2重構成による系間照合による装置故障の検出
実施の形態1を説明する前に、2重構成の系間照合のための構成により地上子情報読取装置の装置故障検出を実現する場合における、当該構成およびそのような構成に内在する課題について説明する。
一般に、列車保安装置では、装置を2重構成とし、装置の出力データならびに処理経過データをお互いに比較照合し、出力データならびに処理経過データが一致すれば装置が正常に動作している、逆に出力データならびに処理経過データが不一致であればどちらか一方の装置が故障しているとして、装置の健全性をチェックする故障検出機能が広く用いられている。この様に、装置故障の検出手段として2重構成の系間照合で検出する方式は有効である。
図16は、上述のような2重構成の系間照合のための構成によって装置故障検出機能を特許文献1に適用した場合の装置構成の例図である。地上子を検知するために車上子から送信する送信信号を処理部Aが出力する。車上子を介して受信される検知信号は処理部Aおよび処理部Bにおいて受信され、受信された検知信号は、参照信号で直交検波され、検波データの振幅値と位相値を解析して地上子の存在を検知する。
ここで処理部Bの参照信号に、処理部Aで生成された参照信号を用いた場合の課題を述べる。たとえば、何らかの要因で処理部Aの参照信号に故障が生じた場合、処理部Aでは故障した参照信号で直交検波した検波データAは誤った結果であり、同様に処理部Aの参照信号を用いる処理部Bでも検波データBは誤った結果である。処理部Aと処理部Bが同様な誤った検波データAおよびBであるため、地上子検知も誤った結果となるが、系間照合では誤った地上子検知結果で照合が一致するため、処理部Aの参照信号に生じた故障を検出することができない。そのため故障が内在化し、地上子を誤検知し誤った地上子情報が出力されるなど、装置はフェールセーフ機能を発揮でなくなる。
上記のような故障の内在化を防ぐため、処理部Bにおける直交検波に用いる参照信号は処理部Bで生成した参照信号を用い、処理部Aとは独立した直交検波処理、地上子検知処理とする必要がある。しかし一方で、処理部Aと処理部Bで独立的に参照信号が生成されるために処理部Aの参照信号と処理部Bの参照信号は非同期の信号となり、以下に記載する新たな課題が生じる。
処理部Aが車上子から受信する検知信号および直交検波に用いる参照信号は、もともと同じ信号なのでお互いに信号は同期しているが、処理部Bが車上子から受信する検知信号と処理部Bで生成した参照信号とは非同期となる。検知信号と参照信号とが非同期となる処理部Bでは、直交検波後の検波データの位相値が変動(位相が回転)するために、振幅値と位相値を用いた閾値判定で地上子を正しく検知することができない。
さらには、処理部Bの検波データの位相値が常に変動するので、処理部Aと処理部Bの検波データ(検波データAおよびB)による系間照合では、データの不一致が頻繁に発生する。そのため、処理部Aと処理部Bが正常に機能している場合でも、装置故障と判定してしまい、故障検出機能が正常に動作しないという課題がある。
以上、装置故障の検出を2重構成の系間照合で実現する場合の課題について説明した。以下、本発明の実施の形態1による地上子情報読取装置について説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による地上子情報読取装置100の構成を示すブロック図である。列車に搭載される地上子情報読取装置100は、車上子200と接続され、地上子400が保持する地上子情報の読み取り処理を行う処理部A11aと、同じく地上子情報の読み取り処理を行う処理部B11bと、処理部A11aと処理部B11bを同期する同期手段21と、処理部A11aと処理部B11bから出力される地上子情報を比較照合し装置故障を検知する照合/監視部31を備える。地上子情報読取装置100は地上子400から読み取った地上子情報を列車制御装置300へ出力する。地上に設置される地上子400は、コイルとコンデンサで所定の共振周波数を有する共振回路を構成し、当該共振周波数と所定の地上子情報Aとが対応付けられ設定される。
図1を参照すれば、処理部A11aは発振部A13aと受信部A15aを備え、発振部A13aにおいては、デジタル発振器A133aが、クロック生成器A131aから供給される動作クロック(クロック信号A)に基づき、地上子を検知するための送信信号を生成する。送信信号は増幅器で電力増幅され、車上子200の1次側コイルから地上へ送信される。
車上子200は、1次側コイルと2次側コイルで構成され、1次側コイルと2次側コイルは磁気的に弱く結合している。他方、地上子400は、コイルとコンデンサで共振回路を構成する。この地上子400の共振周波数には、たとえば73k、80k、85k、90k、95k、103k、108.5k、123k、130k[Hz]が含まれ、共振周波数は地上子情報(例えば、信号機が現示する色)に従って設定される。ここで示した地上子400の共振周波数は一例であり、設定される周波数は鉄道事業者によって一般には異なる。
発振部A13aから送信された送信信号は、車上子200の2次側コイルから受信され、処理部A11aの受信部A15aで、受信した検知信号の振幅成分と位相成分を解析して地上子が保持する地上子情報を読み取る。受信部A15aは、増幅器、直交検波器A153a、地上子判定手段A151aを備え、受信した検知信号は増幅器を介して直交検波器A153aの入力となる。直交検波器A153aではデジタル発振器A133aが生成した送信信号を参照信号として入力し、当該参照信号で、受信した検知信号を直交検波する。直交検波器A153aは直交検波の結果出力である検波データAは、地上子判定手段A151aへ出力される。
他方、処理部B11bは、発振部B13bと受信部B15bを備える。受信部B15bは、増幅器、直交検波器B153b、地上子判定手段B151bで構成され、処理部A15aの発振部A13aが送信した送信信号によって車上子200の2次側コイルから受信される検知信号を、増幅器を介して直交検波器B153bへの入力とする。直交検波器B153bでは、処理部B11bの発振部B13bが生成した参照信号を用いて、検知信号を直交検波する。直交検波器B153bは直交検波の結果出力である検波データBを地上子判定手段B151bへ出力する。処理部Bの発振部13bは、クロック生成器131b、デジタル発振器B133bを備え、クロック生成器131bから供給される動作クロック(クロック信号B)に基づいてデジタル発振器B133bが参照信号を生成する。
このとき、同期手段21は、処理部Aの動作信号である動作クロックパルス(クロック信号A)を、クロック生成器A131aから入力し、また処理部Bの動作信号である動作クロックパルス(クロック信号B)を、クロック生成器131bから入力し、処理部B11bのデジタル発振器B133bに対し、当該発振器B133bを処理部A11aのデジタル発振器A133aに同期させるための調整信号(リセット信号、位相増分信号(後述))を出力する。これにより処理部B11bは処理部A11aに同期し、デジタル発振器A133aとデジタル発振器B133bから出力される参照信号A(送信信号)と参照信号Bとは同期した信号波形を示すようになる。
処理部A11aの地上子判定手段A151aは、検波データAについてその振幅値と位相値の解析を行い、予め設定した所定の閾値と比較することで、地上子の検知を行い、地上子400に設定された地上子情報を読み取る。地上子判定手段A151aは、読み取った地上子情報を地上子情報Aとして照合/監視部31と列車制御装置300へ出力する。
同じく、処理部B11bの地上子判定手段B151bは、検波データBについてその振幅値と位相値の解析を行い、予め設定した所定の閾値と比較することで、地上子の検知を行い、地上子400に設定された地上子情報を読み取って、照合/監視部31と列車制御装置300へ地上子情報Bとして出力する。
