JP5351404B2 - メッシュ織物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スクリーン印刷法にて、電子部品、IC回路等の精密部品や精密プリント回路等を製造する際に用いるメッシュ織物(スクリーンファブリック)、このメッシュ織物を用いたスクリーン印刷版及びメッシュ織物の製造方法に関する。
従来、スクリーン印刷版では支持体としてポリエステル等の化学繊維からなるメッシュ織物(スクリーンファブリック)が用いられていたが、電子部品や精密部品の微細化の要求に伴い高寸法精度が得られるステンレス等の金属メッシュ織物が主流となっている。
一方で、高精度且つ薄く印刷するという要求も高まっており、これに対しては加熱された一対の平滑ロール(カレンダーロール)により金属メッシュ織物の表面を厚み方向に圧延加工する等の手法により、金属メッシュ織物の両面を平滑化するカレンダー加工が用いられてきた。
金属メッシュ織物の両面に対するカレンダー加工は、金属メッシュ織物の厚みが薄くなるだけではなく、カレンダー加工に伴う糸の高強度化、縦糸・横糸の強度の均一化、縦糸・横糸の交点部のリジッド効果等に起因する高寸法精度や、スクリーンの厚みの均一化なども付随効果としてあった。
現在では電子部品の微細化・高精度化から、更なるスクリーン版の高精度化が要求されている。特に50μm以下のファインパターンを有する高精度スクリーン版においてはカレンダー加工を施して両面を平坦化した金属メッシュ織物を使用して印刷を行なうと、糸の交点部のカレンダー加工面が平らなためペーストの回り込みや転移性が悪くなる。
このため、両面を平坦化した金属メッシュ織物を使用してスクリーン印刷を行なうと、カレンダー加工を施していない金属メッシュ織物を使用した場合に比較して印刷欠けや断線などが発生しやすく、又ペースト厚みのバラツキが大きい傾向があった。
このため、金属メッシュ織物の圧延平坦部を研磨によって面取りして、ペーストの回り込みを向上させる技術が提案されている(特許文献1参照。)。
特開2006−326953公報
しかしながら、特許文献1において提案された糸の交点の平坦部を研磨する方法によっても、ペーストの回り込みや転移性の改善は十分ではないため、印刷欠けや断線などが発生しやすく、又ペースト厚みのバラツキがある。
そこで本発明は、高寸法精度を有し、ペースト厚みを薄く印刷でき、断線の発生が起こり難く、ペースト厚みのバラツキの小さなメッシュ織物、このメッシュ織物を用いたスクリーン印刷版及びメッシュ織物の製造方を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、複数の第1の糸とこの複数の第1の糸に直交する複数の第2の糸とが互いに平織りされたスクリーン印刷版用のメッシュ織物に関する。即ち、本発明の第1の態様に係るメッシュ織物は、このメッシュ織物の一方の主面において、複数の第1の糸と複数の第2の糸とのそれぞれの交点に位置する複数の第2の糸が、一方の主面に平行な平坦部を備え、一方の主面に対向するメッシュ織物の他方の主面において、複数の第1の糸と複数の第2の糸とのそれぞれの交点には平坦部が存在しないことを特徴とする。
本発明の第2の態様は、枠と、この枠に周辺を固定され、複数の第1の糸とこの複数の第1の糸に直交する複数の第2の糸とが互いに平織りされたメッシュ織物とを備えるスクリーン印刷版に関する。即ち、本発明の第2の態様に係るスクリーン印刷版は、このメッシュ織物の一方の主面において、複数の第1の糸と複数の第2の糸とのそれぞれの交点に位置する複数の第2の糸が、一方の主面に平行な平坦部を備え、一方の主面に対向するメッシュ織物の他方の主面において、複数の第1の糸と複数の第2の糸とのそれぞれの交点には平坦部が存在しないことを特徴とする。
本発明の第3の態様は、(イ)複数の第1の糸とこの複数の第1の糸に直交する複数の第2の糸とを互いに平織りし、一方の主面及びこの一方の主面に対向する他方の主面を有する未加工のメッシュ織物を作製する工程と、(ロ)この未加工のメッシュ織物の他方の主面に弾性体シートを貼り付ける工程と、(ハ)他方の主面に弾性体シートを貼り付けた状態で、未加工のメッシュ織物に対し、カレンダー加工を行なう工程と、(ニ)このカレンダー加工後に、弾性体シートを剥がす工程とを含むメッシュ織物の製造方法であることを要旨とする。
本発明によれば、高寸法精度を有し、ペースト厚みを薄く印刷でき、断線の発生が起こり難く、ペースト厚みのバラツキの小さなメッシュ織物、このメッシュ織物を用いたスクリーン印刷版及びメッシュ織物の製造方法を提供できる。
