JP5356092B2 - パンツタイプ使い捨ておむつ - Google Patents

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Description

本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつに関するものである。
パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃の両側部と後身頃の両側部とが予め接合され、ウエスト開口部及び左右一対の脚開口部が形成されている製品であり、着用の際には下着のパンツと同様、装着者の両脚をウエスト開口部を介して脚開口部にそれぞれ通した後、ウエストまで引き上げる、といった手順が採られている。
一方、交換時の取り外し方法としては、おむつ側部の接合部(以下単に脇ともいう)を引き千切り取り外す場合と、脇を破らずにそのままずり下ろして脱がせる場合の二通りの方法がある。排尿のみの場合はどちらの取り外し方法でも容易にできるが、排便を伴う場合にはそのままずらして交換することは容易ではない。そのため、排便を伴うおむつ交換の際には、装着者を仰向けに寝かせ、おむつの脇を破って平坦に展開した状態で、排泄物等の汚れを拭取った後に取り外すことが一般的となっている。
また、このようなおむつの交換に際して、身体表面に排泄物が付着している場合等、必要に応じて身体表面の拭き取り作業が行われる。このような拭き取り作業は、おむつが作業の邪魔にならないよう、装着者からおむつを完全に取り外した後に行われることが多い。現在では、このような拭き取り作業のために、使い捨ての拭き取り用湿潤シートが市販されている。
特開2002−272767号公報 特表2000−503244号公報
しかし、交換に際して、新しい交換用おむつの他に、拭き取り用品を別に準備する必要があり、交換作業が煩雑となっていた。特に、装着者からおむつを完全に取り外した後に拭き取り作業を行う場合、身体表面に付着した便がおちないように注意を払う必要があることも問題である。
このような問題点を解決するものとして、おむつの内面を排泄物の拭取り用いることも提案されている(例えば、特許文献1、2参照)が、使用後に排泄物で汚れている部分は使えず、また綺麗な部分で拭き取る際にもおむつ内面の汚れた部分も一緒に動いて身体表面に接触するおそれが高いといった問題や、吸収体の剛性や厚みが邪魔となり、鼠蹊部や臀溝、性器周りのように細かな作業を要する部分の拭き取りが困難であるといった問題もある。
そこで、本発明の主たる課題は、これらの諸問題を一挙解決することにある。
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
前身頃の両側部と後身頃の両側部とが接合され、ウエスト開口部及び左右一対の脚開口部が形成されているパンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
後身頃の内面の幅方向中央部に、ウエスト側端部から股間側に向かって延在するとともにウエスト側端部に手挿入口を有する身体拭き取り用袋体が、おむつ内側に突出可能に設けられている、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
このように、おむつの後身頃に別体の身体拭き取り用袋体が取り付けられていると、例えば次のように拭き取り作業を行うことができる。すなわち、使用したおむつを脱がせる際には、使用したおむつの接合部の少なくとも一方を引き千切るか若しくは両接合部を引き千切らずに、装着状態のまま又は必要に応じて少しずりおろした状態で、そのおむつに付属する袋体に手を挿入し、袋体の外面で身体表面の拭き取りを行うことができる。また、新しくおむつを履かせる際においても、新しいおむつを完全に又は若干ずり落ちた状態に履かせた後、そのおむつに付属する袋体に手を挿入し、袋体の外面で身体表面の拭き取り(本拭きよりも仕上げ拭きに適する)を行うことができる。
したがって、拭き取り用品を別に準備する必要がなくなり、交換作業が簡易になるだけでなく、拭き取り時に汚れた部分が身体表面に接触し難く、また袋体の中に手を通して使用するため、鼠蹊部や臀溝、性器周りのように細かな作業を要する部分の拭き取りも容易となる。さらに、装着者の股間におむつを保持した状態で拭き取りを行うことができるため、身体表面に付着した便が落ちてもおむつで受けることができる。
<請求項2記載の発明>
前記袋体は、縦方向の長さが100〜200mmであり、横方向の長さが80〜120mmである、請求項1記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
袋体としては、手指を挿入できる程度の寸法であれば十分に使用可能であり、手のひらの略全体が入るとより好ましい。ただし、大き過ぎるとかえって使用し難いため、上述の寸法程度が好適である。
<請求項3記載の発明>
前記袋体は、外面をなす親水性不織布層と、その内面側に位置する不透液性シート層とを有するシートにより形成されている、請求項2記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
袋体の素材にこのような層構造のシートを用いることにより、拭き取り時には不透液性シート層が排泄物の透過を遮断するため排泄物が袋体を通り抜けて手が汚れるといった事態が起こり難くなる。また、拭き取り後に袋体を裏返すことにより、拭き取りで汚れた面が内側となるだけでなく、その汚れを不透液性シート層により内側に封じ込めることができる。よって、新しいおむつを履かせる際、仕上げ拭きに使用した袋体を裏返し、おむつに付属させておくといったことも可能となる。さらにまた、拭き取り後の袋体内に、使用したおむつを丸めて入れることにより、使用済みおむつを衛生的に後処理するための後処理用袋として利用することもできる。
