JP5349846B2 - 1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法 - Google Patents

1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5349846B2
JP5349846B2 JP2008150935A JP2008150935A JP5349846B2 JP 5349846 B2 JP5349846 B2 JP 5349846B2 JP 2008150935 A JP2008150935 A JP 2008150935A JP 2008150935 A JP2008150935 A JP 2008150935A JP 5349846 B2 JP5349846 B2 JP 5349846B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vitamin
dihydroxyvitamin
amino acid
hydroxylase
arginine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008150935A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009291171A (ja
Inventor
利之 榊
真一 生城
恵子 林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyama Prefecture
Original Assignee
Toyama Prefecture
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyama Prefecture filed Critical Toyama Prefecture
Priority to JP2008150935A priority Critical patent/JP5349846B2/ja
Publication of JP2009291171A publication Critical patent/JP2009291171A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5349846B2 publication Critical patent/JP5349846B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、新規な1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法に関する。
ビタミンD2及びビタミンD3並びにこれらの誘導体を含むビタミンDの1α位及び25位を水酸化させて得られる1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、くる病、骨粗鬆症、乾癬の治療薬として使われるとともに、近年、癌の治療薬としても注目を浴びている、きわめて有用性の高い物質である。しかし、有機合成法によりビタミンDを位置特異的および立体特異的に水酸化して1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することは、極めて困難であった。
生物学的にビタミンDを水酸化する方法の一つとして、微生物変換による方法が知られている。本方法によれば、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる(特許文献1並びに非特許文献1及び2を参照)。しかし、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの生産性が悪いことから、本方法によって1α,25−ジヒドロキシビタミンDを工業的規模で効率よく生産することができなかった。
生物学的にビタミンDを水酸化する他の方法として、ビタミンDを水酸化するビタミンD水酸化酵素を用いる方法がある。ビタミンD水酸化酵素として、哺乳動物内で生理的に重要なものは4種類存在する:肝臓に存在するCYP27A1(25位水酸化酵素;非特許文献3及び4を参照)、腎臓に存在するCYP27B1(1α位水酸化酵素;非特許文献5及び6を参照)、腎臓に存在するCYP24A1(24位水酸化酵素;非特許文献7及び8を参照);及び、ミクロソーム型CYP2R1(25位水酸化酵素;非特許文献9及び10を参照)。
ビタミンDにCYP27B1及びCYP27A1若しくはCYP2R1を作用させることにより、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる。1α,25−ジヒドロキシビタミンDはCYP24A1により不活化される。CYP27B1、CYP27A1及びCYP24A1の3種は、ミトコンドリア型P450であり、いずれもミトコンドリア内膜に存在する。本発明者らは、近年、これらの哺乳動物由来のビタミンD水酸化酵素を、大腸菌又は酵母内で発現させ、構造と機能に関する研究を重ねてきた(非特許文献11を参照)。微生物由来のビタミンD水酸化酵素としては、25位水酸化活性を持つCYP105A2が知られている(非特許文献12を参照)。
しかし、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造する際には、1α位水酸化活性を有する酵素と25位水酸化活性を有する酵素の少なくとも2種を併用しなければならないという問題があった。
上記問題に対して、本発明者らは、ビタミンDの1α位及び25位をともに水酸化する活性を有する酵素である、放線菌由来のCYP105A1を取得することに成功した(非特許文献13を参照)。さらに、本発明者らは、CYP105A1の結晶を構造解析することによって活性中心を突き止め、CYP105A1のアミノ酸配列における73位のアルギニン及び84位のアルギニンをそれぞれアラニンに置換したCYP105A1変異体を作製した(非特許文献14)。該CYP105A1変異体は、野生型と比べて、1α位水酸化活性のkcat値[min-1]が約20倍、及び25位水酸化活性のkcat値が約200倍であった。
特許出願公告平4−64678号公報 Sasaki, J., Mikami, A., Mizoue, K., and Omura, S., (1991), Appl Environ Microbiol. 57, 2841-2846 Sasaki, J., Miyazaki, A., Saito, M., Adachi, T., Mizoue, K., Hanada, K., and Omura, S., (1992), Appl Microbiol Biotechnol. 38, 152-157 Usui E, Noshiro M, Okuda K, (1990), FEBS Lett., 262, 135-138 Sawada N, Sakaki T, Ohta M, et al, (2000), Biochem Biophys Res Commun 273: 977-984 Takeyama, K., Kitanaka, S., Sato, T., Kobori, M., Yanagisawa, J., and Kato, S., (1997), Science 277, 1827-1830 Sakaki T, Sawada N, Takeyama K, et al., (1999), Eur J Biochem, 259: 731-738 Ohyama Y, Noshiro M, Okuda K., (1991), FEBS Lett. 1991 278, 195-198 Akiyoshi-Shibata M, Sakaki T, Ohyama Y, Noshiro M, Okuda K,Yabusak i Y., (1994), Eur J Biochem. , 224(2):335-343 Cheng, J. B., Levine, M. A., Bell, N. H., Mangelsdorf, D. J., and Russell, D. W., (2004), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101, 7711-7 715 Shinkyo R, Sakaki, T, Kamakura M, Ohta, M., Inouye, K., (2004), Biochem Biophys Res Commun 324: 451-457 Sakaki, T., Kagawa, N., Yamamoto, K., and Inouye, K., (2005), Frontiesr in Bioscience 10, 119-134 (2005) Kawauchi, H., Sasaki, J., Adachi, T., Hanada, K., Beppu, T., and Horinouchi, S., (1994), Biochim Biophys Acta. 1219, 179-183 Sawada, N., Sakaki, T., Yoneda, S., Kusudo, T., Shinkyo, R., Ohta, M., and Inouye, K., (2004), Biochem Biophys Res Commun. 320, 156-164 林恵子, 杉本宏, 新京楽, 山田雅人, 生城真一, 鎌倉昌樹, 城宜嗣, 榊利之, (2007), 放線菌学会要旨集、P-23
