以下、図1乃至図5を参照して、本発明の一実施形態について述べる。
この実施形態は、図1に示すように、収納什器が自動販売機の横に設置されるダストボックスA100の場合であり、施錠されるべき両物体の一方である扉133に操作型施解錠機構A3を設けるとともに、他方である収納什器本体A1に自動型解錠機構A4を設けるものである。このダストボックスA100は、中間部にダスト投入口11を有し、そのダスト投入口11よりも下側にダスト収納領域12を設けるとともに、前記ダスト投入口11の上側に防災用品備蓄領域13を設けてなる収納什器本体A1を備えている。この収納什器本体A1のダスト収納領域12には、例えばダストトレー121が出し入れ可能に収容されており、このダスト収納領域12の前面開口部にはダストトレー121挿脱用の扉122が開閉可能に設けられている。一方、この収納什器本体A1の防災用品備蓄領域13には、棚板131と長尺物保持用の帯状部材132等が設けられており、前記棚板131上には例えば、救急用品、手袋、保護メガネ、マスク、笛、ラジオ、スタンドライト、ヘッドライト、油圧ジャッキ、ロープ及びヘルメット等の備品X1を載置することができるようになっている。また、長尺物保持用の帯状部材132によって、例えば平バラシバールX2、テコバールX3、ハンマーX4等が保持された状態で保管されるようになっている。この防災用品備蓄領域13の前面開口部には、前記備品X1等の防災用品挿脱用の扉133が開閉可能に設けられている。この扉133は、例えばその一側縁133bが図示しない蝶番を介して収納什器本体A1の一方の側壁14の前縁部に蝶着されたもので、この扉133の他側縁133aと収納什器本体A1の他方の側壁15との間に施錠装置A2を設けている。この施錠装置A2は、操作型施解錠機構A3と、自動型解錠機構A4とを備えてなる。なお、扉122、133には図示しないマグネットキャッチを設けており、事故防止のために自然開扉することを防止する機能を付与している。
前記操作型施解錠機構A3は、図3及び図5に示すように、例えば錠として機械錠32を用いたものであり、鍵31を用いた操作により作動端321が施解錠動作を行う機械錠32と、この機械錠32の作動端321に設けられ施錠位置から解錠位置までの間で作動するロック体である回動アーム322とを具備してなる。具体的には、前記機械錠32は、例えばシリンダー錠方式のもので、その鍵穴に鍵31を挿入して回動操作することによりその作動端321が一定の角度範囲内で回転するようになっている。そして、この機械錠32の作動端321に前記回動アーム322が取着されており、この回動アーム322の回動端部が前記自動型解錠機構A4のプランジャ411の先端部に係合するように形成している。
前記自動型解錠機構A4は、図3及び図5に示すように、ロック位置(L)から非ロック位置(U)までの間で作動可能に設けられ自己復帰力により前記ロック位置(L)方向に付勢されているプランジャ411を有し通電時、すなわち災害発生信号6の受信時に前記プランジャ411を非ロック位置(U)に強制退避させるソレノイド41と、このソレノイド41による強制退避動作が終了した後も保持解除操作が加えられるまでは前記プランジャ411を前記自己復帰力に抗して前記非ロック位置(U)に保持するプランジャ保持手段42とを具備してなる。
具体的には、前記ソレノイド41は、図3及び図5に示すように、プランジャ411と、このプランジャ411を突没動作させるソレノイド本体412とを有してなる。前記プランジャ411は、途中に鍔部411aを有する軸状のもので、軸心411bを上下方向に向けて昇降可能に配されている。このプランジャ411は、自己復帰力である自重によって下方に付勢されている。なお、411cは、プランジャ411に偏荷重がかかるのを防止するためのスライド穴である。また、411dは、後述するソレノイドユニット本体81に固定されているプランジャガイドであり、前記プランジャ411を最下点であるロック位置(L)に安定保持するとともに、このプランジャ411に軸心411bと直交する方向の荷重が作用した場合に該プランジャ411が横ぶれするのを防止するものである。前記ソレノイド本体412は、前記プランジャ411の上半部を包持する円筒状をなす電磁コイル体からなり、通電時に前記プランジャ411を自重に抗して非ロック位置(U)まで上昇させ得るようにしたものである。
