JP5352669B2 - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、各車輪毎に設けられてブレーキ液圧により制動力を発生するホイールシリンダと、電動モータにより作動して前記ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を発生する電気的ブレーキ液圧発生手段と、前記電気的ブレーキ液圧発生手段および前記ホイールシリンダ間に配置され、前記ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を個別に制御することで車両挙動を制御するブレーキ液圧制御手段とを備える車両用ブレーキ装置に関する。
かかる車両用ブレーキ装置は、下記特許文献1により公知である。
この車両用ブレーキ装置は、スレーブシリンダとホイールシリンダとの間に、車輪のロックを抑制して制動距離を短縮するためのABS(アンチロック・ブレーキ・システム)装置を備えており、このABS装置は、ホイールシリンダへのブレーキ液の供給を制御するインバルブと、ホイールシリンダからのブレーキ液の排出を制御するアウトバルブと、ホイールシリンダから排出されたブレーキ液を一時的に貯留するアキュムレータと、アキュムレータに貯留されたブレーキ液を排出するためのポンプ等で構成される。
日本特開2008−110633号公報
ところで、上記従来のものは、アキュムレータに貯留されたブレーキ液を排出するためのポンプを必要とするため、そのポンプの分だけ部品点数、重量、コストが増加する問題があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両用ブレーキ装置のブレーキ液圧制御手段のアキュムレータからのブレーキ液の排出を、ポンプを必要とせずに行えるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、各車輪毎に設けられてブレーキ液圧により制動力を発生するホイールシリンダと、電動モータにより作動して前記ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を発生する電気的ブレーキ液圧発生手段と、前記電気的ブレーキ液圧発生手段および前記ホイールシリンダ間に配置され、前記ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を個別に制御することで車両挙動を制御するブレーキ液圧制御手段とを備える車両用ブレーキ装置において、前記ブレーキ液圧制御手段は、前記ホイールシリンダおよび前記電気的ブレーキ液圧発生手段に連通可能なアキュムレータと、前記ホイールシリンダを前記アキュムレータに接続する液路の連通状態を切り替える第1電磁弁と、前記アキュムレータから前記電気的ブレーキ液圧発生手段へのブレーキ液の流通のみを許容するチェックバルブとを備え、前記アキュムレータから前記電気的ブレーキ液圧発生手段へのブレーキ液の排出を、前記電気的ブレーキ液圧発生手段の電動モータの駆動力を低減することで行うことを第1の特徴とする車両用ブレーキ装置が提案される。
また本発明によれば、前記第1の特徴に加えて、前記チェックバルブおよび前記電気的ブレーキ液圧発生手段間を前記ホイールシリンダに接続する液路の連通状態を切り替える第2電磁弁を備え、前記ブレーキ液圧制御手段は、前記第1電磁弁および前記第2電磁弁の開閉中においてブレーキ液圧を一定に保持することを第2の特徴とする車両用ブレーキ装置が提案される。
また本発明によれば、前記第1の特徴に加えて、前記電気的ブレーキ液圧発生手段は、前記電動モータでピストンを駆動してブレーキ液圧を発生するスレーブシリンダよりなり、前記ピストンの位置を変化させることでブレーキ液圧を制御することを第3の特徴とする車両用ブレーキ装置が提案される。
また本発明によれば、前記第1の特徴に加えて、前記ブレーキ液圧制御手段は、前記電気的ブレーキ液圧発生手段および前記ホイールシリンダ間に配置されたインバルブと、前記ホイールシリンダおよび前記アキュムレータ間に配置されたアウトバルブとを備え、前記電気的ブレーキ液圧発生手段は、前記インバルブおよび前記アウトバルブが共に閉弁したときに前記電動モータの駆動力を低減することを第4の特徴とする車両用ブレーキ装置が提案される。