CYP105A1のアミノ酸配列における73位のアルギニン及び84位のアルギニンをそれぞれアラニンに置換したCYP105A1変異体を用いれば、複数の酵素を用いることなく単一酵素系で、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造できる。しかし、該CYP105A1変異体は、25位水酸化活性に比べると、1α位水酸化活性が著しく低い。したがって、該CYP105A1変異体を用いたビタミンDからの1α,25−ジヒドロキシビタミンDの変換率は非常に低かった。
そこで、本発明者らは、25位水酸化活性を有し、かつ高度な1α位水酸化活性を有するビタミンD水酸化酵素を用いれば、効率よくビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができると考えた。さらに、本発明者らは、25位水酸化活性を有し、かつ高度な1α位水酸化活性を有するビタミンD水酸化酵素を正常に発現する形質転換体を用いれば、入手が困難な精製酵素を用いずに、工業的規模で大量にビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造できると考えた。
したがって、本発明は、従来の酵素と比べて、ビタミンDから効率よく1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造し得る酵素を正常に発現する形質転換体の存在下で、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを工業的規模で大量に製造し得る方法を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは種々検討したところ、73位及び84位のアルギニンをともにアラニンで置換した変異体と比べて、25位水酸化活性を有し、かつ高度な1α位水酸化活性を有するビタミンD水酸化酵素を正常に発現する形質転換体を用いることにより、簡便かつ高効率でビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することに成功した。
したがって、本発明によれば、下記(a)〜(c)のいずれか1種のアミノ酸配列を有し、かつ下記(d)の活性を有するビタミンD水酸化酵素を発現する形質転換体を、ビタミンDの存在下で培養して、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを得ることを特徴とする、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法が提供される。
(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、
73位のアルギニンがバリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン、システイン、グルタミン、アスパラギン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換された、改変アミノ酸配列
(b)前記改変アミノ酸配列において、前記73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに、1から9個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列
(c)前記改変アミノ酸配列と70%以上の相同性を有する、前記73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換を含むアミノ酸配列
(d)0.2μM ビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.10%以上である
本発明の製造方法の一態様は、前記培養が、ビタミンD及び包摂化合物の存在下で実施される。
本発明の製造方法の一態様は、前記包摂化合物が、シクロデキストリン、ゼオライト、フラーレン、クラウンエーテル又はカリックスアレーンである。
本発明の製造方法の一態様は、前記改変アミノ酸配列が、73位のアルギニンがバリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン又はシステインに置換された配列である。
本発明の製造方法の一態様は、前記形質転換体の宿主が、大腸菌又は放線菌である。
本発明の製造方法の一態様は、前記ビタミンDが、ビタミンD2又はビタミンD3である。
本発明の製造方法によれば、精製酵素を用いず、NADPHを加えることなく、高効率にビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを生産することができる。したがって、本発明によれば簡易かつ高効率に大量の1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができることから、本発明によって製造された1α,25−ジヒドロキシビタミンDにより、骨粗鬆症、くる病などのビタミンD代謝異常による諸症状、副甲状腺機能亢進症、乾癬などを治療するための新規な治療薬若しくは医薬中間体、又はこれらの症状を緩和するための食品添加物の生産及び開発が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(A)ビタミンD水酸化酵素
ビタミンD水酸化酵素として、例えば、改変アミノ酸配列を有し、かつ0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有するビタミンD水酸化酵素が挙げられる。
本明細書にいう「ビタミンD」には、天然型ビタミンであるビタミンD2、D3、D4、D5、D6及びD7だけでなく、人工的に作られたこれらの誘導体が包含される。したがって、1α,25−ジヒドロキシビタミンDには、1α位及び25位が水酸化したビタミンD2、D3、D4、D5、D6及びD7、並びにこれらの誘導体が包含される。
改変アミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、73位のアルギニンおよび84位のアルギニンがそれぞれ別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列である。配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列は、Streptomyces griseolus由来のCYP105A1のアミノ酸配列である。すなわち、上記ビタミンD水酸化酵素は、CYP105A1のアミノ酸配列において2以上のアミノ酸の修飾が加わったCYP105A1変異体であるといえる。
改変アミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、73位のアルギニンがバリン、ロイシン又はイソロイシンに置換されており、かつ84位のアルギニンが非極性側鎖を有するアミノ酸、酸性側鎖を有するアミノ酸、又は電荷を持たない極性側鎖を有するアミノ酸に置換されていることが好ましく、73位のアルギニンがバリン、ロイシン又はイソロイシンに置換されており、かつ84位のアルギニンが非極性側鎖を有するアミノ酸が特に好ましい。
非極性側鎖を有するアミノ酸とは、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン、システインなどが挙げられる。酸性側鎖を有するアミノ酸とは、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。電荷を持たない極性側鎖を有するアミノ酸とは、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシンなどが挙げられる。
改変アミノ酸配列の具体例として、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、73位のアルギニンがバリンに置換されており、かつ84位のアルギニンがアラニン又はフェニルアラニンに置換されているアミノ酸配列が挙げられる。これらの改変アミノ酸配列は、配列表の配列番号5及び6に記載されている。
上記ビタミンD水酸化酵素による、ビタミンD3を1α,25−ジヒドロキシビタミンD3に水酸化する過程を表したものを図1とした。図1で示した通り、該水酸化は、ビタミンD3→1α−ヒドロキシビタミンD3→1α,25−ジヒドロキシビタミンD3という過程と、ビタミンD3→25−ヒドロキシビタミンD3→1α,25−ジヒドロキシビタミンD3という過程の二通りが想定される。ただし、73位のアルギニンがバリンに置換されており、かつ84位のアルギニンがアラニン又はフェニルアラニンに置換されているアミノ酸配列を有する上記ビタミンD水酸化酵素は、実施例で示されている通り、活性の強さが25位水酸化活性>1α位水酸化活性であるので、ビタミンD3→25−ヒドロキシビタミンD3→1α,25−ジヒドロキシビタミンD3という過程により、ビタミンD3を1α,25−ジヒドロキシビタミンD3に変換すると考えられる。