前記プランジャ保持手段42は、図3及び図5に示すように、板バネ状のものであり、前記プランジャ411が非ロック位置(U)まで上昇した際に前記鍔部411aに係止して、そのプランジャ411を非ロック位置(U)に保持するためのものである。このプランジャ保持手段42は、下端部を後述するソレノイドユニット本体81の裏板に添設するとともに、もう一方の端部には、通電により非ロック位置(U)に移動したプランジャ411をロック位置(L)に復帰させるリセット用の指掛部421を備えている。すなわち、前記プランジャ保持手段42の上半部は、前記プランジャ411が通電によりロック位置(L)から非ロック位置(U)まで上昇する際には、該プランジャ411の移動力を用いて弾性変形させられることにより一時的に退避位置までスライド移動することとなる。その後、退避位置から戻ったプランジャ保持手段42に前記鍔部411aが係止状態で保持される。一方、前記プランジャ411を非ロック位置(U)からロック位置(L)まで戻す際には、前記指掛部421を操作することにより、プランジャ保持手段42の上半部を強制的に退避位置まで移動させることにより、前記係止状態を解除してプランジャ411をロック位置(L)に自己復帰させるものである。
この収納什器の底部16には、災害発生信号6を発する機器である感震装置5が、図1、図4及び図5に示すように、前記収納什器本体A1から機械的に切り離された状態で設けられている。すなわち、前記収納什器本体A1の底部16は、内部底板161と外部底枠162とを備えた二重壁構造を成しており、前記外部底枠162の中央部には開口162aを有している。この開口162aに臨む地面に直接設置された感震装置用ケース51内に感震装置5が設置されている。前記外部底枠162は収納什器本体A1に一体に設けられている。一方、前記内部底板161は、前記外部底枠162に着脱可能に設けられており、前記外部底枠162から前記内部底板161を取り外すことによってダストボックスA100の内部側から前記感震装置5を点検することができるようになっている。
この感震装置5から発せられる災害発生信号6は、解錠機構駆動手段7に伝えられ、この解錠機構駆動手段7の働きにより前記自動型解錠機構A4が作動するようになっている。すなわち、前記解錠機構駆動手段7は、図5に模式的に示すように、前記ソレノイド41に電力を供給するための電池等の電源71と、この電源71による電力供給を断続させるスイッチング回路72と、前記感震装置5から発せられる災害発生信号6を受け付けた場合に前記スイッチング回路72を一時的に通電状態に切り換える判断回路73とを具備してなる。前記解錠機構駆動手段7は、このように感震装置5から判断回路73を介してソレノイド41に作動指示を行う機能の他にも、電池残量チェック機能、電池残量限界計測とソレノイド強制作動機能及びメンテナンス後の作動確認機能も有するものである。具体的には、電池の残量が少なくなっていることを管理センター等に知らせる機構や、扉133の開閉状態をダストボックスA100外に音で知らせる機構等が挙げられる。
なお、図2及び図3に示すように、自動型解錠機構A4を構成するソレノイド41及びプランジャ保持手段42、並びに解錠機構駆動手段7を構成する電源71及び基盤ユニット74は、ソレノイドユニット本体81の裏板に装着されユニット化されている。したがって、このソレノイドユニット8を所定の位置、具体的には収納什器本体A1の一方の側板14に装着することによって前記自動型解錠機構A4を前述したような位置関係に取り付けられるようにされている。また、ソレノイドユニット本体81にはプランジャ保持手段42の解除、及び確認作業を行うための解除確認穴82が設けられている。
