以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、第1の実施形態の直流モータの概略構成図である。図1に示すように、直流モータの外郭であるハウジングケース10は、軸方向に2つに分割された第1及び第2のケース11,12から構成されている。
図1において左側に位置する第1のケース11は、円筒状の第1の支持部11aと、該第1の支持部11aの軸方向の一端(図1において左側の端部)を略閉塞する第1の閉塞部11bとから構成され、略有底円筒状をなしている。また、図1において右側に位置する第2のケース12は、前記第1の支持部11aと同じ外径及び内径を有する円筒状の第2の支持部12aと、該第2の支持部12aにおける第1のケース11と反対側の軸方向の端部を閉塞する第2の閉塞部12bとから構成され、有底円筒状をなしている。そして、第1及び第2のケース11,12の互いに対向する開口部には、第1及び第2の支持部11a,12aの内径を拡径してなる第1及び第2の支持段部11c,12cがそれぞれ形成されている。尚、第1のケース11と第2のケース12とは、軸方向に貫通する螺子(図示略)にて互いに連結固定されている。
第1のケース11及び第2のケース12は、略円環状の電機子21を軸方向の両側から挟持して支持するとともに、該電機子21は、略円環状の電機子コア22に複数の電機子コイル23を巻装して形成されている。図2に示すように、電機子コア22は、金属磁性材料よりなり、外周側に設けられた円筒状のヨーク部22aと、該ヨーク部22aの内周面から径方向内側に向かって延びる36本のティース22bとから構成されている。この電機子コア22の外径は、前記第1及び第2の支持部11a,12aの内径より大きく、且つ前記第1及び第2の支持部11a,12aの外径より小さい値とされている。そして、複数の電機子コイル23は、周方向に隣り合うティース22b間の空間を通るように電機子コア22に対して巻回されるとともに、電機子コイル23の巻き始め及び巻き終わりの端部は、電機子コア22の軸方向の一端側(第2の閉塞部12b側)に引き出されている(図1参照)。
このような電機子21は、図1に示すように、ヨーク部22aの軸方向の両端部が、前記第1のケース11の第1の支持段部11c及び第2のケース12の第2の支持段部12cにそれぞれ係合した状態で第1及び第2のケース12にて支持されている。
電機子21における第2の閉塞部12b側の軸方向の端部には、樹脂モールドにより整流子31が一体に固定されている。整流子31は、周方向に並設された36個のセグメント32と、周方向に離れた位置にあるセグメント32同士を短絡する36本の接続線33とから構成されている。尚、図1では、36個のセグメント32のうち2つのみを図示するとともに、36本の接続線33のうち2本のみを図示している。
図3に示すように、導電性の金属材料よりなる各セグメント32は、軸方向から見た形状が径方向内側の端部から径方向外側の端部に向かうに連れて周方向の幅が広くなる扇形をなす板状のセグメント本体32aと、該セグメント本体32aの径方向外側の端部から該セグメント本体32aの厚さ方向に突出した外周側接続部32bと、同セグメント本体32aの径方向内側の端部から外周側接続部32bと同方向に突出した内周側接続部32cとが一体に形成されてなる。即ち、各セグメント32は、周方向から見た形状が略コ字状をなしている。また、各セグメント32において、セグメント本体32aにおける外周側接続部32b及び内周側接続部32cと反対側の端面(即ち図3において紙面奥側の端面)は、平坦な摺接面32d(図1参照)となっている。
そして、36個のセグメント32は、その摺接面32dが、電機子21の軸方向と直交する同一平面内に配置されるように周方向に並設されるとともに、周方向に隣り合うセグメント32間には隙間が設けられており互いに非接触となっている。また、図1に示すように、36個のセグメント32は、その摺接面32dが、電機子21の軸方向の一端部側、即ち第2のケース12の第2の閉塞部12bと反対側を向くように配置されている。更に、周方向に並設された36個のセグメント32の外径は電機子21の内径と略等しく、同セグメント32の内径は後述の回転軸42の外径よりも僅かに大きな値となっている。そして、周方向に並設された36個のセグメント32に対し、外周側接続部32bと内周側接続部32cとの間に36本の前記接続線33が配置されている。
