JP5367901B2 - 樹脂複合材料、歯科用材料および樹脂複合材料の製造方法 - Google Patents

樹脂複合材料、歯科用材料および樹脂複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂複合材料、歯科用材料および樹脂複合材料の製造方法に関するものである。
熱可塑性樹脂は、機械的性質、電気的性質、軽量性、成形加工性等に優れることから、電気・電子・OA機器、車輌、建材、農業用資材、雑貨等の幅広い分野で使用されている。さらに、熱可塑性樹脂の剛性、強度、寸法特性などを向上させる方法として、無機フィラーを含有させることが広く一般に行われている。一方で、熱可塑性樹脂と無機フィラーとを複合化することにより目的とする物性は改善されるものの逆に犠牲となる物性が生じるのが一般的傾向である。
樹脂材料(プラスチック)を一般的に分類すると、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とに大別される。熱可塑性樹脂は加熱すると軟化溶融し、応力によって任意の形状に変形することができる樹脂であり、その加工性の容易さ、生産性の高さから、非常に多くの分野で応用されている。一方、熱硬化性樹脂は成形後に網目状高分子となるため加熱によって軟化せず、製品の安定性が高い反面、生産性が悪いといった特徴がある。このため、産業界では、熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂ほどに応用されていない。また、熱硬化性樹脂は、架橋構造を形成すると再加工が難しいことから、重合性単量体などの前駆体を製品として供する場合が多い。たとえば、樹脂マトリックス中に無機粒子などのフィラーを分散させた樹脂複合材料の前駆体材料としては、重合性単量体中に、シランカップリング剤などで表面処理されたフィラーが添加された種々の複合組成物が提案されている(特許文献1〜4等)。これらの複合組成物においては、重合性単量体とフィラーとの親和性向上、複合組成物のチキソトロピィー性の抑制による操作性の確保、あるいは、重合性単量体中へのフィラーの分散性の改良などを目的としてフィラーに対する表面処理が実施される。また、これらの複合組成物は、フィラーを表面処理した後、重合性単量体と混合することで作製され、使用に際しては重合硬化させることで樹脂複合材料を得る。このような表面処理は、近年のナノテクノロジーの発展を背景に、大きな比表面積を有するナノ粒子表面制御の観点からより重要となってきている。
また、熱可塑性樹脂を用いた樹脂複合材料に関しては、加熱溶融した樹脂にフィラーを直接混合させて作製される方法が知られている。たとえば、熱可塑性ポリイミド樹脂およびポリアリールケトン樹脂の合計量100質量部に対して有機珪素化合物により表面処理された充填剤5〜50質量部を含む樹脂複合材料も提案されている(特許文献5)。この樹脂複合材料においては、表面処理剤(有機珪素化合物)が、高温の溶融混練条件下で何らかの化学変化が起こり、その表面状態を、樹脂に対して親和性を高めるように作用すると共に、高温下で長時間の熱処理に晒されてもその色相を顕著に変化させない効果が高いとされている。
また、フィラーと、溶融したエラストマーあるいは樹脂とを、回転するスクリューによってせん断力を加えながら撹拌して、溶融混練物を得る方法も提案されている(特許文献6)。この特許文献6に記載の発明は、ナノレベルのフィラーを均一に分散させるためには、(1)フィラーを修飾するなどの化学的手法により樹脂とフィラー間での親和性、相互作用を高めるアプローチ、あるいは、(2)凝集抑制剤を添加することでフィラー同士の化学的な凝集を防ぐアプローチでは不十分であり、フィラーの凝集力に優る有効な処理手段の場を外部要因により作り出して処理することが必要かつ最善であるという考えに基づき成されたものである。
特開平8−12305号公報(段落番号0037−00038等) 国際公開第2002/005752号(24−25ページ等) 特開2005−170813号公報(段落番号0038−0039等) 特開平10−130116号公報(段落番号0022等) 特開2005−330378号公報(請求項1、段落番号0025等) 特開2008−266577号公報(請求項1、段落番号0011等)
特許文献1〜4に示す複合組成物を硬化させて得られる樹脂複合材料や、特許文献5、6に示す樹脂複合材料では、樹脂マトリックス中にフィラーが分散含有されているため、種々の機械的特性を容易に向上させることができる。しかしながら、これらの樹脂複合材料では、耐摩耗性の点では、フィラーの脱落が生じやすく、また、フィラーを含むが故に脆くなりやすく、その結果、破断エネルギーが低くなりやすい。
しかし、熱硬化性樹脂を用いて樹脂複合材料を作製する場合、フィラーとして利用される無機粒子表面に、熱硬化性樹脂との反応に使用される有機基をシランカップリング剤などで導入することによって、樹脂マトリックスと無機粒子表面との間に化学的結合を形成し、強固な有機無機ハイブリッド構造を構築することが容易である。例えば、エポキシ樹脂と組み合わせて用いる無機粒子表面にエポキシ基やアミノ基を導入する方法が一般的によく知られている。
一方、熱可塑性樹脂分子は反応可能な有機官能基を有していない場合が多く、また、反応可能な有機官能基を有している場合でも高分子鎖の末端部分のみに存在する。すなわち、熱可塑性樹脂分子中において、反応可能な有機官能基の存在比率は圧倒的に少ない。このため、熱可塑性樹脂を用いて樹脂複合材料を作製する場合、樹脂マトリックスと無機粒子との間に十分な量の化学的結合を形成し、強固な有機無機ハイブリッド構造を構築することは困難である。このような背景により、熱可塑性樹脂にフィラーを添加した複合材料を作製する場合において、フィラーの表面処理設計は、前述したようにフィラーの樹脂へのなじみを改善することを主な目的としてなされている。
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、熱可塑性樹脂の高い生産性や高い耐薬品性、耐変色性を活かしながら、従来の樹脂複合材料と比べて、耐摩耗性に優れ、かつ、剛性、寸法安定性、機械的強度、破断エネルギーの高い樹脂複合材料、これを用いた歯科用材料、および、当該樹脂複合材料の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明の樹脂複合材料は、(A)融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)下記一般式(I)で示される表面処理剤で表面処理された無機粒子40〜400質量部を用いて作製されており、かつ、下式(1)に示される平均包埋率が、55%以上であることを特徴とする。
・一般式(I) A−R−SiRmBn
〔一般式(I)中、Aは重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基であり、Rは直鎖部分を構成する原子数が3〜12の有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Bは炭素数1〜6の炭化水素を有するアルコキシ基、ハロゲン基、あるいはイソシアナート基である。ここで、m、nは整数であり、mとnとの和は3であり、mは0〜2の範囲の整数である。〕
・式(1) 平均包埋率(%)=100×{EP/(EP+V)}
〔式(1)中、EPは、樹脂複合材料からなる試験片を、ダイヤモンドナイフを用いたマイクロトーム研磨することにより形成された研磨面を白金蒸着処理した後、当該白金蒸着処理された研磨面を走査型電子顕微鏡により観察した場合において、白金蒸着処理された研磨面内に露出している10μm四方の領域当たりの無機粒子の数{個/(10μm×10μm)}を意味する。
また、Vは、EP値をカウントした10μm四方の領域内において、無機粒子が脱落して形成された10μm四方の領域当たりの空孔の数{個/(10μm×10μm)}を意味する。