また本発明によれば、前記第1の特徴に加えて、前記電気的ブレーキ液圧発生手段は複数の前記ホイールシリンダに接続され、前記電動モータの駆動力の低減時には前記複数のホイールシリンダと前記電気的ブレーキ液圧発生手段との接続を遮断する第2電磁弁を備えることを第5の特徴とする車両用ブレーキ装置が提案される。
また本発明によれば、前記第1の特徴に加えて、前記電気的ブレーキ液圧発生手段へのブレーキ液圧の排出を判定する判定手段を備えることを第6の特徴とする車両用ブレーキ装置が提案される。
尚、実施の形態のスレーブシリンダ23は本発明の電気的ブレーキ液圧発生手段に対応し、実施の形態のVSA装置24は本発明のブレーキ液圧制御手段に対応し、実施の形態のレギュレータバルブ54およびインバルブ56,58は本発明の第2電磁弁に対応し、実施の形態のアウトバルブ60,61は本発明の第1電磁弁に対応し、実施の形態のモータ電流センサSdは本発明の判別手段に対応する。
本発明の第1の特徴によれば、電気的ブレーキ液圧発生手段からホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を個別に制御することで車両挙動を制御するブレーキ液圧制御手段が、ホイールシリンダおよび電気的ブレーキ液圧発生手段に連通可能なアキュムレータと、ホイールシリンダをアキュムレータに接続する液路の連通状態を切り替える第1電磁弁と、アキュムレータから電気的ブレーキ液圧発生手段へのブレーキ液の流通のみを許容するチェックバルブとを備えており、電気的ブレーキ液圧発生手段の電動モータの駆動力を低減することでアキュムレータから電気的ブレーキ液圧発生手段へのブレーキ液の排出を行うので、特別のポンプが不要になって部品点数、重量およびコストを削減することができる。
また本発明の第2の特徴によれば、チェックバルブおよび電気的ブレーキ液圧発生手段間をホイールシリンダに接続する液路の連通状態を切り替える第2電磁弁を備え、ブレーキ液圧制御手段は、第1電磁弁および第2電磁弁の開閉中においてブレーキ液圧を一定に保持するので、VSA制御あるいはABS制御における増圧、減圧および保持作用を精度良く行うことができる。
また本発明の第3の特徴によれば、電気的ブレーキ液圧発生手段は、電動モータでピストンを駆動してブレーキ液圧を発生するスレーブシリンダよりなり、ピストンの位置を変化させることでブレーキ液圧を制御するので、所望のブレーキ液圧を脈動なく高い精度で発生させることができる。
また本発明の第4の特徴によれば、ブレーキ液圧制御手段は、電気的ブレーキ液圧発生手段およびホイールシリンダ間に配置されたインバルブと、ホイールシリンダおよびアキュムレータ間に配置されたアウトバルブとを備えるので、各ホイールシリンダのブレーキ液圧を個別に制御してVSA機能やABS機能を発揮させることができる。また電気的ブレーキ液圧発生手段は、インバルブおよびアウトバルブが共に閉弁したときに電動モータの駆動力を低減するので、ホイールシリンダのブレーキ液圧に影響を及ぼすことなくアキュムレータを減圧することができる。
また本発明の第5の特徴によれば、電気的ブレーキ液圧発生手段は複数のホイールシリンダに接続され、電動モータの駆動力の低減時には複数のホイールシリンダと電気的ブレーキ液圧発生手段との接続を第2電磁弁で遮断するので、電気的ブレーキ液圧発生手段が発生する負圧をアキュムレータに確実に作用させて該アキュムレータを減圧することができる。
また本発明の第6の特徴によれば、電気的ブレーキ液圧発生手段へのブレーキ液圧の排出を判定する判定手段を備えるので、アキュムレータの減圧が行われたことを確実に判定することができる。
図1は車両用ブレーキ装置の正常時の液圧回路図である。(第1の実施の形態) 図2は図1に対応する異常時の液圧回路図である。(第1の実施の形態) 図3はスレーブシリンダの電動モータの制御系のブロック図である。(第1の実施の形態) 図4はアキュムレータのブレーキ液の排出時の作用説明図である。(第1の実施の形態)
16 ホイールシリンダ
17 ホイールシリンダ
20 ホイールシリンダ
21 ホイールシリンダ
23 スレーブシリンダ(電気的ブレーキ液圧発生手段)
24 VSA装置(ブレーキ液圧制御手段)
32 電動モータ
38A ピストン
38B ピストン
54 レギュレータバルブ(第2電磁弁)
56 インバルブ(第2電磁弁)
58 インバルブ(第2電磁弁)
60 アウトバルブ(第1電磁弁)
61 アウトバルブ(第1電磁弁)