図3に示すように、各接続線33は、短冊状の銅板を厚さ方向に湾曲するとともに、その長手方向の両端部を屈曲して形成されている。尚、接続線33は導線にて形成されてもよい。そして、36本の接続線33は、厚さ方向が周方向に沿うように、且つ短手方向が軸方向に一致するように配置されている。また、接続線33の径方向外側の端部は、セグメント32の外周側接続部32bに溶接等により接続されるとともに、同接続線33の径方向内側の端部は、同接続線33の径方向外側の端部が接続されたセグメント32から反時計方向に90°離れた位置にあるセグメント32の内周側接続部32cに溶接等により接続されている。このように、各接続線33は、周方向に90°離間した位置にあるセグメント32同士を電気的に接続している(短絡して同電位としている)。
そして、図1及び図3に示すように、周方向に隣り合う9対のセグメント32であって合計18個のセグメント32の外周側接続部32bには、前記電機子コイル23の端部23aが溶接等によりそれぞれ接続されている。尚、電機子コイル23の端部23aが接続された一対のセグメント32と、電機子コイル23の端部23aが接続された別の一対のセグメント32との間には、電機子コイル23の端部が直接接続されないセグメント32が2つずつ介在されている。
図1に示すように、電機子21及び整流子31(即ち36個のセグメント32及び36本の接続線33)をモールドするモールド樹脂34は、絶縁性の樹脂材料よりなり、ティース22bの径方向内側の先端面及びヨーク部22aにおける外周面を露出させるとともにセグメント32の摺接面32dを露出させて、電機子21及び整流子31を一体化している。そして、モールド樹脂34は、周方向に隣り合うセグメント32間に介在されて周方向に隣り合うセグメント32同士を絶縁するとともに、周方向に隣り合う接続線33間に介在されて周方向に隣り合う接続線33同士の短絡を抑制している。また、モールド樹脂34は、セグメント32と接続線33との軸方向の隙間にも介在されて、溶接によるセグメント32と接続線33との接合部以外の部位で、セグメント32と接続線33とが接触して短絡されることを抑制している。
電機子21の内側には、回転子41が周方向に回転可能に配置されている。この回転子41は、直流モータの径方向の中央部に配置される回転軸42と、該回転軸42に固定されたロータコア43と、該ロータコア43の外周面に固着された8個のマグネット(界磁)44とを備えている。
円柱状の回転軸42は、前記第1の閉塞部11bの径方向の中央部に設けられた軸受45aと、前記第2の閉塞部12bの径方向の中央部に設けられ前記軸受45aと対をなす軸受45bとによって、軸方向の両端部が軸支されている。また、回転軸42は、前記整流子31の径方向の中央部を貫通しており、前記整流子31は、その内径が回転軸42の外径よりも僅かに大きな値に設定されている。そして、回転軸42における第2の閉塞部12b寄りの位置にロータコア43が固定されている。
図2に示すように、ロータコア43は、軸方向から見た形状が正八角形状をなす筒状をなしている。そして、ロータコア43の径方向の中央部には、該ロータコア43を軸方向に貫通する固定孔43aが形成されるとともに、ロータコア43は、該固定孔43a内に前記回転軸42が圧入されることにより同回転軸42に対して固定されている。また、ロータコア43の外周面を構成する8つの平面には、長方形の板状をなすマグネット44がそれぞれ固着されるとともに、8個のマグネット44は、N極とS極とが周方向に交互となるようにロータコア43に対して配置されている。また、8個のマグネット44は、周方向に等角度間隔(即ち45°間隔)に配置され、径方向外側の側面が電機子コア22の内周面(即ちティース22bの先端面)に対応した円弧状をなすとともに、それぞれ電機子21と径方向に対向している。