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、以下に示す第1〜第3の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物(スクリーンファブリック)は、図1に示ように、縦に平行に並べた複数の縦糸(第1の糸)12j-1,12j,12j+1,…の間に、横に平行に並べた複数の横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…を、1本ずつ交互に交差させるように平織りされている。複数の縦糸(第1の糸)12j-1,12j,12j+1,…と複数の横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…とは、互いに直交している。
図1(a)及び(c)に示すように、このメッシュ織物の一方の主面(第1の主面)においては、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点が一方の主面に平行な楕円形の平坦部13i-1j-1,13i-1j,13i-1j+1,…,13ij-1,13ij,13ij+1,…,13i+1j-1,13i+1j,13i+1j+1,…を備えるが、 図1(b)及び(c)に示すように、他方の主面(第2の主面)においては、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点には平坦部が存在しない。第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物は、図1(b)及び(c)に示す他方の主面(第2の主面)をプリント面としてスクリーン印刷版とする。
図1に示ように、一方の主面(第1の主面)にのみ一方の主面に平行な平坦部13i-1j-1,13i-1j,13i-1j+1,…,13ij-1,13ij,13ij+1,…,13i+1j-1,13i+1j,13i+1j+1,…を形成する方法としては、例えばカレンダー加工の際にメッシュ織物の他方の主面(第2の主面)に保護層となる弾性体シートを貼り付けて加工を行なうと他方の主面(第2の主面)は加工されず、保護層のない一方の主面(第1の主面)のみにカレンダー加工を施すことが可能である。しかし加工方法はこれに限定されるわけではなく、研磨やエッチングや熱圧延などの他の方法で加工することも可能である。又メッシュ織物としては金属メッシュ、ポリエステルメッシュ、ナイロンメッシュ、ポリアリレートメッシュなどを用いることが可能である。
図2に示すように、第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版は、木製又は金属製(例えばアルミ製)の矩形状の枠1にメッシュ織物2を、その4辺を引っ張って所定の張力(テンション)を持たせた状態で接着等により取り付け、メッシュ織物2上に感光膜3を塗布し、露光、現像工程を経て所定のパターン(図2は、メッシュ織物2の他方の主面(第2の主面)側から見た図であり、例示的に渦巻き状のパターンを示している。)を形成して構成されている。
図3は、 図2のA−A方向から見た第1の実施の形態に係るメッシュ織物の略示断面図であり、図3では上側に示した面である一方の主面(第1の主面)には、縦糸12q-1,12q,12q+1と横糸11pとのそれぞれの交点に一方の主面に平行な平坦部13pq-1,13pq,13pq+1が形成され、図3では下側に示した他方の主面(第2の主面)の縦糸12q-1,12q,12q+1と横糸11pとのそれぞれの交点には平坦部が存在しない。第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物は、図3では上側に示した一方の主面(第1の主面)をスキージ面とし、図3では下側に示した他方の主面(第2の主面)をプリント面とする。
図4は、 図3の略示断面図の部分を中心とする図2に示したメッシュ織物2の他方の主面(第2の主面)側の拡大図であり、縦糸12q-1,12q,12q+1と横糸11pとが、1本ずつ交互に交差した平織り構造を示している。図示されたように、他方の主面(第2の主面)側においては、縦糸12q-1,12q,12q+1と横糸11pとのそれぞれの交点には平坦部が存在しない。
図2に示した第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版を使用してスクリーン印刷機により印刷を行なうときは、被印刷物台(ステージ)上に真空吸着その他の方法によって載置固定された被印刷物とメッシュ織物2(印刷版)との間に隙間(ギャップ)をとり、枠1を印刷機本体にセットする。この状態で、メッシュ織物2の一方の主面(第1の主面)上にインキを塗布し、次いでスキージをメッシュ織物2に圧接させて、メッシュ織物2を被印刷物の表面に押圧し接触する。この状態で、スキージを所定の方向へ移動させ、メッシュ織物2の開口部を通してインキ(ペースト)を被印刷物に転写する。
