以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付けることにする。なお、以下の実施の形態の説明において参照する図面は、本発明の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さ、寸法の比率等についてはそのまま実施の形態を表すものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置100を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る有機EL素子を用いた有機EL表示装置100は、基板101上に、画素毎に具備された画素電極(陽極)102と、画素電極102の画素間を区画する隔壁103と、画素電極102の上方に形成された正孔輸送層104と、正孔輸送層104上に形成されたインターレイヤ105と、インターレイヤ105上に形成された有機発光層106と、有機発光層106上に全面を被覆するように形成された対向電極(陰極)107と、対向電極107を覆うように基板101と接触した封止体108とを備える。
ここで、画素電極(陽極)102と対向電極(陰極)107に挟持された複数の層を発光媒体層120という。図1に示す有機EL表示装置100では正孔輸送層104とインターレイヤ105と有機発光層106が発光媒体層120に相当する。これ以外にも、発光媒体層120に正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等の層を適宜加えても良い。
次に、有機EL表示装置100における有機EL素子の積層部分について説明する。図2(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る有機EL素子の積層部分を示す概略断面図である。図2(a)は、本発明の実施の形態に係るボトムエミッション型有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図2(a)に示すボトムエミッション型有機EL素子は、基板101上に画素電極102、正孔輸送層104、有機発光層106、対向電極107aの順で積層されている。この順番に積層されていれば、インターレイヤ105や、上述したその他の層をそれぞれの間に積層しても良い。対向電極107aは光不透過性電極であり、対向電極107a側に放出された光は対向電極107aで反射して光透過性電極である画素電極102側から外部へ出射する。
図2(b)は、本発明の実施の形態に係るトップエミッション型有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図2(b)に示すトップエミッション型有機EL素子は、基板101上に反射層111、画素電極102、正孔輸送層104、インターレイヤ105、有機発光層106、対向電極107bの順で積層されている。この順番に積層されていれば、上述したその他の層をそれぞれの間に積層しても良い。対向電極107bは光透過性電極であり、画素電極102側に放出された光は画素電極102を透過して反射層111で反射して対向電極107b側から外部へ出射する。一方、対向電極107b側に放出された光は、同じく対向電極107bを透過して外部へ出射する。以下、有機EL表示装置100におけるボトムエミッション型有機EL素子を基に説明するが、対向電極を透明導電膜としたトップエミッション型有機EL素子についても適用される。
次に、本発明の実施の形態の有機EL表示装置100における有機EL素子の構成材料について説明する。本発明の実施の形態の有機EL表示装置100における有機EL素子の基板101の材料には、例えば、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシート、あるいは、トップエミッション型有機EL素子の場合には、これらに加えて、上記のプラスチックフィルムやシートに酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物や、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜を単層もしくは積層させた光透過性基材や、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、シート、板、プラスチックフィルムやシートにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させた光不透過性基材などを用いることができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
本発明の実施の形態の有機EL表示装置100の光取り出しを行う面はボトムエミッション型では基板101と隣接する電極側から行えばよい。トップエミッション型では基板101と対向する電極側から行えばよい。これらの材料からなる基板101は、有機EL表示装置100内への水分や酸素の浸入を避けるために、基板101全面もしくは片面に無機膜の形成、樹脂の塗布などにより、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。特に、発光媒体層120への水分の浸入を避けるために、基板101における含水率及びガス透過係数を小さくすることが好ましい。
本発明の実施の形態の有機EL表示装置100における有機EL素子の画素電極102は、基板101上に成膜し、必要に応じてパターニングを行う。画素電極102は隔壁103によって区画され、各画素に対応した画素電極102となる。
画素電極102の材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やIZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、AZO(亜鉛アルミニウム複合酸化物)などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも使用することができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