次に、車上子200が地上子400上を通過する際に車上子200の2次側コイルから出力される検知信号の変化について説明する。車上子200が地上子400上を通過するよりも前、つまり、車上子200と地上子400が電磁結合していない状態では、車上子200の1次側コイルと2次側コイルが磁気的に弱く結合しているので、車上子200の2次側コイルから出力される検知信号の振幅レベルは小さい。一方、車上子200が地上子400上を通過している間、つまり、車上子200と地上子400が電磁結合した状態では、車上子200のコイルと地上子400内の共振コイルが強く結合し、検知信号のうち地上子400の共振周波数に対応する検知信号が、車上子200の2次側コイルから強く、また、検知信号の位相が変化して出力される。
この様に、車上子200が地上子400上を通過する際に、車上子200の2次側コイルから出力される検知信号は、その信号強度と信号位相が変化する。そのため、地上子判定手段A151aと地上子判定手段B151bは、直交検波器AおよびB(153a、b)から出力される検波データAおよびBの振幅値と位相値を解析し、予め定めた閾値で判定することにより地上子400を検知することができる。
照合/監視部31では、処理部A11aからの地上子情報Aと、処理部B11bからの地上子情報Bを比較照合する。この比較照合で地上子情報AおよびBの内容が一致した場合、照合/監視部31は、処理部AおよびB(11a、b)の処理動作は健全であると判断する。逆に、地上子情報AおよびBの内容に不一致が存在する場合には、照合/監視部31は、処理部Aの処理動作および処理部Bの処理動作の少なくともいずれか一方に異常があると判断する。照合/監視部31での照合結果は、列車制御装置300に出力する(故障検知信号)。ここでは地上子情報を系間で比較照合する構成を説明したが、照合/監視部31は、処理部AおよびB(11a、b)の直交検波器AおよびB(153a、b)が出力する検波データAおよびBを比較照合する構成としてもよい。
列車制御装置300は、地上子から読み取った地上子情報AおよびBと、照合/監視部31が出力する照合結果(故障検知信号)を入力とする。列車制御装置300は、地上子情報AおよびBの少なくともいずれか一方をもとに列車が衝突または脱線事故に至らないように、列車ブレーキを制御し列車の安全を確保すると共に、照合結果(故障検知信号)をもとに地上子情報AおよびBの健全性を確認する。
図2は、デジタル発振器A133aのブロック図である。本図を参照し、処理部A11a内のデジタル発振器A133aの構成について説明する。処理部A11aのデジタル発振器A133aには、デジタル信号処理により各種信号を生成するDirect Digital Synthesizer(DDS)を適用することができる。その構成は、出力する波形データを予めメモリ43aに記憶しておき、アドレス・カウンタA41aは、メモリ43aのメモリ・アドレスを指定し、波形データをサイクリックに読み出すことで出力波形を生成する。アドレス・カウンタA41aは位相増分信号とリセット信号を入力とし、加算器45aと遅延器47aで構成される。アドレス・カウンタA41aのアドレス値は位相増分信号に応じて増加し、リセット信号を受けることでカウンタ値がゼロクリアされる。位相増分信号とリセット信号は、後述する同期手段21にて生成され、処理部A11aのデジタル発振器A133aと処理部B11bのデジタル発振器B133bの信号同期に用いられる。図2ではメモリ43aに記録する波形データの一例として、地上子の共振周波数に対応する狭帯域信号(正弦波)45aを示している。デジタル発振器A133aは、地上子400の共振周波数に対応する信号を生成するが、地上子400に設定される共振周波数は、たとえば73kHz、80kHz、85kHz、90kHz、95kHz、103kHz、108.5kHz、123kHz、130kHzなどが使用される。
出力波の周波数と、クロック生成器A131aから供給される動作クロック周波数、位相増分信号、メモリ43aのメモリサイズ(メモリ長)の関係を(式1)に示す。(式1)が示すように、動作クロック周波数とメモリサイズを一定とした場合、位相増分信号によって示される位相増加量を制御することで、出力波の周波数を任意の値に設定することができる。
なお、ここでは処理部A11aのデジタル発振器A133aについて説明したが、処理部B11bのデジタル発振器B133bの構成も同じ構成である。
処理部A11aのデジタル発振器A133aが生成した送信信号は、増幅器で電力増幅され、車上子200から送信される。送信された送信信号は、車上子200の2次側コイルから受信され、増幅器を介して直交検波の入力(検知信号)となる。
つぎに直交検波器A153aの構成について説明する。
図3は、直交検波器A153aのブロック図である。直交検波器A153aは、車上子200の2次側コイルを介して受信した検知信号と、処理部A11aのデジタル発振器A133aで生成した参照信号を入力信号とする。また直交検波器B153bは、受信した検知信号と処理部B11bのデジタル発振器B133bで生成した参照信号を入力とする。図3は処理部A11aの直交検波器A153aを例にとり、直交検波器の構成を説明する。処理部B11bの直交検波器B153bも同じ構成である。
直交検波器A153aは、受信した検知信号とデジタル発振器で生成した参照信号を乗算器51で乗算する。乗算した波形の高調波成分をローパスフィルタ55で除去しIn−Phase成分(I成分)の信号(I成分データ)を出力する。また移相器59で90度の位相回転を受けた参照信号と受信した検知信号を、乗算器53で乗算し高調波成分をローパスフィルタ57で除去しQuadrature−Phase成分(Q成分)の信号(Q成分データ)を出力する。直交検波器A153aは、受信した検知信号を参照信号で検波し、In−Phase成分とQuadrature−Phase成分の信号(I成分データおよびQ成分データ)を検波データAとして、地上子判定手段A151aへ出力する。
地上子判定手段A151aは、直交検波器A153aが出力するIn−Phase成分とQuadrature−Phase成分の信号を検波データAとして入力し、振幅と位相を解析する。振幅値は(式2)で、位相値は(式3)で算出される。
図4は、地上子判定手段A151aが地上子の判定の際の振幅および位相の閾値との関係を示す図である。図4においては、横軸がIn−Phase成分、縦軸がQuadrature−Phase成分を示した2次元平面が示されており、原点0からの距離が振幅を示し、原点0に対する方向(例えば、I成分軸となす角として定量化される。)が位相を示している。ここで車上子200が地上子400上にない場合でのIn−Phase成分とQuadrature−Phase成分でプロットした点がプロット点65である。車上子200が地上子400上にあり結合した場合での地上子共振周波数に対応する検知信号のIn−Phase成分とQuadrature−Phase成分をプロットしたものがプロット点67となる。地上子検知の判定に用いる閾値は、閾値61のように2次元平面上に設定される。閾値61によって仕切られた斜線領域63が地上子の判定領域である。車上子200と結合した地上子400の共振周波数に対応する検知信号のIn−Phase成分とQuadrature−Phase成分をプロットしたプロット点が、上記の地上子との結合を判定する斜線領域63に入った場合は、車上子200が地上子400と結合状態にあると判断し、検知信号の周波数が地上子400に設定された共振周波数であると判断する。
つぎに、処理部A11aと処理部B11bを同期させる同期手段21について説明する。
図5は、同期手段21の構成を示すブロック図である。同期手段21は、位相ずれ検出部71と位相調整部79で構成される。位相ずれ検出部71はカウンタA73a、カウンタB73b、比較器75、ずれ判定器77を備え、位相調整部79は位相増分設定器81とリセット手段83を備え、リセット手段83は、起動確認手段85とリセット信号生成器87を備える。