図5は、400メッシュ、線径23μmの第1の実施の形態に係るメッシュ織物2に対し、図3に示すように、感光膜(感光性乳剤)3の膜厚10μmによりパターン幅30μmのパターンを形成して製版したスクリーン印刷版を用いた10ショット目の印刷の印刷物の写真である。図10に示す両面に平坦部を備えたメッシュ織物(比較例)を用いたスクリーン印刷版による印刷物の写真と比較すれば、図5に示すように、第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版では断線の発生を抑制できる。
図6は、被印刷物上のインキ(ペースト)の厚みをキーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−200にて3次元像の測定を行なった結果である。デジタルマイクロスコープVHX−200で測定した3次元像はカラー表示されるが、図6ではカラー表示を線図に換算して等高線表示している。図11に示す両面に平坦部を備えたメッシュ織物(比較例)を用いたスクリーン印刷版による結果と比較すれば、図6に示すように第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版によれば、メッシュ織物の交点部でもペーストの回り込みが良いため極端に薄く印刷されることが抑制され、被印刷物上のインキ(ペースト)の厚みのバラツキが小さいことが分かる。
図10及び図11に印刷結果を示した比較例に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物(スクリーンファブリック)は、図7に示ように、縦に平行に並べた複数の縦糸22j-1,22j,22j+1,…の間に、横に平行に並べた複数の横糸21i-1,21i,21i+1,…を、1本ずつ交互に交差させるように平織りされている。 図7(a)及び(c)に示すように、このメッシュ織物の一方の主面(第1の主面)においては、縦糸22j-1,22j,22j+1,…と横糸21i-1,21i,21i+1,…とのそれぞれの交点が楕円形の平坦部23i-1j-1,23i-1j,23i-1j+1,…,23ij-1,23ij,23ij+1,…,23i+1j-1,23i+1j,23i+1j+1,…を備え、更に、 図7(b)及び(c)に示すように、他方の主面(第2の主面)において、縦糸22j-1,22j,22j+1,…と横糸21i-1,21i,21i+1,…とのそれぞれの交点に平坦部24i-1j-1,24i-1j,24i-1j+1,…,24ij-1,24ij,24ij+1,…,24i+1j-1,24i+1j,24i+1j+1,…を備え、両面が平坦化されている。
図8は、 図9に示した比較例に係るメッシュ織物のA−A方向から見た略示断面図であり、図8では上側に示した一方の主面(第1の主面)には、縦糸22q-1,22q,22q+1と横糸21pとのそれぞれの交点に平坦部23pq-1,23pq,23pq+1が形成され、図8では下側に示した他方の主面(第2の主面)の縦糸22q-1,22q,22q+1と横糸21pとのそれぞれの交点にも平坦部24pq-1,24pq,24pq+1が形成され、両面が平坦化されている。比較例に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物は、図8では上側に示した一方の主面(第1の主面)をスキージ面とし、下側に示した他方の主面(第2の主面)をプリント面とする。
図9は、 比較例に係るメッシュ織物2の他方の主面(第2の主面)側の拡大図であり、縦糸22q-1,22q,22q+1と横糸21pとが、1本ずつ交互に交差した平織り構造を示している。図示されたように、他方の主面(第2の主面)側には、縦糸22q-1,22q,22q+1,…と横糸21p-1,21p,21p+1,…とのそれぞれの交点に平坦部24p-1q-1,24p-1q,24p-1q+1,…,24pq-1,24pq,24pq+1,…,24p+1q-1,24p+1q,24p+1q+1,…が設けられ、両面が平坦化されている。
図10は、図5と同様に、400メッシュ、線径23μmの比較例に係るメッシュ織物2に対し、図8に示すように、感光膜(感光性乳剤)3の膜厚10μmによりパターン幅30μmのパターンを形成して製版したスクリーン印刷版を用いた10ショット目の印刷の印刷物の写真である。図5に示す場合と同一条件で印刷したが、図10に示すように、比較例に係るスクリーン印刷版では断線が発生していることが分かる。
図11は、図6と同様に、被印刷物上のインキ(ペースト)の厚みをデジタルマイクロスコープVHX−200にて測定した結果を等高線表示したものである。図6に示した場合と同一条件で印刷したが、図11に示すように比較例に係るスクリーン印刷版の場合は、メッシュ織物の交点部へのペーストの回り込みが悪いため極端に薄く印刷される部分があり、図6に示した場合に比して、被印刷物上のインキ(ペースト)の厚みのバラツキが大きいことが分かる。
