しかしながら、特許文献1の技術は、ボルトによる外力を用いて強制的に床大梁の高さ位置を上下させることで床段差を解消する技術であるため、ボルトには常時多大な負荷がかかっていることが想定される。したがって、長期的なスパンで考えると、ボルトが次第に緩み、その結果床大梁の高さ位置が元(高さ調整前)の位置へ戻ることが考えられる。したがって、床段差が事後的に発生するおそれがあり、その点を鑑みると未だ改善の余地があるといえる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、床段差等の問題を解消することができるとともに、その解消状態を長期に渡って維持することができる柱間連結構造を提供することを主たる目的とするものである。
上記課題を解決すべく、第1の発明の柱間連結構造は、上下に隣接する上階部と下階部とを有してなる建物に適用され、前記下階部の柱である下階柱の上端部と前記上階部の柱である上階柱の下端部とを連結する柱間連結構造において、前記下階柱に対する前記上階柱の高さ位置を調整する高さ位置調整手段と、前記高さ位置調整手段による前記高さ位置調整により生じた前記下階柱の上端部と前記上階柱の下端部との間の柱間隙間に介在された凝結材と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、高さ位置調整手段により下階柱に対する上階柱の高さ位置を調整することで、建物の各柱の高さを個別に調整することができる。この場合、上階柱に連結されている床梁等の床支持部材の高さ位置を調整することができるため、床支持部材に支持されている上階部の床面材の床面高さを調整することができる。これにより、上階部における隣り合う床面材同士の間で床面高さが異なり床段差等の問題が生じても、その問題を解消させることができる。また、この高さ位置調整により生じた下階柱の上端部と上階柱の下端部との間の柱間隙間には凝結材が介在されているため、上階柱の荷重(自重)を、ひいては上階部の荷重の大部分を凝結材の上に作用させることができる。ここで、凝結材とは、モルタルやコンクリート等、時間の経過とともに固化する流動性を有するものをいう。したがって、上記高さ位置調整により生じた柱間隙間に凝結材を流動状態で注入し、その後固化させることにより、凝結材を柱間隙間に介在させることができる。これにより、高さ位置調整手段に対して過大な負荷をかけることなく、上階柱を上記調整した高さ位置に安定して維持することができるため、床段差を解消させた状態を長期に渡って維持することができる。
また、上階柱の高さ位置調整により生じた柱間隙間にスペーサ(例えば薄板)を差し入れることによっても、上階柱の高さ位置を維持することは可能であるが、高さ位置調整により生じる柱間隙間の大きさはその都度異なるため、この場合異なる厚みのスペーサを各種用意しておく必要が生じる。その点、本発明によれば、柱間隙間に流動状態の凝結材を注入することで柱間隙間に凝結材を固化した状態で介在させることができるため、柱間隙間の大小にかかわらず、上記効果を得られる利点もある。
第2の発明の柱間連結構造は、第1の発明において、前記柱間隙間に流動状態で注入された前記凝結材が前記柱間隙間より漏れ出るのを防止する漏れ防止手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、下階柱の上端部と上階柱の下端部との間の柱間隙間に流動状態で注入された凝結材が柱間隙間から漏れ出すのを漏れ防止手段により防止することができるため、上階柱や下階柱等周囲の部材を著しく汚すことなく凝結材を柱間隙間に充填させることができる。
第3の発明の柱間連結構造は、第2の発明において、前記漏れ防止手段は、前記柱間隙間に設けられる底板部と、前記底板部の周縁部において前記上階柱の下端部を囲むようにして設けられる囲み板部とを備えてなる収容容器であることを特徴とする。
本発明によれば、収容容器の囲み板部が上階柱の下端部を囲むようにして設けられているため、囲み板部の上端部が上階柱の下端部よりも上方に位置している。したがって、収容容器に流動状態の凝結材をその液面(上面)高さが上階柱の下端部と同じ高さとなるまで注入することにより、凝結材を収容容器からオーバーフローさせることなく柱間隙間に充填することができる。よって、第2の発明の効果を具体的に実現させることができる。
なおここで、「上階柱の下端部」とは、上階柱の下端部に柱脚プレートが固定されている場合には、柱脚プレートを指す意味である。
