以下、本発明について詳しく説明する。
<第一工程>
本発明の第一工程では、リン酸類及び/又は有機ホスホン酸類(場合によっては「リン酸類等」ともいう。)の存在下で、フェノール類と、縮合反応によってフェノール類を架橋し得る化合物とを、不均一系反応(厳密には相分離反応)させることにより、初期縮合物が調製される。
フェノール類としては、例えばフェノールの他、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、2−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−プロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−プロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−sec−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、3−シクロヘキシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、2−ノニルフェノール、3−ノニルフェノール、4−ノニルフェノール、2−ドデシルフェノール、3−ドデシルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−オクタデシルフェノール、3−オクタデシルフェノール、4−オクタデシルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、3−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール等のアルキルフェノール類、o−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、2−エチル−4−イソプロペニルフェノール等のイソプロペニルフェノール類、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール等のフェニルフェノール類、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール等のナフチルフェノール類、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、o−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール、o−プロポキシフェノール、m−プロポキシフェノール、p−プロポキシフェノール等のアルコキシフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビス(2−メチルフェノール)A、ビス(2−メチルフェノール)F、ビスフェノールS、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン類などを挙げることができる。
また、縮合反応によってフェノール類を架橋し得る化合物としては、例えば、アルデヒド類、フェノール類メチロール化合物、アラルキル化合物、下記一般式(1)で示される化合物、ジアルデヒド類等が挙げられる。
(式中、R1、R1’はハロゲン、水酸基または炭素数が1〜6のアルコキシ基を示し、それぞれ異なっていても良く、同一であっても良い。R2、R3、R2’、R3’は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良く、同一であっても良い。)
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、パラプロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどを挙げることができる。
フェノール類とアルデヒド類との配合比(アルデヒド類/フェノール類)は、モル基準で好ましくは0.33〜3.0、より好ましくは0.6〜1.5である。
フェノール類メチロール化合物としては、分子内に少なくともひとつのメチロール基を有するものであれば特に限定はされず、例えば、フェノール類にホルムアルデヒド類を反応させてメチロール化すること等で得ることができる。具体的には、例えば、フェノール類モノマーのモノメチロール化合物、フェノール類モノマーのジメチロール化合物、フェノール類モノマーのトリメチロール化合物、フェノール類ダイマーのモノメチロール化合物、フェノール類ダイマーのジメチロール化合物、フェノール類ダイマーのトリメチロール化合物、フェノール類ダイマーのテトラメチロール化合物、トリスフェノール類のメチロール化合物等が用いられる。
具体的には、フェノール類モノマーのモノメチロール化合物としては、4−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェノール、2−シクロヘキシル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−5−メチル−2−イソプロピルフェノール等が挙げられ、フェノール類モノマーのジメチロール化合物としては、2,6−ジヒドロキシメチル−4−メチルフェノール、2,4−ジヒドロキシメチル−6−メチルフェノール、2,6−ジヒドロキシメチル−3,4−ジメチルフェノール、4,6−ジヒドロキシメチル−2,3−ジメチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジヒドロキシメチルフェノール、4−シクロヘキシル−2,6−ジヒドロキシメチルフェノール、2−シクロヘキシル−4,6−ジヒドロキシメチルフェノール、2,6−ジヒドロキシメチル−4−エチルフェノール、4,6−ジヒドロキシメチル−2−エチルフェノール、4,6−ジヒドロキシメチル−2−イソプロピルフェノール、6−シクロヘキシル−2,4−ジヒドロキシメチル−3−メチルフェノール等が挙げられ、フェノール類モノマーのトリメチロール化合物としては、2,4,6−トリヒドロキシメチルフェノールが挙げられる。
