JP5353536B2 - 磁気センサ信号処理プログラム及び磁気センサモジュール - Google Patents

磁気センサ信号処理プログラム及び磁気センサモジュール Download PDF

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本発明は、磁気センサ信号処理プログラム及び磁気センサモジュールに関し、さらに詳しくは、自動車の車軸、ロータリーエンコーダ、産業用歯車等の回転情報の検出、油圧式シリンダ/空気式シリンダのストロークポジション、工作機械のスライド等の位置・速度情報の検出、工業用溶接ロボットのアーク電流等の電流情報の検出、地磁気方位コンパスなどに用いられる磁気センサの信号処理を行うための磁気センサ信号処理プログラム、及び、これを用いた磁気センサモジュールに関する。
磁気センサは、電磁気力(例えば、電流、電圧、電力、磁界、磁束など。)、力学量(例えば、位置、速度、加速度、変位、距離、張力、圧力、トルク、温度、湿度など。)、生化学量等の被検出量を、磁界を介して電圧に変換する電子デバイスである。磁気センサは、磁界の検出方法に応じて、ホールセンサ、異方的磁気抵抗(AMR: Anisotropic Magneto-Resistiity)センサ、巨大磁気抵抗(GMR: Gaiant MR)センサ等に分類される。
これらの中でもGMRセンサは、
(1)AMRセンサに比べて電気比抵抗の変化率の最大値(すなわち、MR比=△ρ/ρ(△ρ=ρ−ρ:ρは、外部磁界Hにおける電気比抵抗、ρは、外部磁界ゼロにおける電気比抵抗))が極めて大きい、
(2)ホールセンサに比べて抵抗値の温度変化が小さい、
(3)巨大磁気抵抗効果を有する材料が薄膜材料であるために、マイクロ化に適している、
等の利点がある。そのため、GMRセンサは、コンピュータ、電力、自動車、家電、携帯機器等に用いられる高感度マイクロ磁気センサとしての応用が期待されている。
GMR効果を示す材料としては、強磁性層(例えば、パーマロイ等)と非磁性層(例えば、Cu、Ag、Au等)の多層膜、あるいは、反強磁性層、強磁性層(固定層)、非磁性層及び強磁性層(自由層)の4層構造を備えた多層膜(いわゆる、「スピンバルブ」)からなる金属人工格子、強磁性金属(例えば、パーマロイ等)からなるnmサイズの微粒子と、非磁性金属(例えば、Cu、Ag、Au等)からなる粒界相とを備えた金属−金属系ナノグラニュラー材料、スピン依存トンネル効果によってMR(Magneto-Resistivity)効果が生ずるトンネル接合膜、nmサイズの強磁性金属合金微粒子と、非磁性・絶縁性材料からなる粒界相とを備えた金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料等が知られている。
これらの内、スピンバルブに代表される多層膜は、一般に、低磁界における感度が高いという特徴がある。しかしながら、多層膜は、種々の材料からなる薄膜を高精度で積層する必要があるために、安定性や歩留まりが悪く、製作コストを抑えるには限界がある。そのため、この種の多層膜は、専ら付加価値の大きなデバイス(例えば、ハードディスク用の磁気ヘッド)にのみ用いられ、単価の安いAMRセンサやホールセンサとの価格競争を強いられる磁気センサに応用するのは困難であると考えられている。また、多層膜間の拡散が生じやすく、GMR効果が消失しやすいため、耐熱性が悪いという大きな欠点がある。
一方、ナノグラニュラー材料は、一般に、作製が容易で、再現性も良い。そのため、これを磁気センサに応用すれば、磁気センサを低コスト化することができる。特に、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料は、
(1)その組成を最適化すれば、室温において10%を越える高いMR比を示す、
(2)電気比抵抗ρが桁違いに高いので、磁気センサの超小型化と低消費電力化が同時に実現可能である、
(3)耐熱性の悪い反強磁性膜を含むスピンバルブ膜と異なり、高温環境下でも使用可能である、
等の利点がある。しかしながら、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料は、低磁界における磁界感度が非常に小さいという問題がある。そのため、巨大磁気抵抗薄膜の両端に軟磁性薄膜を配置し、巨大磁気抵抗薄膜の磁界感度を上げることも行われる。
このような磁気センサを用いて磁界を検出する場合において、磁界の方向を検出するときには、通常、複数個の磁気センサを用いたブリッジ回路が用いられる。
例えば、感磁方向が90°異なる2個の磁気センサを用いてハーフブリッジ回路を構成した場合、中点電位を計測することによって、外部磁界の大きさ及び方向を検出することができる。
また、感磁方向が90°異なる4個の磁気センサを用いてフルブリッジ回路を構成した場合、中点電位の差分を計測することによって、外部磁界の大きさ及び方向をハーフブリッジ回路の2倍の感度で検出することができる。このようなブリッジ回路を形成することで、温度変化により素子の抵抗値が変化しても中点電位は変化しないので、温度変化する環境下においても安定な出力が得られる。
さらに、特許文献1には、
(1)GMR膜を備えた磁気センサを含む第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路を相互の位相差が90°(機械角の差が45°)となるように配置し、
(2)第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路から出力される信号の絶対値|X|、|Y|を算出し、
(3)算出された一対の信号の絶対値|X|、|Y|を相互に加算し、
(4)加算値|X|+|Y|が基準電位eiに一致するように、第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路の電源電圧をフィードバック制御する
方法が開示されている。
同文献には、
(1)このような方法により、擬似的な三角波の上ピーク及び下ピーク付近がピン角となり、正確な三角波波形が得られる点、及び、
(2)正確な三角波信号が出力されるので、磁界発生部材の回転角度を、複雑な三角関数式を用いることなく、比較的簡単な一次式により算出できる点、
が記載されている。
特開2008−101954号公報
機械角が45°異なる2個のブリッジ回路を用いると、磁界の方向(回転磁界の回転角度)を算出することができる。このような磁界の方向の演算には、従来、三角関数を用いた演算(逆正接演算)を用いるのが一般的である。逆正接演算は、ブリッジ回路から出力される信号の波形が正弦波に近いときは比較的高い精度で回転角度を求めることができる。しかしながら、逆正接演算は、波形の歪みが大きくなるほど回転角度の検出精度が低下するという問題がある。
特に、GMR膜を用いた磁気センサに対して、バイアス磁界をかけることなく、周期的にその方向が変化する回転磁界が作用すると、回転磁界の強さが大きくなるほど、正弦波からのずれが大きくなり、回転角度の検出精度が低下する。
これに対し、特許文献1に開示されているように、GMR膜を用いた磁気センサにバイアス磁界をかけることなく周期的に変化する回転磁界を作用させる場合において、一対の疑似三角波のピン角補正を行うと、回転角度の検出精度を向上させることができる。
しかしながら、疑似三角波のピン角を補正する方法は、ピン角補正のための演算とブリッジ回路の電源電圧のフィードバック制御が必要となる。そのため、システム全体の複雑化と高コスト化を招く。
本発明が解決しようとする課題は、システム全体の複雑化と高コスト化を招くことなく、回転角度を高い精度で検出することが可能な磁気センサ信号処理プログラム、及び、これを用いた磁気センサモジュールを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、外部磁界の強さによらず、回転角度を高い精度で検出することが可能な磁気センサ信号処理プログラム、及び、これを用いた磁気センサモジュールを提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、GMR膜を用いた磁気センサであっても、外部磁界の強さやバイアス磁界の有無によらず、回転角度を高い精度で検出することが可能な磁気センサ信号処理プログラム、及び、これを用いた磁気センサモジュールを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る磁気センサ信号処理プログラムの1番目は、コンピュータを、以下の手段として機能させることを要旨とする。
(1)少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路から出力された第1角度演算・識別信号V1を入力し、メモリーに記憶させる第1角度演算・識別信号入力手段。
(2)少なくとも1個の第2磁気センサを含み、前記第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路から出力された第2角度演算・識別信号V2を入力し、前記メモリーに記憶させる第2角度演算・識別信号入力手段。
(3)以下の演算式を前記メモリーに記憶させる演算式記憶手段。
T−θ0=(V1−Voffset1c1/(V1a−Voffset1) ・・・(2.1)
T−θ0=(V2−V2a)(θc2−θc1)/(V2b−V2a)+θc1 ・・・(2.2)
T−θ0=(V1−V1b)(θc3−θc2)/(V1c−V1b)+θc2 ・・・(2.3)
T−θ0=(V2−V2c)(θc4−θc3)/(V2d−V2c)+θc3 ・・・(2.4)
T−θ0=(V1−V1d)(λ−θc4)/(Voffset1−V1d)+θc4 ・・・(2.5)
但し、
Tは、外部磁界の回転角度(°)。
θ0は、回転角度Tの基準角度(°)。
λは、回転角度Tの周期(°)。
offset1は、前記第1角度演算・識別信号V1のオフセット。
θcn(n=1〜4)は、第n切り替え角度で、λ(n−1)/4<θcn<λn/4。
1a〜V1dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの前記第1角度演算・識別信号V1の値。
2a〜V2dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの前記第2角度演算・識別信号V2の値。
(4)前記メモリーに記憶された前記第1角度演算・識別信号V1及び前記第2角度演算・識別信号V2を用いて、以下の手順により前記回転角度Tの位相を判別する位相判別手段。
(a)(V1−Voffset1)≧0、かつ、(V2−Voffset2)≦0である場合において、(V1−V1a)≦0又は(V2−V2a)≦0が真の時は0≦T−θ0≦θc1、偽の時はθc1≦T−θ0≦θc2
(b)(V1−Voffset1)≧0、かつ、(V2−Voffset2)≧0である場合において、(V1−V1b)≧0又は(V2−V2a)≦0が真の時はθc1≦T−θ0≦θc2、偽の時はθc2≦T−θ0≦θc3
(c)(V1−Voffset1)≦0、かつ、(V2−Voffset2)≧0である場合において、(V1−V1c)≧0又は(V2−V2c)≧0が真の時はθc2≦T−θ0≦θc3、偽の時はθc3≦T−θ0≦θc4
(d)(V1−Vofsset1)≦0、かつ、(V2−Voffset2)≦0である場合において、(V1−V1d)≦0又は(V2−V2d)≧0が真の時はθc3≦T−θ0≦θc4、偽の時はθc4≦T−θ0≦λ。
但し、Voffset2は、前記第2角度演算・識別信号V2のオフセット。
境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
(5)前記位相判別手段により判別された前記回転角度Tの位相に応じて、以下の手順により前記メモリーに記憶された前記第1角度演算・識別信号V1又は前記第2角度演算・識別信号V2を前記メモリーに記憶された(2.1)式〜(2.5)式のいずれかに代入し、回転角度Tを算出する回転角度算出手段。
0≦T−θ0≦θc1の時は、(2.1)式。
θc1≦T−θ0≦θc2の時は、(2.2)式。
θc2≦T−θ0≦θc3の時は、(2.3)式。
θc3≦T−θ0≦θc4の時は、(2.4)式。
θc4≦T−θ0≦λの時は、(2.5)式。
但し、境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
磁気センサ信号処理プログラムは、以下の手段をさらに備えていても良い。
(6)前記演算式を用いて前記回転角度Tを算出する前に、
(a)前記第1ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記第1角度演算・識別信号V1と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
前記メモリーに記憶された前記第1角度演算・識別信号V1の回転角度θ0+mλ/2(°)(mは、整数)における値V10+mλ/2)及び回転角度θ0+nλ/2(°)(nは整数で、n≠m)における値V10+nλ/2)から波形の傾きΔ1(={V10+nλ/2)−V10+mλ/2)}/{(n−m)λ/2})を算出し、
回転角度θ0+mλ/2(°)を中心として、実際に検出される前記第1角度演算・識別信号V1を−tan-1Δ1(rad)回転させるチルト補正、及び、
(b)前記第2ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記第2角度演算・識別信号V2と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
前記メモリーに記憶された前記第2角度演算・識別信号V2の回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)(mは、整数)における値V20+(2m+1)λ/4)及び回転角度(θ0+(2n+1)λ/4)(°)(nは整数で、n≠m)における値V20+(2n+1)λ/4)から波形の傾きΔ2(={V20+(2n+1)λ/4)−V20+(2m+1)λ/4)}/{(n−m)λ/2})を算出し、
回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)を中心として、実際に検出される前記第2角度演算・識別信号V2を−tan-1Δ2(rad)回転させるチルト補正
を行うチルト補正手段。
本発明に係る磁気センサ信号処理プログラムの2番目は、コンピュータを、以下の手段として機能させることを要旨とする。
(1)少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路から出力された角度演算信号V1を入力し、メモリーに記憶させる角度演算信号入力手段。
(2)少なくとも1個の第2磁気センサを含み、前記第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路から出力された識別信号V2を入力し、前記メモリーに記憶させる識別信号入力手段。
(3)以下の演算式をメモリーに記憶させる演算式記憶手段。
T−θ0=(V1−Voffset1c1/(V1a−Voffset1) ・・・(1.1)
T−θ0=(V1−V1b)(θc3−θc2)/(V1c−V1b)+θc2 ・・・(1.2)
T−θ0=(V1−V1d)(λ−θc4)/(Voffset1−V1d)+θc4 ・・・(1.3)
但し、
Tは、外部磁界の回転角度(°)。
θ0は、回転角度Tの基準角度(°)。
λは、回転角度Tの周期(°)。
offset1は、前記角度演算信号V1のオフセット。
θcn(n=1〜4)は、直線近似のための第n基準角度で、0<θc1≦λ/4、λ/4≦θc2≦λ/2、λ/2≦θc3≦3λ/4、3λ/4≦θc4<λ。但し、θc2≠θc3
1a〜V1dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの角度演算信号V1の値。
(4)前記メモリーに記憶された前記角度演算信号V1及び前記識別信号V2を用いて、以下の手順により前記回転角度Tの位相を判別する位相判別手段。
(V1−Voffset1)≧0、(V2−Voffset2)≦0の時は、0≦T−θ0≦λ/4。
(V1−Voffset1)≧0、(V2−Voffset2)≧0、又は、(V1−Voffset1)≦0、(V2−Voffset2)≧0の時は、λ/4≦T−θ0≦3λ/4。
(V1−Voffset1)≦0、(V2−Voffset2)≦0の時は、3λ/4≦T−θ0≦λ。
但し、Voffset2は、前記識別信号V2のオフセット。
境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
(5)前記位相判別手段により判別された前記回転角度Tの位相に応じて、以下の手順により前記メモリーに記憶された前記角度演算信号V1を前記メモリーに記憶された(1.1)式〜(1.3)式のいずれかに代入し、回転角度Tを算出する回転角度算出手段。
0≦T−θ0≦λ/4の時は、(1.1)式。
λ/4≦T−θ0≦3λ/4の時は、(1.2)式。
3λ/4≦T−θ0≦λの時は、(1.3)式。
但し、境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
磁気センサ信号処理プログラムは、以下の手段をさらに備えていても良い。
(6)前記演算式を用いて前記回転角度Tを算出する前に、
(a)前記第1ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記角度演算信号V1と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
前記メモリーに記憶された前記角度演算信号V1の回転角度θ0+mλ/2(°)(mは、整数)における値V10+mλ/2)及び回転角度θ0+nλ/2(°)(nは整数で、n≠m)における値V10+nλ/2)から波形の傾きΔ1(={V10+nλ/2)−V10+mλ/2)}/{(n−m)λ/2})を算出し、
回転角度θ0+mλ/2(°)を中心として、実際に検出される前記角度演算信号V1を−tan-1Δ1(rad)回転させるチルト補正、及び、