第4の発明の柱間連結構造は、第3の発明において、前記凝結材を前記収容容器に注入するための注入口を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、注入口から流動状態の凝結材を収容容器に注入することにより、凝結材を収容容器の底板部と上階柱の下端部との間に、すなわち柱間隙間に充填させることができる。これにより、流動状態の凝結材を柱間隙間に直接充填する場合と比べ、充填作業の容易化を図ることができる。
第5の発明の柱間連結構造は、第3又は第4の発明において、隣り合う下階柱同士を柱頭部分において連結する連結プレートを備え、前記収容容器は、前記連結プレートの上方に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、隣り合う下階柱同士を柱頭部において連結する連結プレートの上方に収容容器を設ける構成であるため、連結プレートが各下階柱上に跨って設けられているにもかかわらず、各下階柱の上方における各々の柱間隙間に対して収容容器を個別に設置することができる。これにより、凝結材を柱間隙間に充填する際には、凝結材が充填される側の柱間隙間に設けられた収容容器にのみ凝結材を注入すればよいため、凝結材の注入量を少なくすることができる。
第6の発明の柱間連結構造は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記上階柱の下端部に固定され、当該上階柱から側方に張り出した張出部を有する柱脚プレートと、前記下階柱の上端部に固定され、当該下階柱から側方に張り出した張出部を有する柱頭プレートと、を備え、前記高さ位置調整手段は、前記張出部に設けられ前記柱頭プレートに対する前記柱脚プレートの高さ位置を調整するプレート高さ調整手段であることを特徴とする。
本発明によれば、下階柱の上端部に固定された柱頭プレートに対する上階柱の下端部に固定された柱脚プレートの高さ位置をプレート高さ調整手段により調整することで、下階柱に対する上階柱の高さ位置を調整することができる。そして、このプレート高さ調整手段は、各プレートにおいて柱から側方に張り出した張出部に設けられているため、直接上階柱の高さ位置を調整する場合と比べ高さ調整の作業を容易に行うことができる。
第7の発明のユニット式建物は、梁及び柱を含んでなる複数の建物ユニットにより構築され、前記建物ユニットとして前記上階部を構成する上階ユニットと前記下階部を構成する下階ユニットとを備えてなるユニット式建物であって、柱間連結構造が前記上階ユニットの柱と前記下階ユニットの柱との連結部分に構築されていることを特徴とする。
本発明によれば、高さ位置調整手段により下階ユニットの柱に対する上階ユニットの柱の高さ位置を調整することで、当該柱を含んでなる上階ユニットの高さ位置を調整することができ、ひいてはその上階ユニットの床梁の高さ位置を調整することができる。これにより、隣り合う上階ユニットにおける床面材同士の間で床面高さが相違し床段差が発生しても、その床段差を解消させることができる。また、柱間隙間に凝結材を介在させることにより、上階ユニットの柱の荷重を、ひいては上階ユニットの荷重を凝結材の上に作用させることができるため、高さ位置調整手段に負荷をかけることなく上階ユニットの高さ位置を維持させることができる。したがって、床段差を解消させた状態を長期に渡って維持することができる。よって、隣り合う上階ユニット間を跨ぐようにして屋内空間が形成されている場合には、その屋内空間の床面を長期にわたってフラットな状態に維持することができる。
第8の発明の建物の施工方法は、上下に隣接する上階部と下階部とを有してなる建物に適用され、前記下階部の柱である下階柱の上端部と前記上階部の柱である上階柱の下端部とを連結する工程を有する建物の施工方法であって、前記下階柱に対する前記上階柱の高さ位置を調整し、前記高さ調整により生じた前記下階柱の上端部と前記上階柱の下端部との間の柱間隙間に流動状態の凝結材を注入し、その後前記凝結材を固化させることを特徴とする。
本発明によれば、下階柱に対する上階柱の高さ位置を調整することにより、上階柱に連結された床梁等の床支持部材の高さ位置を調整することができるため、その結果床支持部材に支持されている上階部の床面材の床面高さを調整することができる。これにより、上階部における隣り合う床面材同士の間で床面高さが異なり床段差等の問題が生じても、その問題を解消させることができる。また、下階柱の上端部と上階柱の下端部との間の柱間隙間に凝結材を流動状態で注入し、その後所定時間放置することで凝結材を柱間隙間において固化させることができる。これにより、上階柱の荷重(自重)を、ひいては上階部の荷重の大部分を凝結材の上に作用させることができるため、上階柱を上記調整した高さ位置に安定して維持させることができ、その結果床段差を解消させた状態を長期に渡って維持させることができる。