また、フェノール類ダイマーのモノメチロール化合物としては、2,2’−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−3,5,5’−トリメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−3,3’、5−トリメチルジフェニルメタン等が挙げられ、フェノール類ダイマーのジメチロール化合物としては、ビス(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェノール)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェノール)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェノール)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−2,3−ジメチルフェノール)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−4,5−ジメチルフェノール)メタン等が挙げられ、フェノール類ダイマーのテトラメチロール化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシメチルフェノール)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシメチルフェノール)プロパン等が挙げられる。
フェノール類とフェノール類メチロール化合物との配合比(フェノール類メチロール化合物/フェノール類)は、モル基準で好ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.2〜0.5である。
アラルキル化合物としては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
(式中、R、R’は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良く、同一であっても良い。)
具体的には、例えば、α,α’−ジヒドロキシ−p−キシレン、α,α’−ジヒドロキシ−m−キシレン、α,α’−ジヒドロキシ−o−キシレン等のアラルキルアルコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン(PXDM)、α,α’−ジメトキシ−m−キシレン、α,α’−ジメトキシ−o−キシレン、α,α’−ジエトキシ−p−キシレン、α,α’−ジエトキシ−m−キシレン、α,α’−ジエトキシ−o−キシレン、α−ヒドロキシ−α’−メトキシ−p−キシレン、α−ヒドロキシ−α’−メトキシ−m−キシレン、α−ヒドロキシ−α’−メトキシ−o−キシレン、α−エトキシ−α’−ヒドロキシ−p−キシレン、α−エトキシ−α’−ヒドロキシ−m−キシレン、α−エトキシ−α’−ヒドロキシ−o−キシレン、α−エトキシ−α’−メトキシ−p−キシレン、α−エトキシ−α’−メトキシ−m−キシレン、α−エトキシ−α’−メトキシ−o−キシレン等のアラルキルエーテルが挙げられ、これらのうちでも、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン(PXDM)が好ましい。
フェノール類とアラルキル化合物との配合比(アラルキル化合物/フェノール類)は、モル基準で好ましくは0.5〜0.85、より好ましくは0.55〜0.7である。
ビフェニル骨格を有する上記一般式(1)で示される化合物としては、例えば、2,2’−ジメチロール−ビフェニル、2,3’−ジメチロール−ビフェニル、2,4’−ジメチロール−ビフェニル、3,3’−ジメチロール−ビフェニル、3,4’−ジメチロール−ビフェニル、4,4’−ジメチロール−ビフェニル等のアラルキルアルコール、2,2’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,3’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル(BMMB)、2,2’−ビス(エトキシメチル)ビフェニル、2,3’−ビス(エトキシメチル)ビフェニル、2,4’−ビス(エトキシメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(エトキシメチル)ビフェニル、3,4’−ビス(エトキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(エトキシメチル)ビフェニル(BEMB)等のアラルキルエーテルが挙げられ、これらのうちでも、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル(BMMB)が好ましい。
フェノール類と一般式(1)で示される化合物との配合比(一般式(1)で示される化合物/フェノール類)は、モル基準で好ましくは0.1〜0.7、より好ましくは0.15〜0.55である。
ジアルデヒド類としては、ジアルデヒドおよびその誘導体が挙げられ、例えばグリオキザール、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、グリオキザールナトリウムビスルファイト水付加物、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。グリオキザールとしては、一般的に市販されている40質量%水溶液を用いることもできる。
フェノール類とジアルデヒド類との配合比(フェノール類/ジアルデヒド類)は、モル基準で好ましくは4〜50、より好ましくは4.5〜30、さらに好ましくは5〜15である。
このような反応原料は、それぞれ、上記の例示に限定はされず、また、それぞれを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、その配合方法としては、他の原料(リン酸類等)とともに一括して仕込む方法、あるいは反応の進行とともに分割して加えていく方法など、目的に適した方法を採用してもよい。
リン酸類及び/又は有機ホスホン酸類は、いずれも、フェノール類と縮合反応によってフェノール類を架橋し得る化合物とを、不均一系反応(相分離反応)させるための場を形成し、かつ反応触媒としても機能するものであるが、コスト面で有利なリン酸類が好ましい。
リン酸類の例としては、例えばメタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸等のポリリン酸、無水リン酸及びこれらの混合物等が挙げられるが、工業的に入手し易いオルトリン酸水溶液、例えば75質量%リン酸や89質量%リン酸などが好ましい。