62 アキュムレータ
63 チェックバルブ
Sd モータ回転角センサ(判別手段)
以下、図1〜図4に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
第1の実施の形態
図1に示すように、タンデム型のマスタシリンダ11は、運転者がブレーキペダル12を踏む踏力に応じたブレーキ液圧を出力する後部および前部液圧室13A,13Bを備えており、後部液圧室13Aは液路Pa,Pb,Pc,Pd,Pe(第1系統)を介して例えば左前輪および右後輪のディスクブレーキ装置14,15のホイールシリンダ16,17に接続されるとともに、前部液圧室13Bは液路Qa,Qb,Qc,Qd,Qe(第2系統)を介して例えば右前輪および左後輪のディスクブレーキ装置18,19のホイールシリンダ20,21に接続される。
液路Pa,Pb間に常開型電磁弁である遮断弁22Aが配置され、液路Qa,Qb間に常開型電磁弁である遮断弁22Bが配置され、液路Pb,Qbと液路Pc,Qcとの間にスレーブシリンダ23が配置され、液路Pc,Qcと液路Pd,Pe;Qd,Qeとの間にABS(アンチロック・ブレーキ・システム)装置の機能を兼ねるVSA(ビークル・スタビリティ・アシスト)装置24が配置される。
液路Paから分岐する液路Ra,Rbには、常閉型電磁弁である反力許可弁25を介してストロークシミュレータ26が接続される。ストロークシミュレータ26は、シリンダ27にスプリング28で付勢されたピストン29を摺動自在に嵌合させたもので、ピストン29の反スプリング28側に形成された液圧室30が液路Rbに連通する。
スレーブシリンダ23のアクチュエータ31は、電動モータ32と、その出力軸に設けた駆動ベベルギヤ33と、駆動ベベルギヤ33に噛合する従動ベベルギヤ34と、従動ベベルギヤ34により作動するボールねじ機構35とを備える。
スレーブシリンダ23のシリンダ本体36の後部および前部に、それぞれリターンスプリング37A,37Bで後退方向に付勢された後部ピストン38Aおよび前部ピストン38Bが摺動自在に配置されており、後部ピストン38Aおよび前部ピストン38Bの前面にそれぞれ後部液圧室39Aおよび前部液圧室39Bが区画される。
後部液圧室39Aは後部入力ポート40Aを介して液路Pbに連通するとともに、後部出力ポート41Aを介して液路Pcに連通し、また前部液圧室39Bは前部入力ポート40Bを介して液路Qbに連通するとともに、前部出力ポート41Bを介して液路Qcに連通する。
しかして、図1において、電動モータ32を一方向に駆動すると、駆動ベベルギヤ33、従動ベベルギヤ34およびボールねじ機構35を介して後部および前部ピストン38A,38Bが前進して後部および前部液圧室39A,39Bにブレーキ液圧を発生させ、そのブレーキ液圧を後部および前部出力ポート41A,41Bを介して液路Pc,Qcに出力することができる。
VSA装置24の構造は周知のもので、左前輪および右後輪のディスクブレーキ装置14,15の第1系統を制御する第1ブレーキアクチュエータ51Aと、右前輪および左後輪のディスクブレーキ装置18,19の第2系統を制御する第2ブレーキアクチュエータ51Bとに同じ構造のものが設けられる。
以下、その代表として左前輪および右後輪のディスクブレーキ装置14,15の第1系統の第1ブレーキアクチュエータ51Aについて説明する。
第1ブレーキアクチュエータ51Aは、上流側に位置するスレーブシリンダ23の後部出力ポート41Aに連なる液路Pcと、下流側に位置する左前輪および右後輪のホイールシリンダ16,17にそれぞれ連なる液路Pd,Peとの間に配置される。
第1ブレーキアクチュエータ51Aは左前輪および右後輪のホイールシリンダ16,17に対して共通の液路52および液路53を備えており、液路Pcおよび液路52間に配置された可変開度の常開型電磁弁よりなるレギュレータバルブ54と、このレギュレータバルブ54に対して並列に配置されて液路Pc側から液路52側へのブレーキ液の流通を許容するチェックバルブ55と、液路52および液路Pe間に配置された常開型電磁弁よりなるインバルブ56と、このインバルブ56に対して並列に配置されて液路Pe側から液路52側へのブレーキ液の流通を許容するチェックバルブ57と、液路52および液路Pd間に配置された常開型電磁弁よりなるインバルブ58と、このインバルブ58に対して並列に配置されて液路Pd側から液路52側へのブレーキ液の流通を許容するチェックバルブ59と、液路Peおよび液路53間に配置された常閉型電磁弁よりなるアウトバルブ60と、液路Pdおよび液路53間に配置された常閉型電磁弁よりなるアウトバルブ61と、液路53に接続されたアキュムレータ62と、液路53および液路52間に配置されて液路53側から液路52およびスレーブシリンダ23側へのブレーキ液の流通を許容するチェックバルブ63とを備える。
