JP5350780B2 - イオン性液体と導電性ポリマーの混合物 - Google Patents

イオン性液体と導電性ポリマーの混合物 Download PDF

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Description

本発明は、イオン性液体と導電性ポリマーを含む混合物に関する。
電気光学式ディスプレイ装置(例えば液晶ディスプレイ装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス・ディスプレイ装置、光電池、固体画像センサー、エレクトロクロミック・ウインドウなど)の製造には、金属酸化物(例えばインジウム-スズ-酸化物(ITO))、アンチモンをドープした酸化スズ、スズ酸カドミウム(カドミウム-スズ-酸化物)からなる透明な導電層(TCL)が一般に使用されている。
フラット・パネル・ディスプレイなどの装置は、一般に、透明な電極としてインジウム-スズ-酸化物(ITO)層が設けられた基板を備えている。ITOのコーティングは基板の温度を250℃までの高温にする操作を含む真空スパッタリング法によって実施されるため、ガラス基板が一般に使用される。無機ITO層とガラス基板は脆いことが原因で製造コストが高くなり、しかもこのような電極の可撓性は小さいため、考えられる用途は限定される。その結果、可撓性基板としてのプラスチック樹脂と、電極としての有機導電性ポリマー層とを含むすべてが有機材料からなるデバイスを製造することがますます注目されている。このようなプラスチック・エレクトロニクスにより、新しい性質を持った低コストのデバイスが可能になる。可撓性プラスチック基板には(スパッタリングなどのバッチ法ではなく)連続的なホッパー・コーティング法またはローラー・コーティング法によって導電性ポリマー層を設けることができ、その結果として得られる有機電極のおかげで、より可撓性があり、より低コストで、より軽い電子デバイスの“ロール-トゥー-ロール”生産が可能になる。
導電性ポリマーは、その導電率が理由でさまざまな産業の注目を集めてきた。導電性ポリマーの多くは濃い色が着いているためTCLの用途にはあまり適していないが、そのうちのいくつか(例えば(アメリカ合衆国特許第5,665,498号と第5,674,654号に言及されている)置換された、または置換されていないピロール含有ポリマー、(アメリカ合衆国特許第5,300,575号、第5,312,681号、第5,354,613号、第5,370,981号、第5,372,924号、第5,391,472号、第5,403,467号、第5,443,944号、第5,575,898号、第4,987,042号、第4,731,408号に言及されている)置換された、または置換されていないチオフェン含有ポリマー、(アメリカ合衆国特許第5,716,550号、第5,093,439号、第4,070,189号に言及されている)置換された、または置換されていないアニリン含有ポリマー)は透明であり、少なくとも薄い層を適度な厚さでコーティングするときに使えないほど着色されてはいない。これらポリマーは、その導電率のため、写真を画像化する用途で使用されるプラスチック基板にコーティングするとき、処理に対する耐性があって湿度に無関係な優れた帯電防止特性を提供することができる(例えばアメリカ合衆国特許第6,096,491号、第6,124,083号、第6,190,846号を参照のこと)。
アメリカ合衆国特許第5,300,575号には、水性媒体中でポリアニオンの存在下にて適切なモノマーを酸化重合することによってポリチオフェンを調製する方法が記載されている。アメリカ合衆国特許第5,766,515号と第6,083,635号には、ポリチオフェンと、ジヒドロキシ基かポリヒドロキシ基および/またはカルボキシル基、アミド基、ラクタム基の3つのうちのいずれかを含む化合物との水性コーティング組成物を適切な基板にコーティングして高温でアニールすると、ポリチオフェンの高導電層が得られることが開示されている。このような導電率増大剤(CEA)を添加すると導電率の大きなポリチオフェン・コーティングが得られるが、このようなコーティングを大スケールで製造するには、揮発性有機化合物(VOC)を取り扱う設備を備えたコーティング施設が必要になる可能性がある。さらに、これらコーティングの高温アニーリングは、ある種の可撓性ポリマー支持体にとっては適切でない可能性がある。
有機導電性ポリマーからなるコーティング層をさまざまな方法でパターニングして電極アレイにする。公知の湿式エッチング・マイクロリソグラフィ法はWO 97/18944とアメリカ合衆国特許第5,976,274号に記載されており、この方法では、有機導電性ポリマーをコーティングされた層の上にポジまたはネガのフォトレジストを付着させ、そのフォトレジストを選択的にUV光に露出し、現像し、エッチングし、現像されなかったフォトレジストを最後に剥がすことで、パターニングされた層を得る。アメリカ合衆国特許第5,561,030号では、同様の方法を利用してパターンが形成される。ただし、そのパターンは、まだ導電性でないプレポリマーの連続層の中に形成されることと、マスクを洗浄して除去した後に残ったプレポリマーを酸化によって導電性にすることが異なっている。従来のリソグラフィ法が含まれるこの方法は、多数のステップを含んでいることと、有害な化学物質を使用する必要があることが理由で問題がある。
ヨーロッパ特許EP-A-615 256には、導電性ポリマーのパターンを基板上に作り出す方法として、3,4-エチレンジオキシチオフェン・モノマーと、酸化剤と、塩基とを含む組成物をコーティングして乾燥させ;その乾燥させた層にマスクを通じてUV光を照射し;次いで加熱する操作が含まれる方法が記載されている。コーティングのうちでUVに露出する領域には非導電性ポリマーが含まれ、非露出領域には導電性ポリマーが含まれる。導電性ポリマーのパターンをこの方法に従って形成するとき、独立したフォトレジスト層をコーティングしてパターニングする必要はない。
アメリカ合衆国特許第6,045,977号には、光塩基生成物質を含む導電性ポリアニリン層をパターニングする方法が記載されている。この層をUVに露出すると、露出した領域において導電率を低下させる塩基が生成される。
ヨーロッパ特許EP-A-1 054 414には、ClO-、BrO-、MnO4 -、Cr2O7 -2、S2O8 -2、H2O2からなるグループの中から選択した酸化剤を含む印刷溶液を利用して導電性ポリマー層の表面に電極パターンを印刷することによってその導電性ポリマー層をパターニングする方法が記載されている。導電層のうちで酸化剤溶液に曝露する領域は非導電性になる。
Research Disclosure、1998年11月、1473ページ(開示番号41548)には、導電性ポリマーにパターンを形成するさまざまな手段が記載されている。例えば選択した領域をレーザー照射によって基板から除去する光除去という手段がある。この光除去法は便利な1ステップの乾式法だが、ゴミが発生するため湿式クリーニング・ステップが必要となる可能性があり、その場合にはレーザー装置の光学系と機械系が汚染される可能性がある。導電性ポリマーを除去して電極パターンを形成する操作を含む従来法により、パターニングされた表面の導電性領域と非導電性領域の間に光学密度の差も生じるが、これは避けるべきである。
レーザーを用いて画像に合わせて加熱することによって有機導電性ポリマー層をパターニングする方法がヨーロッパ特許第1 079 397 A1号に開示されている。この方法により、層を実質的に除去または破壊することなしに抵抗率が約1/10〜1/1000に低下する。
ディスプレイ関連デバイスに導電性ポリマー層を応用することが以前から考えられてきた。ヨーロッパ特許第0 996 599 B1号には、CRTディスプレイまたはLCDディスプレイのスクリーン上のタッチ・スクリーン・コーティングで使用される透光性導電性ポリマー・コーティングを有する透光性基板が記載されている。アメリカ合衆国特許第5,738,934号には、導電性ポリマー・コーティングを有するタッチ・スクリーン用カバー・シートが記載されている。
アメリカ合衆国特許第5,828,432号と第5,976,284号には、液晶ディスプレイ装置で用いられる導電性ポリマー層が記載されている。この導電層は非常に導電性がよいが、透過率は一般に60%以下である。
ポリマーを分散させた液晶を含むディスプレイにおいて透明な電場展開層としてポリチオフェンを用いることが、アメリカ合衆国特許第6,639,637号と第6,707,517号に開示されている。しかしこれら特許文献のポリチオフェン層は実質的に非導電性である。
液晶ディスプレイで平面内スイッチング・モードにおいて周辺部に場が生じるのを防止するため導電性高分子膜を用いることが、アメリカ合衆国特許第5,959,708号に提案されている。しかしこの膜の導電率に関する条件はあまり厳密ではないように見える。例えば一実施態様(5欄、6〜10行)では、高分子膜を完全に非導電性にすることができる。さらに、アメリカ合衆国特許第5,959,708号には、この膜の透過特性に関する仕様にまったく言及されていない。
陰極線管用ガラス基板の上にポリチオフェンとケイ素酸化物からなる複合体を利用した透明なコーティングを使用することが、アメリカ合衆国特許第6,404,120号に開示されている。しかしこの方法では、エチレンジオキシチオフェン・モノマーをガラス上にて高温で焼成してその場で重合させた後、オルトケイ酸テトラエチルで洗浄することが提案されている。幅が広い可撓性プラスチック基板のロール-トゥー-ロール生産でこのような複雑な方法を実施することは難しい可能性がある。
導電膜として、ITOの代わりにポリチオフェンとポリピロールをその場で重合することが、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0008135 A1で提案されている。すでに述べたように、このような方法で導電性コーティングのロール-トゥー-ロール生産を実現することは難しい。この同じ特許出願では、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の分散液を用いた比較例を作ると特性が劣ったコーティングになった。
最近、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0193042 A1において、フェノールなどの有機化合物をかなりの量添加することによってポリチオフェンの導電率をさらに改善することが主張されている。しかし健康上と安全上の懸念があるため、このような化合物をウェブを製造してコーティングする典型的な場所に導入するには特別な注意が必要とされよう。したがって最終製品のコストがおそらく増加する。
最近、さまざまな電気化学デバイスにおける電解質としてイオン性液体がかなり注目されてきている。共役ポリマーのモノマーを含むイオン性液体から電気活性のある共役ポリマー層を調製する方法が、アメリカ合衆国特許第6,667,825 B2号に開示されている。アメリカ合衆国特許第6,828,062 B2号には、共役ポリマー電極と、補助電極と、これら2つの電極に挟まれたイオン性液体とを備える電気化学デバイスが開示されている。有機熱電成分と無機熱電成分を含む熱電材料がアメリカ合衆国特許第6,759,587 B2号に開示されている。有機熱電成分として、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンや、これらの誘導体が示唆されている。アメリカ合衆国特許第6,759,587 B2号の熱電気材料は、場合によっては、可塑剤としてイオン性液体を含んでいる。しかし上記のどの特許文献にも、イオン性液体を導電性ポリマーのための導電率増大剤として使用することは示唆されていない。さらに、アメリカ合衆国特許第6,759,587 B2号の無機熱電気成分は、数百μmまでの粒子サイズを持つことが開示されている。このサイズは、あらゆる透明な層で用いるのには適していない。