上記ビタミンD水酸化酵素の活性は、実施例に記載の方法により測定することができる。ただし、上記活性測定法では、上記ビタミンD水酸化酵素へ電子を供与する電子供与体として、ホウレン草由来のフェレドキシンおよびフェレドキシン還元酵素を用いているが、これらの代わりに、例えば、放線菌由来のフェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素、シュードモナスプチダ由来のプチダレドキシン及びプチダレドキシン還元酵素などを用いることもできる。さらに、上記活性測定法では、反応が進むにつれて消費されるNADPHを再生し反応を持続させるために、グルコース脱水素酵素およびグルコースを添加するが、NADPHを再生することができるものであればこれらに代えて使用することができる。上記測定法におけるカタラーゼは、反応の副産物として生じる過酸化水素を分解して反応を持続させるために、及びNADPHを再生させるために添加している。したがって、カタラーゼの添加は、NDAPH再生系の長時間反応を持続させることができる。
上記ビタミンD水酸化酵素によるビタミンDを水酸化する反応は、例えば、菌体を用いる方法を挙げることができ、実施例に記載の方法によりすることができる。菌体を用いる方法では、培養液の組成は限定されないが、増殖中の菌体培養液に直接基質を添加して培養を続ける方法(生菌体法)と、菌体を緩衝液に懸濁し、増殖させずにグルコースを添加して反応を進行させる方法(休止菌体法)がある。休止菌体法では、グルコースが菌体内に取り込まれるとNADPHが生成され、菌体内でビタミンDの水酸化反応が進行する。酵素を用いる方法は、NADPHを反応系に加えなければならない、酵素が失活した場合は反応系に新たな酵素を追加しなければならない、精製酵素を使用することが望ましい、酵素の保存が困難であることから反応の都度新しい酵素を使用しなければならない、酵素が不安定であることから反応時間は長くても1時間程度である、酵素の製造コストが増大するために工業的規模での生産は困難である、などの特徴がある。それに対して、菌体を用いる方法は、NADPHを加えなくてもよい、ビタミンD水酸化反応と同時に触媒である菌体を増殖することができる(生菌体法)、増殖した菌体に対して精製などの処理を施さなくてもよい、菌体の保存が容易であることから菌体を繰り返し反応に使用できる、反応時間を100時間以上とることができる、通常用いられる培地を利用することにより安価に工業的規模でビタミンD水酸化体を大量生産ができる、などの特徴があり、酵素を用いる方法と比較すると、ビタミンD水酸化反応を圧倒的に簡便かつ効率よく実施できる。反応終了後にクロロホルムあるいは酢酸エチル等の有機溶媒を添加し、抽出する。抽出物の分析は公知のビタミンD類の分析法に準じて行えばよく、逆相系あるいは順相系の高速液体クロマトグラフィーを用いて分析することができる。上記ビタミンD水酸化酵素によるビタミンDからの1α,25−ジヒドロキシビタミンDの変換率は、反応後の高速液体クロマトグラフィーによる分析結果を基に、反応液に加えたビタミンDのモル数当たりの1α,25−ジヒドロキシビタミンDのモル数により求めることができる。
改変アミノ酸配列を取得する方法は、特に制限されるものではなく、物理化学的に合成してもよいし、後述する通りに生物学的に改変アミノ酸配列をコードする核酸から作成してもよいし、通常知られる手段を用いた各種スクリーニング法により取得してもよい。
上記ビタミンD水酸化酵素の第二の態様として、例えば、改変アミノ酸配列において、73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに、1から数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列を有し、かつ0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有するビタミンD水酸化酵素が挙げられる。
上記ビタミンD水酸化酵素の第二の態様において、アミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列おける73位のアルギニン及び84位のアルギニンがそれぞれ別のアミノ酸に置換されており、さらにこれら以外に1から数個のアミノ酸の欠失等の修飾を1以上有するアミノ酸配列を意味する。
上記ビタミンD水酸化酵素の第二の態様において、73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに生じた修飾の個数は、0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有するのであれば特に限定されないが、1から20個が好ましく、1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれかの数がより好ましい。
アミノ酸の修飾について、アミノ酸の欠失は配列中のアミノ酸残基の欠落もしくは消失を、アミノ酸の置換は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていることを、アミノ酸の逆位は隣り合う2以上のアミノ酸残基の位置が逆になっていることを、アミノ酸の付加はアミノ酸残基が付け加えられていることを、アミノ酸の挿入は配列中のアミノ酸残基の間に別のアミノ酸残基が挿し入れられていることをそれぞれ意味する。アミノ酸の修飾は、同じ修飾態様が1又は2以上生じる場合もあるし、異なる修飾態様が2以上生じる場合もある。
上記ビタミンD水酸化酵素の第三の態様として、例えば、改変アミノ酸配列との相同性が高く、改変配列における73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換を含むアミノ酸配列を有し、かつ0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有するビタミンD水酸化酵素が挙げられる。
上記ビタミンD水酸化酵素の第三の態様において、相同性は、0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有するのであれば特に制限されないが、好ましくは70%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。ただし、ビタミンD水酸化酵素の第三の態様のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列おける73位のアルギニン及び84位のアルギニンが改変アミノ酸配列と同様に置換されている。
上記ビタミンD水酸化酵素の第二及び第三の態様の取得方法は、改変アミノ酸配列の取得方法と同様に、特に制限されるものではなく、物理化学的に合成してもよいし、後述する通りに生物学的に改変アミノ酸配列をコードする核酸から作成してもよいし、通常知られる手段を用いた各種スクリーニング法により取得してもよい。上記ビタミンD水酸化酵素は、その取得を容易にするなどのために、ヒスタグ(His-tag)やシグナルペプチド等をN末端側又はC末端側に適宜付加することができる。
上記ビタミンD水酸化酵素は、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造するために使用することができる。
(B)ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸は、例えば、改変アミノ酸配列をコードする核酸;改変アミノ酸配列において、73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに、1から数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列をコードする核酸;並びに、改変アミノ酸配列との相同性が高く、改変配列における73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換を含むアミノ酸配列をコードする核酸などが挙げられる。ただし、上記核酸の発現産物は、0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有する。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の第一の具体例は、配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列を有する核酸が挙げられる。配列表の配列番号2に記載の核酸は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、73位のアルギニンがバリンに置換されており、かつ84位のアルギニンがアラニンに置換されているアミノ酸配列をコードする。配列表の配列番号3に記載の核酸は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、73位のアルギニンがバリンに置換されており、かつ84位のアルギニンがフェニルアラニンに置換されているアミノ酸配列をコードする。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の第二の具体例として、配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列において、217〜219塩基及び250〜252塩基以外の箇所に、1から数個の塩基の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有する塩基配列であって、0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸が挙げられる。