<請求項4記載の発明>
前記袋体内の股間側端部に摘み部が設けられている、請求項3記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
袋体内に手を入れて拭き取りを行った後、袋体内に突出する摘み部を摘まんで袋体外に引き出すことにより、袋体の裏返しを手を汚さずに容易に行うことができる。
<請求項5記載の発明>
前記袋体は、前記後身頃に固定された固定部と、この固定部以外の部分である本体部とを有しており、前記本体部と前記固定部との境界又はその近傍に沿って、前記本体部を前記固定部から切り離すためのミシン目が設けられている、請求項4記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
使用したおむつを交換する際に袋体の中に使用したおむつを丸めて(折り畳むことも含む)入れることで、使用済みおむつを衛生的に後処理することができる。また、袋体が前述の層構造のシートである場合、袋体を裏返すことにより後処理をより一層衛生的に行うことができる。特に、新しいおむつを履かせる際に袋体で拭き取りを行った場合には、その袋体の本体部を取り外して先に廃棄することもできるが、袋体の本体部をおむつから取り外す場合に、上記のような固定構造及びミシン目を有すると、取り外し作業が容易になる。
<請求項6記載の発明>
前記袋体のうち、前記ウエスト側端部より股間側に位置する部分が前記ウエスト側端部上に折り畳まれている、請求項5記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
折り畳まれた袋体は厚み自体及び厚み方向の弾力性が増加するため、この状態の袋体が後身頃のウエスト側端部に取り付けられていると、使用中の排泄により袋体が汚れることが少ないだけでなく、袋体がおむつと装着者の背中との隙間を弾力的に塞ぐ堰となって背側からの漏れが効果的に防止される。
<請求項7記載の発明>
前身頃の両側部と後身頃の両側部とが接合され、ウエスト開口部及び左右一対の脚開口部が形成されているパンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
後身頃の幅方向中央部に、ウエスト側端部から股間側に向かって延在するとともにウエスト側端部に手挿入口を有する身体拭き取り用袋体が、おむつ内側に突出可能に設けられており、
液透過性表面シートと不透液性バックシートとの間に吸収体が介在されてなり、背側から股間部を通り腹側までを覆うように形成された内装体と、この内装体の外面における少なくとも前後のウエスト側端部に張り付けられ、少なくとも胴回りを覆うように形成された外装シートとを備えており、
前記後身頃における前記内装体及び外装シートの重なり部分のうち、前記内装体におけるウエスト側端縁から股間側の所定位置までの幅方向中間部が、前記外装シートに非接合又は剥離可能に接合されており、
この非接合又は剥離可能に接合された部分における前記内装体と前記外装シートとの間が、前記内装体のウエスト側端縁に開口するポケットとなるように構成されており、
このポケット内に、前記袋体が収納されている、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
このように、袋体を不透液性バックシートより外側に収納しておくことにより、袋体が取り付けられた状態でおむつを使用しても、排泄物により袋体が汚れることなく、また袋体が身体に接触することによる装着感の悪化も防止できる。おむつの使用後には袋体をポケットから取り出すことにより拭き取りに使用することができる。
<請求項8記載の発明>
前記袋体内にスポンジ体が収納されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
(作用効果)
おむつ替えの時にスポンジ体に水を含ませることで、市販のお尻拭きと同様の湿潤タイプの拭き取り手段に変えることができる。また、冬場等、必要に応じてお湯を含ませれば、暖かい拭き取り手段に変えることができる。さらに、スポンジ体により、袋体は厚み自体及び厚み方向の弾力性が増加するため、この状態の袋体が後身頃のウエスト側端部に取り付けられていると、袋体がおむつと装着者の背中との隙間を弾力的に塞ぐ堰となって背側からの漏れが効果的に防止される。
以上のとおり、本発明によれば、拭き取り用品を別に準備する必要がなくなり、交換作業が簡易になるだけでなく、拭き取り時に汚れた部分が身体表面に接触し難く、また鼠蹊部や臀溝、性器周りのように細かな作業を要する部分の拭き取りも容易となる、等の利点がもたらされる。
パンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。 図1の3−3断面図である。 図1の4−4断面図である。 図1の5−5断面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの要部のみを示す、おむつを展開した状態における平面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの要部のみを示す、断面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図である。 使用後のおむつの袋体を用いて拭き取りを行う場合の手順を示す概略図である。 新しく履かせるおむつの袋体を用いて拭き取りを行う場合の手順を示す概略図である。 他の形態の断面図である。 他の形態の断面図である。 他の形態の断面図である。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図8は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例100を示している。このパンツタイプ使い捨ておむつ100は、製品外面(裏面)をなす外装シート12と、外装シートの内面に貼り付けられた内装体200とから構成されているものである。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装シート12は着用者に装着するための部分である。なお、断面図における点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、カーテン、サミットまたはスパイラル塗布などにより形成されるものである。なお、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつ100の装着状態、すなわちおむつ100の前身頃両側部と後身頃量側部を重ね合わせるようにおむつ100を股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3〜図5に示されるように、身体側となる表面シート30と、不透液性バックシート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担う本体部である。符号40は、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、表面シート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に設けられた、身体側に起立するバリヤーカフス60を示している。
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
バリヤーカフス60を設ける場合、表面シート30の両側部は、不透液性バックシート11とバリヤーカフス60との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、不透液性バックシート11及びバリヤーカフス60に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
(中間シート)
表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
(不透液性バックシート)
不透液性バックシート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。不透液性バックシート11には、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、不透液性バックシート11として用いることができる。
不透液性バックシート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
また、不透液性バックシート11の内側、特に吸収体56側面に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。本実施の形態のバリヤーカフス60は、内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
より詳細には、バリヤーカフス60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。バリヤーカフス60のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、突出部分66のうち前後方向両端部は、取付部分65から内装体200の側部を通り表面シート30の側部表面まで延在し且つこの表面シート30の側部表面に対してホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる。突出部分のうち前後方向中間部は非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示のように、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
バリヤーカフス60の自由部分に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。
バリヤーカフス60の取付部分65の固定対象は、内装体200における表面シート30、不透液性バックシート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができる。
かくして構成されたバリヤーカフス60では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍においてバリヤーカフス60が幅方向外側に開くように起立するため、バリヤーカフス60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
バリヤーカフス60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図7に示すように、バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、バリヤーカフス60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