(b)前記第2ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記識別信号V2と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
前記メモリーに記憶された前記識別信号V2の回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)(mは、整数)における値V20+(2m+1)λ/4)及び回転角度θ0+(2n+1)λ/4(°)(nは整数で、n≠m)における値V20+(2n+1)λ/4)から波形の傾きΔ2(={V20+(2n+1)λ/4)−V20+(2m+1)λ/4)}/{(n−m)λ/2})を算出し、
回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)を中心として、実際に検出される前記識別信号V2を−tan-1Δ2(rad)回転させるチルト補正
を行うチルト補正手段。
さらに、本発明に係る磁気センサモジュールは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記磁気センサモジュールは、
少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路と、
少なくとも1個の第2磁気センサを含み、前記第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路に接続された中央演算処理装置と、
前記中央演算処理装置に接続されたメモリーと
を備えている。
(2)前記メモリーには、本発明に係る磁気センサ信号処理プログラムが記憶されている。
機械角が45°異なる2つのブリッジ回路から出力される一対の信号の双方を角度演算及び位相の判別に用い、一方の信号が波形の頂点近傍にあるときには他方の信号を用いて角度演算を行うように、信号の位相に応じて角度演算に用いる信号の切り替えを行うと、複雑な演算回路やフィードバック回路を用いることなく、回転角度を高い精度で検出することができる。また、磁気センサの種類、回転磁界の強さ、バイアス磁界の有無等によらず、回転角度を高い精度で検出することができる。
また、機械角が45°異なる2つのブリッジ回路から出力される一対の信号の一方を角度演算及び位相の判別に用い、他方を位相の判別のみに用いると、複雑な演算回路やフィードバック回路を用いることなく、回転角度を比較的高い精度で検出することができる。
図1(a)は、機械角が45°異なる一対のフルブリッジ回路の平面図である。図1(b)は、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料からなるGMR膜の両端に軟磁性材料を配置したGIG型磁気センサのMR特性例を示す図である。 図1(b)に示す特性を備えたGIG型磁気センサをそれぞれ4個用いた一対のフルブリッジ回路(機械角:45°)の出力波形(回転磁場が飽和磁場の10%(左上図)、50%(左下図)、100%(右上図)、又は、150%(右下図))の一例を示す図である。 図1(b)に示す特性を備えたGIG型磁気センサをそれぞれ4個用いた一対のフルブリッジ回路(機械角:45°)から出力される信号を用いて逆正接演算(Atan)により回転角度を求めたときの、回転磁場の強さと角度誤差の最大値(最大角度誤差)との関係を示す図である。
基準電位V1a〜V1dと、第n基準角度θcnと、直線近似された三角波との関係を示す図である。 4個のGIG型磁気センサからなり、機械角が45°異なる2つのブリッジ回路から出力された、オフセットの設定及びゲインの調整が行われた後の信号Vdiff1、Vdiff2の一例を示す図である。 角度演算信号の切り替えを行わない磁気センサ信号処理プログラムのフローチャートの一例である。 図7(a)は、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形(回転磁場=飽和磁場×25%)である。図7(b)は、図7(a)に示す波形から図6に示す方法で回転角度を算出したときの回転角度と角度誤差との関係を示す図である。 図8(a)は、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形(回転磁場=飽和磁場×65%)である。図8(b)は、図8(a)に示す波形から図6に示す方法で回転角度を算出したときの回転角度と角度誤差との関係を示す図である。 図9(a)は、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形(回転磁場=飽和磁場×90%)である。図9(b)は、図9(a)に示す波形から図6に示す方法で回転角度を算出したときの回転角度と角度誤差との関係を示す図である。 4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形から図6に示す方法を用いて回転角度を算出したときの、回転磁場の強さと角度誤差の最大値(最大角度誤差)との関係を示す図である。
基準電位V1a〜V1d、V2a〜V2dと、第n切り替え角度θcnと、直線近似された三角波との関係を示す図である。 4個のGIG型磁気センサからなり、機械角が45°異なる2つのブリッジ回路から出力された、オフセットの設定及びゲイン調整が行われた後の信号Vdiff1、Vdiff2の一例を示す図である。 角度演算信号の切り替えを行う磁気センサ信号処理プログラムのフローチャートの一例である。 図14(a)は、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形(回転磁場=飽和磁場×66%)である。図14(b)は、図14(a)に示す波形から図13に示す方法で回転角度を算出したときの回転角度と角度誤差との関係を示す図である。 図15(a)は、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形(回転磁場=飽和磁場×80%)である。図15(b)は、図15(a)に示す波形から図13に示す方法で回転角度を算出したときの回転角度と角度誤差との関係を示す図である。 図16(a)は、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形(回転磁場=飽和磁場×93%)である。図16(b)は、図16(a)に示す波形から図13に示す方法で回転角度を算出したときの回転角度と角度誤差との関係を示す図である。 4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形から図13に示す方法を用いて回転角度を算出したときの、回転磁場の強さと角度誤差の最大値(最大角度誤差)との関係を示す図である。
第n切り替え角度θcnの設定、オフセットの設定、ゲイン調整、及び、チルト補正を自動調整するためのフローチャートの一例である。 本発明の一実施の形態に係る磁気センサモジュールの概略構成図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 磁気センサ及びブリッジ回路]
[1.1. 磁気センサ]
本発明において、磁気センサの種類は、特に限定されるものではなく、あらゆる種類の磁気センサに対して本発明を適用することができる。
本発明が適用可能な磁気センサとしては、具体的には、
(1)ホールセンサ、
(2)AMRセンサ、
(3)磁性体粒子又は磁性体薄膜の間に薄い絶縁膜がある構造を備えたトンネル磁気効果(TMR:Tunneling Magnetoresistive)センサ、
などがある。
TMRセンサとしては、具体的には、以下のようなものがある。
(a) 積層型:
積層型のTMRセンサは、下地層/反強磁性層/強磁性層1/トンネルバリア層/強磁性層2/キャップ層の積層構造を持つ磁気センサである。
強磁性層1の磁化の方向は、反強磁性層によりピン止めされている。一方、強磁性層2の磁化の方向は、外部磁界により回転可能になっている。そのため、外部磁界が作用すると、強磁性層2の磁化の方向のみが変化し、これによってトンネル電流の大きさが変化する。
各層の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の材料を用いることができる。各層の材料としては、具体的には、以下のようなものがある。
(イ)下地層: Ta、NiFeなど。
(ロ)反強磁性層: IrMnなど。
(ハ)強磁性層1: CoFe、Ru、CoFe積層膜、CoFeBなど。
(ニ)トンネルバリア層: Al23、MgO、MgFe2、AlF3など。
(ホ)強磁性層2: CoFe、NiFe、CoFe積層膜、NiFe積層膜、CoFeBなど。
(へ)キャップ層: Ta積層膜、NiFe/Ru積層膜、Ta合金、Ti合金、InTi酸化物など。
(b) ナノグラニュラー型:
ナノグラニュラー型のTMRセンサは、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料からなる薄膜を備えた磁気センサである。金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料とは、nmサイズの強磁性金属粒子と、非磁性・絶縁性材料からなる粒界相を備えた材料をいう。
金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料中の強磁性金属粒子の磁化の方向は、通常、ランダムな方向を向いている。一方、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料に外部磁界が作用すると、強磁性金属粒子の磁化の方向が揃い、これがトンネル電流の大きさの変化となって現れる。金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料は、高いMR比と高い電気比抵抗ρを有するだけでなく、僅かな組成変動によってMR比が大きく変動することがないので、安定した磁気特性を有する薄膜を、再現性良く、かつ低コストで作製することができるという利点がある。
金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料としては、具体的には、
(イ)Co−Y23系、Co−Al23系、Co−Sm23系、Co−Dy23系、FeCo−Y23系などの酸化物系ナノグラニュラー材料、
(ロ)Fe−MgF2系、FeCo−MgF2系、FeCoB−MgF2系、Fe−CaF2系、Fe−AlF3系などのフッ化物系ナノグラニュラー材料、
などがある。
(c) グラニュラーインギャップ(GIG)型:
GIG型のTMRセンサは、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料からなる薄膜の両端に、軟磁性材料からなる薄膜ヨークが配置された構造を持つ磁気センサをいう。
金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料は、高いMR比を示すが、低磁界における磁界感度が非常に小さい。一方、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料からなる薄膜の両端に軟磁性材料からなる薄膜ヨークを配置すると、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料の磁界感度を向上させることができる。
薄膜ヨークの材料としては、具体的には、40〜90%Ni−Fe合金、Fe74Si9Al17、Fe12Ni82Nb6、Co88Nb6Zr6アモルファス合金、(Co94Fe6)70Si1515アモルファス合金、Fe75.6Si13.28.5Nb1.9Cu0.8、Fe83Hf611、Fe85Zr105合金、Fe93Si34合金、Fe711118合金、Fe71.3Nd9.619.1ナノグラニュラー合金、Co70Al1020ナノグラニュラー合金、Co65Fe5Al1020合金などがある。
これらの中でも、GIG型磁気センサは、
(1)ワイドレンジな回転磁場を許容できる(すなわち、角度誤差に影響を与えない回転磁場領域が広い)ので、回転磁場がばらついても安定した角度誤差を得ることができる、
(2)後述する三角波近似と組み合わせると、飽和磁場に相当する回転磁場においても角度誤差が相対的に小さくなるので、MR比による出力を100%使用できる(すなわち、角度誤差の小さい磁場領域に限定して使用する必要がないので、角度誤差と出力を独立して設計することができる)、
(3)バイアス磁界を印加しない状態において回転磁界が作用すると、疑似三角波が出力されるので、後述する三角波近似を用いることにより、角度誤差を低減できる、
という利点がある。そのため、GIG型磁気センサは、本発明が適用される磁気センサとして特に好適である。
[1.2. ブリッジ回路]
本発明において、「ブリッジ回路」とは、4個の抵抗からなるフルブリッジ回路、又は、2個の抵抗からなるハーフブリッジ回路の双方を意味する。
フルブリッジ回路の場合、4個の抵抗の内、少なくとも1個が磁気センサであり、残りが固定抵抗器であっても良い。しかしながら、温度変化が生ずる環境下においても高い出力を安定して得るためには、フルブリッジ回路は、感磁方向が互いに90°異なるように配置された4個の磁気センサで構成するのが好ましい。
同様に、ハーフブリッジ回路の場合、2個の抵抗の内、1個が磁気センサであり、残りが固定抵抗器であっても良い。しかしながら、温度変化が生ずる環境下においても安定した出力を得るためには、ハーフブリッジ回路は、感磁方向が互いに90°異なるように配置された2個の磁気センサで構成するのが好ましい。
ここで、「感磁方向」とは、磁気センサに回転磁界を作用させた場合において、最大の抵抗変化が生ずる方向をいう。
[1.3. ブリッジ回路の機械角]
本発明において、機械角が45°異なるように配置された2つのブリッジ回路(第1ブリッジ回路、第2ブリッジ回路)を用いる。「機械角が45°異なる」とは、2つのブリッジ回路に含まれる磁気センサ(第1磁気センサ、第2磁気センサ)の感磁方向が互いに45°異なるように、2つのブリッジ回路を配置することをいう。
第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路は、一方がフルブリッジ回路で他方がハーフブリッジ回路であっても良い。しかしながら、演算を容易化するためには、双方をフルブリッジ回路とするか、あるいは、双方をハーフブリッジ回路とするのが好ましい。
図1(a)に、機械角が45°異なるように配置された第1ブリッジ回路(図1(a)の左下)及び第2ブリッジ回路(図1(a)の右下)の一例を示す。
第1ブリッジ回路は、感磁方向が互いに90°異なるように4個の磁気抵抗効果(MR)素子(磁気センサ)を配置したフルブリッジ回路である。4個の頂点の1つを接地(GND)し、対角の頂点に電圧Vccを印加する。残りの2つの頂点(中点)の電位V1a、V2aの差分Vdiif1(=V1a−V2a)が第1ブリッジ回路の出力となる。
同様に、第2ブリッジ回路は、感磁方向が互いに90°異なるように4個のMR素子(磁気センサ)を配置したフルブリッジ回路である。4個の頂点の1つを接地(GND)し、対角の頂点に電圧Vccを印加する。残りの2つの頂点(中点)の電位V1b、V2bの差分Vdiif2(=V1b−V2b)が第2ブリッジ回路の出力となる。
バイアス磁界を印加しない場合において、第1ブリッジ回路に外部磁界が作用しないとき、又は、4個のMR素子に作用する磁界が等価(図1(a)の左下図に示す例においては、θ=0°、90°、180°、270°)であるときには、理想的には、中点電位の差分Vdiff1は、ゼロ(V)となる。一方、第1ブリッジ回路に外部磁界が作用すると、一般に、外部磁界の回転角度θに応じて、中点電位の差分Vdiff1(θ)が変動する。
同様に、バイアス磁界を印加しない場合において、第2ブリッジ回路に外部磁界が作用しないとき、又は、4個のMR素子に作用する磁界が等価(図1(a)の右下図に示す例においては、θ=45°、135°、225°、315°)であるときには、理想的には、中点電位の差分Vdiff2は、ゼロ(V)となる。一方、第2ブリッジ回路に外部磁界が作用すると、一般に、外部磁界の回転角度θに応じて、中点電位の差分Vdiff2(θ)が変動する。
2個のMR素子からなるハーフブリッジ回路を用いた場合、図示はしないが、一端を接地し、他端に電圧Vccを印加する。2個のMR素子の交点(中点)の電位(図1(a)のV1a(V2a)又はV1b(V2b)に相当)が、ハーフブリッジ回路の出力となる。
バイアス磁界を印加しない場合において、ハーフブリッジ回路に外部磁界が作用しないとき、又は、2個のMR素子に作用する磁界が等価であるときには、理想的には、中点電位の値は、Vcc/2となる。一方、ハーフブリッジ回路に外部磁界が作用すると、一般に、外部磁界の回転角度θに応じて、中点電位がVcc/2を基準として周期的に増減する。また、この時の出力は、フルブリッジ回路の出力の1/2となる。
[1.4. 逆正接演算を用いた場合の角度誤差]
図1(b)に、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料からなるGMR膜の両端に軟磁性材料を配置したGIG型磁気センサのMR特性の一例を示す。GIG型磁気センサのMR特性は、図1(b)に示すように、外部磁界の強さがゼロ[Oe]のときに抵抗値が最大となり、外部磁界の強さが大きくなるほど、抵抗値が指数関数的に低下するという特徴がある。
ここで、GIG型磁気センサの「飽和磁場」を、抵抗値の磁場に対する感度の変化の割合が極大となる磁場と定義する。図1(b)に示すMR特性を示す磁気センサの場合、飽和磁場は、20[Oe]となる。
図2に、図1(b)に示す特性を示すGIG型磁気センサをそれぞれ4個用いた一対のフルブリッジ回路(機械角:45°)の出力波形を示す。図2には、回転磁場が飽和磁場の10%(左上図)、50%(左下図)、100%(右上図)、又は、150%(右下図)の場合がそれぞれ示されている。