第9の発明の建物の施工方法は、前記流動状態の凝結材を注入するための注入口が設けられ、前記注入口より注入された凝結材を前記柱間隙間に導く注入部材を用いて、前記凝結材を前記柱間隙間に注入することを特徴とする。
本発明によれば、凝結材を注入部材の注入口に注入することにより凝結材を柱間隙間に導くことができるため、凝結材を柱間隙間に直接注入する場合と比べ、容易に凝結材を柱間隙間に注入することができる。
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物としてユニット式建物を採用している。図3は、ユニット式建物の概要を示す正面図であり、図4は建物ユニットの骨格を示す斜視図である。
図3に示すように、建物10は、基礎11上に配設される建物本体12と、この建物本体12の上方に配設される屋根13とにより構成されている。建物本体12は、一階部分14と二階部分15とからなる二階建て建物であり、複数の建物ユニット20が連結されることにより構成されている。なお、以下の説明においては複数の建物ユニット20のうち、一階部分14を構成する建物ユニット20を下階ユニット20a、二階部分15を構成する建物ユニット20を上階ユニット20bという。また、二階部分15には、隣り合う上階ユニット20b間を跨ぐようにして二階居室17が形成されている。
次に、建物ユニット20について簡単に説明する。
図4に示すように、建物ユニット20において、その四隅には柱21が配され、各柱21の上端部及び下端部がそれぞれ4本の天井大梁22、床大梁23により連結されている。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁24が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁25が架け渡されている。天井小梁24と床小梁25とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に水平に設けられている。
次に、二階部分15における二階居室17の床部の構成について図5に基づいて説明する。なお、図5は二階居室17の床部の構成を示す縦断面図である。
図5に示すように、上階ユニット20bの各床大梁23上には、床根太29が当該床大梁23に沿って設けられている。床根太29の上面と床小梁25の上面とはほぼ同じ高さに設定されており、これらの上面には床下地材26が敷設されている。また、隣り合う上階ユニット20bの各床下地材26の間には、隣り合う床根太29間を跨ぐように連結下地材27が配設されており、床下地材26と連結下地材27とにより連続した床下地面が形成されている。そして、床下地材26の上面と連結下地材27の上面とには、床仕上材28が敷設されており、これにより二階居室17の床面が形成されている。
ところで、建物ユニット20は、梁22〜25や柱21等、複数の部材が連結されることにより構成されるものであるため、各部材の寸法ばらつきが積み重なり、建物ユニット20間では大きな寸法差が発生することが想定される。したがって、例えば隣り合う下階ユニット20a間でユニット高さが異なる場合も想定され、その場合にはそれらの下階ユニット20a上に設置される隣り合う上階ユニット20b同士の設置高さが異なり、ひいては上階ユニット20bの床大梁23や床小梁25の高さ位置が異なることとなる。そうなると、床大梁23(詳細にはその上の床根太29)及び床小梁25上に敷設される床下地材26の設置高さが、さらにはその床下地材26上に敷設される床仕上材28の床面高さが隣り合う上階ユニット20b間で異なることとなるため、結果として隣り合う上階ユニット20b間で床段差が生じることとなる。そして、このような床段差が生じると、品質面において好ましくない。そこで、本実施形態では、隣り合う上階ユニット20b間における床段差を解消するために、上下階の柱連結部に特徴的な構成を有している。以下、その柱連結部の構成について図1及び図2に基づいて詳細に説明する。なお、図1は上下階における柱連結部の構成を示す縦断面図、図2は同柱連結部の構成を示す横断面図である。また、以下の説明では便宜上、下階ユニット20aを構成する各部材(柱や梁等)の符号にaを付し、上階ユニット20bを構成する各部材の符号にbを付して説明する。
