JP5362264B2 - 加硫ブラダー - Google Patents

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本発明は、加硫ブラダーに関する。詳しくは不良タイヤの発生を低減すると共に、ブラダーライフを長くして生産性を向上させることができるBOM式加硫装置に用いられる加硫ブラダーに関する。
空気入りタイヤを加硫成形するタイヤ加硫装置には加硫ブラダーが用いられている。
タイヤ加硫装置の一種であるBOM式加硫装置に用いられている加硫ブラダーの一例を図5に子午線断面図で示す。図5において1は胴部であり、13は上下のフランジ部であり、全体として樽型の子午線断面形状を有している。加硫ブラダーはゴムなどの弾性材料からなり膨縮自在な中空体であって、内部に加熱加圧媒体(スチームやスチームと不活性ガスとの混合気体等の流体)を供給することによって生タイヤの内面に接して膨張させて、生タイヤの外面を金型面に押圧し(シェーピング工程)、その後加硫ブラダー内の加熱加圧媒体と金型とを加硫温度に調整して生タイヤを加圧、加熱することにより加硫が進みタイヤが得られる。
しかし、図5に示すような従来のBOM式加硫装置用の加硫ブラダーは、シェーピング工程において、生タイヤと加硫ブラダーとの間にエアーを挟み込んでしまうことがあった。そして挟み込まれたエアーを残したまま生タイヤを加硫すると、加硫ブラダーの外面形状を正確にタイヤ内面形状として転写することができず、エアーが残った部分にはベアー等の外観不良が発生していた。
このようなタイヤと加硫ブラダーとの間にエアーが挟み込まれる問題を解決するために、特許文献1には、生タイヤのトレッド部に面する筒状の胴部と、その両端で半径方向内方に幅を減じるテーパ状をなす側壁部とを有するブラダー主部を備え、かつ前記胴部と側壁部との交わり角度を65〜85゜とする加硫ブラダーが提案されている。
しかしながら、特許文献1に提案された加硫ブラダーを用いた場合でも、タイヤ加硫前のシェーピング工程で、タイヤ内面と加硫ブラダー間のエアー残りを十分には防止できず、その結果不良タイヤの発生を十分に抑制できるとは言えなかった。
また、従来の加硫ブラダーを用いたBOM式加硫装置では加硫ブラダーと金型面との距離が長いため、シェーピング工程および加硫工程において、加硫ブラダーがタイヤの周方向およびラジアル方向に大きく伸縮し、ブラダーライフ(使用回数寿命)が短く、AFV式加硫装置に用いられる伸縮が比較的小さな加硫ブラダーに比べ約30%減のブラダーライフに留まっている。この結果、加硫ブラダーの交換頻度が高くなり、加硫ブラダーの段替え回数が増加するため、タイヤ加硫装置としての稼働効率が低下し、生産性(タイヤの加硫作業能率)が低くなっていた。
特開2003−11125号公報
BOM式加硫装置に用いられる従来の加硫ブラダーの上記問題に対応するため、本発明は、タイヤ加硫前のシェーピング工程においてタイヤ内面と加硫ブラダー間にエアーが残ることを十分に抑制することにより不良タイヤの発生を低減することができ、またシェーピング工程および加硫工程において、加硫ブラダーのタイヤの周方向およびラジアル方向への大きな伸縮によりブラダーライフが短くなることを防止して、加硫ブラダーの交換頻度を減少させ、加硫ブラダーの段替え回数を減少させることにより生産性を向上させることができるBOM式加硫装置用の加硫ブラダーを提供することを課題とする。
前記の課題を解決するために、本発明に係る加硫ブラダーは、
生タイヤの内面に接して膨張することにより前記生タイヤを金型面に押圧して成形するためのBOM式加硫装置用の加硫ブラダーであって、
中央部が径方向の外側に突出した胴部と、前記胴部の上下各端部に続くフランジ部とを備え、
前記フランジ部の各々が開口部を形成しており、
前記胴部の子午線断面形状が、前記各フランジ部に続く上下の各グリップ部と、前記各グリップ部に続いて中央部まで径方向の外側に向けて伸びる上下の各直線部と、前記各直線部を緩やかな曲線で結ぶ中央部により形成されると共に、以下の(1)〜(4)式を満足することにより前記フランジ部から急激に立ち上がっている
ことを特徴とする。
1.2<B/A<1.6 ・・・ (1)
0.1<C/A<0.3 ・・・ (2)
0.6<C1/C<0.7 ・・・ (3)
30°<θ<40° ・・・ (4)
但し、A :フランジ部の外径
B :胴部の中央部の外径
C :胴部の端部と中央部との間の径方向長さ
H :胴部の高さ
C1:胴部の端部からH/8の高さにおける胴部の直線部と中央部との間
の径方向長さ