画素電極102を陽極とする場合、ITOなど仕事関数の高い材料を選択することが好ましい。TFT(薄膜トランジスタ)駆動の有機EL表示装置において電極は低抵抗であればよく、シート抵抗で20Ω・sq以下であれば好適に用いることが可能となる。
画素電極102の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
画素電極102のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。
図2(b)に示したトップエミッション型の場合、画素電極102の下部に反射層111を形成することが好ましい。反射層111の材料としては、高反射率かつ低抵抗であることが好ましく、Cr、Mo、Al、Ag、Ta、Cu、Ti、Niを一種以上含んだ単膜及び積層膜、合金膜、前述した材料を用いた膜にSiO、SiO2、TiO2等の保護膜を形成したものを用いる事ができる。反射層111の反射率として可視光波長領域の全平均で80%以上あればよく、90%以上であれば好適に用いることが可能となる。発光媒体層120または画素電極102が光不透過性材料である場合はこの限りではない。
反射層111の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
反射層111のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。
本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置100の隔壁103は、各画素に対応した発光領域を区画するようにして、画素電極102の端部を覆うように形成することが好ましい。一般的にアクティブマトリクス駆動型の有機EL表示装置100は、各画素に対して画素電極102が形成され、それぞれの画素ができるだけ広い面積を占有しようとするため、画素電極102の端部を覆うように形成される。隔壁103の最も好ましい形状は各画素電極102を最短距離で区切る格子状を基本とする。
隔壁103の材料としては、絶縁性を有する必要があり、感光性材料等を用いることができる。感光性材料としては、ポジ型であってもネガ型であってもよく、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることができる。また、隔壁103の形成材料として、SiO2、TiO2等を用いることもできる。
隔壁103の好ましい高さは0.1μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上2μm以下程度である。隔壁103の高さが30μmより高すぎると、対向電極107の形成及び封止を妨げてしまい、0.1μmより低すぎると、画素電極102の端部を覆い切れない、あるいは発光媒体層120の形成時に隣接する画素とショートしたり混色したりしてしまうからである。
隔壁103の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
隔壁103のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、基体(基材101及び画素電極102)上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、基体上に感光性樹脂を塗工し、フォトリソグラフィ法により所定のパターンとする方法が挙げられるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。必要に応じてレジスト及び感光性樹脂に撥水剤を添加したり、親水性材料と疎水性材料の多層構造にしたり、プラズマやUVを照射したりして形成後に次の成膜材料に対する撥水性または親水性を付与することもできる。
本発明の実施の形態の有機EL表示装置100における有機EL素子の正孔輸送層104は、画素電極102とインターレイヤ105との間に積層することで、画素電極(陽極)102から正孔を注入し、インターレイヤ105へと電荷を運ぶ役割を担う。また、正孔輸送層104を無機酸化物とすることで、特に耐性に優れ、高輝度領域での安定した特性や長寿命を得ることができる。このような無機酸化物としては遷移金属の酸化物や酸窒化物若しくは酸化物半導体などを用いることができ、遷移金属酸化物が特に好ましい。遷移金属酸化物として遷移金属は複数の酸化数をとることにより複数の電位レベルを取ることができ、正孔注入が容易になり駆動電圧の低減ができる。
無機酸化物からなる正孔輸送層104の膜厚は特に限定されないが、好ましくは1nm以上200nm以下である。特に1nm以上70nm以下であることが駆動電圧の上昇を防ぐことができる為より好ましい。正孔輸送層104の膜厚が200nmより厚すぎると、電圧降下や透過率低下による効率低下が無視できなくなってしまう。一方、正孔輸送層104の膜厚が1nmより薄すぎると、キャリア輸送の効果が小さくなるため、電圧降下が起こってしまう。
正孔輸送層104の物性値としては、画素電極102の仕事関数と同等以上の仕事関数を有することが好ましい。これは画素電極102からインターレイヤ105へ効率的に正孔注入を行うためである。画素電極102の仕事関数は、材料により異なるが4.5eV以上6.5eV以下を用いることができる。画素電極102の材料がITOやIZOの場合、仕事関数が5.0eV以上6.0eV以下で好適に用いることが可能である。正孔輸送層104の比抵抗に関しては、膜厚30nm以上の状態で、1×103Ω・m〜2×106Ω・mであることが好ましく、より好ましくは5×103Ω・m〜1×106Ω・mである。また、ボトムエミッション型では画素電極102側から放出光を取り出すため、光透過性が低いと取り出し効率が低下してしまい、可視光波長領域の全平均で75%以上が好ましく、85%以上ならば好適に用いることが可能である。
正孔輸送層104の材料としては、Cu2O、Cr2O3、Mn2O3、NiO、CoO、Pr2O3、Ag2O、MoO2、ZnO、TiO2、V2O5、Nb2O5、Ta2O5、MoO3、WO3、MnO2等の遷移金属酸化物及びこれらの窒化物、硫化物を一種以上含んだ無機化合物を単層もしくは複数の層の積層構造、又は混合層として用いることができる。