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の第二の具体例における塩基の修飾の個数は、修飾後の塩基配列によってコードされるアミノ酸配列が0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有するタンパク質のアミノ酸配列であれば特には限定されないが、例えば、1から60個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から27個、より好ましくは1から15個程度である。塩基の修飾において、塩基の欠失は配列中の塩基の欠落もしくは消失することを、塩基の置換は配列中の塩基が別の塩基に置き換えられていることを、塩基の逆位は隣り合う2以上の塩基の位置が逆になっていることを、塩基の付加は塩基が付け加えられていることを、塩基の挿入は配列中の塩基の間に別の塩基が挿し入れられていることをそれぞれ意味する。なお、上記核酸の第二の具体例は、配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列おける217〜219塩基及び250〜252塩基以外の塩基について欠失、置換、逆位、付加および/または挿入を有する。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の第三の具体例は、配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ該塩基配列中の217〜219塩基及び250〜252塩基と相補的な塩基を含む塩基配列であって、0.2μMの該酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.10%以上である活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸が挙げられる。
上記核酸の第三の具体例において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸とは、配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列からなる核酸をプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、又はサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られる核酸を意味し、例えば、コロニーあるいはプラーク由来の核酸または該核酸の断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0M NaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できる核酸等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と呼ぶ)、又はCurrent Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと呼ぶ)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸としては、プローブとして使用する配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列と一定以上の相同性を有する核酸が挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する核酸が挙げられる。ただし、ハイブリダイズする塩基配列は、配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列おける217〜219塩基及び250〜252塩基を含む。
上記核酸の取得方法は特に限定されない。例えば、上記核酸は、配列番号2又は3に記載の塩基配列の情報に基づいて、CYP105A1遺伝子(配列表の配列番号1)から部位特異的変異誘発法によって得ることができ、サチュレーション変異法並びにモレキュラークローニング第2版及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。より詳しくは、上記核酸は、例えば、217〜219塩基付近の塩基配列を含むプライマーであって217〜219塩基が改変アミノ酸配列の73位のアミノ酸をコードする塩基に置換したプライマーと該プライマーに相補的なプライマーとの第一のプライマーセットを用いて、CYP105A1をコードする塩基配列を含む核酸をPCRによって増幅して第一のPCR産物を得る。次いで、250〜252塩基付近の塩基配列を含むプライマーであって250〜252塩基を改変アミノ酸配列の84位のアミノ酸をコードする塩基に置換したプライマーと該プライマーに相補的なプライマーとの第二のプライマーセットを用いて、第二のPCR産物をPCRによって増幅することにより取得することができる。ここで、第一のプライマーセットと第二のプライマーセットとの使用の順序は逆であってもかまわない。ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の取得方法の具体例は実施例に記載されている。
さらに上記核酸は、例えば、配列表の配列番号1に記載したアミノ酸配列、又は配列番号2若しくは3に記載の塩基配列の情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いてStreptomyces griseolus由来の染色体DNAライブラリーをスクリーニングすることにより上記核酸を単離することができる。染色体DNAライブラリーは、CYP105A1を発現しているStreptomyces griseolus由来のCYP105A1遺伝子に、通常知られる方法によって変異を導入して作製することができる。
上記したプライマー及びプローブの調製、PCR、染色体DNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニングなどの操作は当業者に知られており、例えば、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。
さらに、上記核酸は、CYP105A1遺伝子(配列表の配列番号4)から、配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列の情報に基づいて化学合成法により得ることができ、さらにCYP105A1遺伝子に対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法や紫外線を照射する方法により突然変異を誘発するなどの当業者に通常知られる任意の方法で作製することができる。
(C)組換えベクター
上記核酸は適当なベクターに挿入して使用することができる。ベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製することが可能なベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、又は宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれ、ゲノムDNAと共に複製されるものであってもよい。好ましくは、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて上記核酸は、転写に必要な要素(例えば、プロモータ等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
自立的に複製することが可能なベクターの具体例としては、pkk223−3、pRSETA、pCR8、pBR322、pBluescriptII SK(+)、pUC18、pCR2.1、pIJ6021、SCP2、pHJL190、pHJL191、pIJ101、pIJ702 、pSKN01、pSK04、pLR591、pULJA30等のプラスミドベクターやλgt11、λZAP等のファージベクターが挙げられるが、大腸菌で発現させるには、pkk223−3、pUC19、pRSETA、pCR8、pBR322、pBluescriptII SK(+)、pUC18、およびpCR2.1が好ましく、枯草菌で発現させるにはpIJ6021、pIJ6021、SCP2、pHJL190、pHJL191、pIJ101、pIJ702 、pSKN01、pSK04、pLR591、pULJA30が好ましい。上記組換えベクターに用いられるベクターは、後述する形質転換体の宿主細胞と相性がよく、安定して上記ビタミンD水酸化酵素を発現することができるものであれば、特に制限されるものではない。なお、細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、大腸菌のlac、trp、tacプロモータ、放線菌のtipA、ermEプロモータなどが挙げられる。
