JP5365898B2 - 新聞用紙の製造方法及び新聞用紙 - Google Patents
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すなわち、上質紙やコート紙の白色度は85%以上と高いので、内添する填料と紙の白色度が近く填料の添加率が紙の白色度へ与える影響は比較的少ない。一方、新聞用紙の白色度は55%程度と填料より低いので、填料の添加率が紙の白色度に大きく影響する。
前者は、新聞用紙の主原料である古紙脱墨パルプの白色度を下げることになる。古紙脱墨パルプの製造では、新聞や雑誌等の印刷が施された古紙をパルパー等の離解機でアルカリ性薬品等と共に離解して、さらにアルカリ性薬品や過酸化水素及び界面活性剤を添加して離解パルプをこれら薬品に浸漬する(アルカリソーキング)と共に、機械的攪拌力を併用してパルプ繊維を膨潤させてインキとパルプを剥離し、その後洗浄やフローテーションによりパルプからインキを分離している。ところが、古紙脱墨パルプの白色度を下げる場合、脱インキの程度を抑えるために、フローテーションのリジェクト量を減らす、界面活性剤の添加量を減らす、あるいは、漂白を抑えるために過酸化水素などの漂白剤の添加率を減らす、などの対応をとるが、弊害として古紙の品質変動に伴うパルプの白色度変動の問題が起こりやすくなる。また、複数の複雑な工程を有する古紙脱墨パルプの製造工程で、このようなアクションをとっても、効果が現れるには相当な時間を要し、生産効率上好ましくない。
したがって、後者の紙料に着色料を内添して白色度を下げる対応が行われるが、白色度の下げ巾が大きくなると、添加する着色料が多くなり、新聞用紙を目標の色相に調整するために時間がかかり、近年填料の添加率が多くなっている新聞用紙特有の課題となっている。
染料により紙の白色度や不透明度を向上させる技術として、炭酸カルシウムを含有して成る中性紙において、黒色染料を含有させる方法(特許文献1)、炭酸カルシウム、黒色顔料、カチオン性あるいは両性の水溶性高分子物質を含有させる方法(特許文献2)がある。
また、着色炭酸カルシウムを紙に内添することを検討したものとして、着色炭酸カルシウムの製造方法に関する技術が公開されている。例えば、水酸化カルシウムと染料を含有するスラリーに炭酸ガスを導入する(特許文献3)、水酸化カルシウムを含有するスラリーに染料を加え、これに炭酸ガスを導入して着色炭酸カルシウムを製造するに際し、精製した着色炭酸カルシウムスラリーに水酸化カルシウムを加えてスラリーのpHを9.5以上にする(特許文献4)、炭酸カルシウムと染料を水に添加し、水酸化カルシウムを加えてpHを10.0〜12.5に維持する(特許文献5)、炭酸カルシウム100質量部に対し、カルシウム以外の金属成分を金属量で0.001〜10質量部含有し、色相計による白色度が97.0以下の着色炭酸カルシウム(特許文献6)などがある。さらに、新聞用紙の色相調整に関するものとしては、ミキシングから抄紙機への原料供給までの工程において、配合機に添加する第一の添加工程と、種箱に添加する第二の添加工程を備えることを特徴とする新聞用紙の製造方法(特許文献7)が開示されている。
本発明は、上記のような状況から、填料高添加で印刷後不透明度が高く、しかも白色度と色相の調整が容易な新聞用紙の製造方法及び新聞用紙を提供することを課題とする。
(1)紙料に填料が定量添加されて抄紙された原紙に、表面処理剤を塗工、乾燥してなる新聞用紙の製造方法において、前記填料が黄色系着色料により白色度60〜85%に着色されており、紙料に青色系着色料を添加することにより、白色度と色相が調整されることを特徴とする白色度が50〜65%の新聞用紙の製造方法。
(2)前記填料が炭酸カルシウムであり、塩化鉄(III)により着色されていることを特徴とする(1)に記載の新聞用紙の製造方法。
(3)表面処理剤に顔料を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の新聞用紙の製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法によって得られる新聞用紙。