また、平均包埋率は、4つの測定点において各々求めた包埋率の平均値を意味する。〕
本発明の樹脂複合材料の一実施形態は、(A)融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂であることが好ましい。
本発明の樹脂複合材料の他の実施形態は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂は、ポリエーテルエーテルケトンであることが好ましい。
本発明の樹脂複合材料の他の実施形態は、表面処理剤が、下記一般式(II)で示される表面処理剤であることが好ましい。
・一般式(II) CH=C(R)−COO−(CH)−SiRmBn
〔一般式(II)中、Rは水素原子またはメチル基であり、pは3〜12のいずれかの整数であり、R、B、m、nは一般式(I)中に示すものと同様である。〕
本発明の樹脂複合材料の他の実施形態は、(B)表面処理剤で表面処理された無機粒子は、平均粒子径が0.05μm以上15μm以下であることが好ましい。
本発明の歯科用材料は、本発明の樹脂複合材料を含むことを特徴とする。
本発明の骨代替材料は、本発明の樹脂複合材料を含むことを特徴とする。
本発明の樹脂複合材料の製造方法は、(A)融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂100質量部と(B)下記一般式(III)で示される表面処理剤で表面処理された無機粒子40〜400質量部とを含む原料を、融点または流動化温度以上500℃以下の範囲内で加熱して溶融し混練する溶融混練工程を、少なくとも含むことを特徴とする。
・一般式(III) A−R−SiRmBn
〔一般式(III)中、Aは重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基であり、Rは直鎖部分を構成する原子数が3〜12の有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Bは炭素数1〜6の炭化水素を有するアルコキシ基、ハロゲン基、あるいはイソシアナート基である。ここで、m、nは整数であり、mとnとの和は3であり、mは0〜2の範囲の整数である。〕
本発明の樹脂複合材料の製造方法の一実施形態は、(B)表面処理剤が、下記一般式(IV)で示される表面処理剤であることが好ましい。
・一般式(IV) CH=C(R)−COO−(CH)−SiRmBn
〔一般式(IV)中、Rは水素原子またはメチル基であり、pは3〜12のいずれかの整数であり、R、B、m、nは一般式(III)中に示すものと同様である。〕
本発明の樹脂複合材料の製造方法の他の実施形態は、(B)表面処理剤で表面処理された無機粒子は、平均粒子径が0.05μm以上15μm以下であることが好ましい。
本発明によれば、熱可塑性樹脂の高い生産性や高い耐薬品性、耐変色性を活かしながら従来の樹脂複合材料と比べて、耐摩耗性に優れ、かつ、剛性、寸法安定性、機械的強度、破断エネルギーの高い樹脂複合材料、これを用いた歯科用材料、および、当該樹脂複合材料の製造方法を提供することができる。
本実施形態の樹脂複合材料は、(A)融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)下記一般式(I)で示される表面処理剤で表面処理された無機粒子40〜400質量部を用いて作製されており、かつ、下式(1)に示される平均包埋率が、55%以上であることを特徴とする。
・一般式(I) A−R−SiRmBn
・式(1) 平均包埋率(%)=100×{EP/(EP+V)}
ここで、一般式(I)中、Aは重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基であり、Rは直鎖部分を構成する原子数が3〜12の有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Bは炭素数1〜6の炭化水素を有するアルコキシ基、ハロゲン基、あるいはイソシアナート基である。ここで、m、nは整数であり、mとnとの和は3であり、mは0〜2の範囲の整数である。
また、式(1)中、EPは、樹脂複合材料からなる試験片を、ダイヤモンドナイフを用いたマイクロトーム研磨することにより形成された研磨面を白金蒸着処理した後、当該白金蒸着処理された研磨面を走査型電子顕微鏡により観察した場合において、白金蒸着処理された研磨面内に露出している10μm四方の領域当たりの無機粒子の数{個/(10μm×10μm)}を意味する。また、Vは、EP値をカウントした10μm四方の領域内において、無機粒子が脱落して形成された10μm四方の領域当たりの空孔の数{個/(10μm×10μm)}を意味する。また、平均包埋率は、4つの測定点において各々求めた包埋率の平均値を意味する。
なお、使用するダイヤモンドナイフは刃角45度、刃幅は2mm以上のものを使用する。このようなダイヤモンドナイフとしては、たとえば、ダイヤトーム製ダイヤモンドナイフウルトラ45°が挙げられる。また、切削条件は、クリアランスアングル6度、切削スピード0.5mm/sec、切削する試験片厚み(送り長さ)は100nm、試験片面積は幅0.5mm〜0.8mm、長さ0.8mm〜1.2mmである。また切削は湿式で行い、水は蒸留水が使用される。このような条件で、少なくとも試験片表面が均一に切削され始めてから5回切削したあとの本体の切削面を観察に使用する。ダイヤモンドナイフは新品、再研磨品あるいはこれらに準ずる刃こぼれが無く切れ味の鋭いものを使用する。
ダイヤモンドナイフで切削を行った試料は、走査型電子顕微鏡用の試料台上にカーボンテープやカーボンペースト等の導電性接着剤を用いて固定し、スパッタコーターによって真空下で膜厚10nmの白金膜を蒸着により成膜する。走査型電子顕微鏡は、明確な像が得られるよう電子銃の種類が電界放出型であるもの(FE−SEM)であり、分解能が2nm以上の装置を使用する。測定条件は、加速電圧10kV、ビームスポット径3.0nm、試料傾斜角度0度、ワーキングディスタンスは5mmとし、検出器は反射電子用を用いる。フォーカス及び非点収差は画像が最も鮮明になるように調整し、倍率をSEM写真一枚(1つの観察領域)あたりの粒子数及び空孔の数の合計が100〜300になるように調整してから測定を行う。無機粒子は樹脂よりも反射電子像が明るく観察されるため、明度とコントラストとを適切に調整することによって無機粒子のカウントが容易となる。無機粒子数及び空孔数のカウントの際には、試料に元々含有されていた気泡をカウントしないように注意する。空孔はダイヤモンドナイフによる切削方向に指向していることから容易に区別することができる。また、複数の空孔が合体して大きな空孔を形成している場合もあるが、このようなケースでは無機粒子のサイズ及び空孔形状と照らし合わせて、複数個の空孔としてカウントする。
なお、平均包埋率は60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましい。
ここで、本実施形態の樹脂複合材料は、(A)融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂100質量部と(B)一般式(I)で示される表面処理剤で表面処理された無機粒子40〜400質量部とを含む原料を、融点または流動化温度以上500℃以下の範囲内で加熱して溶融し混練する溶融混練工程を、少なくとも経て製造されるものである。ここで、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合、融点が300℃〜500℃の範囲内にある結晶性樹脂が該当し、熱可塑性樹脂が非結晶性樹脂である場合、流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある非結晶性樹脂が該当する。こうした融点または流動化温度の熱可塑性樹脂を用いて、融点または流動化温度〜500℃の範囲から採択される加熱温度(「溶融温度」)で熱可塑性樹脂と無機粒子とを溶融混合する。熱可塑性樹脂は、上記融点または流動化温度以上500℃以下の範囲において、キャピラリー式粘度計により測定される溶融粘度、すなわち、剪断速度が1000(1/s)のときの剪断粘度が10Pa・s〜10000Pa・sの範囲の範囲を示す領域があるものが好ましく、250Pa・s〜1000Pa・sの範囲を示す領域があるものがより好ましい。このような溶融粘度は、熱可塑性樹脂と無機粒子との混練及び得られる樹脂複合材料の成形のし易さに優れており、溶融温度はこの範囲から採択するのが好ましい。一般に、こうした好適な溶融温度は、融点もしくは流動化温度よりも10〜50℃高い温度から選択される。