上記のように、ディスプレイに組み込むことのできる多彩な導電性TCL組成物が従来技術において開示されている。ディスプレイ関連デバイスに導電性ポリマーを応用することが従来から考えられてきたが、最新のディスプレイ装置において要求される大きな透過率と小さな面抵抗率という厳格な条件は、導電性ポリマーを用いて達成するのは極めて難しい。したがって、環境にとって望ましい成分を用いて典型的な製造条件下でさまざまな基板上にロール-トゥー-ロールでコーティングすることのできる導電性ポリマーが、従来技術において相変わらず切実に必要とされている。TCL層は、電極の性能を向上させることに加え、非常に透明でなければならず、パターニングが可能でなければならず、合理的なコストで製造できねばならない。
本発明の目的は、導電性があり非常に透明なウェブをコーティングできるTCL膜であって、商品としてのさまざまな要求を従来のTCL膜よりも効率的に満たすものを提供することである。
本発明の1つの目的は、導電性ポリマーのための導電率がより大きな組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、導電率がより大きな導電性ポリマーを含む部品を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、このような部品を得る方法を提供することである。
本発明のこれらの目的ならびに他の目的は、イオン性液体と、カチオンの形態の導電性ポリマーと、その導電性ポリマーに付随するポリアニオンとを含む混合物によって達成される。
導電性ポリマーを含む組成物にイオン性液体を添加することで、その組成物の導電率を顕著に大きくできることが見いだされた。
本発明には多数の利点がある。イオン性液体と導電性ポリマーの混合物を用いて適切な基板をコーティングすると、そのコーティング層は、“シート抵抗”または面抵抗率(SER)が小さく、可視光の発光が多くなる。このような透明な導電層は、ディスプレイ製品に応用する上で非常に望ましい。本発明によって蒸気圧が非常に低いイオン性液体を組み込むことにより、導電性ポリマーの導電率が増大する。したがって本発明により、一般には揮発性有機化合物(VOC)である従来の導電率増大剤に代わるものが提供される。このような従来の組成物を大規模にコーティングするには、VOCを取り扱う設備を備えたコーティング施設が必要とされる。さらに、本発明では、導電率を大きくするのにコーティング層を高温でアニーリングするという従来技術で必要とされた操作が必要がない。したがって本発明を実施するとき、高温でのアニーリングに耐えられないさまざまな基板を利用することができる。一般に、本発明により、広いロールの形式で高速下にてさまざまな可撓性基板にコーティングできる、環境にとって魅力的な組成物が提供されるため、幅広い用途のある導電性が大きくて非常に透明なコーティングが得られる。これらの利点ならびに他の利点は、以下の詳細な説明から明らかになろう。
本発明の導電性ポリマーには、公知の任意の導電性ポリマー(例えば共役した骨格を有するもの)が含まれる。そのような導電性ポリマーとして、(アメリカ合衆国特許第5,665,498号と第5,674,654号に言及されている)置換された、または置換されていないピロール含有ポリマー、(アメリカ合衆国特許第5,300,575号、第5,312,681号、第5,354,613号、第5,370,981号、第5,372,924号、第5,391,472号、第5,403,467号、第5,443,944号、第5,575,898号、第4,987,042号、第4,731,408号に言及されている)置換された、または置換されていないチオフェン含有ポリマー、(アメリカ合衆国特許第5,716,550号、第5,093,439号、第4,070,189号に言及されている)置換された、または置換されていないアニリン含有ポリマーなどがある。導電率、および/または形態、および/または安定性、および/または合成のしやすさ、および/または溶解度、および/または分散性、および/または他の機能を制御するため、置換基が一般に組み込まれている。適切な置換基は従来技術で知られているものの中から選択することができる。そのような置換基として、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキルスルフィニル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールチオ基、アリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、カルボキシ基、ハロ基、シアノ基などや、組み合わさった任意の2つの基、共役したモノマーからなる中央の環に縮合していて炭素原子、窒素原子、イオウ原子、酸素原子、スルフィニル基のいずれかを含む3〜7員の芳香族環または脂環式環を完成させるアルケニル基またはアルケニレン基などがある。このような置換基は、アメリカ合衆国特許第5,716,550号に詳細に記載されている。
特に適した導電性ポリマーは、カチオン形態の導電性ポリマーとポリアニオンを含むものである。なぜならこのような組み合わせは水性媒体の中で調製できるため、環境にとって望ましいからである。このようなポリマーの例は、ピロール含有ポリマーに関してはアメリカ合衆国特許第5,665,498号と第5,674,654号に、チオフェン含有ポリマーに関してはアメリカ合衆国特許第5,300,575号に開示されている。これらのうちで、光と熱に対する安定性、分散安定性、保管しやすさ、取り扱いやすさが理由でチオフェン含有ポリマーが最も好ましい。
チオフェンをベースとした上記のポリマーの調製は、L.B. Groenendaal、F. Jonas、D. Freitag、H. Pielartzik、J.R. Reynoldsによる「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とその誘導体:過去、現在、未来」(Advanced Materials、2000年、第12巻、第7号、481〜494ページ)と、その中にある参考文献に詳細に記載されている。
好ましい一実施態様では、導電性ポリマーは、
a)一般式(I)で表わされるポリチオフェン:
Figure 0005350780
がカチオンの形態になったもの(ただし、R1とR2は、それぞれ独立に水素またはC1〜4アルキル基を表わすか、合わさって、場合によっては置換されたC1〜4アルキレン基またはシクロアルキレン基(エチレン基が好ましい)、場合によってはアルキル置換されたメチレン基、場合によってはC1〜12アルキル置換またはフェニル置換された1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,2-シクロヘキシレン基のいずれかを表わし;nは3〜1000である)と;
b)それに付随するポリアニオン化合物
を含む混合物である。
導電性ポリマーとポリアニオンの組み合わせは、有機溶媒、または水、またはその混合物に溶けるか分散させることができる。環境上の理由で水性系が好ましい。これら導電性ポリマーとともに使用されるポリアニオンとしては、ポリカルボン酸(例えばポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸))のアニオンや、ポリスルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸)のアニオンなどが挙げられるが、大スケールでの安定性と利用可能性が理由で本発明ではポリスルホン酸を使用することが好ましい。これらポリカルボン酸とポリスルホン酸は、ビニルカルボン酸モノマーとビニルスルホン酸モノマーを他の重合可能なモノマー(例えばアクリル酸のエステルやスチレン)と共重合させたコポリマーでもよい。ポリアニオンを供給するポリ酸の分子量は、1,000〜2,000,000であることが好ましく、2,000〜500,000であることがより好ましい。これらのポリ酸(例えばポリスチレンスルホン酸やポリアクリル酸)またはそのアルカリ塩は一般に入手できるが、公知の方法で製造することもできる。導電性ポリマーとポリアニオンの形成に必要な遊離酸の代わりに、ポリ酸のアルカリ塩と適量のモノ酸の混合物も利用できる。ポリチオフェンとポリアニオンの質量比は1:99〜99:1という広い範囲で変えられるが、最適な性質(例えば大きな導電率や分散安定性)は、85:15〜15:85のときに得られる。この質量比は、50:50〜15:85であることがより好ましい。最も好ましい導電性ポリマーとして、カチオンの形態のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸を含むポリ(スチレンスルホン酸3,4-エチレンジオキシチオフェン)などがある。
本発明のイオン性液体は、融解する塩を含んでいる。融解する塩は、室温で液体であり、その中には融点が150℃未満(80℃未満が好ましく、30℃未満がより好ましい)のいわゆる“周囲温度で融解する塩”も含まれる。
イオン性液体は、通常の塩におけるようにカチオンとアニオンからなる化合物である。特別な性質は、この化合物の融点が低いことである。融点は、室温以下、または比較的低い高温(例えば150℃)であるため、液体状態でポリマー膜との適合性がある。イオン性液体は、現在はいくつかの大きなクラスに分類されている(新しいクラスが見いだされているようだが、このリストは、より多くのクラスが発見されるにつれて増やす必要があろう)。イオン性液体は、カチオンのクラスとアニオンのクラスに分けられ、実際にイオン性液体を構成するには、それぞれのタイプのクラスから1つを選択する必要がある。化合物のためのカチオンのクラスは、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム、グアニジニウム、イソウロニウムが一置換、二置換、三置換されたものである。化合物のためのアニオンのクラスは、ハロゲン化物、硫酸塩、スルホン酸塩、アミド、イミド、メタン、ホウ酸塩、リン酸塩、アンチモン酸塩、コバルトテトラカルボニル、トリフルオロ酢酸塩、デカン酸塩である。
カチオンとアニオンの選択は、最終分子が適切な融点を持つことと、塩が溶媒および導電性ポリマーと適合性を持つことを基準にしてなされる。
本発明の混合物における導電性ポリマーとイオン性液体の質量比は、0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で変えることができる。しかしいくつかの用途では、混合物においてイオン性液体が過剰だと、基板にコーティングしたときに不安定になったり、ネバネバしたりする。最適の特性を得るには、導電性ポリマーとイオン性液体の質量比が2:98〜20:80の範囲であることが好ましく、5:95から50:50の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の混合物は、導電性ポリマーとイオン性液体に加え、適切な溶媒を含むことができる。その溶媒は、特に、導電性ポリマーが溶けること、または導電性ポリマーを分散させることのできる溶媒である。このような溶媒は、有機溶媒、または水、またはこれらの混合物を含むことができる。環境上の理由で、水性系が好ましい。本発明の混合物は、水を少なくとも50質量%含んでいることが好ましい。この割合は90〜95質量%であることがより好ましい。