表1は、第1の実施の形態に係るメッシュ織物の実施例として、片面のみに平坦部を備えた500メッシュ、線径16μm;400メッシュ、線径23μm;及び、325メッシュ、線径28μmの3仕様のメッシュ織物を用意し、同様に、比較例に係るメッシュ織物として、両面に平坦部を備えた500メッシュ、線径16μm;400メッシュ、線径23μm;及び、325メッシュ、線径28μmの3仕様のメッシュ織物を用意し、それぞれのメッシュ織物でスクリーン印刷版を製版し、印刷物の断線の個数を比較した結果を示すものである。実施例に係るメッシュ織物では、平坦化された加工面(第1の主面)をスキージ面として、感光膜(感光性乳剤)の厚さを10μmでスクリーン印刷版を製版し、両面に平坦部を備えた比較例に係るメッシュ織物も同一の感光膜(感光性乳剤)の厚さでスクリーン印刷版を製版した。但し被印刷物はグリーンシートとし、インキ(ペースト)はAgペーストとした。表1においては、ライン100本中で発生した断線の個数を、実施例と比較例に係るメッシュ織物を用いたスクリーン印刷版についてそれぞれ比較している。
表1に示すように、比較例に係るメッシュ織物を用いたスクリーン印刷版によるスクリーン印刷では、325メッシュ、線径28μmでは2本、400メッシュ、線径23μmでは8本、500メッシュ、線径16μmでは19本と微細化が進むにつれ、断線の本数が増えている。しかし、表1に示すように、3版のいずれの実施例に係るメッシュ織物を用いたスクリーン印刷版によるスクリーン印刷で、まったく断線が発生していないことが分かる。
表2は、表1に示した実施例に係るスクリーン印刷版の3版と比較例に係るスクリーン印刷版の3版の計6版について、それぞれ20個(母集団の個数N=20)の印刷物を用意し、統計的に、インキ(ペースト)の厚みの平均値、標準偏差、範囲を求めたものである。
表2に示すように、3版のいずれの実施例に係るスクリーン印刷版も、比較例に係るスクリーン印刷版よりもインキ(ペースト)の厚みの平均値が高く、標準偏差が低く、バラツキの範囲も小さいことが分かる。
上記のように、第1の実施の形態に係るメッシュ織物によれば、従来のカレンダー加工を施したメッシュ織物を使用したスクリーン印刷版と同程度の高寸法精度を有し又ペースト厚みを薄く印刷できる。且つ、第1の実施の形態に係るメッシュ織物によれば、従来品のペーストの回り込みや転移性の悪さを抑制できるため断線の発生が起こり難い。更に、第1の実施の形態に係るメッシュ織物によれば、ペーストの回り込みが良いためペースト厚みのバラツキを抑制できる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係るメッシュ織物では、図1(c)及び図3に示すように、横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…と縦糸(第1の糸)12j-1,12j,12j+1,…とが、互いに上下方向(織物の表裏面方向)に交互にずれて位置する。このため、平坦面を有する被印刷物に対してスクリーン印刷時に横糸11i-1,11i,11i+1,…と縦糸12j-1,12j,12j+1,…の両方が接するが、第2の実施の形態に係るメッシュ織物では、縦糸(第1の糸)12j-1,12j,12j+1,…が実質的に同一平面上に位置し、第1の実施の形態に係るメッシュ織物に比べて横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…の曲率が高く、縦糸12j-1,12j,12j+1,…が被印刷物と接触しないようになっている。複数の縦糸(第1の糸)12j-1,12j,12j+1,…と複数の横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…とは、互いに直交していることは、第1の実施の形態に係るメッシュ織物と同様である。
図示を省略しているが、本発明の第2の実施の形態に係るスクリーン印刷用版の金属メッシュ織物は、図1に示したのと同様に、一方の主面(第1の主面)においては、縦糸(第1の糸)12j-1,12j,12j+1,…と横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点に位置する横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…の上面には、一方の主面に平行な楕円形の平坦部を備えるが、他方の主面(第2の主面)においては、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点には平坦部が存在しない。