本実施形態の樹脂複合材料は、熱可塑性樹脂の高い生産性や高い耐薬品性、耐変色性を活かしながら、従来の熱可塑性樹脂を用いた樹脂複合材料と比べて、耐摩耗性に優れると共に、剛性、寸法安定性、機械的強度、破断エネルギーも高い。ここで、融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂に対して、前記溶融温度で単に無機粒子を配合した場合、上記に列挙した各種の効果を得ることが容易となるものの、樹脂複合材料自体は脆くなり、破断エネルギーが低下する。しかしながら、本実施形態の樹脂複合材料では、破断エネルギーも同時に向上させることができる。このような効果が得られる理由の詳細は不明であるが、本発明者は以下のように推定している。すなわち、樹脂マトリックス中に無機粒子が分散している場合、樹脂複合材料の表面を研磨、切削あるいは摺動等すると、無機粒子は表面から比較的容易に脱落する。この理由は、無機粒子と樹脂とでは、共有結合のような強固な化学的な結合が形成できず、無機粒子と、樹脂マトリックスとの間に作用する結合力は、無機粒子のアンカリング効果の弱い分子間力のみである。また、既述したように、熱硬化性樹脂では、重合性単量体の反応基を利用することで、樹脂マトリックスと無機粒子と間に強固な化学的結合(共有結合)を形成することができるが、熱可塑性樹脂では、熱可塑性樹脂と無機粒子との間で、上述したような強固な共有結合の形成が困難である。
このため、無機粒子と、熱可塑性樹脂からなる樹脂マトリックスとの間に作用する結合力は、分子間力のみである。そして、この点は、高いせん断力のみによって、無機粒子を樹脂マトリックスに分散させる特許文献6に例示される樹脂複合材料においても同様である。すなわち、これら従来の熱可塑性樹脂を用いた樹脂複合材料においては、樹脂マトリックスと無機粒子との界面における接合力は極めて弱いと考えられる。
それゆえ、これらの樹脂複合材料の表面が研磨等された際に、無機粒子に力が加わると、無機粒子は、樹脂マトリックスから容易に脱落してしまうことになる。これに加えて、樹脂複合材料に対して応力が加わった場合には、接合力の最も弱い樹脂マトリックスと無機粒子との界面に応力集中が生じて、界面で容易に破壊が生じてしまう。
一方、本実施形態の樹脂複合材料では、その製造に際して、一般式(I)で示される表面処理剤で表面処理された無機粒子を用いる。なお、以下の説明において、一般式(I)で示される表面処理剤で表面処理された状態を指す場合は、「表面処理無機粒子」と称し、無機粒子本体そのものを指す場合は、単に「無機粒子」と称す。
ここで、一般式(I)で示される表面処理剤の有機基Aは、重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基である。このため、表面処理剤によって無機粒子表面に形成された表面層において、溶融混練時の加熱によって、炭素−炭素二重結合同士が反応して架橋する。また、表面処理剤の分子鎖長を決定する有機基Rの直鎖部分を構成する原子数は3以上であるため、表面処理剤の分子鎖長は、熱可塑性樹脂分子(高分子鎖)との絡み合いを形成するのに十分な長さを有している。それゆえ、表面層は、無機粒子表面に対して個々の表面処理剤分子が結合しているだけの構造から、これら表面処理剤分子同士もさらに結合した3次元的な網目構造を有することになる。このため、樹脂マトリックスを構成する個々の高分子鎖が、表面層の網目構造に絡まり易くなる。これに加えて、溶融混練時に加わるせん断力によって、表面層の網目構造への高分子鎖の絡まりが促進される。それゆえ、本実施形態の樹脂複合材料では、樹脂マトリックスと表面処理無機粒子との界面において、分子間力に基づく接合力の他に、分子間力よりも非常に強力な分子鎖同士の絡み合いに起因する接合力が作用することになる。
また、表面処理剤の分子鎖長を決定する有機基Rの直鎖部分を構成する原子数は3以上であるため、表面処理剤の分子鎖長は、高分子鎖間を貫通してこれらと絡み合いを形成するのに十分な長さを有している。さらに、有機基Rの嵩張りに対して、有機基Aの嵩張りの方が大きくなることから、溶融混練時に加わるせん断力によって、有機基Aが高分子鎖間を貫通すれば、立体的アンカー効果を発揮しやすくなるものと推測される。一方、有機基Rの鎖長が長すぎる場合、表面層の網目構造が疎になり、当該網目構造に高分子鎖が絡まりにくくなったり、絡まりが解けやすくなったりすると予想される。しかし、有機基Rの直鎖部分を構成する原子数は12以下であるため、このような問題は抑制できると考えられる。
したがって、本実施形態の樹脂複合材料では、樹脂複合材料の表面が研磨等された際に、表面処理無機粒子に力が加わっても、表面処理無機粒子は、樹脂マトリックスから容易に脱落するのを抑制できる。これに加えて、樹脂複合材料に対して応力が加わった場合において、樹脂マトリックスと表面処理無機粒子との界面に応力が集中しても、界面での破壊が抑制される。
次に、本実施形態の樹脂複合材料を構成する各成分の詳細について以下に説明する。
(A)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内の樹脂であれば公知の熱可塑性樹脂を利用することができる。ここで、融点または流動化温度を200℃以上とする理由は、熱可塑性樹脂と表面処理された無機粒子とを用いて溶融混練する際に、表面処理剤の有機基Aに含まれる重合可能な炭素−炭素二重結合同士を重合反応させるために、少なくとも200℃以上の温度が必要になるためである。また、融点または流動化温度を200℃以上とすることにより、樹脂複合材料の耐熱性を高めることができる。また、無機粒子表面に固定化された表面処理剤の分子運動を促進し、隣接する表面処理剤との反応性を高めると共に、無機粒子が、その表面に表面処理剤による網目構造が形成された後に溶融した熱可塑性樹脂と十分に混合することができるといった観点からも、融点または流動化温度は高い方が好ましい。なお、融点または流動化温度の上限値は、材料選択・入手容易性等の実用上の観点から500℃以下であればよく、430℃以下であることがより好ましく、400℃以下であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂としては直鎖型の熱可塑性樹脂が好ましく、耐熱性や機械的強度が高いことから主鎖がアリーレン基を有する構造であることが好ましい。また、無機粒子表面を覆う表面層の網目構造との絡み合い構造を効果的に形成できると考えられることから、該アリーレン基は置換基を有さないことが好ましい。