また、ロータコア43には、周方向に等角度間隔となる8か所に収容孔43bが形成されている。この収容孔43bは、8個のマグネット44の周方向位置に対応して形成されており、各収容孔43bの周方向の中央を通り径方向に延びる中心線L1は、各マグネット44の周方向の中央を通り径方向に延びる中心線L2と一致する。そして、各収容孔43bは、ロータコア43を軸方向に貫通するとともに(図1参照)、軸方向と直交する方向に沿って切った断面形状が、径方向に長い長方形形状をなしている。
図1及び図2に示すように、各収容孔43bには、それぞれ第1及び第2のブラシホルダ46,47が収容されている。第1及び第2のブラシホルダ46,47は、絶縁性の樹脂材料よりなり、その外面が収容孔43bの内周面に内嵌される形状とされている。そして、第1のブラシホルダ46は軸方向に貫通する貫通孔を有し、その貫通孔は軸方向の前記第1の閉塞部11b側で径方向内側にのみ形成される内側小保持孔46aと、軸方向の前記第2の閉塞部12b(整流子31)側で径方向全体に形成される全体大保持孔46bとからなる。又、第2のブラシホルダ47は軸方向に貫通する貫通孔を有し、その貫通孔は軸方向の前記第1の閉塞部11b側で径方向外側にのみ形成される外側小保持孔47aと、軸方向の前記第2の閉塞部12b(整流子31)側で径方向全体に形成される全体大保持孔47bとからなる。尚、内側小保持孔46a及び外側小保持孔47aの軸方向長さは前記全体大保持孔46b,47bより長く(軸方向中央部より第2の閉塞部12b側に長く)形成されている。そして、第1のブラシホルダ46と第2のブラシホルダ47とは周方向に交互に配置されている。尚、本実施の形態の第1及び第2のブラシホルダ46,47は、元々共通の部品であるが、向きを変えて前記収容孔43bに内嵌されることで、その用途(内側小保持孔46aを有する第1のブラシホルダ46か外側小保持孔47aを有する第2のブラシホルダ47か)が決定されて配設される。
各第1及び第2のブラシホルダ46,47内には、それぞれ導電性を有する複合ブラシ50が収容されている。本実施形態では、合計8個の複合ブラシ50のうち周方向に1つ置きの4個が陽極側の複合ブラシ51であり、残りの4個が陰極側の複合ブラシ52である。
図4(a)は、陽極側の複合ブラシ51の斜視図である。図4(b)は、陰極側の複合ブラシ52の斜視図である。尚、図4(a)及び図4(b)において、軸方向、径方向及び周方向は、複合ブラシ50が直流モータの内部に配置された場合における方向である。図4(a)及び図4(b)に示すように、複合ブラシ50(51,52)は、給電ブラシ51a,52aと整流ブラシ51b,52bとが金属導体51c,52cで連結されることで互いに一体化されてなる。尚、給電ブラシ51a,52a及び整流ブラシ51b,52bは、カーボン(黒鉛)等を原材料としてなるものであり、金属導体51c,52cは導電性を有する金属を原材料としてなるものであって本実施の形態では円筒状の銅管である。
陽極側の複合ブラシ51における給電ブラシ51aは、前記内側小保持孔46aと対応して該内側小保持孔46aの内部を軸方向に沿って摺動可能な直方体形状に形成され、整流ブラシ51bは、前記全体大保持孔46bと対応して該全体大保持孔46bの内部を軸方向に沿って摺動可能な直方体形状に形成されている。又、金属導体51cは、軸方向から見て給電ブラシ51a及び整流ブラシ51bの外形の内側に配置される細さであって、図1に示すように、内側小保持孔46aと接触しないように形成されている。
陰極側の複合ブラシ52における給電ブラシ52aは、前記外側小保持孔47aと対応して該外側小保持孔47aの内部を軸方向に沿って摺動可能な直方体形状に形成され、整流ブラシ52bは、前記全体大保持孔47bと対応して該全体大保持孔47bの内部を軸方向に沿って摺動可能な直方体形状に形成されている。又、金属導体52cは、軸方向から見て給電ブラシ52a及び整流ブラシ52bの外形の内側に配置される細さであって、図1に示すように、外側小保持孔47aと接触しないように形成されている。
又、複合ブラシ50(51,52)の軸方向の長さ、即ち給電ブラシ51a,52aの先端面から整流ブラシ51b,52bの先端面までの長さは、第1及び第2のブラシホルダ46,47の軸方向の長さ、及びロータコア43の軸方向の長さよりも長く形成されている(図1参照)。
