JP5364653B2 - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関し、さらに詳しくは、分子量低下の問題がなく成形時における流動性に優れ、高度の難燃性を有しながら、厚肉成形時の白濁の問題のない難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、コンピューター、ノートブック型パソコン、携帯電話、プリンター、複写機等のOA・情報機器等の部材として好適に使用されている。
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する手段としては、従来、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合することがなされてきた。しかしながら、塩素や臭素を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定性の低下を招いたり、成形加工時における成形機のスクリューや成形金型の腐食を招いたりすることがあった。また、リン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂の特徴である高い透明性を阻害したり、耐衝撃性、耐熱性の低下を招いたりするため、その用途が制限されることがあった。
加えて、これらのハロゲン系難燃剤及びリン系難燃剤は、製品の廃棄、回収時に環境汚染を惹起する可能性があるため、近年ではこれらの難燃剤を使用することなく難燃化することが望まれている。
これに対し、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩や芳香族スルホン酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩化合物及び有機アルカリ土類金属塩化合物に代表される金属塩化合物が有用な難燃剤として検討されてきている。
パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩は、特許文献1により最初に提案がなされ、同文献には、炭素数4〜8のパーフルオロアルカンスルフォネートを配合することにより、ポリカーボネート樹脂の炎上性を低下させることが記載されている。また、同じ出願人により、炭素数が1〜3のパーフルオロアルカンアルカリ金属塩を配合した耐焔性ポリカーボネート樹脂が提案され、特にパーフルオロメタンスルホン酸カリウム塩が耐焔性に効果があることが記載されている。
その後、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩については、各種の検討がなされて来た。しかし、現在では、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩として、炭素数4のパーフルオロブタンスルホン酸塩のみが実用に供されている。その後、例えば、その粒径を100ミクロン以下とする(特許文献3参照)、水溶液のpHを5〜9とする(特許文献4参照)、アルコール不要分の含有量を低減化する(特許文献5参照)、ヨウ素酸(塩)を含有させる(特許文献6参照)等の検討がなされているが、パーフルオロブタンのみしか使用されていないというのが実情である。
パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩は、優れた難燃剤であり、添加量に比べて難燃効果が高いので、広く使用されてきているが、一方で、成形時の徐冷の際に白濁を引き起こしやすく、特に厚肉成形品の場合は外部に比べて内部が徐冷されるため、内側のみ白濁するという問題点を有している。
特公昭47−40445号公報 特公昭54−32456号公報 特開平06−136247号公報 特開2001−31855号公報 特開2001−115004号公報 特開2002−265432号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、フルオロブタンスルホン酸塩を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物において、徐冷時の白濁性が改良された難燃性のポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩を特定量含有する組成物に、炭素数が1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩を特定量配合することによって、驚くべきことに、厚肉成形の際の徐冷時における白濁の問題を解決するばかりか、成形時における流動性にも優れ、高度の難燃性(非燃焼性)を維持することができるポリカーボネート樹脂材料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)を0.01〜1質量部、炭素数が1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)を0.005〜0.5質量部を含有し、かつ、
パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)の含有量([B])と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)の含有量([C])の質量比([B]/[C])が、40/60〜80/20の範囲にあることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ポリカーボネート樹脂(A)は、構造粘性指数Nが1.2以上のポリカーボネート樹脂を20質量%以上含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)および炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)は、(B)および(C)の溶融混合アルカリ金属塩の形で配合されることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品が提供される。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物によれば、成形時における流動性に優れ、高度の難燃性(非燃焼性)および厚肉成形の徐冷時に白濁の問題のないポリカーボネート樹脂組成物およびそれを使用した成形品を得ることができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではない。
[1.概要]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂に対し、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)を特定量で、しかも、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩の含有量([B])と炭素数1〜3パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩の含有量([C])の質量比([B]/[C])を40/60〜80/20の範囲にあるように配合することを特徴とする。