図1に示すように、下階ユニット20aにおける柱21(以下、下階柱21aという)の上端部には、平板状の金属製板材よりなる柱頭プレート31が溶接により固定されている。柱頭プレート31は、下階柱21aから側方に張り出した張出部31aを有しており、本実施形態では、直交する二方向に延びる張出部31aが設けられている。なお、柱頭プレート31は後述する柱脚プレート41と同じ形状をしており、図2では、張出部31aが柱脚プレート41の張出部41aとして示されている。また、柱頭プレート31の各張出部31aには、上下に貫通する固定用孔33が形成されている。
柱頭プレート31には、上方に突出するようにしてスタッキングピン32が溶接により固定されている。スタッキングピン32は、略円柱状をなしており、その先端部が先細に形成されている。
柱頭プレート31の上面には、平板状のドッキングプレート36が設けられている。ドッキングプレート36は、図2に示すように、隣り合う下階ユニット20aにおける下階柱21a同士を連結するための連結部材であり、それら各下階柱21aの柱頭プレート31上に跨るようにして設けられている。ドッキングプレート36は、水平方向に隣接する各下階柱21aの柱頭プレート31に合わせた形状及び大きさを有している。ドッキングプレート36は、柱頭プレート31ごとに重ね合わせ部分36aが設けられ、各重ね合わせ部分36aは柱頭プレート31の張出部31aを含む大きさで設けられている。また、各重ね合わせ部分36aは連結部36bにより連結されている。
ドッキングプレート36には、各柱頭プレート31のスタッキングピン32の位置に対応して孔部52が形成されている。ドッキングプレート36は、その孔部52にスタッキングピン32が挿入された状態で各柱頭プレート31上に設けられている。これにより、隣り合う下階ユニット20aにおける下階柱21a同士がドッキングプレート36を介して連結されるため、隣り合う下階ユニット20aが互いに所定の位置関係で位置決めされる。また、ドッキングプレート36には、後述する固定用ボルト47が挿通される逃がし孔53が柱頭プレート31の固定用孔33に対応する位置に設けられ、その逃がし孔53よりも下階柱21a側に後述する調整用ボルト49が挿通される逃がし孔54が設けられている。
ドッキングプレート36の上面には、凝結材としてのモルタル39を収容する受け皿状のモルタル容器37が設けられている。ここで、モルタル容器37が漏れ防止手段及び収容容器に相当する。モルタル容器37は、例えば軟質性樹脂等により形成されている。モルタル容器37は、全体としては上方が開口された薄型の容器であり、詳細にはドッキングプレート36の上面に拡がる底板部37aと、底板部37aの周縁部から上方に立ち上がる囲み板部37bとを有している。モルタル容器37の底板部37aには、下階柱21aのスタッキングピン32が上下に貫通されている。
モルタル容器37の上方には、上階ユニット20bの柱(以下、上階柱21bという)が設けられている。上階柱21bの下端部には、平板状の金属製板材よりなる柱脚プレート41が溶接により固定されている。柱脚プレート41は、全体としては柱頭プレート31と同様の形状をなしており、上階柱21bから側方に張り出した張出部41aを有している。柱脚プレート41は、その張出部41aがドッキングプレート36とモルタル容器37とを挟んで柱頭プレート31の張出部31aと対向するように設けられている。柱脚プレート41は、モルタル容器37の内側に配設されており、モルタル容器37の囲み板部37bにより囲まれている。
柱脚プレート41には、柱頭プレート31に設けられたスタッキングピン32に対応する位置にピン挿入孔42が形成されている。上階柱21bは、そのピン挿入孔42に下階柱21aのスタッキングピン32が挿入された状態で、モルタル容器37の上方に設置されている。これにより、上階柱21bが下階柱21aに対して所定の位置関係で位置決めされている。
柱脚プレート41の張出部41aには、柱頭プレート31の固定用孔33に対応する位置に注入孔43が形成され、その注入孔43よりも上階柱21b側に調整用孔44が形成されている。調整用孔44の内周面にはめねじが形成されており、調整用孔44に対してボルト等を螺合させることが可能となっている。また、注入孔43は、モルタル39をモルタル容器37に注入するための注入口として用いられる孔である。
上階柱21bの柱脚プレート41とモルタル容器37の底板部37aとの間には、固化されたモルタル39が介在されている。本実施形態では、モルタル39を流動状態でモルタル容器37に注入することによりモルタル39を柱脚プレート41とモルタル容器37の底板部37aとの間に介在させ、その介在状態でモルタル39を固化させている。これにより、このモルタル39上に上階柱21bが載せられた状態となっており、それ故モルタル39には上階柱21bの荷重が、ひいては上階ユニット20bの荷重の大部分が作用している。なお、モルタル39には種々の性質のものがあるが、本実施形態では固化時に膨張したり収縮したりすることが比較的少ない無収縮モルタルが用いられている。そのため、モルタル39の固化時においてモルタル容器37の底板部37aに対する下階柱21aの下端部の高さ位置が変動することを抑制することができる。