上述した融点または流動化温度を有する熱可塑性樹脂としては、具体的には、アリーレン基およびイミド基から選択される2価の有機基と、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、エステル基、アミド基およびイソプロピリデン基から選択され、かつ、2価の有機基同士を結合する結合基とを含む熱可塑性樹脂を用いることができる。また、熱可塑性樹脂としては、フッ素系熱可塑性樹脂および非フッ素系熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。融点または流動化温度が300〜500℃の範囲内にある非フッ素系熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS:好適な溶融温度310〜340℃)、ポリサルホン(PSF、PSU:好適な溶融温度330〜400℃)、ポリエーテルサルホン(PES、PESU:好適な溶融温度310〜400℃)、ポリフェニルサルホン(PPSU:好適な溶融温度360〜390℃)、ポリアリレート(PAR:好適な溶融温度310〜390℃)、ポリアミドイミド(PAI:好適な溶融温度320〜370℃)、ポリエーテルイミド(PEI:好適な溶融温度340〜430℃)液晶ポリマー(LCP:好適な溶融温度320〜400℃)、芳香族ポリエーテルケトン(好適な溶融温度:340〜400℃)が挙げられる。また、熱可塑性樹脂の分子構造としては、直鎖状で立体障害が少ない構造であることが好ましく、低分子量であるのが好ましく、流動性が高いことが好ましい。これらの特徴はいずれも、無機粒子表面を覆う表面処理剤との絡み合い構造の形成の促進に寄与すると考えられる。
これらの樹脂の中でも、特に高い機械的強度(圧縮応力、引っ張り応力、疲労、磨耗など)、耐薬品性、耐水性、耐着色性を有することから、ベンゼン環が結合基(エーテル基およびケトン基)を介して直鎖状に結合した構造を有する芳香族ポリエーテルケトン樹脂を用いることが好ましい。ここで、芳香族ポリエーテルケトン樹脂としては、直鎖状主鎖を構成する互いに隣接するベンゼン環とベンゼン環と結合する結合基として、エーテル基とケトン基を交互に配置した基本的な直鎖状構造を持つポリエーテルケトン(polyetherketone、PEK)、エーテル基・エーテル基・ケトン基の順に結合基を配置したポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone,PEEK)、エーテル基・ケトン基・ケトン基の順に結合基を配置したポリエーテルケトンケトン(polyetherketoneketone,PEKK)、エーテル基・エーテル基・ケトン基・ケトン基の順に結合基を配置したポリエーテルエーテルケトンケトン(polyetheretherketoneketone,PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが挙げられる。なお、これらのポリエーテルケトン樹脂の中でもポリエーテルエーテルケトンを用いることが好ましい。これらの樹脂はいずれも直鎖型でベンゼン環にも置換基を有さず、高分子鎖が嵩張りの大きな構造を有していないため、無機粒子表面を覆う表面処理剤との絡み合い構造を形成しやすいと考えられる。また、樹脂としては、2種類以上の樹脂を適宜混合して用いることができる。さらに、必要に応じて、上記に列挙した以外のその他の熱可塑性樹脂を適宜用いることもできる。
熱可塑性樹脂の分子量は、適宜選択することができるが以下に説明する点に留意して選択することが好ましい。通常、熱可塑性樹脂の分子量が大きくなるほど機械的特性は良くなる傾向になるが、一方で可塑化した熱可塑性樹脂の流動性は低下する傾向になり、多くの無機粒子を配合するのは困難になる場合がある。また、可塑化した熱可塑性樹脂の流動性が低いほど本実施形態の樹脂複合材料を製造する際に実施される溶融混練工程や、その他必要に応じて実施される押出工程や射出成形工程などの種々の工程における製造装置への負荷が高まるため、安定製造が難しくなる場合がある。しかし、熱可塑性樹脂の流動性が低いほど、熱可塑性樹脂と無機粒子との混練の効率がより高くなり、平均包埋率を高くすることができる。したがって、これらのバランスを考慮して熱可塑性樹脂の分子量を選択するのが好ましい。
(B)表面処理無機粒子
表面処理無機粒子を構成する無機粒子としては、公知の無機粒子であれば特に限定されない。ここで、無機粒子の材質としては具体的には、たとえば、非晶質シリカ、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、アルミノシリケートガラス、およびフルオロアルミノシリケートガラス、重金属(たとえばバリウム、ストロンチウム、ジルコニウム)を含むガラス;それらのガラスに結晶を析出させた結晶化ガラス、ディオプサイド、リューサイト等の結晶を析出させた結晶化ガラス等のガラスセラミックス;シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ等の複合無機酸化物;あるいはそれらの複合酸化物にI族金属酸化物を添加した酸化物;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属無機酸化物;等が使用できる。無機粒子のガラス転移点、変態温度および融点は、熱可塑性樹脂の成形温度よりも100℃以上高いことが好ましい。
上記に列挙した無機粒子の材質のうち、シランカップリング反応を利用した表面処理によって容易に官能基を導入することができ、表面処理剤と無機粒子との間に強固な共有結合が形成できることから、シリカ、あるいはシリカを主成分とする金属複合酸化物が特に好ましい。ここで、主成分とは、シリカ成分を50質量%以上含むことを意味し、金属複合酸化物中にシリカは80質量%以上含まれることが好ましい。また、熱可塑性樹脂/無機粒子界面での相互作用を強固にするためには界面積、すなわち無機粒子の比表面積は2.0m/g以上20m/g未満であることが好ましく、5.0m/g〜10.0m/gであることがより好ましい。また、粒子形状も特に制限無く、真球型、略球型、数珠型、ディンプル型、金平糖型、雲型、葡萄型、繊維型などの形状が使用可能であり、最も簡便には破砕型の不定形無機粒子が好適に使用される。
無機粒子表面において表面処理剤が反応可能な活性基(例えば、シラノール基のような水酸化金属基)の存在頻度は多いほど好ましい。これは、表面処理されることによって導入される官能基の距離が近接することで、より強固な架橋構造を構築できるためであると考えられる。このような無機粒子を製造するためには、750〜950℃の比較的低温で焼成を行い、表面のシラノール基をなるべく残留させるように製造されたものが好ましい。例えば、このような無機粒子の製造方法としては、好適には、特開昭58−110414号公報や特開昭58−156524号公報などに例示されるゾルゲル法を利用することで得ることができる。また、表面処理剤の反応活性の高さから、反応可能活性基としてシラノール基が多く存在するように、シリカによって表面が覆われている無機粒子を使用することがより好ましい。この場合、シリカを原料として用いる事が容易であるが、他の無機粒子の表面をシリカコート処理する事によってシラノール基を導入することが可能である。このとき、シリカコート層の厚みは透過型顕微鏡観察で測定して3nm以上であることが好ましい。このようなシリカコートの方法は、例えば特開2008−7381号公報に開示されている方法を用いることができる。
なお、本実施形態の樹脂複合材料を歯科用材料として利用する場合には、歯質に近い透明性を付与しやすいこと、生体に対して為害性の少ないことなどから、無機粒子の材質としては、シリカ、ジルコニアおよび二酸化チタンが好適である。無機粒子としてジルコニアを選択した場合、本実施形態の樹脂複合材料の弾性率及び硬度を、他の無機粒子を選択した場合よりも高くする事ができ、成形体の特性をより金属材料に近いものとすることができることから好ましい。また、無機粒子の形状は、特に限定されず、球状、略球状、不定形状、針状、凝集状、クラスター状等、適宜選択できるが、一般的には、球状あるいは略球状やこれらを熱処理等により凝集させた粉体を用いる事が好ましい。