[2.ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明に使用する樹脂材料のポリカーボネート樹脂(A)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。また、ジヒドロキシ化合物の一部として、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、又はシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を併用すると、難燃性の高いポリカーボネート樹脂を得ることができる。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。本発明では、(A)成分として、2種以上のポリカーボネート樹脂を併用しても良い。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、通常14,000〜30,000、好ましくは18,000〜29,000である。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形品を与える樹脂組成物が得られる。ポリカーボネート樹脂(A)の最も好ましい分子量範囲は22,000〜28,000である。
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂を使用するのも好ましい。
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することが好ましい。
構造粘性指数Nとは、文献「化学者のためのレオロジー」(化学同人、1982年、第15〜16頁)にも詳記されているように、溶融体の流動特性を評価する指標である。通常、ポリカーボネート樹脂の溶融特性は、数式:γ=a・σにより表示することができる。なお、前記式中、γ:剪断速度、a:定数、σ:応力、N:構造粘性指数、を表す。
上述の数式において、N=1のときはニュートン流動性を示し、Nの値が大きくなるほど非ニュートン流動性が大きくなる。つまり、構造粘性指数Nの大小により溶融体の流動特性が評価される。一般に、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂は、低剪断領域における溶融粘度が高くなる傾向がある。このため、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂を別のポリカーボネート樹脂と混合した場合、得られるポリカーボネート樹脂組成物の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。ただし、得られるポリカーボネート樹脂組成物の成形性を良好な範囲に維持するためには、このポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは過度に大きくないことが好ましい。
従って、本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂は、構造粘性指数Nが、通常1.2以上、好ましくは1.25以上、より好ましくは1.28以上であり、また、通常1.8以下、好ましくは1.7以下のポリカーボネート樹脂、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することが好ましい。
このように構造粘性指数Nが高いことは、ポリカーボネート樹脂が分岐鎖を有することを意味し、このように構造粘性指数Nが高いポリカーボネート樹脂を含有することにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。
なお、構造粘性指数Nは、例えば特開2005−232442号公報に記載されているように、上述の式を誘導した、Logη=〔(1−N)/N〕×Logγ+Cによって表示することも可能である。なお、前記式中、N:構造粘性指数、γ:剪断速度、C:定数、η:見かけの粘度、を表す。この式から分かるように、粘度挙動が大きく異なる低剪断領域におけるγとηからN値を評価することもできる。例えば、γ=12.16sec−1及びγ=24.32sec−1でのηからN値を決定することができる。
構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、特開平8−259687号公報、特開平8−245782号公報に記載されているように、溶融法(エステル交換法)によって芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを反応させる際、触媒の条件または製造条件を選択することにより、分岐剤を添加することなく、構造粘性指数が高く、加水分解安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
また、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂は、常法に従って、ホスゲン法あるいは溶融法(エステル交換法)で製造する際に、分岐剤を使用する方法によって製造することもできる。分岐剤の具体例としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、また3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどが挙げられる。その使用量は芳香族ジヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%の範囲であり、特に好ましくは0.1〜3モル%の範囲である。
構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、メチレンクロライドを溶媒として用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量が16,000〜30,000の範囲が好適である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、ポリカーボネート樹脂は、上述した構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂(以下、このポリカーボネート樹脂を「所定Nポリカーボネート樹脂」と称す場合がある。)を、ポリカーボネート樹脂中、通常20質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上含むことが望ましい。これは、所定Nポリカーボネート樹脂と組み合わせることにより、本発明に係るパーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩の相乗効果を顕著に発揮することができるからである。なお、ポリカーボネート樹脂中の、所定Nポリカーボネート樹脂の含有量の上限に制限は無く、通常100質量%以下であるが、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下である。
なお、所定Nポリカーボネート樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、上述した所定Nポリカーボネート樹脂以外に、構造粘性指数Nが上記の所定範囲外であるポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。その種類に制限は無いが、なかでも直鎖状ポリカーボネート樹脂が好ましい。所定Nポリカーボネート樹脂と直鎖状ポリカーボネート樹脂とを組み合わせることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物の難燃性(滴下防止性)と成形性(流動性)のバランスをとりやすいという利点が得られる。この観点から、ポリカーボネート樹脂は、所定Nポリカーボネート樹脂と、直鎖状ポリカーボネート樹脂とから構成されるものを用いることが特に好ましい。なお、この直鎖状ポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは、通常1〜1.15程度である。