θ :胴部の端部からH/8の高さにおける胴部の直線部と軸線との角度
本発明に係る加硫ブラダーをBOM式加硫装置に用いることにより、タイヤ加硫前のシェーピング工程においてタイヤ内面と加硫ブラダー間にエアーが残ることを十分に抑制でき、不良タイヤの発生を低減することができる。また、シェーピング工程および加硫工程における加硫ブラダーのタイヤの周方向およびラジアル方向の伸縮を小さくできるため、ブラダーライフを向上させることができ、加硫ブラダーの交換頻度が減少し、加硫ブラダーの段替え回数が減少することにより生産性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
最初に、従来の加硫ブラダーの具体的形状につき説明する。前記したように、図5は従来の加硫ブラダーの一例の子午線断面図であり、その子午線断面形状は、フランジ部13に続いて所定の長さの水平部が形成され、その後立ち上がって全体として緩やかな曲線形状の胴部1が形成され、全体として樽型に形成されている。
そして、図5に示した加硫ブラダーの場合、A、Bその他の具体的な寸法比は次の通りである。即ち、Aを41としたとき、Bは115、Hは106、Cは37、C1は12である。そして、(B/A)は2.80、(C/A)は0.90、(C1/C)は0.32、θは62°である。
次に、本発明の実施の形態に係る加硫ブラダーにつき、図1に加硫ブラダーの斜視図を、そして図2に加硫ブラダーの子午線断面図を示して説明する。図1、図2において、上下方向がタイヤ軸方向に相当し、左右方向がタイヤ径方向に相当する。
図1に示すように、本実施の形態に係る加硫ブラダーは、中央部11が径方向の外側に突出した胴部1と、胴部1の上下各端部に続くフランジ部13とを備え、フランジ部13の各々が開口部10を形成している。
そして、本実施の形態に係る加硫ブラダーの胴部1の子午線断面形状は、図2に示すように、各フランジ部13に続く上下の各グリップ部14と、各グリップ部14に続いて中央部11まで径方向の外側に向けて伸びる上下の各直線部12と、各直線部12を緩やかな曲線で結ぶ中央部11により形成され、全体が左右対称であると同時に上下対称の形状となっている。
次に、図2に示された加硫ブラダーにおける胴部1の中央部11からフランジ部13までの断面形状を拡大して示した一部拡大断面図である図3を用いてさらに詳細に説明する。
図3において、中央部11は大きな曲率半径R1の円弧で形成されて緩やかな曲線になっている。一方グリップ部14は小さな曲率半径R2で描かれた急曲線で形成された形状となっている。
そして、直線部12は、中央部11とグリップ部14との間で十分に長い直線により形成されており、この直線は、中央部11の大きな曲率半径(R1)で描かれる円弧とグリップ部14の小さな曲率半径(R2)で描かれる円弧のそれぞれの接線になっている。
そして、この加硫ブラダーの断面形状は、以下の(1)〜(4)式の範囲において作製されている。
1.2<B/A<1.6 ・・・ (1)
0.1<C/A<0.3 ・・・ (2)
0.6<C/C<0.7 ・・・ (3)
30°<θ<40° ・・・ (4)
但し、A :フランジ部13の外径
B :胴部1の中央部の外径
C :胴部の端部と中央部との間の径方向長さ
H :胴部1の高さ
C1:胴部1の端部からH/8の高さにおける胴部1の直線部12と中央
部11との間の径方向長さ
θ :胴部1の端部からH/8の高さにおける胴部1の直線部12と軸線
との角度
なお、図2に実施の形態の一例として示した加硫ブラダーの場合、A、Bその他の具体的な寸法比は次の通りである。即ち、Aを76としたとき、Bは114、Hは85、Cは19、C1は12である。そして(B/A)は1.37、(C/A)は0.25、(C1/C)は0.63、θは33°である。
本実施の形態に係る加硫ブラダーの形状は、フランジ部から急激に立ち上がっているために従来の加硫ブラダーに比べフランジ部からの立ち上がりがはやく、その後十分に長い直線部が続き、前記の直線部が緩やかな曲線で結ばれた中央部が形成されている。そして、中央部の形状は、膨張時になめらかに生タイヤを押圧する緩やかな曲線とはいえ、従来の加硫ブラダーの形状に比べると急な曲線になっている。
この結果、加硫ブラダーが膨張して生タイヤの外面を金型面に押圧する際、加硫ブラダーが生タイヤに接触する角度が従来の加硫ブラダーに比べて大きくなり、このような中央部に続いて直線部がなめらかに生タイヤに接触していき、タイヤ内面と加硫ブラダー間にエアー残りが生じることがなく、不良タイヤの発生を十分に抑制することができる。