次いで、このダストボックスA100における施錠装置A2の作動を説明する。
平時は、前記自動型解錠機構A4のプランジャ411には通電が断たれており、図5に実線で示すように、そのプランジャ411は自重によりロック位置(L)に安定保持されている。この状態で扉133を閉じ、前記操作型施解錠機構A3の機械錠32に設けられた鍵穴に鍵31を挿入して施錠操作を行うと、前記回動アーム322が解錠位置から施錠位置まで回動し、この回動アーム322の回動端部が前記プランジャ411に係合することになる。その結果、前記扉133が施錠される。
この状態である一定以上の震度の地震が発生すると、前記感震装置5から発せられる災害発生信号6が解錠機構駆動手段7に伝えられ、スイッチング回路72がオフからオンに切り替わって前記ソレノイド41に通電される。その結果、図5に二点鎖線で示すように、前記プランジャ411がロック位置(L)から非ロック位置(U)へと上昇し、このプランジャ411と前記機械錠32の回動アーム322との係合が解除される。したがって、機械錠32の状態如何にかかわらず扉133を開くことが可能になり、防災用品備蓄領域13に備えてある備品X1等の防災用品を利用することができる状態になる。
この実施形態では、災害発生信号6を受けた後、非ロック位置(U)まで上昇したプランジャ411は、プランジャ保持手段42により非ロック位置(U)に保持されることになるため、その後通電が断たれても、プランジャ411がロック位置(L)に戻ることはなく、扉133の解錠状態が維持される。
また、地震が発生して扉133が解錠されると、ダストボックスA100内に防災用品が入っている旨、又はダストボックスA100内の防災用品が使用可能である旨等が、ダストボックスA100の外面に表示されるように設定されている。
なお、災害復興後にダストボックスA100の施錠装置A2を初期状態に戻すには、プランジャ411もしくはプランジャ保持手段42に外力を加える等の保持解除操作を行うことにより、プランジャ411を初期のロック位置(L)に復帰させればよい。例えば、プランジャ保持手段42に設けられた指掛部421に右方向へ操作力を加えることにより、プランジャ保持手段42の上半部をスライド移動させるならば、プランジャ保持手段42の上側で係止して保持されていた鍔部411aの係止状態が解除され、プランジャ411が自重により初期のロック位置(L)に復帰されることとなる。
また、本実施形態の変形例として、図6及び図7を参照して説明する。なお、以下の実施形態において上記実施形態に対応する構成要素には同様の符号を付して示すものとし、具体的な説明を省略する。
本変形例における扉133は、例えば他側縁133aが図示しない蝶番を介して収納什器本体A1の一方の側壁14の前縁部に蝶着されたもので、この扉133の一側縁133bと収納什器本体A1の他方の側壁15との間に施錠装置A2を設けている。この施錠装置A2は、操作型施解錠機構A3と、自動型解錠機構A4とを備えてなる。
前記操作型施解錠機構A3は、図6及び図7に示すように、鍵31を用いた操作により作動端321が施解錠動作を行う機械錠32と、この機械錠32の作動端321に設けられ施錠位置から解錠位置までの間で作動するロック体である回動アーム322とを具備してなる。具体的には、前記機械錠32は、例えばシリンダー錠方式のもので、その図示しない鍵穴に鍵31を挿入して回動操作することによりその作動端321が一定の角度範囲内で回転するようになっている。そして、この機械錠32の作動端321に前記回動アーム322が取着されており、この回動アーム322の回動端部には前記自動型解錠機構A4のプランジャ411に係合するカマ部323を形成している。
前記自動型解錠機構A4は、図6及び図7に示すように、ロック位置(L)から非ロック位置(U)までの間で作動可能に設けられ自己復帰力により前記ロック位置(L)方向に付勢されているプランジャ411を有し災害発生信号6の受信時に前記プランジャ411を非ロック位置(U)に強制退避させるソレノイド41と、このソレノイド41による強制退避動作が終了した後も保持解除操作が加えられるまでは前記プランジャ411を前記自己復帰力に抗して前記非ロック位置(U)に保持するプランジャ保持手段42とを具備してなる。