有機ホスホン酸類の例としては、例えばエチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、β−アミノエチルホスホン酸N,N−ジ酢酸、アミノメチルホスホン酸N,N−ジ酢酸や、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸及びこれらの混合物等が例示されるが、これらの中でも、工業的に入手し易い1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸が好ましい。
リン酸類及び/又は有機ホスホン酸類の配合量としては、フェノール類100質量部に対して5質量部以上であることが望ましいが、反応容積効率、安全性、相分離効果などを勘案すると、好ましくは20〜500質量部、より好ましくは50〜200質量部の範囲から選択される。配合量が5質量部未満では、不均一系反応の形成及び形成維持が不十分となるおそれがある。また、その配合方法は、反応原料と共に一括して仕込む方法、あるいは反応の進行と共に分割して加えていく方法など、目的に適した方法を採用してよい。
第一工程においては、反応補助溶媒としての非反応性含酸素有機溶媒及び/又は界面活性剤を適用することで、不均一系反応の促進、反応時間の短縮が可能となり、しかもフェノール化合物の収率向上にも寄与することができるなどの諸効果を享受し得ることができる。
非反応性含酸素有機溶媒としては、アルコール類、多価アルコール系エーテル、環状エーテル類、多価アルコール系エステル、ケトン類、スルホキシド類などが挙げられる。好適な具体例としては、メタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを例示することができる。なお、非反応性含酸素有機溶媒は、液体のものに限定されず、前記諸効果を奏しかつ反応時に液状を呈するものであれば、固体でも使用することができるし、またそれぞれを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
非反応性含酸素有機溶媒の配合量としては、特に限定されないが、フェノール類100質量部に対して、好ましくは5〜1000質量部であり、より好ましくは10〜500質量部である。配合量が5質量部未満では溶媒効果が認められない可能性があり、また1000質量部を超えると反応速度及び反応容積効率の面から生産性が低下する可能性がある。
また、界面活性剤としては、石鹸、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、フェニルエーテルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリエチレングリコール脂肪族エステル、脂肪族モノグリセライド、ソルビタン脂肪族エステル、ペンタエリスリトール脂肪族エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、脂肪族アルキロールアマイド等のノニオン系界面活性剤、モノアルキルアンモニウムクロライド、アミン酸塩類等のカチオン系界面活性剤等を例示することができる。
界面活性剤の配合量は、特に限定はされないが、フェノール類100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1〜10質量部である。
なお、反応補助溶媒としての非反応性含酸素有機溶媒や界面活性剤の使用の際には、後述するような相分離性(非水溶性有機溶剤相と水相)に悪影響を及ぼさないようなものを選択するか、又は非水溶性有機溶剤を配合する前に回収処理を施すなど、配慮の上、適宜決定すればよい。
第一工程において、反応温度としては、反応効率及び相分離効果の観点から、一般に40℃以上の温度が採用されるが、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは還流温度である。反応時間としては、反応温度、リン酸類等の配合量、反応系の含水量、初期縮合物の縮合度合などを考慮して決定されるが、一般的には1〜50時間の範囲である。不均一系反応は、通常、常圧下で行なわれるが、不均一系反応を維持し得るならば、加圧下又は減圧下で反応を行なって差し支えない。
<第二工程>
第一工程終了後、攪拌を停止して静置し、有機相(主に初期縮合物と少量のリン酸類等を含む)と水相(主にリン酸類等と水溶性反応原料)とに分離させ、水相を系外に除去する。尚、除去された水相からはリン酸類等が回収されることとなる。
第二工程では、水相除去後の、有機相、懸濁相を含む残留相を、好ましくは攪拌混合下に、加熱還流する。加熱還流の時間は、製造条件に応じて経験的に決定すればよいが、通常、1〜10時間程度である。なお、この加熱還流は、場合によっては、還流温度に達せずとも、また、加圧下で行ってもよい。
残留相の加熱還流により、懸濁相が消滅し有機相と水相との境界が明確となり、残留相中のリン酸類及び/又は有機ホスホン酸類の除去効率が飛躍的に改善され、第三工程に要する総時間を、12時間以下と大幅に短縮することができる。また、第三工程で使用する水量についても、フェノール100質量部あたり、1000質量部以下、好ましくは800質量部以下、より好ましくは600質量部以下とすることができる。
第二工程においては、水相を分離させる前に、好ましくは攪拌混合しながら、水を添加してリン酸類等の水相への溶解量を高めることが好ましい。水の配合量としては、特に限定されないが、多ければ多いほど相分離させた際の有機相と水相との分離性が良いという点で好ましいが、具体的には、系内水分量がフェノール類100質量部に対して、100質量部以上に成るように追加水を配合することが望ましく、通常、200質量部以上、とりわけ300質量部以上となるように配合される。有機相と水相との分離性が良ければ、有機質成分が水相より排除されて有機相側に移行し、逆に有機相よりリン酸類等が排除され水相側に移行することとなる。
また、水相を分離させる前に、好ましくは攪拌混合しながら、非水溶性有機溶剤を添加して、初期縮合物の有機相への溶解性を高めると共に系の粘度を低減することが好ましい。
非水溶性有機溶剤は、初期縮合物を溶解し、かつ水相と分離相を形成しうる有機溶剤であれば特に限定されるものではないが、好適な例としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、メチル−n−アミルケトン等のケトン類、例えばn−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−1−ブタノール等のアルコール類、例えばアニソール、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル等の芳香族又は脂肪族エーテル類や例えば酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル等のエステル類などが例示される。これらの中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトンが好ましく、とりわけメチルイソブチルケトンが好ましい。
