以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す側断面図である。本実施形態の熱処理装置1は基板としてφ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに閃光(フラッシュ光)を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、シャッター機構2と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、シャッター機構2、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射された光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
図2は、チャンバー6の側部を拡大した部分断面図である。チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
図2に示すように、凹部62を挟んで上下のそれぞれに装着された反射リング68,69の内周面はテーパ面とされている。上側の反射リング68のテーパ面は下側に向けて径が大きくなる。逆に、下側の反射リング69のテーパ面は上側に向けて径が大きくなる。一方、図1に示すように、半導体ウェハーWを保持する保持部7は凹部62の高さ位置に設けられている。従って、上側の反射リング68および下側の反射リング69ともに石英窓(上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64)の側から保持部7の側に向けて拡がるテーパ面が形成されていることとなる。
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面(つまりテーパ面)は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
また、チャンバー6においては、熱処理空間65の上部から処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N2))を供給するとともに、下部から排気を行うように構成されている。図2に示すように、チャンバー6の上部において、チャンバー側部61に装着された反射リング68と上側チャンバー窓63とは密接しておらず、それらの間には隙間が形成されている。上側チャンバー窓63は円板状であり、内側側壁62は円環状であるため、上側チャンバー窓63と内側側壁62の上端面との間に形成される隙間も円環状のスリット81となる。また、チャンバー側部61と反射リング68との間に緩衝空間82が形成されている。緩衝空間82も円環状に形成されることとなる。緩衝空間82はスリット81と連通している。
また、緩衝空間82にはガス配管83が連通接続されている。ガス配管83の基端部は窒素ガス供給源85に接続されている(図1)。ガス配管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、窒素ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスはスリット81を通過してチャンバー6内の熱処理空間65に供給される。
図3は、熱処理空間65への気体供給を示す平面図である。緩衝空間82からスリット81へと至る気体の通過経路において、気体の進行方向に対して垂直となる面の断面積が緩衝空間82の方がスリット81よりも大きい。すなわち、緩衝空間82の方がスリット81よりも流体抵抗が小さい。このため、図3に示すように、ガス配管83から緩衝空間82へ流入した窒素ガスの一部は直ちにスリット81に流れるものの、大部分はより抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れる。そして、緩衝空間82内に満たされた窒素ガスがスリット81を通って熱処理空間65に供給される。従って、環状のスリット81の全周にわたって均一に窒素ガスが供給されることとなる。
一方、チャンバー6の底部においても上部と同様に、反射リング69と下側チャンバー窓64とは密接しておらず、それらの間には隙間が形成されている。下側チャンバー窓64は円板状であり、反射リング69は円環状であるため、下側チャンバー窓64と反射リング69の下端面との間に形成される隙間も円環状のスリット86となる。また、チャンバー側部61に形成された円環状の緩衝空間87がスリット86と連通している。緩衝空間87にはガス配管88が連通接続されている。ガス配管88の基端部は排気部90に接続されている。ガス配管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がスリット86から緩衝空間87を経てガス配管88へと排出される。
スリット86から緩衝空間87へと至る気体の通過経路においても、気体の進行方向に対して垂直となる面の断面積が緩衝空間87の方がスリット86よりも大きい。すなわち、緩衝空間87の方がスリット86よりも流体抵抗が小さい。このため、環状のスリット86の全周にわたって均一に気体が排気される。なお、図示の便宜上、図1と図2とではガス配管83,88の位置が異なっているが、ガス配管83,88は円環状の緩衝空間82,87の任意の位置に接続して良く、両ガス配管83,88を図1のように接続しても図2のように接続しても良い。また、緩衝空間82,87に接続されるガス配管83,88は一本に限定されるものではなく、複数本であっても良い。複数本のガス配管83,88を緩衝空間82,87に均等に接続すれば、環状のスリット81,86からより均一な給排気を行うことができる。