また、無機粒子の表面は、一般式(I)で示される表面処理剤で表面処理される。表面処理剤を構成する有機基Aは、重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基からなる。ここで、重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基としては、i)ビニル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基などを含む不飽和脂肪族基、および、ii)フェニル基、フェノキシ基、フェニルアミノ基、ベンゾフェノン基、ヒドロキシベンゾフェノン基、ビフェニル基、ナフチル基などの芳香族基の置換基としてビニル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基を含む芳香族基が挙げられる。なお、一般式(I)で示される表面処理剤の有機基Aが、上述した芳香族基からなる場合、π−π相互作用によって樹脂マトリックスを構成する個々の高分子鎖との相互作用がより強固になるものと推定される。すなわち、樹脂マトリックスを構成する熱可塑性高分子が、その分子中に芳香環などに起因するπ電子を含む場合、通常の分子間力に基づく接合力以外にも、高分子側のπ電子と、有機基Aを構成する芳香族基のπ電子との相互作用に基づく接合力も作用することになる。
は直鎖部分を構成する原子数が3〜12の有機基であり、熱可塑性樹脂分子との絡み合い構造を形成しやすいことから側鎖部分も有する分岐型ではなく、直鎖型であることが特に好ましい。また、同様の理由から直鎖部分を構成する原子数は3〜6であることが好ましく、4〜6であることが最も好ましい。Rの鎖長が短すぎると、熱可塑性樹脂分子との絡み合い構造が形成され難くなり、鎖長が長すぎると十分な補強効果が得られにくくなる。なお、有機基Rの直鎖部分を構成する原子は、通常、炭素原子のみから構成されるが、エーテル結合を形成する酸素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。ここで、直鎖部分を構成する原子数が3である場合の有機基Rの一例としては、たとえば、−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−、などを挙げることができる。Rとしては、代表的には、直鎖型のアルキレン基(主鎖を構成する炭素原子の少なくとも1つを、酸素原子等のヘテロ原子に置換した場合も含む)が挙げられる。
mは0、1、または2の整数を取ることができるが、mが小さい場合(すなわちnが大きい場合)、シラノール基同士の縮合反応によって表面の立体構造が複雑化し、良好な絡み合い構造を形成することが困難になることから、m=1(n=2)であることが好ましい。
このような表面処理剤を例示すれば、11−メタクリロイロキシウンデシルトリメトキシラン、11−メタクリロイロキシウンデシルメチルジメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルメチルジメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリクロルシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオキシルジメチルメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルトリクロルシラン、6−メタクリロイロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、4−メタクリロイルオキシブチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリクロロシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリイソシアナトシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルジメチルイソシアナトシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(4−メタクリロイロキシフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(4−メタクリロイロキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、3−(4−メタクリロイロキシフェニル)プロピルトリイソシアナトシラン、スチリルプロピルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン、(メタクリロイロキシメチル)フェニルブチルトリメトキシシラン、O-(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)カルバメート、N−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、これらメタクリレート化合物の各アクリレート体、等を挙げることができる。
表面処理剤が無機粒子表面に規則的な構造を形成するためには、表面処理剤が単層で被覆されることが好ましい。表面処理剤を無機粒子表面に完全に単層で被覆することは困難であるが、表面処理剤の最小被覆面積と無機粒子の比表面積の関係から、おおよその最適量の予測することは可能である。すなわち、最適表面処理剤量(理論量)は、無機粒子の重量と無機粒子の比表面積との乗算値を表面処理剤の最小被覆面積で除する事によって算出することができる。そして、この理論量に対して0.7〜1.2の範囲にあることが好ましい。
なお、表面処理剤は、1分子中に、(メタ)アクリル基と、無機粒子の表面と結合を形成する反応性の官能基とを各々少なくとも1つずつ含むものであることが特に好ましい。このような表面処理剤としては特に限定されないが、直鎖状分子の一端に反応性の官能基を有し、他端に(メタ)アクリル基を有する表面処理剤を用いることが好ましく、具体的には、下一般式(II)で示される表面処理剤であることが特に好ましい。
・一般式(II) CH=C(R)−COO−(CH)−SiRmBn
ここで、一般式(II)中、Rは水素原子またはメチル基であり、pは3〜12のいずれかの整数であり、R、B、m、nは一般式(I)中に示すものと同様である。
一般式(II)で表されるシランカップリング剤としては、たとえば、11−メタクリロイロキシウンデシルトリメトキシシラン、11−メタクリロイロキシウンデシルメチルジメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルメチルジメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリクロルシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオキシルジメチルメトキシシラン、8−メタクリロイルオキシオクチルトリクロルシラン、6−メタクリロイロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、4−メタクリロイルオキシブチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリクロロシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリイソシアナトシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルジメチルイソシアナトシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、これらメタクリレート化合物の各アクリレート体、等を挙げることができる。
表面処理剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して使用することもできる。また、無機粒子の表面を表面処理剤により表面処理する場合、無機粒子100質量部に対して、表面処理剤を1質量部〜10質量部の割合で使用することが好ましい。表面処理の方法としては、公知の方法を特に限定されずに用いることができる。例えば、無機粒子を攪拌羽などで激しく攪拌しながら表面処理剤をスプレー添加する方法、適当な溶媒へ無機粒子を分散させ、表面処理剤を溶解させた後、溶媒を除去する方法、あるいは水溶液中で表面処理剤のアルコキシ基を酸触媒により加水分解してシラノール基へ変換し、該水溶液中で無機粒子表面に付着させた後、スプレードライなどの方法で水を除去する方法、適当な分散媒中に無機粒子を分散させ、表面処理剤を溶解して、リフラックスを行った後に無機粒子を濾別、分級回収する方法等が挙げられる。なお、いずれの方法においても、通常、好ましくは50〜200℃の範囲、より好ましくは100℃〜150℃の範囲で加熱することにより、無機粒子表面と表面処理剤との反応を促進させ、耐久性の高い表面処理を行うことができる。