なお、図示形態と異なり、内装体200の左右各側においてバリヤーカフスを二重に(二列)設けることもできる。
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
吸収体56は長方形形状でも良いが、図6にも示すように、前端部、後端部及びこれらの間に位置し、前端部及び後端部と比べて幅が狭い括れ部とを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。
また、吸収体の寸法は適宜定めることができるが、前後方向及び幅方向において、内装体の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。
(外装シート)
外装シート12は、股間部から腹側に延在する前身頃Fと、股間部から背側に延在する後身頃Bとを有し、これら前身頃Fの両側部と後身頃Bの両側部とが接合されて、図8に示すように、装着者の胴を通すための胴開口部WO及び脚を通すための左右一対の脚開口部LOが形成されているものである。符号12Aは接合部分を示している(以下、この部分をサイドシール部ともいう)。なお、股間部とは、展開状態における前身頃のウエスト端縁から後身頃のウエスト端縁までの前後方向中央を意味し、それよりも前側の部分及び後側の部分が前身頃F及び後身頃Bをそれぞれ意味する。
外装シート12は、胴開口部WOから脚開口部LOの上端に至る前後方向範囲として定まる胴周り部Tと、脚開口部LOを形成する部分の前後方向範囲として定まる中間部Lとを有する。胴周り部Tは、概念的に「ウエスト側端部」Wと「胴周り下部」Uとに分けることができる。これらの前後方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト側端部Wは15〜40mm、胴周り下部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間部Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うように括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、外装シート12は、全体としては略砂時計形状をなしている。外装シート12の括れの程度は適宜定めることができ、図1〜図8に示す形態のように、すっきりとした外観とするために最も幅が狭い部分では内装体200の幅より狭くすることが好ましいが、最も幅が狭い部分でも内装体200の幅以上となるように定めてもよい。
外装シート12は、図3〜図5に示されるように、二枚のシート基材12S,12Hをホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせて形成されるものであり、内側に位置する内側シート基材12Hはウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側シート基材12Sは内側シート基材12Hのウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。
シート基材12S,12Hとしては、シート基材であれば特に限定無く使用できるが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
また、外装シート12を通して後述する印刷シート25のデザインを製品外面から良好に視認できるように、外装シート12の総目付けは20〜60g/m2程度であるのが好ましく、外装シート12のJIS K 7105に規定される全光線透過率が40%以上、特に50%以上となっているのが好ましい。
そして、外装シート12には、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート基材12S,12H間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。外装シート12の両シート基材12S,12Hの貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定には種々の塗布方法によるホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
より詳細には、後身頃B及び前身頃Fのウエスト端部(上端部)Wにおける内側シート基材12Hの内側面と外側シート基材12Sの折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性伸縮部材17,18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、ウエスト部弾性伸縮部材17,18のうち、胴周り下部Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性伸縮部材17,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、ウエスト部弾性伸縮部材17,18は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えばウエスト側端部Wの上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。
