JP6470534B2 - 1α,25−ジヒドロキシビタミンD2の製造方法 - Google Patents

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本発明は、新規な1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法に関する。さらに本発明は、前記製造方法に用いる形質転換体および前記形質転換体において発現されるビタミンD水酸化酵素に関する。
1α,25−ジヒドロキシビタミンD2あるいは1α,25−ジヒドロキシビタミンD3は、くる病、骨粗鬆症、乾癬の治療薬として使われるとともに、近年、癌の治療薬としても注目を浴びている、きわめて有用性の高い物質である。しかし、有機合成法によりこれらを製造することは、極めて困難であった。
生物学的にビタミンD(ビタミンD2およびビタミンD3の総称とする)を水酸化する方法の一つとして、微生物変換による方法が知られている。本方法によれば、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる(特許文献1並びに非特許文献1及び2を参照)。しかし、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの生産性が悪いことから、本方法によって1α,25−ジヒドロキシビタミンDを工業的規模で効率よく生産することができなかった。
生物学的にビタミンDを水酸化する他の方法として、ビタミンDを水酸化するビタミンD水酸化酵素を用いる方法がある。ビタミンD水酸化酵素として、哺乳動物内で生理的に重要なものは4種類存在する:肝臓に存在するCYP27A1(25位水酸化酵素;非特許文献3及び4を参照)、腎臓に存在するCYP27B1(1α位水酸化酵素;非特許文献5及び6を参照)、腎臓に存在するCYP24A1(24位水酸化酵素;非特許文献7及び8を参照);及び、ミクロソーム型CYP2R1(25位水酸化酵素;非特許文献9及び10を参照)。
ビタミンDにCYP27B1及びCYP27A1若しくはCYP2R1を作用させることにより、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる。1α,25−ジヒドロキシビタミンDはCYP24A1により不活化される。CYP27B1、CYP27A1及びCYP24A1の3種は、ミトコンドリア型P450であり、いずれもミトコンドリア内膜に存在する。本発明者らは、近年、これらの哺乳動物由来のビタミンD水酸化酵素を、大腸菌又は酵母内で発現させ、構造と機能に関する研究を重ねてきた(非特許文献11を参照)。微生物由来のビタミンD水酸化酵素としては、25位水酸化活性を持つCYP105A2が知られている(非特許文献12を参照)。
しかし、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造する際には、1α位水酸化活性を有する酵素と25位水酸化活性を有する酵素の少なくとも2種を併用しなければならない。これに対して、本発明者らは、ビタミンD3の1α位及び25位をともに水酸化する活性を有する酵素である、放線菌由来のCYP105A1を取得することに成功した(非特許文献13を参照)。さらに、本発明者らは、CYP105A1の結晶を構造解析することによって活性中心を突き止め、CYP105A1のアミノ酸配列における73位のアルギニン及び84位のアルギニンをそれぞれアラニンに置換したCYP105A1変異体を作製した(非特許文献14)。該CYP105A1変異体は、野生型と比べて、1α位水酸化活性のkcat値[min−1]が約20倍、及び25位水酸化活性のkcat値が約200倍であった。
特公平4−64678号公報 特開2009−291171号公報 特開2013−165659号公報
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特許文献2に記載の方法は、25位水酸化活性を有し、かつ高度な1α位水酸化活性を有するビタミンD水酸化酵素を用いることで、効率よくビタミンD3から1α,25−ジヒドロキシビタミンD3を製造することができ、さらには、25位水酸化活性を有し、かつ高度な1α位水酸化活性を有するビタミンD水酸化酵素を発現する形質転換体を用いることで、工業的規模で大量にビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンD3を製造できる極めて有利な方法である。
しかし、より詳細に検討すると、特許文献2に記載の形質転換体では、ビタミンDについては、ビタミンDまたは25−ヒドロキシビタミンDからの1α,25−ジヒドロキシビタミンDの生成効率が低いことが判明した。1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、活性型ビタミンDと呼ばれている1α,25−ジヒドロキシビタミンDと同程度のVDR結合能を示すことが知られており、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを効率よくビタミンDまたは25−ヒドロキシビタミンDから製造することができる方法の提供が望まれている。