非水溶性有機溶剤は、同種又は異種をそれぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、その配合量としては特に限定されないが、通常、フェノール類100質量部に対して、10〜1000質量部の範囲内で選択されるが、好ましくは30〜500質量部である。配合量が10質量部未満では系の粘度低下効果が乏しく、逆に1000質量部を越えると容積効率及び原料コストの観点から好ましくない。なお、第一工程において、非反応性含酸素有機溶媒として非水溶性有機溶剤を使用した場合は、その必要量を追加的に配合すればよい。
なお、上述した水相を分離させる前の水・非水溶性有機溶剤の添加は、どちらか一方のみの添加でもよいし、両方の添加でもよい。
また、水相を除去した後、加熱還流前に、残留相に非水溶性有機溶剤を添加することが好ましい。非水溶性有機溶剤は、初期縮合物を溶解し、かつ水相と分離相を形成しうる有機溶剤であれば特に限定されるものではなく、好適な例としては、上述の水相分離前に添加する非水溶性有機溶剤と同様のものが例示され、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトンが好ましく、とりわけメチルイソブチルケトンが好ましい。
非水溶性有機溶剤は、同種又は異種をそれぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、その配合量としては特に限定されないが、通常、フェノール類100質量部に対して、10〜1000質量部の範囲内で選択されるが、好ましくは30〜500質量部である。配合量が10質量部未満では系の粘度低下効果が乏しく、逆に1000質量部を越えると容積効率及び原料コストの観点から好ましくない。なお、第一工程において非反応性含酸素有機溶媒として非水溶性有機溶剤を使用した場合、或いは水相分離前に非水溶性有機溶剤を添加した場合、その必要量を追加的に配合すればよい。
第二工程における、加熱還流時以外の系内の維持温度は、相分離時間の短縮及びリン酸類の回収効率の点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。また、水相を分離除去するための相分離時間は、通常、1〜24時間程度である。
本発明による、不均一反応終了後、水相を除去して残留した相を加熱処理することにより、その後のリン酸類及び/又は有機ホスホン酸類の除去効率が著しく改善される理由は定かではないが、以下のように推察される。すなわち、不均一反応(第一工程)終了後のフェノール化合物は水相とも比較的強い親和性を有しており、それが懸濁相を形成し、その状態のまま水相と分離させる処理を行っても、芳しい分離性を示さないものと思われる。しかしながら、第二工程以降において、残留相のフェノール化合物を加熱処理し分子運動を活性化させることで、有機相との親和性をより高めることができ、水相との分離性を向上させることができる。さらに、湯水洗時の懸濁相と有機相との衝突確立も向上させることができ、リン酸類及び/又は有機ホスホン酸類の除去効率が改善される。その結果、懸濁相を低減でき、水相との分離性が飛躍的に向上し、リン酸類及び/又は有機ホスホン酸類の除去効率が著しく改善されるものと思われる。
<第三工程>
第二工程後、残留相に水または湯を添加し、好ましくは攪拌混合した後、静置して有機相に残留する微量のリン酸類を水相側に移行させ水相を除去する湯水洗を少なくとも一回行うことにより、残留リン酸類を低減する。湯水洗に際しては、分離性の観点から、必要に応じて加熱しながらあるいは湯を添加し、系内の温度を好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上に保持することが好ましい。
第三工程では、湯水洗後の残留相を、好ましくは攪拌混合下に、加熱還流することにより、湯水洗に要する時間・水量の更なる短縮或いは低減を図れ、好ましい。加熱還流の時間は、製造条件に応じて経験的に決定すればよいが、通常、1〜10時間程度である。なお、この加熱還流は、場合によっては、加圧下で行ってもよい。
第三工程後、減圧加熱下に非水溶性有機溶剤や残留水分を除去し、フェノール化合物が得られることとなる。
<フェノール化合物>
本発明の製造方法により得られるフェノール化合物は、フェノール樹脂またはフェノール誘導体である。
例えば、フェノール類とアルデヒド類との組合せの場合には、ノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。
フェノール類とフェノール類メチロール化合物との組合せの場合には種々のフェノール誘導体を得ることができ、例えば、ビスフェノール類、直鎖状トリスフェノール類等のトリスフェノール類、直鎖状テトラキスフェノール類等のテトラフェノール類、直鎖状ペンタフェノール類等のペンタフェノール類、放射状ヘキサフェノール類及び直鎖状ヘキサフェノール類等のヘキサフェノール類からなる群から選ばれる少なくとも一種、直鎖状ポリフェノール類等のフェノール誘導体を得ることができる。
ビスフェノール類としては、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−メチル−2−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(2−シクロヘキシル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン等が挙げられる。