また、本実施の形態に係る加硫ブラダーは、従来の加硫ブラダーに比べ、径方向外側に大きく出ている形状となるため、生タイヤの成形において、加硫ブラダーの膨張、収縮の程度を小さくして加硫ブラダーの疲労を抑制することができ、ブラダーライフの長期化を図ることができる。その結果、加硫ブラダーの交換頻度が減少されて、加硫ブラダーの段替え回数が減少し、生産性を向上させることができる。
上記の加硫ブラダーの作製手順につき、以下に図4を用いて説明する。図4は、ブラダーモールド組立て図である。図4において、21は上側モールドであり、24は下側モールドである。さらに、26は内側モールドであり、27は内側モールド26の支持台である。上側モールド21、下側モールド24および内側モールド26の形状を調整することにより、上記(1)〜(4)式を満たす所定の形状を有する加硫ブラダーを得ることができる。
最初に所定の寸法に裁断された未加硫状態のゴムシートを準備する。ゴムシートにおける配合は従来の加硫ブラダー作製におけるゴム配合をそのまま用いることができ、耐食性に優れかつ空気不透過性の高いブチルゴムなどを使用することが好ましい。
次に、このゴムシートをブラダーモールド内に投入する。具体的には、下側モールド24にゴムシートを配設した後、内側モールド26をセットし、さらに上側モールド21をセットする。その後上下モールドを型締めし全体を加圧、加熱することにより、未加硫状態のゴムシートが加硫されて加硫ブラダーが得られる。
以下に実施例および比較例を示す。
実施例として、図1、図2に示す形状の加硫ブラダー(タイプ:17.5/460、厚さ:6.0mm)を作製し、比較例として図5に示す形状で、実施例と同じタイヤサイズに適応する加硫ブラダーを各3本作製した。各加硫ブラダーを構成する材料および配合は同じとした。
次いで、得られた各加硫ブラダーを同じBOM式加硫装置に組み込んで、組み込んだ加硫ブラダーが破裂するまで生タイヤの加硫を行い、タイヤを製造した。製造された各タイヤについてエアー残りによる不良の発生の有無を検査し、タイヤ不良率(%)を求めた。また、破裂するまでの加硫回数をブラダーライフとした。本実施例においてはタイヤ不良率は0%であり、ブラダーライフは500回であった。一方、比較例においてはタイヤ不良率は0.3%であり、ブラダーライフは250回であった。
このように、本発明に係る加硫ブラダーを用いた場合、エアー残りによる不良の発生がなく、ブラダーライフも従来の加硫ブラダーを用いた場合に比べ2倍となっており、本発明により優れた加硫ブラダーを提供できることが確認できた。
本発明の実施の形態に係る加硫ブラダーの斜視図である。 本発明の実施の形態に係る加硫ブラダーの子午線断面図である。 本発明の実施の形態に係る加硫ブラダーの一部を拡大した断面図である。 本発明の実施の形態に係る加硫ブラダーを作製するブラダーモールドの組み立て図である。 従来の加硫ブラダーの子午線断面図である。
符号の説明
1 胴部
10 開口部
11 中央部
12 直線部
13 フランジ部
14 グリップ部
21 上側モールド
24 下側モールド
26 内側モールド
27 支持台

Claims (1)

  1. 生タイヤの内面に接して膨張することにより前記生タイヤを金型面に押圧して成形するためのBOM式加硫装置用の加硫ブラダーであって、
    中央部が径方向の外側に突出した胴部と、前記胴部の上下各端部に続くフランジ部とを備え、
    前記フランジ部の各々が開口部を形成しており、
    前記胴部の子午線断面形状が、前記各フランジ部に続く上下の各グリップ部と、前記各グリップ部に続いて中央部まで径方向の外側に向けて伸びる上下の各直線部と、前記各直線部を緩やかな曲線で結ぶ中央部により形成されると共に、以下の(1)〜(4)式を満足することにより前記フランジ部から急激に立ち上がっている
    ことを特徴とする加硫ブラダー。
    1.2<B/A<1.6 ・・・ (1)
    0.1<C/A<0.3 ・・・ (2)
    0.6<C1/C<0.7 ・・・ (3)
    30°<θ<40° ・・・ (4)
    但し、A :フランジ部の外径
    B :胴部の中央部の外径
    C :胴部の端部と中央部との間の径方向長さ
    H :胴部の高さ
    C1:胴部の端部からH/8の高さにおける胴部の直線部と中央部との間
    の径方向長さ
    θ :胴部の端部からH/8の高さにおける胴部の直線部と軸線との角度
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