図1及び図2に示すように、陽極側の複合ブラシ51及び陰極側の複合ブラシ52は、軸方向から第1及び第2のブラシホルダ46,47に挿入され、ロータコア43を軸方向に貫通して同ロータコア43の軸方向の両側から、給電ブラシ51a,52aの先端側及び整流ブラシ51b,52bの先端側が突出する。それとともに、整流ブラシ51b,52bの先端面が、整流子31の摺接面32dに軸方向から当接する。このようにロータコア43に形成された収容孔43b内に配置された第1及び第2のブラシホルダ46,47内に配置されることにより、各複合ブラシ50(51,52)は、ロータコア43の内側に(回転子41と一体回転可能に)配置されている。また、第1及び第2のブラシホルダ46,47に収容された8個の複合ブラシ50において、陽極側の4つの給電ブラシ51aは、陰極側の4つの給電ブラシ52aよりも径方向内側に位置する。更に、8個の整流ブラシ51b,52bは、周方向に等角度間隔(即ち45°間隔)に配置されるとともに、各整流ブラシ51b,52bにおける回転軸42からの径方向の距離が等しくなっている。また、各整流ブラシ51b,52bの周方向の中央を通り径方向に延びる中心線L3(図2参照)は、各マグネット44の中心線L2と一致している。尚、本実施の形態の陽極側の複合ブラシ51及び陰極側の複合ブラシ52は、元々共通の部品であるが、向きを変えて第1及び第2のブラシホルダ46,47に挿入されることで、その用途(陽極側か陰極側か)が決定されて配設される。
図1に示すように、前記第1の閉塞部11bの内側面には、円環状のガイド部材61が回転軸42と同軸となるように固定されるとともに、該ガイド部材61の径方向内側には、第1のスリップリングホルダ62が配置され、更に第1のスリップリングホルダ62の径方向内側には、第2のスリップリングホルダ63が配置されている。
第1のスリップリングホルダ62は、絶縁性の樹脂材料よりなり、全体が略円筒状に形成されている。この第1のスリップリングホルダ62には、前記第1の閉塞部11b側の端部から全周に渡って環状に凹設されたばね収容凹部62aが形成されている。
第1のスリップリングホルダ62は、ガイド部材61の内側で回転軸42と同軸となるように配置されるとともに、その外径がガイド部材61の内径と略等しく(摺動可能に)形成され、ガイド部材61の内周面に沿って軸方向に移動可能とされている。又、本実施の形態の第1のスリップリングホルダ62は、その内周面が前記軸受45a(詳しくはその軸受45aを保持する部分)を避けるように形成され、前記軸受45aの径方向外側に配置されている。
第2のスリップリングホルダ63は、絶縁性の樹脂材料よりなり、全体が略円筒状に形成されている。この第2のスリップリングホルダ63には、前記第1の閉塞部11b側の端部から全周に渡って環状に凹設されたばね収容凹部63aが形成されている。
第2のスリップリングホルダ63は、第1のスリップリングホルダ62の内側で回転軸42と同軸となるように配置されるとともに、その外径が第1のスリップリングホルダ62の内径と略等しく(摺動可能に)形成され、第1のスリップリングホルダ62の内周面に沿って軸方向に移動可能とされている。又、本実施の形態の第2のスリップリングホルダ63は、前記軸受45a(詳しくはその軸受45aを保持する部分)と径方向位置が重なる(略一致する)ように形成され、前記軸受45aと軸方向に並んで配置されている。この第2のスリップリングホルダ63は、前記軸受45aと軸方向に並んで配置される分、第1のスリップリングホルダ62より軸方向の長さが短く形成されている。
又、第1のスリップリングホルダ62においてロータコア43と対向する側の一端面には、円環状に形成された陰極側のスリップリング64が固定され、第2のスリップリングホルダ63においてロータコア43と対向する側の一端面には、陰極側のスリップリング64より小さい径の円環状に形成された陽極側のスリップリング65が固定されている。即ち、本実施形態の直流モータは、ロータコア43の軸方向の一方側に整流子31が配置され、ロータコア43の軸方向の他方側に陰極側及び陽極側のスリップリング64,65が配置された構成となっている。尚、陰極側及び陽極側のスリップリング64,65は、金属導体(導電性の金属材料)よりなり、ロータコア43側の端面が、軸方向と直交する平面状をなしている。そして、各スリップリング64,65には、図1に模式的に示すように、ガイド部材61を通って直流モータの外部に引き出された給電線66がそれぞれ接続されており、該給電線66に接続される外部の電源装置から電流が供給されることになる。
