JP5366912B2 - 岩塊の崩落防止装置 - Google Patents
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Description
この対策として、岩塊をアンカー鋼棒で斜面に直接串刺しし、斜面に固定する工法が提案されている。また、先行技術文献のように吊りロープで岩塊を吊ることで滑落を食い止める方式すなわち、岩塊より上方の斜面にアンカーを設置し、これに吊りロープの上端を連結する一方、岩塊の下半部にはアンカー状の掛止め金具を取り付け、前記吊りロープの下端を前記掛止め金具に連結する「岩塊吊り工法」が提案されている。
また、アンカー孔は岩塊を通過し斜面深くまで掘削する必要があり、さらに、岩塊の滑落力はアンカー鋼棒に剪断力として働くため、アンカー鋼棒の径を大きくすることも必要となる。そのため、アンカー孔工事は大掛かりなものとなり、費用も増大することになるなどの問題もあった。
したがって、地震という予期できない自然現象に対しても岩塊の滑落、転落を確実に阻止することができる。
これによれば、掛止アンカー体に近い吊りロープの中間の任意の部位に分岐接続部を自在に形成することができ、1本のロープを有効利用して簡単、確実に岩塊と固定することができる。
これによればアンカー体の吊り力と押え力が効率よく岩塊に伝達でき、ロープの伸びによるエネルギー吸収性能も効率よく利用でき、かつ、下方の押えアンカー体との連結手段として巻き付けグリップを端末金具とするので、吊りロープにあらかじめ端末加工を要さず、現場の状況にあった最適な位置でしかも簡単に吊りロープと連結固定できるとともに、ロープの長さ調整も容易に現場で行える。
吊りロープと交差するように岩塊を横切る横ロープを張設することで地表と岩塊の接圧をさらに高めることができ、さらに、横ロープは岩塊上でのアンカー作業の足場として利用できるので、作業性や安全性を向上することができる。
図中、aは岩塊の滑落や転石による崩落の恐れがある対象斜面であり、bは斜面上に存するたとえば100トンを超えるような巨大な岩塊である。1は吊りロープであり、岩塊bよりも上方の斜面から、岩塊bの上面を覆うように通過して斜面の滑落する可能性がある岩塊bより下方の斜面に渡るように上下方向に複数本張設されている。2は吊りアンカー体、3は掛止アンカー体、4は押えアンカー体である。
前記吊りロープ1は、岩塊bの斜面上方から下方に傾斜方向cに沿って岩塊bを覆うように配置され、吊りロープ1の始端部(上端部)11が吊りアンカー体2に、吊りロープ1の中途部(中間部)12が掛止アンカー体3に、終端部(下端部)13が押えアンカー体4にそれぞれ連結固定されている。この例では、おのおのが巻き付けグリップ8とターンバックルを介して連結固定されている。
また、吊りロープ1の下端部が岩塊bよりも下方の斜面に設置した押えアンカー体4に結合されているので、岩塊bを3点で地表に押えることになり、地震の振動により岩塊bに作用する鉛直方向dの力を吸収し、斜面aと岩塊bの接圧力が維持され、摩擦の低下による滑落を防止できる。
吊りアンカー体2の位置は岩塊bの上方10m〜50mが好ましい。10m未満では地震での岩塊bの始動落下エネルギーを吊りロープ1の伸びで十分に吸収できず吊りアンカー体2に過大な負担がかかるからであり、一方、上限を50mとしたのはこれ以上であると用地の確保が困難になるからである。
押えアンカー体4の位置は岩塊bの下方斜面3m〜20mの位置が好ましい。20mを超えると岩塊bを地表に押さえつける力が弱まるからであり、好ましくは3m〜10mが好適である。
以上のように1本のロープで各アンカー体が結合されているので、ロープの持つ伸び特性、張力伝達特性を効率よく利用することができる。
また、不規則な斜面形状に応じたアンカー体と結合するロープの適切な結合箇所を現場で決めマークし、巻き付けグリップのクロス点89をマークに合わせることで、道具なしで正確且つ容易に取り付けることができる。
ひとつの具体例をあげると、深さ4500mm、直径65mmのアンカー孔520に、グラウド剤530(セメントアンカー剤)を充填し、亜鉛めっきした直径30mm、長さ5500mmの(ワイヤ)ロープ20を挿入してグラウド剤530を凝固させている。グラウド剤はロープ表面の螺旋状の凹凸に密着凝固し引き抜き抵抗を高めている。
サドル55は矩形のプレート551上にロープ20が屈曲することなくスムーズに方向転換できるように半円筒552が溶接固着され、半円筒552上にはロープ20を誘導する2枚のガイド板553が溶接固着され、半円筒552からロープ20が外れないようにガイドしている。
サドル55はプレート551の矩形の両端に打込みアンカー棒554を打込み斜面に固定している。プレート551が斜面に安定密着するよう斜面を平坦整地するとよい。
吊りアンカー体2と吊りロープ1は、巻き付けグリップ8の環状部82とターンバックル7のアイエンド73がピンボルト72で連結される。