本発明の混合物はさらに、ポリマー製膜形成結合剤を含むことができる。そのような結合剤として、水溶性の、または水に分散する親水性ポリマー(例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、マレイン酸または無水マレイン酸のコポリマー、ポリスルホン酸スチレン、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン)などがある。適切な他の結合剤としては、エチレンが不飽和であるモノマー(例えば、アクリル酸塩(アクリル酸を含む)、メタクリル酸塩(メタクリル酸を含む)、アクリルアミド、メタクリルアミド、イタコン酸と、その半エステルおよびジエステル、スチレン(置換されたスチレンを含む)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、オレフィン)から調製した添加タイプのホモポリマーやコポリマーの水性エマルジョン、ポリウレタンとポリエステルイオノマーの水性分散液などがある。
本発明の混合物は、イオン性液体に加え、他の導電率増大剤(CEA)を含むことができる。そのような他のCEAとしては、ジヒドロキシ基、ポリ-ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、ラクタム基を含む有機化合物が挙げられる。それは例えば、
(1)以下の一般式(II):
(OH)n-R-(COX)m (II)
で表わされる化合物(ただし、mとnは独立に1〜20の整数であり、Rは、2〜20個の炭素原子を含むアルキレン基、アリーレン鎖に6〜14個の炭素原子を含むアリーレン基、ピラン基、フラン基のいずれかであり、Xは、-OHまたは-NYZであり、YとZは独立に水素またはアルキル基である);または
(2)糖類、糖誘導体、ポリアルキレングリコール、グリセロール;または
(3)N-メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、N-オクチルピロリドンからなるグループの中から選択した化合物;または
(4)上記のものの組み合わせである。
特に好ましい他のCEAは、糖と糖誘導体(例えばスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース);糖アルコール(例えばソルビトール、マンニトール);フラン誘導体(例えば2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸);アルコールである。エチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールは、導電率を最も大きく増大させるため、非常に好ましい。
本発明の混合物に含まれていてもよい他の成分として、界面活性剤、消泡剤、コーティング助剤、帯電制御剤、増粘剤または粘性調節剤、ブロック防止剤、融合助剤、架橋剤または硬化剤、可溶性染料および/または固体粒子染料、無光沢ビーズ、無機粒子またはポリマー粒子、接着促進剤、腐食性溶媒または化学的エッチング剤、潤滑剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤や、従来技術でよく知られている他の添加物などがある。好ましい腐食性溶媒としては、少なくとも1個のヒドロキシ基またはヒドロキシ置換された置換基で置換された芳香族環を含んでいてアメリカ合衆国特許第5,709,984号に“導電率増加”芳香族化合物として開示されているあらゆる揮発性芳香族化合物がある。そのような化合物として、フェノール、4-クロロ-3-メチルフェノール、4-クロロフェノール、2-シアノフェノール、2,6-ジクロロフェノール、2-エチルフェノール、レゾルシノール、ベンジルアルコール、3-フェニル-1-プロパノール、4-メトキシフェノール、1,2-カテコール、2,4-ジヒドロキシトルエン、4-クロロ-2-メチルフェノール、2,4-ジニトロフェノール、4-クロロレゾルシノール、1-ナフトール、1,3-ナフタレンジオールなどがある。これら腐食性溶媒は、ポリエステルをベースとしたポリマー・シートに対して特に有効である。これらのグループの中で最も好ましい化合物はレゾルシノールと4-クロロ-3-メチルフェノールである。本発明で用いるのに適した好ましい界面活性剤として、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤がある。本発明で用いるのに適した好ましい架橋剤としてシラン化合物があが、より好ましいのはエポキシシランである。適切なシラン化合物は、アメリカ合衆国特許第5,370,981号に開示されている。
本発明の混合物は、一般に、適切な基板の上にコーティングされて導電率が大きくて透明な層を形成する。しかし本発明の範囲内でコーティングされた他の任意の層を使用することが考えられる。本発明の一実施態様では、部品を形成する方法として、イオン性液体を用意し、導電性ポリマーを用意し、そのイオン性液体と導電性ポリマーを溶媒の中で混合してコーティング組成物を形成し、その組成物をコーティングして膜を形成し、その膜を乾燥させる操作を含む方法が提供される。コーティング操作は任意の温度で実施することができる。しかし水性コーティング組成物では10℃〜100℃の温度が好ましく、20℃〜50℃の温度がより好ましい。膜を乾燥させる操作は、用途に応じて任意の温度で実施することができる。しかし可撓性プラスチック基板は20℃〜150℃の温度で乾燥させることが好ましい。
本発明の混合物でコーティングされる基板は、堅固な基板でも可撓性のある基板でもよい。基板は、透明、半透明、不透明のいずれでもよく、着色されていても無色でもよい。堅固な基板としては、ガラス、金属、セラミック、半導体などが可能である。用途が広く、製造、コーティング、仕上げが容易であるという理由で、可撓性のある基板、特にプラスチック基板を含む基板が好ましい。
可撓性プラスチック基板としては、可撓性のある任意の自己支持プラスチック膜が可能である。“プラスチック”は、通常はポリマー合成樹脂で製造された高分子を意味する。この樹脂は他の成分(例えば、硬化剤、充填剤、強化剤、着色剤、可塑剤)と混合することができる。プラスチックには熱可塑性材料や熱硬化性材料が含まれる。
可撓性プラスチック膜は、自己支持性であるためには十分な厚さがあって力学的に丈夫である必要があるが、厚くなりすぎて堅固になってはならない。可撓性プラスチック基板材料の別の重要な特徴は、その材料のガラス転移温度(Tg)である。Tgは、プラスチック材料がガラス状態からゴム状態に変化するガラス転移温度として定義される。その温度には、材料が実際に流動するようになる前の温度範囲も含まれる。可撓性プラスチック基板に適した材料として、ガラス転移温度が比較的低い(例えば150℃までの)サーモプラスチックのほか、ガラス転移温度がより高い(例えば約150℃を超える)材料が挙げられる。可撓性プラスチック基板のための材料は、製造プロセスの条件(例えば堆積温度、アニーリング温度)や製造後の条件(例えばディスプレイの製造者の処理ラインにおける製造後の条件)などの因子に合わせて選択することができよう。以下に説明するプラスチック基板のうちのいくつかは、少なくとも約200℃(あるものは300〜350℃まで)というより高い処理温度に耐えることができ、損傷を受けることがない。
一般に、可撓性プラスチック基板は、以下に示す材料のうちの任意のものを含むことができる。その材料とは、ポリエステル、ポリエステル・イオノマー、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、硝酸セルロース、酢酸セルロース(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリオレフィン(例えばポリオレフィン・イオノマー)、ポリアミド、脂肪族ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(x-メタクリル酸メチル)、脂肪族ポリオレフィン、環式ポリオレフィン、ポリアリーレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、テフロン(登録商標)、ポリ(ペルフルオロ-アルボキシ)フルオロポリマー(PFA)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、ポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)フルオロポリマー(PETFE)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、さまざまなアクリレート/メタクリレート・コポリマー、天然紙、合成紙、樹脂でコーティングした紙、ラミネート紙、空孔のあるポリマー(例えば、ポリマー・フォーム、微空隙ポリマー、微多孔質材料、ファブリック)と、これらの組み合わせである。
脂肪族ポリオレフィンには、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(例えば配向したポリプロピレン(OPP))などが含まれる。環式ポリオレフィンには、ポリ(ビス(シクロペンタジエン))などが含まれる。好ましい可撓性プラスチック基板は、環式ポリオレフィンまたはポリエステルである。さまざまな環式ポリオレフィンが可撓性プラスチック基板に適している。例として、日本合成ゴム株式会社(日本国、東京)のアートン(登録商標);ゼオン株式会社(日本国、東京)が製造しているゼアノールT;セラニーズ社(ドイツ国、クロンベルク)が製造しているトパス(登録商標)などがある。アートンは、ポリ(ビス(シクロペンタジエン))縮合体からなるポリマー膜である。あるいは可撓性プラスチック基板はポリエステルでもよい。好ましいポリエステルは、アリーライトなどの芳香族ポリエステルである。たいていのディスプレイでは基板は透明、半透明、不透明のいずれでもよいが、透明な基板を備える透明な部材が好ましい。プラスチック基板のさまざまな例を上に示したが、可撓性基板は、他の材料(例えば可撓性のあるガラスやセラミック)から形成することもできる。
可撓性プラスチック基板は、硬いコーティングを用いて強化することができる。一般に、硬いコーティングはアクリル・コーティングである。このような硬いコーティングは一般に厚さが1〜15μm(2〜4μmが好ましい)であり、重合可能な適切な材料のフリーラジカル重合を熱または紫外線照射によって開始させることによって得られる。基板が何であるかに応じ、異なる硬いコーティングを利用することができる。基板がポリエステルまたはアートンである場合に特に好ましい1つの硬いコーティングは、“リンテック”として知られるコーティングである。リンテックはUV硬化ポリアクリル酸エステルとコロイドシリカを含んでいる。リンテックは、アートンの上に堆積させると、表面の組成が、水素を除いて35原子%のC、45原子%のO、20原子%のSiとなる。別の特に好ましい1つの硬いコーティングは、テクラ・コーポレーション(ウィスコンシン州、ニュー・ベルリン)から“テラピン”の商品名で販売されているアクリル・コーティングである。
最も好ましい可撓性プラスチック基板はポリエステルである。その理由は、機械的特性と熱特性が優れていて、適切な価格で大量に入手できることにある。光学的性能の観点からは、酢酸セルロースなどのポリマーが、二重屈折が少ないという理由で非常に好ましい。
使用するため特に選択されるポリエステルとしては、ホモ-ポリエステルまたはコ-ポリエステル、または望むのであればこれらの混合物が可能である。ポリエステルは、結晶でもアモルファスでもよく、望むのであればこれらの混合物でもよい。ポリエステルは、通常は、有機ジカルボン酸と有機ジオールを縮合させて調製するため、そのようなジオールとジカルボン酸の前駆体を用いた有用なポリエステルの代表例を以下に説明する。