機械角が45°異なる第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路にバイアス磁界を印加することなく回転磁場を付与すると、第1ブリッジ回路から出力される信号Vdiff1及び第2ブリッジ回路から出力される信号Vdiff2は、それぞれ、1周期が180°の周期信号となる。また、Vdiff1とVdiff2の位相差(1周期が360°となるように規格化したときの角度差)は、90°となる。回転角度Tの演算は、Vdiff1又はVdiff2のいずれか一方を用いて行われ、他方は、回転角度Tの位相を判別するためにのみ用いられる。
GIG型磁気センサは、図1(b)に示すようなMR特性を示すため、回転磁場の強さが相対的に小さいときには、図2の左上図に示すように、出力波形は、正弦波に近い。回転磁場の強さが飽和磁場の50%になると、図2の左下図に示すように、出力波形は、三角波に近くなる。回転磁場の強さが飽和磁場の100%になると、図2の右上図に示すように、波形が歪み、先端が尖った三角波となる。さらに、回転磁場の強さが飽和磁場の150%になると、図2の右下図に示すように、波形の歪みが増大する。
図2に示す信号を用いて逆正接演算(Atan)により回転角度を算出すると、回転磁場の強さが大きくなるほど、角度誤差が大きくなる。図3に、図1(b)に示す特性を備えたGIG型磁気センサをそれぞれ4個用いた一対のフルブリッジ回路(機械角:45°)から出力される信号を用いて逆正接演算(Atan)により回転角度を求めたときの、回転磁場の強さと角度誤差の最大値(最大角度誤差)との関係を示す。
図3より、4個のGIG型センサを用いたフルブリッジ回路を用いて逆正接演算(Atan)により回転角度を算出する場合において、
(1)最大角度誤差を4°以下にするためには、回転磁場の強さを飽和磁場の60%以下にする必要がある、
(2)最大角度誤差を3°以下にするためには、回転磁場の強さを飽和磁場の47%以下にする必要がある、
(3)最大角度誤差を2°以下にするためには、回転磁場の強さを飽和磁場の37%以下にする必要がある、
ことがわかる。
[2. 磁気センサ信号処理プログラム(1)]
上述したように、逆正接演算は、波形が正弦波に近いときは最大角度誤差が小さくなるという利点がある。しかしながら、逆正接演算は、波形の正弦波からの乖離が大きくなるほど、最大角度誤差が大きくなるという問題がある。
本発明の第1の実施の形態は、この問題を解決するために、ブリッジ回路から出力される信号を三角波と見なして角度演算を行う点に特徴がある。
三角波近似による回転角度の算出は、具体的には、以下のようにして行われる。
(1)少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路から出力された角度演算信号V1を入力する(角度演算信号入力工程)。
(2)少なくとも1個の第2磁気センサを含み、第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路から出力された識別信号V2を入力する(識別信号入力工程)。
(3)角度演算信号V1を三角波で近似し、角度演算信号V1と外部磁界の回転角度Tとの関係を複数個の一次式で表す(三角波近似工程)。
(4)外部磁界の回転角度Tの位相を、複数個の一次式に対応する複数のサブ領域に分割し、角度演算信号V1及び識別信号V2を用いて、外部磁界の回転角度Tが、いずれのサブ領域にあるか否かを判別する(位相判別工程)。
(5)位相判別工程により、外部磁界の回転角度Tがいずれかのサブ領域にあると判断されたときは、角度演算信号V1をそのサブ領域に対応する一次式に代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出工程)。
本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサ信号処理プログラムは、この方法を実行するためのプログラムであり、コンピュータを角度演算信号入力手段、識別信号入力手段、チルト補正手段、演算式記憶手段、位相判別手段、及び、回転角度算出手段として機能させることを特徴とする。
[2.1. 角度演算信号入力手段]
角度演算信号入力手段は、少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路から出力された角度演算信号V1を入力し、メモリーに記憶させる手段である。
ここで、
(1)第1磁気センサの種類は、特に限定されない点、
(2)第1磁気センサは、特にGIG型磁気センサが好ましい点、
(3)第1ブリッジ回路は、少なくとも1個の第1磁気センサを含んでいれば良く、ブリッジ回路を構成する抵抗のすべてが第1磁気センサであるのが好ましい点、及び、
(4)第1ブリッジ回路は、フルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路のいずれでも良い点、
は、上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.1.1. オフセットの設定]
角度演算信号V1は、主として回転角度Tの演算に用いられるが、後述する識別信号V2と組み合わせて、位相の判別にも用いられる。
第1ブリッジ回路に回転磁界が作用する場合、角度演算信号V1は、周期信号となる。回転角度Tの角度誤差を低減するためには、周期信号の上端の頂点と下端の頂点の中間が基準電位(通常は、ゼロ(V))となるように、角度演算信号V1に対しオフセットの設定をする必要がある。
例えば、第1ブリッジ回路がフルブリッジ回路である場合、中点電位の差分Vdiff1が出力され、これが角度演算信号V1として用いられる。この場合、Vdiff1は、理想的には周期信号の上端の頂点と下端の頂点の中間がゼロ(V)になっている。しかしながら、外的要因(例えば、波形の歪み、ヒステリシスの存在など)により、中間の電位がゼロ(V)にならない場合がある。
また、第1ブリッジ回路がハーフブリッジ回路である場合、中点電位V1a(V1b)が出力され、これが角度演算信号V1として用いられる。この場合、V1a(V1b)は、理想的には印加電圧Vccの1/2の電位を中心とする周期信号となる。しかしながら、外的要因により、中間の電位がVcc/2にならない場合がある。
そのため、このような場合には、角度演算の精度を上げるために、角度演算信号V1の波形の頂点間の中間の電位が基準電位(通常は、ゼロ(V))となるように、オフセットの設定を行う。
回転角度Tを計算するために、後述する計算式がメモリーに記憶されている。計算式の係数が予め固定されている場合には、固定された係数に合うように、角度演算信号V1に対して予めオフセットの設定を行う必要がある。この場合、オフセットの設定が行われた後の角度演算信号V1がコンピュータに入力されることになる。
一方、オフセットの設定は、演算により行うことができる。あるいは、計算式の係数を演算により求めることもできる。この場合、信号の調整(ティーチング)を行うために、実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第1ブリッジ回路の出力V1とを、それぞれメモリーに記憶させる。この信号を用いて、オフセットの設定を行う。後述するゲイン調整やチルト補正を演算により行う場合も同様である。演算によりオフセットを設定する方法には、種々の方法がある。
演算によりオフセットを設定するための第1の方法は、以下のような工程を備えている。
(1)実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第1ブリッジ回路の出力V1とを、それぞれメモリーに記憶させる。
(2)角度演算信号V1の1つ目の下端の頂点の電位A11と1つめの上端の頂点の電位A12とを求め、これらをメモリーに記憶させる。
(3)メモリーに記憶された電位A11、A12を用いて両電位の平均電位(=(A11+A12)/2)を算出し、この平均電位をメモリーに記憶させる。
(4)角度演算信号V1がメモリーに記憶された平均電位(=(A11+A12)/2)となる位置を求め、この位置を回転角度Tの基準角度θ0(通常は、0°)と定義してメモリーに記憶させる。
(5)角度演算信号V1の2つ目の下端の頂点の電位A13と2つめの上端の頂点の電位A14とを求め、これらをメモリーに記憶させる。
(6)メモリーに記憶された電位A13、A14を用いて両電位の平均電位(=(A13+A14)/2)を算出し、この平均電位をメモリーに記憶させる。
(7)角度演算信号V1がメモリーに記憶された平均電位(=(A13+A14)/2)となる位置を求め、この位置を回転角度T=θ0+λ(°)(λは、回転角度Tの1周期。例えば、バイアス磁界を印加しないGIG型センサの場合、λ=180°。)と定義してメモリーに記憶させる。
(8)回転角度T=θ0(°)の位置の電位(=(A11+A12)/2)と回転角度T=θ0+λ(°)の位置の電位(=(A13+A14)/2)との間の平均電位と基準電位(通常は、ゼロ(V))との差を求め、これをオフセットVoffset1と定義してメモリーに記憶させる。
(9)第1ブリッジ回路から逐次出力される実際の角度演算信号V1からVoffset1を減算する。
その他のオフセット方法としては、具体的には、
(1)回転角度T=θ0+nλ/2(nは、整数)である3箇所以上の電位を求め、これらの平均値をオフセットVoffset1とする方法、
(2)出力の最大値と最小値を求め、その平均値をオフセットVoffset1とする方法、
(3)1周期の出力の重心をオフセットVoffset1とする方法、
(4)出力の最大値と最小値の間で変動する仮想電位V0を設定し、この電位に該当する連続する3箇所の位相をθa、θb、θcとし(θa<θb<θc)、V0を変化させた場合に、θb−θa=θc−θbとなるV0をVoffset1とする方法、
などがある。
[2.1.2. ゲイン調整]
上述したように、回転角度Tを計算するための計算式がコンピュータに記憶されている。計算式の係数が予め固定されている場合には、固定された係数に合うように、角度演算信号V1のゲインを調整する必要がある。この場合、ゲイン調整が行われた後の角度演算信号V1がコンピュータに入力されることになる。
一方、固定された係数に適合するように、演算により角度演算信号V1のゲインを調整することができる。あるいは、計算式の係数を演算により算出することもできる。さらに、ゲイン調整は、いずれか1箇所の地点において行っても良く、あるいは、出力絶対値が等価となる2箇所以上の地点において行っても良い。出力絶対値が等価となる2箇所以上の地点においてゲイン調整を行うと、調整精度が向上するという利点がある。演算によりゲインを調整する方法には、種々の方法がある。
演算によりゲイン調整を行うための第1の方法は、固定された係数に合うように、角度演算信号V1のゲインを調整する方法であり、具体的には、以下のような工程を備えている。
(1)実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第1ブリッジ回路の出力V1とを、それぞれメモリーに記憶させる。
(2)角度演算信号V1の下端の頂点の電位A11(1個の頂点の値でも良く、複数個の頂点の値の平均値でも良い)と上端の頂点の電位A12(1個の頂点の値でも良く、複数個の頂点の値の平均値でも良い)とを求め、両電位の差の半分(=(A11−A12)/2)を算出し、これを入力信号の振幅A1INと定義してメモリーに記憶させる。
(3)出力信号の振幅A1outが固定された係数(=計算式の振幅A1)に合うように、メモリーに記憶された入力信号の振幅A1INに対する出力信号の振幅A1outの比G1(=A1out/A1IN)を求め、これをメモリーに記憶させる。
(4)第1ブリッジ回路から逐次出力され、オフセットの設定が行われた後の実際の角度演算信号V1にG1を乗算する。
ゲインを調整するための第2の方法は、計算式の係数を演算により算出する方法であり、具体的には、以下のような工程を備えている。
(1)実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第1ブリッジ回路の出力V1とを、それぞれメモリーに記憶させる。
(2)角度演算信号V1の下端の頂点の電位A11(1個の頂点の値でも良く、複数個の頂点の値の平均値でも良い)と上端の頂点の電位A12(1個の頂点の値でも良く、複数個の頂点の値の平均値でも良い)とを求め、両電位の差の半分(=(A11−A12)/2)を算出し、これを入力信号の振幅A1と定義してメモリーに記憶させる。
(3)メモリーに記憶された入力信号の振幅A1(=(V1a−Voffset1)×(λ/4)×θc1)を後述する計算式に代入する。
ゲインを調整するためのその他の方法としては、具体的には、
(1)周期信号の頂点以外の位置であって、出力絶対値が等価となる2箇所以上の位置(即ち、回転角度(T−θ0)がθg1、θg2=λ/2−θg1、θg3=λ/2+θg1、及び、θg4=λ−θg1(但し、0≦θg1≦λ/4)から選ばれるいずれか2箇所以上の位置)における出力の絶対値が所定の値となるようにゲイン調整する方法、
(2)周期信号のいずれか1箇所の位置における出力の絶対値が所定の値となるようにゲイン調整する方法、
などがある。
[2.1.3. 角度演算信号V1の記憶]
予めオフセットの設定及びゲイン調整を行う場合、オフセットの設定及びゲイン調整が行われた後の角度演算信号V1をコンピュータに入力し、そのままメモリーに記憶させる。
一方、予めオフセットの設定及びゲイン調整を行わない場合、第1ブリッジ回路から逐次出力される角度演算信号V1をコンピュータに入力し、必要な演算を行った後、演算後の信号を角度演算信号V1としてメモリーに記憶させる。
[2.2. 識別信号入力手段]
識別信号入力手段は、少なくとも1個の第2磁気センサを含み、第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路から出力された識別信号V2を入力し、メモリーに記憶させる手段である。
ここで、
(1)第2磁気センサの種類は、特に限定されない点、
(2)第2磁気センサは、特にGIG型磁気センサが好ましい点、
(3)第2ブリッジ回路は、少なくとも1個の第2磁気センサを含んでいれば良く、ブリッジ回路を構成する抵抗のすべてが第2磁気センサであるのが好ましい点、
(4)第2ブリッジ回路は、フルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路のいずれでも良い点、及び、
(5)第2ブリッジ回路は、第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置される点、
は、上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.2.1. オフセットの設定]
本実施の形態において、識別信号V2は、位相の判別にのみ用いられる。
第2ブリッジ回路に回転磁界が作用する場合、識別信号V2は、角度演算信号V1に対して機械角で45°遅れた周期信号となる。回転角度Tの角度誤差を低減するためには、周期信号の上端の頂点と下端の頂点の中間が基準電位(通常は、ゼロ(V))となるように、識別信号V2に対しオフセットの設定をする必要がある。
オフセットの設定は、識別信号V2がコンピュータに入力される前に行っても良く、あるいは、ティーチングのために取得したデータを用いて演算によりオフセットの設定を行っても良い。
識別信号V2のオフセットの設定は、識別信号V2が角度演算信号V1に対して機械角で45°遅れている点を考慮する以外は、角度演算信号V1のオフセットの設定と同様に行うことができる。識別信号V2のオフセットの設定に関するその他の点については、角度演算信号V1のオフセットの設定と同様であるので、詳細な説明を省略する。
[2.2.2. ゲイン調整]
本実施の形態において、識別信号V2は、位相の判別のみに用いられる。そのため、識別信号V2については、必ずしもゲイン調整を行う必要がない。
また、識別信号V2のゲイン調整を行う場合、識別信号V2のゲイン調整は、識別信号V2が角度演算信号V1に対して機械角で45°遅れている点を考慮する以外は、角度演算信号V1のゲイン調整と同様に行うことができる。その他の点については、角度演算信号V1のゲイン調整と同様であるので、詳細な説明を省略する。
[2.2.3. 識別信号V2の記憶]
予めオフセットの設定(及びゲイン調整)を行う場合、オフセットの設定(及びゲイン調整)が行われた後の識別信号V2をコンピュータに入力し、これをそのままメモリーに記憶させる。
一方、オフセットの設定(及びゲインの調整)が行われない場合、第1ブリッジ回路から逐次出力される識別信号V2をコンピュータに入力し、必要な演算を行った後、演算後の信号を識別信号V2としてメモリーに記憶させる。
[2.3. チルト補正手段]
チルト補正手段は、演算式を用いて回転角度Tを算出する前に、
(a)角度演算信号V1の波形を所定の位置を基準として回転させ、角度演算信号V1の傾きを是正するチルト補正、及び、
(b)識別信号V2の波形を所定の位置を基準として回転させ、識別信号V2の傾きを是正するチルト補正、
を行う手段である。
角度演算信号V1は、理想的には回転角度Tがθ0+nλ/2(nは整数)における電位が等しくなっている。同様に、識別信号V2は、理想的には回転角度がθ0+(2n+1)λ/4(nは整数)における電位が等しくなっている。しかしながら、外的要因により波形が歪むと、これらの電位が異なる(すなわち、波形が傾く)場合がある。チルト補正は、必ずしも必要ではないが、波形の傾きが大きい場合においてチルト補正を行うと、回転角度Tの角度誤差を低減することができる。
チルト補正は、信号がコンピュータに入力される前に手動で行っても良い。あるいは、ティーチングのために取得したデータを用いて演算によりチルト補正を行うこともできる。
演算による角度演算信号V1のチルト補正は、具体的には、以下のようにして行う。
(1)実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第1ブリッジ回路の出力V1とを、それぞれメモリーに記憶させる。
(2)メモリーに記憶された角度演算信号V1の回転角θ0+mλ/2(°)(mは、整数)における値V10+mλ/2)及び回転角度θ0+nλ/2(°)(nは整数で、n≠m)における値V10+nλ/2)を読み込む。