具体的には、前記ソレノイド41は、図6及び図7に示すように、プランジャ411と、このプランジャ411を突没動作させるソレノイド本体412とを有してなる。前記プランジャ411は、途中に鍔部411aを有する軸状のもので、軸心411bを上下方向に向けて昇降可能に配されている。このプランジャ411は、自己復帰力である自重によって下方に付勢されている。なお、411eは、前記プランジャ411を最下点であるロック位置(L)に安定保持するとともに、このプランジャ411に軸心411bと直交する方向の荷重が作用した場合に該プランジャ411が横ぶれするのを防止するためのストッパである。前記ソレノイド本体412は、前記プランジャ411の上半部を包持する円筒状をなす電磁コイル体からなり、通電時に前記プランジャ411を自重に抗して非ロック位置(U)まで上昇させ得るようにしたものである。
なお、前記ソレノイド41は、縦置きに限らず、図8に示すように横置きにしてもよい。この場合には、プランジャ411を例えば、ソレノイド本体412の内部に設けたバネ45の弾性力により付勢してロック位置(L)に自己復帰させるように構成すればよい。
前記プランジャ保持手段42は、図6及び図7に示すように、板バネ状のものであり、前記プランジャ411が非ロック位置(U)まで上昇した際に前記鍔部411aに係止して、そのプランジャ411を非ロック位置(U)に保持するためのものである。
次いで、このダストボックスA100における施錠装置A2の作動を説明する。
平時は、前記自動型解錠機構A4のプランジャ411には通電が断たれており、図6に実線で示すように、そのプランジャ411は自重によりロック位置(L)に安定保持されている。この状態で扉133を閉じ、前記操作型施解錠機構A3の機械錠32に設けられた鍵穴に鍵31を挿入して施錠操作を行うと、前記回動アーム322が解錠位置から施錠位置まで回動し、この回動アーム322のカマ部323が前記プランジャ411に係合することになる。その結果、前記扉133が施錠される。
この状態である一定以上の震度の地震が発生すると、前記感震装置5から発せられる災害発生信号6が解錠機構駆動手段7に伝えられ、スイッチング回路72がオフからオンに切り替わって前記ソレノイド41に通電される。その結果、図6に二点鎖線で示すように、前記プランジャ411がロック位置(L)から非ロック位置(U)へと上昇し、このプランジャ411と前記機械錠32の回動アーム322との係合が解除される。したがって、機械錠32の状態如何にかかわらず扉133を開くことが可能になり、防災用品備蓄領域13に備えてある備品X1等の防災用品を利用することができる状態になる。
さらに他の変形例として、収納什器がダストボックスA100である場合に、例えば、図9及び図10に示す態様も考えられる。すなわち、図9に示すように、ダスト収納領域12において、比較的重いダストトレー121を出し入れせず、袋固定枠123のみリンク構造で前出し可能としたタイプのものであってもよい。このようなものであれば、重い内容物を手前に引き出すのではなく、取口のみをダストボックスA100外へ持ち出し、後は内容物を引きずり出す方式であるため、回収作業を軽減することができる点で優れている。また、図10に示すように、防災用品備蓄領域13には、帯状部材132の代わりにスチール製のフック134を設けたものであってもよい。前記フック134は、平バラシバールX2等を中仕切パネル及び他方の側板15等に保持できるようにしたものであって、その形状は、使用時に取り出し易く、かつ、地震の揺れで平バラシバールX2等が飛び出さないものであるのが好ましい。さらに、扉122、133の開閉方向についても、右開き、左開きどちらであってもよい。
次いで、図11乃至図13を参照して、本発明の他の実施形態について述べる。
