JP5355128B2 - 低糖含量清酒 - Google Patents
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糖含量が低いアルコール飲料としては、いわゆる焼酎、第三のビール、発泡酒、リキュールが開発販売されている。特に、焼酎は、蒸留酒であるため、糖がなく、糖を含む清酒よりも、健康なイメージが強く、生活習慣病の予防医学の観点から、清酒の需要が低迷する一因でもあった。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の低糖含量清酒を提供する。
項1. 清酒の仕込みにおいて、白米1gに対して70〜100Uのトランスグルコシダーゼ及びプルラナーゼを等量添加することにより得られる清酒であって、全糖濃度が0.05重量%以上乃至0.11重量%以下であり、アルコール分濃度が17.1〜18.2%(V/V)であり、日本酒度が+23.4〜+25.4であることを特徴とする清酒。
項2. グルコース濃度が0.01重量%以上乃至0.05重量%以下であることを特徴とする項1に記載の清酒。
本発明の清酒の製造方法は、液化仕込みを行い、仕込み時にトランスグルコシダーゼとプルラナーゼを添加する方法である。
米は、清酒製造に通常使用される米を制限なく使用することができる。好ましくは、通常の食用米や一般米とは区別される酒造好適米と呼ばれるものを用いればよい。酒造好適米としては、例えば、山田錦、五百万石、美山錦、雄町、日本晴、祝などが挙げられる。精米歩合は、通常約30〜80%とすればよく、約65〜75%が好ましい。
酒母は酵母を大量に増殖させたものである。
酵母は、通常使用される清酒酵母(せいしゅこうぼ)を制限なく使用できる。清酒酵母は、殆どが出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeである。Saccharomyces cerevisiaeの中でも、特に醸造特性の高い株として、協会系酵母であるきょうかい1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15号、尿素非生産酵母である「KArg7号」「KArg9号」「KArg10号」、泡なし酵母であるきょうかい601、701、901、1001、1401、1501、1601、1701などが挙げられる。
米麹は蒸した米に麹菌(アスペルギルス・オリゼ)を繁殖させたものである。清酒に用いる米麹は、平成元年11月22日国税庁告示第8号「清酒の製法品質表示基準を定める件」において、「米こうじとは、白米にこうじ菌を繁殖させたもので、白米のでんぷんを糖化させることができるものをいい、特定名称の清酒は、こうじ米の使用割合(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合をいう。以下同じ)が、15%以上のものに限るものとする。」と定められている。
麹菌は、清酒製造に通常使用される麹菌を制限なく使用できる。例えば、株式会社ビオックの吟醸、酒母用、醪用、機械製麹用、純米吟醸用、純米酒用、本醸造用、経済酒用、良い香り、液化仕込み用や、樋口松之助商店のひかみ吟醸用、ハイ・G、ダイヤモンド印、もと立用、醪用、ひかみ醪用20号、ひかみ醪用30号、ひかみ特選粉状A、エースヒグチ、ヒグチ粉状菌、白峯、かおり、強力糖化菌、液化仕込み用などが挙げられる。
トランスグルコシダーゼ(EC3.2.1.20)は,α−グルコシダーゼであり、基質の非還元末端から加水分解によりグルコースを遊離する作用を有し、基質濃度が高いときは、グルコースを転移させる作用を有する。トランスグルコシダーゼの起源は、植物、動物、及び微生物の何れであってもよい。好ましくは糸状菌由来、より好ましくはアスペルギルス属糸状菌由来、さらにより好ましくはアスペルギルス・ニガー由来のトランスグルコシダーゼを使用すればよい。
プルラナーゼ(EC3.2.1.41)は、アミロペクチンやグリコーゲンのα−1,6グルコシド結合を加水分解する作用を有する酵素である。プルラナーゼの起源は、植物、動物、及び微生物の何れであってもよい。好ましくは、微生物由来、より好ましくは、Klebsiella pneumoniae, Bacillus brevis, Bacillus licheniformis, Bacillus acidopullulyticus, Bacillus deramificans由来、さらにより好ましくはKlebsiella sp.由来のプルラナーゼを使用すればよい。
通常の清酒の製造方法では、蒸米に、米麹、酒母、及び仕込み水を添加して醪を仕込み、これを糖化、発酵させた後、上槽(もろみから清酒を絞る工程)、濾過を行う。
本発明では液化仕込みを行う。液化仕込みは、蒸米に代えて液化した融米を用いる方法である。通常、掛け米に相当する粒白米や粉砕白米を、仕込み水、及び耐熱性α−アミラーゼとともに液化装置に投入して、昇温しながら液化した後、液化物を米麹と共に、酒母を入れた発酵タンクに仕込む。
具体的条件の1例を挙げれば、白米に、それに対して約150〜170重量%の水をゆっくり攪拌しながら投入し、次に、白米の約5000分の1重量の耐熱性α−アミラーゼ剤を添加して、常温で約30〜40分間保持し、吸水を進める。次に、攪拌速度を上げて米を砕きながら約70〜75℃まで昇温して、約10〜15分間保持し、更に約85〜90℃まで昇温、約10〜15分間保持して液化を図り、液化終了後、約15℃付近まで冷却して、発酵タンクへ仕込む。また、液化だけでなく糖化まで行う場合には、液化終了後60℃付近まで冷却した時点で、白米の3000分の1重量の糖化酵素剤(グルコアミラーゼ)を添加して約50〜55℃付近で約4〜6時間糖化させた後に、冷却して仕込む。
本発明方法では、液化仕込みにおいて、仕込み時にトランスグルコシダーゼとプルラナーゼを添加する。また、三段仕込みを行う場合は、初添時、仲添時、及び留添時にそれぞれトランスグルコシダーゼとプルラナーゼを添加するのが好ましい。トランスグルコシダーゼとプルラナーゼの双方を添加すればよく、その添加割合は、等量でもよく、任意の割合でもよい。