このように、熱処理装置1は、チャンバー6内に保持された半導体ウェハーWを挟んで概ね上下対称に給排気機構を備えている。すなわち、バルブ84、ガス配管83および緩衝空間82を有する給気機構によって、上側チャンバー窓63とチャンバー6の内壁上端との間に環状に形成された隙間であるスリット81からチャンバー6内の熱処理空間65に処理ガス(窒素ガス)を供給する。それとともに、バルブ89、ガス配管88および緩衝空間87を有する排気機構によって、下側チャンバー窓64とチャンバー6の内壁下端との間に環状に形成された隙間であるスリット86からチャンバー6内の気体を排気する。なお、窒素ガス供給源85および排気部90は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
図4は、半導体ウェハーWの保持位置から見たチャンバー6の平面図である。保持部7は、サセプタ70および均熱リング75を備えて構成される。サセプタ70は、石英により形成され、円環形状のリング部71に複数の爪部72(本実施形態では4本)を立設して構成される。リング部71が凹部62の底面に載置されることによって、サセプタ70がチャンバー6に装着される。
均熱リング75は、炭化ケイ素(SiC)によって形成されたリング状部材であり、サセプタ70の爪部72に設けられた支持ピンによって支持される。均熱リング75の内周には図示を省略する複数の爪が突設されており、それら複数の爪によって半導体ウェハーWの周縁部が支持されて半導体ウェハーWが水平姿勢にて保持される。なお、複数の爪に代えて均熱リング75の内周に沿って鍔を設け、それによって半導体ウェハーWを保持するようにしても良い。
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12が均熱リング75の内側を通過し、リフトピン12の上端が均熱リング75の上側に突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させ、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。
一対の移載アーム11の退避位置は、サセプタ70のリング部71の直上である。リング部71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。
図4に示すように、チャンバー側部61のうち移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位には、排気管93が連通接続されている。排気管93は排気部90に接続されている。排気管93の経路途中にはバルブ94が介挿されている。バルブ94を開放することによって、移載機構10の駆動部周辺を介してチャンバー6内の気体が排気される。また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出する排気管91が接続されている。排気管91はバルブ92を介して排気部90に接続されている。バルブ92を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。なお、本実施形態では3系統の排気機構の排気部90を共通のものとしていたが、これを別個のものとしても良い。
また、図4に示すように、熱処理装置1は、半導体ウェハーWの温度を測定するためのプローブ78,79を備えている。熱電対を使用した接触式温度計のプローブ78は均熱リング75に保持された半導体ウェハーWの裏面に接触し、別置のディテクタによって半導体ウェハーWの温度を測定する。一方、放射温度計のプローブ79は均熱リング75に保持された半導体ウェハーWの裏面から放射された放射光(赤外線)を受光し、別置のディテクタによって半導体ウェハーWの温度を測定する。接触式温度計のプローブ78および放射温度計のプローブ79は、いずれもチャンバー6の凹部62に設置されている。
さらに、図1に示すように、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4に放射温度計のプローブ49を備える。プローブ49は、プローブ79と同様に、均熱リング75に保持された半導体ウェハーWの裏面から放射された放射光を受光し、別置のディテクタによって半導体ウェハーWの温度を測定する。プローブ79が保持部7に保持された半導体ウェハーWの斜め下方から放射光を受光してウェハー温度を測温するのに対して、プローブ49は半導体ウェハーWの直下から放射光を受光して測温する。但し、半導体ウェハーWからの距離は直下のプローブ49の方が長い。このように、熱処理装置1は、3つのプローブ78,79,49を備えて半導体ウェハーWの温度を確実に測温する。
チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65に閃光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし10ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4の内部には複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLが内蔵されている。複数のハロゲンランプHLはチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも端部側の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
また、図1に示すように、ハロゲン加熱部4にはガス噴出部140が付設されている。ガス噴出部140は、噴出板141、ガス噴出バッファ142、ガス供給管143並びにガス供給管143に設けられたガス供給機構および流量調整機構を備える。図8は、噴出板141の平面図である。また、図9は、ガス噴出バッファ142へのガス供給機構150および流量調整機構160を模式的に示す図である。