この実施形態は、図11に示すように、収納什器がエレベータやオフィス内に固定状態で設置される防災キャビネットB100の場合であり、施錠されるべき両物体の一方である扉19に操作型施解錠機構B3と自動型解錠機構B4とを設けるものである。この防災キャビネットB100は、内部に防災用品を収納しておくための収納什器本体B1を備えており、この収納什器本体B1の前面開口部には扉19が開閉可能に設けられている。この扉19と前記収納什器本体B1との間には施錠装置B2が設けられており、この施錠装置B2は、操作型施解錠機構B3と、自動型解錠機構B4とから構成される。
前記操作型施解錠機構B3は、図12及び図13に示すように、前記扉19を施錠する施錠位置(l)から前記扉19を解放する解錠位置(u)までの間で作動し得るように設けられ無負荷状態で前記解錠位置(u)に自己復帰するロック体たるかんぬき部材35と、鍵34を用いた操作により前記かんぬき部材35を施錠位置(l)に強制移動させるための機械錠36と、前記施錠位置(l)に移動させられたかんぬき部材35を該施錠位置(l)に拘束して施錠状態を維持するラッチ機構37と、このラッチ機構37による拘束を解いて前記かんぬき部材35を解錠位置(u)にまで自己復帰させるためのラッチ解除手段である非常用ボタン38とを備えたものである。
具体的には、前記かんぬき部材35は、図12及び図13に示すように、前記ラッチ機構37を内蔵したハウジング39に進退可能に貫設されたもので、施錠位置(l)においてその一端部351が前記収納什器本体B1の側壁17に設けたスリット171に係合することにより扉19が施錠されるようになっている。また、前記かんぬき部材35は、前記ハウジング39内に収容した図示しないスプリングにより解錠位置(u)方向に付勢されている。前記かんぬき部材35の他端部352には、力を伝達するためのブラケット353が装着してあり、このブラケット353に関連させて前記機械錠36を設けている。前記ブラケット353は、かんぬき部材35の他端部352に固設されたもので、上端側に自動型解錠機構B4に係わり合う上係わり合い部353aを有するとともに、下端側に機械錠36に係わり合う下係わり合い部353bを有したものである。
前記機械錠36は、図12及び図13に示すように、例えばシリンダー錠方式のもので、その図示しない鍵穴に鍵34を挿入して鍵挿脱位置(Y)から施錠操作位置(Z)までの間で回動操作することによりその作動端362が例えば90度の角度範囲で回転するようになっている。そして、この機械錠36の作動端362に回動アーム363が取着されている。具体的には、機械錠36の作動端362が鍵挿脱位置(Y)にある場合には、回動アーム363が前記下係わり合い部353bと離間しており、機械錠36の作動端362を鍵挿脱位置(Y)から施錠操作位置(Z)まで操作することにより、前記回動アーム363が前記ブラケット353の下係わり合い部353bを押圧しつつ、前記かんぬき部材35を解錠位置(u)から施錠位置(l)まで移動させ得るようにしている。
前記ラッチ機構37は、図12及び図13に示すように、前記かんぬき部材35が施錠位置(l)に達した場合に、このかんぬき部材35の解錠位置(u)方向への移動を禁止し、扉19の前面に表出させた前記非常用ボタン38が押圧された場合に、そのかんぬき部材35に対する拘束を解くように構成されたものであり、その構造は通常のものであるため説明を省略する。
前記自動型解錠機構B4は、図12及び図13に示すように、ロック位置(L)から非ロック位置(U)までの間で作動可能に設けられ自己復帰力により前記ロック位置(L)方向に付勢されているプランジャ431を有し通電時、すなわち災害発生信号6の受信時に前記プランジャ431を非ロック位置(U)に強制退避させるソレノイド43と、このソレノイド43による強制退避動作が終了した後も保持解除操作が加えられるまでは前記プランジャ431を前記自己復帰力に抗して前記非ロック位置(U)に保持するプランジャ保持手段44とを具備してなる。