したがって、本発明は、従来の野生型酵素および特許文献2に記載の組み換え酵素を用いる方法と比べて、ビタミンDまたは25−ヒドロキシビタミンDから効率よく1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造し得る組み換え酵素、この組み換え酵素を発現する形質転換体、さらにこの形質転換体の存在下で、ビタミンDまたは25−ヒドロキシビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを工業的規模で大量に製造し得る方法を提供することを解決すべき課題(目的)とした。
本発明者らは種々検討したところ、CYP105A1のアミノ酸配列の239位のメチオニンを、アラニン等の特定のアミノ酸で置換した変異体(組み換え酵素)が、野生型のCYP105A1またはCYP105A1の73位及び/または84位のアルギニンをバリン等及び/またはアラニン等で置換した変異体と比べて、優れた1α位水酸化活性を有し、このビタミンD水酸化酵素変異体を発現する形質転換体を用いることにより、高効率でビタミンDまたは25−ヒドロキシビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することを見いだして本発明を完成させた。
本発明は、下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有するビタミンD水酸化酵素に関する。さらに本発明は、下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、かつ下記(e)の活性を有するビタミンD水酸化酵素に関する。さらに本発明は、前記ビタミンD水酸化酵素を発現する形質転換体に関する。さらに本発明は前記形質転換体を、25−ビタミンDの存在下で培養して、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを得ることを特徴とする、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法に関する。
(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、
239位のメチオニンがアラニン、セリン、グリシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、又はロイシンに置換された、改変アミノ酸配列
(b)前記(a)の改変アミノ酸配列において、73位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び/又は84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン、システイン、グルタミン、アスパラギン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換された、改変アミノ酸配列
(c)前記(a)または(b)の改変アミノ酸配列において、前記239位のメチオニン、73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに、1から9個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列
(d)前記(a)または(b)の改変アミノ酸配列と90%以上の同一性を有する、前記239位のメチオニンのアルギニンの置換、又は前記239位のメチオニン、73位のアルギニン及び/若しくは84位のアルギニンの置換を含むアミノ酸配列
(e)0.25μMのビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.30%以上である。
本発明のビタミンD水酸化酵素、形質転換体およびこの形質転換体を用いる製造方法の一態様は、前記(a)の改変アミノ酸配列が、239位のメチオニンがアラニン、セリン、またはグリシンに置換されたアミノ酸配列である。
本発明のビタミンD水酸化酵素、形質転換体およびこの形質転換体を用いる製造方法の一態様は、前記(b)の改変アミノ酸配列が、73位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン又はシステインに置換されたアミノ酸配列である。
本発明の形質転換体およびこの形質転換体を用いる製造方法の一態様は、前記形質転換体の宿主が、大腸菌又は放線菌である。
本発明の製造方法の一態様は、前記培養が、25−ビタミンD及び包摂化合物の存在下で実施される。
本発明の製造方法の一態様は、前記包摂化合物が、シクロデキストリン、ゼオライト、フラーレン、クラウンエーテル又はカリックスアレーンである。
本発明のビタミンD水酸化酵素、形質転換体およびこの形質転換体を用いる製造方法によれば、25−ヒドロキシビタミンDから、従来の方法に比べて高い効率で1α,25−ジヒドロキシビタミンDを生産することができる。特に本発明の製造方法では、精製酵素を用いずに形質転換体を用いることで、NADPHを加えることなく、25−ビタミンDから、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる。