ポリカーボネート樹脂が直鎖状ポリカーボネート樹脂を含む場合、ポリカーボネート樹脂に占める直鎖状ポリカーボネート樹脂の割合は、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、また、通常0質量%より多く、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。ポリカーボネート樹脂中の直鎖状ポリカーボネート樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩と炭素数1〜3のフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩やその他の添加剤の良好な分散性が得られやすく、難燃性、成形性に優れるポリカーボネート樹脂が得られやすいという利点が得られる。
さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料としてのポリカーボネート樹脂のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂であっても良い。
[3.パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)を、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01〜1質量部含有する。このようにパーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
パーフルオロブタンスルホン酸カリウムの好ましい含有量は、0.05質量部以上であり、上限は、好ましくは0.3質量部以下である。
本発明に使用されるパーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩の塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。なかでも、カリウム塩が特に好ましい。
パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)の具体例としては、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウムが挙げられ、これのうちでは特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
本発明組成物中のパーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜0.5質量部、好ましくは0.02〜0.3質量部、より好ましくは0.05〜0.2質量部である。パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩の含有量が少ないと難燃性が不十分であり、多すぎるとシルバーストリーク等の外観の低下をきたす。
[4.炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、炭素数が1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)を、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001〜0.5質量部を含有し、かつパーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)の含有量([B])と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)の含有量([C])の質量比([B]/[C])が、40/60〜80/20となるように含有する。このように炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)をパーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)と併せて含有することで、厚肉成形の場合でも厚肉部でのヘイズが良好で白濁の問題もなく、高度の難燃性を付与することが可能となる。
両者の好ましい質量比([B]/[C])は、45/55〜80/20、より好ましくは48/52〜78/22である。
炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。なかでも、カリウム塩が特に好ましい。
炭素数1〜3パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)の具体例としては、パーフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロメタンスルホン酸ルビジウム、パーフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロエタンスルホン酸カリウム、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロエタンスルホン酸リチウム、パーフルオロエタンスルホン酸ルビジウム、パーフルオロエタンスルホン酸セシウム、パーフルオロプロパンスルホン酸カリウム、パーフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロプロパンスルホン酸リチウム、パーフルオロプロパンスルホン酸ルビジウム、パーフルオロプロパンスルホン酸セシウムが挙げられる。
これらは単独でも、また2種以上を混合して、用いてもよい。
上記のうちでは、パーフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロエタンスルホン酸カリウム、パーフルオロプロパンスルホン酸カリウムを、単独または混合して使用するのが好ましい。
炭素数1〜3パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)自体の含有量の好ましい範囲は、0.007〜0.3質量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.1質量部である。
パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)および炭素数が1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)の製造方法は、公知慣用の方法が用いられ、パーフルオロアルカンスルホン酸をアルカリ金属で中和する方法、パーフルオロアルキルスルホニルフロリドを塩基性化合物で中和する方法が挙げられる。また、これらは市販品として入手も可能である。
また、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)は、(B)と(C)を予め溶融混合し、その後冷却結晶化して得られた両者の溶融混合アルカリ金属塩(F)の形で配合することも好ましい。
パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)の溶融混合アルカリ金属塩(F)は、例えば以下の方法で調整することができる。
これらアルカリ金属塩(B)および(C)を予め粉砕し、窒素雰囲気下、アルカリ金属塩(B)または(C)の高い方の融点より20〜50℃高い温度で、溶融混合を行い、その後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕することにより得ることができる。この際、アルカリ金属塩(B)および(C)は、それぞれ1種類の金属塩であっても、片方または両方が2種以上の金属塩であってもよい。
[5.離型剤(D)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[6.その他難燃剤(E)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記(B)成分および(C)成分以外の難燃剤を含有することもできる。このような難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機フィラー系難燃剤、(B)成分および(C)成分以外の金属塩系難燃剤が挙げられる。