この場合の白米量は、掛け米や麹米などに含まれる、使用した白米の全量を指す。また、トランスグルコシダーゼとプルラナーゼを何回かに分けて添加する場合の使用量は、総使用量である。トランスグルコシダーゼとプルラナーゼの活性測定方法は、実施例の項目に記載した通りである。
仕込み後は、通常約10〜25℃で、留添後約10〜30日間、好ましくは約12〜20日間かけて糖化、発酵を行う。
次いで、上槽、濾過、加熱により清酒が得られる。
以下に説明する全糖濃度、グルコース濃度、アルコール分濃度、日本酒度は、上槽後、濾過および加熱して得られる清酒についての値であるが、上槽後の清酒の値と通常同じである。
上記説明した方法により得られる本発明の清酒は、全糖濃度が、清酒全体に対して、0.05重量%以上乃至1.23重量%以下の清酒である。また、全糖濃度は、0.05重量%以上乃至0.61重量%以下、0.05重量%以上乃至0.32重量%以下、0.05重量%以上乃至0.11重量%以下でもよい。
本発明における全糖は、全糖量はフェノール硫酸法 [デュボア・エム(Dubois M)等「ネイチャー」(Nature. 168 巻:167頁 1951 年 ) ] を改変して測定した。試料約 1 mg を 500 μl の Milli Q 水に懸濁した後、2.5 % (w/v) フェノールを 1 ml 加え、続いて濃硫酸 2.5 ml を直接液面に滴下するように加えてボルテックスにてよく混ぜた。30 分間放置後、適宜希釈して 490 nm における吸光度を測定した。標準糖としてグルコース溶液を用いて標準曲線を作成し、これをもとに試料中の全糖量を算出した。
上記説明した方法により得られる本発明の清酒は、グルコース濃度が、清酒全体に対して、0.01重量%以上乃至0.61重量%以下の清酒である。グルコース濃度は、0.01重量%以上乃至0.33重量%以下、0.01重量%以上乃至0.09重量%以下、0.01重量%以上乃至0.05重量%以下でもよい。
本発明におけるグルコース濃度の測定にはグルコースCIIテストワコー(和光純薬)を用いた。
本発明の清酒は、アルコール分濃度、即ちアルコール度数が約10〜20%(V/V)であることが好ましい。
アルコール分濃度(アルコール度数)は、アルコール飲料の全量に対するアルコール(エタノール)の体積濃度を百分率で表示した割合である。本発明において体積濃度の測定温度は、日本の酒税法が定める通り、15℃とする。
本発明の清酒は、日本酒度が約+16.2〜+30であることが好ましく、約+16.2〜26であることがより好ましく、約+22〜25であることがさらにより好ましい。本発明の清酒は、トランスグルコシダーゼとプルラナーゼを使用しないで製造する従来の清酒に比べて、日本酒度が高い。
日本酒度は、水に対する酒の比重を日本酒度計で計った値である。具体的には、15℃の清酒に日本酒度計と呼ばれる浮秤を浮かべて測定し、4℃の水と同じ重さの清酒の日本酒度を0とし、それより軽いものを+、重いものの−とする。+の度合が高い清酒は糖分が少なく辛口であり、+の度合が低い清酒は糖分が多く甘口である。
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
酒母を入れた発酵タンクに、上記の液化米及び米麹を、初添、仲添、留添の3回に分けて添加した。仕込み温度(仕込み後の糖化、発酵温度)は12℃とした。醪中のピルビン酸濃度が50ppm以下になった時に上槽した(15日間)。
麹菌は、樋口松之助商店の液化仕込み用を使用した。
0.01N酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に溶解した0.3%(w/v)イソマルトース溶液2mLを基質溶液として用い、酵素液0.5mLを加え、40℃で60分間反応させた後、0.3Mトリス−リン酸緩衝液(pH8.0)2.5mLを加えて振り混ぜ、反応を止る。この液の0.2mLを試験管にとり、4−アミノアンチピリンフェノール発色試薬3mLを加え、よく振り混ぜた後、40℃、20分間放置した後、波長500nmの吸光度を測定する。濃度既知のグルコース溶液で波長500nmの吸光度の検量線を作成しておき、試料の測定値を検量線に当てはめて、グルコース濃度を測定する。
60分間に反応液2.5mL中に1mgのグルコースを生成する酵素活性を1U(単位)とする。
〔プルラナーゼ活性測定法〕
50mMリン酸緩衝液(pH6.0)中にプルラン(反応系における最終濃度は0.25%)(シグマ社)を溶解させた基質溶液0.9mLに、酵素液0.1mLを加え、50℃で、30分間反応させた。反応後、3,5−ジニトロサリチル酸(シグマ社)(DNS)法にて還元糖の定量を行なった。すなわち、反応液1.0mLにDNS(シグマ社)試薬1.0mLを加え、5分間、100℃で加熱発色させ、冷却後、4.0mLの脱イオン水を加えて希釈し、波長535nmで比色定量した。酵素の力価は、1分間に1μmol のグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位(1U)とした。
下記の表2に、各例におけるトランスグルコシダーゼとプルラナーゼの添加量を示す。
Claims (2)
- 清酒の仕込みにおいて、白米1gに対して70〜100Uのトランスグルコシダーゼ及びプルラナーゼを等量添加することにより得られる清酒であって、
全糖濃度が0.05重量%以上乃至0.11重量%以下であり、
アルコール分濃度が17.1〜18.2%(V/V)であり、
日本酒度が+23.4〜+25.4であることを特徴とする清酒。 - グルコース濃度が0.01重量%以上乃至0.05重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の清酒。
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