そして、このような柱間構成において、固定用ボルト47が柱脚プレート41の上方から柱脚プレート41の注入孔43と、ドッキングプレート36の逃がし孔53と、柱頭プレート31の固定用孔33とに挿通され、かつ、モルタル容器37の底板部37aに貫通された状態でナット48と締結されている。これにより、柱頭プレート31と柱脚プレート41とが連結されるため、下階柱21aと上階柱21bとが連結され、ひいては下階ユニット20aと上階ユニット20bとが連結される。また、本実施形態では、モルタル39注入口としての注入孔43を、上下柱を連結する固定用ボルト47を挿通するための固定孔として兼用する構成としている。
固定用ボルト47の周囲には、ゴム製のパッキン51が取り付けられている。このパッキン51は、柱脚プレート41の注入孔43に圧縮状態で挿し込まれている。これにより、流動状態のモルタル39がモルタル容器37に収容されている場合に、上記注入孔43を介してモルタル39が漏れ出すのを防止することができる。なお、このパッキン51は必ずしも設ける必要はない。
柱脚プレート41の調整用孔44には、調整用ボルト49が螺合されている。調整用ボルト49は、その先端側が固化されたモルタル39の内部に埋め込まれ、かつ、モルタル容器37の底板部37aを貫通している。この調整用ボルト49は、施工時に上階柱21bの高さ位置を、つまりは上階ユニット20bの高さ位置を調整するために用いる高さ位置調整手段であり、この調整用ボルト49を左右いずれかに回転させることにより上階柱21bの高さ位置を上下に調整することが可能となっている。なお、調整用ボルト49による高さ調整は、柱脚プレート41の各張出部41aにて行うことが可能であり、高さ調整の際には両方の張出部41aにて高さ調整をしてもよいし、いずれかの一方の張出部41aにて高さ調整をしてもよい。
次に、上記のように構成されたユニット式建物10の施工手順について、二階部分15の床高さの調整手順を中心に図6に基づいて説明する。図6は、ユニット式建物の施工手順を示す説明図である。なお、ここでは二階居室17の床面に床段差が生じないよう床高さを調整する場合について説明する。
まず、一階部分14を構成する各下階ユニット20aを基礎11上における所定位置にそれぞれ設置する。下階ユニット20aの設置後、図6(a)に示すように、隣り合う下階ユニット20aにおける下階柱21a同士の各柱頭プレート31上にドッキングプレート36を取り付ける。具体的には、ドッキングプレート36の孔部52に各柱頭プレート31のスタッキングピン32を挿通させてドッキングプレート36を取り付ける。これにより、上記下階柱21a同士がドッキングプレート36を介して連結されるため、隣り合う下階ユニット20aが互いに所定の位置関係で位置決めされる。
次に、図6(b)に示すように、モルタル容器37をドッキングプレート36上の所定位置に設置する。モルタル容器37は、ボルトやスタッキングピン32等をねじ込むことにより容易に貫通可能とされており、ここではモルタル容器37の底板部37aにスタッキングピン32をねじ込むことにより底板部37aを貫通させ、その貫通状態でモルタル容器37を設置する。
次に、二階部分15を構成する各上階ユニット20bをそれぞれ下階ユニット20aの上方に設置する。この設置は、下階ユニット20aの下階柱21aの上方に、上階ユニット20bの上階柱21bを設置することにより行う。このとき、図6(c)に示すように、下階柱21aのスタッキングピン32を上階柱21bの柱脚プレート41に形成されたピン挿入孔42に挿通させた状態で、上階柱21bを下階柱21aの上方に、詳細にはモルタル容器37の底板部37a上に設置する。これにより、上階柱21bが下階柱21aに対して位置決めされた上で設置されるため、上階ユニット20bが下階ユニット20a上の所定位置に設置される。
上階ユニット20bの設置後、二階居室17を形成する各上階ユニット20bに予め設置されている両床下地材26の高さ位置を合わせる作業を行う。この作業は、水平器等を用い、両床下地材26のうち下方に位置している床下地材26を他方の床下地材26の高さ位置まで上昇させることにより行う。