本発明で用いるのに適したポリエステルは、芳香族ジオール、脂環式ジオール、脂肪族ジオールと、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸の縮合に由来するものであり、脂環式ポリエステル、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルが可能である。本発明を実施する際に利用できる有用な脂環式ポリエステル、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルの例は、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸シクロヘキシレンジメチレン)、ポリ(ドデカ酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸ブチレン)、ポリ(ナフタレン酸エチレン)、ポリ(2,7-ナフタレン酸エチレン)、ポリ(イソフタル酸メタフェニレン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(コハク酸エチレン)、ポリ(アジピン酸エチレン)、ポリ(セバシン酸エチレン)、ポリ(アゼライン酸デカメチレン)、ポリ(アジピン酸デカメチレン)、ポリ(セバシン酸デカメチレン)、ポリ(ジメチルプロピオラクトン)、ポリ(安息香酸パラ-ヒドロキシ)(エコノール)、ポリ(オキシ安息香酸エチレン)(A-テル)、ポリ(イソフタル酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸テトラメチレン)、ポリ(テレフタル酸ヘキサメチレン)、ポリ(テレフタル酸デカメチレン)、ポリ(テレフタル酸1,4-シクロヘキサンジメチレン)(トランス)、ポリ(1,5-ナフタレン酸エチレン)、ポリ(2,6-ナフタレン酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸1,4-シクロヘキシレンジメチレン)(コデル)(シス)、ポリ(テレフタル酸1,4-シクロヘキシレンジメチレン)(コデル)(トランス)である。
ジオールと芳香族ジカルボン酸の凝縮によって調製されるポリエステルを本発明で使用することが好ましい。有用な芳香族カルボン酸の代表例は、テレフタル酸、イソフタル酸、α-フタル酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ジフェニルジカルボン酸、4,4'-ジフェニルスルホン-ジカルボン酸、1,1,3-トリメチル-5-カルボキシ-3-(p-カルボキシフェニル)-イダン、ジフェニルエーテル4,4'-ジカルボン酸、ビス-p(カルボキシ-フェニル)メタンなどである。本発明を実施する際には、芳香族ジカルボン酸の中でベンゼン環をベースとしたもの(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸)を用いることが好ましい。これらの好ましい酸前駆体の中ではテレフタル酸が特に好ましい酸前駆体である。
本発明を実施する際に用いるのが好ましいポリエステルとして、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(テレフタル酸ブチレン)、ポリ(テレフタル酸1,4-シクロヘキシレンジメチレン)、ポリ(ナフタレン酸エチレン)などと、これらのコポリマーおよび/または混合物がある。これらポリエステルの選択肢うちでポリ(テレフタル酸エチレン)が最も好ましい。
本発明で用いるのに最も好ましい酢酸セルロースは、三酢酸セルロースである(トリアセチルセルロースまたはTACとしても知られる)。TAC膜は、その独自の物理的特性と難燃性のために写真産業で伝統的に使用されてきた。TAC膜は、液晶ディスプレイで使用される偏光子のためのカバー・シートとて用いるのに好ましいポリマー膜でもある。
吹き付け法によるTAC膜の製造法はよく知られており、以下のプロセスが含まれる。一般に、TAC溶液を含む有機溶媒(ドープ)をドラムまたはバンドの上に吹き付け、溶媒を蒸発させて膜を形成する。一般にドープを吹き付ける前にドープの濃度を調節してドープの固体含有量を18〜35質量%にする。ドラムまたはバンドの表面は一般に研磨して鏡面にする。溶媒吹き付け法の吹き付け段階と乾燥段階は、アメリカ合衆国特許第2,336,310号、第2,367,603号、第2,492,078号、第2,492,977号、第2,492,978号、第2,607,704号、第2,739,069号、第2,739,070号、イギリス国特許第640,731号、第736,892号、日本国特許公開第45(1970)-4554号、第49(1974)-5614号、日本国特許公告第60(1985)-176834号、第60(1985)-203430、第62(1987)-115035号に記載されている。
可塑剤を酢酸セルロース膜に添加して膜の物理的強度を改善することができる。可塑剤には、乾燥プロセスの時間を短縮するという別の機能もある。リン酸エステルとカルボン酸エステル(例えばフタル酸エステルとクエン酸エステル)が通常は可塑剤として使用される。リン酸エステルの例としては、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸トリクレシル(TCP)などがある。フタル酸エステルの例としては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)などがある。クエン酸エステルの例としては、クエン酸o-アセチルトリエチル(OACTE)、クエン酸o-アセチルトリブチル(OACTB)などがある。可塑剤の量は、酢酸セルロースの量を基準として一般に0.1〜25質量%であるが、1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることが望ましい。
ディスプレイ装置で利用するのに役立つ上記の基板は、平坦なもの、および/または曲がったものが可能である。基板の曲率は曲率半径によって特徴づけられ、任意の値を持つことができる。あるいは基板を曲げてある角度にすることができる。この角度は、0°〜360°の任意の角度にできる。その中には、この範囲のすべての角度と、すべての角度範囲が含まれる。基板が導電性である場合には、絶縁材料(例えば非導電性ポリマー)を基板と導電性ポリマーの間に配置することができる。
基板は任意の厚さ(例えば10-8cm〜1cm)にすることができる。その中には、この範囲内のすべての値と、すべての数値範囲が含まれる。より厚い層やより薄い層を使用することができる。基板は厚さが一様である必要はない。好ましい形状は正方形または長方形だが、任意の形状にすることができる。基板は、導電性ポリマーをコーティングする前に物理的および/または光学的にパターニングすることができる。パターニングは、例えば、こする、画像を付着させる、パターニングされた電気的接点領域を付着させる、別々の領域に1種類以上の色を存在させる、エンボス加工する、微細エンボス加工する、微小反復などの方法による。
上記の基板は、必要に応じて単一の層または複数の層を備えることができる。複数の層には、任意の数の補助層(例えば帯電防止層、連結層または接着促進層、摩耗抵抗層、湾曲制御層、輸送層、障壁層、スプライス提供層、UV吸収層、光学的効果付与層(反射防止層やグレア防止層など)、防水層、接着層、画像層)などが含まれていてよい。
ポリマー基板は、従来技術で知られている任意の方法で形成することができる。例えば、押し出し、共押し出し、クエンチング、配向、熱硬化、ラミネーション、コーティング、溶媒吹き付けなどの方法がある。用途によっては、ポリマー基板は、適切な任意の従来法(例えば平坦シート法、バブル法、チューブ法)で形成した配向シートであることが好ましい。平坦シート法には、シート材料をスリット・ダイスを通じて押し出しまたは共押し出しし、その押し出しまたは共押し出しされたウェブを冷たい吹き付けドラムの表面で急冷させ、シートのポリマー成分をその固化温度よりも低温にする操作が含まれる。
次に、急冷したシートをポリマーのガラス転移温度よりも高い温度で互いに垂直な方向に引っ張って二軸配向させる。このシートを一方向に引っ張った後、第2の方向に引っ張ってもよいし、両方の方向に同時に引っ張ってもよい。どの方向であれ、好ましい引っ張り比は少なくとも3:1である。シートを引っ張った後、ポリマーが結晶化するのに十分な温度に加熱して熱硬化させる。そのときシートが引っ張った2つの方向にあまり縮まないようにする。
ポリマー・シートには、その特性(例えば印刷可能性、障壁特性、熱による封止可能性、スライス化の可能性、他の基板および/または画像層への接着)を改善するため、押し出し、共押し出し、配向などの後に、または吹き付けの途中や完全に配向させる途中で、任意の数のコーティングを設けること、または処理を行なうことができる。そのようなコーティングの例として、印刷できるようにするためのアクリル・コーティング、熱で封止できるようにするためのポリハロゲン化ビニリデンなどが可能である。そのような処理の例として、コーティング可能性や接着性を改善するための火炎処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、オゾン処理、電子ビーム処理などが可能である。処理のさらに別の例は、ウェブの表面に特別な効果を与えるための、エンボス加工、パターニングである。さらに、ポリマー・シートは、ラミネーション、接着、冷間シーリング、熱間シーリング、押し出しコーティングで、または従来技術で知られている他の任意の方法で、適切な他の任意の基板の中に組み込むことができる。
本発明の混合物は、従来技術で知られている任意の方法でコーティングすることができる。特に好ましい方法として、よく知られた任意のコーティング法(例えばナイフ・コーティング、グラビア・コーティング、ホッパー・コーティング、ローラー・コーティング、スプレー・コーティング、電気化学的コーティング、インクジェット印刷、フレキソ印刷など)によって適切なコーティング組成物からコーティングする方法がある。あるいは本発明の混合物からコーティングされる層は、熱および/または圧力を加えることによってドナーから受容部材に転写することができる。接着層がその層と受容層の間に存在していてもよい。このような転写法は、2004年10月21日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/969,889号と2004年12月22日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/022,155号に詳細に記載されている。
本発明の材料を利用して導電層を形成する別の方法は熱転写による方法であり、例えば、Wolkらによるアメリカ合衆国特許第6,114,088号、第6,140,009号、第6,214,520号、第6,221,553号、第6,582,876号、第6,586,153号;Tuttらによるアメリカ合衆国特許第6,610,455号、第6,582,875号、第6,252,621号、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0029039 A1;Ellisらによるアメリカ合衆国特許第5,171,650号;Blanchet-Fincherによるアメリカ合衆国特許出願公開2004/0065970 A1に開示されている。したがって多層転写ユニットをドナー・シートの上に形成することが考えられる。そのとき少なくとも1つの層は導電性であり、本発明の混合物からコーティングされる。次に、熱を加えて導電層の全体または一部を受容基板の上に転写する。