さらに、本発明のビタミンD水酸化酵素、形質転換体およびこの形質転換体を用いる製造方法によれば、ビタミンDから25−ヒドロキシビタミンDを調製できる酵素またはこの酵素を発現できる形質転換体(例えば、非特許文献14、15、特許文献2、3に記載の組み換え酵素および形質転換体)を組み合わせることで、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる。
1α,25−ジヒドロキシビタミンDは活性型ビタミンDと呼ばれている1α,25−ジヒドロキシビタミンDと同程度のVDR結合能を示すことが知られていることから、本発明によって製造された1α,25−ジヒドロキシビタミンDにより、骨粗鬆症、くる病などのビタミンD代謝異常による諸症状、副甲状腺機能亢進症、乾癬などを治療するための新規な治療薬若しくは医薬中間体、又はこれらの症状を緩和するための食品添加物の生産及び開発がより容易になる。
CYP105A1の三重変異体(R73A/R84A/M239A)による25(OH)Dの代謝 HPLCクロマトグラム。 CYP105A1の二重変異体(R73A/R84A)による25(OH)Dの代謝 HPLCクロマトグラム。 CYP105A1変異体主要代謝物の順相HPLCクロマトグラム。 CYP105A1三重変異体代謝物(M1−b)のLC/MSスペクトル。 1α,25(OH)標品のLC/MSスペクトル。 CYP105A1主要代謝物(M1−a、M1−b)および活性型ビタミンDのVDR結合能比較結果。 R73A/R84A/M239A発現ロドコッカス菌体を用いた25(OH)Dの代謝 HPLCクロマトグラム。 Streptomyces griseolusのCYP105A1電子伝達系の概略図を示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(A)ビタミンD水酸化酵素
ビタミンD水酸化酵素として、改変アミノ酸配列(a)を有する25−ヒドロキシビタミンD水酸化酵素が挙げられる。改変アミノ酸配列(a)を有するビタミンD水酸化酵素は、239位のメチオニンを置換したアミノ酸の種類によって異なるが、0.25μMのビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.30%以上である活性を有する。上記条件での1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は、239位のメチオニンを置換したアミノ酸の種類によって異なるが、好ましくは1.0%以上である。
本明細書にいう「25−ヒドロキシビタミンD」は、天然型ビタミンであるビタミンDおよび人工的に作られたビタミンDの誘導体の25位が水酸化したヒドロキシビタミンD及びその誘導体が包含される。尚、本明細書において、1α,25−ジヒドロキシビタミンDは1α,25(OH)と表記することがあり、1α,25−ジヒドロキシビタミンDは1α,25(OH)と表記することがある。
改変アミノ酸配列(a)は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、239位のメチオニンがアラニン、セリン、グリシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、又はロイシンに置換された、アミノ酸配列である。25−ヒドロキシビタミンDに対する1α水酸化活性が高い、239位のメチオニンがアラニン、セリン、またはグリシンに置換された、アミノ酸配列であることが好ましい。239位のメチオニンを置換するアミノ酸はメチオニンより嵩の小さいアミノ酸であることで、置換前に比べて、25−ヒドロキシビタミンDに対する1α水酸化活性を高くすることができる。尚、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列は、Streptomyces griseolus由来のCYP105A1のアミノ酸配列である。上記ビタミンD水酸化酵素は、CYP105A1のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸の修飾が加わったCYP105A1変異体である。
本発明で用いる、239位のメチオニンがアラニンなどに置換されているアミノ酸配列を有する上記ビタミンD水酸化酵素は、実施例で示されている通り、25−ヒドロキシビタミンDを特異的に1α,25−ジヒドロキシビタミンDに水酸化する活性が強く、そのため、25−ヒドロキシビタミンDを1α,25−ジヒドロキシビタミンDに選択的に変換すると考えられる。