噴出板141は、ハロゲン加熱部4の床部分を構成し、ハロゲンランプHLを挟んで下側チャンバー窓64と対向するように配置されている。噴出板141は、格子状に交差して配列された複数のハロゲンランプHLによって形成される配列平面と略同一の矩形形状を有しており、その配列平面と対向している。噴出板141には、複数の噴出孔149が上下に貫通して穿設されている。複数の噴出孔149のそれぞれは、上段および下段に配列されたハロゲンランプHLの隙間に対向するように噴出板141に設けられている。
本実施形態においては、噴出板141が4つの領域141a,141b,141c,141dに分割されている。4つの領域141a,141b,141c,141dは、噴出板141の矩形形状を複数のハロゲンランプHLの長手方向と直交する方向の中心線にて分割したものである。すなわち、噴出板141の矩形形状は、上段のハロゲンランプHLの長手方向と直交する方向の中心線148aによって領域141a,141bと領域141c,141dとに分割されている。同様に、噴出板141の矩形形状は、下段のハロゲンランプHLの長手方向と直交する方向の中心線148bによって領域141a,141dと領域141b,141cとに分割されている。
ガス噴出バッファ142は、噴出板141の直下に設けられた空間である。噴出板141の領域分割に対応してガス噴出バッファ142も4つの小空間142a,142b,142c,142dに分割されている。4つの小空間142a,142b,142c,142dは、仕切り壁によって相互に雰囲気分離されている。4つの小空間142a,142b,142c,142dは、領域141a,141b,141c,141dのそれぞれに対向している。すなわち、領域141aに設けられた全ての噴出孔149の下端は小空間142aに開口して連通している。同様に、領域141b,141c,141dのそれぞれに設けられた全ての噴出孔149の下端は小空間142b,142c,142dのそれぞれに開口して連通している。なお、複数の噴出孔149の上端はハロゲンランプHLの配列に向けて開口している。よって、各噴出孔149は、ガス噴出バッファ142からハロゲンランプHLの配列へと向かうように設けられている。
ガス噴出バッファ142にはガス供給機構150によって所定の気体(本実施形態ではエアー)が供給される。ガス供給機構150は、ガス供給管143に手動弁151、レギュレータ152、空気作動弁153およびフィルター154を介挿して構成されている。ガス供給管143の基端部はエアー供給源144に連通接続される。なお、エアー供給源144は、窒素ガス供給源85と同様に、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
一方、ガス供給管143の先端は4つの経路に分岐されて、分岐配管143a,143b,143c,143dを形成している。4本の分岐配管143a,143b,143c,143dのそれぞれは、小空間142a,142b,142c,142dに接続される。これによって、ガス噴出バッファ142を4つの区画に分割した小空間142a,142b,142c,142dのそれぞれがガス供給管143を介してエアー供給源144と連通接続されることとなる。
手動弁151は、手動によってガス供給管143を開閉するバルブである。レギュレータ152は、ガス供給管143を通過する窒素ガスの圧力調整を行うものである。空気作動弁153は、電源停止時にガス供給管143を閉鎖するために設けられているものであり、熱処理装置1の通常の稼働時には開放されている。また、フィルター154は、ガス供給管143を通過するエアーから微粒子等を取り除いて浄化する。手動弁151および空気作動弁153を開放するとともにレギュレータ152が設定値に基づく圧力調整を行うことにより、エアー供給源144からガス供給管143に送給された所定圧のエアーが4本の分岐配管143a,143b,143c,143dに分流する。すなわち、ガス供給機構150は4つの小空間142a,142b,142c,142d、つまり4つの領域141a,141b,141c,141dのそれぞれに個別にエアーを供給する。
流量調整機構160は、4本の分岐配管143a,143b,143c,143dのそれぞれにニードルバルブ161a,161b,161c,161dおよびフローメータ162a,162b,162c,162dを介挿して構成されている。ニードルバルブ161a,161b,161c,161dのそれぞれは対応する分岐配管を流れるエアーの流量を調整する。また、フローメータ162a,162b,162c,162dのそれぞれは対応する分岐配管を流れるエアーの流量を計測する。ニードルバルブ161a,161b,161c,161dのそれぞれが設定値に基づいた流量調整を行うことにより、ガス供給機構150から4つの小空間142a,142b,142c,142dのそれぞれに供給されるエアーの流量を個別に調整することができる。具体的には、フローメータ162a,162b,162c,162dの計測結果に基づいて制御部3がニードルバルブ161a,161b,161c,161dの設定値を自動制御するようにしても良い。また、熱処理装置1のオペレータがフローメータ162a,162b,162c,162dを監視しつつニードルバルブ161a,161b,161c,161dの設定値を手動で調整するようにしても良い。なお、フローメータおよびニードルバルブに代えて双方の機能を併せ持つマスフローメータを分岐配管143a,143b,143c,143dのそれぞれに設けるようにしても良い。
4本の分岐配管143a,143b,143c,143dのそれぞれから供給されたエアーは、一旦小空間142a,142b,142c,142dに貯留された後に、対応する噴出板141の領域141a,141b,141c,141dに形設された噴出孔149からハロゲンランプHLの隙間に向けて噴出される。このときのガス噴出バッファ142の内圧は大気圧よりも若干大きい。