また、一対のスリップリング64,65には、ロータコア43側の端面に、前記複合ブラシ50(51,52)の給電ブラシ51a,52aの先端面が当接されている。詳しくは、内周側の陽極側のスリップリング65には、軸方向に対向する陽極側の複合ブラシ51の給電ブラシ51aの先端面が軸方向から当接されるとともに、外周側の陰極側のスリップリング64には、軸方向に対向する陰極側の複合ブラシ52の給電ブラシ52aの先端面が軸方向から当接される。即ち、一対のスリップリング64,65は、前記整流子31との間に複合ブラシ50(51,52)が介在されるように配置されている。
また、第1のスリップリングホルダ62におけるばね収容凹部62aの内部であって、該ばね収容凹部62aの底部と前記第1の閉塞部11bとの間には、大径の陰極側のスリップリング64を全周に渡って付勢すべく大径に形成された陰極側の押圧手段としての圧縮コイルばね71が配置されている。陰極側の圧縮コイルばね71は、第1のスリップリングホルダ62を介して陰極側のスリップリング64を(ロータコア43側に)付勢することにより、複合ブラシ52(その給電ブラシ52a)をスリップリング64に押圧接触状態とするとともに、スリップリング64にて複合ブラシ52を整流子31側に押圧することで複合ブラシ52(その整流ブラシ52b)を整流子31に押圧接触させる。
また、第2のスリップリングホルダ63におけるばね収容凹部63aの内部であって、該ばね収容凹部63aの底部と前記第1の閉塞部11bとの間には、小径の陽極側のスリップリング65を全周に渡って付勢すべく小径に形成された陽極側の押圧手段としての圧縮コイルばね72が配置されている。陽極側の圧縮コイルばね72は、第2のスリップリングホルダ63を介して陽極側のスリップリング65を(ロータコア43側に)付勢することにより、複合ブラシ51(その給電ブラシ51a)をスリップリング65に押圧接触状態とするとともに、スリップリング65にて複合ブラシ51を整流子31側に押圧することで複合ブラシ51(その整流ブラシ51b)を整流子31に押圧接触させる。
上記のように構成された直流モータでは、外部の電源装置から給電線66を介してスリップリング64,65に供給された電流が、複合ブラシ50の給電ブラシ51a,52aから金属導体51c,52cを通って整流ブラシ51b,52bに流れ、更に、整流ブラシ51b,52bが接触したセグメント32から直接又は接続線33を通って電機子コイル23に供給される。すると、電機子21にて磁界が発生し、該磁界に応じて回転子41が回転する。そして、回転子41の回転に伴って、ロータコア43と共に複合ブラシ50(51,52)が回転するため、整流子31において、整流ブラシ51b,52bが接触されるセグメント32が順次切り替わり、それによって順次電機子コイル23の整流が行われ、回転軸42が連続的に回転される。
以上説明したように、上記実施の形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)給電ブラシ51a,52aと整流ブラシ51b,52bとが一体化されて複合ブラシ50(51,52)とされたため、電機子21に給電を行うために備えられる部材(ブラシ)の数が減少される。更に、給電ブラシ51a,52aと整流ブラシ51b,52bとが一体化されて複合ブラシ50とされたことにより、従来のように給電ブラシをスリップリングに押圧接触させるための圧縮コイルばねと整流ブラシを整流子に押圧接触させるための圧縮コイルばねとをそれぞれ配置しなくてもよい。従って、ブラシを付勢する圧縮コイルばねの数を(給電ブラシをスリップリングに押圧接触させるためのものと整流ブラシを整流子に押圧接触させるためのものとを備えたものに比べて)減少させることできる。このように、直流モータの内部に配置される部品点数を減少させることができるため、直流モータを大型化することなく同直流モータの内部において整流子31を配置するためのスペースを拡大することができる。そして、スペースが拡大された分だけ整流子31を大型化することができるため接続線33を太くして接続線33の断面積(即ち、電流が流れる方向と直交する方向の断面積)を大きくすることが可能となる。