一般にビタミンDの水酸化は、ビタミンD→1α−ヒドロキシビタミンD→1α,25−ジヒドロキシビタミンDという過程と、ビタミンD→25−ヒドロキシビタミンD→1α,25−ジヒドロキシビタミンDという過程の二通りが想定される。本発明のビタミンD水酸化酵素を用いる方法は、後者のビタミンD→25−ヒドロキシビタミンD→1α,25−ジヒドロキシビタミンDという過程の2段階目を実現するものである。原料として25−ヒドロキシビタミンDを用いれば、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを調製することができ、また原料としてビタミンDを用いる場合には、ビタミンDを25−ヒドロキシビタミンDに水酸化できる酵素やそのような酵素を発現する菌体(例えば、非特許文献14、15や特許文献2、3に記載の形質転換体)と組み合わせれば、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを調製することもできる。ビタミンDを25−ヒドロキシビタミンDに水酸化できる酵素やそのような酵素を発現する菌体との組み合わせは、ワンポット(同時並行)で行っても、逐次行っても良い。
25−ビタミンD水酸化酵素の活性は、実施例に記載の方法により測定することができる。ただし、上記活性測定法では、上記ビタミンD水酸化酵素へ電子を供与する電子供与体として、ホウレン草由来のフェレドキシンおよびフェレドキシン還元酵素を用いているが、これらの代わりに、例えば、放線菌由来のフェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素、シュードモナスプチダ由来のプチダレドキシン及びプチダレドキシン還元酵素などを用いることもできる。さらに、上記活性測定法では、反応が進むにつれて消費されるNADPHを再生し反応を持続させるために、グルコース脱水素酵素およびグルコースを添加するが、NADPHを再生することができる系であればこれらに代えて使用することができる。上記測定法におけるカタラーゼは、反応の副産物として生じる過酸化水素を分解して反応を持続させるために、及びNADPHを再生させるために添加している。したがって、カタラーゼの添加は、NDAPH再生系の長時間反応を持続させることができる。
上記ビタミンD水酸化酵素による、25−ヒドロキシビタミンDの水酸化反応は、例えば、菌体を用いる方法を挙げることができ、実施例に記載の方法によりすることができる。菌体を用いる方法では、培養液の組成は限定されないが、増殖中の菌体培養液に直接基質を添加して培養を続ける方法(生菌体法)と、菌体を緩衝液に懸濁し、増殖させずにグルコースを添加して反応を進行させる方法(休止菌体法)がある。休止菌体法では、グルコースが菌体内に取り込まれるとNADPHが生成され、菌体内で25−ヒドロキシビタミンDの水酸化反応が進行する。酵素を用いる方法は、NADPHを反応系に加えなければならない、酵素が失活した場合は反応系に新たな酵素を追加しなければならない、精製酵素を使用することが望ましい、酵素の保存が困難であることから反応の都度新しい酵素を使用しなければならない、酵素が不安定であることから反応時間は長くても1時間程度である、酵素の製造コストが増大するために工業的規模での生産は困難である、などの特徴がある。それに対して、菌体を用いる方法は、NADPHを加えなくてもよい、25−ヒドロキシビタミンD水酸化反応と同時に触媒である菌体を増殖することができる(生菌体法)、増殖した菌体に対して精製などの処理を施さなくてもよい、菌体の保存が容易であることから菌体を繰り返し反応に使用できる、反応時間を100時間以上とることができる、通常用いられる培地を利用することにより安価に工業的規模で1α,25−ジヒドロキシビタミンD水酸化体を大量生産ができる、などの特徴があり、酵素を用いる方法と比較すると、25−ヒドロキシビタミンD水酸化反応を圧倒的に簡便かつ効率よく実施できる。反応終了後にクロロホルムあるいは酢酸エチル等の有機溶媒を添加し、抽出する。抽出物の分析は公知のビタミンD類の分析法に準じて行えばよく、逆相系あるいは順相系の高速液体クロマトグラフィーを用いて分析することができる。上記ビタミンD水酸化酵素による25−ビタミンDからの1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は、反応後の高速液体クロマトグラフィーによる分析結果を基に、反応液に加えた25−ヒドロキシビタミンDのモル数当たりの1α,25−ジヒドロキシビタミンDのモル数により求めることができる。
改変アミノ酸配列を取得する方法は、特に制限されるものではなく、物理化学的に合成してもよいし、後述する通りに生物学的に改変アミノ酸配列をコードする核酸から作成してもよいし、通常知られる手段を用いた各種スクリーニング法により取得してもよい。
ビタミンD水酸化酵素の第二の態様として、239位のメチオニンの置換を有する改変アミノ酸配列(a)において、73位のアルギニン及び/または84位のアルギニンの置換をしたアミノ酸配列で(改変アミノ酸配列(b))ある25−ビタミンD水酸化酵素を挙げることもできる。この25−ビタミンD水酸化酵素は、239位のメチオニンを置換したアミノ酸の種類並びに73位のアルギニン及び/または84位のアルギニンの置換をしたアミノ酸によって異なるが、0.25μMのビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.30%以上である活性を有す。上記条件での1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は、239位のメチオニンを置換したアミノ酸の種類並びに73位のアルギニン及び/または84位のアルギニンの置換をしたアミノ酸によって異なるが、好ましくは1.0%以上である。