直鎖状トリスフェノール類としては、2,4−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシベンジル)−6−メチルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(2,5−ジヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(4,5−ジヒドロキシ−2−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(2,3,4−トリヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−6−エチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−6−エチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−6−エチルフェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−6−エチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−6−エチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジル)−6−エチルフェノール、2,4−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−6−エチルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−4−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−4−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(5−t−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−4−t−ブチルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−6−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−4−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−4−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−4−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−3,4−ジメチルフェノール、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−3,4−ジメチルフェノール等が挙げられる。
直鎖状テトラキスフェノール類としては、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−3、5−ジメチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−2、5−ジメチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−2、3、6−トリメチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(5−t−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2,4−ジヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2、4−ジヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシベンジル)−2,3−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−2,3−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−5−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,3−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−2,3−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−5−(2、4−ジヒドロキシベンジル)−2,3−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−2,5−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−2,5−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−2,5−ジメチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2、4−ジヒドロキシベンジル)−2,5−ジメチルフェニル]メタン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルベンジル)−5−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−5−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)フェニル]プロパン等が挙げられる。
直鎖状ペンタフェノール類としては、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−2,5−ジメチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2、4−ジヒドロキシベンジル)−2,5−ジメチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−5−メチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2、4−ジヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−5−メチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルベンジル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[2−ヒドロキシ−3−(2、4−ジヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−4−メチルフェノール等が挙げられる。