具体的には、前記ソレノイド43は、図12及び図13に示すように、プランジャ431と、このプランジャ431を突没動作させるソレノイド本体432とを有してなる。前記プランジャ431は、途中に解錠阻止部材431aを備えた軸状のもので、軸心431bを上下方向に向けて昇降可能に配されている。このプランジャ431は、自己復帰力である自重によって下方に付勢されている。なお、431eは、前記プランジャ431を最下点であるロック位置(L)に安定保持するとともに、このプランジャ431に軸心431bと直交する方向の荷重が作用した場合に該プランジャ431が横ぶれするのを防止するためのストッパである。前記ソレノイド本体432は、プランジャ431の上半部を包持する円筒状をなす電磁コイル体からなり、通電時に前記プランジャ431を自重に抗して非ロック位置(U)まで上昇させ得るようにしたものである。
前記プランジャ保持手段44は、図12及び図13に示すように、板バネ状のもので、前記プランジャ431が非ロック位置(U)まで上昇した際に前記解錠阻止部材431aに係止してそのプランジャ431を非ロック位置(U)に保持するためのものである。なお、図14に二点鎖線で示すように、プランジャ431がロック位置(L)にある場合には、前記解錠阻止部材431aが前記かんぬき部材35の解錠位置(u)方向への移動を阻止し、一方、図14に実線で示すように、非ロック位置(U)に上昇した場合にはその阻止状態が解消し得るように設定してある。すなわち、プランジャ431がロック位置(L)にある場合には、前記解錠阻止部材431aの先端部が前記ブラケット353の上係わり合い部353aの進退路を遮断するように位置し、一方、プランジャ431が非ロック位置(U)に上昇した場合には、前記解錠阻止部材431aの先端部が上係わり合い部353aの進退路から外れた位置に退避するように設定してある。そのため、鍵34を用いることなく解錠可能な状態に切り替わることとなる。前記プランジャ保持手段44は、板バネ状のもので、前記プランジャ431が非ロック位置(U)まで上昇した際に前記解錠阻止部材431aに係止してそのプランジャ431を非ロック位置(U)に保持し、解錠可能な状態に維持するためのものである。
この収納什器である防災キャビネットB1の図示しない底板上には、災害発生信号6を発する機器である図示しない感震装置が設けられている。この感震装置から発せられる災害発生信号6は、解錠機構駆動手段7に伝えられ、この解錠機構駆動手段7の働きにより前記自動型解錠機構B4が作動するようになっている。すなわち、解錠機構駆動手段7は、図5及び図7に模式的に示すものと同様に、前記ソレノイド43に電力を供給するための電池等の電源71と、この電源71による電力供給を断続させるスイッチング回路72と、前記感震装置5から発せられる災害発生信号6を受け付けた場合に前記スイッチング回路72を一時的に通電状態に切り換える判断回路73とを具備してなる。本実施形態においては、スイッチング回路72と判断回路73は、図示しない基盤ユニット内に収容されている。なお、自動型解錠機構B4を構成するソレノイド43及びプランジャ保持手段44、並びに解錠機構駆動手段7を構成する電源71及び基盤ユニットは、図示しない裏板に装着されユニット化されており、その裏板を所定の位置に装着することによって前記自動型解錠機構B4を前述したような位置関係に取り付けられるようにされている。
次いで、この防災キャビネットB100における施錠装置B2の作動を説明する。
平時は、前記自動型解錠機構B4のプランジャ431に対する通電が断たれており、そのプランジャ431は自重により下向きに付勢されている。そして、扉19が開いている状態では、図12に二点鎖線で示すように、扉を閉める前にプランジャ保持手段44に外力を加える等の保持解除操作を行うことにより、このプランジャ431に設けられた解錠阻止部材431aの下端が前記上係わり合い部353aの上端部上に当接しながら安定保持される。この状態から扉19を閉じ、操作型施解錠機構B3の機械錠36に設けられた鍵穴に鍵34を挿入して施錠操作を行うと、図12に実線で示すように、扉19に保持されたかんぬき部材35が収納什器本体B1の側壁17に形成されたスリット171に係合して扉19が施錠される。