図5において、同期手段21は、機能的には大きく2つの構成要素からなり、ひとつは、デジタル発振器AおよびB(133a、b)の出力波形間の位相オフセットを解消する機能ブロックであるリセット手段83と、もう1つは、位相ずれ検出部71と位相増分設定器81とで構成され、デジタル発振器AおよびB(133a、b)の出力波形間の周波数の差(周波数偏差)を調整する機能ブロックである。
まず、デジタル発振器AおよびB(133a、b)の位相オフセットを解消するリセット手段83の構成と、その働きについて説明する。デジタル発振器AおよびB(133a、b)の位相オフセットは、処理部Aのデジタル発振器A133aと処理部Bのデジタル発振器B133bが信号波形の生成を開始するまでの起動タイミングの違いに起因する位相ずれと、デジタル発振器AおよびB(133a、b)の周波数偏差によって蓄積した出力信号波形の位相ずれである。
リセット手段83は、処理部A11aのデジタル発振器A133aと処理部B11bのデジタル発振器B133bのアドレス・カウンタ(41a等)を同時にリセットクリアすることで、処理部A11aと処理部B11bの送信信号ならびに参照信号AおよびBの位相オフセットを解消する。リセット手段83は起動確認手段85、リセット信号生成器87を備える。起動確認手段85は、処理部A11aのデジタル発振器A133aと、処理部B11bのデジタル発振器B133bが起動したことを検出し、リセット信号生成器87に検出結果を出力する。リセット信号生成器87は、処理部A11aのデジタル発振器A133aと、処理部B11bのデジタル発振器B133bへリセット信号を出力する。
起動確認手段85は、処理部A11aのクロック生成器A131aの動作クロックパルス(クロック信号A)と、処理部B11bのクロック生成器131bの動作クロックパルス(クロック信号B)を入力とし、これらの動作クロックパルスを用いて、デジタル発振器AおよびB(133a、b)が起動するまでの時間を予め設定したタイマーを動作させた後、デジタル発振器AおよびB(133a、b)の起動を確認する。また起動確認手段85の異なった構成として、デジタル発振器の出力波形を入力し出力波形が生成されていることを直接確認する手段(不図示)もある。
図6は、リセット手段83がする、位相オフセットの解消を説明するタイムチャートである。図6においては、リセット手段83が出力するリセット信号の波形、処理部A11aのデジタル発振器A133aのアドレス・カウンタA41aがカウントするアドレス値、デジタル発振器A133aの出力波形、処理部B11bのデジタル発振器133bのアドレス・カウンタB(不図示)がカウントするアドレス値、デジタル発振器B133bの出力波形が例示される。
起動確認手段85で、デジタル発振器A133aとデジタル発振器B133bが起動したことを確認し、リセット信号生成器87からリセット信号が出力されたタイミングをポイントTRSTとして示す。リセット手段83から出力されたリセット信号で、デジタル発振器A133aとデジタル発振器B133bのアドレス・カウンタAおよびBがリセットクリアされ、両アドレス値はゼロからカウントを再開する。
この様に、処理部A11aのデジタル発振器A133aと処理部B11bのデジタル発振器B133bのアドレス・カウンタAおよびBを同時にリセットクリアすることで、処理部A11aと処理部B11bの送信信号ならびに参照信号AおよびBの位相オフセットを解消し、処理部A11aのデジタル発振器A133aが出力する送信信号および参照信号Aに、処理部B11bのデジタル発振器B133bが出力する参照信号Bを同期させることができる。
つぎに、デジタル発振器AおよびB(133a、b)の出力の周波数偏差を調整する位相ずれ検出部71と位相増分設定器81の構成と、その働きについて説明する。デジタル発振器AおよびB(133a、b)の出力波形の周波数偏差の原因は、処理部A11aのクロック生成器A131aと処理部B11bのクロック生成器131bが出力する動作クロック(クロック信号AおよびB)のクロック周波数の偏差である。位相ずれ検出部71は、クロック生成器A131aとクロック生成器131bのクロック(クロック信号AおよびB)間のずれを検出し、そのずれ量をもとに位相増分設定器81が処理部Bのデジタル発振器B133bの位相増分を調整することで、処理部A11aと処理部B11bの送信信号ならびに参照信号AおよびB間の周波数偏差を解消する。これにより、処理部A11aのデジタル発振器A133aが出力する送信信号ならびに参照信号Aに、処理部B11bのデジタル発振器B133bが出力する参照信号Bを同期させることができる。
位相ずれ検出部71は、カウンタA73aで処理部A11aのクロック生成器A131aからの動作クロックパルス数をカウントし、同じくカウンタB73bで処理部B11bのクロック生成器131bの動作クロックパルス数をカウントする。比較器75は、カウンタA73aとカウンタB73bのカウント値AおよびBを入力とし、その差分値を出力する。ここではカウンタB73bのカウント値BからカウンタA73aのカウント値Aを引き算する構成とする。
ずれ判定器77は、比較器75からの差分値を入力し、その差分値の絶対値が1より大きければ(差分値が+1または−1で)、クロック生成器A131aとクロック生成器131bの間にクロックずれが生じたことを検出する。差分値がゼロであれば、動作クロック(クロック信号AおよびB)は、1クロック未満のクロックずれに収まっており、クロックずれが生じていないと判定する。また、ずれ判定器77は、クロックずれを検出すると、カウンタA73aとカウンタB73bに対してカウンタリセット信号を出力してカウント値をゼロクリアする。位相増分設定器81は、ルックアップテーブルの構成とし、ずれ判定器77が出力するクロックずれ量に対して、デジタル発振器(例えば、デジタル発振器B133b)に設定する位相増分量Bを出力する。前述したようにデジタル発振器の出力信号周波数は、(式1)に示す関係で設定され、デジタル発振器が地上子の共振周波数に対応する送信信号(周波数)を生成できるように位相増分には予め定められた値が設定される。このときの位相増分をΔθとすると、位相増分設定器81を構成するルックアップテーブルには、クロックずれ量「ゼロ」には、位相増分量BとしてΔθ、クロックずれ量「+1」には、位相増分量Bとして「ゼロ」、クロックずれ量「−1」には、位相増分量Bとして「2×Δθ」が設定されればよい。なお、位相増分量Aは、コンスタント(Δθ)であってよい。
図7は、位相ずれ検出部71と位相増分設定器81におけるクロックずれの検出から周波数偏差の解消までを説明するタイムチャートである。図7において、ずれ判定器77の出力信号、処理部A11aのデジタル発振器133aの出力波形、処理部B11bのデジタル発振器133bの出力波形が例示される。
図7では、処理部B11bのクロック生成器131bが処理部A11aのクロックに対して、クロックが進んでいる状態である。(クロック周波数でクロック生成器131bがクロック生成器A131aよりクロック周波数が高い状態)。このときデジタル発振器B133bの出力信号は、デジタル発振器A133aの出力波形に対して、信号の位相差dPで示すように、位相が進んでいる状態である。ずれ判定器77の出力信号は、クロックずれが検出されると、その出力値がタイミングポイントTPにおいてクロックずれ量「+1」に変化する。このずれ判定器77の出力信号(位相増分設定信号)を受けて、位相増分設定器81はルックアップテーブルからクロックずれ量「+1」に対する位相増分量B「ゼロ」値を読み出し、処理部B11bのデジタル発振器B133bに動作クロックの1クロックだけ位相増分量B「ゼロ」を設定する。
位相増分量Bを「ゼロ」としたことで、デジタル発振器B133bのアドレス値は変化せず、タイミングポイントTPで示すように、デジタル発振器B133bの出力波形の位相の変化を遅らせる(区間Z)。つぎの動作クロックでは、位相増分量Bをもとの「Δθ」に戻すことで、デジタル発振器B133bのアドレス値がカウントアップを再開し、位相変化を伴った出力波形の出力が再開される。
これにより、デジタル発振器A133aの出力波形とデジタル発振器B133bの出力波形の443を同期することができる。