(3)読み込まれた値を用いて、波形の傾きΔ1(={V10+nλ/2)−V10+mλ/2)}/{(n−m)λ/2})を算出する。
(4)回転角度θ0+mλ/2(°)を中心として、実際の角度演算信号V1を−tan-1Δ1(rad)回転させる。
例えば、θ0=0°、λ=180°、m=0、n=2である場合、回転角度0°の位置を中心として波形を−tan-1[(V1(180)−V1(0))/180](rad)回転させれば良い。
同様に、演算による識別信号V2のチルト補正は、具体的には、以下のようにして行う。
(1)実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第2ブリッジ回路の出力V2とを、それぞれメモリーに記憶させる。
(2)メモリーに記憶された識別信号V2の回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)(mは、整数)における値V20+(2m+1)λ/4)及び回転角度θ0+(2n+1)λ/4(°)(nは整数で、n≠m)における値V20+(2n+1)λ/4)を読み込む。
(3)読み込まれた値を用いて、波形の傾きΔ2(={V20+(2n+1)λ/4)−V20+(2m+1)λ/4)}/{(n−m)λ/2})を算出する。
(4)回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)を中心として、実際の識別信号V2を−tan-1Δ2(rad)回転させる。
例えば、θ0=0°、λ=180°、m=0、n=1である場合、回転角度45°の位置を中心として波形を−tan-1[(V1(135)−V1(45))/90](rad)回転させれば良い。
予めチルト補正を行う場合、チルト補正が行われた後の信号をコンピュータに入力し、そのままメモリーに記憶させる。
一方、予めチルト補正を行わない場合、ブリッジ回路から逐次出力される信号をコンピュータに入力し、必要な演算を行った後、演算後の信号をメモリーに記憶させる。
[2.4. 演算式記憶手段]
演算式記憶手段は、以下の演算式を前記メモリーに記憶させる手段である。
T−θ0=(V1−Voffset1c1/(V1a−Voffset1) ・・・(1.1)
T−θ0=(V1−V1b)(θc3−θc2)/(V1c−V1b)+θc2 ・・・(1.2)
T−θ0=(V1−V1d)(λ−θc4)/(Voffset1−V1d)+θc4 ・・・(1.3)
但し、
Tは、外部磁界の回転角度(°)。
θ0は、回転角度Tの基準角度(°)。
λは、回転角度Tの周期(°)。
offset1は、角度演算信号V1のオフセット。
θcn(n=1〜4)は、直線近似のための第n基準角度で、0<θc1≦λ/4、λ/4≦θc2≦λ/2、λ/2≦θc3≦3λ/4、3λ/4≦θc4<λ。但し、θc2≠θc3
1a〜V1dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの角度演算信号V1の値。
(1.1)〜(1.3)式は、1周期の角度演算信号V1を3本の折れ線(すなわち、三角波)で近似した式である。
(1.1)式は、回転角度Tが0≦T−θ0≦λ/4にある時に、角度演算信号V1から回転角度Tを算出するために用いられる。
(1.2)式は、回転角度Tがλ/4≦T−θ0≦3λ/4にある時に、角度演算信号V1から回転角度Tを算出するために用いられる。
(1.3)式は、回転角度Tが3λ/4≦T−θ0≦λにある時に、角度演算信号V1から回転角度Tを算出するために用いられる。
但し、境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。「境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい」とは、例えば、T−θ0=λ/4の時は、(1.1)式を用いて回転角度Tを算出しても良く、あるいは、(1.2)式を用いて回転角度Tを算出しても良いことを意味する。T−θ0=0、3λ/4、λである場合も同様である。
θ0は、回転角度Tの基準角度(°)である。一般に、(V1−Voffset1)が最初にゼロになる位置を「0°」と定義する。そのため、θ0は、通常、0°となるが、θ0として「0°」以外の値を採用しても良い。
θ0は、予め定数として記憶させても良く、あるいは、後からコンピュータに入力しても良い。
λは、回転角度Tの周期を表す。ホール素子は、外部磁界の変化に対して直線的なMR特性を示す。同様に、GIG型磁気センサにバイアス磁界を印加し、MR比が直線的に変化する領域内において外部磁界の強さを周期的に変化させると、直線的なMR特性を示す。このような場合、λ=360°となる。
一方、GIG型磁気センサにバイアス磁界を印加することなく、周期的に変化する回転磁界を作用させると、λ=180°となる。
なお、λは、予めメモリーに記憶させておいても良く、あるいは、磁気センサの種類に応じて、λの値を入力できるようにしても良い。
「第n基準角度θcn」とは、角度演算信号V1を直線近似するための基準となるn番目の角度をいう。「V1a〜V1d」とは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの角度演算信号V1の値(基準電位)をいう。
図4に、基準電位V1a〜V1dと、第n基準角度θcnと、直線近似された三角波との関係を示す。角度演算信号V1の直線近似は、第n基準角度θcnと、これに対応する基準電位V1a〜V1dを用いて行われる。
すなわち、(1.1)式は、(θ0、Voffset1)及び(θ0+θc1、V1a)の2点を通る直線として求められる。
また、(1.2)式は、(θ0+θc2、V1b)及び(θ0+θc3、V1c)の2点を通る直線として求められる。
さらに、(1.3)式は、(θ0+θc4、V1d)及び(θ0+λ、Voffset1)の2点を通る直線として求められる。
第n基準角度θcnは、予め定数としてメモリーに記憶させておいても良く、あるいは、測定毎に所定の値を入力しても良い。また、第n基準角度θcnは、任意に選択しても良く、あるいは、互いに一定の関係を満たすように選択しても良い。特に、出力絶対値が等価となるように第n基準角度θcnを選択すると、計算式が簡略化され、あるいは、ゲイン調整が容易化するという利点がある。ここで、「出力絶対値が等価となるように第n基準角度θcnを設定する」とは、0<θc1≦λ/4、θc2=λ/2−θc1、θc3=λ/2+θc1、θc4=λ−θc1とすることをいう。
基準電位V1a〜V1dは、ティーチングの際に記憶されたデータの中から、第n基準角度θcnに対応する角度演算信号V1を読み取り、これを基準電位V1a〜V1dとして演算式に代入しても良い。
あるいは、基準電位V1a〜V1dを予め定数としてメモリーに記憶させ、第n基準角度θcnに対応する角度演算信号V1が基準電位V1a〜V1dにほぼ一致するように、角度演算信号V1のゲイン調整を手動又は演算により行っても良い。
この場合、ゲイン調整は、第n基準角度θcnのいずれか1つの地点において角度演算信号V1が対応する基準電位にほぼ一致するように行っても良い。あるいは、第n基準角度θcnの2箇所以上の地点において、角度演算信号V1が、それぞれ対応する基準電位にほぼ一致するように行っても良い。第n基準角度θcnの2箇所以上の地点において角度演算信号V1が対応する基準電位にほぼ一致するようにゲイン調整を行う場合、出力絶対値が等価となるように第n基準角度θcnを設定するのが好ましい。
例えば、第1ブリッジ回路がフルブリッジ回路であり、(1.1)〜(1.3)式中においてθ0=0、Voffset1=0に固定され、かつ、θc2=λ/2−θc1、θc3=λ/2+θc1、θc4=λ−θc1の関係がある場合、理想的にはV1a=V1b=−V1c=−V1dとなる。従って、(1.1)〜(1.3)式は、次の(1.1.1)〜(1.3.1)式のように表すことができる。
T= (θc1/V1a)V1 ・・・(1.1.1)
T=−(θc1/V1a)V1+λ/2 ・・・(1.2.1)
T= (θc1/V1a)V1+λ ・・・(1.3.1)
さらに、(1.1.1)〜(1.3.1)式において、例えば、θc1=λ/4、V1a=1に固定されている場合、(1.1.1)〜(1.3.1)式は、次の(1.1.2)〜(1.3.2)式のように表すことができる。
T= (λ/4)V1 ・・・(1.1.2)
T=−(λ/4)V1+λ/2 ・・・(1.2.2)
T= (λ/4)V1+λ ・・・(1.3.2)
従って、この場合、回転角度T=nλ/2(°)(nは整数)の時に出力が0(V)となり、かつ、角度演算信号V1の振幅が1(V)となるように、予め角度演算信号V1に対してオフセットの設定及びゲイン調整、並びに、必要に応じてチルト補正を行う。
一方、(1.1.1)〜(1.3.1)式において、θc1及びV1aが予め定数としてメモリーに記憶されていない場合、ティーチング時のデータからθc1に対するV1aを読み込み、θc1及びV1aと(1.1.1)〜(1.3.1)式とを用いて、回転角度Tを算出する。
また、例えば、第1ブリッジ回路がハーフブリッジ回路であり、(1.1)〜(1.3)式中においてθ0=0、Voffset1=Vcc/2に固定され、かつ、θc2=λ/2−θc1、θc3=λ/2+θc1、θc4=λ−θc1の関係がある場合、V1a−Vcc/2=V1b−Vcc/2=−(V1c−Vcc/2)=−(V1d−Vcc/2)である。
この場合において、θc1=λ/4、V1a−Vcc/2=1に固定されているときには、(1.1)〜(1.3)式は、次の(1.1.3)〜(1.3.3)式のように表すことができる。
T= (λ/4)(V1−Vcc/2) ・・・(1.1.3)
T=−(λ/4)(V1−Vcc/2)+λ/2 ・・・(1.2.3)
T= (λ/4)(V1−Vcc/2)+λ ・・・(1.3.3)
従って、この場合、回転角度T=nλ/2(°)(nは整数)の時に出力がVcc/2(V)となり、かつ、角度演算信号V1の振幅が1(V)となるように、角度演算信号V1に対してオフセットの設定及びゲイン調整、並びに、必要に応じてチルト補正を行う。
一方、θc1及びV1aが予め定数としてメモリーに記憶されていない場合、ティーチング時のデータからθc1に対するV1aを読み込み、θc1及びV1aと(1.1)〜(1.3)式とを用いて、回転角度Tを算出する。
図5に、4個のGIG型磁気センサからなり、機械角が45°異なる2つのブリッジ回路から出力された、オフセットの設定及びゲイン調整が行われた後の信号Vdiff1、Vdiff2の一例を示す。
図5において、GIG型磁気センサにはバイアス磁界が印加されていないので、λ=180°となる。また、θ0=0°に設定され、角度演算信号V1(=Vdiff1)は、Voffset1=0、振幅=1となるように、オフセットの設定及びゲイン調整が行われている。同様に、識別信号V2(Vdiff2)は、Voffset2=0、振幅=1となるように、オフセットの設定及びゲイン調整が行われている。そのため、図5の場合、(1.1)〜(1.3)式は、それぞれ、(1.1.4)〜(1.3.4)式のように表せる。
T= Vdiff1×45 (0°≦T<45°) ・・・(1.1.4)
T=−Vdiff1×45+90 (45°≦T<135°) ・・・(1.2.4)
T= Vdiff1×45+180(135°≦T<180°) ・・・(1.3.4)
[2.5. 位相判別手段]
位相判別手段は、メモリーに記憶された角度演算信号V1及び識別信号V2を用いて、以下の手順により回転角度Tの位相を判別する手段である。
(V1−Voffset1)≧0、(V2−Voffset2)≦0の時は、0≦T−θ0≦λ/4。
(V1−Voffset1)≧0、(V2−Voffset2)≧0、又は、(V1−Voffset1)≦0、(V2−Voffset2)≧0の時は、λ/4≦T−θ0≦3λ/4。
(V1−Voffset1)≦0、(V2−Voffset2)≦0の時は、3λ/4≦T−θ0≦λ。
但し、Voffset2は、識別信号V2のオフセット。
境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
「境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい」とは、上記判別式中の「≦」又は「≧」を、それぞれ、適宜「<」又は「>」に置き換えても良いことを意味する。これは、境界値(T−θ0=0、λ/4、3λ/4、λ)の回転角度Tは、境界値を含むいずれの演算式を用いても同じ結果が得られるためである。
角度演算信号V1は、T−θ0=λ/4、3λ/4に頂点を持つ周期信号となる。一方、識別信号V2は、T−θ0=0、λ/2、λに頂点を持つ周期信号となる。そのため、(V1−Voffset1)、及び、(V2−Voffset2)の符号を用いて、回転角度Tの位相を判別することができる(図4参照)。
図5に示す例の場合、λ=180°、θ0=0、Voffset1=Voffset2=0であるので、角度演算信号V1(=Vdiff1)及び識別信号V2(=Vdiff2)を用いて、以下の手順により回転角度Tの位相を判別することができる。
diff1≧0、Vdiff2<0の時は、 0≦T<45°(サブ領域(1))。
diff1≧0、Vdiff2≧0、又は、Vdiff1<0、Vdiff2≧0の時(すなわち、Vdiff2≧0の時)は、 45°≦T<90°(サブ領域(2))又は90°≦T<135°(サブ領域(3))。
diff1<0、Vdiff2<0の時は、135°≦T<180°(サブ領域(4))。
なお、各サブ領域の境界にある回転角度T(上の例では、45°、135°等)は、位相の判別に支障がない限り、いずれか一方のサブ領域に属していれば良い。
[2.6. 回転角度算出手段]
回転角度算出手段は、位相判別手段により判別された回転角度Tの位相に応じて、以下の手順によりメモリーに記憶された角度演算信号V1をメモリーに記憶された(1.1)式〜(1.3)式のいずれかに代入し、回転角度Tを算出する手段である。
0≦T−θ0≦λ/4の時は、(1.1)式。
λ/4≦T−θ0≦3λ/4の時は、(1.2)式。
3λ/4≦T−θ0≦λの時は、(1.3)式。
但し、境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
「境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい」とは、上述したように、
(a)上記判別式中の「≦」又は「≧」を、それぞれ、適宜「<」又は「>」に置き換えても良いこと、又は、
(b)境界値(T−θ0=0、λ/4、3λ/4、λ)の回転角度Tは、境界値を含むいずれの演算式を用いても良いこと、
を意味する。
図5に示す例の場合、λ=180°、θ0=0、Voffset1=Voffset2=0であり、(1.1)〜(1.3)式は(1.1.4)〜(1.3.4)式で表される。そのため、角度演算信号V1(=Vdiff1)及び識別信号V2(=Vdiff2)を用いて、以下の手順により回転角度Tを算出することができる。
0≦T<45°の時は、(1.1.4)式。
45°≦T<135°の時は、(1.2.4)式。
135°≦T<180°の時は、(1.3.4)式。
[2.7. フローチャート]
図6に、本実施の形態に係る磁気センサ信号処理プログラムのフローチャートの一例を示す。図6において、第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路は、ともに4個のGIG型磁気センサからなるフルブリッジ回路である。そのため、角度演算信号V1は第1ブリッジ回路の中点電位の差分Vdiff1となり、識別信号V2は第2ブリッジ回路の中点電位の差分Vdiff2となる。また、メモリーには、θ0=0、Voffset1=Voffset2=0、振幅=1、λ=180°である計算式((1.1.4)〜(1.3.4)式)が記憶されている(演算式記憶手段)。
まず、予め磁気センサに対して回転磁場を与え、ティーチングのための回転角度Tと出力信号Vdiff1、Vdiff2との関係を取得する。ティーチングのために取得したデータは、オフセットの設定、ゲイン調整、及び、チルト補正に用いられる。
次に、ステップ1(以下、単に「S1」という)において、出力信号Vdiff1、Vdiff2のオフセットの設定を行う。この例の場合、Voffset1=Voffset2=0であるので、波形の上端と下端の中間の電位が0(V)となるように、出力信号Vdiff1、Vdiff2のオフセットの設定を行う。上述したように、オフセットの設定は、予め手動で行っても良く、あるいは、ティーチング時の出力信号Vdiff1、Vdiff2を用いて、演算により行っても良い。すなわち、予め手動でオフセットの設定を行う場合には、オフセットの設定のためのプログラムを省略することができる。
S2において、出力信号の振幅が1になるようにゲイン調整を行う。上述したように、ゲイン調整は、少なくともVdiff1に対して行えばよいが、Vdiff1とVdiff2の双方に対して行っても良い。また、ゲイン調整は、予め手動で行っても良く、あるいは、ティーチング時の出力信号Vdiff1、Vdiff2を用いて、演算により行っても良い。すなわち、予め手動でゲイン調整を行う場合には、ゲイン調整のためのプログラムを省略することができる。
S3において、チルト補正を行う(チルト補正手段)。上述したように、チルト補正は必ずしも必要ではないが、波形が歪んでいる場合においてチルト補正を行うと、角度誤差を低減することができる。チルト補正は、Vdiff1とVdiff2の双方に対して行うのが好ましい。また、チルト補正は、予め手動で行っても良く、あるいは、ティーチング時の出力信号Vdiff1、Vdiff2を用いて、演算により行っても良い。すなわち、予め手動でチルト補正を行う場合には、チルト補正のためのプログラムを省略することができる。
S4では、回転角度Tの測定を開始するか否かが判断される。測定を開始しないとき(S4:NO)は、そのまま待機する。一方、測定を開始するとき(S4:YES)には、S5に進む。
S5では、Vdiff1、Vdiff2をコンピュータに入力し、これらをメモリーに記憶させる(角度演算信号入力手段、識別信号入力手段)。