即ち、本実施の形態のVSA装置24は、アキュムレータ62に貯留されたブレーキ液をスレーブシリンダ23側に戻すポンプを備えておらず、アキュムレータ62はチェックバルブ63を介してスレーブシリンダ23に連通する。
ブレーキペダル12には、そのストロークを検出するストロークセンサSaが設けられ、VSA装置24の一方の入口側の液路Pcにスレーブシリンダ23が発生するブレーキ液圧を検出する液圧センサSbが設けられ、四輪のそれぞれに車輪速センサSc…が設けられ、電動モータ32には、その回転角を検出する回転角センサSdが設けられる。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
システムが正常に機能する正常時には、図1に示すように常開型電磁弁よりなる遮断弁22A,22Bが励磁されて閉弁し、常閉型電磁弁よりなる反力許可弁25が励磁されて開弁する。この状態でストロークセンサSaが運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、スレーブシリンダ23の電動モータ32が作動して後部および前部ピストン38A,38Bが前進することで、後部および前部液圧室39A,39Bにブレーキ液圧が発生する。このブレーキ液圧はVSA装置24の開弁したインバルブ56,56;58,58を介してディスクブレーキ装置14,15;18,19のホイールシリンダ16,17;20,21に伝達され、各車輪を制動する。
このとき、遮断弁22A,22Bが閉弁してマスタシリンダ11とスレーブシリンダ23との連通が遮断されるため、マスタシリンダ11が発生したブレーキ液圧はディスクブレーキ装置14,15;18,19に伝達されることはない。よって、マスタシリンダ11の液圧室13Aが発生したブレーキ液圧は開弁した反力許可弁25を介してストロークシミュレータ26の液圧室30に伝達され、そのピストン29をスプリング28に抗して移動させることで、ブレーキペダル12のストロークを許容するとともに擬似的なペダル反力を発生させて運転者の違和感を解消することができる。
このとき、図3に示すように、ストロークセンサSaで検出したブレーキペダル12のストロークおよびVSA(ABS)指示値の何れか小さい方から、ペダルストローク−液圧マップを用いて目標液圧を検索し、更に目標液圧から、液圧−スレーブシリンダストロークマップを用いてスレーブシリンダ23の目標ストロークを検索し、この目標ストロークをスレーブシリンダ23の電動モータ32の目標回転角に変換する。そして電動モータ32の実回転角と前記目標回転角との偏差がゼロに収束するように電動モータ32の回転角を制御することで、ブレーキペダル12のストロークに応じた液圧をスレーブシリンダ23に発生させてホイールシリンダ16,17;20,21に供給することができる。
またスレーブシリンダ23の目標ストロークは、目標液圧および実液圧の偏差を用いて補正されるので、実液圧を目標液圧に精度良く追従させてVSA制御やABS制御の増圧、減圧および保持作用を精度良く行うことができる。
次に、図1に基づいてVSA装置24の作用を説明する。
一般的に、VSA装置24を作動させるブレーキ液圧は電動モータで作動するポンプにより発生するが、本実施の形態はポンプを備えていないためスレーブシリンダ23がVSA装置24を作動させるブレーキ液圧を発生する。
VSA装置24が作動していない状態では、レギュレータバルブ54,54が消磁して開弁し、インバルブ56,56;58,58が消磁して開弁し、アウトバルブ60,60;61,61が消磁して閉弁する。従って、運転者が制動を行うべくブレーキペダル12を踏んでスレーブシリンダ23が作動すると、スレーブシリンダ23の後部および前部出力ポート41A,41Bから出力されたブレーキ液圧は、レギュレータバルブ54,54から開弁状態にあるインバルブ56,56;58,58を経てホイールシリンダ16,17;20,21に伝達され、四輪を制動することができる。
