形分濃度が25%になるように水を加えビーズミルを用いて分散させてセパレーター形成用スラリーを調製した。その後、得られたセパレーター形成用スラリーを不織布上に塗工して、膜厚20μmのセパレーターを得た。なお、セパレーター中の不織布の含有量は70質量部であった。
(実施例5)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン700部に、1−ヘキセン0.89部、ジイソプロピルエーテル1.06部、トリイソブチルアルミニウム0.34部、及びイソブチルアルコール0.13部を室温で反応器に入れ混合した。そこへ、2−ノルボルネン(2−NB)240部、ジシクロペンダジエン(DCP)10部、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)0.75部及び六塩化タングステン1.0%トルエン溶液26部を、55℃に保ちながら、2時間かけて連続的に添加し重合を行い、開環重合体を得た。重合転化率は、ほぼ100%であった。なお、分岐剤であるVNBの配合量は、ノルボルネン系単量体である2−NBとDCPの合計100モル%としたときに、0.23モル%であった。
上記で得た開環重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にセパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた重合体である結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素添加率は99.9%、融点は139℃であった。
(実施例6)
実施例1のVNBの配合量を37.5部にしたこと以外は実施例1と同様にして開環共重合体を得、セパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた開環重合体の重合転化率は、ほぼ100%であり、分岐剤であるVNBの配合量は、ノルボルネン系単量体である2−NBの合計100モル%としたときに11.7モル%であった。また、得られた結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素添加率は99.9%、融点は110℃であった。
(比較例1)
結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の代わりにポリプロピレン(PP)を用い、短繊維と非導電性フィラーと重合体水分散液Aとの比率を固形分相当比で、70:35:5したこと以外は、実施例1と同様にセパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。なお、PPの融点は170℃であった。
(比較例2)
結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の代わりにアラミドを用いた以外は、比較例1と同様にセパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。なお、アラミドの融点は265℃であった。
(比較例3)
非導電性フィラーを用いず、短繊維と重合体水分散液Aとの比率を固形分相当比で、95:5にしたこと以外は、実施例1と同様にセパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1の開環重合体の代わりに以下の開環重合体を用いて水素添加反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にセパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた開環重合体水素化物の水素添加率は、99.9%であった。また、明確な融点は存在せず、ガラス転移点(Tg)は100℃であった。
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン700部に、1−ヘキセン0.89部、ジイソプロピルエーテル0.18部、トリイソブチルアルミニウム0.59部、及びイソブチルアルコール0.45部を室温で反応器に入れ混合した。そこへ、DCP(ジシクロペンタジエン)85質量部、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(ETD)15部及び六塩化タングステン1.0%トルエン溶液10部を、55℃に保ちながら、2時間かけて連続的に添加し、重合を行い、開環重合体を得た。重合転化率は、ほぼ100%であった。なお、分岐剤は配合しなかった。
(比較例5)
実施例1において、分岐剤を配合せずに開環重合体を得、水素添加反応を以下のように行ったこと以外は、実施例1と同様にセパレーター及び電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた重合体である結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物の水素添加率は、99.9%、融点は148℃であった。
(水素添加反応)
得られた開環重合体を含む反応溶液を耐圧の水素添加反応器に移送し、触媒としてPd/CaCO(Pd量:5%)(Strem社製)5.25部を加え、100℃、水素圧3.5MPaで48時間反応させた。この溶液を、ケイソウ土をろ過助剤としてステンレス製金網を備えたろ過器によりろ過し、触媒を除去した。得られた反応溶液を3000部のイソプロピルアルコール中に攪拌下に注いで水素化物を沈殿させ、ろ別して回収した。さらに、アセトン500部で洗浄した後、0.13×10Pa以下、100℃に設定した減圧乾燥器中で48時間乾燥し、重合体として結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を190部得た。
Figure 0005370289
表1から、実施例1〜6の、樹脂繊維を含有してなる不織布と、非導電性フィラーと、結着剤とを含んでなり、該樹脂繊維が、2−ノルボルネンを含むノルボルネン系単量体を開環重合して得られる開環重合体の、炭素−炭素二重結合の99%以上を水素添加してなる、融点が110〜145℃の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物である非水系電池用セパレーターは、比較例1,2に記載の樹脂繊維を用いたセパレーターよりも不純物の含有量が少なく、サイクル特性及び出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を製造できることが分かる。中でも、融点が130〜145℃の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物であり、不織布中に非導電性フィラー及び結着剤を含み、非導電性フィラーとして有機粒子を用いている実施例1、2、5は全ての特性において優れている。
一方、ノルボルネン樹脂繊維を用いていないもの(比較例1、2)はサイクル特性及び出力特性に劣り、非導電性フィラーを含まないセパレーター(比較例3)はシャットダウン特性及び出力特性に劣る。また、比較例4の非結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を用いたセパレーターは、シャットダウン特性、サイクル特性及び出力特性の全てについて本発明のセパレーターに劣る。また、融点が範囲外である比較例5の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を用いたセパレーターは、紡糸加工が困難であるため不織布を作製できず、セパレーターを形成することができない。

Claims (4)

  1. 樹脂繊維を含有してなる不織布と、非導電性フィラーと、結着剤とを含んでなり、
    前記樹脂繊維が、2−ノルボルネンを含むノルボルネン系単量体を開環重合して得られる開環重合体の、炭素−炭素二重結合の99%以上を水素添加してなる、融点が110〜145℃の結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を主成分とするものである、非水系電池用セパレーター。
  2. 前記樹脂繊維の含有量が50〜98質量%であり、前記非導電性フィラーの含有量が1〜50質量%であり、前記結着剤の含有量が0.5〜10質量%である請求項1に記載の非水系電池用セパレーター。
  3. 前記非導電性フィラーが、平均粒子径5nm〜10μmかつ平均円形度0.90〜0.995の微粒子である請求項1または2に記載の非水系電池用セパレーター。
  4. 正極、負極、電解液及び請求項1〜3のいずれかに記載のセパレーターを備えてなる非水系電池。
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