JP5367238B2 - ボールねじアクチュエータ及びこれを用いたステアリング装置 - Google Patents

ボールねじアクチュエータ及びこれを用いたステアリング装置 Download PDF

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Description

本発明は、互いに交差又は食い違いの関係にある入力軸と出力軸との間において、かかる入力軸の回転を出力軸の軸方向運動へと変換するボールねじアクチュエータに係り、例えば、ステアリング軸の回転に応じてリレーロッドを軸方向へと動かして転舵輪を操作するステアリング装置に使用可能なボールねじアクチュエータに関する。
従来、車輛の転舵輪を操作するためのステアリング装置として、ボールねじを利用したものが知られている(特開2004−284407号公報)。
このステアリング装置では、タイロッドを介して転舵輪のナックルアームに連結されるリレーロッドに螺旋状のボール転動溝を形成する一方、このボール転動溝には多数のボールを介してスクリューナットを螺合させ、ステアリング軸の回転量に応じて前記スクリューナットを回転させることで前記リレーロッドに軸方向の運動を与え、それによって前記ナックルアームを揺り動かして転舵輪の向きを変更するように構成されている。
前記ステアリング軸とリレーロッドは交差又は食い違いの位置関係にあることから、リレーロッドに螺合するスクリューナットとステアリング軸との間の回転の伝達にはベベルギヤが用いられている。すなわち、ステアリング軸の先端には駆動側ベベルギヤが設けられる一方、スクリューナットには従動側のベベルギヤが一体に固定され、これら駆動側ベベルギヤと従動側ベベルギャとを噛み合わせることにより、ステアリング軸の回転をスクリューナットに伝達し、リレーロッドを軸方向へ移動させることが可能となっている。
そして、このステアリング装置においては、前記ステアリング軸を入力軸、リレーロッドを出力軸とするボールねじアクチュエータが構成されており、入力軸の回転量を出力軸の軸方向移動量に変換できるようになっている。
特開2004−284407号公報
このようなボールねじアクチュエータにおいて、前記スクリューナットに対しては軸方向のスラスト力が作用することから、かかるスクリューナットの回転を支承するにあたっては、相対する一組のアンギュラコンタクト形ベアリングを用いる必要がある。
前記スクリューナットの軸方向に作用するスラスト力について検討してみると、入力軸の回転をスクリューナットに伝達し、それに伴って出力軸を軸方向へ移動させた場合、かかるスクリューナットには出力軸との間の摩擦力に応じたスラスト力が作用することになる。このスラスト力は出力軸の移動方向に依存しており、移動方向が変化すれば、スラスト力の作用方向も変化することになる。一方、ベベルギヤを用いて入力軸の回転をスクリューナットに伝達した場合、駆動側ベベルギヤと従動側ベベルギヤとの接触に応じたスラスト力がスクリューナットの軸方向へ作用することになる。このベベルギヤに起因するスラスト力は出力軸の移動方向に関係なく、常に出力軸の一方向に向けて作用する。
このため、ベベルギヤを用いて入力軸から出力軸へ回転を伝達している従来のボールねじアクチュエータでは、入力軸の回転方向、すなわち出力軸の移動方向に応じて、スクリューナットに作用するスラスト力の大きさが異なるといった現象が生じる。そして、このようなスラスト力の相違は、スクリューナットの回転を支承するアンギュラコンタクト形ベアリングの回転抵抗の差となって顕れ、入力軸を回転させるために必要なトルクが入力軸の回転方向に応じて異なってしまうといった不都合を生じる。
また、このようなボールねじアクチュエータを車輛のステアリング装置に利用する場合、運転者の負担を軽減するためには、路面の外乱が操舵輪からステアリング軸に対して減衰されることなくそのまま伝達されるのを防止することが必要である。すなわち、ステアリング装置に求められる特性としては、ステアリング軸の回転による操舵を軽く行える一方、リレーロッドの軸方向への移動によってはステアリング軸の回転が生起され難いといったことが必要である。
しかし、従来のボールねじアクチュエータは、これをステアリング装置に利用した場合に、そのような特性を満たすものではなかった。