VSA装置24の作動時には、レギュレータバルブ54,54を消磁して開弁した状態でスレーブシリンダ23を作動させ、スレーブシリンダ23から供給されたブレーキ液圧をレギュレータバルブ54,54を経てインバルブ56,56;58,58に伝達する。従って、スレーブシリンダ23からのブレーキ液圧を励磁により開弁した所定のインバルブ56,56;58,58を介して所定のホイールシリンダ16,17;20,21に選択的に伝達することで、運転者がブレーキペダル12を踏んでいない状態でも、四輪の制動力を個別に制御することができる。
また上述のようにして制動力を発生した所定のホイールシリンダ16,17;20,21の制動力を解除するには、そのホイールシリンダ16,17;20,21に対応するインバルブ56,56;58,58を閉弁してアウトバルブ60,60;61,61を開弁することで、ホイールシリンダ16,17;20,21のブレーキ液圧をアキュムレータ62,62に逃がせば良い。
これにより、第1、第2ブレーキアクチュエータ51A,51Bにより四輪の制動力を個別に制御し、旋回内輪の制動力を増加させて旋回性能を高めたり、旋回外輪の制動力を増加させて旋回安定性能(方向安定性能)を高めたりすることができる。
次に、VSA装置24を用いたABS(アンチロック・ブレーキ・システム)制御の作用を説明する。
運転者がブレーキペダル12を踏んでの制動中に、例えば左前輪が低摩擦係数路を踏んでロック傾向になったことを車輪速センサSc…の出力に基づいて検出した場合には、第1ブレーキアクチュエータ51Aの一方のインバルブ58を励磁して閉弁するとともに、一方のアウトバルブ61を励磁して開弁することで、左前輪のホイールシリンダ16のブレーキ液圧をアキュムレータ62に逃がして所定の圧力まで減圧した後、アウトバルブ61を消磁して閉弁することで、左前輪のホイールシリンダ16のブレーキ液圧を保持する。その結果、左前輪のホイールシリンダ16のロック傾向が解消に向かうと、インバルブ58を消磁して開弁することで、スレーブシリンダ23の後部出力ポート41Aからのブレーキ液圧を左前輪のホイールシリンダ16に供給して所定の圧力まで増圧することで、制動力を増加させる。
この増圧によって左前輪が再びロック傾向になった場合には、前記減圧→保持→増圧を繰り返すことにより、左前輪のロックを抑制しながら制動距離を最小限に抑えるABS制御を行うことができる。
以上、左前輪のホイールシリンダ16がロック傾向になったときのABS制御について説明したが、右後輪のホイールシリンダ17、右前輪のホイールシリンダ20、左後輪のホイールシリンダ21がロック傾向になったときのABS制御も同様にして行うことができる。
以上のように、VSA装置24がVSA機能あるいはABS機能を発揮する時間が長いとき、減圧されたホイールシリンダ16,17;20,21から排出されたブレーキ液がアキュムレータ62,62に貯留され、アキュムレータ62,62が満杯になってアウトバルブ60,60;61,61の開弁時の減圧能力が低下する可能性があるため、アキュムレータ62,62のブレーキ液をスレーブシリンダ23側に戻す必要がある。そのため、従来のVSA装置24はポンプでアキュムレータ62,62のブレーキ液を汲み上げていた。しかしながら、本実施の形態ではVSA装置24がポンプを備えていないため、スレーブシリンダ23に前記ポンプの機能を発揮させてアキュムレータ62,62のブレーキ液をスレーブシリンダ23に戻すようになっている。
即ち、図4に示すように、アウトバルブ60,60;61,61を消磁して閉弁し、レギュレータバルブ54,54を励磁して閉弁した状態で、スレーブシリンダ23の電動モータ32の出力を低下させると、アキュムレータ62,62内のブレーキ液の圧力がチェックバルブ63,63を経てスレーブシリンダ23の後部液圧室39Aおよび前部液圧室39Bに伝達され、リターンスプリング37A,37Bおよび電動モータ32の付勢力に抗して後部ピストン38Aおよび前部ピストン38Bを後退させることで、アキュムレータ62,62のブレーキ液はスレーブシリンダ23に排出される。
このとき、制動中のホイールシリンダ16,17;20,21のブレーキ液圧は、チェックバルブ55,55および閉弁したレギュレータバルブ54,54に阻止されて減圧されることはない。