S6では、Vdiff1≧0か否かが判断される(位相判別手段)。Vdiff1≧0である場合(S6:YES)は、S7に進む。S7では、Vdiff2<0か否かが判断される(位相判別手段)。Vdiff1≧0であり、かつ、Vdiff2<0であるとき(S6:YES、S7:YES)は、回転角度Tが0≦T<45°の範囲(サブ領域(1))にあることを示す。この場合には、S8に進み、(1.1.4)式にVdiff1を代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出手段)。
次に、S9に進み、S9において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S9:NO)ときは、S5に戻り、上述したS5〜S9の各ステップが繰り返される。
一方、Vdiff1≧0、Vdiff2≧0になったとき(S6:YES、S7:NO)は、回転角度Tが45°≦T<90°の範囲(サブ領域(2))にあることを示す。この場合には、S11に進み、(1.2.4)式にVdiff1を代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出手段)。
次に、S9に進み、S9において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S9:NO)ときは、S5に戻り、上述したS5〜S7、11、9の各ステップが繰り返される。
また、Vdiff1<0になったとき(S6:NO)は、S10に進む。S10では、Vdiff2≧0か否かが判断される(位相判別手段)。Vdiff1<0、かつ、Vdiff2≧0であるとき(S6:NO、S10:YES)は、回転角度Tが90°≦T<135°の範囲(サブ領域(3))にあることを示す。この場合には、S11に進み、(1.2.4)式を用いた回転角度Tの算出を続行する。
次に、S9に進み、S9において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S9:NO)ときは、S5に戻り、上述したS5〜S6、10〜11、9の各ステップが繰り返される。
さらに、Vdiff1<0、Vdiff2<0になったとき(S6:NO、S10:NO)は、回転角度Tが135°≦T<180°の範囲(サブ領域(4))にあることを示す。この場合には、S12に進み、(1.3.4)式にVdiff1を代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出手段)。
次に、S9に進み、S9において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S9:NO)ときは、S5に戻り、上述したS5〜S6、10、12、9の各ステップが繰り返される。
以下同様にして、測定を終了する(S9:YES)まで、外部磁界の回転角度Tが0〜180°の範囲で継続的に算出される。
[2.8. 角度誤差]
図7(a)に、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形(回転磁場=飽和磁場×25%)を示す。図7(b)に、この波形から図6に示す方法で回転角度を算出したときの回転角度と角度誤差との関係を示す。
同様に、図8に、回転磁場=飽和磁場×65%であるときの出力波形(図8(a))及び回転角度と角度誤差との関係(図8(b))を示す。
同様に、図9に、回転磁場=飽和磁場×90%であるときの出力波形(図9(a))及び回転角度と角度誤差との関係(図9(b))を示す。
図7〜9より、回転磁場の強さ及び回転角度に応じて、角度誤差が変動していることがわかる。
図10に、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形から図6に示す方法を用いて回転角度を算出したときの、回転磁場の強さと角度誤差の最大値(最大角度誤差)との関係を示す。
図10より、図6に示す方法を用いると、
(1)回転磁場の強さが飽和磁場の35〜90%の範囲で、最大角度誤差が4°以下、
(2)回転磁場の強さが飽和磁場の45〜75%の範囲で、最大角度誤差が3°以下、
(3)回転磁場の強さが飽和磁場の60〜65%の範囲で、最大角度誤差が2°以下、
になることがわかる。
[3. 磁気センサ信号処理プログラム(2)]
角度演算信号V1の波形を三角波で近似する方法は、回転磁場の強さが大きく、かつ、比較的広い範囲において比較的高い精度が得られる。しかしながら、この方法は、最大角度誤差が2°以下になる回転磁場の領域が狭い。
本発明の第2の実施の形態は、この問題を解決するために、2つのブリッジ回路から出力される双方の波形を三角波と見なし、回転角度Tが一方の波形の頂点を含むサブ領域にあるときには他方の波形に切り替えて角度演算を行う点に特徴がある。
角度演算のための信号を適宜切り替える場合、回転角度の算出は、具体的には、以下のようにして行われる。
(1)少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路から出力された第1角度演算・識別信号V1を入力する(第1角度演算・識別信号入力工程)。
(2)少なくとも1個の第2磁気センサを含み、第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路から出力された第2角度演算・識別信号V2を入力する(第2角度演算・識別信号入力工程)。
(3)第1角度演算・識別信号V1及び第2角度演算・識別信号V2をそれぞれ三角波で近似し、第1角度演算・識別信号V1又は第2角度演算・識別信号V2と外部磁界の回転角度Tとの関係をそれぞれ複数個の一次式で表す(三角波近似工程)。
(4)外部磁界の回転角度Tの位相を、第1角度演算・識別信号V1又は第2角度演算・識別信号V2のいずれか一方の波形の頂点近傍を含み、かつ他方の波形の頂点近傍を含まない複数のサブ領域に分割し、第1角度演算・識別信号V1及び第2角度演算・識別信号V2を用いて、外部磁界の回転角度Tが、いずれのサブ領域にあるか否かを判別する(位相判別工程)。
(5)位相判別工程により、外部磁界の回転角度Tが、第1角度演算・識別信号V1の波形の頂点近傍を含むサブ領域にあると判断されたときは、そのサブ領域に対応する第2角度演算・識別信号V2についての一次式に第2角度演算・識別信号V2を代入して回転角度Tを算出し、
位相判別工程により外部磁界の回転角度Tが、第2角度演算・識別信号V2の波形の頂点近傍を含むサブ領域にあると判断されたときは、そのサブ領域に対応する第1角度演算・識別信号V1についての一次式に第1角度演算・識別信号V1を代入して前記回転角度Tを算出する(回転角度算出工程)。
本発明の第2の実施の形態に係る磁気センサ信号処理プログラムは、この方法を実行するためのプログラムであり、コンピュータを第1角度演算・識別信号入力手段、第2角度演算・識別信号入力手段、チルト補正手段、演算式記憶手段、位相判別手段、及び、回転角度算出手段として機能させることを特徴とする。
[3.1. 第1角度演算・識別信号入力手段]
第1角度演算・識別信号入力手段は、少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路から出力された第1角度演算・識別信号V1を入力し、メモリーに記憶させる手段である。
ここで、
(1)第1磁気センサの種類は、特に限定されない点、
(2)第1磁気センサは、特にGIG型磁気センサが好ましい点、
(3)第1ブリッジ回路は、少なくとも1個の第1磁気センサを含んでいれば良く、ブリッジ回路を構成する抵抗のすべてが第1磁気センサであるのが好ましい点、及び、
(4)第1ブリッジ回路は、フルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路のいずれでも良い点、
は、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.1.1. オフセットの設定]
第1角度演算・識別信号V1は、回転角度Tの演算と位相の判別の双方に用いられる。
第1ブリッジ回路に回転磁界が作用する場合、第1角度演算・識別信号V1は、周期信号となる。回転角度Tの角度誤差を低減するためには、周期信号の上端の頂点と下端の頂点の中間が基準電位(通常は、ゼロ(V))となるように、第1角度演算・識別信号V1に対しオフセットの設定をする必要がある。
第1角度演算・識別信号V1のオフセット方法は、第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
[3.1.2. ゲイン調整]
回転角度Tを計算するための計算式がメモリーに記憶されている。計算式の係数が予め固定されている場合には、固定された係数に適合するように、第1角度演算・識別信号V1のゲインを調整する必要がある。この場合、ゲイン調整が行われた後の第1角度演算・識別信号V1がコンピュータに入力されることになる。
一方、固定された係数に適合するように、ティーチングのために取得したデータを用いて演算により第1角度演算・識別信号V1のゲインを調整することができる。あるいは、計算式の係数を演算により算出することもできる。さらに、ゲイン調整は、いずれか1箇所の地点において行っても良く、あるいは、出力絶対値が等価となる2箇所以上の地点において行っても良い。出力絶対値が等価となる2箇所以上の地点においてゲイン調整を行うと、ゲイン調整の精度が向上するという利点がある。
本実施の形態において、回転角度Tが所定の角度に達したときに回転角度Tの演算に用いる信号を切り替える。そのため、信号の切り替え前後において回転角度Tの値が整合するように、ゲイン調整を行う必要がある。
第1角度演算・識別信号V1の演算によるゲイン調整の方法は、種々の方法がある。
第1の方法は、具体的には、以下のような工程を備えている。
(1)実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第1ブリッジ回路の出力V1とを、それぞれメモリーに記憶させる。
(2)ゲイン調整のための第n基準角度θgn(n=1〜4、λ(n−1)/4≦θgn≦λn/4)を設定する。第n基準角度θgnは、後述する第n切り替え角度θcnと同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
第1の方法においては、θg2=λ/2−θg1、θg3=λ/2+θg1、及び、θg4=λ−θg1(但し、0≦θg1≦λ/4)の関係を満たすように第n基準角度θgnを設定する。この場合、第1基準角度θg1は、λ/8(λ=180°の時は、22.5°)が理想的であるが、λ/8から多少ずれていても良い。しかしながら、λ/8からのずれが大きくなりすぎると、角度誤差の原因となる。角度誤差を低減するためには、第1基準角度θg1は、λ/8の±30%以下が好ましく、さらに好ましくは、λ/8の±20%以下、さらに好ましくは、λ/8の±10%以下である。
なお、基準角度θgnは、予め定数としてメモリーに記憶させておいても良く、あるいは、測定毎に設定された値を入力しても良い。さらに、演算により最適値を求めても良い。
(3)(T−θ0)がθg1、λ/2−θg1、λ/2+θg1、及び、λ−θg1であるときの出力絶対値|V11|、|V12|、|V13|、|V14|を求め、これらをメモリーに記憶させる。
(4)メモリーに記憶された出力絶対値|V11|、|V12|、|V13|、|V14|を用いてこれらの平均電位A1IN(=(|V11|+|V12|+|V13|+|V14|)/4)を算出し、この平均電位をメモリーに記憶させる。
(5)所定の位置における出力信号の出力絶対値A1outが固定された係数(例えば、第n切り替え角度θcnの位置における出力絶対値)に合うように、メモリーに記憶された入力信号の出力絶対値A1INに対する出力信号の出力絶対値A1outの比G1(=A1out/A1IN)を求め、これをメモリーに記憶させる。
(6)第1ブリッジ回路から逐次出力され、オフセットの設定が行われた後の実際の第1角度演算・識別信号V1にG1を乗算する。
第1角度演算・識別信号V1のその他のゲイン調整方法としては、具体的には、第1角度演算・識別信号V1の振幅が所定の値となるように、ゲイン調整する方法などがある。
[3.1.3. 第1角度演算・識別信号V1の記憶]
予めオフセットの設定及びゲイン調整を行う場合、オフセットの設定及びゲイン調整が行われた後の第1角度演算・識別信号V1をコンピュータに入力し、そのままメモリーに記憶させる。
一方、予めオフセットの設定及びゲイン調整を行わない場合、第1ブリッジ回路から逐次出力される第1角度演算・識別信号V1をコンピュータに入力し、必要な演算を行った後、演算後の信号を第1角度演算・識別信号V1としてメモリーに記憶させる。
[3.2. 第2角度演算・識別信号入力手段]
第2角度演算・識別信号入力手段は、少なくとも1個の第2磁気センサを含み、第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路から出力された第2角度演算・識別信号V2を入力し、メモリーに記憶させる手段である。
ここで、
(1)第2磁気センサの種類は、特に限定されない点、
(2)第2磁気センサは、特にGIG型磁気センサが好ましい点、
(3)第2ブリッジ回路は、少なくとも1個の第2磁気センサを含んでいれば良く、ブリッジ回路を構成する抵抗のすべてが第2磁気センサであるのが好ましい点、
(4)第2ブリッジ回路は、フルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路のいずれでも良い点、及び、
(5)第2ブリッジ回路は、第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置される点、
は、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.2.1. オフセットの設定]
本実施の形態において、第2角度演算・識別信号V2は、回転角度の演算と位相の判別の双方に用いられる。この点が、第1の実施の形態とは異なる。
第2ブリッジ回路に回転磁界が作用する場合、第2角度演算・識別信号V2は、第1角度演算・識別信号V1に対して機械角で45°遅れた周期信号となる。回転角度Tの角度誤差を低減するためには、周期信号の上端の頂点と下端の頂点の中間が基準電位(通常は、ゼロ(V))となるように、第2角度演算・識別信号V2に対しオフセットの設定をする必要がある。
オフセットの設定は、第2角度演算・識別信号V2がコンピュータに入力される前に行っても良く、あるいは、ティーチングのために取得したデータを用いて演算によりオフセットの設定を行っても良い。
第2角度演算・識別信号V2のオフセットの設定は、第2角度演算・識別信号V2が第1角度演算・角度演算信号V1に対して機械角で45°遅れている点を考慮する以外は、第1角度演算・識別信号V1のオフセットの設定と同様に行うことができる。第2角度演算・識別信号V2のオフセットの設定に関するその他の点については、第1角度演算・識別信号V1のオフセットの設定と同様であるので、詳細な説明を省略する。
[3.2.2. ゲイン調整]
本実施の形態において、第2角度演算・識別信号V2は、位相の判別だけでなく、回転角度Tの算出にも用いられる。そのため、第2角度演算・識別信号V2についても、ゲイン調整を行う必要がある。
本実施の形態において、回転角度Tが所定の角度に達したときに回転角度Tの演算に用いる信号を切り替える。そのため、信号の切り替え前後において回転角度Tの値が整合するように、ゲイン調整を行う必要がある。
ゲイン調整は、第2角度演算・識別信号V2がコンピュータに入力される前に行っても良く、あるいは、ティーチングのために取得したデータを用いて、演算によりゲイン調整を行っても良い。
第2角度演算・識別信号V2のゲイン調整は、第2角度演算・識別信号V2が第1角度演算・角度演算信号V1に対して機械角で45°遅れている点を考慮する以外は、第1角度演算・識別信号V1のゲイン調整と同様に行うことができる。例えば、ゲイン調整のための基準角度をθg(0≦θg≦λ/4)とすると、出力絶対値が等価となる位置は、λ/4−θg、λ/4+θg、3λ/4−θg、3λ/4+θgとなる。
第2角度演算・識別信号V2のゲイン調整に関するその他の点については、第1角度演算・識別信号V1のゲイン調整と同様であるので、詳細な説明を省略する。
[3.2.3. 第2角度演算・識別信号V2の記憶]
予めオフセットの設定及びゲイン調整を行う場合、オフセットの設定及びゲイン調整が行われた後の第2角度演算・識別信号V2をコンピュータに入力し、これをそのままメモリーに記憶させる。
一方、予めオフセットの設定及びゲイン調整を行わない場合、第2ブリッジ回路から逐次出力される第2角度演算・識別信号V2をコンピュータに入力し、必要な演算を行った後、演算後の信号を第2角度演算・識別信号V2としてメモリーに記憶させる。
[3.3. チルト補正手段]
チルト補正手段は、演算式を用いて回転角度Tを算出する前に、
(a)角度演算信号V1の波形を所定の位置を基準として回転させ、角度演算信号V1の傾きを是正するチルト補正、及び、
(b)識別信号V2の波形を所定の位置を基準として回転させ、識別信号V2の傾きを是正するチルト補正、
を行う手段である。
第1角度演算・識別信号V1は、理想的には回転角度がθ0+nλ/2(nは整数)における電位が等しくなっている。同様に、第2角度演算・識別信号V2は、理想的には回転角度がθ0+(2n+1)λ/4(nは整数)における電位が等しくなっている。しかしながら、外的要因により波形が歪むと、これらの電位が異なる(すなわち、波形が傾く)場合がある。チルト補正は、必ずしも必要ではないが、波形の傾きが大きい場合においてチルト補正を行うと、回転角度Tの角度誤差を低減することができる。
チルト補正は、信号がコンピュータに入力される前に手動で行っても良い。あるいは、ティーチングのために取得したデータを用いて、演算によりチルト補正を行っても良い。
演算による第1角度演算・識別信号V1のチルト補正は、具体的には、以下のようにして行う。
(1)実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第1ブリッジ回路の出力V1とを、それぞれメモリーに記憶させる。