上記の転写ユニットは、本発明の導電層以外に他の層を多数備えることができる。そのような追加の層としては、光を熱に変換できる層である照射吸収層、中間層、放出層、接着促進層、動作層(デバイスの動作中に使用される)、非動作層(デバイスの動作中には使用されないが、例えば転写層の転写、および/または損傷からの保護、および/または外側エレメントとの接触を促進することができる)などが可能である。
本発明による層の熱転写は、熱転写エレメントの選択した部分に直接熱を加えることによって実現できる。熱の発生は、加熱エレメント(例えば抵抗式加熱エレメント)を用いることによって、および/または照射線(例えば光ビーム)を熱に変換することによって、および/または電流を熱転写エレメント層に印加して熱を発生させることによって可能になる。
有機発光ダイオードまたはポリマー発光ダイオードを備える特別ないくつかのディスプレイでは、導電層の粗さが極めて重要になる可能性がある。一般に、コーティングされた基板の光学的特性と障壁特性を最大にするには、非常に滑らかで粗さ(Ra)が小さい表面が望ましい。このような用途で好ましいRa値は1000nm未満だが、100nm未満であることがより好ましく、20nm未満であることが最も好ましい。本発明の導電層はこの条件を容易に満たすことができる。しかしより粗い表面が必要とされる用途では、本発明の範囲内で、公知の任意の手段(例えばエンボス加工、マイクロ複製、無光沢粒子の組み込みなど)によってより大きなRa値を実現することができる。
本発明による導電層のSER値は必要に応じて変えることができる。ディスプレイ装置の電極として使用するには、本発明ではSERは一般に10000Ω/□未満だが、5000Ω/□未満であることがより好ましく、2000Ω/□未満であることがさらに好ましく、1500Ω/□未満であることが最も好ましい。
本発明による導電層の透過率は必要に応じて変えることができる。導電層は、ディスプレイ装置の電極として使用するには、可視光に対する透過率が非常に大きいことが望ましい。したがって本発明の混合物は、コーティングされた層からの望ましくないあらゆる光散乱を避けるため、直径が1μmよりも大きいいかなる無機粒子またはポリマー粒子も実質的に含んでいないことが好ましい。より好ましいのは、直径が0.5μmよりも大きいいかなる無機粒子またはポリマー粒子も実質的に含んでいないことであり、最も好ましいのは、直径が0.3μmよりも大きいいかなる無機粒子またはポリマー粒子も実質的に含んでいないことである。本発明による導電層の可視光透過率Tは、65%を超えることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが非常に好ましく、最適なのは90%以上になっていることである。
導電層は全体と一体化している必要はなく、厚さが一様である必要もなく、ベースとなる基板と連続している必要もない。
本発明の特別な一実施態様では、導電層を電極または他のアレイ・パターンにすることができる。有用なパターニング法としては、インクジェット印刷、転写印刷(例えば石板印刷)、スタンピング、さまざまな乾式エッチング法(例えばレーザー・エッチング、熱除去)、湿式エッチング法(例えばWO 97/18944とアメリカ合衆国特許第5,976,274号に記載されているマイクロリソグラフィ法)などがある。さらに、Wolkらによるアメリカ合衆国特許第6,114,088号、第6,140,009号、第6,214,520号、第6,221,553号、第6,582,876号、第6,586,153号;Tuttらによるアメリカ合衆国特許第6,610,455号、第6,582,875号、第6,252,621号、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0029039 A1;Ellisらによるアメリカ合衆国特許第5,171,650号;Blanchet-Fincherによるアメリカ合衆国特許出願公開2004/0065970 A1のほか、2004年10月21日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/969,889号と2004年12月22日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/022,155号開示されている任意の転写法を利用してドナーから受容エレメントにパターニングされた導電層を付着させることができる。
特に好ましい一実施態様では、本発明の導電層がデバイス(ディスプレイ装置であることが最も好ましい)の少なくとも一部を形成している。ディスプレイ装置は一般に、少なくとも1つの画像化可能層を備えている。その画像化可能層は、電気で画像化できる材料を含むことができる。電気で画像化できる材料は、発光性または調光性のものが可能である。発光材料は、無機または有機のものが可能である。特に好ましいのは、有機発光ダイオード(OLED)またはポリマー発光ダイオード(PLED)である。調光材料は、反射性のものまたは透過性のものが可能である。調光材料は、電気化学的材料、電気泳動性材料(例えばジャイリコン粒子)、エレクトロクロミック材料、液晶のいずれかが可能である。液晶材料としては、ねじれネマチック(TN)液晶、超ねじれネマチック(STN)液晶、強誘電性液晶、磁性液晶、キラル・ネマチック液晶のいずれかが可能である。特に好ましいのはキラル・ネマチック液晶である。キラル・ネマチック液晶として、ポリマーを分散させた液晶(PDLC)が可能である。しかしいくつかの場合に追加の利点を提供するため、積層された画像層または多数の基板層を有する構造があってもよいケースがある。
導電層は、従来のデバイスに存在する1つ以上の導電性電極としてデバイスの中に単純に組み込むことができる。いくつかのケースでは、導電層に電流や電圧などを供給するための少なくとも1本のリード線が(接触した状態で)取り付けられている(すなわち電気的に接続されている)ことが好ましい。リード線は、基板とは電気的に接触していないことが好ましい。リード線は、堆積された金属をパターニングしたもの、導電性または半導性の材料(例えばITO)で製造すること、または導電性ポリマーと接触する単なるワイヤーにすること、または導電性ポリマー粒子、および/または炭素粒子、および/または金属粒子を例えば含む導電性塗料にすることができる。本発明によるこのようなデバイスは、リード線を通じて導電性電極に電気的に接続された電流源または電圧源も備えていることが好ましい。電源や電池なども使用できる。本発明の一実施態様をデバイス部品60として図1に示してある。この図では、導電層64が基板62の上に形成されていて、リード線68によって電源66に接続されている。本発明の導電層は、電極としての機能に加えて、または電極としての機能の代わりに、あらゆるデバイスにおける他のあらゆる機能層を形成することができる。
典型的なデバイスでは、電気で画像化できる材料は、電場を用いてアドレスすることができ、電場が取り去られた後も画像を保持できる。これは一般に“双安定性”と呼ばれる性質である。“双安定性”を示す電気的画像化が可能な特に好ましい材料は、電気化学的材料、電気泳動性材料(例えばジャイリコン粒子)、エレクトロクロミック材料、磁性材料、キラル・ネマチック液晶である。特に好ましいのは、キラル・ネマチック液晶である。キラル・ネマチック液晶として、ポリマーを分散させた液晶(PDLC)が可能である。
わかりやすくするため、ディスプレイが液晶ディスプレイであるとしてディスプレイの説明を行なう。しかし本発明は、他の多数のディスプレイの用途でも有用である。
この明細書では、“液晶ディスプレイ(LCD)”は、さまざまなエレクトロニクス・デバイスで使用されるフラット・パネル・ディスプレイの一種である。LCDは、基板と、少なくとも1つの導電層と、液晶層とを最低限備えている。LCDは、偏光材料からなる2枚のシートも備えることができ、その2枚の偏光シートの間に液晶溶液が挟まれる。偏光シートは、ガラスまたは透明なプラスチックからなる基板を備えることができる。LCDは機能層も備えることができる。図2に示したLCD部品50の一実施態様では、透明な多層可撓性基板54が第1の導電層52(パターニングされていてよい)を備えていて、その上に調光液晶層48がコーティングされている。第2の導電層40が設けられていて、その上に誘電体層42がコーティングされている。この誘電体層42には誘電導電性行接点44が取り付けられている。誘電体層42には、導電層と誘電導電性行接点の相互接続を可能にするビア(図示せず)も含まれている。場合によっては、ナノ顔料層46が液晶層48と第2の導電層40の間に設けられる。本発明の導電層は、上記のいずれかの導電層として機能することができる。典型的なマトリックス-アドレス発光ディスプレイ装置では、多数の発光デバイスが単一の基板上に形成されてグループ化され、規則的なグリッド・パターンとなって配置されている。行と列によってアクティブにすることができる。
液晶(LC)は光スイッチとして使用される。基板は通常は透明な導電性電極とともに製造され、電気的“駆動”信号がその導電性電極に伝えられる。駆動信号によって電場が誘導され、その電場によってLC材料の相または状態を変化させることができる。LCは、その相および/または状態の違いに応じて異なる光反射特性を示す。
LC
液晶は、中間相における分子の配列状態に応じてネマチック(N)、キラル・ネマチック(N*)、スメクチックのいずれかが可能である。キラル・ネマチック液晶(N*LC)ディスプレイは一般に反射式である(すなわちバックライトを必要としない)ため、偏光膜またはカラー・フィルタを使用せずに機能することができる。
キラル・ネマチック液晶は、一般的なLCデバイスで使用されるねじれネマチック液晶や超ねじれネマチック液晶よりもピッチが細かいタイプの液晶を指す。キラル・ネマチック液晶は、キラル剤をホストのネマチック液晶に添加することによってそのような液晶組成物が一般に得られることから命名された。キラル・ネマチック液晶は、双安定性ディスプレイまたは多安定性ディスプレイの製造に使用できる。これらのデバイスは、不揮発性“メモリ”特性のために電力消費が著しく減少する。このようなディスプレイは画像を維持するのに連続的駆動回路を必要としないため、消費する電力が著しく少なくなる。キラル・ネマチック・ディスプレイは、電場が存在していないときには双安定性である。そのときの2つの安定な状態は、反射性の平坦状態と、弱散乱性の焦点円錐状態である。平坦状態では、キラル・ネマチック液晶分子の螺旋軸は、液晶を上に載せる基板に実質的に垂直である。焦点円錐状態では、液晶分子の螺旋軸は一般にランダムな方向を向いている。キラル・ネマチック材料に含まれるキラル・ドーパントの濃度を調節すると中間相のピッチ長が変化し、したがって反射される照射光の波長が変化する。赤外線と紫外線を反射するキラル・ネマチック材料が科学的研究を目的としてこれまで使用されてきた。市販されているディスプレイは、可視光を反射するキラル・ネマチック材料から製造されることが最も多い。公知のいくつかのLCD装置には、アメリカ合衆国特許第5,667,853号(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されているように、ガラス基板上の化学的にエッチングした透明な導電層が含まれる。