従って、整流子31を、大電流の供給に対応可能なものとすることができる。また、部品点数の多さのために従来は複雑であった直流モータの構造が、部品点数が減少したことにより簡略化されたため、直流モータの組付け性が向上される。その結果、直流モータの組み付けを容易に行うことができ、同直流モータの生産性を向上させることができる。しかも、給電ブラシ51a,52aと整流ブラシ51b,52bとが金属導体51c,52cで連結されるため、例えば、給電ブラシと整流ブラシとを同様の原材料(カーボン等)で連結(一体成形)した場合と異なり、実質的にブラシとして使用されない連結部分の無駄な原材料(カーボン等)を削減することができる。
(2)金属導体51c,52cは、軸方向から見て給電ブラシ51a,52a及び整流ブラシ51b,52bの外形の内側に配置される細さに形成されるため、簡単な構造で、連結部分(給電ブラシと整流ブラシとの間の部分)が第1及び第2のブラシホルダ46,47と軸直交方向に圧接してしまうといったことが防止される。即ち、給電ブラシと整流ブラシとを同様の原材料(カーボン等)で連結(一体成形)すると、その連結部分の高い剛性を確保するために同部分を太くする必要が生じる虞があるが、金属導体51c,52cではそれを回避できるとともに細くすることで第1及び第2のブラシホルダ46,47(その内側小保持孔46a及び外側小保持孔47a)と軸直交方向に圧接してしまわない(軸方向の移動が妨げられない)構造を容易に得ることができる。これにより、例えば、給電ブラシと整流ブラシとを同様の原材料(カーボン等)で連結(一体成形)したものと比べて、給電ブラシ51a,52a及び整流ブラシ51b,52bの部分のみを精度良く製造すればよく(連結部分をも精度良く製造する必要が無く)、例えば、仕上げの切削工程を小規模化することができる。
(3)陽極側の複合ブラシ51と陰極側の複合ブラシ52とをそれぞれ独立してスリップリング64,65及び整流子31に押圧接触させる陽極側の圧縮コイルばね72(押圧手段)及び陰極側の圧縮コイルばね71(押圧手段)を備える。これにより、陽極側の複合ブラシ51と陰極側の複合ブラシ52とで長さが異なっている場合等でも、確実に陽極側及び陰極側の複合ブラシ51,52をスリップリング64,65及び整流子31に押圧接触させることができる。よって、常に良好に電機子21に電流を供給することができる。詳しくは、陽極側の複合ブラシ51と陰極側の複合ブラシ52とは、例えば、径の大きいスリップリング64に摺接される複合ブラシ52の方が早く摩耗してしまうことや、製造時に寸法誤差が生じてしまうことにより、長さが異なってしまうことが考えられる。尚、図5には、径の大きい陰極側のスリップリング64に摺接される陰極側の複合ブラシ52が陽極側の複合ブラシ51より多く摩耗してしまった(軸方向に短くなった)状態を図示している。そこで、陽極側の複合ブラシ51と陰極側の複合ブラシ52とを同じ1つの圧縮コイルばねにて押圧接触させようとすると、例えば、陰極側の複合ブラシ52がスリップリング64及び整流子31に良好に押圧接触せず、電機子21に電流が良好に供給されないといった虞があるが、上記構成では、図5に示すように、この虞を回避することができる。
(4)陽極側の押圧手段及び陰極側の押圧手段は、大径及び小径(陰極側及び陽極側)のスリップリング64,65をそれぞれ全周に渡って付勢すべく大径及び小径に形成された2つの圧縮コイルばね71,72であるため、部品点数を最少(陽極側と陰極側とで1つずつ)としながら、スリップリング64,65を良好に(周方向にバランス良く)付勢することができる。
上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、陽極側の押圧手段及び陰極側の押圧手段を2つの圧縮コイルばね71,72としたが、これに限定されず、陽極側の複合ブラシ51と陰極側の複合ブラシ52とをそれぞれ独立してスリップリング64,65及び整流子31に押圧接触させることができれば、他の構成に変更してもよい。