逆に、処理部B11bのクロック信号Bが、処理部A11aのクロック信号Aに対して遅れる状態では、ずれ判定器77が出力するクロックずれ量は「−1」となり、位相増分設定器81が、デジタル発振器B133bの位相増分量Bに「2倍のΔθ」を1クロック分だけ設定する。これにより、デジタル発振器B133bの出力波形を、1クロック分だけ余計に進めることができ、よって出力波形の遅れが解消され、デジタル発振器A133aの出力波形とデジタル発振器B133bの出力波形を同期させることができる。
この様に、クロック生成器A131aとクロック生成器131bのクロックずれを検出し、そのずれ量をもとに処理部Bのデジタル発振器B133bの位相増加量(位相増分量B)を調整することで、処理部Aのデジタル発振器A133aが出力する送信信号ならびに参照信号Aに、処理部Bのデジタル発振器B133bが出力する参照信号Bを同期させることができる。
図8は、同期手段21がする同期処理の動作を説明するフローチャートである。
ステップS101において、同期手段21は、リセット手段83の起動確認手段85でデジタル発振器AおよびB(133a、b)の起動を確認する。確認されれば、処理は、ステップS103へ進む。
つぎに、ステップS103において、処理部A11aと処理部B11bのデジタル発振器AおよびB(133a、b)を同時にリセットするためのリセット信号を、リセット手段83のリセット信号生成器87で生成し、処理部A11aと処理部B11bのデジタル発振器AおよびB(133a、b)のアドレス値をリセットクリアする。
つぎに、ステップS105において、位相ずれ検出部71で処理部A11aのクロック生成器A131aと処理部B11bのクロック生成器131bのクロックずれを検出する。検出すると、処理はステップS107へ進む。
つぎに、ステップS107において、検出されたクロックのずれは、クロック信号Bがクロック信号Aよりも進んでいる状態であるか、クロック信号Bがクロック信号Aよりも遅れている状態であるかをずれ判定器77で判定する。クロックのずれ量がクロック信号Bの「進み」の場合は、ステップS109aに分岐し、位相増分設定器81にて処理部B11bのデジタル発振器133bに設定する位相増加量(位相増分量B)をゼロに設定する。逆に、クロックのずれ量がクロック信号Bの「遅れ」の場合は、ステップS109bに分岐し、位相増分設定器81にて処理部B11bのデジタル発振器133bに設定する位相増加量(位相増分量B)を「2×Δθ」に設定する。クロックずれ量が「進み」の場合に実行されるステップS109aも、クロックずれ量が「遅れ」の場合に実行されるステップS109bも、処理実行後、ステップS111へ移行する。
ステップS111においては、動作クロックの1クロックパルス後に、位相増分量AおよびBを、通常の値である「Δθ」の値に設定する。位相増分量AおよびBを「Δθ」に設定した後、ステップS105にもどり、同様の処理を繰り返し行う。
以上のように、この実施の形態1によれば、同期手段21のリセット手段83で、処理部A11aのデジタル発振器133aと処理部B11bのデジタル発振器133bのアドレス・カウンタAおよびBを同時リセットすることで、位相オフセットを解消することができ、また同期手段21の位相ずれ検出部71と位相増分設定器81で、処理部A11aのクロック(クロック信号A)と処理部B11bのクロック(クロック信号B)の動作クロックずれを検出し、デジタル発振器に設定する位相増分量AおよびBを調整することでクロック偏差に起因する出力信号の周波数偏差を解消することができる。
このように、位相オフセット誤差と出力信号の周波数偏差を解消することで、処理部A11aと処理部B11bのデジタル発振器AおよびB(133a、b)を同期することができるので、処理部B11bでは、直交検波の結果出力である検波データBにおける位相が変動することなく、地上子判定手段B151bで地上子400を正しく検出することができる。さらに照合/監視部31で、処理部A11aからの検波データAと処理部B11bからの検波データBに基づき、正常に比較照合することができる。よって、装置の健全性を正しくチェックすることができ、装置安全性(フェールセーフ性能)を確保できるという効果が得られる。
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2における地上子情報読取装置の位相調整手段の構成を示すブロック図である。この位相ずれ検出部71mは、実施の形態1での位相ずれ検出部71と比較し、動作監視手段91を追加した構成である。
図9において、位相ずれ検出部71mの動作監視手段91は、カウンタA73aが出力するカウント値Aと、カウンタB73bが出力するカウント値Bと、ずれ判定器77が出力するクロックずれ検知信号を入力として、処理部A11aのクロック生成器A131aと処理部B11bのクロック生成器131bの健全性をチェック(故障検出)し、クロック生成器A131aもしくはクロック生成器131bに異常が生じた際に、照合/監視部31にクロック故障検知信号を出力する。照合/監視部31は、クロック故障検知信号を受け取ると、本実施の形態の地上子情報読取装置100に故障が発生したことを、列車制御装置300に出力する。列車制御装置300は、列車を安全に停止させるなど、列車事故が発生しないように安全処置を行う。
ここで、クロックずれ検知信号は、上述した位相増分設定信号の生成過程と同様に、比較器75からの差分値を入力し、その差分値の絶対値が1より大きければ(差分値が+1または−1で)、オンになり、その他の場合にオフになるような二値信号でよい。
動作監視手段91は、入力したカウンタA73aのカウント値Aと、カウンタB73bのカウント値Bを、ずれ判定器77のクロックずれ検知信号をトリガとして、予め定めた故障判定値との比較を行う。この故障判定値は、クロックのクロック周波数fclkと、クロック許容偏差Δfから、fclk/(2×Δf)で算出した値を設定する。
カウンタA73aのカウント値Aと、カウンタB73bのカウント値Bが、この故障判定値より小さい場合は、処理部A11aのクロック生成器A131a若しくは処理部B11bのクロック生成器131bが出力する動作クロックの周波数が、クロックの周波数許容偏差を超えるクロック周波数を出力する故障した状態である、と判定される。
たとえば、処理部A11aのクロック生成器A131aが、クロック周波数fclk+Δfのクロック許容偏差を超える高いクロック周波数でクロックパルス(クロック信号A)を出力すると、正常時より短い時間間隔でクロックずれが検出され、正常な処理部B11bのクロック生成器131bが出力するクロックパルス数をカウントするカウンタB73bの出力値(カウント値B)は、故障判定値より小さい値になる。逆にクロック生成器A131aが、クロック周波数fclk−Δfのクロック許容偏差を超える低いクロック周波数では、正常時より短い時間間隔でクロックずれが検出され、正常な処理部B11bのクロック生成器131bが出力するクロックパルス数をカウントするカウンタB73bの出力値(カウント値B)は、故障判定値より小さい値になる。
以上のように、この実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、さらに、処理部A11aのクロック生成器A131aと処理部B11bのクロック生成器131bが、クロック周波数の許容偏差を超えるようなクロック周波数を出力する故障を起こした際、クロック故障を検出することができる。このようなクロック故障が生じた状態では、車上子200が、地上子400の共振周波数に対応しない送信信号(周波数)を送信するために、地上子情報を読み取ることができない。また本来検知する地上子とは異なった地上子を検知し、誤った地上子情報を出力する危険側故障の内在化を防ぎ、装置の安全性を高める効果を得ることができる。