一実施態様では、キラル・ネマチック液晶組成物を連続的なマトリックスの中に分散させることができる。このような材料は“ポリマー分散液晶”材料または“PDLC”材料と呼ばれる。このような材料はさまざまな方法で作ることができる。例えばDoaneら(Applied Physics Letters、第48巻、269ページ、1986年)は、ポリマー結合剤の中にネマチック液晶5CBからなる約0.4μmの液滴を含むPDLCを開示している。PDLCの調製には相分離法が利用される。モノマーと液晶を含む溶液をディスプレイのセルに満たした後、この材料を重合させる。重合させると液晶は混和しなくなり、核化して液滴が形成される。Westら(Applied Physics Letters、第63巻、1471ページ、1993年)は、ポリマー結合剤の中にキラル・ネマチック混合物を含むPDLCを開示している。ここでも相分離法を利用してPDLCを調製する。液晶材料とポリマー(ヒドロキシ機能化ポリメタクリル酸メチル)に加え、このポリマー用の架橋剤を、共通の有機溶媒であるトルエンに溶かし、基板上の透明な導電層の上にコーティングする。高温でトルエンを蒸発させると、液晶材料がポリマー結合剤の中に分散した分散液が形成される。Doaneらの相分離法とWestらの相分離法では、製造環境によっては問題となる有機溶媒を用いる必要がある。
N*LCドメインからなる実質的な単層が2つ以上存在していると、ディスプレイのコントラストが低下する。“実質的な単層”という用語は、出願人の定義によると、ディスプレイ(または画像層)のほとんどの場所(ディスプレイの75%以上の場所(または面積)が好ましく、ディスプレイの90%以上の場所(または面積)が最も好ましい)で、ディスプレイの平面に垂直な方向に、電極間に挟まれた単層が2つ以上存在するドメインはないことを意味する。言い換えるならば、ディスプレイ上で電極間に挟まれて単層ドメインだけが存在している場所(または面積)の量と比較して、ディスプレイの場所(または面積)のほんのわずかな部分(10%未満が好ましい)にだけ、ディスプレイの平面に垂直な方向に、電極間に挟まれて1つを超える単層(2つ以上の単層)ドメインが存在している。
単層に必要な材料の量は、ドメインが完全稠密充填配列であると仮定し、個々のドメインのサイズに基づいて計算によって正確に決定することができる。(実際には欠陥が存在していてギャップが発生したり、液滴またはドメインの重なりによるいくらかの凹凸が存在していたりする可能性がある。)この結果によると、計算値は、単層ドメインがカバーするのに必要な量の約150%未満であることが好ましく、単層ドメインがカバーするのに必要な量の約125%以下であることが好ましく、単層ドメインがカバーするのに必要な量の約110%以下であることがさらに好ましい。さらに、ドーピングを変えるドメインをコーティングされる液滴の形状とブラッグ反射の条件に基づいて適切に選択することにより、視野角特性と広帯域特性を改善することができる。
一実施態様では、ディスプレイ装置またはディスプレイ・シートは、ディスプレイの平面に垂直な線に沿って液晶材料からなる画像層を1つだけ備えている。この画像層は、可撓性基板の上にコーティングされた単一の層であることが好ましい。このような構造は、向かい合った基板の間に鉛直方向に互いに積層された画像層と比較すると、棚用の単色ラベルなどにとって特に好ましい。しかし場合によっては、積層された画像層を有する構造にして別の利点を利用することがある。
ドメインが平坦な球となっていて、厚さの平均値が長さよりも実質的に小さい(少なくとも50%未満)ことが好ましい。より好ましいのは、ドメインの厚さ(深さ)と長さの比が平均して1:2〜1:6になっていることである。ドメインの平坦化は、適切な組成物と、コーティングの十分に迅速な乾燥によって実現できる。ドメインの平均直径は2〜30μmであることが好ましい。画像層は、最初にコーティングしたときに厚さが10〜150μmであり、乾燥させたときに2〜20μmであることが好ましい。液晶材料の平坦なドメインは、主軸と副軸を持つドメインとして定義できる。ディスプレイまたはディスプレイ・シートの好ましい一実施態様では、主軸は、大半のドメインでサイズがセル(または画像層)の厚さよりも大きい。このようなサイズの関係が、アメリカ合衆国特許第6,061,107号に示してある。
最新のキラル・ネマチック液晶材料は、通常、少なくとも1種類のネマチック・ホストをキラル・ドーパントと組み合わせて含んでいる。一般に、ネマチック液晶相は、有用な複合特性を提供するため、組み合わせた1種類以上のメソゲン成分で構成されている。このような多数の材料が市販されている。キラル・ネマチック液晶混合物のネマチック成分は、適切な液晶特性を有する適切な任意のネマチック液晶混合物またはネマチック液晶組成物で構成することができる。本発明で用いるのに適したネマチック液晶は、ネマチック物質またはネマトジェニック物質の中から選択した低分子量の化合物で構成されていることが好ましい。そのような化合物として、例えば、アゾオキシベンゼン、ベンジリデンアニリン、ビフェニル、テルフェニル、安息香酸フェニル、安息香酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸のフェニルエステルまたはシクロヘキシルエステル;シクロヘキシル安息香酸のフェニルエステルまたはシクロヘキシルエステル;シクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のフェニルエステルまたはシクロヘキシルエステル;安息香酸のシクロヘキシルフェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸のシクロヘキシルフェニルエステル、シクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のシクロヘキシルフェニルエステル;フェニルシクロヘキサン;シクロヘキシルビフェニル;フェニルシクロヘキシルシクロヘキサン;シクロヘキシルシクロヘキサン;シクロヘキシルシクロヘキセン;シクロヘキシルシクロヘキシルシクロヘキセン;1,4-ビス-シクロヘキシルベンゼン;4,4-ビス-シクロヘキシルビフェニル;フェニルピリミジンまたはシクロヘキシルピリミジン;フェニルピリジンまたはシクロヘキシルピリジン;フェニルピリダジンまたはシクロヘキシルピリダジン;フェニルジオキサンまたはシクロヘキシルジオキサン;フェニル-1,3-ジチアンまたはシクロヘキシル1,3-ジチアン;1,2-ジフェニルエタン;1,2-ジシクロヘキシルエタン;1-フェニル-2-シクロヘキシルエタン;1-シクロヘキシル-2-(4-フェニルシクロヘキシル)エタン;1-シクロヘキシル-2',2-ビフェニルエタン;1-フェニル-2-シクロヘキシルフェニルエタン;場合によってはハロゲン化されたスチルベン;ベンジルフェニルエーテル;トラン;置換された桂皮酸とそのエステルといった既知のクラスに加え、ネマチック物質またはネマトジェニック物質のさらに別のクラスがある。これら化合物に含まれる1,4-フェニレン基は、側部が一フッ素化または二フッ素化されていてもよい。この好ましい実施態様の液晶材料は、このタイプの非キラル化合物をベースとしている。これら液晶材料の成分として可能な最も重要な化合物は、一般式R'-X-Y-Z-R"で特徴づけることができる。ただしXとZは、同じでも異なっていてもよく、それぞれの場合に互いに独立に、-Phe、-Cyc、-Phe-Phe-、-Phe-Cyc-、-Cyc-Cyc-、-Pyr-、-Dio-、-B-Phe-、-B-Cyc-からなるグループの中から選択した2価の基である。ここにPheは、置換されていないかフッ素置換された1,4-フェニレンであり、Cycは、トランス-1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-シクロヘキセニレンであり、Pyrは、ピリミジン-2,5-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルであり、Dioは、1,3-ジオキサン-2,5-ジイルであり、Bは、2-(トランス-1,4-シクロヘキシル)エチル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイルのいずれかである。これらの化合物に含まれるYは、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N(O)-、-CH=CY'-、-CH=N(O)-、-CH2-CH2-、-CO-O-、-CH2-O-、-CO-S-、-CH2-S-、-COO-Phe-COO-という2価の基の中から選択されるか、単結合であり、Y'は、ハロゲン(塩素が好ましい)または-CNであり;R'とR"は、それぞれの場合に互いに独立に、炭素原子が1〜18個(1〜12個が好ましい)のアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシのいずれかであるか、R'とR"の一方は、-F、-CF3、-OCF3、-Cl、-NCS、-CNのいずれかである。これら化合物の大半において、R'とR"は、それぞれの場合に互いに独立に、鎖の長さが異なるアルキル、アルケニル、アルコキシのいずれかであり、ネマチック媒体に含まれる炭素原子の合計は、一般に2〜9個だが、2〜7個が好ましい。ネマチック液晶相は、一般に2〜20種類の成分からなるが、成分の数は2〜15種類であることが好ましい。上記の材料リストにはすべてを列挙してあるわけでなく、これらの材料に限定されることはない。リストには、用いるのに適した代表的なさまざまな材料、または電気光学的液晶組成物において活性な要素を含む混合物が開示されている。
適切なキラル・ネマチック液晶組成物は、正の誘電異方性を持つことが好ましく、焦点円錐状態とねじれ平坦状態を形成するのに有効な量のキラル材料を含んでいることが好ましい。キラル・ネマチック液晶組成物が好ましいのは、反射特性が優れていて、双安定性であり、グレー・スケール・メモリだからである。キラル・ネマチック液晶は、一般に、望むピッチ長にするのに十分な量のネマチック液晶とキラル材料からなる混合物である。市販されている適切なネマチック液晶として、例えば、E.メルク社(ドイツ国、ダルムシュタット)が製造しているE7、E44、E48、E31、E80、BL087、BL101、ZLI-3308、ZLI-3273、ZLI-5048-000、ZLI-5049-100、ZLI-5100-100、ZLI-5800-000、MLC-6041-100、TL202、TL203、TL204、TL205などがある。正の誘電異方性を持つネマチック液晶、その中でも特にシアノビフェニルが好ましいとはいえ、従来から知られているほぼすべてのネマチック液晶(その中に負の誘電異方性を持つものも含まれる)が本発明での使用に適しているはずである。当業者であればわかるように、他のネマチック材料も本発明で用いるのに適している。
中間相の螺旋捻れを誘導し、そのことによって可視光を反射させるためにネマチック混合物に添加するキラル・ドーパントは、有用な構造を持つあらゆるクラスのものが可能である。ドーパントは、いくつかの特性に基づいて選択する。その特性として、特に、ネマチック・ホストとの化学的適合性、螺旋捻れ能力、温度感受性、光の速さが挙げられる。多くのクラスのキラル・ドーパントが従来から知られている。例えば、G. GottarelliとG. Spada、Mol. Cryst. Liq. Crys.、第123巻、377ページ、1985年;G. SpadaとG. Proni、Enantiomer、第3巻、301ページ、1998年と、その中にある参考文献に記載されているものがある。よく知られている典型的なドーパントのクラスとして、1,1-ビナフトール誘導体;アメリカ合衆国特許第6,217,792号に開示されているイソソルビド(D-1)と、それと類似したイソマンニドエステル;アメリカ合衆国特許第6,099,751号に開示されているTADDOL誘導体(D-2);2003年8月29日にT. Welterらによって「キラル化合物と、そのキラル化合物を含む組成物」という名称で出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/651,692号(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されているぶら下がったスピロインダンエステル(D-3)などがある。