第2の実施の形態に係るメッシュ織物では、縦糸12j-1,12j,12j+1,…が実質的に同一平面上に位置し、第1の実施の形態に係るメッシュ織物に比べて横糸11i-1,11i,11i+1,…の曲率が高いので、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点に位置する横糸11i-1,11i,11i+1,…の上面に平坦部がない場合は、
一方の主面(第1の主面)をスキージ面とすると、メッシュ織物の横糸11i-1,11i,11i+1,…が大きく曲がっているためスキージとの接触面積が小さく印刷圧力が高くなりスキージの磨耗が大きくなる。一方の主面(第1の主面)側において、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点に位置する横糸11i-1,11i,11i+1,…の上面に平坦部を備えるようにすることにより、印刷圧力が分散されスキージ磨耗を抑制することができた。
縦糸12j-1,12j,12j+1,…が同一平面上に固定されるようにするため、第2の実施の形態に係るメッシュ織物を構成する金属製横糸11i-1,11i,11i+1,…としては、強度が600〜1500N/mm2 、好ましくは800〜1500N/mm2 の、通常のメッシュ織物を織るのに使われるものがいずれも使用できるが、金属製縦糸12j-1,12j,12j+1,…には、強度が1000N/mm2 以上(好ましくは1300〜3000N/mm2 )で、横糸11i-1,11i,11i+1,…の強度よりも少なくとも200N/mm2 大きい強度を有したものが使用され、最大強度のものとしては2700N/mm2 程度のものが使用できる。但し、第2の実施の形態に係るメッシュ織物の金属製横糸11i-1,11i,11i+1,…及び縦糸12j-1,12j,12j+1,…の材質は特に限定されるものではなく、スクリーン印刷版に使用される金属メッシュを構成する各種金属材、例えばステンレス、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銅等が使用できるが、好ましいのはステンレスである。横糸11i-1,11i,11i+1,…及び縦糸12j-1,12j,12j+1,…の材質は一般的には同じで良いが、各糸の強度及び強度差が前述の条件を満たせば、同じ材質に限定されるものではない。
図示を省略しているが、縦糸12j-1,12j,12j+1,…が同一平面上に固定される断面構造により、第2の実施の形態に係るメッシュ織物では、メッシュ織物が被印刷物と接触する面積が小さくなり、塗布されるインキあるいはペーストが十分にメッシュ織物の下側まで充填される。このため、第1の実施の形態に係るメッシュ織物と同様なメッシュ織物の交点部へのペーストの回り込みが良く極端に薄く印刷されることが抑制され、被印刷物上のインキ(ペースト)の厚みのバラツキが小さいという効果を維持しつつ、更に、第1の実施の形態に係るメッシュ織物に比べて、より高い印刷膜厚が得られ、印刷時にピンホールが発生する率が低くなるという利点が得られる。
又、図2に示されるような第1の実施の形態に係るメッシュ織物の場合では、印刷時に下層の凹凸の影響を受けると、メッシュ織物の表面に対応した格子目が下層との間に干渉縞が生じて、均一な印刷が行えないという問題があったが、第2の実施の形態に係るスクリーン印刷版の場合には、メッシュ織物の被印刷物に接触する面積が小さくなることによって、印刷物の表面の平滑性が高くなり、多層印刷時に下層の凹凸の影響を受けることが少なくなり、干渉縞の発生を防止することができる。
(第2の実施の形態の変形例)
なお、第1の糸及び第2の糸のどちらを縦糸とし、どちらを横糸とするかは選択の問題であり、上記の説明において、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とを入れ替えても良い。即ち、第2の実施の形態の変形例に係るメッシュ織物では、横糸11i-1,11i,11i+1,…が実質的に同一平面上に位置し、第1の実施の形態に係るメッシュ織物に比べて縦糸12j-1,12j,12j+1,…の曲率が高く、横糸11i-1,11i,11i+1,…が被印刷物と接触しないようになっている。そして、一方の主面(第1の主面)においては、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点に位置する縦糸12j-1,12j,12j+1,…の上面には、一方の主面に平行な楕円形の平坦部を備えるが、他方の主面(第2の主面)においては、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点には平坦部が存在しないようにしても、上記の第2の実施の形態に係るメッシュ織物と同様な効果を奏することが可能である。