また、前身頃F及び後身頃Bの胴周り下部Uにおける内側シート基材12Hの外側面と外側シート基材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の細長状弾性伸縮部材15,19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
胴回り下部Uの細長状弾性伸縮部材15,19としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
また、前身頃F及び後身頃Bの中間部Lにおける内側シート基材12Hの外側面と外側シート基材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
中間部Lの細長状弾性伸縮部材16,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
なお、図示のように、胴回り下部U及び中間部Lの細長状弾性伸縮部材15,19,16,18が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200が幅方向に必要以上に収縮することがなく、モコモコと見た目が悪かったり吸収性が低下したりすることがないため好ましい。この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。もちろん細長状弾性伸縮部材15,19,16,18の配設形態は上記例に限るものではなく、胴回り下部Uの幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、胴回り下部Uの細長状弾性伸縮部材15,19,16,18の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
また、細長状弾性伸縮部材15〜19が後述する印刷シート25を横切る場合において、細長状弾性伸縮部材15〜19として酸化チタンを含有するゴムを用いる場合には、酸化チタンの含有量が低い(例えば2%以下の)ものあるいは酸化チタンを含有しないものを用いるのが好ましい。
(後処理テープ)
外装シート12の後身頃Bの外面における幅方向中央部には、後処理テープ70(固定手段)が設けることができる。後処理テープ70は、おむつ100を表面シート30が内側に且つ前身頃Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ状態で固定するためのものである。一般的な後処理テープ70は、図5に示すように、基端部71が外装シート12の外面に接着剤等により固定されるとともに、この基端部71よりも先端側の部分は三つ折り(断面Z字状)や二つ折りで折り畳まれて、折り重なり部分間が仮止め接着剤72により剥離可能に固定(仮固定)されている。また、先端部に白色等の不透明色に着色された摘み部73を有するとともに、この摘み部73を除く部分が透明または半透明であり、この後処理テープ70における透明または半透明の部分を通して、後処理テープ70の外面側から後述するデザインが視認可能になっている。具体的な構造は適宜構成することができるが、図示形態では、全体を透明又は半透明の複数の基材を長手方向に連結して形成するとともに、摘み部73に着色テープ74を張り合わせた構造を採用している。
廃棄時には、おむつ100を表面シート30が内側になるとともに前身頃Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ後、後処理テープ70の折り重なり部分を剥離して展ばし、丸めた若しくは折り畳んだおむつ100の後身頃Bからウエスト開口部WOを越えて反対側の外面まで巻き付けるようにして接着剤により固定する。後処理テープ70は、不使用時にはコンパクトに折り畳まれ、使用時には長尺状に展開できる三つ折り形状のものが特に好適である。
後処理テープ70等の固定手段は、前身頃Fに設けてもよく、後身頃Bと前身頃Fの両方に設けてもよい。
(印刷シート)
不透液性バックシート11と外装シート12との間(外装シート12の層間を含む)には、印刷によりデザインの施された印刷シート25が設けられている。外装シート12を省略し、印刷シート25が外面に露出する形態とすることもできる。また、図示例の印刷シート25は、それが配置される身頃よりも小さい面積を有しており、前身頃F及び後身頃Bに個別に設けられているが、前身頃Fから股間部を通り後身頃Bまで一体的に連続するように設けることもできる。
印刷シート25の寸法・形状は特に限定されないが、機能を十分なものとするためには十分に面積を大きくするのが好ましく、例えば、印刷シート25の幅は吸収体56の幅の50〜120%程度であるのが好ましく、印刷シート25の長さは少なくとも腹側及び背側の片側で物品全長Yの15〜30%程度であるのが好ましい。また、印刷シート25の形状はトリムロスが発生しない点では図示例のような矩形であるのが好ましいが、円形や楕円形、三角形、六角形等の幾何学形状、若しくはデザインの周囲に沿う形状にカットしても良い。
印刷シート25のシート基材としては、プラスチックフィルムや不織布、紙などを用いることができるが、嵩高く通気性の高い素材が好ましい。プラスチックフィルムを用いる場合は、ムレ防止のため透湿性を有することが望ましい。不織布や紙は透湿性を有するため好ましく、デザイン印刷を施す場合、不織布にあっては平滑性が高く印刷しやすいもの、紙にあっては強度が高くインクの滲み難いものを用いるのが好ましい。特に好ましいものとしては、目付け15〜35g/m2程度、厚み0.1〜0.3mm程度のクレープ紙(薄葉紙)や、目付け10〜25g/m2程度、厚み0.1〜0.3mm程度の不織布(特にスパンボンド部の繊度が1.0〜3.0dtex程度のスパンボンド不織布やSMS不織布)を挙げることができる。クレープ紙を用いる場合は、クレープ率は5〜20%程度、特に5〜15%程度のものを用いるのが好ましい。クレープ率が20%以上であると、インクの定着量は大きくなるが滲みが生じてデザイン印刷には適さない。クレープ率が5%以下であるとインクが浸透しにくいため定着量が少ない。