上記組換えベクターは選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)又はシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、又はアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ヒグロマイシンなどの薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。
上記組換えベクターは、放線菌を形質転換する場合、活性上昇を目的として、例えば、放線菌Streptomyces griseolus由来のFDX1(Omer, C.A. et al, (1990), J Bacteriol., 172, 3335-3345)及びStreptomyces coelicolor由来のFDR1遺伝子(Chun YJ et al., (2007), J Biol Chem. 282, 17486-17500)を上記核酸の下流に連結することができるが、これらに限定されるものではなく、上記した電子伝達系に関与する酵素の遺伝子を用いてもよい。したがって、上記核酸はプロモータ、ターミネータ、エンハンサー、分泌シグナル配列、電子伝達系酵素遺伝子などと連結されて適切なベクターに挿入されるが、これらの方法は当業者に通常知られる方法である。
(D)形質転換体
上記核酸又は上記組換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。すなわち、形質転換体は、ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸を導入してなる、又はビタミンD水酸化酵素をコードする核酸が挿入された組換えベクターを含有する形質転換体である。
上記核酸を導入してなる形質転換体は、バクテリオファージなどによって、上記核酸を宿主細胞へ導入された、好ましくは、上記核酸が宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれた形質転換体である。
上記核酸又は組換えベクターが導入される宿主細胞は、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。細菌細胞の例としては、放線菌、枯草菌等のグラム陽性菌または大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられ、好ましくは放線菌又は大腸菌である。この中で、放線菌として好ましいのは、Streptomyces lividans TK23株であり、大腸菌として好ましいのはJM109株であるが、これらに限定されるものではない。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、カルシウムイオンを用いる方法等により行うことができる。哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞、CHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換するためには、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞を挙げることができる。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、通常知られる方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
(E)1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法
上記形質転換体を常法にしたがって適当な培地に接種し、NADPHなどの還元型補酵素を加えることなく、ビタミンDの存在下、好ましくはビタミンD及び包摂化合物の存在下、より好ましくはビタミンD、包摂化合物及びビタミンD水酸化酵素の発現を誘導する薬剤の存在下で培養することにより、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる。すなわち、本発明の1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法は、反応系が菌体を用いる方法である。したがって、上記した通り、本発明の1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法は、NADPHを加えなくてもよく、ビタミンD水酸化反応と同時に触媒である菌体を増殖することができ(生菌体法)、増殖した菌体に対して精製などの処理を施さなくてもよく、菌体の保存が容易であることから菌体を繰り返し反応に使用でき、反応時間を100時間以上とることができ、並びに通常用いられる培地を利用することにより安価に工業的規模で大量生産ができることから、酵素を用いる方法と比較して、圧倒的に簡便かつ効率よく1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造できる。
ビタミンDとしてはビタミンD又はビタミンD含有物(例えば、シイタケ抽出液や魚類肝臓抽出液)を用いることができる。ビタミンDとして好ましいのはビタミンD2又はビタミンD3であり、これらを用いた場合に製造される1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、1α,25−ジヒドロキシビタミンD2又は1α,25−ジヒドロキシビタミンD3である。休止菌体を用いる場合、反応に使用する水性媒体としては水、緩衝液等が挙げられる。緩衝液としては酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、EDTA緩衝液等を用いることができる。
1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造において使用する包摂化合物は、シクロデキストリン、ゼオライト(Na12・Al12Si1248)、フラーレン(C60、C70等)、クラウンエーテル又はカリックスアレーンが好ましく、シクロデキストリンがより好ましく、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが特に好ましい。包摂化合物の濃度は、形質転換体がビタミンDを1α,25−ジヒドロキシビタミンDに変換することができる濃度であれば特に制限されないが、例えば、包摂化合物が2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである場合、終濃度は10〜3000mg/lが好ましく、100〜2000mg/mlがより好ましい。生菌体法及び休止菌体法のいずれの場合もビタミンDの濃度は、包摂化合物の濃度に比例して高めることができ、例えば、20〜2000mg/lに設定することができる。Streptomyces griseolusのCYP105A1の電子伝達系は図4で示した通りである。休止菌体法の場合、一般的にグルコースを含む緩衝液を用いて菌体内でNADPHを生産するが、菌体内にNADPHが生産され、電子伝達系が正常に機能するのであればよく、グルコース以外の化合物を使用することもできる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地としては、炭素源、窒素源、無機物、および必要に応じ使用菌株の必要とする微量栄養素を程よく含有するものであれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の炭素源としては、該形質転換体が資化しうる物であればよく、例えば、グルコース、マルトース、フラクトース、マンノース、トレハロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、デキストリン、糖蜜などの糖質、またはクエン酸、コハク酸などの有機酸、またはグリセリンや脂肪酸も使用することができる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の窒素源としては、各種有機および無機の窒素化合物、さらに培地は各種の無機塩を含むことができる。たとえば、コーンスティープリカー、大豆粕、あるいは各種ペプトン類等の有機窒素源、及び塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機窒素源などの化合物が使用可能である。また、グルタミン酸などのアミノ酸および尿素などの有機窒素源が炭素源にもなることはいうまでもない。さらに、ペプトン、ポリペプトン、バクトペプトン、バクトソイトン、オキソイドマルトエキス、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆粉、大豆粕、乾燥酵母、カザミノ酸、ソリュブルベジタブルプロテイン等の窒素含有天然物も窒素源として使用できる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の無機物としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、モリブデン塩、コバルト塩などが適宜用いられる。具体的には、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等が用いられる。上記形質転換体の培養に用いる栄養培地のタンパク質成分としては、例えば、NZ−caseやNZ−amineなどのカゼイン分解物が挙げられる。さらに、必要に応じて、アミノ酸ならびにビオチンおよびチアミンなどの微量栄養素ビタミンなども適宜用いられる。