正孔輸送層104の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法の既存の成膜法を用いることができる。正孔輸送層104に好適に用いられる酸化モリブデンにおいて、三酸化モリブデンMoO3をスパッタリング法や真空蒸着法によって成膜した場合には、モリブデン酸化物が6価のモリブデン酸化物であるMoO3のほかに、より小さな酸化数を持ついくつかの酸化物を生じる。すなわち4価のモリブデン酸化物であるMoO2や、3価のモリブデン酸化物のMo2O3などが混合することにより、酸素欠損を多く含む三酸化モリブデン層が形成される。モリブデンが複数の酸化数をとることで、上記したように複数の電位レベルを取ることができるため、正孔注入が容易になり駆動電圧の低減が可能になる。しかし、一度大気及び、酸素雰囲気下にさらしまうと、無機酸化物の膜面が酸化し、酸素欠損部に酸素が補填されてしまう。それにより高抵抗となる問題があるため、酸素欠損の程度を制御することが必要となる。
正孔輸送層104の抵抗率は最終的な発光特性に与える影響が大きい。本発明の実施の形態によれば、正孔輸送層104として遷移金属酸化物層を成膜した後に、大気及び酸化性雰囲気下へさらすことなく、減圧下または非酸化性雰囲気下にて焼成処理を行うことで、正孔輸送層104の抵抗率を任意に調整し、最終的な発光特性を制御することができる。焼成処理の方法については特に制限はないが、ドライ成膜後の減圧下のまま焼成することができるため、処理方法は容易であり、工業的に有利である。
減圧下または非酸化性雰囲気下にて焼成処理する方法では、反応温度や、時間を適宜定めることで任意に酸化反応を制御することができる。そのため、容易に所望の特性を有する正孔輸送層104を得ることができる。減圧下または非酸化性雰囲気下にて焼成処理は、例えば60℃〜300℃の温度で、好ましくは100℃〜250℃の温度条件で行うことができ、反応時間は、例えば3分〜3時間である。
本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置100のインターレイヤ105は、有機発光層106と正孔輸送層104の間に積層することで、有機EL素子の発光寿命を向上させることができる。トップエミッション型の素子構造では正孔輸送層104の形成後にインターレイヤ105を積層することができる。通常は正孔輸送層104を被覆するように形成するが、必要に応じてパターニングを行っても良い。
インターレイヤ105の材料としては、有機材料ではポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などの、芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられる。また無機材料では、Cu2O、Cr2O3、Mn2O3、NiO、CoO、Pr2O3、Ag2O、MoO2、ZnO、TiO2、V2O5、Nb2O5、Ta2O5、MoO3、WO3、MnO2等の遷移金属酸化物及びこれらの窒化物、硫化物を一種以上含んだ無機化合物が挙げられるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
これらの有機材料は溶媒に溶解または安定に分散させ有機インターレイヤインキとなる。有機インターレイヤ材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの単独またはこれらの混合溶媒が上げられる。中でもトルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶媒が有機インターレイヤ材料の溶解性の面から好適である。また、有機インターレイヤインキには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
これらインターレイヤ105の材料としては、正孔輸送層104よりも仕事関数が同等以上の材料を選択することが好ましく、更に有機発光層105よりも仕事関数が同等以下であることがより好ましい。これは正孔輸送層104から有機発光層106へのキャリア注入時に不必要な注入障壁を形成しないためである。また有機発光層106から発光に寄与できなかった電荷を閉じ込める効果を得るため、バンドギャップが3.0eV以上であることが好ましく、より好ましくは3.5eV以上であると好適に用いることができる。
インターレイヤ105の形成方法としては、材料に応じて、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法など既存の成膜法を用いることができる。
本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置100の有機発光層106は、トップエミッション型の構造の場合、インターレイヤ105の形成後に積層することができる。有機発光層106から放出される表示光が単色の場合、インターレイヤ105を被覆するように形成するが、多色の表示光を得るには必要に応じてパターニングを行うことにより好適に用いることができる。
有機発光層106を形成する有機発光材料は、例えばクマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系などの発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料が挙げられるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
これらの有機発光材料は溶媒に溶解または安定に分散させ有機発光インキとなる。有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの単独またはこれらの混合溶媒が上げられる。中でもトルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶媒が有機発光材料の溶解性の面から好適である。また、有機発光インキには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