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3における地上子情報読取装置100mの構成を示すブロック図である。列車に搭載される地上子情報読取装置100mは、車上子200と接続され、地上子400が保持する地上子情報の読み取り処理を行う処理部A11aと、同じく地上子情報の読み取り処理を行う処理部B11bと、処理部A11aと処理部B11bを同期する同期手段21と、処理部A11aと処理部B11bから出力される検波データを比較照合する照合/監視部31を備える。
図10において、処理部B11bは発振部B13bと受信部B15bを備える。発振部B13bは、クロック生成器131bとデジタル発振器B133bを備え、受信部B15bは、増幅器、直交検波器B153b、地上子判定手段B151bを備える。発振部B13bのデジタル発振器B133bは、同期手段21mから供給される動作クロック(図中の同期クロック信号)をもとに参照信号を生成し、直交検波器B153bへ出力する。直交検波器B153bは、車上子200の2次側コイルから受信される検知信号を、増幅器を介して入力し、参照信号で直交検波し、その結果出力である検波データBを地上子判定手段B151bへ出力する。直交検波器B153bは、検波データBを照合/監視部31へ送り、照合/監視部31は、当該検波データBに基づいて照合/監視を行ってもよい。なお、車上子200、地上子400、処理部A11a、照合/監視部31、地上子判定手段B151b、列車制御手段の構成は、上記実施の形態1で説明した構成と同じでよい。
図11は、実施の形態3における同期手段21mの構成を示すブロック図である。この同期手段21mは、位相同期回路93とでリセット信号生成器87を備える。
位相同期回路93は、処理部A11aのクロック生成器A131aからの動作クロック(クロック信号A)と、処理部B11bのクロック生成器131bからの動作クロック(クロック信号B)を入力として、処理部A11aのクロック生成器A131aの動作クロック(クロック信号A)に同期した動作クロックパルス(図中の同期クロック信号)を出力する。
この様に、ある入力クロックパルス(例えば、クロック信号A)をもとに、別のクロック(クロック信号B)から、前者の位相に同期したクロックパルス(同期クロック信号)を出力するものとして、Phase−Locked Loop回路(PLL回路)がある。位相同期回路93はPLL回路によって構成されればよい。位相同期回路93によって、処理部A11aのクロック生成器A131aの動作クロックパルス(クロック信号A)と、位相同期回路93から出力される動作クロックパルス(同期クロック信号)は、常にクロックパルスの位相が同期した状態となる。
これにより、処理部A11aのデジタル発振器A133aが生成する送信信号すなわち参照信号Aと、処理部B11bのデジタル発振器B133bが生成する参照信号Bを同期させることができる。なお、他方の入力クロックパルス(クロック信号B)をもとに、クロック信号Aからクロック信号Bに同期したクロックパルス(同期クロック信号)を出力するようにしてもよい。この場合も、参照信号Aと、参照信号Bを同期させることができる。
また位相同期回路93は、入力のクロックパルスに対して、出力のクロックパルスの位相が同期すると、ロック信号をリセット手段83のリセット信号生成器87へ出力する。リセット信号生成器87は、位相同期回路93のロック信号をもとに、処理部A11aのデジタル発振器A133aと処理部B11bのデジタル発振器B133bのアドレス・カウンタを同時リセットするリセット信号を生成して出力する。
この様に、処理部A11aのデジタル発振器A133aと処理部B11bのデジタル発振器B133bのアドレス・カウンタAおよびBを同時にリセットクリアすることで、位相同期回路93で動作クロックパルスが同期するまでに蓄積した位相オフセットを解消することができる。これにより、処理部A11aのデジタル発振器A133aが出力する送信信号すなわち参照信号Aに、処理部B11bのデジタル発振器B133bが出力する参照信号Bを同期させる。
以上のように、この実施の形態3によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、処理部A11aのクロック生成器A131aの動作クロックパルス(クロック信号A)と、位相同期回路93が出力する動作クロックパルス(同期クロック信号)の位相値の誤差が、実施の形態1より小さくなるので、直交検波器から出力される検波データから解析される位相値の誤差が小さくなる効果を得ることができる。
この発明の実施の形態による地上子情報読取装置は、2つ以上のクロック発振手段および2つ以上の検知信号受信手段を備え、当該複数の検知信号受信手段が検知した地上子情報を照合手段で比較することにより、たとえば、複数の検知信号受信手段のいずれかが誤った地上子情報読取結果を示すような装置故障を検出することが可能である。
上記2つ以上のクロック発振手段が発したクロック信号間の位相ずれを検出し、当該ずれを調整する手段を有するので、上記2つ以上の検知信号受信手段は、互いに独立したクロック源で駆動され、かつ、互いに同期される。これにより、全ての検知信号受信手段で地上子情報を正常に検知でき、装置故障の検出性能を向上しフェールセーフ性を高めることができる。
上記2つ以上のクロック発振手段のクロック周波数を監視する手段により、上記複数の検知信号受信手段の動作周波数を監視することができ、動作周波数の異常によって送信信号の周波数がずれて、地上子情報を読み取れない、または誤った地上子情報を読み取ってしまうといった装置故障を検出できる。
この様に、本発明の実施の形態にかかる地上子情報読取装置はいずれも、装置故障を確実に検出する事ができ、故障時に誤った地上子情報を出力することがなくなり、列車運行の安全を確保することができる。
実施の形態4.
図12は、この発明の実施の形態4における地上子情報読取装置100xの構成を示すブロック図である。列車に搭載される地上子情報読取装置100xは、車上子200と接続され、地上子400が保持する地上子情報の読み取り処理を行う処理部A11axと、同じく地上子情報の読み取り処理を行う処理部B11bxと、処理部A11axと処理部B11bxを同期する同期手段21と、処理部A11axと処理部B11bxから出力される地上子情報を比較照合する照合/監視部31を備える。
図12において、処理部A11axは、発振部A13axと受信部A15axを備える。発振部A13axは、クロック生成器A131a、デジタル発振器A133a、符号発生器A135a、変調器137a、増幅器を備え、受信部A15axは、増幅器、遅延器A155a、復調器A157a、直交検波器A153a、地上子判定手段A151aを備える。
先ず、実施の形態4における地上子情報読取装置100xが解決しようとする課題について説明する。
上記実施の形態1で説明した装置構成では、車上子200から地上子の共振周波数と同じ周波数で、信号強度の大きい外乱ノイズが混入すると、受信部A15aおよび受信部B15bが地上子を誤検知する可能性を排除できない。この地上子の誤検知は、外乱ノイズを地上子情報と誤って読み取ること、および、外乱ノイズのために地上子が存在するのに地上子情報を正しく読み取れないこと、を含む。つまり、実施の形態1で説明した装置では、外乱ノイズに対する耐性が低く、よって、外乱ノイズによる影響が懸念される。
上記課題を鑑み、本発明の実施の形態4では、地上子を検出するために車上子から送信する送信信号を符号信号で変調し、車上子から受信する検知信号を符号信号で復調する構成を付加する。
さらに、2重構成の系間照合で装置のフェールセーフ機能を実現する構成では、車上子からの検知信号を符号信号で復調する際に、処理部A11axと処理部B11bxとで符号信号を同期させる必要がある。
しかしながら、上記実施の形態1で参照信号の同期の必要性を説明したのと同様、同一のクロックで符号信号を生成する構成を採れば、処理部A11axと処理部B11bxから同じ誤った地上子情報が出力され、そのため、照合で誤った結果が一致するため故障を検出する事ができず故障が内在化するという課題が残る。