(外装シート分割構造)
上述の例では、前身頃Fから後身頃Bまでを一体的な外装シート12により連続的に覆っているが、外装シートが、装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シートと背側を覆う背側外装シートとに分割されており、腹側外装シートの幅方向中央部内面に内装体の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シートの幅方向中央部内面に内装体の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シートと背側外装シートとが股間側で連続しておらず、離間されている形態も採用することができる。この離間距離は150〜250mm程度とすることができる。この場合、内装体における不透液性バックシートの裏面には、内装体の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シートと背側外装シートとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シートを固定することもできる。股間部外装シートとしては、前述した外装シートに用いられるものと同様の資材を用いることができる。股間部外装シートも本発明の外装シートに相当する。
(身体拭き取り用袋体)
特徴的には、後身頃B内面の幅方向中央部に、ウエスト側端部から股間側に向かって延在するとともにウエスト側端部に手挿入口81を有する身体拭き取り用袋体80が取り付けられている。
袋体80としては、手指を挿入できる程度の寸法があれば十分であるが、手のひらの略全体が入るとより好ましい。ただし、大き過ぎるとかえって使用し難いため、袋体80の縦方向の長さ80Yは100〜200mm程度、横方向の長さ80Xは80〜120mm程度とするのが好ましい。この程度の大きさであると、後述するような袋体80を後処理用の袋として利用する場合に、丸めたおむつ100を入れるのにも好適である。また、袋体80のウエスト側端縁は、後身頃Bのウエスト側端縁と吸収体56のウエスト側端縁との間に位置しているのが好ましい。
図示例の袋体80は、矩形状をなしているが、股間側縁が円弧状や股間凹凸に沿う形状となっていても良く、またミトン等のような手袋状となっていても良い。また、図示例の袋体80は、二枚のシートを重ねてその周縁部を、股間側縁部を除いて接着剤や溶着等の接合手段により接合してなるものであるが、一枚のシートを折り畳んで周縁部の手挿入口以外の部分を接合することも可能である。
袋体80の手挿入口81は、図示例では袋体80のウエスト側端縁に開口しているが、縦方向中間部であっても良い。また、図示例の手挿入口81は、ウエスト側端の略全体が開口するものであるが、幅方向中間の一部だけでも良く、その形状も幅方向に沿うスリット状の他、矩形状等であっても良い。また、手挿入口81は、後身頃Bのウエスト側端縁と吸収体56のウエスト側端縁との間に位置しているのが好ましい。
袋体80における取付部85は特に限定されないが、縦方向の一部、特に手挿入口81と同じか又はそれよりも股間側の一部であるのが好ましく、図示例では幅方向の略全体に及んでいるが、幅方向の中央部等一部のみでも良い。他は固定されていないか又は剥離可能にされている部分となり、拭取り時に自由に操作できる部分となる。また、後身頃Bにおける袋体80の取付部の取付位置は、後身頃Bのウエスト側端縁と吸収体56のウエスト側端縁との間であるのが好ましい。
このように、おむつ100の後身頃Bの内面に、別体の身体拭き取り用袋体80が取り付けられていると、例えば図9及び図10に示すように拭き取り作業を行うことができる。すなわち、使用したおむつ100を脱がせる際には、図9(a)に示すように、使用したおむつ100の接合部12Aの少なくとも一方を引き千切り(若しくは両接合部12Aを引き千切らずに)、装着状態のまま(又は必要に応じて少しずりおろした状態)で、そのおむつ100に付属する袋体80に図9(b)に示すように手300を挿入し、図9(c)に示すように袋体80の外面で股間部から臀部にかけて拭い上げるように身体表面の拭き取りを行うことができる。
また、新しくおむつを履かせる際には、図10(a)に示すように新しいおむつ100を若干(又は完全に)ずり落ちた状態とした後、図10(b)に示すようにそのおむつ100に付属する袋体80に手を挿入し、図10(c)に示すように、袋体80の外面で股間部から臀部にかけて拭い上げるように身体表面の拭き取り(本拭きよりも仕上げ拭きに適する)を行うことができ、更にそのまま袋体80を掴んで引き上げることによりおむつ100を装着位置まで引き上げることができる。
したがって、拭き取り用品を別に準備する必要がなくなり、交換作業が簡易になるだけでなく、拭き取り時に汚れた部分が身体表面に接触し難く、また袋体80の中に手を通して使用するため、鼠蹊部や臀溝、性器周りのように細かな作業を要する部分の拭き取りも容易となる。さらに、装着者の股間におむつ100を保持した状態で拭き取りを行うことができるため、身体表面に付着した便が落ちてもおむつ100で受けることができる。