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、出力軸の移動方向にかかわらず入力軸を略同じ回転トルクで操作することができると共に、出力軸の軸方向に作用した外力によって入力軸が回転させられる場合には、かかる外力を減衰して入力軸に伝達することが可能なボールねじアクチュエータを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのようなボールねじアクチュエータを利用したステアリング装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明のボールねじアクチュエータは、ギヤケーシングと、このギヤケーシングを貫通すると共に該ギヤケーシングに対して回転自在に支承され、外周面には螺旋状のボール転動溝が形成された出力軸と、この出力軸と交差する入力軸と、
前記出力軸が貫通すると共にギヤケーシングに対して回転自在に支承され、前記出力軸の軸方向の移動を許容しつつ、かかる出力軸と一緒に回転するトルク伝達部材と、前記入力軸の回転を前記トルク伝達部材に伝えるべく互いに噛み合う一組の駆動側ギヤ及び従動側ギヤと、前記トルク伝達部材をギヤケーシングに対して支承すると共に相対して組付けられた一対のアンギュラコンタクト形ベアリングと、多数のボールを介して前記出力軸のボール転動溝に螺合すると共に前記ギヤケーシングに固定され、かかる出力軸の回転に応じて該出力軸を軸方向へ移動させるスクリューナットと、から構成されている。そして、前記入力軸を回転させて出力軸を軸方向へ移動させた際に、軸方向のいずれに移動した場合であっても、前記トルク伝達部材に対して前記出力軸の移動方向と逆方向のスラスト力が作用する一方、前記出力軸に対してその軸方向へ外力を作用させた際に、前記トルク伝達部材に対して前記出力軸の移動方向と同一方向のスラスト力が作用するようになっている。
このように構成された本発明のボールねじアクチュエータによれば、入力軸を回転させて出力軸を移動させた場合には、軸方向のいずれに移動した場合であっても、前記トルク伝達部材に対して出力軸の移動方向と逆方向のスラスト力が作用することから、このスラスト力と出力軸の移動によって生じるスラスト力とは常に打ち消し合うことになる。このため、入力軸の回転方向にかかわらず、これを回転させるために必要な回転トルクは同一であり、例えばこのボールねじアクチュエータをステアリング装置に使用した場合には、ステアリング軸の回転方向に依らず、運転者に同じ操舵感を与えることが可能となる。
また、本発明のボールねじアクチュエータでは入力軸を回転させて出力軸を移動させた場合、前記トルク伝達部材に対して出力軸の移動方向と逆方向のスラスト力が作用することから、このスラスト力と出力軸の移動によって生じるスラスト力とは互いに打ち消し合うことになる。このため、前記トルク伝達部材に組付けられた一対のアンギュラコンタクト形ベアリングに作用するスラスト力が軽減され、これらベアリングの回転抵抗を軽減することが可能となる。
一方、本発明のボールねじアクチュエータでは前記出力軸に対して軸方向の外力を与えると、かかる外力が入力軸の回転トルクに変換されて該入力軸に回転が生じる。この場合、前記出力軸に対してその軸方向へ外力を作用させると、前記トルク伝達部材に対して前記出力軸の移動方向と同一方向のスラスト力が作用するように構成されているので、このスラスト力と出力軸の移動によって生じるスラスト力とは常に同一方向へ重なり合うことになる。このため、前記アンギュラコンタクト形ベアリングに作用するスラスト力の合計は、入力軸を回転させて出力軸を移動させた場合よりも常に大きくなり、これらベアリングの回転抵抗は増大する。
すなわち、本発明のボールねじアクチュエータでは、入力軸を操作して出力軸を軸方向へ移動させる場合には、かかる入力軸を軽く操作することができる一方、出力軸を軸方向へ移動させて入力軸を回転させようとすると、出力軸に対してより大きな外力を作用させることが必要となる。
このことから、本発明のボールねじアクチュエータを車輛のステアリング装置に利用した場合には、運転者はステアリング軸を軽く操舵することができ、また、操舵輪からリレーロッドを介してステアリング軸に伝わる外力は減衰され、運転者の操舵に対する負担を軽減することが可能となる。