複数の噴出孔149のそれぞれは、上段および下段に配列されたハロゲンランプHLの隙間の直下に位置するように噴出板141に穿設されている。従って、小空間142a,142b,142c,142dに供給されたエアーは、複数の噴出孔149のそれぞれからハロゲンランプHLの配列の隙間に向けて噴出される。複数の噴出孔149から噴出されたエアーはハロゲンランプHLの管壁外周に接しつつランプ配列を通過して下側チャンバー窓64に吹き付けられることとなる。
本実施形態においては、4つの小空間142a,142b,142c,142dのそれぞれに供給するエアーの流量を個別に調整することができるため、それに伴って4つの領域141a,141b,141c,141dから噴出されるエアーの流量も領域毎に個別に調整されることとなる。そして、その結果、下側チャンバー窓64に吹き付けられるエアーの流量も窓上の領域毎に異なることとなる。
また、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4およびチャンバー6の側方にシャッター機構2を備える。シャッター機構2は、シャッター板21およびスライド駆動機構22を備える。シャッター板21は、ハロゲン光に対して不透明な板であり、例えばチタン(Ti)にて形成されている。スライド駆動機構22は、シャッター板21を水平方向に沿ってスライド移動させる。スライド駆動機構22がシャッター板21をスライド移動させることにより、シャッター板21は、チャンバー6の下側チャンバー窓64とハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLとの間の空間の一方側に形成された通路25から当該空間に挿脱される。すなわち、スライド駆動機構22がシャッター板21を前進させると、通路25から下側チャンバー窓64とハロゲンランプHLとの間の空間にシャッター板21が挿入されて下側チャンバー窓64と複数のハロゲンランプHLとを遮断する。これによって、複数のハロゲンランプHLから熱処理空間65へと向かう光は遮光される。逆に、スライド駆動機構22がシャッター板21を後退させると、下側チャンバー窓64とハロゲンランプHLとの間の空間から通路25を通過してシャッター板21が退出して下側チャンバー窓64の下方が開放される。なお、シャッター板21が挿入された状態においても、通路25とシャッター板21との間には隙間が存在している。
シャッター板21には、図示を省略する小孔が貫通して穿設されている。シャッター板21が前進して下側チャンバー窓64の全体を覆ったときに、当該小孔がプローブ49の直上に位置する。従って、シャッター板21が下側チャンバー窓64と複数のハロゲンランプHLとを遮断しても、プローブ49による半導体ウェハーWの測温は可能とされている。
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。上記のガス供給機構150および流量調整機構160も制御部3によって制御される。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、フラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について簡単に説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板であり、添加された不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ加熱処理により実行される。図10は、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順を示すフローチャートである。以下に示す半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することによって実行される。
まず、熱処理空間65への給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,92,94が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される(ステップS1)。バルブ84が開放されると、上側チャンバー窓63とチャンバー6の内壁上端との間に形成された環状のスリット81の全周から均一に熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、下側チャンバー窓64とチャンバー6の内壁下端との間に形成された環状のスリット86の全周から均一にチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の最上部から供給された窒素ガスが保持部7に保持された半導体ウェハーWの側方を通って下方へ流れ、熱処理空間65の最下部から排気される。なお、半導体ウェハーWの側方においては、爪部72の隙間が大きく開放されており、そこから下方へと窒素ガスが流れる。
また、バルブ92,94が開放されることによって、それぞれ搬送開口部66および移載機構10の駆動部周辺を介してチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の最上部から供給された窒素ガスが搬送開口部66および移載機構10の駆動部周辺を流れて排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は図10の処理ステップに応じて適宜変更される。
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される(ステップS2)。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が均熱リング75の内側を通って上方に突き出て搬送ロボットから半導体ウェハーWを受け取る。