改変アミノ酸配列(b)は、例えば、改変アミノ酸配列(a)において、73位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンに置換されており、かつ84位のアルギニンが非極性側鎖を有するアミノ酸、酸性側鎖を有するアミノ酸、又は電荷を持たない極性側鎖を有するアミノ酸に置換されていることが好ましく、73位のアルギニンがバリン、ロイシン又はイソロイシンに置換されており、かつ84位のアルギニンが非極性側鎖を有するアミノ酸が特に好ましい。非極性側鎖を有するアミノ酸とは、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン、システインなどが挙げられる。酸性側鎖を有するアミノ酸とは、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。電荷を持たない極性側鎖を有するアミノ酸とは、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシンなどが挙げられる。
改変アミノ酸配列(b)の具体例として、改変アミノ酸配列(a)において、73位のアルギニンがアラニン又はバリンに置換されており、かつ84位のアルギニンがアラニン又はフェニルアラニンに置換されているアミノ酸配列が挙げられ、特に、改変アミノ酸配列(a)において、73位のアルギニンがアラニンに置換されており、かつ84位のアルギニンがアラニンに置換されているアミノ酸配列が挙げられる。
ビタミンD水酸化酵素の第三の態様として、改変アミノ酸配列(a)において、239位のメチオニンの置換、改変アミノ酸配列(b)において、239位のメチオニンの置換、ならびに73位のアルギニン及び/または84位のアルギニンの置換に加えて、さらに、1から数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列を有し、あり、かつ0.25μMのビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.30%以上である活性を有する25−ビタミンD水酸化酵素を挙げることもできるが挙げられる。上記条件での1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は、好ましくは1.0%以上である。即ち、239位のメチオニンの置換、73位のアルギニンの置換、及び84位のアルギニンの置換に用いられるアミノ酸の種類、さらに、これらのアミノ酸以外の修飾は、前記変換率が1.0%以上になるように選択することが好ましい。
上記ビタミンD水酸化酵素の第三の態様においては、アミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列おける239位、73位のアルギニン及び/または84位のアルギニンがそれぞれ別のアミノ酸に置換されており、さらにこれら以外に1から数個のアミノ酸の欠失等の修飾を1以上有するアミノ酸配列を意味する。
上記ビタミンD水酸化酵素の第三の態様において、239位のメチオニン、73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに生じた修飾の個数は、0.25μMのビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.30%以上である活性を有するのであれば特に限定されないが、1から20個が好ましく、1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれかの数がより好ましい。
アミノ酸の修飾について、アミノ酸の欠失は配列中のアミノ酸残基の欠落もしくは消失を、アミノ酸の置換は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていることを、アミノ酸の逆位は隣り合う2以上のアミノ酸残基の位置が逆になっていることを、アミノ酸の付加はアミノ酸残基が付け加えられていることを、アミノ酸の挿入は配列中のアミノ酸残基の間に別のアミノ酸残基が挿し入れられていることをそれぞれ意味する。アミノ酸の修飾は、同じ修飾態様が1又は2以上生じる場合もあるし、異なる修飾態様が2以上生じる場合もある。
上記ビタミンD水酸化酵素の第四の態様として、例えば、改変アミノ酸配列(a)、(b)、(c)とのアミノ酸配列の同一性が高く、これら改変配列における239位のメチオニン、73位のアルギニン及び/または84位のアルギニンの置換を含むアミノ酸配列を有し、かつ0.25μMのビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.30%以上である活性を有するビタミンD水酸化酵素が挙げられる。上記条件での1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は、好ましくは1.0%以上である。