このような本発明において、入力軸の回転方向に応じ、前記トルク伝達部材に対して前記出力軸の移動方向と逆方向のスラスト力を作用させる具体的構成としては、入力軸の回転を前記トルク伝達部材に伝える駆動側ギヤ及び従動側ギヤにスパイラルベベルギヤやハイポイドギヤを採用することが挙げられる。これらのギヤはその回転方向に応じて軸方向のスラスト力が発生するので、ギヤの捩れ角とその取付け方向とを選択することにより、本発明の構成を実現することができる。
以下、添付図面に基づいて本発明のボールねじアクチュエータ及びこれを用いたステアリング装置を詳細に説明する。
図1は本発明のボールねじアクチュエータを用いたステアリング装置の一例を示す概略図である。このステアリング装置は、ステアリングホイール1の回転が伝達されるステアリング軸2と、このステアリング軸2の回転に応じて軸方向へ移動するリレーロッド3と、前記ステアリング軸2の回転を前記リレーロッド3の軸方向への運動に変換するボールねじアクチュエータ4とを有しており、前記リレーロッド3はボールねじアクチュエータ4のギヤケーシング5を貫通している。左右の転舵輪6を支えるハブ7にはナックルアーム9が設けられており、前記リレーロッド3の両端はタイロッド10を介してそれぞれに左右のナックルアーム9に連結されている。また、ナックルアーム9とタイロッド10の連結、タイロッド10とリレーロッド3の連結は球面軸受11を介して行われている。
前記ステアリングホイール1を回してステアリング軸2を矢線A方向に沿っていずれかの方向へ回転させると、その回転方向に応じてリレーロッド3が軸方向(矢線B方向)へ移動し、タイロッド10がナックルアーム9を押し引きする結果として、左右の転舵輪6が矢線C方向へ揺れ動いてその向きを変更することになる。
図2は本発明を適用した前記ボールねじアクチュエータ4の一例を示すものであり、ギヤケーシング5を取り去った状態の斜視図である。また、図3は前記ボールねじアクチュエータ4の分解斜視図である。前記リレーロッド3はボールねじアクチュエータ4のギヤケーシングを貫通するように設けられており、その表面にはリレーロッド3の軸方向に沿ってキー溝30が形成されると共に、螺旋状のボール転動溝31も形成されている。これらキー溝30とボール転動溝31はリレーロッド3外周面上に重なることなく形成されている。このリレーロッド3は本発明における出力軸に相当する。
前記リレーロッド3にはトルク伝達部材としての回転スリーブ35が嵌合している。この回転スリーブ35はリレーロッド3の軸方向に関して自由に移動し得るが、前記キー溝30に嵌合するキーを介して周方向には固定されている。従って、前記回転スリーブ35はキー溝30の形成領域に関してリレーロッド3上を軸方向へ移動可能であり、リレーロッド3との間で回転トルクの伝達が可能である。また、この回転スリーブ35の軸方向の両端には一対のアンギュラコンタクト形ベアリング39a,39bが装着されており、回転スリーブ35の回転をギヤケーシングに対して支承している。これらアンギュラコンタクト形ベアリングとしては、アンギュラコンタクト玉軸受や円錐ころ軸受等を用いることができ、図2に示す実施形態では円錐ころ軸受を使用している。これら一対の円錐ころ軸受39a,39bは互いに対向するように前記回転スリーブ35に組付けられており、かかる回転スリーブ35に対し軸方向のいずれか一方に向けてスラスト荷重が作用した場合に、円錐ころ軸受39a,39bのいずれかが主となってスラスト荷重を負荷するように構成されている。尚、前記回転スリーブ35は本発明におけるトルク伝達部材に相当し、例えばボールスプラインに置き換えることも可能である。
一方、前記ボール転動溝31には多数のボールを介してスクリューナット36が螺合しており、リレーロッド3とスクリューナット36とによってボールねじが構成されている。このスクリューナット36はギヤケーシングに固定されており、前記リレーロッド3が回転すると、その回転量に応じて該リレーロッド3がスクリューナット36に対して軸方向へ移動するようになっている。
すなわち、前記回転スリーブ35に対して回転を与え、リレーロッド3を回転スリーブ35と共に回転させると、前記スクリューナット36の働きによってリレーロッド3が自らの回転方向及び回転量に応じて軸方向へ移動する。このとき、回転スリーブ35はリレーロッド3の軸方向への移動を許容しながら該リレーロッド3を回転させることになる。