逆に、異なるクロックでそれぞれ符号信号を生成したとするとそれらの符号信号は互いに非同期となるため、処理部A11axが送信した送信信号を受信する処理部B11bxでは、符号信号タイミングが一致せず、正常な復調を行えない。そのため復調後の直交検波でも、正しい地上子情報を得ることができず、照合機能も正常に動作しなくなるという課題が生じる。
上記課題に関し、実施の形態4においては、同期手段21が出力する調整信号を用いて、符号信号を生成する符号発生器(135a、135b)にて処理部A11axと処理部B11bxの符号信号の同期を行う。
図12を用いて、本発明の実施の形態4の構成を説明する。
発振部A13axのデジタル発振器A133aは、クロック生成器A131aから供給される動作クロック(クロック信号A)に基づき、地上子を検知するために地上子共振周波数に一致する搬送波信号Aと参照信号Aを生成する。搬送波信号Aの信号周波数は、上記実施の形態1において送信信号について説明した値でよい。
発振部A13axの符号発生器A135aは、クロック生成器A131aから供給される動作クロックに基づき、予め定められた符号信号Aを生成する。この予め設定された符号は、例えば、M系列やGOLD系列や直交系列などの符号、またはそれを組み合わせて構成する。
発振部A13axの変調器137aは、搬送波信号Aと符号信号Aを入力として、搬送波信号Aを符号信号AでBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調して送信信号を出力する。送信信号は増幅器で所定の電圧まで電力増幅され、車上子200の1次側コイルから地上へ送信される。
発振部A13axから送信された送信信号は、車上子200の2次側コイルから受信され検知信号として処理部A11axの受信部A15axで受信処理される。車上子200の2次側コイルから受信した検知信号は、受信部A15axの増幅器を介して、受信部A15axの復調器A157aの入力となる。
復調器A157aでは、発振部A(送信部)13axの符号発生器A135aが生成し受信部A15axの遅延器A155aで信号遅延させた符号信号Aを入力し、当該符号信号Aで、受信した検知信号を復調する。復調器A157aは、復調信号を直交検波器A153aに出力する。遅延器A155aは、符号発生器A135aで生成された符号信号Aが送信信号として出力され、車上子200を経由して検知信号として復調器A157aに到達するまでの伝搬遅延時間分の遅延を行う回路である。遅延器A155aは、符号発生器A135aが生成した符号信号Aを予め設定した上記の伝搬遅延時間分の遅延させた符号信号Aを復調器A157aに出力する。
直交検波器A153aは、デジタル発振器A133aが生成した参照信号Aを入力し、当該参照信号で、復調器A157aが出力した復調信号を直交検波する。直交検波器A153aは直交検波の結果出力である検波データAを、地上子判定手段A151aに出力する。
他方、処理部B11bxは、発振部B13bxと受信部B15bxを備える。
発振部B13bxは、クロック生成器B131b、デジタル発振器B133b、符号発生器B135bを備え、受信部B15bxは、増幅器、遅延器B155b、復調器B157b、直交検波器B153b、地上子判定手段B151bを備える。
処理部B11bxの受信部B15bxは、処理部A11axの発振部A(送信部)13axが送信した送信信号によって、車上子200の2次側コイルから受信される検知信号を入力とする。
受信した検知信号は、受信部B15bxの増幅器を介して、受信部B15bxの変調器B157bへ入力される。受信部B15bxの変調器B157bでは、発振部B13bxの符号発生器B135bが生成し、受信部B15bxの遅延器B155bで信号遅延させた符号信号Bを入力し、当該符号信号Bで受信した検知信号を復調する。復調器B157bは、復調信号を直交検波器B153bに出力する。
符号信号Bは、発振部B13bxの符号発生器B135bで、発振部B13bxのクロック生成器B131bから供給される動作クロック(クロック信号B)に基づいて生成される。
直交検波器B153bは、受信部B15bxのデジタル発振器B133bが生成した参照信号Bを入力し、当該参照信号で、復調器B157bが出力した復調信号を直交検波する。参照信号Bは、発振部B13bxのデジタル発振器B133bで、発振部B13bxのクロック生成器B131bから供給される動作クロック(クロック信号B)に基づいて生成される。直交検波器B153bは直交検波の結果出力である検波データBを、地上子判定手段B151bへ出力する。
同期手段21は、処理部A11axのクロック生成器A131aが生成したクロック信号Aと、処理部B11bxのクロック生成器B131bが生成したクロック信号Bを入力し、処理部A11axのデジタル発振器A133aと、処理部B11bxのデジタル発振器B133bを同期させるための、また処理部A11axの符号発生器A135aと、処理部B11bxの符号発生器B135bを同期させるためのリセット信号と、位相増分信号を出力する。
これにより、デジタル発振器A133aが出力する参照信号Aとデジタル発振器B133bが出力する参照信号Bとは同期した信号波形となる。また符号発生器A135aが出力する符号信号Aと、符号発生器B135bが出力する符号信号Bとは同期した波形信号となる。
なお、車上子200、地上子400、処理部A11axの地上子判定手段A151a、処理部B11bxの地上子判定手段B151b、照合/監視部31、列車制御手段300は、上記実施の形態1で説明した構成と同じでよい。
図13は、本発明の実施の形態4に係る符号信号の適用効果を説明する図である。
図13(b)において、600は、所定の地上子共振周波数の1つを示し、601は、デジタル発振器A133aが出力する搬送波信号Aのスペクトル波形を示す。図13(c)において、603は、車上子200の1次側コイルへ送信する送信信号のスペクトル波形を示す。図13(d)において、605は、車上子200の2次側コイルより受信する検知信号のスペクトル波形を示す。図13(e)において、609は、車上子200から混入した外乱ノイズのスペクトル波形の一例を示す。図13(f)において、607は、復調器A157aから出力された復調信号Aのスペクトル波形を示す。図13(g)において、611は、復調器A157aから出力された該外乱ノイズのスペクトル波形を示す。
図13(a)を参照すれば、搬送波信号Aは、地上子の共振周波数600に対応する狭帯域信号(正弦波)であり、クロック信号Aに基づきデジタル発振器A133aで生成される。地上子共振周波数600(図13(b))は、そのような複数の周波数信号の一つを示す。地上子の共振周波数600には、上記実施の形態1で説明したように、たとえば73k、80k、85k、90k、95k、103k、108.5k、123k、130k[Hz]等が含まれてよい。搬送波信号Aのスペクトル波形601は、上記周波数の一つを例として表されている。搬送波信号Aのスペクトル波形601は、地上子の共振周波数600に一致した正弦波信号であり、狭帯域または線スペクトル波形である。
搬送波信号Aは、変調器137aにて、符号発生器A135aで生成された符号信号AでBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調されて送信信号として出力される。送信信号のスペクトル波形603は、搬送波信号Aのスペクトル波形601に比べて広い帯域のスペクトル波形603となり、スペクトル波形603の信号強度ピークはスペクトル波形601に較べて低くなる。
送信信号は、車上子200の1次側コイルから地上に向けて送信される。また、その一部は車上子200の2次側コイルから検知信号として受信部A15axに入力される受信信号(検知信号)となる。
車上子200の2次側コイルから受信した検知信号のスペクトル波形605は、復調器A157aにて遅延器A155aで遅延された符号信号Aを用いて復調され、復調器A157aは、復調信号Aを直交検波器A153aへ出力する。