尚、スレーブシリンダ23が作動してアキュムレータ62,62のブレーキ液がスレーブシリンダ23に戻されたことは、スレーブシリンダ23の電動モータ32の回転角を回転角センサSdで監視することで判定することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、アキュムレータ62,62に貯留されたブレーキ液を排出するためにポンプが不要になるため、部品点数、重量およびコストの削減を図ることができる。
ところで、レギュレータバルブ54,54およびチェックバルブ63,63を介さずにスレーブシリンダ23の後部および前部出力ポート41A,41Bが直接複数のホイールシリンダ16,17;20,21に接続されている場合には、一方のインバルブ56,56;58,58が開弁しているとホイールシリンダ16,17;20,21のブレーキ液圧に変動が生じるため、インバルブ56,56;58,58およびアウトバルブ60,60;61,61が全て閉弁してブレーキ液圧が保持されている状態(ABS制御の液圧保持状態)に同期して、スレーブシリンダ23を作動させてアキュムレータ62,62のブレーキ液を排出することが望ましい。
このとき、スレーブシリンダ23は、所定のブレーキ液圧に対応するピストンストロークが生じるように、「圧力」−「ストローク」のマップに基づいて制御される。またアウトバルブ60,60;61,61を開弁した後にインバルブ56,56;58,58を開弁したときに圧力変動を生じる場合には、この圧力変動に応じてスレーブシリンダ23の目標ストロークを補正して再び目標ブレーキ液圧を出力するように制御すれば、レギュレータバルブ54,54およびチェックバルブ55,55を用いずともブレーキ液圧の保持が可能である(図3の鎖線枠内参照)。
またABS制御の減圧時に車輪速の回復量が減少したこと等からアキュムレータ62,62の満杯が判別された場合には、スレーブシリンダ23を短期間だけ作動させてアキュムレータ62,62のブレーキ液を必要最小限だけ排出し、その後にABS制御に復帰するように構成しても良い。
さて、電源の失陥等によりスレーブシリンダ23が作動不能になると、スレーブシリンダ23が発生するブレーキ液圧に代えて、マスタシリンダ11が発生するブレーキ液圧による制動が行われる。
即ち、電源が失陥すると、図2に示すように、常開型電磁弁よりなる遮断弁22A,22Bは自動的に開弁し、常閉型電磁弁よりなる反力許可弁25は自動的に閉弁する。この状態では、マスタシリンダ11の後部および前部液圧室13A,13Bにおいて発生したブレーキ液圧は、ストロークシミュレータ26に吸収されることなく、スレーブシリンダ23の後部液圧室39Aおよび前部液圧室39Bを通過して各車輪のディスクブレーキ装置14,15;18,19のホイールシリンダ16,17;20,21を作動させ、支障なく制動力を発生させることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の電気的ブレーキ液圧発生手段は実施の形態のスレーブシリンダ23に限定されるものではない。
また本発明のブレーキ液圧制御手段は実施の形態のVSA装置24に限定されるものではなく、VSA装置24からレギュレータバルブ54,54を廃止してABS機能だけを発揮するABS装置としても良い。この場合、レギュレータバルブ54,54ではなくインバルブインバルブ56,56;58,58が本発明の第2電磁弁に相当する。

Claims (6)

  1. 各車輪毎に設けられてブレーキ液圧により制動力を発生するホイールシリンダ(16,17;20,21)と、
    電動モータ(32)により作動して前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)に供給するブレーキ液圧を発生する電気的ブレーキ液圧発生手段(23)と、
    前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)および前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)間に配置され、前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)に供給するブレーキ液圧を個別に制御することで車両挙動を制御するブレーキ液圧制御手段(24)とを備える車両用ブレーキ装置において、
    前記ブレーキ液圧制御手段(24)は、