そして、このようにしてリレーロッドが軸方向へ移動することにより、図1に示したように、リレーロッド3の軸方向端部に連結された前記タイロッド10を介して前記ナックルアーム9が押し引きされることになり、リレーロッド3の軸方向移動量に応じて転舵輪6の向きを変化させることができるようになっている。リレーロッド3は軸方向への移動に伴って回転を生じているが、タイロッド10の一端は球面軸受11を介することによってリレーロッド3に対して回転自在に連結されており、しかも他端はナックルアーム9に連結されているので、リレーロッド3が回転しても前記球面軸受11が当該回転を吸収し、タイロッド10が回転を生じることはない。
前記ステアリング軸2の回転は図2に示す入力軸20に伝達され、この入力軸20がステアリング軸2の回転に応じて前記回転スリーブ35を回転させるように構成されている。入力軸20の先端には駆動側ギヤ21が固定されており、この駆動側ギヤ21は前記回転スリーブ35に設けられた従動側ギヤ38と噛み合っている。これにより、運転者がステアリングホイール1を回転させると、その回転が回転スリーブ35に伝達され、リレーロッド3が回転するようになっている。
前記駆動側ギヤ21及び従動側ギヤ38としてはスパイラルベベルギヤが使用されている。スパイラルベベルギヤでは歯すじが傾斜しているため、駆動側ギヤ21と従動側ギヤ38が噛み合って回転した際に、従動側ギヤ38に対して軸方向へのスラスト力が作用し、従動側ギヤ38はその回転方向に応じて当該ギヤ38の円錐頂点に向かって引き込まれたり、押し出されたりする。前記スラスト力の作用方向は、スパイラルベベルギヤの回転方向及び歯すじの捩れ方向の組み合わせによって一義的に決定される。図2に示す駆動側ギヤ21及び従動側ギヤ38の組み合わせにおいて、一方の駆動側ギヤ21としては左捩れのスパイラルベベルギヤが用いられ、従動側ギヤ38としては右捩れのスパイラルベベルギヤが用いられている。また、従動側ギヤ38は歯面をスクリューナット36へ向けた状態で回転スリーブ35に固定されている。
図4は、ステアリングホイール1を操作して入力軸20を矢線A方向に回転させた場合に、前記回転スリーブ35に作用するスラスト力を示している。入力軸20を矢線A方向へ回転させると、駆動側ギヤ21及び従動側ギヤ38の噛み合いにより、リレーロッド3は矢線a方向に回転し、このリレーロッド3にはボール転走溝31が右ねじとして形成されていることから、スクリューナット36に螺合したリレーロッド3は紙面左方向、すなわち矢線L方向へ進行する。
このとき、リレーロッド3と回転スリーブ35との間には摩擦力が作用することから、回転スリーブ35にはリレーロッド3の進行方向に向けたスラスト力XL が作用することになる。一方、駆動側ギヤ21に矢線A方向の回転を与えると、これと噛み合うスパイラルベベルギヤ、すなわち従動側ギヤ38には駆動側ギヤ21の回転中心から離れる方向のスラスト力SR が発生する。この実施形態における従動側ギヤ38の配置例では、かかる従動側ギヤ38に作用するスラスト力はリレーロッド3の進行方向とは逆方向に合致している。そして、このスラスト力SR は従動側ギヤ38が固定された回転スリーブ35に作用する。つまり、入力軸20を矢線A方向へ回転させると、回転スリーブ35には互いに反する方向のスラスト力XL及びSR が作用し、これらスラスト力が互いに打ち消しあって、回転スリーブ35に作用するスラスト力が軽減されるようになっている。
図5は、ステアリングホイール1を操作して入力軸20を図4の場合とは反対の矢線B方向に回転させた場合に、前記回転スリーブ35に作用するスラスト力を示している。入力軸を矢線B方向へ回転させると、駆動側ギヤ21及び従動側ギヤ38の噛み合いにより、リレーロッド3は矢線b方向に回転し、このリレーロッド3にはボール転走溝31が右ねじとして形成されていることから、スクリューナット36に螺合したリレーロッド3は紙面右方向、すなわち矢線R方向へ進行する。
図4の場合と同様に、リレーロッド3と回転スリーブ35との間には摩擦力が作用することから、回転スリーブ35にはリレーロッド3の進行方向に向けたスラスト力XR が作用することになる。一方、駆動側ギヤ21に矢線B方向の回転を与えると、これと噛み合う従動側ギヤ38には駆動側ギヤ21の回転中心へ引き寄せる方向のスラスト力SL が発生し、その方向はリレーロッド3の進行方向とは逆方向に合致している。そして、このスラスト力SL は従動側ギヤ38が固定された回転スリーブ35に作用する。つまり、入力軸20を矢線B方向へ回転させると、回転スリーブ35には互いに反する方向のスラスト力XR 及びSL が作用し、これらスラスト力が互いに打ち消しあって、回転スリーブ35に作用するスラスト力が軽減されるようになっている。