すなわち、まず機械錠36に設けられた鍵穴に鍵34を挿入して施錠操作位置(Z)まで回動操作すると、回動アーム363がブラケット353の下係わり合い部353bを押圧しつつ回動し、かんぬき部材35が解錠位置(u)から施錠位置(l)に移動させられ、ラッチ機構37によりそのかんぬき部材35が施錠位置(l)に固定される。その後、前記鍵34を鍵挿脱位置(Y)まで戻して抜き取ると、回動アーム363がブラケット353の下係わり合い部353bから離れた初期位置まで戻り、扉19の施錠状態が維持される。また、下係わり合い部353bが押圧されることでブラケット353が移動すると、上係わり合い部353aと解錠阻止部材431aとの当接状態が解除され、プランジャ431の自重によりロック位置(L)に安定保持される。この状態で非常用ボタン38がいたずらで押圧されるようなことがあっても、かんぬき部材35の動作がソレノイド43の解錠阻止部材431aにより阻止されるため、施錠状態が維持されて扉19が開かないようになっている。
この状態である一定以上の震度の地震が発生すると、感震装置5から発せられる災害発生信号6が解錠機構駆動手段7に伝えられ、スイッチング回路72がオフからオンに切り替わって前記ソレノイド43に通電される。その結果、図14に実線で示すように、前記プランジャ431がロック位置(L)から非ロック位置(U)に上昇し、解錠阻止部材431aの先端部が上係わり合い部353aの進退路から外れた位置に退避することになる。そのため、前記非常用ボタン38を押圧してラッチ機構37を解除すれば、前記かんぬき部材35が施錠位置(l)から解錠位置(u)に自己復帰し、扉19を開くことが可能になり、防災キャビネットB100に備えてある防災用品を利用することができる状態になる。
この実施形態では、災害発生信号6を受けた後、非ロック位置(U)まで上昇したプランジャ431は、プランジャ保持手段44により非ロック位置(U)に保持されることになるため、その後通電が断たれても、プランジャ431がロック位置(L)に戻ることはなく、解錠状態が維持される。
なお、災害復興後に防災キャビネットB100の施錠装置B2を初期状態に戻すには、プランジャ431もしくはプランジャ保持手段44に外力を加える等の保持解除操作を行うことにより、プランジャ431を初期のロック位置(L)に復帰させればよい。また、点検時には、図示しない第二の機械錠、例えばネオジウムキー等により解錠阻止部材431aを強制的に上昇させ、プランジャ431をロック位置(L)から非ロック位置(U)へと移動させることにより、そのロックを解除すれば扉19を開くことが可能となる。
また、本実施形態の変形例として、図14及び図15を参照して説明する。なお、以下の実施形態において上記実施形態に対応する構成要素には同様の符号を付して示すものとし、具体的な説明を省略する。
本変形例におけるプランジャ431は、自己復帰力である自重によって下方に付勢されており、プランジャ431に偏荷重がかかるのを防止するためのスライド穴431c及び図示しない扉の裏板に固定されプランジャ431が横ぶれするのを防止するためのプランジャガイド431dを有している。
また、本変形例におけるプランジャ保持手段44は、図14及び図15に示すように、板バネ状のものであり、前記プランジャ431が非ロック位置(U)まで上昇した際に鍔部431fに係止して、そのプランジャ431を非ロック位置(U)に保持するためのものである。このプランジャ保持手段44は、下端部を図示しない扉の裏板に添設するとともに、もう一方の端部には、通電により非ロック位置(U)に移動したプランジャ431をロック位置(L)に復帰させるリセット用の指掛部441を備えている。すなわち、前記プランジャ保持手段44の上半部は、前記プランジャ441が通電によりロック位置(L)から非ロック位置(U)まで上昇する際には、該プランジャ441の移動力を用いて弾性変形させられることにより一時的に退避位置までスライド移動することとなる。その後、退避位置から戻ったプランジャ保持手段44に前記鍔部431fが係止状態で保持される。一方、前記プランジャ441を非ロック位置(U)からロック位置(L)まで戻す際には、前記指掛部441を操作することにより、プランジャ保持手段44の上半部を強制的に退避位置まで移動させることにより、前記係止状態を解除してプランジャ441をロック位置(L)に自己復帰させるものである。