具体的にはまず、図6(d)に示すように、上昇させる側の上階ユニット20bの柱脚プレート41に形成された調整用孔44に調整用ボルト49を螺合させる。そして、この調整用ボルト49をねじ込むことにより調整用ボルト49をモルタル容器37の底板部37aに貫通させ、かつ、調整用ボルト49の先端部を下階柱21aの柱頭プレート31に突き当てさせる。そして、この突き当て状態で調整用ボルト49をさらに締め、調整用ボルト49の先端部で柱頭プレート31を下方に押すことにより、柱脚プレート41を柱頭プレート31に対して上昇させる。これにより、上階柱21bが上昇し、ひいては上階ユニット20bが上昇する。そして、この上昇作業を両床下地材26の高さ位置が同じとなるまで行う。これにより、隣り合う床下地材26の設置高さを同じとすることができるため、床段差を解消することができる。
次に、図6(e)に示すように、柱脚プレート41の注入孔43より予め流動状態に用意されたモルタル39をモルタル容器37内へ注入する。これにより、モルタル39が、モルタル容器37内に拡がり、柱脚プレート41とモルタル容器37の底板部37aとの間に充填される。なお、モルタル39は粘度が比較的高いため、モルタル容器37の底板部37aにおけるスタッキングピン32及び調整用ボルト49の貫通部分からはモルタル39が漏れ出すことはない。
モルタル39が流動状態にある間に、固定用ボルト47を柱脚プレート41の注入孔43と柱頭プレート31の固定用孔33とに挿通させ、かつ、モルタル容器37の底板部37aに貫通させる。このとき、固定用ボルト47に予め取り付けられたパッキン51が柱脚プレート41の注入孔43に圧縮状態で挿し込まれる。これにより、注入孔43からモルタル39が漏れ出すのを防止することができる。なお、モルタル容器37の底板部37aにおける固定用ボルト47の貫通部分からはモルタル39が漏れ出すことはない。
次に、固定用ボルト47をナット48と締結させる。これにより、柱頭プレート31と柱脚プレート41とが連結されるため、下階柱21aと上階柱21bとが連結され、ひいては下階ユニット20aと上階ユニット20bとが連結される。その後、所定の時間(例えば、約30分)モルタル39を放置させ、モルタル39を固化させる。これにより、上階柱21bの荷重を、つまりは上階ユニット20bの荷重の大部分をモルタル39上に作用させることができるため、床段差を解消した状態を維持することができる。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
調整用ボルト49により下階柱21aに対する上階柱21bの高さ位置を調整することで、上階柱21bと連結された床梁23a,25aの高さ位置を調整することができるようにした。これにより、床梁23a,25a上に支持される床下地材26の高さ位置、ひいてはその上に載置される床仕上材28の床面高さを調整することができるため、二階部分15における隣り合う床仕上材28同士の間で床面高さが異なり床段差が生じていても、その床段差を解消させることができる。また、調整用ボルト49による高さ位置調整により生じた下階柱21aの上端部と上階柱21bの下端部との間の柱間隙間にはモルタル39を介在させたため、上階柱21bの荷重(自重)を、ひいては上階ユニット20bの荷重の大部分をモルタル39の上に作用させることができる。これにより、調整用ボルト49に過大な負荷をかけることなく、上階柱21bの高さ位置を安定して維持させることができるため、床段差を解消させた状態を長期に渡って維持することができる。
上階柱21bの柱脚プレート41を囲むようにしてモルタル容器37の囲み板部37bを設けたため、囲み板部37bの上端部が柱脚プレート41の下面よりも上方に位置している。したがって、モルタル容器37に流動状態のモルタル39をその液面(上面)高さが柱脚プレート41の下面高さと同じ高さとなるまで注入することにより、モルタル39をモルタル容器37からオーバーフローさせることなく柱間隙間に充填することができる。よって、下階柱21aや上階柱21b等周囲の部材を著しく汚すことなくモルタル39を柱間隙間に充填させることができる。
下階柱21aの上端部に固定された柱頭プレート31に対する上階柱21bの下端部に固定された柱脚プレート41の高さ位置を柱脚プレート41の張出部41aに設けられた調整用ボルト49により調整することで、下階柱21aに対する上階柱21bの高さ位置を調整できるようにした。これにより、上階柱21bの高さ位置を直接調整する場合と比べ、高さ位置の調整作業を容易に行うことができる。
柱脚プレート41の注入孔43を、流動状態のモルタル39をモルタル容器37に注入するための注入口とした。これにより、注入孔43からモルタル39をモルタル容器37に注入することにより、モルタル39をモルタル容器37の底板部37aと上階柱21bの柱脚プレート41との間に、すなわち柱間隙間に充填させることができる。したがって、モルタル39を柱間隙間に直接充填する場合と比べ、充填作業の容易化を図ることができる。