アンカー金物6はたとえば長辺450mm、短辺300mmの鋼鉄製のプレート661上に2枚の縦板662が平行に間隔を取って溶接固定している。
縦板662にはターンバックル7を取り付けるピンボルト孔663があり、ターンバックル7のアイエンド73を2枚の縦板662,662の間に配置しピンボルト664で連結してある。プレート661には縦板の両側にアンカー鋼棒665を貫挿する固定孔666が2箇所設けられており、アンカー金物6は2本のアンカー鋼棒665で所定の位置に固定される。アンカー鋼棒表面はグラウド剤との密着性を高めるため凹凸部が配設されており、アンカー鋼棒665の頭部は雄ネジとなっている。
固定されたアンカー鋼棒665の頭部をアンカー金物6の固定孔666を貫挿させ、ナット669で強固に固定する。
岩塊bの吊り効果の大きい箇所を選定して上記のような方法で設置した掛止アンカー体3と吊りロープ1は巻き付けグリップ8を介して吊りロープ1の中間部12に結合されている。
巻き付けグリップ8と吊りロープ1の結合は、掛止アンカー体3の近傍を通過する吊りロープ1の中間部12にマークを付し、巻き付けグリップ8の環状部82を掛止アンカー体3の方向に向くようにして分岐接続部を形成し、前記マークに巻き付けグリップ8のクロス点89を一致させ、吊りアンカー体2方向に片側の巻き付け部81を吊りロープ1に巻き付け、さらに反対側の巻き付け部81を巻き付ければよく、簡単、迅速に現場施工することができる。
掛止アンカー体3と吊りロープ1は巻き付けグリップ8の環状部82とターンバックル7のアイエンド73がピンボルト72で連結されることで連結されるものであり、張力調整はターンバックル7で行う。
押えアンカー体4は前述した掛止アンカー体3と同じようにエアーパンチャーや削岩機等の掘削装置で穿孔したアンカー孔677にセメント等のグラウト剤530を充填し、アンカー鋼棒665を挿入して固定し、アンカー鋼棒665の上端をアンカー金物6から延出させ、ナットを螺合することで固定する。
巻き付けグリップ8の環状部82とターンバックル7のアイエンド73はピンボルト72で連結され、ターンバックル本体の回動により適切な緊張状態が形成される。
そして、吊りロープ1の下端部13を岩塊より下方の斜面に導いて当該領域に設置した押えアンカー体4と連結固定しており、1本のロープで斜面下方向の岩塊の滑動と慣性力鉛直成分の両方の抑止効果を効率よく得ることができる。このように滑動と鉛直成分の両抵抗力を1本の吊りロープ1で得るため、複数本のロープで対応するよりもロープとアンカーの使用部材数と施工手間のコストが縮減される。
横ロープ91の両端部15,15は岩塊bの左右の斜面に位置する横押えアンカー体9、9によって固定されている。
横押えアンカー体9、9は前述した押えアンカー体4と同様に、斜面aにアンカー鋼棒665で固定されたアンカー金物6を設けてなり、これにターンバックル7が連結されている。
横ロープ91の両端部15,15には、吊りロープ1と同様に巻き付けグリップ8,8が取り付けられ、この巻き付けグリップとターンバックル7を介して横押えアンカー体9、9と結合している。
また、張設した横ロープ91が岩塊b上での作業足場の確保を容易にし、作業の安全性と作業効率を高めることができる。好適には横ロープ91は吊りロープ1の施工に先立って行われる。これにより吊りロープ1およびアンカー体の施工時に安全性が確保される。
b 岩塊
1 吊りロープ
2 吊りアンカー体
3 掛止アンカー体
4 押えアンカー体
6 アンカー金物
7 ターンバックル
8 巻き付けグリップ
9 横押えアンカー体
91 横ロープ
Claims (4)
- 上方の斜面から斜面上にある岩塊を覆いかつ下方の斜面に延在するように複数本の吊りロープを張設し、各吊りロープの上端部を岩塊より上方の斜面に設置した吊りアンカー体に連結固定する一方、岩塊部分に設置した掛止アンカー体に吊りロープ中間部位を巻き付けグリップを介して連結固定し、岩塊よりも下方の斜面に押えアンカー体を設置し、該押えアンカー体に吊りロープの下端部を連結固定したことを特徴とする岩塊の崩落防止装置。
- 吊りロープの中間部位に巻付けグリップを取り付け、巻付けグリップ先端の環部を吊りロープの側方に分岐するように位置させ、この環部を岩塊に設置した掛止アンカー体にターンバックルを介して連結している請求項1に記載の岩塊の崩落防止装置。
- 吊りアンカー体、掛止アンンカー体および押えアンカー体を斜面の上下方向で略直線状に配置し、押えアンカー体を巻き付けグリップを介して吊りロープに連結固定している請求項1に記載の岩塊の崩落防止装置。
- 複数の吊りロープが斜面上下方向で略直線状に張設されるとともに、吊りロープと交差して岩塊を覆うように横ロープが岩塊左右の斜面に延在され、横ロープの端部が前記左右の斜面に配置した横押えアンカー体に巻き付けグリップを介して連結固定されている請求項1ないし3のいずれかに記載の岩塊の崩落防止装置。
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