これらの中では、(B)成分および(C)成分以外の有機スルホン酸金属塩化合物が好ましく、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸カリウムを好適に用いることができる。
かかる難燃剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、特には1質量部以下である。難燃剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、難燃性の改良効果が不十分となる可能性があり、難燃剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、透明性や機械物性、熱物性の低下を招く可能性がある。
[7.その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
・その他の樹脂
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;
ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)等のスチレン系樹脂;
スチレン−ブタジエンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)等のコア/シェル型のエラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー;
ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、環状オレフィン樹脂(COP樹脂)、環状オレフィン共重合体樹脂(COC樹脂)等のポリオレフィン樹脂;
ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);等が挙げられる。
・樹脂添加剤
樹脂添加剤としては、例えば、滴下防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、光拡散剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、充填材などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に好適な添加剤の例について具体的に説明する。
・・滴下防止剤
滴下防止剤としては、例えば、フルオロポリマーが挙げられ、なかでもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられるが、なかでもテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。
フルオロポリマーとしては、特に、フィブリル形成能を有するものが好ましく、具体的には、フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂が挙げられる。このように、フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上する傾向にある。
フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、ダイキン化学工業社製「ポリフロン(登録商標)F201L」、「ポリフロン(登録商標)F103」などが挙げられる。さらに、フルオロオレフィン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、ダイキン化学工業社製「フルオン(登録商標)D−1」等が挙げられる。
・・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。
なかでも、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機フォスファイトが好ましい。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、アデカ社製(商品名、以下同じ)「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、熱安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」(登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバスペシャリティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
・・染顔料
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;キノリン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料などが好ましい。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
染顔料の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。染顔料の含有量が多すぎると耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
[8.ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、ポリカーボネート樹脂(A)、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)、炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)、並びに必要に応じて配合されるその他の成分を、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸又は二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法等が挙げられる。前述したように、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)は、溶融混合アルカリ金属塩(F)の形で配合することも好ましい。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
また、樹脂組成物中および成形品中の上記(B)成分および(C)成分の分散性をより向上させるために、粉末状のポリカーボネート樹脂と予め混合して高濃度の(B)成分および/または(C)成分および/または(F)成分を含有するマスターバッチを得、これを他の成分と溶融混練して、所定組成のポリカーボネート樹脂組成物を得ることも好ましい。
[9.成形体]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、シートやフィルム、異型押出成形品、ブロー成形品あるいは射出成形品等にすることもできる。成形品の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その用途に応じて任意に設定すればよい。
成形品の例を挙げると、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、特に電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器等の部品に用いて好適であり、特に電気電子機器の部品に用いて好適である。
電気電子機器としては、例えば、パソコン、ゲーム機、テレビなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等が挙げられる。
成形品の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
以下、実施例および比較例を示して、本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
(実施例1〜5及び比較例1〜6)