培養法としては液体培養法(振とう培養法もしくは通気攪拌培養法)がよく、工業的には通気攪拌培養法が好ましい。培養温度とpHは、使用する形質転換体の増殖に適し、かつビタミンD水酸化酵素の活性が高くかつ安定した条件を選べばよい。たとえば、上記形質転換体が微生物の場合の培養は、通常、20〜40℃、好ましくは25〜35℃、より好ましくは30℃であり、pHは5〜9、好ましくは6〜8から選ばれる条件で好気的に行われる。培養時間は微生物が増殖し始める時間以上の時間であればよく、好ましくは8〜120時間であり、さらに好ましくは上記ビタミンD水酸化酵素が最大に生成している時間帯である。微生物の増殖を確認する方法は特に制限はないが、たとえば、培養物を採取して顕微鏡で観察してもよいし、吸光度で観察してもよい。また、培養液の溶存酸素濃度には特に制限はないが、通常は、0.5〜20ppmが好ましい。そのために、通気量を調節したり、撹拌したり、通気に酸素を追加したりすればよい。培養方式は、回分培養、流加培養、連続培養または灌流培養のいずれでもよい。
上記形質転換体の培養において、組換えベクターに選択マーカーを含有させている場合などでは、選択マーカーに対応した抗生物質を栄養培地とともに加える。たとえば、選択マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子を含有する場合は、適当な濃度に調製したカナマイシン溶液を加える。
上記形質転換体を培養した後、培養物(液体分と形質転換体や不溶成分等の固形分とが混合したもの)に上記ビタミンD水酸化酵素の発現を誘導する薬剤を加える。発現を誘導する薬剤とは、例えば、チオストレプトンやイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)などを用いる。
上記ビタミンD水酸化酵素は、上記形質転換体の細胞内に蓄積される。上記形質転換体を培養して得た培養物をビタミンD水酸化酵素の粗酵素として用いることができる。さらに、該培養物を遠心分離法、ろ過法等の操作によって固形分と培養上清に分離して得られた固形分をビタミンD水酸化酵素の粗酵素とすることもできる。さらに、上記固形分や固形分中の菌体を適当な担体に包括、吸着あるいは化学的に結合させた菌体固定化担体などを1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造に使用することができる。
製造された1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、例えば、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを溶解することができる溶媒を用いて回収することができるが、活性炭処理、イオン交換樹脂処理等の単離・精製手段を適宜組み合わせても回収することができる。具体例として、1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、培養液に2〜6倍容、好ましくは4倍容のクロロホルム−メタノール混合液を添加し、激しく攪拌することにより回収することができる。クロロホルム−メタノール混合液におけるクロロホルムとメタノールの混合比は、例えば、3:1に設定することができる。回収された1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、例えば、下記条件により高速液体クロマトグラフィーにより分析できる:カラム:YMC社製 YMC−Pack ODS−AM (内径4.6mm×長さ300mm);検出波長:265nm;流速:1.0ml/min;カラム温度:40oC、溶出条件:水/アセトニトリル系;70−100% アセトニトリル直線濃度勾配(15分間)の後、100%アセトニトリル(25分間)。
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.CYP105A1変異体発現プラスミドの構築
野生型CYP105A1を大腸菌内で発現させるためのプラスミドは非特許文献12及び13に記載した方法にしたがって構築した。変異体をコードする遺伝子は変異体作成キットQuick ChangeTM(ストラタジェン社)を使用し、それぞれの変異体に応じてプライマーDNA(20mer程度)を用いた。プライマーの塩基配列を配列表の配列番号7〜24に示した(表1を参照)。構築したプラスミドを大腸菌JM109株に導入した。発現系におけるベクターと大腸菌宿主については特に限定されるものではない。
2.組換え大腸菌の培養及び細胞質画分の調製
それぞれの変異体を発現する組換え大腸菌は50μg/mlアンピシリンを含むTB培地 (Sugimoto, H.et al., (2008), Biochemistry 47, 4017-4027)において37℃で培養し、菌体濃度(O.D.660nm)が0.5に達した時点でイソプロピル−チオーβ―D―ガラクトピラノシドを終濃度1mMになるまで、及びδ−アミノレブリン酸を終濃度0.5mMになるまで添加した。その後、40〜50時間25℃で培養し、遠心分離により菌体を回収し、超音波破砕装置を用いて菌体を破砕し、遠心分離により細胞質画分を調製した。
3.変異体の定量
野生型および変異体の定量は吸収スペクトルを測定し417nmにおける吸光度を求め、モル分子吸光係数110mM-1cm-1を用いて算出した。変異体の種類により発現量に違いが見られたが、培養液1Lあたりの発現量は1〜5μmolであった。
4.活性測定
活性は100mM Tris−HCl(pH7.4)、1mM EDTA緩衝液中で、以下のものを含む再構成系を用いて測定した。基質:ビタミン D3、1α−ヒドロキシビタミンD3(1α(OH)D3)、又は25―ヒドロキシビタミンD3(25(OH)D3)(それぞれ終濃度0.5〜10μM);0.2μM シトクロムP450(野生型あるいは変異体を含む組換え大腸菌細胞質画分);0.1mg/ml ホウレン草由来フェレドキシン(Fdx)、0.1U/ml ホウレン草由来フェレドキシン還元酵素(Fdr)、1U/ml グルコース脱水素酵素;1% グルコース;0.1mg/ml カタラーゼ。
反応は終濃度1mMになるまでNADPHを添加して30oCで反応を開始し、30oCで10〜60分反応させ、反応液の四倍容のクロロホルム:メタノール=3:1を添加し、激しく攪拌した後、代謝物を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。条件は以下のとおりである:カラム:YMC社製 YMC−Pack ODS−AM (内径4.6mm×長さ300mm);検出波長:265nm;流速:1.0ml/min;カラム温度:40oC、溶出条件:水/アセトニトリル系;70−100% アセトニトリル直線濃度勾配(15分間)の後、100%アセトニトリル(25分間)
各基質濃度における初速度を求め、Synergy software社の解析ソフトKaleida−Graphを用いてKm値およびkcat値を算出した。1α(OH)D3を基質とした場合は25位水酸化活性により、及び25(OH)D3を基質とした場合には1α位水酸化活性により、活性型ビタミンD3(1α,25(OH)23)を特異的に生成する。表2にArg84あるいはArg73を他のアミノ酸残基に変異させたCYP105A1変異体の活性を示した。
作製したすべての変異体において、1α(OH)D3に対する25位水酸化活性、及び25(OH)D3に対する1α位水酸化活性の活性上昇が見られた。kcat値(基質濃度がKm値よりも高い条件下で重要なパラメーター)を比較すると、すべての変異体において野生型と同様に、1α(OH)D3に対する25位水酸化活性は25(OH)D3に対する1α位水酸化活性よりも高かったが、kcat/Km値(基質濃度が Km値よりも低い条件下で重要なパラメーター)を比較すると唯一、R84Fにおいては25(OH)D3の1α位水酸化活性の方が高かった。したがって、R84Fは野生型や他の変異体とは酵素学的に異なることが示唆された。
表3にArg73とArg84の両方に変異を導入した二重変異体の活性を示す。
驚くべきことに、kcat値およびkcat/Kmを比較すると、活性が相乗的に上昇したことがわかった。立体構造から、Arg73とArg84は基質をはさんで反対側に存在している(非特許文献13を参照)。これらの部位の置換アミノ酸が、互いの効果を打ち消すことなく相乗作用を生じさせたと考えられるが、立体構造情報だけではこの相乗作用の理由を説明することはできない。二重変異体R73V/R84Aの1α(OH)D3に対する25位水酸化活性および25(OH)D3に対する1α位水酸化活性は天然型のビタミンD水酸化酵素であるCYP27A1やCYP2R1よりも高いことがわかった。また、これら二重変異体は、ビタミンD3に対する25位水酸化活性が野生型よりも顕著に高く、ビタミンD3から25−ヒドロキシビタミンD3を経て1α,25−ジヒドロキシビタミンD3を生成する能力が高いことがわかった。これは、基質とした1α−ジヒドロキシビタミンD3又は25−ジヒドロキシビタミンD3に、二重変異体R73V/R84Aを上記4に記載の方法で反応させた後、反応液中の基質および代謝物を抽出し、これらを上記4に記載の方法で分析した結果(図2)によっても示されている。