また、表面処理無機粒子(あるいは無機粒子)の平均粒子径は特に限定されないが、0.05μm以上15μm以下の範囲内であることが好ましく、0.2μm以上5μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.3μm以上0.6μm以下の範囲内であることが最も好ましい。平均粒子径が0.05μm以上であれば、表面処理無機粒子の凝集を防いで、樹脂マトリックス中に表面処理無機粒子を分散含有させることが容易となる。また、平均粒子径を15μm以下とすることにより、樹脂複合材料全体として、材質の均一性を保つことができる。なお、2種類以上の表面処理無機粒子を用いる場合は、各々の表面無機粒子の平均粒子径は同一であってもよく、異なっていてもよいが、いずれの平均粒子径も0.05μm以上15μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、ここでいう平均粒子径とは、粒度分布計測定による体積分率でのD50値を指す。
また、樹脂100質量部に対する表面処理無機粒子の配合量は、40質量部〜400質量部の範囲内であり、60質量部〜300質量部の範囲内であることが好ましく、80質量部〜150質量部の範囲内であることがより好ましい。配合量を40質量部以上とすることにより、従来の樹脂複合材料と同様に、機械的強度の向上や、優れた寸法安定性を得ることができるほか、表面処理無機粒子の配合量が多いほど、混練の効率が向上し界面反応を促進して平均包埋率を高くする事ができる。また、配合量を400質量部以下とすることにより、表面処理無機粒子同士の凝集を防止したり、あるいは、分散不良を抑制することが容易となる。
(C)その他の成分
なお、樹脂複合材料には、樹脂複合材料の使用目的に応じてその他の成分を適宜添加することができ、たとえば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤等を添加することができる。
(樹脂複合材料の製造方法)
本実施形態の樹脂複合材料は、既述したように、熱可塑性樹脂と表面処理無機粒子とを含む原料を、融点または流動化温度以上500℃以下で加熱して溶融し混練する溶融混練工程を少なくとも経て製造される。溶融混練工程において用いる装置としては、公知の溶融混練装置であれば特に限定されず、たとえば、加熱装置付きミキサー、単軸溶融混練装置や、二軸溶融混練装置などを用いることができる。溶融混練工程において用いる装置としては好適には二軸押出し成形機が使用される。二軸押出し成形機の仕様、スクリュー形状や運転条件は目的に応じて任意に選択してよいが、スクリュー回転数が高く混練物へ負荷される圧力が大きいほど、表面処理無機粒子の平均包埋率を高くする事ができる。これは、熱可塑性樹脂と表面処理無機粒子の界面反応が進み、熱可塑性樹脂分子と表面処理無機粒子の表面層との間で分子鎖同士の絡み合いがより効果的に進行するためだと考えられる。
また、溶融混練工程を経た後は、必要に応じて各種の後工程を実施してもよい。たとえば、溶融混練工程を経た直後の高温状態の溶融混練物をそのまま射出成形や押出成形などにより所定の形状に成形することができる。また、溶融混練工程を経た直後の高温状態の溶融混練物を、一旦、ペレット状、パウダー状あるいはブロック状等の2次加工用部材に成形した後、これらの2次加工用部材を用いてさらに、射出成形、押出成形、レーザーフォーミング、切断加工、切削加工、研磨加工等の各種加工を実施してもよい。
本実施形態の樹脂複合材料の製造に際しては溶融混練工程を経た後、通常、射出成形、押出成形、圧縮成形などの各種の成形法にて所定の形状を有する成形体を得る。この際に、金型において急速に冷却することによって成形体の生産性を高める事ができる。このような場合、急速に冷却されたことにより成形体内部に残存応力が発生することがある。これに加えて、熱可塑性樹脂として結晶性樹脂を用いる場合には、結晶性樹脂の結晶構造が理想的に形成されない場合がある。これらの問題を解決するために、本実施形態の樹脂複合材料の製造方法では、必要に応じて得られた成形体に対して熱処理を実施しても良い。熱処理を行う事によって、成形体内部の残存応力を開放する事ができる。また、熱可塑性樹脂として結晶性樹脂を用いた場合は、急冷によってガラス化した樹脂の再結晶化を熱処理によって促進する事ができ、結果として成形体の機械的強度を高くする事ができる。
熱処理方法(熱処理工程)は特に限定されないが、温度はガラス転移点以上で溶融粘度を超えない温度領域から選択されるのが好ましく、150〜300℃の範囲から選択されるのが好ましい。熱処理時間は30分〜6時間から選択されるのが好ましい。熱処理後の冷却工程は、熱処理を行ったオーブン等の加熱装置内で熱源を切った状態で放置し、1時間以上の時間をかけて室温に戻すのが好ましい。また同様の理由から、本実施形態の樹脂複合材料は、射出成形、押出成形、圧縮成形などの成形法にて所定の形状を有する成形体を得る際に、所定の形状に成形後に上述した冷却工程を実施することにより、熱処理工程を経ることなく強度の高い最終成形品を得ることもできる。
(樹脂複合材料の用途)
本実施形態の樹脂複合材料の用途としては特に限定されず、種々の用途に利用することができるが、例えば、歯科用材料として利用することが好ましい。本実施形態の樹脂複合材料は、無機粒子を多量に含み優れた機械的強度を有するため、口腔内での咀嚼に際して大きな押圧力に日常的に晒される歯科用材料として用いた場合に、優れた機械的耐久性を発揮できる。
これに加えて、歯ブラシや、本実施形態の樹脂複合材料を用いた歯牙に対向配置された歯牙との接触により表面が摺動や摩擦に晒されても、無機粒子が脱落しにくい上に、表面も摩耗し難い。よって、本実施形態の樹脂複合材料を用いた治療部位において、治療時の光沢感、滑沢性を長期に渡って維持できる。また、それ故に、長期に渡って審美性が劣化し難く、舌触りのザラツキも抑制でき、さらに、無機粒子の脱落による表面凹凸が少ないため、プラークの付着やこれに起因する着色も抑制できる。
また、本実施形態の樹脂複合材料は、機械的強度が要求されることが多い骨代替材料としても利用することができる。
以下に、本発明を実施例等を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等にのみ限定されるものではない。
使用した熱可塑性樹脂とその略称、使用した無機粒子とその略称、使用した表面処理剤とその略称、試料の作製方法及び評価方法を以下に示す。
(熱可塑性樹脂)
P1:ポリブチレンテレフタレート(ジュラネックス2000、ポリプラスチックス、融点228℃、250℃における溶融粘度150Pa・s)
P2:ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK1000G、ダイセルエヴォニック株式会社、融点334℃、370℃における溶融粘度200Pa・S)
P3:ポリプロピレン(BC8、日本ポリプロ、融点170℃、190℃における溶融粘度150Pa・S)
P4:ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK381G、ビクトレックス、融点334℃、370℃における溶融粘度400Pa・S)
P5:ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK90G、ビクトレックス、融点334℃、370℃における溶融粘度100Pa・S)
(無機粒子)