復調信号Aのスペクトル波形607(図13(f))は、搬送波波形Aのスペクトル波形601と同様の狭帯域のスペクトル波形となる。時間領域での信号波形も、搬送波信号Aと同じ狭帯域信号(正弦波)となる。ただし復調信号Aは、地上子400から送信された地上子情報の信号成分を含んでいるので、厳密には搬送波信号とは、信号成分の振幅と位相が異なる信号となる。
復調信号Aは、直交検波器A153aにて参照信号Aを用いて検波され、検波データAとして地上子判定手段A151aへ出力される。検波データAには上記の地上子400が送信した地上子情報が含まれており、地上子判定手段A151aは検波データAの振幅と位相を解析して、地上子情報を読み取る。
ここまでで外乱ノイズが無い条件での各機能とスペクトル波形の形状について説明した。つぎに車上子200から、外乱ノイズが混入する条件で、本発明の実施の形態4におけるノイズ耐性の向上効果について説明する。
車上子200から混入した外乱ノイズは、車上子200の2次側コイルから受信される検知信号に付加され、たとえば外乱ノイズのスペクトル波形609(図13(e))のように観測される。外乱ノイズのスペクトル波形609は、検知信号のスペクトル波形605に比べて、信号強度ピークは大きい。外乱ノイズが混入した検知信号を、この状態のまま信号解析すると、解析結果では信号強度の大きな信号の振幅と位相成分が支配的となるので、地上子判定手段A151aは外乱ノイズによって地上子情報を正しく読み取ることができない。
そのため、本発明の実施の形態4では、外乱ノイズが混入した検知信号を復調器A157aで符号信号Aを用いて復調する。外乱ノイズが混入した検知信号を復調した場合、本来の検知信号の成分は、復調信号Aのスペクトル波形607(図13(f))の様に狭帯域のスペクトル波形となり、外乱ノイズの成分は、スペクトル波形611(図13(g))の様に広帯域のスペクトル波形となる。
これは外乱ノイズには、発振部Aで付加した符号信号Aが含まれていないので、受信部Aでの復調の際に符号信号Aを含まない信号(符号信号と相関のない信号)は、スペクトル波形の帯域が広い、信号強度ピーク値が低い信号となるからである。復調後の外乱ノイズのスペクトル波形611は、復調後の検知信号のスペクトル波形607に比べて、信号強度ピークは小さくなる。よって、直交検波器A153aによる信号解析において、外乱ノイズの信号成分は、検知信号(復調後)の振幅および位相成分に殆ど影響を与えることが無い。そのため、地上子判定手段A151aは、検知信号に外乱ノイズが混入した場合であっても、地上子情報を正しく読み取ることができる。
以上のように、本実施の形態4によれば、上記実施の形態1と同様の効果がえら得ると共に、デジタル発振器A133aが生成した搬送波信号を、符号発生器A135aが生成した符号信号Aを用いて、変調器137aで変調した信号を送信信号として車上子200から地上に送信し、車上子200の2次側コイルから受信される検知信号を、符号発生器A135aが生成し受信部A15axの遅延器A155aで信号遅延させた符号信号Aで復調する。また、符号発生器B135bが生成し受信部B15bxの遅延器B155bで信号遅延させた符号信号Bで復調する構成(処理部B13bx)を付加したことにより、外乱ノイズへの耐性を向上することができる。
つぎに処理部A11axの符号信号Aと、処理部B11bxの符号信号Bを同期させるための構成およびその動作について説明する。
図14は、符号発生器A135aの構成を示すブロック図である。
530aは、出力する符号信号の波形データを予め記憶しておくメモリAを示す。520aは、メモリA530aのメモリ・アドレスを指定し、波形データをサイクリックに読み出すためのアドレス・カウンタAを示す。510aは、アドレス・カウンタA520aのカウントアップの動作信号である分周信号Aを出力する分周器Aを示す。
分周器A510aは、マルチプレクサ回路A511a、カウンタA512a、比較器A513a、論理ゲートA514aを有し、クロック生成器A131aが出力するクロック信号Aと、同期手段21が出力する位相増分信号およびリセット信号を入力する。分周器A510aは、クロック信号Aからクロック分周することにより、符号信号Aの信号レートを生成する。マルチプレクサ回路A511aは、位相増分信号の値に基づいてカウンタ増加分(515a、516a、517a)のいずれかを選択し、カウンタA512aへ出力する。カウンタA512aは、クロック信号Aの立ち上がりを検出すると、マルチプレクサ回路A511aの出力するカウンタ増加分に応じたカウントアップを行い、カウント値を比較器A513aへ出力する。カウンタA512aは、比較器A513aが出力する分周信号Aがハイレベルであることを検出すると、または、リセット信号を受けたことを論理ゲートA514aで検出すると、カウンタ値をゼロクリアする。
比較器A513aは、カウンタA512aのカウンタ値と、クロック信号Aの信号レートから符号信号Aの信号レートを生成する分周値とを比較する。比較器A513aは、カウンタ値が分周値より小さければ分周信号Aをローレベルとし、分周値より大きくなれば分周信号Aをハイレベルとしてアドレス・カウンタA520aへ出力する。たとえば、クロック信号Aの信号レートを24MHzとし、符号信号Aの信号レートを5kHzとすると、分周器A510aの比較器A513aで用いる分周値は4800となる。そして、分周器A510aが出力する分周信号Aは、5kHz毎に(5k周期毎に)クロック信号Aの1クロック分だけハイレベルとなる信号波形となる(分周信号Aの信号波形は、後述する図15に示す。)。
アドレス・カウンタA520aは、加算器521aと遅延器522aを有し、分周器A510aが出力する分周信号Aおよび同期手段21のリセット信号を入力する。アドレス・カウンタA520aは、分周信号Aの立ち上がりエッジを検出すると、カウント値のカウントアップ動作を行い、リセット信号を受けると、カウンタ値をゼロクリアする。アドレス・カウンタA520aが、カウンタ値に従ってメモリA530aのメモリ・アドレスを指定し、メモリA530aに記録された符号信号Aの波形データがサイクリックに読み出される。そうすることで、符号信号Aが生成される。符号信号Aは、発振部A13axの変調器137aと、受信部A15axの遅延器A155aへ出力される。
なお、ここでは処理部A11axの符号発生器A135aについて説明したが、処理部B11bxの符号発生器B135bの構成も同じ構成でよい。
実施の形態4における同期手段21の構成は、実施の形態1ならびに実施の形態2で説明した構成と同じでよい。また処理部A11axの地上子判定手段A151a、デジタル発振器A133a、直交検波器A153a、処理部B11bxの地上子判定手段B151b、デジタル発振器B133b、直交検波器B153bは、実施の形態1で説明した構成と同じでよい。
つぎに同期手段21が出力するリセット信号と位相増分信号に対する符号発生器A135aの動作を説明する。符号発生器A135aは、同期手段21からリセット信号が入力されると、分周器A510aのカウンタA512aのカウント値をゼロクリアする。また、リセット信号が入力されると、アドレス・カウンタA520aの遅延器522aが保持するアドレスカウント値もゼロクリアされ、メモリA530aのメモリ・アドレスのゼロ番地から再カウントされる。つまり、リセット信号が入力されると、符号発生器A135aから出力される符号信号Aは、メモリA530aの先頭アドレスに記録された波形データに戻って生成が再開される。
この様にして、同期手段21が出力するリセット信号で符号発生器A135aをリセットし、同様にして、同期手段21が出力するリセット信号で符号発生器B135bをリセットする。こうすることで、符号発生器A135aが出力する符号信号Aと符号発生器B135bが出力する符号信号Bとを同期させることができる。