隣り合う下階ユニット20aの各下階柱21aを柱頭部にて連結するドッキングプレート36の上方にモルタル容器37を設置した。したがって、ドッキングプレート36が各下階柱21a上に跨って設けられているにもかかわらず、各下階柱21aの上方における各々の柱間隙間に対してモルタル容器37をそれぞれ個別に設置することができる。これにより、複数の柱に共通にドッキングプレート36が設けられる構成であっても、上階柱21bの高さ位置調整は各柱21bごとに実施することができる。また、モルタル39を柱間隙間に充填する際には、モルタル39を充填する側の柱間隙間に設けられたモルタル容器37にのみモルタル39を注入すればよいため、モルタル39の注入量を少なくすることができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、モルタル容器37によりモルタル39が下階柱21aの上端部と上階柱21bの下端部との間の柱間隙間から漏れ出るのを防止したが、モルタル39が柱間隙間から漏れ出るのを防止する構成は必ずしもこれに限定されない。例えば、モルタル容器37を設ける代わりに、漏れ止め用テープを柱頭プレート31の側面と柱脚プレート41の側面とを跨ぐようにして各プレート31,41の外周全域に渡って貼り付け、これによりモルタル39が柱間隙間から漏れ出るのを防止してもよい。また、この場合、モルタル容器37を用いてモルタル39を柱間隙間に充填させることができないため、モルタル39を柱間隙間に直接注入することによりモルタル39を充填させてもよい。
(2)上記実施形態では、上階柱21bの柱脚プレート41の張出部41aに設けられた調整用ボルト49により柱脚プレート41の高さ位置を調整することで上階柱21bの高さ位置を調整する構成としたが、上階柱21bの高さ位置を調整するための構成は必ずしもこれに限定されることはない。例えば、モルタル容器37を柱間隙間に設けない構成とする場合には、柱間隙間に、詳細にはドッキングプレート36と上階柱21bの柱脚プレート41との間に、倍力装置としての梃子装置を設け、その梃子装置により上階柱21bの高さ位置を調整するようにしてもよい。梃子装置は、全体としては薄板状に形成されており、具体的には、その一端が柱間隙間に設けられ作用点としての作用部を構成し、他端が柱間隙間から外側に突出するように設けられ力点としての力部を構成している。そして、梃子装置は、ドッキングプレート36端縁部において回動可能に設けられ、力部を下方に押すことによりドッキングプレート36端縁部を支点として作用部を上方に移動させることができるようになっている。したがって、力部を下方に押すことにより上階柱21bの柱脚プレート41を上方に押し上げることができるため、上階柱21bの高さ位置を調整することができる。また、梃子の原理により、重量物である上階柱21bを比較的小さい力で上方に持ち上げることができるため、高さ調整作業の負荷軽減を図ることが期待できる。
(3)上記実施形態では、下階柱21aの上端部と上階柱21bの下端部との間の柱間隙間に凝結材としてモルタル39を充填させる構成としたが、柱間隙間に充填させる凝結材はモルタル39に限定されることはなく、例えばコンクリート等その他のものであってもよい。また、無収縮性の凝結材として、モルタル以外のものを用いてもよい。
(4)上記実施形態では、モルタル容器37を底板部37aが上下各柱のプレート31,41間に挟まれるようにして設けたが、これを変更する。すなわち、上下各柱21を囲むようにしてモルタル容器を設ける構成とする。具体的には、本構成のモルタル容器は、下階柱21aの上端部(柱頭プレート31)よりも下方に設けられ、同下階柱21aを囲んだ状態で水平方向に延びる環状の底板部と、その底板部の外周縁部に形成され、少なくとも上階柱21bの柱脚プレート41に達する高さを有する囲い板部とを有する構成となっている。ここで、モルタル容器が柱ごとに設けられる場合には、隣り合う柱間でドッキングプレート36が存在する部位において、囲い板部が、ドッキングプレート36に達する高さ位置まで設けられる。ただし、モルタル容器が、ドッキングプレート36で連結される複数の柱に共通に設けられることも可能である。なお、環状の底板部及び囲い板部は複数に分割可能になっており、分割した状態で柱連結部に装着されて一体化されるとよい。
(5)上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用することができる。