下記表1に記した各成分を後記表3の含有量(質量%)で、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30XCT)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度290℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
なお、(B)成分および(C)成分の融点は、パーキンエルマー社製PYRIS Diamond DSCを用いて、窒素気流下、20℃/minの昇温条件で測定した値である。
Figure 0005364653
[厚肉カラープレートの成形]
上述の方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業株式会社製のNEX80−9E型成形機を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃、射出速度50mm/sec、保圧力40MPaの条件で、厚さ5mm、縦65mm、横45mmの厚肉カラープレートを成形した。
[燃焼試験片の成形]
同様に上述の方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所製のJ50−EP型射出成形機を用いて射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ2mmのUL試験用試験片を成形した。
[難燃性評価]
各ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、上述の方法で得られたUL試験用試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表2に示す基準を満たすことが必要となる。
Figure 0005364653
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。なお、表中、「燃焼性」と表記する。
[流動性評価]
前述の方法で得られたペレットを、120℃で4時間以上乾燥した後、高荷式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgfの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:×10−2cc/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。Q値が高いほど、流動性に優れていることを示す。
[透明性評価(濁度および透過率)]
濁度の評価はJIS K7136に準拠し、上述の方法で製造したカラープレート(5mm)を試験片とし、日本電色工業社製NDH−2000型濁度計で測定した。濁度は、樹脂の白濁の尺度として用い、数値が小さい程、透明性が高いことを示し好ましい。なお表中、「Hz」と表記した。
全光線透過率の評価はJIS K7361−1に準拠し、上述の方法で製造したカラープレート(5mm)を試験片とし、日本電色工業社製のNDH−2000型ヘイズメーターで測定した。全光線透過率は、樹脂の透明性を示す尺度として用い、数値が大きいほど透明性が高いことを示し好ましい。なお表中、「T.t」と表記した。
これら試験片に対する評価結果を、以下の表に示した。
Figure 0005364653
Figure 0005364653
表3に示す実施例から、ポリカーボネート樹脂(A)に、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)と、炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)を、本発明で規定する所定量かつ所定比率で含有するポリカーボネート樹脂組成物は、分子量低下の問題がなく成形時における流動性に優れ、2mm厚でもV−0の難燃性を維持しながら、厚肉成形においても、優れたヘイズ値を示し、白濁の問題もないことがわかる。
一方、表4に示す本発明の規定を満たさないポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性がV−2と悪いか、V−0であってもヘイズが実施例のものに比べて透明性が悪いことが分かる。また、(B)成分と(C)成分を併用する場合でも、その比率が本発明の規定を外れると、難燃性はV−2と悪く、難燃性と透明性を両立することが出来ないことがわかる。
(実施例6〜7、比較例7)
パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)の溶融混合アルカリ金属塩(F)を、前記した(B)成分および(C−2)成分から、以下の組成比で調整した。
溶融混合アルカリ金属塩−2(F−1):
(B)成分と(C−2)成分を75:25の質量比で溶融混合
溶融混合アルカリ金属塩−3(F−2):
(B)成分と(C−2)成分を50:50の質量比で溶融混合
溶融混合アルカリ金属塩−4(F−3):
(B)成分と(C−2)成分を25:75の質量比で溶融混合
なお、(F−1)〜(F−3)は、(B)成分(融点271℃)および(C−2)成分(融点275℃)のアルカリ金属塩をあらかじめ粉砕し、窒素雰囲気下、320℃で溶融混合し、その後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕して調整した。
また、評価は実施例1〜5、比較例1〜6と同様の方法で行った。結果を表5に示す。
Figure 0005364653
したがって、上記の実施例及び比較例から、成形時における流動性に優れ、高度の難燃性(非燃焼性)および厚肉成形時に白濁の問題のないという効果は、本発明の構成によりはじめて得られるものであることが確認された。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物によれば、成形時における流動性に優れ、高度の難燃性(非燃焼性)および徐冷時に白濁の問題のないポリカーボネート樹脂成形材料が得られるので、例えば、電気電子機器やその部品、OA機器、情報端末機器、電池パック、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器などの広範囲の分野に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。

Claims (4)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)を0.01〜1質量部、炭素数が1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)を0.005〜0.5質量部を含有し、かつ、
    パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)の含有量([B])と炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)の含有量([C])の質量比([B]/[C])が、40/60〜80/20の範囲にあることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. ポリカーボネート樹脂(A)は、構造粘性指数Nが1.2以上のポリカーボネート樹脂を20質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩(B)および炭素数1〜3のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩(C)は、(B)および(C)の溶融混合アルカリ金属塩の形で配合されることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品。
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