上述した高分子材料に加え、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノー8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料を用いることができる。
有機発光層106の形成方法としては、材料に応じて、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法など既存の成膜法を用いることができる。
次に、インターレイヤ105及び有機発光層106を形成する際に用いる凸版印刷法について図3の凸版印刷装置300を参照して説明することにする。図3において、凸版印刷装置300は、有機発光材料からなる有機発光インキを、画素電極102、隔壁103、正孔輸送層104が形成された被印刷基板302上にパターン印刷する際に用いるものである。凸版印刷装置300は、インクタンク303、インキチャンバ304、アニロックスロール305、凸版307がマウントされた版胴308を有している。インクタンク303には、溶剤で希釈された有機発光インキが収容されており、インキチャンバ304にはインクタンク303より有機発光インキが送り込まれるようになっている。アニロックスロール305はインキチャンバ304のインキ供給部に接して回転可能に指示されている。アニロックスロール305の回転に伴い、アニロックスロール305の表面に供給された有機発光インキのインキ層309はドクタ306などにより均一な膜厚に形成される。このインキ層309のインキはアニロックスロール305に近接して回転駆動される版胴308にマウントされた凸版307に転移し、ステージ301上に設置された被印刷基板302の画素部へパターン印刷される。
本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置100の対向電極107の材料には、例えば、Mg、Al、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体層120と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いたりしてもよい。または電子注入効率と安定性とを両立させるため、仕事関数が低いLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定的なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg、AlLi、CuLi等の合金を使用することができる。またITO(インジウムスズ複合酸化物)やIZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、AZO(亜鉛アルミニウム複合酸化物)などの金属複合酸化物等の透明導電膜を用いることができる。
トップエミッション型の構造におけるこれらの対向電極107bは、発光媒体層120から放出される表示光を透過されるため、可視光波長領域に対して光透過性が必要である。Mg、Al、Yb等の金属単体では膜厚が20nm以下であることが好ましく、更には2nm〜7nmであることがより好ましい。透明導電膜においては可視光波長領域の平均光透過性として85%以上を保つように膜厚を調節し好適に用いることができる。
対向電極107の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置100の封止体108は、例えば画素電極102、隔壁103、発光媒体層120、対向電極107が形成された基板101に対して、その周辺部に封止体108と基板101を接着させることにより封止を行う。この際、トップエミッション型の構造では発光媒体層120から基板101側と反対側の封止体108を通して放射される表示光を取り出すため、可視光波長領域に対して光透過性が必要となる。光透過性として可視光波長領域の平均光透過性として85%以上であることが好ましい。
また、封止体108は、例えば画素電極102、隔壁103、発光媒体層120、対向電極107が形成された基板101に対して、封止材110上に樹脂層109を設け、樹脂層109により封止材110と基板101とを貼りあわせて封止を行うことも可能である。
このとき封止材110の材料として、水分や酸素の光透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、光透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気光透過性は、10−6g/m2/day以下であることが好ましい。
樹脂層109の材料としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層109を封止材110の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材110上に形成する樹脂層109の厚みは、封止する有機EL素子の大きさや形状により任意に決定されるが、5μm〜500μm程度が望ましい。
画素電極102、隔壁103、発光媒体層120、対向電極107が形成された基板101と封止体108の貼り合わせは封止室で行う。封止体108を、封止材110と樹脂層109の2層構造とし、樹脂層109に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。また、樹脂層109に熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。樹脂層109に光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。なお、ここでは封止材110上に樹脂層109を形成したが、基板101上に樹脂層109を形成して封止材110と貼りあわせることも可能である。