(2)メモリーに記憶された第1角度演算・識別信号V1の回転角度θ0+mλ/2(°)(mは、整数)における値V10+mλ/2)及び回転角度θ0+nλ/2(°)(nは整数で、n≠m)における値V10+nλ/2)を読み込む。
(3)読み込まれた値を用いて、波形の傾き波形の傾きΔ1(={V10+nλ/2)−V10+mλ/2)}/{(n−m)λ/2})を算出する。
(4)回転角度θ0+mλ/2(°)を中心として、実際の第1角度演算・識別信号V1を−tan-1Δ1(rad)回転させる
同様に、演算による第2角度演算・識別信号V2のチルト補正は、具体的には、以下のようにして行う。
(1)実際の角度検出を行う前に、磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、このときの回転磁場の回転角度と、その回転角度に対応する第2ブリッジ回路の出力V2とを、それぞれメモリーに記憶させる。
(2)メモリーに記憶された第2角度演算・識別信号V2の回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)(mは、整数)における値V20+(2m+1)λ/4)及び回転角度(θ0+(2n+1)λ/4)(°)(nは整数で、n≠m)における値V20+(2n+1)λ/4)を読み込む。
(3)読み込まれた値を用いて、波形の傾きΔ2(={V20+(2n+1)λ/4)−V20+(2m+1)λ/4)}/{(n−m)λ/2})を算出する。
(4)回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)を中心として、実際の第2角度演算・識別信号V2を−tan-1Δ2(rad)回転させる。
チルト補正手段に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
[3.4. 演算式記憶手段]
演算式記憶手段は、以下の演算式を前記メモリーに記憶させる手段である。
T−θ0=(V1−Voffset1c1/(V1a−Voffset1) ・・・(2.1)
T−θ0=(V2−V2a)(θc2−θc1)/(V2b−V2a)+θc1 ・・・(2.2)
T−θ0=(V1−V1b)(θc3−θc2)/(V1c−V1b)+θc2 ・・・(2.3)
T−θ0=(V2−V2c)(θc4−θc3)/(V2d−V2c)+θc3 ・・・(2.4)
T−θ0=(V1−V1d)(λ−θc4)/(Voffset1−V1d)+θc4 ・・・(2.5)
但し、
Tは、外部磁界の回転角度(°)。
θ0は、回転角度Tの基準角度(°)。
λは、回転角度Tの周期(°)。
offset1は、第1角度演算・識別信号V1のオフセット。
θcn(n=1〜4)は、第n切り替え角度で、λ(n−1)/4<θcn<λn/4。
1a〜V1dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの第1角度演算・識別信号V1の値。
2a〜V2dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの第2角度演算・識別信号V2の値。
(2.1)、(2.3)、(2.5)式は、1周期の第1角度演算・識別信号V1を3本の折れ線(すなわち、三角波)で近似した式である。また、(2.2)、(2.4)式は、1周期の第2角度演算・識別信号V2を2本の折れ線(すなわち、三角波)で近似した式である。これらの式は、信号の位相に応じて、切り替えて用いられる。
すなわち、(2.1)式は、回転角度Tが0≦T−θ0≦θc1にある時に、第1角度演算・識別信号V1から回転角度Tを算出するために用いられる。
(2.2)式は、回転角度Tがθc1≦T−θ0≦θc2にある時に、第2角度演算・識別信号V2から回転角度Tを算出するために用いられる。
(2.3)式は、回転角度Tがθc2≦T−θ0≦θc3にある時に、第1角度演算・識別信号V1から回転角度Tを算出するために用いられる。
(2.4)式は、回転角度Tがθc3≦T−θ0≦θc4にある時に、第2角度演算・識別信号V2から回転角度Tを算出するために用いられる。
(2.5)式は、回転角度Tがθc4≦T−θ0≦λにある時に、第1角度演算・識別信号V1から回転角度Tを算出するために用いられる。
但し、境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。「境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい」とは、例えば、T−θ0=θc1の時は、(2.1)式を用いて回転角度Tを算出しても良く、あるいは、(2.2)式を用いて回転角度Tを算出しても良いことを意味する。T−θ0=0、θc2〜θc4、λである場合も同様である。
「第n切り替え角度θcn」とは、信号の切り替えを行うときの回転角度をいう。第n切り替え角度θcnは、λ(n−1)/4<θcn<λn/4であればよい。第n切り替え角度θcnは、λ/8+λ(n−1)/4(λ=180°の時は、22.5°、67.5°、112.5°、157.5°)が理想的であるが、λ/8+λ(n−1)/4から多少ずれていても良い。しかしながら、λ/8+λ(n−1)/4からのずれが大きくなりすぎると、角度誤差の原因となる。角度誤差を低減するためには、第n切り替え角度θcnは、{λ/8+λ(n−1)/4}を基準として、λ/8の±30%以下が好ましく、さらに好ましくは、λ/8の±20%以下、さらに好ましくは、λ/8の±10%以下である。
「V1a〜V1d」とは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの第1角度演算・識別信号V1の値(基準電位)をいう。
また、「V2a〜V2d」とは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの第2角度演算・識別信号V2の値(基準電位)をいう。
図11に、基準電位V1a〜V1d、V2a〜V2dと、第n切り替え角度θcnと、直線近似された三角波との関係を示す。第1及び第2角度演算・識別信号V1、V2の直線近似は、第n切り替え角度θcnと、これに対応する基準電位V1a〜V1d、V2a〜V2dを用いて行われる。
すなわち、(2.1)式は、(θ0、Voffset1)及び(θ0+θc1、V1a)の2点を通る直線として求められる。
また、(2.2)式は、(θ0+θc1、V2a)及び(θ0+θc2、V2b)の2点を通る直線として求められる。
また、(2.3)式は、(θ0+θc2、V1b)及び(θ0+θc3、V1c)の2点を通る直線として求められる。
また、(2.4)式は、(θ0+θc3、V2c)及び(θ0+θc4、V2d)の2点を通る直線として求められる。
さらに、(2.5)式は、(θ0+θc4、V1d)及び(θ0+λ、Voffset1)の2点を通る直線として求められる。
第n切り替え角度θcnは、予め定数としてメモリーに記憶させておいても良く、あるいは、測定毎に所定の値を入力しても良い。また、第n切り替え角度θcnは、任意に選択しても良く、あるいは、互いに一定の関係を満たすように選択しても良い。さらに、第n切り替え角度θcnは、演算により最適値を求めても良い。特に、出力絶対値が等価となるように第n切り替え角度θcnを選択すると、計算式が簡略化され、あるいは、ゲイン調整が容易化するという利点がある。ここで、「出力絶対値が等価となるように第n切り替え角度θcnを設定する」とは、0<θc1<λ/4、θc2=λ/2−θc1、θc3=λ/2+θc1、θc4=λ−θc1とすることをいう。
基準電位V1a〜V1dは、ティーチングの際に記憶されたデータの中から、第n切り替え角度θcnに対応する第1角度演算・識別信号V1を読み取り、これを基準電位V1a〜V1dとして演算式に代入しても良い。
あるいは、基準電位V1a〜V1dを予め定数としてメモリーに記憶させ、第n切り替え角度θcnに対応する第1角度演算・識別信号V1が基準電位V1a〜V1dにほぼ一致するように、第1角度演算・識別信号V1のゲイン調整を行っても良い。
この場合、ゲイン調整は、第n切り替え角度θcnのいずれか1つの地点において第1角度演算・識別信号V1が対応する基準電位にほぼ一致するように行っても良い。あるいは、第n切り替え角度θcnの2箇所以上の地点において、第1角度演算・識別信号V1が、それぞれ対応する基準電位にほぼ一致するように行っても良い。第n切り替え角度θcnの2箇所以上の地点において第1角度演算・識別信号V1が対応する基準電位にほぼ一致するようにゲイン調整を行う場合、出力絶対値が等価となるように第n切り替え角度θcnを設定するのが好ましい。
これらの点は、第2角度演算・識別信号V2の基準電位V2a〜V2dについても同様である。
例えば、第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路がフルブリッジ回路であり、(2.1)〜(2.5)式中においてθ0=0、Voffset1=Voffset2=0に固定され、かつ、θc2=λ/2−θc1、θc3=λ/2+θc1、θc4=λ−θc1の関係がある場合、理想的にはV1a=V1b=−V1c=−V1dとなり、かつ、−V2a=V2b=V2c=−V2dとなる。従って、(2.1)〜(2.5)式は、次の(2.1.1)〜(2.5.1)式のように表すことができる。
T= (θc1/V1a)V1 ・・・(2.1.1)
T=−{(λ/4−θc1)/V2a}V2+λ/4 ・・・(2.2.1)
T=−(θc1/V1a)V1+λ/2 ・・・(2.3.1)
T= {(λ/4−θc1)/V2a}V2+3λ/4 ・・・(2.4.1)
T= (θc1/V1a)V1+λ ・・・(2.5.1)
さらに、第1角度演算・識別信号V1の振幅と第2角度演算・識別信号V2の振幅とが同一になるようにゲイン調整すると、理想的には、θc1/V1a=−(λ/4−θc1)/V2aの関係が成り立つ。この場合には、(2.1.1)〜(2.5.1)式は、次の(2.1.2)〜(2.5.2)式のように表すことができる。
T= (θc1/V1a)V1 ・・・(2.1.2)
T= (θc1/V1a)V2+λ/4 ・・・(2.2.2)
T=−(θc1/V1a)V1+λ/2 ・・・(2.3.2)
T=−(θc1/V1a)V2+3λ/4 ・・・(2.4.2)
T= (θc1/V1a)V1+λ ・・・(2.5.2)
従って、この場合、回転角度T=nλ/2(°)(nは整数)の時に第1角度演算・識別信号V1の出力が0(V)となり、かつ、回転角度T=θc1の時の出力がV1a(V)となるように、予め第1角度演算・識別信号V1に対してオフセットの設定及びゲイン調整、並びに、必要に応じてチルト補正を行う。
同様に、回転角度T=(2n+1)λ/4(°)(nは整数)の時に第2角度演算・識別信号V2の出力が0(V)となり、かつ、θc1/V1a=−(λ/4−θc1)/V2aとなるように、予め第2角度演算・識別信号V2に対してオフセットの設定及びゲイン調整、並びに、必要に応じてチルト補正を行う。
図12に、4個のGIG型磁気センサからなり、機械角が45°異なる2つのブリッジ回路から出力された、オフセットの設定及びゲイン調整が行われた後の信号Vdiff1、Vdiff2の一例を示す。
図12において、GIG型磁気センサにはバイアス磁界が印加されていないので、λ=180°となる。また、θ0=0、θc1(≡θc)=21°、θc2=λ/2−θc1、θc3=λ/2+θc1、θc4=λ−θc1に設定されている。第1角度演算・識別信号V1(=Vdiff1)は、Voffset1=0、かつ、T=θc、λ/2−θc、λ/2+θc、λ−θcの時に|V1|=1となるように、オフセットの設定及びゲイン調整が行われている。また、第2角度演算・識別信号V2(=Vdiff2)は、Voffset2=0、かつ、T=λ/4−θc、λ/4+θc、3λ/4−θc、3λ/4+θcの時に|V2|=1となるように、オフセットの設定及びゲイン調整が行われている。
そのため、図12の場合、(2.1)〜(2.5)式は、それぞれ、(2.1.3)〜(2.5.3)式のように表せる。
T= V1×θc ・・・(2.1.3)
T= V2×θc+45 ・・・(2.2.3)
T=−V1×θc+90 ・・・(2.3.3)
T=−V2×θc+135 ・・・(2.4.3)
T= V1×θc+180 ・・・(2.5.3)
[3.5. 位相判別手段]
位相判別手段は、メモリーに記憶された第1角度演算・識別信号V1及び第2角度演算・識別信号V2を用いて、以下の手順により回転角度Tの位相を判別する手段である。
(a)(V1−Voffset1)≧0、かつ、(V2−Voffset2)≦0である場合において、(V1−V1a)≦0又は(V2−V2a)≦0が真の時は0≦T−θ0≦θc1、偽の時はθc1≦T−θ0≦θc2
(b)(V1−Voffset1)≧0、かつ、(V2−Voffset2)≧0である場合において、(V1−V1b)≧0又は(V2−V2a)≦0が真の時はθc1≦T−θ0≦θc2、偽の時はθc2≦T−θ0≦θc3
(c)(V1−Voffset1)≦0、かつ、(V2−Voffset2)≧0である場合において、(V1−V1c)≧0又は(V2−V2c)≧0が真の時はθc2≦T−θ0≦θc3、偽の時はθc3≦T−θ0≦θc4
(d)(V1−Vofsset1)≦0、かつ、(V2−Voffset2)≦0である場合において、(V1−V1d)≦0又は(V2−V2d)≧0が真の時はθc3≦T−θ0≦θc4、偽の時はθc4≦T−θ0≦λ。
但し、Voffset2は、第2角度演算・識別信号V2のオフセット。
境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
「境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい」とは、上記判別式中の「≦」又は「≧」を、それぞれ、適宜「<」又は「>」に置き換えても良いことを意味する。これは、境界値(T−θ0=0、θc1〜θc4、λ)の回転角度Tは、境界値を含むいずれの演算式を用いても同じ結果が得られるためである。
例えば、(a)において、「(V1−Voffset1)≧0、かつ、(V2−Voffset2)<0である場合」とは、0≦T−θ0<λ/4であることを表す(図11参照)。また、この場合において、(V1−V1a)<0又は(V2−V2a)<0が真の時には、0≦T−θ0<θc1であることを表し、偽の時には、θc1≦T−θ0(<λ/4)<θc2であることを表す。
同様に、(b)において、「(V1−Voffset1)≧0、かつ、(V2−Voffset2)≧0である場合」とは、λ/4≦T−θ0≦λ/2であることを表す。また、この場合において、(V1−V1b)>0又は(V2−V2a)<0が真の時はθc1≦(λ/4≦)T−θ0<θc2であることを表し、偽の時はθc2≦T−θ0(≦λ/2)<θc3であることを表す。
同様に、(c)において、「(V1−Voffset1)<0、かつ、(V2−Voffset2)≧0である場合」とは、λ/2<T−θ0≦3λ/4であることを表す。また、この場合において、(V1−V1c)>0又は(V2−V2c)>0が真の時はθc2≦(λ/2<)T−θ0<θc3であることを表し、偽の時はθc3≦T−θ0(≦3λ/4)<θc4であることを表す。
同様に、(d)において、「(V1−Vofsset1)<0、かつ、(V2−Voffset2)<0である場合」とは、3λ/4<T−θ0<λであることを表す。また、この場合において、(V1−V1d)<0又は(V2−V2d)>0が真の時はθc3≦(3λ/4<)T−θ0<θc4であることを表し、偽の時はθc4≦T−θ0<λであることを表す。
第1角度演算・識別信号V1は、T−θ0=λ/4、3λ/4に頂点を持つ周期信号となる。一方、第2角度演算・識別信号V2は、T−θ0=0、λ/2、λに頂点を持つ周期信号となる。そのため、V1及びV2の符号及び大きさを用いて、回転角度Tの位相を判別することができる。
図12に示す例の場合、λ=180°、θ0=0、Voffset1=Voffset2=0、V1a=V1b=−V1c=−V1d=1、−V2a=V2b=V2c=−V2d=1である。従って、θc1をθcとすると、第1角度演算・識別信号V1(=Vdiff1)及び第2角度演算・識別信号V2(=Vdiff2)を用いて、以下の手順により回転角度Tの位相を判別することができる。
a)Vdiff1≧0、Vdiff2<0、Vdiff1<1 → 0≦T<θc
diff1≧0、Vdiff2<0、Vdiff1≧1 → θc≦T<90°−θc
b)Vdiff1≧0、Vdiff2≧0、Vdiff1>1 → θc≦T<90°−θc
diff1≧0、Vdiff2≧0、Vdiff1≦1 → 90°−θc≦T<90°+θc
c)Vdiff1<0、Vdiff2≧0、Vdiff1>−1→ 90°−θc≦T<90°+θc
diff1<0、Vdiff2≧0、Vdiff1≦−1→ 90°+θc≦T<180°−θc
d)Vdiff1<0、Vdiff2<0、Vdiff1<−1→ 90°+θc≦T<180°−θc
diff1<0、Vdiff2<0、Vdiff1≧−1→ 180°−θc≦T<180°
これらを整理すると、以下のような判別式が得られる。
0≦Vdiff1<1、Vdiff2<0の時は、0≦T<θc(サブ領域(1))。
1≦Vdiff1の時は、θc≦T<90°−θc(サブ領域(2))。
−1≦Vdiff1<1、0≦Vdiff2の時は、90°−θc≦T<90°+θc(サブ領域(3))。
diff1<−1の時は、90°+θc≦T<180°−θc(サブ領域(4))。
−1≦Vdiff1<0、Vdiff2<0の時は、180°−θc≦T<180°(サブ領域(5))。
なお、各サブ領域の境界にある回転角度T(上の例では、θc、90°−θc等)は、位相の判別に支障がない限り、いずれか一方のサブ領域に属していれば良い。
[3.6. 回転角度算出手段]
回転角度算出手段は、位相判別手段により判別された回転角度Tの位相に応じて、以下の手順によりメモリーに記憶された第1角度演算・識別信号V1又は第2角度演算・識別信号V2をメモリーに記憶された(2.1)式〜(2.5)式のいずれかに代入し、回転角度Tを算出する手段である。
0≦T−θ0≦θc1の時は、(2.1)式。