さらに、拭き取り後に袋体80を裏返すことにより、拭き取りで汚れた面を内側とし、汚れを内側に隠すことができる。よって、例えば新しいおむつ100を履かせる際、仕上げ拭きに使用した袋体80を裏返し、おむつ100に付属させておくといったことも可能となる。
この袋体80の裏返しを容易にするために、図示形態のように、袋体80内の股間側端部に摘み部83を突出させるのも好ましい形態である。袋体80内に手を入れて拭き取りを行った後、図5の二点鎖線で囲まれた拡大図に示されるように、袋体80内に突出する摘み部83を摘まんで手挿入口81から袋体80外に引き出すことにより、手を汚さず容易に袋体の裏返しを行うことができる。摘み部83は、股間側端部であればある程度ウエスト側に寄っていても機能する。また、図示形態の摘み部83は、別体の摘み状シートの基端部を袋体の80の股間側端部のシート間に挟んで接合したものであるが、袋体80の構成シートの一部を袋体80内に突出させて摘み部83を形成することも可能である。
さらにまた、使用したおむつ100を脱がせる際であれば、拭き取り後の袋体80内に、使用したおむつ100を丸めて入れることにより、使用済みおむつ100を衛生的に後処理するための後処理用袋として利用することができる。この際、袋体80内に手を入れて袋体80越しに丸めたおむつ100を掴んで袋体80を裏返すことにより、手や袋体80の入口近傍を汚さずに、袋体80内におむつ100を収納することができる。袋体80を後処理用袋として利用する場合は、前述の後処理テープ70等のその他の後処理用手段は省略することができる。
他方、袋体80の素材は特に限定されないが、少なくとも外面が排泄物に対して十分な拭取り性と親水性を有しているものが好ましい。このような素材としては、例えば表面シート30に用いられるのと同様の不織布を挙げることができるが、スパンレース不織布やエアレイド不織布、サーマルボンド不織布等が特に好ましく、親水処理を施した疎水性繊維よりも、パルプ繊維やレーヨン繊維等のセルロース系の親水性繊維を50〜100%程度含むものが望ましい。また、目付は25〜50g/m2程度が好ましい。特に好ましい素材は、外面をなす親水性不織布層と、その内面側に位置する不透液性シート層とを有する複数層構造のシートである。不透液性シート層は前述の不透液性バックシート11と同様の素材により形成することができる。このような層構造のシートを用いることにより、拭き取り時や、拭き取り後に袋体80を裏返した後、或いは袋体80内におむつ100を丸めて入れた時、不透液性シート層が排泄物の透過を遮断するため、排泄物が袋体80を通り抜けて手が汚れるといった事態が起こり難くなる。
また、袋体80を後身頃に取り付ける手段としては、接着剤や溶着等のように着脱を想定していない固定手段が簡易であるため好ましいが、メカニカルファスナー(面ファスナー)等の着脱自在の取り付け手段を用いると、袋体80をおむつ100から取り外しできるため、例えば使用したおむつ100を交換する際にそのおむつ100から袋体80を取り外し、その中に使用したおむつ100を丸めて入れることで、使用済みおむつ100を衛生的に後処理するといった使い方や、新しいおむつ100を履かせる際にそのおむつ100に付属する袋体80で拭き取りを行う場合、拭取りに使用した袋体を取り外して先に廃棄するといった使い方も可能となる。なお、接着剤による固定手段を用いる場合は、手で引き千切ることにより取り外し可能な程度の強度を有するように(接着力の弱い接着剤を用いる、袋体80に接着剤との接着性が低いものを用いる、接着剤の使用料を少なくする等して)弱く接着してもよい。
また、接着剤や溶着等のように着脱を想定していない固定手段により袋体80を後身頃Bに対して固定する場合であっても、袋体80における固定部(取付部)85とそれ以外の本体部86との境界(又はその近傍でも良い)に沿って、固定部85を本体部86から切り離すためのミシン目82(図5等の断面図には線の不連続部分により表現されている)を設け、必要に応じてミシン目82で袋体80の本体部86を固定部85から切り離すことで、全体を着脱するのと同様の効果を得ることができる。
<他の形態>
(イ)図11に示されるように、袋体80のうち、ウエスト側端部より股間側に位置する部分がウエスト側端部上に折り畳まれていると、使用中の排泄により袋体80が汚れることが少なくなるだけでなく、厚み自体及び厚み方向の弾力性が増加した袋体80が、おむつ100と装着者の背中との隙間を弾力的に塞ぐ堰となって背側からの漏れが効果的に防止される。折り畳み方及び回数は特に限定されず、図示例のように股間側から巻きつけるように複数回折り畳む他、山折り及び谷折りを交互に行って蛇腹状に折り畳むこともできる。製品状態でこのような折り畳みが固定されたものとしてもよいが、図1〜図8に示すような、袋体80が開口部を有する袋状構造となっている本発明の基本的な実施形態においても、使用者が袋体80を開口部が露出するように折り畳んで、これを開口部に挟み込むことで、折り畳み状態を維持(固定)するような使用方法が可能である。
(ロ)市販のお尻拭きと同様の湿潤タイプの拭き取り手段にするために、図12に示されるように、袋体80内にスポンジ体84を収納しておくのも好ましい形態である。使用者は、おむつ100替えの時にスポンジ体84に水を含ませることで湿潤タイプの拭き取り手段に変えることができる。また、冬場等、必要に応じてお湯を含ませれば、暖かい拭き取り手段に変えることができる。スポンジ体84は袋体80の面積の15〜40%程度の面積を有し、厚さが3〜10mm程度のものが好適であり、ポリウレタン等の合成樹脂を発泡成形した合成スポンジ、天然スポンジを問わず用いることができる。さらに、スポンジ体84により、袋体は厚み自体及び厚み方向の弾力性が増加するため、この状態の袋体が後身頃のウエスト側端部に取り付けられていると、袋体がおむつと装着者の背中との隙間を弾力的に塞ぐ堰となって背側からの漏れが効果的に防止される。