F1:平均粒径0.40ミクロン、球状ゾルゲルシリカ(株式会社トクヤマ)、比表面積:7.0m/g
F2:平均粒径2.5ミクロン、破砕型シリカジルコニア(株式会社トクヤマ)、比表面積:2.9m/g
F3:平均粒径2.8ミクロン、球状シリカ(株式会社トクヤマ)、比表面積:12m/g
F4:平均粒径0.15ミクロン、球状シリカジルコニア(株式会社トクヤマ)、比表面積:22m/g
F5:平均粒径3.2ミクロン、タルク(日本タルク株式会社)、比表面積:12m/g
F6:平均粒径8.6ミクロン、ジルコニア(第一稀元素化学工業株式会社)、一次粒子径1.0ミクロンの凝集体、比表面積3.3m/g
F7:平均粒径4.0ミクロン、シリカ(株式会社トクヤマ)、比表面積1.3m/g
(表面処理剤)
S5:3−スチリルプロピルトリメトキシシラン(SPTMS)
S6:3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン(SMAPTMS)
S7:γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)
S8:4−メタクリロイルオキシブチルトリメトキシシラン(MBTMS)
S9:8−メタクリロイロキシオクチルトリメトキシシラン(MOTMS)
S10:10−メタクリロイロキシデシルメチルジメトキシシラン(MDDMS)
S11: ヘキサメチルジシラザン(HMDS)
S12:オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)
S13:フェニルトリメトキシシラン(PTMS)
S14:ビニルトリメトキシシラン(VTMS)
S15:1−フェニル−1−トリクロロシリルブタン(PTCSB)
(曲げ強さ及び弾性率の測定方法)
回転式ダイヤモンドカッターを用いて、注水下で、2mm厚の圧縮成形体を2mmの間隔で切断し、長さ25mm、幅2mm、厚さ2mmの棒状試験片を各サンプル5本ずつ得た。これらのサンプルに対し、#800耐水研磨紙を用いてバリを除去し、試験片中心部の幅と厚さをマイクロメーターで測定し、万能試験機AG−50kI(島津製作所)にて室温大気中、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1min/mmの条件で三点曲げ試験を行い、応力(曲げ強さ)−歪み曲線を得た。この際、下式(2)に基づいて、曲げ強さを求めた。
・式(2) σ=3PS/2WB
ここで、式(2)中、σ:曲げ強度(Pa),P:試験片破折時の荷重(N),S:支点間距離(m),W:試験片の幅(m),B:試験片の厚さ(m)である。
また、下式(3)に基づいて、曲げ弾性率を求めた。計算には荷重5Nから10Nまでの範囲を用いた。
・式(3) E=(S/4WB)×(F/Y)
ここで、E:曲げ弾性率(Pa)、F/Y:加重−たわみ曲線の傾き(N/m)である。また、S、W、Bは、式(2)に示すものと同様である。
(ビッカース硬度の測定方法)
圧縮成形体表面のビッカース硬度を、微小硬度計(松沢精機株式会社製)を用い、荷重100gf、荷重時間30秒の条件で測定を行った。4点測定を行い、その平均値を求めた。
(平均包埋率の算出方法)
ダイヤモンドカッターを用いて2.0×2.0×10mmの試験片に切削した樹脂複合材料の先端部を、幅0.5mm〜0.8mm、長さ0.8mm〜1.2mmとなるようにレーザーブレードで調整した。その後、先端部をウルトラミクロトーム(RMC社製)及びダイヤモンドナイフウルトラ45°(ダイヤトーム社製)を用い、蒸留水を溜めた状態でクリアランスアングル6度、切削スピード0.5mm/sec、切削試験片厚み100nmの条件で切削した。そして、少なくとも試験片の表面が均一に切削され始めてから5回切削したあとの試験片の研磨面を観察に使用した。このようにして切削された試験片の研磨面に膜厚10nmの白金膜を蒸着処理により成膜した。続いて、当該白金蒸着処理された研磨面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM、10kVでの分解能が1.5nm)により観察した。観察条件は、加速電圧10kV、ビームスポット径3.0nm、試料傾斜角度0度、ワーキングディスタンスは5mmとし、検出器は反射電子用を用いた。無機粒子及び空孔が明確に判別できるよう、フォーカス、非点収差、コントラストおよび明るさを調整した像を4枚撮影し、下記に示す式(1)より、平均包埋率を求めた。
・式(1) 平均包埋率(%)=100×{EP/(EP+V)}
ここで、式(1)中、EPは研磨面内に露出している10μm四方の領域当たりの無機粒子の数{個/(10μm×10μm)}、Vは、EP値をカウントした10μm四方の領域内において、無機粒子が脱落して形成された10μm四方の領域当たりの空孔の数{個/(10μm×10μm)}を意味する。
比較例12
還流冷却管をセットした三口フラスコ中に、無機粒子F1を100g、トルエンを200ml計量混合したのちホモジナイザーで一次粒子まで分散させたスラリーを投入し、表面処理剤S5を2.4g加えて、攪拌しながら2時間加熱還流を行った。遠心分離機によって固形分を分別し、トルエンで2回洗浄を行った後、真空乾燥機にて90℃10時間乾燥を行った。これにより表面処理無機粒子を得た。
次に、(A)熱可塑性樹脂P1を100質量部、(B)表面処理無機粒子を80質量部計量し、これを混練機ラボプラストミル(東洋精機社製)へ投入した。試験温度(溶融温度)250℃、回転数100rpmで5分間混練を行った後にサンプルを回収し、これを熱圧縮成形機を用いて板状(縦50mm×横50×厚み2mm)に圧縮成形し、徐冷することで樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表1に示す。
比較例13〜17
樹脂複合材料の作製に使用する表面処理無機粒子は、表1に示した条件に変更した以外は比較例12と同様にして作製した。続いて、無機粒子の配合量を表1に示す条件とした以外は比較例12と同様な方法で、樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表1に示す。
<実施例7〜21>
樹脂複合材料の作製に使用する表面処理無機粒子は、表1に示した条件に変更した以外は比較例12と同様にして作製した。続いて、熱可塑性樹脂P1の代わりに熱可塑性樹脂P2を用いると共に、無機粒子の配合量を表1に示す条件とし、試験温度(溶融温度)を370℃とした以外は比較例12と同様な方法で、樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表1に示す。
<実施例22>
樹脂複合材料の作製に使用する表面処理無機粒子は、表1に示した条件に変更した以外は比較例12と同様にして作製した。
次に、(A)熱可塑性樹脂P2を100質量部、(B)表面処理無機粒子を150質量部計量し、これを小型二軸押出し成形機(パーカーコーポレーション製)へ投入した。試験温度(溶融温度)370℃、回転数500rpmの条件で混練を行った後にサンプルを回収し、これを熱圧縮成形機を用いて板状(縦50mm×横50×厚み2mm)に圧縮成形し、徐冷することで樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表1に示す。
<実施例23〜32>
樹脂複合材料の作製に使用する表面処理無機粒子は、表1に示した条件に変更した以外は比較例12と同様にして作製した。続いて、用いた熱可塑性樹脂および無機粒子の配合量を表1に示す条件とし、試験温度(溶融温度)を370℃とした以外は比較例12と同様な方法で、樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表1に示す。
<比較例1>
無機粒子の配合量を30質量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表2に示す。
<比較例2、3>
樹脂複合材料の作製に使用する表面処理無機粒子は、表1に示した条件に変更した以外は比較例12と同様にして作製した。