    前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)および前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)に連通可能なアキュムレータ(62)と、
    前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)を前記アキュムレータ(62)に接続する液路の連通状態を切り替える第1電磁弁(60,61)と、
    前記アキュムレータ(62)から前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)へのブレーキ液の流通のみを許容するチェックバルブ(63)とを備え、
    前記アキュムレータ(62)から前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)へのブレーキ液の排出を、前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)の電動モータ(32)の駆動力を低減することで行うことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
  2. 前記チェックバルブ(63)および前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)間を前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)に接続する液路の連通状態を切り替える第2電磁弁(54)を備え、
    前記ブレーキ液圧制御手段(24)は、前記第1電磁弁(60,61)および前記第2電磁弁(54)の開閉中においてブレーキ液圧を一定に保持することを特徴とする、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
  3. 前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)は、前記電動モータ(32)でピストン(38A,38B)を駆動してブレーキ液圧を発生するスレーブシリンダよりなり、前記ピストン(38A,38B)の位置を変化させることでブレーキ液圧を制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
  4. 前記ブレーキ液圧制御手段(24)は、前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)および前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)間に配置されたインバルブ(56,58)と、前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)および前記アキュムレータ(62)間に配置されたアウトバルブ(60,61)とを備え、前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)は、前記インバルブ(56,58)および前記アウトバルブ(60,61)が共に閉弁したときに前記電動モータ(32)の駆動力を低減することを特徴とする、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
  5. 前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)は複数の前記ホイールシリンダ(16,17;20,21)に接続され、前記電動モータ(32)の駆動力の低減時には前記複数のホイールシリンダ(16,17;20,21)と前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)との接続を遮断する2電磁弁(54,56,58)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
  6. 前記電気的ブレーキ液圧発生手段(23)へのブレーキ液圧の排出を判定する判定手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
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