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7の均熱リング75に受け渡されて水平姿勢に保持される。均熱リング75の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
半導体ウェハーWが保持部7の均熱リング75に保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される(ステップS3)。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64を透過して半導体ウェハーWの裏面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。また、ハロゲンランプHLからの放射光には赤外光も多く含まれているため、石英製の下側チャンバー窓64によってハロゲン光が吸収され、その温度が上昇する。そして、昇温した下側チャンバー窓64からも長波長の赤外線が放射され、それによっても半導体ウェハーWの温度は影響を受ける。ハロゲンランプHLによる予備加熱時にはガス噴出部140からのエアー噴出も実行されるが、これについてはさらに後述する。
また、予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、均熱リング75によって周縁部の放熱が補償されるため、半導体ウェハーWの面内温度分布が均一に維持される。また、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっているため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一なものとすることができる。
さらに、チャンバー側部61に装着された反射リング69に保持部7の側に向けて拡がるテーパ面が形成され、そのテーパ面はニッケルメッキによって鏡面とされているため、この反射リング69のテーパ面によって半導体ウェハーWの周縁部に向けて反射する光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一なものとすることができる。
予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が接触式温度計および放射温度計によって計測されている。すなわち、接触式温度計のプローブ78が半導体ウェハーWの裏面に接触するとともに、放射温度計のプローブ49,79が半導体ウェハーWの裏面から放射される光を受光している。これら3つのプローブ49,78,79によって半導体ウェハーWが所定の予備加熱温度T1に到達したか否かが監視される(ステップS4)。
本実施の形態においては、予備加熱温度T1は800℃とされる。そして、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達したことが検知されたら直ちにフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLから半導体ウェハーWへ向けてフラッシュ光が照射される(ステップS5)。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接に熱処理空間65内の保持部7へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてから熱処理空間65内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからの閃光照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。
すなわち、フラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予め蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリ秒ないし10ミリ秒程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからの閃光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃ないし1100℃程度の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに添加された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに添加された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、添加不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
また、本実施形態の熱処理装置1は、ハロゲンランプHLによって半導体ウェハーWを予備加熱温度T1(800℃)にまで予備加熱してからフラッシュランプFLからの閃光照射によってフラッシュ加熱を行っている。半導体ウェハーWの温度が600℃以上になると添加された不純物の熱拡散が生じる可能性があるが、ハロゲンランプHLは比較的急速に半導体ウェハーWを800℃まで昇温することができるため、添加不純物の拡散を最小限に抑制することができる。また、半導体ウェハーWを予備加熱温度T1にまで昇温してからフラッシュランプFLからの閃光照射を行うことにより、半導体ウェハーWの表面温度を処理温度T2まで速やかに上昇させることができる。さらに、予備加熱温度T1から処理温度T2までのフラッシュ加熱による昇温幅が比較的小さいため、フラッシュランプFLから照射する閃光のエネルギーを比較的小さくすることができ、その結果フラッシュ加熱時に半導体ウェハーWに与える熱的衝撃を緩和することができる。