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液晶材料のピッチ長は、以下の式(1)に基づいて調節することができる。
λ最大= n平均×p0
ただしλ最大は反射がピークになる波長、すなわち反射率が最大になる波長であり、n平均は液晶の平均屈折率であり、p0はキラル・ネマチック螺旋の自然なピッチ長である。キラル・ネマチック螺旋とピッチ長の定義、ならびにその測定法は、当業者に知られている。例えば、Blinov, L.M.の著書『液晶の電気光学的特性と磁気光学的特性』(ジョン・ワイリー&サンズ社、1983年)に見いだすことができる。ピッチ長は、液晶材料に含まれるキラル材料の濃度を調節すると変化する。キラル・ドーパントのたいていの濃度では、ドーパントによって誘導されるピッチ長は、ドーパントの濃度に逆比例する。比例定数は以下の式(2)で与えられる。
p0 = 1/(HTP×c)
ここにcはキラル・ドーパントの濃度であり、HTP(いくつかの参考文献では□と名づけられている)は比例定数である。
用途によっては、強い螺旋ねじれを示し、したがってピッチ長が短いLC混合物が望ましい。例えば選択的に反射させるキラル・ネマチック・ディスプレイで使用される液晶混合物では、ピッチは、キラル・ネマチック螺旋によって反射される波長の最大値が可視光の範囲に入るように選択せねばならない。可能な他の用途は、光学素子のためのキラル液晶相を有するポリマー膜(例えばキラル・ネマチック広帯域偏光装置、フィルタ・アレイ、キラル液晶遅延フィルム)である。これらの中には、受動光学素子、能動光学素子、カラー・フィルタ、液晶ディスプレイ(例えばSTNディスプレイ、TNディスプレイ、AMD-TNディスプレイ、温度補償ディスプレイ、無ポリマー・キラル・ネマチック構造(PFCT)ディスプレイ、ポリマー安定化キラル・ネマチック構造(PSCT)ディスプレイ)が含まれる。ディスプレイ産業での可能な用途として、ノートブック型コンピュータやデスクトップ・コンピュータのための明るくて可撓性があって安価なディスプレイ、装置のパネル、ビデオ・ゲーム機械、ビデオフォン、携帯電話、ポータブルPC、PDA、e-ブック、カムコーダ、衛星ナビゲーション・システム、店舗やスーパーマーケットの価格表示システム、ハイウェイの標識、情報ディスプレイ、スマート・カード、おもちゃなどのほか、これら以外の電子デバイスがある
LCDに代わるディスプレイ技術として例えばフラット・パネル・ディスプレイで使用可能なものがある。注目すべき一例は、有機発光デバイス(OLED)またはポリマー発光デバイス(PLED)である。これらのデバイスはいくつかの層からなり、そのうちの1つの層は、このデバイスに電圧を印加することによってエレクトロルミネッセンスを発生させることのできる有機材料からなる。OLEDデバイスは一般に基板(例えばガラスやプラスチック・ポリマー)の中に形成されたラミネートである。あるいはこのようなOLEDデバイスを複数個組み合わせて固体発光ディスプレイ装置にすることもできる。
発光性有機固体からなる発光層と、それに隣接する半導体層が、アノードとカソードに挟まれている。半導体層は、正孔注入層と電子注入層にすることができる。PLEDは、発光性有機材料がポリマーであるOLEDの一種と見なすことができる。発光層は、多彩な発光性有機固体(例えば適切な蛍光または化学発光を発生させる有機化合物ポリマー)の中から選択することができる。そのような化合物およびポリマーとして、8-ヒドロキシキノレートの金属イオン塩、3価金属-キノレート錯体、3価金属が架橋したキノレート錯体、シッフ塩基をベースとした2価金属錯体、スズ(IV)金属錯体、金属-アセトン酸アセチル錯体、有機リガンドを含む金属-二座リガンド錯体(例えば2-ピコリルケトン、2-キナルジルケトン、2-(o-フェノキシ)ピリジンケトン)、ビスホスホン酸塩、2価金属-マレオニトリルジチオレート錯体、分子電荷移動錯体、希土類が混合したキレート、(5-ヒドロキシ)キノキサリン金属錯体、アルミニウムトリス-キノレート、ポリマー(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ(ジアルコキシフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(フェニレン)、ポリ(フェニルアセチレン)、ポリ(アニリン)、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(N-ビニルカルバゾール))などがある。カソードとアノードに電位差を印加すると、電子注入層からは電子が、正孔注入層からは正孔が発光層に注入され、電子と正孔が再結合して光を発生させる。OLEDとPLEDは、以下のアメリカ合衆国特許に記載されている:Forrestらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,707,745号、Forrestらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,721,160号、Forrestらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,757,026号、Bulovicらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,834,893号、Thompsonらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,861,219号、Tangらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,904,916号、Thompsonらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,986,401号、Forrestらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,998,803号、Burrowsらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,013,538号、Bulovicらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,046,543号、Tangらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,048,573号、Burrowsらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,048,630号、Tangらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,066,357号、Forrestらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,125,226号、Hungらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,137,223号、Thompsonらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,242,115号、Burrowsらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,274,980号。
典型的なマトリックス・アドレス式発光ディスプレイ装置では、多数の発光デバイスが単一の基板上に形成されてグループ化され、規則的なグリッド・パターンとなって配置されている。行と列によってアクティブにすること、または個別のカソード経路とアノード経路を有するアクティブ・マトリックスの中でアクティブにすることができる。OLEDは、まず最初に透明な電極を基板上に堆積させ、その電極をパターニングして複数の電極部分に分割することによって製造されることがしばしばある。次に有機層を透明な電極の上に堆積させる。金属電極を有機層の上に形成することができる。例えばForrestらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,703,436号(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)では、透明なインジウム-スズ酸化物(ITO)を正孔注入電極として使用し、Mg-Ag-ITO電極層を電子を注入するのに使用している。
本発明の部品は、たいていのOLED構造で電極(アノードが好ましい)および/または他の任意の層として使用することができる。OLEDデバイス構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。
本発明をうまく実現することのできる有機層の構造が多数ある。典型的な1つの構造を図3に示してあり、この構造は、基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、電子輸送層111と、カソード113からなる。これらの層について以下に詳細に説明する。基板はカソードの隣に配置してもよく、基板が実際にアノードまたはカソードを構成していてもよい。アノードとカソードに挟まれた有機層を便宜上有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子と呼ぶ。有機層を合計した厚さは500nm未満であることが好ましい。
OLEDのアノードとカソードは、導電体260を通じて電圧/電流源250に接続される。アノードとカソードの間に、アノードがカソードよりも正の電位となるように電位を印加すると、OLEDが動作する。正孔はアノードから有機EL素子に注入し、電子は有機EL素子にカソード側から注入する。ACモードでOLEDを動作させると、サイクル中のある期間はバイアス電位が逆転して電流が流れないため、デバイスの安定性が向上することがある。AC駆動のOLEDの一例が、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されている。
アノード103を通じてEL光を見る場合には、そのアノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。したがって本発明の層は、可視光に対する透過率が大きいことが、このようなOLEDディスプレイ装置にとって非常に重要である。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノードで用いることができる。EL光をカソード電極だけを通して見るような用途では、アノードの透過特性は一般に重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例として、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード材料は、一般に、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積される。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によってはアノードを研磨した後に他の層を付着させることで表面の粗さを減らし、短絡を最少にしたり、抵抗率を大きくしたりすることができる。