5.ビタミンD 2 に対するR73V/R84Aの触媒作用
ビタミンD2、1α(OH)D2、又は25(OH)D2を基質として活性を調べたところ、ビタミンD2および1α(OH)D2からは、25位水酸化体及び25位水酸化体にさらに水酸基が一つ導入された代謝物の2種類の代謝物が検出されたと推定され、25(OH)D3からは1種類の代謝物が検出された。これらはいずれも野生型CYP105A1において見られた代謝物(非特許文献4を参照)と考えられるが、活性はR73V/R84Aの方がはるかに高かった。
6.CYP105A1変異体の放線菌内での発現
変異体R73V/R84Aを放線菌内で発現させ、組換え菌体を用いてビタミンD水酸化体を製造することを試みた。CYP105A1遺伝子の下流にはフェレドキシン(FDX1)遺伝子を含んでいるが、フェレドキシン還元酵素遺伝子を含んでいないため、既存の放線菌内発現ベクターpIJ6021のクローニング部位にStreptomyces coelicolor A3株由来のFDR1遺伝子を挿入し、その上流にR73V/R84A+FDX1遺伝子を連結することを試みた。
CYP105A1+FDX1+FDR1遺伝子の取得は以下の方法で行なった。クローニングしやすいようにCYP105A1+FDX1のN末端にHindIII部位を、C末端にPstI部位を付加した配列表の配列番号25及び26に記載のプライマー(表4の105A1 N−HindIII、105A1 C−PstI)を設計し、pkk223−3にクローニングされているCYP105A1+FDX1を鋳型として増幅した。またFDR1遺伝子はN末端にPstI部位を、C末端にEcoRI部位を付加した配列表の配列番号27及び28に記載のプライマー(表4 FDR1 N−PstI、FDR1 C−EcoRI)を用いてStreptomyces coelicolor A3(非特許文献2を参照)よりPCRで取得し、PstI部位で両者を連結してCYP105A1+FDX1+FDR1遺伝子を取得し、pUC19ベクターに結合した。
PCRはKOD plus(東洋紡社製)を使用し、94℃で15秒間、61℃で30秒間、68℃で1分30秒間からなる反応工程を1サイクルとして30サイクル行なった後、68℃で7分間反応させる条件で行なった。さらに放線菌の制限修飾系を避けるためにメチル化欠損株大腸菌 SCS110株を形質転換してプラスミドを構築した。前記した通り、pUC19のHindII、EcoRIサイトにいったんクローニングし、そこからHindII−EcoRI断片を切り出してpIJ6021のHindIII、EcoRIサイトに連結した。次に、CYP105A1+FDX1+FDR1遺伝子を含むDNA断片を放線菌用ベクターpIJ6021のHindIII、EcoRIサイトに連結し、Practical Streptomyces Genetics(ISBN 0−7084−0623−8)に記載の方法を用いてStreptomyces lividans TK23株のプロトプラストに導入し、R5再生培地に塗布した。16時間後に、カナマイシン(最終濃度10μg/mL)を含む軟寒天培地を重層した後、30℃で3日間培養し、カナマイシン耐性株を取得した。
7.組換え放線菌の培養
1% soluble starch、0.5% glucose、0.3% NZ−case、0.2% Difco yeast extract、0.5% Difco Bacto−peptone、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4・7H2O、0.3% CaCO3よりなる培地(滅菌前pH 7.0)を10mLずつ100mL容の試験管に分注し、121℃、20分間滅菌した。この培地にBennett’s寒天培地(0.1% Difco yeast extract、0.1% Meat extract、0.2% NZ−amine、1% maltose、2% agar)に生育させた形質転換体をかき取って接種し、30℃で2日間振盪培養し、種培養液とした。本培養は3種類の培地のいずれかを用いて行なった:(1)種培養液と同様の組成の培地;(2)1.5% glucose、1.5% Difco bacto Soytone、0.5% Corn steep liquor、0.5% NaCl、0.2% CaCO3よりなる培地(滅菌前のpH 7.0);(3)YEME培地(0.3% Difco yeast extract、0.5% Difco Bacto−peptone、0.3% oxoid malt extract、1% glucose、34% sucrose、5mM MgCl2・6H2O。これらの培地をK型フラスコ(500mL容)に100mLずつ分注し、121℃で20分間滅菌し、種培養液をそれぞれ1%接種し、30℃、200回転/分で培養した。
8.R73V/R84Aを発現する放線菌を用いた25(OH)D 3 及び1α,25(OH) 2 3 の製造
変異体R73V/R84A+FDX1+FDR1遺伝子をpIJ6021ベクターに連結し、放線菌Streptomyces lividans TK23株に組込んだ形質転換体を前記(2)の培地を用いて24時間培養した後、100ml培養液中にチオストレプトンを0.1mg添加し、さらに24時間培養を続けた後、0.2g/mLの2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン水溶液を1ml添加し、また、4mg/mLのビタミンD3エタノール溶液を0.5ml添加し、67時間培養を続けた。次に、培養液に2倍容のクロロホルム:メタノール=3:1を添加し、激しく攪拌した後、クロロホルム層を回収し、減圧乾固し、アセトニトリルに溶解した。この溶液を上記4と同じ条件で分析した結果、25(OH)D3および1α,25(OH)23のピークが検出され、変換率はそれぞれ2.9%および1.6%であった(図3を参照)。図3に見られるように、放線菌の菌体を用いた場合は25(OH)D3および1α,25(OH)23への変換率がそれぞれ2.9%、および1.6%と、酵素を用いた場合(下記比較例1の表5を参照)に比べ、1α,25(OH)23の割合がきわめて高くなっている。これは疎水性が極めて高いビタミンD3に比べ25(OH)D3の方が菌体に取り込まれやすいことに依ると考えられる。
比較例1.二重変異体の活性比較
シトクロムP450として、R73A/R84A、R73V/R84A又はR73V/R84Fを、基質であるビタミンD3(最終濃度 6μM)に20分間作用させて、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3の変換率を比較した。結果を表5に示した。なお、表中の「N.D.」は、検出下限である0.10%未満であることを示す。R73V/R84AおよびR73V/R84Fにおける1α,25(OH)23への変換率はR73A/R84Aよりも有意に高かった。
表5が示すとおり、ビタミンDに二重変異体を作用させると、代謝物として25(OH)D3と1α,25(OH)23が主として得られる。1α(OH)D3が検出されなかった理由はビタミンD3に対する水酸化活性の強さが25位水酸化活性>1α位水酸化活性であることと、少量生じた1α(OH)D3が1α,25(OH)23に変換されやすいことに基づくと考えられる(表3)。R73A/R84Aでは1α,25(OH)23が検出できなかったが、R73V/R84AおよびR73V/R84Fにおいては1α,25(OH)23の生成が認められる。
本発明の1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法によれば、精製酵素を用いず、NADPHを加えることなく、高効率に、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを生産することができる。1α,25−ジヒドロキシビタミンDはカルシウムの吸収促進や代謝促進、細胞分化誘導、免疫調節作用などの多岐にわたる生理作用を有し、骨粗鬆症、くる病などのビタミンD代謝異常による諸症状、副甲状腺機能亢進症、乾癬などを治療するための治療薬若しくは医薬中間体、又はこれらの症状を緩和するための食品添加物として使用される。骨粗鬆症の患者数は予備軍を含めると国内で約2000万人、乾癬の患者数は世界で約1億2500万人いると言われている。したがって、本発明によれば簡易かつ高効率に上記症状を治療又は緩和させる1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができることから、本発明は医薬分野及び食品分野に多大な貢献をすることができる。
図1は、CYP105A1野生型および変異体によるビタミンD3水酸化経路の概略を示す。 図2は、CYP105A1変異体R73V/R84A による代謝物の分析結果を示す。(A)R73V/R84Aを含む再構成系において1α−ヒドロキシビタミンD3を基質として添加した系(B)R73V/R84Aを含む再構成系において25−ヒドロキシビタミンD3を基質として添加した系 図3は、R73V/R84Aを発現する放線菌を用いた25(OH)D3及び1α,25(OH)23の製造結果を示す。 図4は、Streptomyces griseolusのCYP105A1電子伝達系の概略図を示す。

Claims (6)