まず、原料パルプとして化学パルプ(針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプなど)、機械パルプ(グラウンドウッドパルプ、リファイナーグラウンドウッドパルプ、プレッシャーライズドグラウンドウッドパルプ、サーモメカニカルパルプなど)、古紙パルプ(新聞古紙脱墨パルプなど)の1種以上が適宜混合されて、紙料の調成が行なわれる。次いで、紙料に白色度が60〜85%に着色された填料が添加され、さらに必要に応じて、紙力増強剤、歩留り向上剤、サイズ剤、耐水化剤などの一般に公知公用の抄紙用薬品が添加される。
新聞用紙の白色度と色相は、前述した着色された填料とは別に、紙料に内添する着色料によって調整されており、抄紙された新聞用紙の白色度と色相を測定して、紙料に内添する着色料の添加量が増減されている。
使用する填料としては、特に炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムには、重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムがあるが、軽質炭酸カルシウムは、各種の粒子形状や吸油量などの特性を有するものが使用できるので好ましく、結晶形態はカルサイト、アラゴナイトのいずれでも良く、形状については針状、柱状、紡錘状、立方体状、ロゼッタ型のいずれでも良い。軽質炭酸カルシウムは石灰石を焼成して得られる生石灰と炭酸ガスを精製し、生石灰を水に溶かして石灰乳とし、その中に炭酸ガスを吹き込んで作る炭酸ガス化合法又は、石灰乳や塩化カルシウム溶液と炭酸ソーダを反応させて作る炭酸塩溶液化合法によって、合成された炭酸カルシウムで、合成反応の条件によってその結晶形状や粒子径を調整することが出来る。
一般の新聞用紙の色調では、黄色系着色料により着色された填料を添加した時点で、目標の色相に比べb*が+方向に位置するため、目標の新聞用紙の白色度と色相にあわせるため、青色系着色料を紙料に添加することになる。
着色された填料の添加場所は、パルプと十分に混合される場所であればよく、配合機、配合チェスト、マシンチェスト、ファンポンプなどのうちの1箇所または2箇所以上で添加することができる。
TAPPINo.45:2000に準じて測定した印刷後不透明度は90%以上が好ましい。これも高いほうがよい。印刷後不透明度が低いと両面に印刷を行う新聞用紙の場合には裏面の印刷品質を低下させるため好ましくない。そのほか、この原紙の物性は浸透乾燥性インクをコールドセット型高速輪転機で印刷できるに足るものである必要がある。また、引裂強さ、伸び、サイズ度等も、一般の新聞用紙並みの物性を有するものであればよい。
このようにして、本発明の新聞用紙の製造方法及び新聞用紙が得られる。
(実験例1−1)
新聞古紙脱墨パルプ80質量部とサーモメカニカルパルプ20質量部をパルプ原料として使用し、パルプ原料100%に対し、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパール121−6S、奥多摩工業製)を4%、硫酸バンド2%(有姿)、歩留向上剤0.01%(商品名:ハイモロックDR−8500:ハイモ製)を添加して、手抄シートを作製した。なお、パルプへの薬品添加順序:填料→硫酸バンド→歩留向上剤としている。
(実験例1−2)
予め、軽質炭酸カルシウムに黒色着色料(商品名:ダイレクトペーパーブラックDXL、日本化学工業所製)を1000ppm(対絶乾パルプ)添加して着色し、紙料に添加した以外は実験例1−1と同様に手抄シートを作製した。
(実験例1−3)
予め、軽質炭酸カルシウムに黒色着色料(商品名:ダイレクトペーパーブラックDXL、日本化学工業所製)を2500ppm(対絶乾パルプ)添加して着色し、紙料に添加した以外は実験例1−1と同様に手抄シートを作製した。
(実験例1−4)
予め、軽質炭酸カルシウムに黄色系着色料(塩化鉄(III)六水和物、和光純薬工業製
和光一級)を2000ppm(対絶乾パルプ)添加して着色し、紙料に添加した以外は実験例2−1と同様に手抄シートを作製した。
(実験例1−5)
予め、軽質炭酸カルシウムに青色系着色料(商品名:メチルバイオレットPSL、保土谷化学工業製)を60ppm(対絶乾パルプ)添加して着色し、紙料に添加した以外は実験例1−1と同様に手抄シートを作製した。
(実験例1−6)
予め、軽質炭酸カルシウムに黄色系着色料(塩化鉄(III)六水和物、和光純薬工業製