θc1≦T−θ0≦θc2の時は、(2.2)式。
θc2≦T−θ0≦θc3の時は、(2.3)式。
θc3≦T−θ0≦θc4の時は、(2.4)式。
θc4≦T−θ0≦λの時は、(2.5)式。
但し、境界値は、いずれのサブ領域に属していても良い。
「境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい」とは、上述したように、
(a)上記判別式中の「≦」又は「≧」を、それぞれ、適宜「<」又は「>」に置き換えても良いこと、又は、
(b)境界値(T−θ0=0、θc1〜θc4、λ)の回転角度Tは、境界値を含むいずれの演算式を用いても良いこと、
を意味する。
なお、演算を容易化するためには、計算式の切り替え位置は、出力絶対値が等価となる位置(θc、λ/2−θc、λ/2+θc、λ−θc)とするのが好ましいが、各切り替え位置は、出力絶対値が等価となる位置から多少ずれていても良い。
図12に示す例の場合、λ=180°、θ0=0、θc2=λ/2−θc、θc3=λ/2+θc、θc4=λ−θc、Voffset1=Voffset2=0であり、(2.1)〜(2.5)式は(2.1.3)〜(2.5.3)式で表される。従って、第1角度演算・識別信号V1(=Vdiff1)及び第2角度演算・識別識別信号V2(=Vdiff2)を用いて、以下の手順により回転角度Tを算出することができる。
0≦T<θcの時は、(2.1.3)式。
θc≦T<90°−θcの時は、(2.2.3)式。
90°−θc≦T<90°又は90°≦T<90°+θcの時は、(2.3.3)式。
90°+θc≦T<180°−θcの時は、(2.4.3)式。
180°−θc≦T<180°の時は、(2.5.3)式。
[3.7. フローチャート]
図13に、本実施の形態に係る磁気センサ信号処理プログラムのフローチャートの一例を示す。図13において、第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路は、ともに4個のGIG型磁気センサからなるフルブリッジ回路である。そのため、第1角度演算・識別信号V1は第1ブリッジ回路の中点電位の差分Vdiff1となり、第2角度演算・識別信号V2は第2ブリッジ回路の中点電位の差分Vdiff2となる。また、メモリーには、(2.1.3)〜(2.5.3)式が記憶されている(演算式記憶手段)。
まず、予め磁気センサに対して人為的に回転磁場を与え、ティーチングのための回転角度Tと出力信号Vdiff1、Vdiff2との関係を取得する。ティーチングのために取得したデータは、オフセットの設定、ゲイン調整、及び、チルト補正に用いられる。
次に、ステップ21(以下、単に「S21」という)において、切り替え角度θcの設定を行う。なお、θcを予め定数としてメモリーに記憶させておく場合は、S21を省略することができる。
次に、S22において、出力信号Vdiff1、Vdiff2のオフセットの設定を行う。この例の場合、Voffset1=Voffset2=0であるので、波形の上端と下端の中間の電位が0(V)となるように、出力信号Vdiff1、Vdiff2のオフセットの設定を行う。上述したように、オフセットの設定は、予め手動で行っても良く、あるいは、ティーチング時の出力信号Vdiff1、Vdiff2を用いて、演算により行っても良い。すなわち、予め手動でオフセットの設定を行う場合には、オフセットの設定のためのプログラムを省略することができる。
S23において、θc、90°−θc、90°+θc、及び、180°−θcでのVdiff1の出力絶対値を1にするように、ゲイン調整を行う。同様に、S24において、45−θc、45+θc、135−θc、及び、135+θcでのVdiff2の出力絶対値を1にするように、ゲイン調整を行う。
diff1、Vdiff2の4箇所の出力絶対値は、異なっている場合がある。そのため、上述したように、通常は、4箇所の出力絶対値の平均値が1になるように、ゲイン調整を行うのが好ましい。また、ゲイン調整は、予め手動で行っても良く、あるいは、ティーチング時の出力信号Vdiff1、Vdiff2を用いて、演算により行っても良い。すなわち、予め手動でゲイン調整を行う場合には、ゲイン調整のためのプログラムを省略することができる。
S25において、チルト補正を行う(チルト補正手段)。上述したように、チルト補正は必ずしも必要ではないが、波形が歪んでいる場合においてチルト補正を行うと、角度誤差を低減することができる。チルト補正は、Vdiff1とVdiff2の双方に対して行うのが好ましい。また、チルト補正は、予め手動で行っても良く、あるいは、ティーチング時の出力信号Vdiff1、Vdiff2を用いて、演算により行っても良い。すなわち、予め手動でチルト補正を行う場合には、チルト補正のためのプログラムを省略することができる。
S26では、回転角度Tの測定を開始するか否かが判断される。測定を開始しないとき(S26:NO)は、そのまま待機する。一方、測定を開始するとき(S26:YES)には、S27に進む。
S27では、Vdiff1、Vdiff2をコンピュータに入力し、これらをメモリーに記憶させる(第1角度演算・識別信号入力手段、第2角度演算・識別信号入力手段)。
S28では、0≦Vdiff1<1か否かが判断される(位相判別手段)。0≦Vdiff1<1である場合(S28:YES)は、S29に進む。S29では、Vdiff2<0か否かが判断される(位相判別手段)。0≦Vdiff1<1であり、かつ、Vdiff2<0であるとき(S28:YES、S29:YES)は、回転角度Tが0≦T<θcの範囲にあることを示す。この場合には、S30に進み、(2.1.3)式にVdiff1を代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出手段)。
次に、S31に進み、S31において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S31:NO)ときは、S27に戻り、上述したS27〜S31の各ステップが繰り返される。
一方、0≦Vdiff1<1でないとき(S28:NO)は、S32に進む。S32では、Vdiff1≧1か否かが判断される(位相判別手段)。Vdiff1≧1であるとき(S32:YES)は、回転角度Tがθc≦T<90°−θcの範囲にあることを示す。この範囲においてVdiff1は波形の頂点に近づくため、Vdiff1を用いて三角波近似を続行すると、角度誤差が大きくなる。そこでこの場合には、S33に進み、Vdiff2を用いた三角波近似に切り替える。すなわち、(2.2.3)式にVdiff2を代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出手段)。
次に、S31に進み、S31において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S31:NO)ときは、S27に戻り、上述したS27、28、32、33の各ステップが繰り返される。
外部磁界がさらに回転すると、再度、0≦Vdiff1<1となる(S28:YES)ので、S29に進む。S29では、再度、Vdiff2<0か否かが判断される。0≦Vdiff1<1、かつ、Vdiff2≧0である場合(S28:YES、S29:NO)、回転角度Tが90−θc≦T<90°(<90°+θc)であることを示す。この範囲においてVdiff2は波形の頂点に近づくため、Vdiff2を用いて三角波近似を続行すると、角度誤差が大きくなる。そこでこの場合には、S36に進み、Vdiff1を用いた三角波近似に切り替える。すなわち、(2.3.3)式にVdiff1を代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出手段)
次に、S31に進み、S31において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S31:NO)ときは、S27に戻り、上述したS27〜29、36、31の各ステップが繰り返される。
外部磁界がさらに回転すると、再度、0≦Vdiff1<1でなくなる(S28:NO)ので、S32に進む。S32では、Vdiff1≧1か否かが判断される。Vdiff1≧1でない場合、さらにS34に進み、Vdiff1<−1か否かが判断される(位相判別手段)。Vdiff1<−1でない場合(S34:NO)、さらにS35に進む。S35では、Vdiff2≧0か否かが判断される(位相判別手段)。−1≦Vdiff1<0、かつ、Vdiff2≧0である場合(S28:NO、S32:NO、S34:NO、S35:YES)、回転角度Tが(90°−θc≦)90°≦T<90°+θcであることを示す。この範囲では、Vdiff1を用いた三角波近似の方が角度誤差が少ない。そこでこの場合には、S36に進み、(2.3.3)式を用いた回転角度Tの算出を続行する。
次に、S31に進み、S31において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S31:NO)ときは、S27に戻り、上述したS27〜28、32、34〜36、31の各ステップが繰り返される。
外部磁界がさらに回転すると、やがてVdiff1<−1となる(S28:NO、S32:NO、S34:YES)。この場合、回転角度Tが90+θc≦T<180−θcであることを示す。この範囲においてVdiff1は波形の頂点に近づくため、Vdiff1を用いた三角波近似を続行すると、角度誤差が大きくなる。そこでこの場合には、S37に進み、Vdiff2を用いた三角波近似に切り替える。すなわち、(2.4.3)式にVdiff2を代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出手段)。
次に、S31に進み、S31において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S31:NO)ときは、S27に戻り、上述したS27〜28、32、34、37、31の各ステップが繰り返される。
外部磁界がさらに回転すると、やがて−1≦Vdiff1<0となる(S28:NO、S32:NO、S34:NO)。この時、Vdiff2≧0でない場合(S35:NO)には、回転角度Tが180°−θc≦T<180°であることを示す。この範囲においてVdiff2は波形の頂点に近づくため、Vdiff2を用いた三角波近似を続行すると、角度誤差が大きくなる。そこでこの場合には、S38に進み、Vdiff1を用いた三角波近似に切り替える。すなわち、(2.5.3)式にVdiff1を代入し、回転角度Tを算出する(回転角度算出手段)。
次に、S31に進み、S31において測定を終了するか否かが判断される。測定を終了しない(S31:NO)ときは、S27に戻り、上述したS27〜28、32、34〜35、38、31の各ステップが繰り返される。
以下同様にして、測定を終了する(S31:YES)まで、信号の位相に応じて角度演算のための信号を適宜切り替えながら、外部磁界の回転角度Tが0〜180°の範囲で継続的に算出される。
[3.8. 角度誤差]
図14(a)に、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形(回転磁場=飽和磁場×66%)を示す。図14(b)に、この波形から図13に示す方法で回転角度を算出したときの回転角度と角度誤差との関係を示す。
同様に、図15に、回転磁場=飽和磁場×80%であるときの出力波形(図15(a))及び回転角度と角度誤差との関係(図15(b))を示す。
同様に、図16に、回転磁場=飽和磁場×93%であるときの出力波形(図16(a))及び回転角度と角度誤差との関係(図16(b))を示す。
図14〜16より、回転磁場の強さ及び回転角度が変動しても、角度誤差の変動が小さいことがわかる。
図17に、4個のGIG型磁気センサからなる2つのブリッジ回路から出力される出力波形から図13に示す方法を用いて回転角度を算出したときの、回転磁場と角度誤差の最大値(最大角度誤差)との関係を示す。
図17より、図13に示す方法を用いると、回転磁場の強さが飽和磁場の0〜160%の範囲において、最大角度誤差が2°以下になることがわかる。
[4. 磁気センサ信号処理プログラム(3)]
信号の位相に応じて、計算式の切り替えを行う場合、第n切り替え角度θcnの設定、オフセットの設定及びゲイン調整、並びに、必要に応じて行われるチルト補正は、手動で行っても良く、あるいは、演算により行っても良い。
演算によりこれらの調整を自動的に行う場合、角度誤差が最小になるように調整を行うのが好ましい。
角度誤差を最小にするための切り替え角度の調整(第n切り替え角度設定手段)は、具体的には、以下のようにして行うことができる。
演算式を用いて前記回転角度Tを算出する前に、
(a)第1ブリッジ回路及び第2ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの第1角度演算・識別信号V1又は第2角度演算・識別信号V2と、回転角度Tとの関係をメモリーに記憶させる。
(b)第n切り替え角度θcnを、第1角度演算・識別信号V1又は第2角度演算・識別信号V2の出力絶対値が等価となる位置において複数組設定する。
(c)設定された複数組の第n切り替え角度θcn及び演算式を用いて、それぞれ、メモリーに記憶された回転角度と演算式から算出される回転角度との差の最大値(最大角度誤差)を算出する。
(d)最大角度誤差が最小となる第n切り替え角度θcnを求める。
(e)最大角度誤差が最小となる第n切り替え角度θcnを、メモリーに記憶された演算式に代入する。
この場合において、オフセットの設定、ゲイン調整、及び、チルト補正に複数通りの方法があるときは、各方法毎に、複数組の第n切り替え角度θcnについて最大角度誤差を求め、最大角度誤差が最小となる第n切り替え角度θcn及びオフセット方法等との組み合わせを求め、これらを用いて演算を行っても良い。
図18に、第n切り替え角度θcnの設定、オフセットの設定、及び、チルト補正を自動調整するためのフローチャートを示す。図18に示す例において、第n切り替え角度は、出力絶対値が等価となる位置に設定されている。すなわち、0<θc1<λ/4、θc2=λ/2−θc1、θc3=λ/2+θc1、θc4=λ−θc1の関係がある。
まず、S41において、ティーチングのための機械角度Tiと、それに対応するセンサ出力V=f(Ti)を取得する。
次に、S42において、n及びkmaxを入力する。
nは、第1切り替え角度θc1が取り得る角度範囲(=λ/4)の分割数である。一般に、分割数nが大きくなるほど、精度は向上するが、演算時間が増大する。従って、分割数nは、目的に応じて最適な値を選択するのが好ましい。
maxは、オフセットの設定のための演算方法の数を表す。一般に、波形の歪みが小さいときには、異なる方法を用いてオフセットの設定を行った場合であっても、ほぼ同一の結果が得られる。しかしながら、外的要因による波形の歪みが大きくなると、オフセットの計算方法により最大角度誤差が異なる場合がある。そのような場合には、複数の計算方法を用いてオフセットの設定を行い、最大角度誤差が最小となるオフセット方法を選択するのが好ましい。1種類のオフセット方法を用いて角度誤差を計算するときは、kmax=1を入力する。一方、複数種類のオフセット方法を用いるときには、採用する計算方法の数を入力する。
さらに、S43において、j、kを、それぞれ初期値=1に設定する。
次に、S44において、第1切り替え角度θc1(j)(=j×(λ/4)×(1/n))を算出する。S45において、k番目のオフセット方法を用いて、オフセットVoffset(k)を算出する。さらに、S46において、必要に応じて、ゲイン調整及びチルト補正を行う。なお、図18に示す例においては、ゲイン調整及びチルト補正は、同一の方法を用いて行うようになっているが、複数種類のゲイン調整方法及び/又は複数種類のチルト補正方法を用いて、最小の最大角度誤差を算出するようにしても良い。
S47において、(2.1)〜(2.5)式にθc1(j)及びVoffset(k)を代入し、三角波近似により求めたセンサ出力Vと角度Ti(j、k)との関係式:V=F(Ti(j、k))を求める。次いで、S48において、あるセンサ出力Vにおける機械角度Tiと、三角波近似により求めた角度Ti(j、k)との差(角度誤差)を逐次求め、その最大値:|Ti(j、k)−Ti|max(=|F-1(V)−f-1(V)|max)を算出し、これをメモリーに記憶させる。
S49においては、k=kmaxか否かが判断される。k=kmaxでないとき(S49:NO)は、S50に進み、そこでkに1を加える。さらにS45に戻り、k=kmaxとなるまで、上述したS45〜S50の各ステップを繰り返す。
一方、k=kmaxになったとき(S49:YES)は、S51に進む。S51では、j=nか否かが判断される。j=nでないとき(S51:NO)は、S52に進み、jに1を加える。さらに、S44に戻り、j=nとなるまで、上述したS44〜S52の各ステップが繰り返される。
j=nになったとき(S51:YES)は、S53に進み、メモリーに記憶された最大角度誤差:|Ti(j、k)−Ti|maxの内、最大角度誤差が最小となるj、kの値(jmin、kmin)を選択する。これに対応する第1切り替え角度θc1(jmin)及びオフセット値Voffset(kmin)を(2.1)〜(2.5)式に代入する。
この後、図13のS26に進み、第1切り替え角度θc1(jmin)及びオフセット値Voffset(kmin)を代入した計算式を用いて、回転角度Tの算出を行う。
出力絶対値が等価となる位置で角度演算に用いる信号を切り換える場合において、図18に示すように、第1切り替え角度θc1(j)及びオフセット値Voffset(k)を演算により求めると、最大角度誤差を最小にすることができる。
[5. 磁気センサモジュール]
[5.1. 構成]
図19に、本発明の一実施の形態に係る磁気センサモジュールの概略構成図を示す。図19において、磁気センサモジュール10は、第1ブリッジ回路12と、第2ブリッジ回路14と、中央演算処理装置16と、メモリー18とを備えている。