  1. 下記(a)のアミノ酸配列を有し、かつ下記()の活性を有するビタミンD水酸化酵素、フェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素を発現する放線菌の形質転換体を、ビタミンDの存在下で培養して、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを得ることを特徴とする、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法。
    (a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、
    73位のアルギニンがバリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、又はグルタミンに置換された、改変アミノ酸配列
    (b)0.2μM ビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM ビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.10%以上である
  2. 前記培養が、ビタミンD及び包摂化合物の存在下で実施される、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記包摂化合物が、シクロデキストリン、ゼオライト、フラーレン、クラウンエーテル又はカリックスアレーンである、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記改変アミノ酸配列が、73位のアルギニンがバリンに、及び84位のアルギニンがアラニン又はフェニルアラニンに置換された配列である、請求項1〜3のいずれか1項に 記載の製造方法。
  5. 前記ビタミンDが、ビタミンD2又はビタミンD3である、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記放線菌形質転換体が、放線菌を、放線菌Streptomyces griseolus由来のFDX1遺伝子及びStreptomyces coelicolor由来のFDR1遺伝子を前記ビタミンD水酸化酵素核酸の遺伝子の下流に連結したベクターを用いて形質転換したものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
JP2008150935A 2008-06-09 2008-06-09 1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法 Active JP5349846B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008150935A JP5349846B2 (ja) 2008-06-09 2008-06-09 1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008150935A JP5349846B2 (ja) 2008-06-09 2008-06-09 1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009291171A JP2009291171A (ja) 2009-12-17
JP5349846B2 true JP5349846B2 (ja) 2013-11-20

Family

ID=41539970

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008150935A Active JP5349846B2 (ja) 2008-06-09 2008-06-09 1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5349846B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5768341B2 (ja) * 2010-08-04 2015-08-26 東ソー株式会社 Fc結合性タンパク質の製造方法
JP6470534B2 (ja) * 2014-09-22 2019-02-13 富山県 1α,25−ジヒドロキシビタミンD2の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009291171A (ja) 2009-12-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
ES2424866T3 (es) Procedimiento para producir ácido glicólico por regeneración de coenzima
JP5429170B2 (ja) 2−オキソグルタル酸依存性酵素活性を有するタンパク質により触媒される反応の生成物を生産する細菌および該生成物の製造方法
EP2025759B1 (en) Method for production of glycolic acid by enhancing the synthesis of coenzyme
JP2015505471A (ja) 組換え微生物およびその使用方法
JPWO2003066863A1 (ja) α−置換−α,β−不飽和カルボニル化合物の還元酵素遺伝子
KR100511734B1 (ko) 광학활성화합물의제조방법
CN101978052A (zh) 具有乙二醛酶iii活性的多肽、编码所述多肽的多核苷酸及它们的用途
JP5646168B2 (ja) 多剤排出蛋白質欠損株由来の形質転換株およびそれらを用いた微生物変換方法
JP4775258B2 (ja) L−フクロースの製造方法およびl−フコースの製造方法
WO2003027301A1 (fr) Procede permettant de produire un alcool au moyen d'un micro-organisme
JPWO2010032698A6 (ja) 植物由来原料から乳酸を生産する方法及び乳酸生産細菌
JPWO2010032698A1 (ja) 植物由来原料から乳酸を生産する方法及び乳酸生産細菌
WO2018199112A1 (ja) 形質転換微生物及びその利用
JP5349846B2 (ja) 1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法
US8962287B2 (en) Scyllo-inositol-producing cell and scyllo-inositol production method using said cells
JP7473573B2 (ja) 新規ラクトナーゼ
JP5517118B2 (ja) 1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造方法
JP6470534B2 (ja) 1α,25−ジヒドロキシビタミンD2の製造方法
KR101555867B1 (ko) 3-하이드록시프로피온산을 분해하지 않는 슈도모나스 데니트리피칸스 결실 변이균주 및 이를 이용한 3-하이드록시프로피온산의 생산방법
JP6682274B2 (ja) ジヒドロキシナフタレンの製造方法
EP4206326A1 (en) Enzyme dehydroxylating hydroxyl group at 9-position of urolithin compound
WO2022210236A1 (ja) バニリン酸産生形質転換微生物及びその利用
EP4006163A1 (en) Enzyme capable of dehydroxylating hydroxyl group in urolithin compound
JP5954539B2 (ja) 1−ベンジル−4−ヒドロキシ−3−ピペリジンカルボン酸アルキルエステルの製造方法
WO2005054462A1 (ja) 耐熱性を有する2,6−ジヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼおよび2,6−ジヒドロキシ安息香酸の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110422

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130430

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20130701

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20130704

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130725

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130813

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130821

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5349846

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250