和光一級)を2000ppm(対絶乾パルプ)、青色系着色料(商品名:メチルバイオレットPSL、保土谷化学工業製)を60ppm(対絶乾パルプ)添加して着色し、紙料に添加した以外は実験例1−1と同様に手抄シートを作製した。
実験例1−1から実験例1−6で得られた手抄きシートの白色度と色相を測定した結果を表1に示す。
実験例1−4、実験例1−5、実験例1−6のL*を比較すると、黄色系着色料を使用した実験例1−4はL*が82.7で、実験例1−6のL*79.9と離れているが、青色系染料を使用した実験例1−5では、L*が80.1と実験例1−6のL*に接近している。このことは、青系着色料で白色度と色相の調整を行うと、予期しない古紙パルプの色相変動などによって新聞用紙のL*が低下した場合、新聞用紙のb*を目標値に合わせようとするとL*が目標値より低くなり、白色度と色調を目標値に合わせることができなくなることを示している。したがって、黄色系着色料を使用するより青色系着色料を使用して白色度と色相を調整するのが有利であるといえる。
(実験例2−1)
軽質炭酸カルシウムのスラリー(商品名:タマパール121−6S、奥多摩工業製
を濃度15%としたもの)を濾紙で濾過して、粉体の白色度と色相を測定した。
(実験例2−2)
軽質炭酸カルシウムのスラリーに、黒色着色料(商品名:ダイレクトペーパーブラックDXL、日本化学工業所製)を、軽質炭酸カルシウムに対し2000ppm添加し、10分後、濾紙で濾過して粉体の白色度と色相を測定した。
(実験例2−3)
軽質炭酸カルシウムのスラリーに、黄色系着色料(商品名:バサゾールイエロー46D、ビーエーエスエフジャパン製)を、軽質炭酸カルシウムに対し2000ppm添加し、10分後、濾紙で濾過して粉体の白色度と色相を測定した。
(実験例2−4)
軽質炭酸カルシウムのスラリーに、黄色系着色料(塩化鉄(III)六水和物、和光純薬工業製和光一級)を、軽質炭酸カルシウムに対し2000ppm添加し、10分後、濾紙で濾過して粉体の白色度と色相を測定した。
実験例2−1〜実験例2−4で得られた炭酸カルシウムの白色度と色相の測定結果を表1に示す。
(白色度)JISP8148:2001「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準じて測定した。
(色相)JISZ8729:2004「色の表示方法−L*a*b*表色系及びL*u*v*表示系」に準じて測定した。
▲1▼黄色系着色料が、b*を増加させるのに有利である。
▲2▼青色系着色料が、b*を減少させるのに有利である。
▲3▼黄色系着色料と青色系着色料を組み合わせることで、L*あるいはb*を単独で調整することが可能であり、白色度と色相の調整が容易になる。
▲4▼黄色系着色料の添加率を増減させるより青色系着色料の添加率を増減させることによって、白色度と色相を調整するのが有利である。
▲5▼軽質炭酸カルシウム(填料)の白色度を低下させb*を増加させる着色料として、塩化鉄(III)が有利である。
これらの結果を本発明の技術思想である填料を着色して紙料に添加すること、に適用すると、黄色系着色料(b*を増加させる着色料)により填料を着色して紙料に定量添加し、青色系着色料を紙料に添加して添加率を増減させることにより新聞用紙の白色度と色相を調整することによって、新聞用紙の白色度と色相の調整が容易となることがわかる。さらに、填料のb*を増加させる着色料として塩化鉄(III)が好ましいことがわかる。
以上
Claims (4)
- 紙料に填料が定量添加されて抄紙された原紙に、表面処理剤を塗工、乾燥してなる新聞用紙の製造方法において、前記填料が黄色系着色料により白色度60〜85%に着色されており、紙料に青色系着色料を添加することにより、白色度と色相が調整されることを特徴とする白色度が50〜65%の新聞用紙の製造方法。
- 前記填料が炭酸カルシウムであり、塩化鉄(III)により着色されていることを特徴とする請求項1に記載の新聞用紙の製造方法。
- 表面処理剤に顔料を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の新聞用紙の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法によって得られる新聞用紙。
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