(ハ)上記例は、袋体80がおむつ100内面に予め露出しているものであるが、図13に示されるように、後身頃Bにおける内装体200及び外装シート12の重なり部分のうち、内装体200におけるウエスト側端縁から股間側の所定位置までの幅方向中間部が、外装シート12に非接合又は剥離可能に接合され、その幅方向両側及び股間側が接合されており、幅方向中間部における内装体200と外装シート12との間が、内装体200のウエスト側端縁に開口するポケット88となっており、このポケット88内に袋体80が収納されている形態も提案される。
このように、袋体80を不透液性バックシート11より外側に収納しておくことにより、袋体80が取り付けられた状態でおむつ100を使用しても、排泄物により袋体80が汚れることなく、また袋体80が身体に接触することによる装着感の悪化も防止できる。おむつ100の使用後には袋体80をポケットから取り出すことにより拭き取りに使用することができる。
袋体80の一部(例えば手挿入口よりも股間側の部分)だけがポケット88内に収納されている形態も、袋体が使い易いため好ましいが、袋体80による違和感を防止するため等、目的によっては、図示形態のように袋体80の全体をポケット88内に収まるように構成し、袋体80と身体との接触を完全に防止するのも好ましい形態である。
本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつに利用できるものである。
11…不透液性バックシート、12…外装シート、12r…折り返し部分、25…印刷シート、200…内装体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート、80…身体拭き取り用袋体。

Claims (8)

  1. 前身頃の両側部と後身頃の両側部とが接合され、ウエスト開口部及び左右一対の脚開口部が形成されているパンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
    後身頃の内面の幅方向中央部に、ウエスト側端部から股間側に向かって延在するとともにウエスト側端部に手挿入口を有する身体拭き取り用袋体が、おむつ内側に突出可能に設けられている、
    ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
  2. 前記袋体は、縦方向の長さが100〜200mmであり、横方向の長さが80〜120mmである、請求項1記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  3. 前記袋体は、外面をなす親水性不織布層と、その内面側に位置する不透液性シート層とを有するシートにより形成されている、請求項2記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  4. 前記袋体内の股間側端部に摘み部が設けられている、請求項3記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  5. 前記袋体は、前記後身頃に固定された固定部と、この固定部以外の部分である本体部とを有しており、前記本体部と前記固定部との境界又はその近傍に沿って、前記本体部を前記固定部から切り離すためのミシン目が設けられている、請求項4記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  6. 前記袋体のうち、前記ウエスト側端部より股間側に位置する部分が前記ウエスト側端部上に折り畳まれている、請求項5記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
  7. 前身頃の両側部と後身頃の両側部とが接合され、ウエスト開口部及び左右一対の脚開口部が形成されているパンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
    後身頃の幅方向中央部に、ウエスト側端部から股間側に向かって延在するとともにウエスト側端部に手挿入口を有する身体拭き取り用袋体が、おむつ内側に突出可能に設けられており、
    液透過性表面シートと不透液性バックシートとの間に吸収体が介在されてなり、背側から股間部を通り腹側までを覆うように形成された内装体と、この内装体の外面における少なくとも前後のウエスト側端部に張り付けられ、少なくとも胴回りを覆うように形成された外装シートとを備えており、
    前記後身頃における前記内装体及び外装シートの重なり部分のうち、前記内装体におけるウエスト側端縁から股間側の所定位置までの幅方向中間部が、前記外装シートに非接合又は剥離可能に接合されており、
    この非接合又は剥離可能に接合された部分における前記内装体と前記外装シートとの間が、前記内装体のウエスト側端縁に開口するポケットとなるように構成されており、
    このポケット内に、前記袋体が収納されている、
    ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
  8. 前記袋体内にスポンジ体が収納されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
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