放射状ヘキサフェノール類としては、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(4−ヒドロキシベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(4−ヒドロキシ−2、5−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン等が挙げられ、また、直鎖状ヘキサフェノール類としては、ビス{3−[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルベンジル]−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}メタン等が挙げられる。
直鎖状ポリフェノール類としては、2,6−ビス{3−[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルベンジル]−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル}−4−メチルフェノール等が挙げられる。
フェノール類とアラルキル化合物との組合せの場合には、フェノールアラルキル樹脂を得ることができる。
フェノール類と一般式(1)で示される化合物との組合せの場合には、下記一般式(3)で示されるノボラック樹脂を得ることができる。
(式中、R2、R3、R2’、R3’は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良く、同一であっても良い。)
フェノール類とジアルデヒド類との組合せの場合には、下記一般式(4)で示されるテトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン(n=0〜3、m=0〜3)を得ることができる。
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「%」、「部」は特に断らない限り「質量基準」を意味する。また、実施例における評価方法は以下のとおりである。
(1)分離性
第三工程における有機相と水相の分離性に関する目視判断により、以下の基準で評価した。
◎・・・湯水洗各回において、静置後1時間以内で明確に分離。
○・・・少なくとも1回は、分離するまで、静置後1〜2時間かかった。
×・・・少なくとも1回は、分離するまで、静置後2時間以上かかった。
(2)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分散比(Mw/Mn)の測定
東ソー株式会社製ゲル濾過クロマトグラフSC−8020シリーズビルドアップシステム(カラム:G2000HXL+G4000HXL、検出器:UV254nm、キャリヤー:テトラヒドロフラン1ml/min、カラム温度38℃)の測定により、標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めて、分散比(Mw/Mn)を算出した。
(3)フェノール類モノマー及びフェノール類ダイマーの含有量(%)の測定
分子量分布の全面積に対するフェノール類モノマー及びフェノール類ダイマーの面積を百分率で表示する面積法によって測定した。なお、表中の「N.D.」は検出されなかった事を意味する。
(4)軟化点の測定
JIS−K6910に記載された環球法に準拠し、株式会社メイテック製 環球式自動軟化点測定装置ASP−MGK2を使用して測定した。
<実施例1>
[第一工程]
先ず、温度計、攪拌装置、還流冷却器を備えた反応容器内に、フェノール(P)100部、89%リン酸100部(100%/P)を仕込み、内容物を攪拌混合させながら60℃の温度まで加熱昇温させた。次に、92%パラホルムアルデヒド(F)22.9部(反応モル比でF/P=0.66)の分割投入を開始し、白濁状態(相分離反応)のもとで、反応熱を利用しつつ除々に還流温度(95〜110℃)まで昇温させた。前記パラホルムアルデヒドは、2時間かけて全量を分割投入し、更に還流温度を維持しつつ6時間の縮合反応を行なわせて初期縮合物を調製した。
[第二工程]
その後、攪拌混合を停止させて静置し、上層に有機相(初期縮合物の大部分を含む相)を、下層に水相(リン酸水溶液相)に分離させた。そして、水相115部を分離除去し、残留した相を還流温度にて2時間にわたり加熱・攪拌した。
[第三工程]
その後、純水200部を添加し、有機相と水相とに分離するまで静置し、分離した水相を除去した。分離除去された水相のリン酸類等の濃度を、東ソー株式会社製イオンクロマトグラフIC−2001(カラム:SuperIC−AP、溶媒:2.9mM NaHCO3+3.1mM Na2CO3、流速:0.8ml/min、カラム温度:40℃)により測定し、1ppm以下になるまで水洗を繰り返した。有機相の水洗に要した水洗水の総量は1000部で、水洗に要した総時間は10時間、水洗回数は5回であった。
その後、有機相を減圧下に190℃の温度まで昇温して残留水分を完全に留去してノボラック型フェノール樹脂106部(収率106%/P)を得、樹脂特性を評価した。
以上の測定結果を表1に示す。なお、ノボラック型フェノール樹脂の収率はフェノール類の仕込み量(質量基準)に対する百分率で表示した。
<実施例2〜6>
製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にノボラック型フェノール樹脂の製造を行った。結果を表1に示す。
尚、実施例3で使用した有機ホスホン酸は、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸60%水溶液(フェリオックス115、(株)ライオン製)である。
また、実施例2〜6においては、第二工程において、水相分離前に、水を添加した。具体的には、攪拌混合下に約90℃の温度で純水を添加して30分間攪拌混合を続けた。さらに、実施例4〜6においては、第二工程において、水相分離前と水相除去後に、非水溶性有機溶剤を添加した。具体的には、攪拌混合下に、純水の添加と共に非水溶性有機溶剤を添加し、攪拌混合を続け、水相除去後に非水溶性有機溶剤を添加して、加熱・攪拌した。
<比較例1〜6>
有機相の加熱を行わなかった以外は、それぞれ実施例1〜6と同様にノボラック型フェノール樹脂の製造を行った。結果を表1に示す。
<比較例7>
第二工程において、純水200部(200%/P)、非水溶性有機溶剤(MIBK)200部を添加し、水相を分離除去しなかった以外は、実施例1と同様にノボラック型フェノール樹脂の製造を行った。結果を表1に示す。