横糸11i-1,11i,11i+1,…が同一平面上に固定されるようにするため、第2の実施の形態の変形例に係るメッシュ織物を構成する金属製縦糸12j-1,12j,12j+1,…としては、強度が600〜1500N/mm2 、好ましくは800〜1500N/mm2 の、通常のメッシュ織物を織るのに使われるものがいずれも使用できるが、金属製横糸11i-1,11i,11i+1,…には、強度が1000N/mm2 以上(好ましくは1300〜3000N/mm2 )で、縦糸12j-1,12j,12j+1,…の強度よりも少なくとも200N/mm2 大きい強度を有したものが使用され、最大強度のものとしては2700N/mm2 程度のものが使用できる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物(スクリーンファブリック)は、図示を省略するが、図1に示した第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物と同様に、縦に平行に並べた複数の縦糸(第1の糸)12j-1,12j,12j+1,…の間に、横に平行に並べた複数の横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…を、1本ずつ交互に交差させるように平織りされ、一方の主面(第1の主面)においては、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点が一方の主面に平行な楕円形の平坦部13i-1j-1,13i-1j,13i-1j+1,…,13ij-1,13ij,13ij+1,…,13i+1j-1,13i+1j,13i+1j+1,…を備え、他方の主面(第2の主面)においては、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点には平坦部が存在しない。しかし、第1の実施の形態とは異なり、第3の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物は、平坦部が存在する一方の主面(第1の主面)側をプリント面とし、平坦部が存在しない他方の主面(第2の主面)側をスキージ面として用いる。
例えば、液晶の配光膜が形成されたガラス基板上にシール剤などをスクリーン印刷する場合、印刷の圧力によりガラス基板上の配光膜にメッシュ織物のメッシュ痕が発生する。そのため配光膜に与える印刷の圧力を分散させる目的で両面にカレンダー加工を施したメッシュ織物(例えば、400メッシュ、線径23μm等)を用いた版で印刷を行なうと、シール剤の吐出量が少ない。
このような場合、第3の実施の形態に係るメッシュ織物を用い、平坦部を有する一方の主面(第1の主面)側をプリント面とし、平坦部を有しない他方の主面(第2の主面)側をスキージ面にすれば、メッシュ痕の発生を抑制し、且つシール剤の吐出量を多くして印刷することが可能である。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第3の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、既に述べた第2の実施の形態の説明においては、縦糸(第1の糸)12j-1,12j,12j+1,…が実質的に同一平面上に位置し、第1の実施の形態に係るメッシュ織物に比べて横糸(第2の糸)11i-1,11i,11i+1,…の曲率が高く、縦糸12j-1,12j,12j+1,…が被印刷物と接触しないようになっている場合を例示的に示したが、第1の実施の形態と第2の実施の形態との中間的な平織り構造でも構わない。即ち、第2の実施の形態に係るメッシュ織物では、縦糸12j-1,12j,12j+1,…が実質的に同一平面上に位置する構造を示したが、完全に同一平面ではなく、縦糸12j-1,12j,12j+1,…が線の太さの1/6〜1/2程度上下にずれるような平織り構造にして、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点に位置する縦糸12j-1,12j,12j+1,…及び横糸11i-1,11i,11i+1,…の両方の上面に平坦部を設けても良い。この場合は、横糸11i-1,11i,11i+1,…の上面の平坦部の面積の方が、縦糸12j-1,12j,12j+1,…の上面の平坦部の面積よりも大きくなる(場合によっては、横糸11i-1,11i,11i+1,…の上面にのみ平坦部があることになる。)。この場合であっても、他方の主面(第2の主面)においては、縦糸12j-1,12j,12j+1,…と横糸11i-1,11i,11i+1,…とのそれぞれの交点には平坦部が存在しないようにすることは勿論である。このような、第1の実施の形態と第2の実施の形態との中間的な平織り構造でも、メッシュ織物が被印刷物と接触する面積が小さくなり、塗布されるインキあるいはペーストが十分にメッシュ織物の下側まで充填される。このため、第1の実施の形態に係るメッシュ織物と同様なメッシュ織物の交点部へのペーストの回り込みが良く極端に薄く印刷されることが抑制され、被印刷物上のインキ(ペースト)の厚みのバラツキが小さいという効果を維持しつつ、更に、第1の実施の形態に係るメッシュ織物に比べて、より高い印刷膜厚が得られ、印刷時にピンホールが発生する率が低くなるという利点が得られ、メッシュ織物の被印刷物に接触する面積が小さくなることによって、印刷物の表面の平滑性が高くなり、多層印刷時に下層の