電気で画像化できる材料としては、粒子、またはミクロな容器、またはマイクロカプセルが配列された印刷可能な導電性インクも可能である。それぞれのマイクロカプセルには、流体からなる電気泳動組成物(誘電性流体またはエマルジョン流体)と、着色または帯電した粒子またはコロイド状材料の懸濁液が含まれている。マイクロカプセルの直径は一般に約30〜約300μmの範囲である。一実施態様によれば、粒子は、目で見て誘電性流体と区別される。別の一実施態様によれば、電気的に変化する材料は、回転して色の異なる面を露出させることができる回転可能なボール(例えばジャイリコン)を含むことができる。このボールは、前方の見える位置および/または後方の見えない位置の間を移動することができる。ジャイリコンは、より詳細には、液体で満たされた球状キャビティに含まれた状態でエラストマー媒体に埋め込まれたねじれる回転エレメントからなる材料である。この回転エレメントは、外部電場を印加することによって光学的特性が変化するように作ることができる。所定の極性の電場を印加すると、回転エレメントの1つの区画が回転してディスプレイを見ている人の方を向くため、その人に見えるようになる。極性が逆の電場を印加すると、回転エレメントは回転し、異なる第2の区画を見ている人に向ける。ジャイリコン・ディスプレイは、ディスプレイ装置に電場が能動的に印加されるまで所定の配置を維持する。ジャイリコン粒子は一般に直径が約100μmである。ジャイコン材料は、アメリカ合衆国特許第6,147,791号、第4,126,854号、第6,055,091号に開示されている(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
一実施態様によれば、マイクロカプセルには、黒色染料または着色染料に含まれた帯電した白い粒子を装填することができる。電気的に変化する材料の例と、本発明で用いるのに適したインクの向きを制御できるアセンブリの製造法の例は、国際特許出願公開WO 98/41899、WO 98/19208、WO 98/03896、WO 98/41898に開示されている(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
電気で画像化できる材料は、アメリカ合衆国特許第6,025,896号(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されている材料も含むことができる。この材料は、多数のマイクロカプセルに封入された分散液媒体の中に、帯電した粒子を含んでいる。帯電した粒子には、色と極性が異なるいろいろなタイプのものがある。例えば正に帯電した白色粒子を負に帯電した黒色粒子とともに使用することができる。ここに説明したマイクロカプセルを一対の電極の間に配置して帯電した粒子の分散状態を変化させることにより、その材料によって望む画像が形成されて表示されるようにする。帯電した粒子の分散状態は、電気で変化する材料に印加する電場を制御することによって変える。好ましい一実施態様によれば、マイクロカプセルの粒径は約5μm〜約200μmであり、帯電した粒子の粒径は、マイクロカプセルの粒径のほぼ1/1000〜1/5である。
さらに、電気で画像化できる材料は、サーモクロミック材料を含むことができる。サーモクロミック材料は、熱を加えると透明な状態と不透明な状態の間を交互に変化することができる。このように、サーモクロミック画像化材料は、特定の画素位置に熱を加えることで画像を現像して1つの画像を形成する。サーモクロミック画像化材料は、その材料に熱が再び加えられるまで特定の画像を保持する。この書き換え可能な材料は透明であるため、その下にあるUV蛍光性の印刷、デザイン、パターンをこの材料を透過して見ることができる。
電気で画像化できる材料は、表面安定化強誘電性液晶(SSFLC)も含むことができる。表面安定化強誘電性液晶は、ガラス板の間のわずかなスペースに強誘電性液晶材料を閉じ込めることで、その液晶が自然に螺旋配置になるのを抑制している。このセルは、印加する電場の符号を変えるだけで、光学的に異なる2つの安定状態の間で素早く切り換わる。
エマルジョンに懸濁させた磁性粒子は、本発明で用いるのに適した追加の画像化材料を含んでいる。磁性粒子を用いて形成した画素を磁力を印加することで変化させ、人間および/または機械が読み取り可能な印を作成したり、更新したり、変化させたりする。当業者であれば、さまざまな双安定不揮発性画像化材料が利用可能であり、本発明で実現できることがわかるであろう。
電気で画像化できる材料は、単色(例えば黒、白、透明)の構成にすることもでき、蛍光、虹色、生体発光、白熱光、紫外、赤外にすることや、特定の光を吸収または発光する材料を含むことができる。電気で画像化できる材料からなる多数の層が存在していてもよい。電気で画像化できる材料の異なる層または領域は、異なる特性または色を持つことができる。さらに、さまざまな層の特性は互いに異なっていてもよい。例えば1つの層を可視光の範囲で情報を見るか表示するのに使用し、第2の層を紫外光に応答するか、紫外光を発生させるようにできる。見えない層は、前述の光吸収特性または発光特性を有する材料をベースとした電気で変化しない材料で構成することができる。本発明で用いられる電気で画像化できる材料は、印の表示を維持するのに電力を必要としない特性を有することが好ましい。
本発明による導電層の別の用途はタッチ・スクリーンである。タッチ・スクリーンは、従来のCRTやコンピュータ(特にポータブル・コンピュータ)のフラット-パネル・ディスプレイ装置で広く使用されている。本発明は、従来から知られているあらゆるタッチ・スクリーンの透明な導電性部材として利用できる。そのようなタッチ・スクリーンとして、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0170456 A1;2003/0170492 A1;アメリカ合衆国特許第5,738,934号;WO 00/39835に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
図4に、従来の典型的な抵抗型タッチ・スクリーンのための多層アイテム70を示してある。この多層アイテム70は、第1の導電層74を有する透明な基板72を備えている。透明な可撓性カバー・シート76は、スペーサ・エレメント80によって第1の導電層74から物理的に隔てられた第2の導電層78を備えている。電圧が導電層の間に印加される。導電層74と78は、電力消費と位置検出の精度が最適になるように選択した抵抗値を有する。外部の物体(例えば指や先の尖ったもの)によって可撓性カバー・シート76が変形すると、第2の導電層78が第1の導電層74と電気的に接触し、そのことによって導電層間の電圧が変化する。導電層78と74の縁部に形成された金属導電性パターン(図示せず)に接続されたコネクタ(図示せず)を通じてこの電圧の大きさを測定し、変形を引き起こす物体の位置を特定する。上記の導電層の一方または両方を本発明の混合物でコーティングすることができる。
抵抗型タッチ・スクリーンを構成するための従来法には、基板上にいろいろな材料を順番に配置する操作が含まれる。基板72とカバー・シート76を最初にクリーンにした後、一様な導電層をその基板とカバー・シートに付着させる。コーティング可能な導電性ポリマー(例えばポリチオフェンやポリアニリン)を用いて可撓性導電層にすることが知られている。例えば透光性導電性ポリマー・コーティングを有する透光性基板が示してあるWO 00/39835と、導電性ポリマー・コーティングを有するカバー・シートが示してあるアメリカ合衆国特許第5,738,934号を参照のこと。次にスペーサ・エレメント80を付着させ、最後に可撓性カバー・シート76を取り付ける。
以下の実施例に本発明の実施法を示してある。これら実施例は、本発明の可能なあらゆる変形例をすべて示すことを目的としていない。部と割合は、特に断わらない限り質量部、質量%である。
本発明と比較例のコーティング組成物を以下の成分を用いて調製した。
(a)ベイトロンP HC:H.C.スタークから供給された導電性ポリチオフェンとポリアニオン(すなわちポリ(スルホン酸3,4-エチレンジオキシチオフェンスチレン))の水性分散液;
(b)オリン10G:オリン・ケミカルズ社から販売されている非イオン性界面活性剤;
(c)テトラフルオロホウ酸1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウム:イオン性結晶。
以下の表1に、コーティング組成物A〜Eの詳細を示してある。
Figure 0005350780
ホッパー・コーティングにより、上記のコーティング組成物を厚さ100μmのPET膜の上にコーティングするとともに(下塗り側の)接着促進下塗り層をコーティングした。この下塗り層は、塩化ビニリデン-アクリロニトリル-アクリル酸・ターポリマーラテックスで構成した。各コーティングのために載せる液体は約15cc/m2に維持した。すべてのコーティングを82℃にて5分間にわたって乾燥させた。このようにして、比較例のサンプルAと実施例のサンプルB〜Eを作った。
これらコーティングのSERを4点電気プローブを用いて測定した。各サンプルの可視光の透過率Tは、モデル361T X-ライト密度計を用い、530nmにおける全光学密度から、コーティングされていない基板の寄与を補正して決定した。サンプルの詳細を表2に示す。
Figure 0005350780
導電性ポリマーとイオン性液体の混合物からコーティングした本発明の実施例のサンプルB〜Eは、同じ導電性ポリマーを含むがイオン性液体は含まない組成物からコーティングした比較用サンプルAよりもSERがはるかに小さいことが極めて明らかである。実施例のすべてのサンプルは、SERが小さくて可視光に対する透過率が大きいため、ディスプレイ装置での利用に適していることがわかる。
リード線によって電源に接続された本発明による導電層が基板上にある状態を示す概略図である。 ポリマーが分散された本発明によるLCディスプレイの概略図である。 OLEDをベースとした本発明によるディスプレイの概略図である。 本発明による抵抗型タッチ・スクリーンの概略図である。
符号の説明
40 第2の導電層
42 誘電体層
44 導電性行接点
46 ナノ顔料層
48 調光液晶層
50 LCDアイテム
52 第1の導電層
54 基板
60 ディスプレイ要素
64 導電性ポリマー層
62 受容基板
66 電源
68 リード線
70 抵抗型タッチ・スクリーン
72 基板
74 第1の導電層
76 カバー・シート
78 第2の導電層
80 スペーサ要素
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層
107 正孔輸送層
109 発光層
111 電子輸送層
113 カソード
250 電圧/電流源
260 導電線

Claims (3)

  1. イオン性液体と、カチオンの形態の導電性ポリマーと、その導電性ポリマーに付随するポリアニオンとを含み、該導電性ポリマーと該イオン性液体の質量比が5:95〜50:50の範囲にあることを特徴とする混合物。
  2. イオン性液体と、カチオンの形態の導電性ポリマーと、その導電性ポリマーに付随するポリアニオンとからなる混合物を含み、該導電性ポリマーと該イオン性液体の質量比が5:95〜50:50の範囲にあることを特徴とする部品。
  3. イオン性液体を用意し、カチオンの形態の導電性ポリマーと、その導電性ポリマーに付随するポリアニオンを用意し、そのイオン性液体と導電性ポリマーを溶媒の中で混合してコーティング組成物を形成し、その組成物をコーティングして膜を形成し、その膜を乾燥させる操作を含み、該導電性ポリマーと該イオン性液体の質量比が5:95〜50:50の範囲にあることを特徴とする、部品の形成方法。
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