そして、リレーロッド3の軸方向への移動に伴って回転スリーブ35に作用するスラスト力XL 及びXR は共に同程度の大きさであり、また、従動側ギヤから回転スリーブに作用するスラスト力SR 及びSL も同程度の大きさである。
このように、本発明のボールねじアクチュエータでは、入力軸20を回転させて出力軸、すなわちリレーロッド3を軸方向へ進行させた場合に、入力軸20の回転方向にかかわらず、回転スリーブ35に作用するスラスト力は同程度の大きさとなり、これによって円錐ころ軸受39a,39bで発生する回転抵抗も同程度の大きさとなることから、入力軸の操作に必要な回転トルクはその回転方向にかかわらず同程度となる。
また、入力軸20を回転させてリレーロッド3を軸方向へ移動させる場合には、かかる入力軸20の回転方向にかかわらず、リレーロッド3の軸方向への移動に起因したスラスト力と従動側ギヤ38の回転に起因したスラスト力とが常に打ち消し合う方向へ作用することから、回転スリーブ35の回転を支承するアンギュラコンタクト形ベアリング39a,39bの回転抵抗を軽減することができ、入力軸20の操作を小さな回転トルクで行うことが可能になっている。このことは、本発明のボールねじアクチュエータをステアリング装置に適用した際に、運転者がステアリングホイール1を軽い操舵力で操作できるといった作用効果を奏するものである。
一方、図6はリレーロッド3に対して紙面左方向への外力FL が作用した場合に、前記回転スリーブ35に作用するスラスト力を示している。リレーロッド3が前記外力FL によって紙面左方向へ移動すると、かかるリレーロッド3はスクリューナット36の作用によって矢線a方向へ回転を生じることになる。そして、リレーロッド3に嵌合する回転スリーブ35が従動側ギヤ38と共に回転し、従動側ギヤ38及び駆動側ギヤ21の噛み合いにより、入力軸20は矢線A方向へ回転することになる。
このとき、リレーロッド3と回転スリーブ35との間には摩擦力が作用することから、回転スリーブ35にはリレーロッド3の移動方向に向けたスラスト力XL が作用することになる。一方、従動側ギヤ38に矢線a方向の回転を与えて駆動側ギヤ21を回転させると、図4の場合とは逆に、スパイラルベベルギヤである従動側ギヤ38には駆動側ギヤ21の回転中心に向けたスラスト力SL が発生する。この実施形態における従動側ギヤ38の配置例では、かかる従動側ギヤ38に作用するスラスト力はリレーロッド3の移動方向と合致している。そして、このスラスト力SL は従動側ギヤ38が固定された回転スリーブ35に作用する。つまり、リレーロッド3に紙面左方向への外力FL を作用させて該リレーロッド3を移動させると、回転スリーブ35には同一方向のスラスト力XL及びSL が作用し、これらスラスト力が互いに重なり合って、回転スリーブ35に作用するスラスト力が増強されるようになっている。
これに対し、図7はリレーロッド3に対して紙面右方向への外力FR が作用した場合に、前記回転スリーブ35に作用するスラスト力を示している。リレーロッド3が前記外力FR によって紙面右方向へ移動すると、かかるリレーロッド3はスクリューナット36の作用によって矢線b方向へ回転を生じることになる。そして、リレーロッド3に嵌合する回転スリーブ35が従動側ギヤ38と共に回転し、従動側ギヤ38及び駆動側ギヤ21の噛み合いにより、入力軸20は矢線B方向へ回転することになる。
このとき、リレーロッド3と回転スリーブ35との間には摩擦力が作用することから、回転スリーブ35にはリレーロッド3の移動方向に向けたスラスト力XR が作用することになる。一方、従動側ギヤ38に矢線b方向の回転を与えて駆動側ギヤ21を回転させると、図5の場合とは逆に、スパイラルベベルギヤである従動側ギヤ38には駆動側ギヤ21の回転中心から離れる方向のスラスト力SR が発生する。この実施形態における従動側ギヤ38の配置例では、かかる従動側ギヤ38に作用するスラスト力はリレーロッド3の移動方向と合致している。そして、このスラスト力SR は従動側ギヤ38が固定された回転スリーブ35に作用する。つまり、リレーロッド3に紙面右方向への外力FR を作用させて該リレーロッド3を移動させると、回転スリーブ35には同一方向のスラスト力XR及びSR が作用し、これらスラスト力が互いに重なり合って、回転スリーブ35に作用するスラスト力が増強されるようになっている。