フラッシュ加熱が終了した後、ある時間経過後に複数のハロゲンランプHLが一斉に消灯して、半導体ウェハーWの温度が急速に降温する(ステップS6)。また、ハロゲンランプHLが消灯するのと同時に、シャッター機構2がシャッター板21をハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に挿入する(ステップS7)。ハロゲンランプHLが消灯しても、すぐにフィラメントや管壁の温度が低下するものではなく、暫時高温のフィラメントおよび管壁から輻射熱が放射され続け、これが半導体ウェハーWの降温を妨げる。シャッター板21が挿入されることによって、消灯直後のハロゲンランプHLから熱処理空間65に放射される輻射熱が遮断されることとなり、半導体ウェハーWの降温速度を高めることができる。
半導体ウェハーWの降温段階においても、3つのプローブ49,78,79によって半導体ウェハーWの温度が計測されている。なお、上述のように、シャッター板21には小孔が形成されているため、シャッター板21が挿入された状態においてもプローブ49による温度計測は可能である。また、シャッター板21が挿入されることによって、消灯直後のハロゲンランプHLから放射される輻射熱が遮断されるため、接触式温度計のプローブ78が受ける外乱が少なくなり、温度計測の精度を高めることができる。
その後、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が均熱リング75の内側から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWを保持部7から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され(ステップS8)、熱処理装置1における半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理が完了する。
上述した一連の熱処理工程において、ハロゲンランプHLの配設密度を半導体ウェハーWの周縁部に対向する領域の方を高くするなどして予備加熱(ステップS3)のときのウェハー面内温度分布の均一性を高めているものの、それでもなお十分な温度分布均一性が得られないこともある。40本のハロゲンランプHLは個別にまたはゾーン毎に出力を調整することが可能であり、出力調整によって温度分布均一性を向上させることも可能であるが、本実施形態のように複数のハロゲンランプHLを格子状に交差するように配列している場合には以下のような問題が生じる。
例えば、図7のランプ配列における紙面右上に対向する領域のウェハー温度が低かった場合、上段の紙面上側のハロゲンランプHLまたは下段の紙面右側のハロゲンランプHLの出力を高めることによって当該領域の温度を上昇させることは可能である。ところが、上段の紙面上側のハロゲンランプHLの出力を高めると、紙面左上に対向する領域のウェハー温度も上昇することとなり、また下段の紙面右側のハロゲンランプHLの出力を高めると、紙面右下に対向する領域のウェハー温度も上昇することとなる。その結果、調整前とは異なる形態の面内温度分布不均一が生じるのである。
このため、本実施形態の熱処理装置1においては、少なくともハロゲンランプHLによる予備加熱の工程において、ガス供給機構150が4つの小空間142a,142b,142c,142dに個別にエアーを供給し、噴出板141からエアーを噴出してハロゲンランプHLおよび下側チャンバー窓64を冷却して半導体ウェハーWの温度調整を行っている。下側チャンバー窓64は石英にて形成されているため、ハロゲンランプHLからの放射光を吸収して昇温し、その昇温した下側チャンバー窓64からの輻射熱によって半導体ウェハーWも昇温される。すなわち、保持部7に保持された半導体ウェハーWは、ハロゲンランプHLからの直接の放射光のみならず、下側チャンバー窓64からの輻射熱によっても温度影響を受ける。
ここで例えば、保持部7に保持された半導体ウェハーWの面内において、図7のランプ配列における紙面右上に対向する領域の温度が高かった場合、噴出板141の図8紙面右上の領域141dからのエアー噴出流量を他の領域からのエアー噴出流量よりも多くする。具体的には、流量調整機構160が小空間142dに供給するエアーの流量を他の小空間に供給するエアーの流量よりも多くする。これにより、領域141dに対向するハロゲンランプHLのランプ管壁および下側チャンバー窓64に吹き付けられるエアーの流量が他の領域に対向するハロゲンランプHLおよび下側チャンバー窓64に吹き付けられるエアー流量よりも多くなる。その結果、領域141dに対向する下側チャンバー窓64の温度が他の領域よりも相対的に低くなり、領域141aに対向する半導体ウェハーWへの輻射熱が弱まり、上記の面内温度分布不均一が解消される。
本実施形態の熱処理装置1においては、噴出板141を4分割するとともに、4つの領域141a,141b,141c,141dから噴出されるエアーの流量も領域毎に個別に調整することができるため、ハロゲンランプHLの出力調整では解消できないような上述の如き半導体ウェハーWの温度分布不均一をも解消することができる。その結果、半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性をより向上することができる。
また、ガス噴出部140から噴出されたエアーは通路25から装置外へと排出される。通路25は、シャッター板21を挿脱するための経路およびエアーの排出経路として共用されることとなる。このため、熱処理装置1の高さ方向サイズを小さくすることができるとともに、ハロゲンランプHLと保持部7に保持された半導体ウェハーWとの距離を近づけることができ、予備加熱段階におけるエネルギー効率を高めることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、噴出板141を4つの領域に分割していたが、噴出板141の分割数は2以上の任意の数とすることができる。分割した領域毎に小空間を設け、ガス供給機構150から供給されるエアーの流量を流量調整機構160によって複数の領域ごとに個別に調整することにより、下側チャンバー窓64に意図的に温度分布を生じさせ、半導体ウェハーWの温度分布不均一を解消することができる。