封止材110を用いて封止を行う前やその代わりに、例えばパッシベーション膜として、EB蒸着法やCVD法などのドライプロセスを用いて、窒化珪素膜など無機薄膜による封止体108とすることも可能であり、また、これらを組み合わせることも可能である。パッシベーション膜の膜厚は、100nm〜500nmを用いることができ、材料の透湿性、水蒸気光透過性などにより異なるが150nm〜300nmを好適に用いることができる。トップエミッション型の構造では、上記の特性に加え、光透過性を考慮する必要があり、可視光波長領域の全平均で70%以上であれば好適に用いる事が可能である。
上述したように、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置100は、無機酸化物からなる正孔輸送層104を成膜した後に減圧下または非酸化性雰囲気下にて焼成処理を施すことにより、有機EL素子を低抵抗率に形成できるため、低電圧駆動にでき、高い発光輝度を有する有機EL表示装置100を得ることができる。
以下、本発明の実施例について図1を参照して説明する。なお、本発明は以下で説明する実施例に限定されるものではない。
基板101上に画素電極(陽極)102としてITO薄膜を備えたアクティブマトリックス基板を用いた。アクティブマトリックス基板のサイズは対角5インチ、画素数は320×240である。
アクティブマトリックス基板上に設けた画素電極102の端部を被覆し画素を区画するような形状で隔壁103を形成した。隔壁103の形成は、ポジレジストを用いて、スピンコート法にてアクティブマトリックス基板の全面に厚み2μmで形成した。その後、フォトリソグラフィ法を用いて幅40μmにパターニングして隔壁103を形成した。これによりサブピクセル数960×240ドット、0.12mm×0.36mmピッチ画素領域が区画された。
隔壁103を形成したアクティブマトリックス基板上にUV/O3洗浄を行った。照度13mW/cm2の低圧水銀ランプを4本設置した装置を用い、2分間照射した。
UV/O3洗浄を施したアクティブマトリックス基板の画素電極102上に正孔輸送層104を形成した。無機材料として酸化モリブデンを用い、膜厚を30nmとした。アクティブマトリックス基板上への成膜法としてはスパッタリング法を用い、パターニングは表示領域全面が成膜されるように120mm×300mmの開口のあるメタルマスクを用いた。
スパッタリング法には、純度99.9%のモリブデン金属ターゲットを用い、不活性ガスとしてアルゴン、反応性ガスとして酸素を導入した、リアクティブDCマグネトロンスパッタ法を用いた。リアクティブDCマグネトロンスパッタ法におけるターゲットの電力密度を1.3W/cm2、ガス導入比率はアルゴンが2に対して酸素を1とし、スパッタリング時の真空度を0.3Paとなるように、排気バルブまたはガス導入量を調節した。正孔輸送層104の膜厚はスパッタリング時間により制御し、正孔輸送層104の膜厚が30nmのアクティブマトリックス基板を作製した。
成膜後の正孔輸送層104を、一度も大気へさらすことなく、N2雰囲気下でホットプレートを用いて200℃で15分間焼成処理を行った。
上述した酸化モリブデンの可視光波長領域の平均光透過性では88%(550nm)となった。仕事関数において平均5.8eVとなった。抵抗率に関しては、3×104Ω・cmとなった。これらの結果より正孔輸送層104として必要な特性を満たしていることが分かった。
その後、インターレイヤ105の材料であるポリビニルカルバゾール誘導体を濃度0.5%になるようにトルエンに溶解させたインキを用い、基板101上に形成された画素電極102、隔壁103及び正孔輸送層104を図3に示した凸版印刷装置300の被印刷基板302として平台301上にセッティングし、隔壁103に挟まれた画素電極102上の正孔輸送層104の真上にラインパターンに合わせてインターレイヤ105を凸版印刷法で印刷を行った。このとき300線/インチのアニロックスロール305及び感光性樹脂による凸版307を使用した。印刷、乾燥後のインターレイヤ105の膜厚は20nmとなった。
有機発光層106には、有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体を濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用い、基板101上に形成された画素電極102、隔壁103、正孔輸送層104及びインターレイヤ105を凸版印刷装置300の被印刷基板302として平台301上にセッティングし、隔壁103に挟まれたインターレイヤ105の真上にそのラインパターンに合わせて有機発光層106を凸版印刷法で印刷を行った。このとき150線/インチのアニロックスロール305及び感光性樹脂による凸版307を使用した。印刷、乾燥後の有機発光層106の膜厚は80nmとなった。
その後、対向電極107として真空蒸着法でカルシウム膜を120mm×300mmの開口のあるメタルマスクを用いて膜厚5nmで成膜し、その後アルミニウム膜を124mm×304mmの開口のあるメタルマスクを用いて厚み200nmで成膜した。
その後、封止体108として陰極(対向電極)107の上部を覆うように厚めのガラス中央部を凹状に加工したガラスを用いて封止を行った。ガラスの凹部には吸湿剤を設置し、封止環境による劣化を低減させた。
[比較例](正孔輸送層104の成膜後に、焼成処理を行わなかった場合)
前述した実施例と同一の方法で有機EL表示装置100を作製した。但し正孔輸送層104の成膜後に焼成処理を行わず作製した。こうして得られた比較例の正孔輸送層104の抵抗率は、8×107Ω・cmであった。焼成処理を行った実施例の正孔輸送層104の抵抗率3×103Ω・cmの方が低抵抗であった。
図4は、本発明の実施例及び比較例の電圧−輝度特性を示す図である。図4において、縦軸は発光輝度(cd/m2)を示し、横軸は電圧(V)を示す。また、丸印は本実施例の正孔輸送層104の成膜後に焼成処理を行った場合を示し、四角印は、比較例の正孔輸送層104の成膜後に焼成処理を行わなかった場合を示す。図4に示すように電圧−輝度特性において、本実施例の焼成処理を行った有機EL表示装置と比較例の焼成処理を行わなかった有機EL表示装置とを比較し、焼成処理を行った有機EL表示装置の方が低電圧駆動であり、かつ、高輝度であったことがわかる。