例えば、図6及び図7に示すように、陽極側の押圧手段及び陰極側の押圧手段を、大径の(陰極側の)スリップリング64を周方向の複数箇所で付勢すべく周方向に複数設けられる圧縮コイルばね81と、小径の(陽極側の)スリップリング65を周方向の複数箇所で付勢すべく周方向に複数設けられる圧縮コイルばね82としてもよい。
詳しくは、この例(図6及び図7参照)では、大径の(陰極側の)スリップリング64が固定される第1のスリップリングホルダ83が、スリップリング64に対応した環状の固定部83aと、その固定部83aの前記スリップリング64が固定されない側から軸方向に延びる周方向に3つの延設部83b(図7参照)とを有する。又、この例(図6及び図7参照)では、小径の(陽極側の)スリップリング65が固定される第2のスリップリングホルダ84が、スリップリング65に対応した環状の固定部84aと、その固定部84aの前記スリップリング65が固定されない側からまず径方向外側に延びて更に軸方向に延びる周方向に3つの延設部84b(図7参照)とを有する。第1のスリップリングホルダ83における延設部83bと第2のスリップリングホルダ84における延設部84bは、図7に示すように、周方向に交互に配置されるとともに、前記回転軸42(図6参照)を中心とした同一半径上に配置されている。そして、各延設部83b,84bには、前記第1の閉塞部11b側の端部から凹設されたばね収容凹部83c,84cが形成されている。
そして、第1のスリップリングホルダ83における各ばね収容凹部83cの内部であって、該ばね収容凹部83cの底部と前記第1の閉塞部11bとの間には、大径の陰極側のスリップリング64を(ロータコア43側に)周方向の複数箇所(この例では3箇所)で付勢すべく陰極側の押圧手段としての圧縮コイルばね81がそれぞれ配置されている。又、第2のスリップリングホルダ84における各ばね収容凹部84cの内部であって、該ばね収容凹部84cの底部と前記第1の閉塞部11bとの間には、小径の陽極側のスリップリング65を(ロータコア43側に)周方向の複数箇所(この例では3箇所)で付勢すべく陽極側の押圧手段としての圧縮コイルばね82がそれぞれ配置されている。尚、これら全ての圧縮コイルばね81,82は、前記回転軸42(図6参照)を中心とした同一半径上に配置される。
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)〜(3)と同様の効果を得ることができる。
又、陽極側の押圧手段及び陰極側の押圧手段は、大径及び小径のスリップリング64,65をそれぞれ周方向の複数箇所で付勢すべく周方向にそれぞれ複数設けられる圧縮コイルばね81,82であるため、製造容易で汎用性の高い(安価な)極小径の圧縮コイルばね81,82を用いながら、スリップリング64,65を良好に(周方向にバランス良く)付勢することができる。
更に、大径及び小径のスリップリング64,65を付勢するための全ての圧縮コイルばね81,82は、回転軸42を中心とした同一半径上に配置されるため、圧縮コイルばね81,82の配置に必要となるスペースが径方向に小スペースとなる。即ち、圧縮コイルばね81,82(それを収容する延設部83b,84b)の径方向内側及び径方向外側にまとまったスペースを確保でき、例えば、図6に示すように、圧縮コイルばね81,82の径方向内側に軸受45aを容易に配置することができる。尚、圧縮コイルばね81,82(延設部83b,84b)を軸受45aと軸方向に並設する構成も可能であるが、この場合、圧縮コイルばね81,82の軸方向長さを短く、又は直流モータ全体の軸方向長さを長くする必要がある。これに対して、この例(図6参照)では、圧縮コイルばね81,82の径方向内側に軸受45aを容易に配置できるため、上記問題を回避して圧縮コイルばね81,82の軸方向長さを確保しながら直流モータ全体のコンパクト化を図ることができる。
・上記実施の形態では、給電ブラシ51a,52a及び整流ブラシ51b,52bは、それぞれ直方体形状に形成されるとしたが、これに限定されず、他の形状に変更してもよい。例えば、径方向内側から径方向外側に向かうに連れて周方向の幅が広くなる台形形状としてもよい。
・上記実施の形態では、給電ブラシ51a,52aと整流ブラシ51b,52bとを連結する金属導体51c,52cを円筒状の銅管としたが、導電性を有する金属を原材料としてなるものであれば、他の構成に変更してもよい。尚、勿論、この金属導体は、押圧力によって少なくとも変形しない剛性の高さを有する必要がある。