凹凸の影響を受けることが少なくなり、干渉縞の発生を防止することができると同時に、印刷圧力が分散されるので、スキージ磨耗を抑制することができる。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物の一方の主面(第1の主面)の一部を拡大して示した略示平面図であり、 図1(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物の他方の主面(第2の主面)の一部を拡大して示した略示平面図であり、 図1(c)は、 図1(a)のI−I方向から見た略示断面図である。 プリント面(第2の主面)から見た第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版の概略を説明する平面図である。 図2のA−A方向から見た第1の実施の形態に係るメッシュ織物の略示断面図である。 図3の略示断面図の部分を中心とする、プリント面(第2の主面)から見た第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物の概略を説明する拡大平面図である。 400メッシュ、線径23μmの第1の実施の形態に係るメッシュ織物に対し、感光膜(感光性乳剤)の膜厚10μmによりパターン幅30μmのパターンを形成して製版したスクリーン印刷版を用いた10ショット目の印刷の印刷物の上面を撮影した写真である。 第1の実施の形態に係るスクリーン印刷版を用いた印刷において、被印刷物上のインキ(ペースト)の厚みをキーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−200にて3次元像の測定を行なった結果を、線図に換算して等高線表示した模式図である。 図7(a)は、比較例に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物の一方の主面(第1の主面)の一部を拡大して示した略示平面図であり、 図7(b)は、比較例に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物の他方の主面(第2の主面)の一部を拡大して示した略示平面図であり、 図7(c)は、 図7(a)のVII−VII方向から見た略示断面図である。 比較例に係るメッシュ織物の図9のA−A方向から見た略示断面図である。 図8の略示断面図の部分を中心とする、プリント面(第2の主面)から見た比較例に係るスクリーン印刷版のメッシュ織物の概略を説明する拡大平面図である。 400メッシュ、線径23μmの比較例に係るメッシュ織物に対し、感光膜(感光性乳剤)の膜厚10μmによりパターン幅30μmのパターンを形成して製版したスクリーン印刷版を用いた10ショット目の印刷の印刷物の上面を撮影した写真である。 比較例に係るスクリーン印刷版を用いた印刷において、被印刷物上のインキ(ペースト)の厚みをデジタルマイクロスコープVHX−200にて3次元像の測定を行なった結果を、線図に換算して等高線表示した模式図である。
符号の説明
1…枠
2…メッシュ織物
3…感光膜
11i-1,11i,11i+1,…,11p…横糸
12j-1,12j,12j+1,…12q-1,12q,12q+1…縦糸
13i-1j-1,13i-1j,13i-1j+1,…,13ij-1,13ij,13ij+1,…,13i+1j-1,13i+1j,13i+1j+1,…,13pq-1,13pq,13pq+1…平坦部

Claims (1)

  1. 複数の第1の糸と該複数の第1の糸に直交する複数の第2の糸とを互いに平織りし、一方の主面及び該一方の主面に対向する他方の主面を有する未加工のメッシュ織物を作製する工程と、
    該未加工のメッシュ織物の前記他方の主面に弾性体シートを貼り付ける工程と、
    前記他方の主面に弾性体シートを貼り付けた状態で、前記未加工のメッシュ織物に対し、カレンダー加工を行なう工程と、
    該カレンダー加工後に、前記弾性体シートを剥がす工程
    とを含むことを特徴とするメッシュ織物の製造方法。
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