例えば、ハロゲン加熱部4に棒状のハロゲンランプHLが互いに平行に一段に配列されている場合には、そのランプ配列と対向する矩形形状を有する噴出板141を2つの領域に分割するようにしても良い。この場合も噴出板141の矩形形状を複数のハロゲンランプHLの長手方向と直交する方向の中心線にて2分割して2つの領域とする。このようにすれば、ハロゲンランプHLの長手方向に沿って生じた半導体ウェハーWの温度分布不均一、つまりハロゲンランプHLの出力調整では解消できないような半導体ウェハーWの温度分布不均一をも解消することができる。
また、ガス噴出部140から噴出されたエアーは、下側チャンバー窓64とハロゲンランプHLとの間の空間の一方側に形成された通路25から排出されるため、当該空間には一方向の気流が形成される。このような一方向の気流が発生すると、気流の下流側に接する下側チャンバー窓64の温度が上流側よりも高くなるような温度勾配が生じる。そこで、噴出板141を分割した複数の領域のうち気流の下流側に対向する領域に供給するエアーの流量を上流側に対向する領域に供給するエアーの流量よりも多くするようにしても良い。このようにすれば、下側チャンバー窓64に生じた温度勾配を解消して半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性をより向上することができる。
また、ガス噴出部140からのエアー噴出は少なくともハロゲンランプHLによる予備加熱段階(図10のステップS3〜ステップS4)にて行うものであれば良く、図10の他の工程にて行うようにしても良い。例えば、ハロゲンランプHLを消灯してシャッター板21をハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に挿入した後もガス噴出部140からのエアー噴出を継続するようにしても良い。このようにすれば、ハロゲンランプHLの温度がより速く低下するとともに、シャッター板21の温度上昇を抑制することもできる。なお、シャッター板21がハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に挿入された状態においても、通路25とシャッター板21との間には隙間が存在しており、ガス噴出部140から噴出されたエアーはその隙間から排出される。
また、上記実施形態においては、ガス噴出部140からエアーを噴出していたが、これに代えて他の種類の気体、例えば窒素ガスを噴出するようにしても良い。
また、通路25の近傍に吸引ポンプ等の排気手段を設け、下側チャンバー窓64とハロゲンランプHLとの間の空間から通路25を介して気体を強制的に排気するようにしても良い。
また、上記実施形態においては、熱処理空間65に供給する処理ガスを窒素ガス(N2)としていたが、これに限定されるものではなく、例えば、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(02)ガスや清浄エアであっても良い。もっとも、熱処理空間65にて加熱される半導体ウェハーWは数百℃から1000℃以上の高温に昇温されるため、処理ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが好ましく、特にコスト面からは安価な窒素ガスが好ましい。
また、上記実施形態においては、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点でハロゲンランプHLを点灯したままフラッシュランプFLからの閃光照射を行うようにしていたが、フラッシュ加熱のタイミングはこれに限定されるものではない。例えば、ハロゲンランプHLによって半導体ウェハーWを予備加熱温度T1を超えて昇温した後、ハロゲンランプHLを消灯するとともにシャッター板21を挿入して半導体ウェハーWが予備加熱温度T1にまで降温した時点で閃光照射を行うようにしても良い。
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
また、上記実施形態においては、チャンバー6の上方にフラッシュランプFLを配置し、下方にハロゲンランプHLを配置していたが、本発明はチャンバーの上下にチャンバー窓を備え半導体ウェハーWの両面から光照射を行う装置であれば適用することが可能である。例えば、チャンバー6の上下双方にハロゲンランプHLを配置した熱処理装置であっても本発明を適用することができる。この場合。チャンバー6の上方にもガス噴出部140を設けて上側チャンバー窓63に意図的に温度分布を生じさせるようにしても良い。
また、上記実施形態においては、半導体ウェハーに光を照射してイオン活性化処理を行うようにしていたが、本発明にかかる熱処理装置による処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではない。例えば、窒化シリコン膜や多結晶シリコン膜等の種々のシリコン膜が形成されたガラス基板に対して本発明にかかる熱処理装置による処理を行っても良い。一例として、CVD法によりガラス基板上に形成した多結晶シリコン膜にシリコンをイオン注入して非晶質化した非晶質シリコン膜を形成し、さらにその上に反射防止膜となる酸化シリコン膜を形成する。この状態で、本発明にかかる熱処理装置により非晶質のシリコン膜の全面に光照射を行い、非晶質のシリコン膜が多結晶化した多結晶シリコン膜を形成することもできる。
また、ガラス基板上に下地酸化シリコン膜、アモルファスシリコンを結晶化したポリシリコン膜を形成し、そのポリシリコン膜にリンやボロン等の不純物をドーピングした構造のTFT基板に対して本発明にかかる熱処理装置により光照射を行い、ドーピング工程で打ち込まれた不純物の活性化を行うこともできる。