次に、(A)熱可塑性樹脂P1を100質量部、(B)表面処理無機粒子を80質量部計量し、これを混練機ラボプラストミル(東洋精機社製)へ投入した。試験温度(溶融温度)250℃、回転数100rpmで5分間混練を行った後にサンプルを回収し、これを熱圧縮成形機を用いて板状(縦50mm×横50×厚み2mm)に圧縮成形し、徐冷することで樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表2に示す。
<比較例4>
撹拌機付きオートクレーブに、無機粒子F1を100g投入し、撹拌による流動化状態において、200℃に加熱した。次に、オートクレーブの内部を窒素ガスで置換した後、表面処理剤S11を1.4g噴霧した。1時間攪拌後、系内の窒素置換を行い、表面処理無機粒子を得た。
続いて、熱可塑性樹脂P1の代わりに熱可塑性樹脂P2を用いると共に、無機粒子の配合量を表2に示す条件とし、試験温度(溶融温度)を370℃とした以外は比較例1と同様な方法で、樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表2に示す。
<比較例5〜8>
樹脂複合材料の作製に使用する表面処理無機粒子は、表2に示した条件に変更した以外は比較例12と同様にして作製した。続いて、実施例7と同様な方法で、樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表2に示す。
<比較例9>
樹脂複合材料の作製に使用する表面処理無機粒子は、表2に示した条件に変更した以外は比較例12と同様にして作製した。
次に、(A)熱可塑性樹脂P3を100質量部、(B)表面処理無機粒子を80質量部計量し、これを混練機ラボプラストミル(東洋精機社製)へ投入した。試験温度(溶融温度)190℃、回転数100rpmで5分間混練を行った後にサンプルを回収し、これを熱圧縮成形機を用いて板状(縦50mm×横50×厚み2mm)に圧縮成形し、徐冷することで樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表2に示す。
<比較例10>
無機粒子の配合量を表2に示す条件とした以外は実施例10と同様な方法で、樹脂複合材料を得た。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表2に示す。
<比較例11>
無機粒子の配合量を表2に示す条件とした以外は実施例10と同様な方法で、樹脂複合材料の作製を試みたが、無機粒子の配合量が多すぎたため混練できず、樹脂複合材料を得ることが出来なかった。樹脂複合材料の原料組成及び評価結果を表2に示す。
Figure 0005367901
Figure 0005367901

Claims (10)

  1. (A)融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)下記一般式(I)で示される表面処理剤で表面処理された無機粒子40質量部〜400質量部を用いて作製されており、かつ、下式(1)に示される平均包埋率が、55%以上であることを特徴とする樹脂複合材料。
    ・一般式(I) A−R−SiRmBn
    〔一般式(I)中、Aは重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基であり、Rは直鎖部分を構成する原子数が3〜12の有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Bは炭素数1〜6の炭化水素を有するアルコキシ基、ハロゲン基、あるいはイソシアナート基である。ここで、m、nは整数であり、mとnとの和は3であり、mは0〜2の範囲の整数である。〕
    ・式(1) 平均包埋率(%)=100×{EP/(EP+V)}
    〔式(1)中、EPは、前記樹脂複合材料からなる試験片を、ダイヤモンドナイフを用いたマイクロトーム研磨することにより形成された研磨面を白金蒸着処理した後、当該白金蒸着処理された研磨面を走査型電子顕微鏡により観察した場合において、前記白金蒸着処理された研磨面内に露出している10μm四方の領域当たりの前記無機粒子の数{個/(10μm×10μm)}を意味する。
    また、Vは、EP値をカウントした10μm四方の領域内において、前記無機粒子が脱落して形成された10μm四方の領域当たりの空孔の数{個/(10μm×10μm)}を意味する。
    また、前記平均包埋率は、4つの測定点において各々求めた包埋率の平均値を意味する。〕
  2. 請求項1に記載の樹脂複合材料において、
    前記(A)融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂であることを特徴とする樹脂複合材料。
  3. 請求項2に記載の樹脂複合材料において、
    前記芳香族ポリエーテルケトン樹脂は、ポリエーテルエーテルケトンであることを特徴とする樹脂複合材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂複合材料において、
    前記(B)表面処理剤が、下記一般式(II)で示される表面処理剤であることを特徴とする樹脂複合材料。
    ・一般式(II) CH=C(R)−COO−(CH)−SiRmBn
    〔一般式(II)中、Rは水素原子またはメチル基であり、pは3〜12のいずれかの整数であり、R、B、m、nは前記一般式(I)中に示すものと同様である。〕
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂複合材料において、
    前記(B)表面処理剤で表面処理された無機粒子は、平均粒子径が0.05μm以上15μm以下であることを特徴とする樹脂複合材料。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂複合材料を含むことを特徴とする歯科用材料。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂複合材料を含むことを特徴とする骨代替材料。
  8. (A)融点または流動化温度が300℃〜500℃の範囲内にある熱可塑性樹脂100質量部と(B)下記一般式(III)で示される表面処理剤で表面処理された無機粒子40質量部〜400質量部とを含む原料を、融点または流動化温度以上500℃以下の範囲内で加熱して溶融し混練する溶融混練工程を、少なくとも含むことを特徴とする樹脂複合材料の製造方法。
    ・一般式(III) A−R−SiRmBn
    〔一般式(III)中、Aは重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基であり、Rは直鎖部分を構成する原子数が3〜12の有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Bは炭素数1〜6の炭化水素を有するアルコキシ基、ハロゲン基、あるいはイソシアナート基である。ここで、m、nは整数であり、mとnとの和は3であり、mは0〜2の範囲の整数である。〕
  9. 請求項8に記載の樹脂複合材料において、
    前記(B)表面処理剤が、下記一般式(IV)で示される表面処理剤であることを特徴とする樹脂複合材料。
    ・一般式(IV) CH=C(R)−COO−(CH)−SiRmBn
    〔一般式(IV)中、Rは水素原子またはメチル基であり、pは3〜12のいずれかの整数であり、R、B、m、nは前記一般式(III)中に示すものと同様である。〕
  10. 請求項8または請求項9に記載の樹脂複合材料の製造方法において、
    前記(B)表面処理剤で表面処理された無機粒子は、平均粒子径が0.05μm以上15μm以下であることを特徴とする樹脂複合材料の製造方法。
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