第1ブリッジ回路12は、少なくとも1個の第1磁気センサを含む。第2ブリッジ回路14は、少なくとも1個の第2磁気センサを含み、第1ブリッジ回路12とは機械角が45°異なるように配置されている。なお、図19において、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路14は、いずれもフルブリッジ回路として図示されているが、これは単なる例示であり、いずれか一方又は双方がハーフブリッジ回路であっても良い。
第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路14に関するその他の点については、上述した通りであるので、詳細な説明を省略する。
第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路14は、中央演算処理装置(CPU)16に接続されている。また、中央演算処理装置16には、メモリー18と、出力端子20が接続されている。メモリー18は、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路14から出力される信号を記憶させると同時に、上述した磁気センサ信号処理プログラムを記憶させるために用いられる。出力端子20には、検出された回転角度を利用する各種の機器(図示せず。例えば、入出力端末、モニターなど。)が接続されている。
第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路14と、中央演算処理装置16の間には、増幅器22、22が設けられている。増幅器22、22は、必ずしも必要ではないが、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路14から出力される信号を増幅器22、22で増幅させると、ノイズを低減できるという効果がある。また、増幅器22、22を用いて、信号のゲイン調整を行うこともできる。
[5.2. 使用方法]
図19に示す磁気センサモジュールを用いた回転角度Tの検出は、具体的には、以下のようにして行う。
まず、ティーチングのための機械角度Tと、出力Vとの関係を取り込む。第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路14から出力された信号は、必要に応じて増幅器22、22で増幅された後、中央演算処理装置16に入力され、そこで必要な演算を行った後、一旦、メモリー18に記憶させる。
次に、中央演算処理装置16は、メモリー18に記憶されたティーチング時のデータを読み込み、これを用いて、オフセットの設定、ゲイン調整、チルト補正、演算式の係数の算出などを行う。演算により算出された数値は、メモリー18に記憶される。
次に、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路14を用いて実際の信号を検出する。検出された信号は、必要に応じて増幅器22、22で増幅された後、中央演算処理装置16に入力される。中央演算処理装置16に入力された信号は、必要な処理を行った後、メモリー18に記憶される。メモリー18には、演算式及び判別式が記憶されているので、V1、V2の符号及び大きさに応じて使用すべき演算式を選択する。そして、選択された演算式に検出されたV1又はV2を代入すれば、回転角度Tを算出することができる。
メモリー18には、本発明に係る磁気センサ信号処理プログラムが記憶されている。そのため、機械角が45°異なる2つのブリッジ回路から出力される一対の信号の双方を角度演算及び位相の判別に用い、一方の信号が波形の頂点近傍にあるときには他方の信号を用いて角度演算を行うように、信号の位相に応じて角度演算に用いる信号の切り替えを行うと、複雑な演算回路やフィードバック回路を用いることなく、回転角度を高い精度で検出することができる。また、磁気センサの種類、回転磁界の強さ、バイアス磁界の有無等によらず、回転角度を高い精度で検出することができる。
また、機械角が45°異なる2つのブリッジ回路から出力される一対の信号の一方を角度演算及び位相の判別に用い、他方を位相の判別のみに用いると、複雑な演算回路やフィードバック回路を用いることなく、回転角度を比較的高い精度で検出することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る磁気センサ信号処理プログラムは、自動車の車軸、ロータリーエンコーダ、産業用歯車等の回転情報の検出、油圧式シリンダ/空気式シリンダのストロークポジション、工作機械のスライド等の位置・速度情報の検出、工業用溶接ロボットのアーク電流等の電流情報の検出、地磁気方位コンパスなどに用いられる磁気センサの信号処理に用いることができる。

Claims (8)

  1. コンピュータを、以下の手段として機能させるための磁気センサ信号処理プログラム。
    (1)少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路から出力された第1角度演算・識別信号V1を入力し、メモリーに記憶させる第1角度演算・識別信号入力手段。
    (2)少なくとも1個の第2磁気センサを含み、前記第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路から出力された第2角度演算・識別信号V2を入力し、前記メモリーに記憶させる第2角度演算・識別信号入力手段。
    (3)以下の演算式を前記メモリーに記憶させる演算式記憶手段。
    T−θ0=(V1−Voffset1c1/(V1a−Voffset1) ・・・(2.1)
    T−θ0=(V2−V2a)(θc2−θc1)/(V2b−V2a)+θc1 ・・・(2.2)
    T−θ0=(V1−V1b)(θc3−θc2)/(V1c−V1b)+θc2 ・・・(2.3)
    T−θ0=(V2−V2c)(θc4−θc3)/(V2d−V2c)+θc3 ・・・(2.4)
    T−θ0=(V1−V1d)(λ−θc4)/(Voffset1−V1d)+θc4 ・・・(2.5)
    但し、
    Tは、外部磁界の回転角度(°)。
    θ0は、回転角度Tの基準角度(°)。
    λは、回転角度Tの周期(°)。
    offset1は、前記第1角度演算・識別信号V1のオフセット。
    θcn(n=1〜4)は、第n切り替え角度で、λ(n−1)/4<θcn<λn/4。
    1a〜V1dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの前記第1角度演算・識別信号V1の値。
    2a〜V2dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの前記第2角度演算・識別信号V2の値。
    (4)前記メモリーに記憶された前記第1角度演算・識別信号V1及び前記第2角度演算・識別信号V2を用いて、以下の手順により前記回転角度Tの位相を判別する位相判別手段。
    (a)(V1−Voffset1)≧0、かつ、(V2−Voffset2)≦0である場合において、(V1−V1a)≦0又は(V2−V2a)≦0が真の時は0≦T−θ0≦θc1、偽の時はθc1≦T−θ0≦θc2
    (b)(V1−Voffset1)≧0、かつ、(V2−Voffset2)≧0である場合において、(V1−V1b)≧0又は(V2−V2a)≦0が真の時はθc1≦T−θ0≦θc2、偽の時はθc2≦T−θ0≦θc3
    (c)(V1−Voffset1)≦0、かつ、(V2−Voffset2)≧0である場合において、(V1−V1c)≧0又は(V2−V2c)≧0が真の時はθc2≦T−θ0≦θc3、偽の時はθc3≦T−θ0≦θc4
    (d)(V1−Vofsset1)≦0、かつ、(V2−Voffset2)≦0である場合において、(V1−V1d)≦0又は(V2−V2d)≧0が真の時はθc3≦T−θ0≦θc4、偽の時はθc4≦T−θ0≦λ。
    但し、Voffset2は、前記第2角度演算・識別信号V2のオフセット。
    境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
    (5)前記位相判別手段により判別された前記回転角度Tの位相に応じて、以下の手順により前記メモリーに記憶された前記第1角度演算・識別信号V1又は前記第2角度演算・識別信号V2を前記メモリーに記憶された(2.1)式〜(2.5)式のいずれかに代入し、回転角度Tを算出する回転角度算出手段。
    0≦T−θ0≦θc1の時は、(2.1)式。
    θc1≦T−θ0≦θc2の時は、(2.2)式。
    θc2≦T−θ0≦θc3の時は、(2.3)式。
    θc3≦T−θ0≦θc4の時は、(2.4)式。
    θc4≦T−θ0≦λの時は、(2.5)式。
    但し、境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
  2. 以下の手段をさらに備えた請求項1に記載の磁気センサ信号処理プログラム。
    (6)前記演算式を用いて前記回転角度Tを算出する前に、
    (a)前記第1ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記第1角度演算・識別信号V1と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
    前記メモリーに記憶された前記第1角度演算・識別信号V1の回転角度θ0+mλ/2(°)(mは、整数)における値V10+mλ/2)及び回転角度θ0+nλ/2(°)(nは整数で、n≠m)における値V10+nλ/2)から波形の傾きΔ1(={V10+nλ/2)−V10+mλ/2)}/{(n−m)λ/2})を算出し、
    回転角度θ0+mλ/2(°)を中心として、実際に検出される前記第1角度演算・識別信号V1を−tan-1Δ1(rad)回転させるチルト補正、及び、
    (b)前記第2ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記第2角度演算・識別信号V2と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
    前記メモリーに記憶された前記第2角度演算・識別信号V2の回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)(mは、整数)における値V20+(2m+1)λ/4)及び回転角度(θ0+(2n+1)λ/4)(°)(nは整数で、n≠m)における値V20+(2n+1)λ/4)から波形の傾きΔ2(={V20+(2n+1)λ/4)−V20+(2m+1)λ/4)}/{(n−m)λ/2})を算出し、
    回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)を中心として、実際に検出される前記第2角度演算・識別信号V2を−tan-1Δ2(rad)回転させるチルト補正
    を行うチルト補正手段。
  3. 以下の手段をさらに備えた請求項1又は2に記載の磁気センサ信号処理プログラム。
    (7)前記演算式を用いて前記回転角度Tを算出する前に、
    前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記第1角度演算・識別信号V1又は前記第2角度演算・識別信号V2と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
    前記第n切り替え角度θcnを、前記第1角度演算・識別信号V1又は前記第2角度演算・識別信号V2の出力絶対値が等価となる位置において複数組設定し、
    設定された複数組の前記第n切り替え角度θcn及び前記演算式を用いて、それぞれ、前記メモリーに記憶された前記回転角度と前記演算式から算出される回転角度との差の最大値(最大角度誤差)を算出し、
    前記最大角度誤差が最小となる前記第n切り替え角度θcnを求め、
    前記最大角度誤差が最小となる前記第n切り替え角度θcnを前記メモリーに記憶された前記演算式に代入する
    第n切り替え角度設定手段。
  4. 前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、それぞれ、グラニュラーインギャップ型センサである請求項1から3までのいずれかに記載の磁気センサ信号処理プログラム。
  5. コンピュータを、以下の手段として機能させるための磁気センサ信号処理プログラム。
    (1)少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路から出力された角度演算信号V1を入力し、メモリーに記憶させる角度演算信号入力手段。
    (2)少なくとも1個の第2磁気センサを含み、前記第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路から出力された識別信号V2を入力し、前記メモリーに記憶させる識別信号入力手段。
    (3)以下の演算式をメモリーに記憶させる演算式記憶手段。
    T−θ0=(V1−Voffset1c1/(V1a−Voffset1) ・・・(1.1)
    T−θ0=(V1−V1b)(θc3−θc2)/(V1c−V1b)+θc2 ・・・(1.2)
    T−θ0=(V1−V1d)(λ−θc4)/(Voffset1−V1d)+θc4 ・・・(1.3)
    但し、
    Tは、外部磁界の回転角度(°)。
    θ0は、回転角度Tの基準角度(°)。
    λは、回転角度Tの周期(°)。
    offset1は、前記角度演算信号V1のオフセット。
    θcn(n=1〜4)は、直線近似のための第n基準角度で、0<θc1≦λ/4、λ/4≦θc2≦λ/2、λ/2≦θc3≦3λ/4、3λ/4≦θc4<λ。但し、θc2≠θc3
    1a〜V1dは、それぞれ、回転角度Tがθ0+θc1〜θ0+θc4であるときの前記角度演算信号V1の値。
    (4)前記メモリーに記憶された前記角度演算信号V1及び前記識別信号V2を用いて、以下の手順により前記回転角度Tの位相を判別する位相判別手段。
    (V1−Voffset1)≧0、(V2−Voffset2)≦0の時は、0≦T−θ0≦λ/4。
    (V1−Voffset1)≧0、(V2−Voffset2)≧0、又は、(V1−Voffset1)≦0、(V2−Voffset2)≧0の時は、λ/4≦T−θ0≦3λ/4。
    (V1−Voffset1)≦0、(V2−Voffset2)≦0の時は、3λ/4≦T−θ0≦λ。
    但し、Voffset2は、前記識別信号V2のオフセット。
    境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
    (5)前記位相判別手段により判別された前記回転角度Tの位相に応じて、以下の手順により前記メモリーに記憶された前記角度演算信号V1を前記メモリーに記憶された(1.1)式〜(1.3)式のいずれかに代入し、回転角度Tを算出する回転角度算出手段。
    0≦T−θ0≦λ/4の時は、(1.1)式。
    λ/4≦T−θ0≦3λ/4の時は、(1.2)式。
    3λ/4≦T−θ0≦λの時は、(1.3)式。
    但し、境界値は、いずれか一方のサブ領域に属していればよい。
  6. 以下の手段をさらに備えた請求項5に記載の磁気センサ信号処理プログラム。
    (6)前記演算式を用いて前記回転角度Tを算出する前に、
    (a)前記第1ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記角度演算信号V1と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
    前記メモリーに記憶された前記角度演算信号V1の回転角度θ0+mλ/2(°)(mは、整数)における値V10+mλ/2)及び回転角度θ0+nλ/2(°)(nは整数で、n≠m)における値V10+nλ/2)から波形の傾きΔ1(={V10+nλ/2)−V10+mλ/2)}/{(n−m)λ/2})を算出し、
    回転角度θ0+mλ/2(°)を中心として、実際に検出される前記角度演算信号V1を−tan-1Δ1(rad)回転させるチルト補正、及び、
    (b)前記第2ブリッジ回路に人為的に回転磁場を与えたときの前記識別信号V2と、前記回転角度Tとの関係を前記メモリーに記憶させ、
    前記メモリーに記憶された前記識別信号V2の回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)(mは、整数)における値V20+(2m+1)λ/4)及び回転角度θ0+(2n+1)λ/4(°)(nは整数で、n≠m)における値V20+(2n+1)λ/4)から波形の傾きΔ2(={V20+(2n+1)λ/4)−V20+(2m+1)λ/4)}/{(n−m)λ/2})を算出し、
    回転角度θ0+(2m+1)λ/4(°)を中心として、実際に検出される前記識別信号V2を−tan-1Δ2(rad)回転させるチルト補正
    を行うチルト補正手段。
  7. 前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、それぞれ、グラニュラーインギャップ型センサである請求項5又は6に記載の磁気センサ信号処理プログラム。
  8. 以下の構成を備えた磁気センサモジュール。
    (1)前記磁気センサモジュールは、
    少なくとも1個の第1磁気センサを含む第1ブリッジ回路と、
    少なくとも1個の第2磁気センサを含み、前記第1ブリッジ回路とは機械角が45°異なるように配置された第2ブリッジ回路と、
    前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路に接続された中央演算処理装置と、
    前記中央演算処理装置に接続されたメモリーと
    を備えている。
    (2)前記メモリーには、請求項1から7までのいずれかに記載の磁気センサ信号処理プログラムが記憶されている。
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