このように、リレーロッド3の軸方向へ外力を作用させて入力軸20を回転させる場合には、かかる外力の方向(リレーロッド3の移動方向)にかかわらず、リレーロッド3の軸方向への移動に起因したスラスト力と従動側ギヤ38の回転に起因したスラスト力とが常に重なり合う方向へ作用することから、回転スリーブ35の回転を支承するアンギュラコンタクト形ベアリング39a,39bの回転抵抗が増加し、リレーロッド3に作用した外力を減衰させた後に入力軸20に伝達することが可能となる。
すなわち、本発明のボールねじアクチュエータでは、入力軸20を操作して出力軸としてのリレーロッド3を軸方向へ移動させる場合には、かかる入力軸20を軽く操作することができる一方、リレーロッド3を軸方向へ移動させて入力軸20を回転させる場合には、より大きな力が必要となっている。このことから、本発明のボールねじアクチュエータをステアリング装置に適用した場合には、運転者がステアリングホイール1を軽い操舵力で操作できる一方、操舵輪6からリレーロッド3に伝わった外力を減衰してステアリングホイール1に伝達することができるといった特性を得ることができ、運転者の操作負担を軽減することが可能となるものである。
ステアリング装置の一例を示す概略図である。 本発明を適用したボールねじアクチュエータの実施形態を示す斜視図である。 図2に示すボールねじアクチュエータの分解斜視図である。 入力軸を矢線A方向へ回転させた際のスラスト力の発生状況を示す図である。 入力軸を矢線B方向へ回転させた際のスラスト力の発生状況を示す図である。 リレーロッドに外力FL を作用させた際のスラスト力の発生状況を示す図である。 リレーロッドに外力FR を作用させた際のスラスト力の発生状況を示す図である。
符号の説明
1…ステアリングホイール、3…リレーロッド、5…ギヤケーシング、20…入力軸、21…駆動側ギヤ、35…回転スリーブ、36…スクリューナット、38…従動側ギヤ、39a,39b…円錐ころ軸受

Claims (3)

  1. ギヤケーシングと、
    このギヤケーシングを貫通すると共に該ギヤケーシングに対して回転自在に支承され、外周面には螺旋状のボール転動溝が形成された出力軸と、
    この出力軸と交差する入力軸と、
    前記出力軸が貫通すると共にギヤケーシングに対して回転自在に支承され、前記出力軸の軸方向の移動を許容しつつ、かかる出力軸と一緒に回転するトルク伝達部材と、
    前記入力軸の回転を前記トルク伝達部材に伝えるべく互いに噛み合う一組の駆動側ギヤ及び従動側ギヤと、
    前記トルク伝達部材をギヤケーシングに対して支承すると共に相対して組付けられた一対のアンギュラコンタクト形ベアリングと、
    多数のボールを介して前記出力軸のボール転動溝に螺合すると共に前記ギヤケーシングに固定され、かかる出力軸の回転に応じて該出力軸を軸方向へ移動させるスクリューナットと、から構成され、
    前記一組の駆動側ギヤ及び従動側ギヤはスパイラルベベルギヤであり、前記入力軸を回転させて出力軸を軸方向へ移動させた際に、当該出力軸が軸方向のいずれに移動した場合であっても、前記トルク伝達部材に対して前記出力軸の移動方向と逆方向のスラスト力を作用させる一方、前記出力軸に対してその軸方向へ外力を作用させた際に、前記トルク伝達部材に対して前記出力軸の移動方向と同一方向のスラスト力を作用させることを特徴とするボールねじアクチュエータ。
  2. 前記アンギュラコンタクト形ベアリングは、一対の円錐コロ軸受であることを特徴とする請求項1記載のボールねじアクチュエータ。
  3. 請求項1記載のボールねじアクチュエータにおいて、前記入力軸をステアリング軸、前記出力軸をリレーロッドとし、
    このリレーロッドの軸方向の両端には当該リレーロッドの軸方向移動に伴って転舵輪を動かす一対のタイロッドを結合する一方、前記リレーロッドとタイロッドとの間には、かかるリレーロッドの回転運動を前記タイロッドに伝達することなく該リレーロッドの軸方向移動を前記タイロッドに伝達する一対の球面軸受を設けたことを特徴とするステアリング装置。
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