なお、本変形例においても、前述した実施形態と同様の操作型施解錠機構B3及びラッチ機構37を有しているが、図14及び図15においては省略しているものとする。さらに、地震発生時におけるこの防災キャビネットB100の施錠装置B2の作動についても前述した実施形態と同様であるため説明を省略する。
そして、災害復興後に防災キャビネットB100の施錠装置B2を初期状態に戻すには、プランジャ431もしくはプランジャ保持手段に外力を加える等の保持解除操作を行うことにより、プランジャ431を初期のロック位置(L)に復帰させればよい。プランジャ保持手段44に設けられた指掛部441に右方向へ操作力を加えることにより、プランジャ保持手44の上半部をスライド移動させるならば、プランジャ保持手段44の上側で係止して保持されていた鍔部431fの係止状態が解除され、プランジャ431が自重により初期のロック位置(L)に復帰されることとなる。
また、点検時には、図14及び図15に示すような、二次ロック解除部品93を用いるものであってもよい。すなわち、鍔部431fの中間部、具体的にはプランジャ431の軸心431bとプランジャ保持手段44との間に下端部が係合する復帰レバー91と、この復帰レバー91の上端部に回動可能に設けられた二次ロック部材92とをさらに備えたものである。このようなものであれば、扉19と什器本体B1との間の隙間に二次ロック解除部材93を横向けに挿入した後に回動操作を行うと、この二次ロック解除部材93が二次ロック部材92に当接し、二次ロック部材92が水平になるまで回動されることとなる。したがって、この二次ロック部材92に上端部が連結された復帰レバー91が上方へ移動することとなり、強制的にプランジャ431のロック状態を解除することができる。そのため、解錠阻止部材431aを強制的に上昇させ、プランジャ431をロック位置(L)から非ロック位置(U)へと移動させることにより、そのロックを解除すれば扉19を開くことが可能となる。
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
本実施形態では、地震発生時に災害発生信号を受け取って扉を開く什器に関するものを示したが、これに限られず、例えば駅やオフィスに設置されたロッカー等多数の扉を一斉に解錠するものであってもよい。この際、ソレノイドに通電を開始させる信号を送るのは有線によるものに限られず、例えば物理的に離れた管理人室等から無線で信号を送り通電操作を行うようにしてもよい。さらに、操作型施解錠機構の錠を施錠する際に、操作型施解錠機構のロック体の施錠方向への初動を利用してプランジャの保持状態を解除するように構成すれば、多数の扉を有するロッカーであっても比較的容易に保持解除操作を行うことができる。
また、プランジャは、ロック体を兼ねるものであってもよい。すなわち、通電時にプランジャをロック位置(施錠位置)から非ロック位置(解錠位置)に強制退避させることにより、施錠されるべき両物体の施解錠を行うようにしてもよい。
操作型施解錠機構は、機械錠を有する機械式のものに限られず、例えば管理者の有するIDカードからの信号を受けて作動体を施錠位置及び解錠位置へと移動させるように制御して扉を施解錠し得る電動式のものであってもよい。
また、プランジャ保持手段は、非ロック位置に移動したプランジャをロック位置方向への自己復帰力に抗して保持し得るものであれば、例えば永久磁石による磁力等を利用するもの等種々変更可能である。
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。