同期手段21が出力する位相増分信号は、分周器A510aのマルチプレクサ回路A511aの選択条件として使用される。位相増分信号は、実施の形態1で説明した同期手段21の位相ずれ検出部71で、クロック生成器A131aとクロック生成器B131bのクロック間のずれを検出し、そのずれ量結果に基づいて、位相増分設定器81から出力される。
クロック生成器B131bが出力するクロック信号Bとクロック生成器A131aが出力するクロック信号Aとのクロックずれ量が「ゼロ」の場合には、位相増分設定器81からΔθの位相増分信号が出力される。位相ずれ検出部71がクロックずれ量「−1」を検出した場合には「2×Δθ」の位相増分信号が位相増分設定器81から出力され、クロックずれ量「+1」が検出された場合には「ゼロ」の位相増分信号が位相増分設定器81から出力される。
マルチプレクサ回路A511aは、位相増分信号が「Δθ」の場合にカウンタ増加分516aの「1」を、位相増分信号が「2×Δθ」の場合にカウンタ増加分517aの「2」を、位相増分信号が「ゼロ」の場合にカウンタ増加分515aの「ゼロ」を、カウンタA512aへ出力する。カウンタA512aは、クロック信号Aの立ち上がりを検出すると、マルチプレクサ回路A511aが出力するカウンタ増加分(515a、516a、または、517a)に応じたカウントアップを行う。
この様にして、同期手段21が出力する位相増分信号の信号値に基づいて分周器A510aのカウンタA512aのカウンタ増加分を変更することで、符号発生器A135aが出力する符号信号Aと、符号発生器B135bが出力する符号信号Bとを同期させることができる。
図15は、符号信号Aと符号信号Bの同期を説明するタイムチャートである。図15では、符号信号Aに対して符号信号Bを同期させる構成を例として、信号波形のタイムチャートを示す。
図15(a)では、クロック生成器A131aが出力するクロック信号Aを上段に示し、符号発生器A135aの分周器A510aが出力する分周信号Aを中段に示し、符号発生器A135aが出力する符号信号Aを下段に示す。
図15(b)は、クロック信号Aを基準としてクロック信号Bのクロック周波数が低く、位相ずれ検出部71でクロック信号Bが遅れるクロックずれ量を検出した際のタイムチャート図である。
図15(b)では、クロック生成器B131bが出力するクロック信号Bを最上段に示し、つぎに、同期手段21の位相ずれ検出部71でクロックずれ量「―1」(遅れ)を検出した場合の位相増分信号を示し、つぎに符号発生器B135bの分周器B510bが出力する分周信号Bを示し、符号発生器B135bが出力する符号信号Bを最下段に示す。
図15(a)および図15(b)を参照すれば、クロック信号Aを基準としてクロック信号Bのクロック周波数が低いと、クロック周波数偏差によって、分周信号Aの周期610に対して分周信号Bの周期620は長くなる。このままでは、アドレス・カウンタB520bが分周信号Bに基づいて動作することで、符号発生器B135bが出力する符号信号Bが符号信号Aに対して遅れてしまう。
このとき、位相ずれ検出部71でクロックずれ量「―1」(遅れ)が検出され(位相増分信号の波形621(図15(b)))、マルチプレクサ回路A511aが、同期手段21の位相増分信号に基づいてカウンタ増加分517aの「2」をカウンタA512aへ出力し、カウンタA512aはカウンタ増加分517aに応じてカウントアップする。
これにより分周器B510bが出力する分周信号Bを分周信号A610と同じ周期の長さとする事ができ(分周信号Bの波形622(図15(b)))、符号信号Aと符号信号Bを同期することができる(符号信号Bの波形623(図15(b)))。
図15(c)は、クロック信号Aを基準としてクロック信号Bのクロック周波数が高く、位相ずれ検出部71でクロック信号Bが進むクロックずれ量を検出した際のタイムチャート図である。
図15(c)では、同期手段21の位相ずれ検出部71でクロックずれ量「+1」(進み)を検出した場合の位相増分信号を上段に示し、符号発生器B135bの分周器B510bが出力する分周信号Bを中段に示し、符号発生器B135bが出力する符号信号Bを下段に示す。
図15(a)および図15(c)を参照すれば、クロック信号Aを基準としてクロック信号Bのクロック周波数が高いと、クロック周波数偏差によって、分周信号Aの周期610に対して分周信号Bの周期630は短くなる。このままでは、アドレス・カウンタB520bが分周信号Bに基づいて動作することで、符号発生器B135bが出力する符号信号Bが符号信号Aに対して進んでしまう。
このとき、位相ずれ検出部71でクロックずれ量「+1」(進み)が検出され(位相増分信号の波形631(図15(c)))、マルチプレクサ回路A511aが、同期手段21の位相増分信号に基づいてカウンタ増加分515aの「0」をカウンタA512aへ出力し、カウンタA512aはカウンタ増加分515aに応じてカウントアップする。
これにより分周器B510bが出力する分周信号Bを分周信号A610と同じ周期の長さとする事ができ(分周信号Bの波形632(図15(c)))、符号信号Aと符号信号Bを同期することができる(符号信号Bの波形633(図15(c)))。
なお、同期手段21の位相ずれ検出部71でクロックずれ量「ゼロ」(同期)が検出されている場合には、マルチプレクサ回路A511aは、カウンタ増加分516aの「1」をカウンタA512aへ出力し、カウンタA512aはカウンタ増加分516aに応じてカウントアップする。
この様に、同期手段21が出力する位相増分信号の信号値に基づいて、分周器A510aのカウンタA512aのカウント増分を変更することで、符号発生器A135aが出力する符号信号Aと、符号発生器B135bが出力する符号信号Bとを同期させることができる。
以上のように、実施の形態4は、デジタル発振器A133aが生成した搬送波信号を、符号発生器A135aが生成した符号信号Aを用いて、変調器137aで変調して送信信号を生成する。生成した送信信号は車上子200から地上に送信され、車上子200の2次側コイルが検知信号を受信する。受信された検知信号は、符号発生器A135aが生成し受信部A15axの遅延器A155aで信号遅延させた符号信号Aで復調されると共に、符号発生器B135bが生成し受信部B15bxの遅延器B155bで信号遅延させた符号信号Bで復調される。
これにより、本実施の形態4では、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、さらに、外乱ノイズへの耐性を向上させることができる。よって、本実施の形態4では、外乱ノイズを地上子情報と誤って読み取ってしまう誤検知や、外乱ノイズのために地上子が存在するのに地上子情報を正しく読み取れない、といった地上子誤検知を防止することができる。
また、同期手段21が出力するリセット信号に基づいて、処理部A11axの符号発生器A135aと、処理部B11bxの符号発生器B135bとを同時にリセットすることにより、符号信号Aと符号信号Bの位相オフセットを解消することができる。
同期手段21が出力する位相増分信号で、処理部A11axのクロック信号Aと処理部B11bxのクロック信号Bのクロックずれを検出し、符号発生器A135aの分周信号Aおよび符号発生器B135bの分周信号Bの分周周期を調整することで、クロック周波数偏差に起因する符号信号Aと符号信号Bの周波数偏差を解消することができ、符号信号Aと符号信号Bをよく同期させることができる。
この様に、符号発生器A135aが出力する符号信号Aと、符号発生器B135bが出力する符号信号Bを同期させることができるので、処理部Aが送信した送信信号に含まれる符号信号Aと、検知信号を受信する処理部Bの復調器B157bで用いる符号信号Bの符号タイミングは一致し、復調器B157bで検知信号を正しく復調することができる。さらに、復調信号を直交検波した検波データの振幅値を正常に得ることができ、照合/監視部31で、処理部A11axからの地上子情報と、処理部B11bxからの地上子情報に基づき、正常に比較照合することができる。よって、装置の健全性を正しくチェックすることができ、装置フェールセーフ性能を確保できる。