・上記実施の形態では、陽極側の複合ブラシ51と陰極側の複合ブラシ52とがそれぞれ4個ずつ設けられる直流モータとしたが、これに限定されず、陽極側の複合ブラシ51と陰極側の複合ブラシ52の数がいくつの直流モータに変更してもよい。又、整流子31に摺接される整流ブラシ51b,52bの数が複数であっても、各スリップリング64,65に摺接される給電ブラシ51a,52aの数はそれぞれ1つでよいため、1つの給電ブラシに複数の整流ブラシが金属導体で連結されることで一体化して設けられた複合ブラシに変更してもよい。このようにすると、複合ブラシの数を最少(陽極側と陰極側で1つずつ)とすることができる。又、勿論、上記実施の形態の各数値(例えば、ティース22bの数や、セグメント32及び接続線33の数や、マグネット44の数等)は、変更してもよい。
・上記実施形態では、陽極側及び陰極側の押圧手段として、圧縮コイルばね71,72(81,82)を用いたが、これら押圧手段は圧縮コイルばねに限定されず、例えば、板ばね等、圧縮コイルばね以外の押圧手段であってもよい。
・上記各実施形態では、電機子21及び整流子31は、モールド樹脂34にてモールドされて一体化されているが、一体化されなくてもよい。この場合、整流子31は、電機子21とは別体で設けられ、例えば、絶縁性の樹脂材料よりなる保持部にてセグメント32及び接続線33を部分的に埋設して構成されるとともに、電機子21若しくは第2のケース12に対して固定される。
上記実施の形態及び上記各別例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)請求項3に記載の直流モータにおいて、前記押圧手段は、前記スリップリングを付勢することにより、前記複合ブラシを前記スリップリングに押圧接触状態とするとともに、前記スリップリングにて前記複合ブラシを前記整流子側に押圧することで前記複合ブラシを前記整流子に押圧接触させることを特徴とする直流モータ。
同構成によれば、より具体的な構成で請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
(ロ)上記(イ)に記載の直流モータにおいて、陽極側の前記押圧手段及び陰極側の前記押圧手段は、大径の前記スリップリングを全周に渡って付勢すべく大径に形成された圧縮コイルばねと、その内側に配置され小径の前記スリップリングを全周に渡って付勢すべく小径に形成された圧縮コイルばねであることを特徴とする直流モータ。
同構成によれば、陽極側の押圧手段及び陰極側の押圧手段は、大径及び小径のスリップリングをそれぞれ全周に渡って付勢すべく大径及び小径に形成された大径及び小径の圧縮コイルばねであるため、部品点数を最少(陽極側と陰極側とで1つずつ)としながら、スリップリングを良好に(周方向にバランス良く)付勢することができる。
(ハ)上記(イ)に記載の直流モータにおいて、陽極側の前記押圧手段及び陰極側の前記押圧手段は、大径の前記スリップリングを周方向の複数箇所で付勢すべく周方向に複数設けられる圧縮コイルばねと、小径の前記スリップリングを周方向の複数箇所で付勢すべく周方向に複数設けられる圧縮コイルばねであることを特徴とする直流モータ。
同構成によれば、陽極側の押圧手段及び陰極側の押圧手段は、大径及び小径のスリップリングをそれぞれ周方向の複数箇所で付勢すべく周方向にそれぞれ複数設けられる圧縮コイルばねであるため、製造容易で汎用性の高い(安価な)極小径の圧縮コイルばねを用いながら、スリップリングを良好に(周方向にバランス良く)付勢することができる。
(ニ)上記(ハ)に記載の直流モータにおいて、大径及び小径の前記スリップリングを付勢するための全ての前記圧縮コイルばねを、前記回転軸を中心とした同一半径上に配置したことを特徴とする直流モータ。
同構成によれば、大径及び小径のスリップリングを付勢するための全ての圧縮コイルばねは、回転軸を中心とした同一半径上に配置されるため、圧縮コイルばねの配置に必要となるスペースが径方向に小スペースとなる。即ち、圧縮コイルばねの径方向内側及び径方向外側にまとまったスペースを確保でき、例えば、圧縮コイルばねの径方向内側に軸受を容易に配置することができる。