上記ビタミンD水酸化酵素の第四の態様において、同一性は、0.25μMのビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.30%以上である活性を有するのであれば特に制限されないが、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、より一層好ましくは98%以上、さらに一層好ましくは99%以上である。ただし、ビタミンD水酸化酵素の第三の態様のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列おける239位のメチオニン、73位のアルギニン及び/または84位のアルギニンが改変アミノ酸配列と同様に置換されている。
上記ビタミンD水酸化酵素の第二、第三および第四の態様の取得方法は、改変アミノ酸配列の取得方法と同様に、特に制限されるものではなく、物理化学的に合成してもよいし、後述する通りに生物学的に改変アミノ酸配列をコードする核酸から作成してもよいし、通常知られる手段を用いた各種スクリーニング法により取得してもよい。上記ビタミンD水酸化酵素は、その取得を容易にするなどのために、ヒスタグ(His-tag)やシグナルペプチド等をN末端側又はC末端側に適宜付加することができる。
上記ビタミンD水酸化酵素は、25−ヒドロキシビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造するために使用することができる。
(B)ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸は、例えば、改変アミノ酸配列(a)、(b)、(c)、(d)のいずれかをコードする核酸が挙げられる。ただし、改変アミノ酸配列(a)または(b)をコードする核酸の発現産物は、0.25μMのビタミンD水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンDと1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率は0.30%以上、好ましくは1.0%以上である活性を有することが好ましい。また、改変アミノ酸配列(c)または(d)をコードする核酸は、上記条件での1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が0.30%以上である活性を有するものであり、上記条件での1α,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換率が1.0%以上である活性を有するものが好ましい。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の具体例としては、例えば、配列表の配列番号2に記載の塩基配列を有する核酸が挙げられる。配列表の配列番号2に記載の核酸は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、239位のメチオニンがアラニンに置換されており、73位のアルギニンがアラニンに置換されており、かつ84位のアルギニンがアラニンに置換されているアミノ酸配列をコードする。改変アミノ酸配列(b)をコードする核酸の一例である。
上記核酸の取得方法は特に限定されない。例えば、上記核酸は、改変アミノ酸配列(a)、(b)、(c)、(d)のいずれかをコードする核酸、例えば、配列番号2に記載の塩基配列の情報に基づいて、CYP105A1遺伝子(配列表の配列番号3)から部位特異的変異誘発法によって得ることができ、サチュレーション変異法並びにモレキュラークローニング第2版及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。より詳しくは、上記核酸は、例えば、217〜219塩基付近の塩基配列を含むプライマーであって217〜219塩基が改変アミノ酸配列の73位のアミノ酸をコードする塩基に置換したプライマーと該プライマーに相補的なプライマーとの第一のプライマーセットを用いて、CYP105A1をコードする塩基配列を含む核酸をPCRによって増幅して第一のPCR産物を得る。次いで、250〜252塩基付近の塩基配列を含むプライマーであって250〜252塩基を改変アミノ酸配列の84位のアミノ酸をコードする塩基に置換したプライマーと該プライマーに相補的なプライマーとの第二のプライマーセットを用いて、第一のPCR産物を鋳型としてPCRによって増幅することにより、第二のPCR産物を取得する。さらに、715〜717塩基付近の塩基配列を含むプライマーであって715〜717塩基を改変アミノ酸配列の239位のアミノ酸をコードする塩基に置換したプライマーと該プライマーに相補的なプライマーとの第三のプライマーセットを用いて、第二のPCR産物を鋳型としてPCRによって増幅することにより、第三のPCR産物を取得する。ここで、第一のプライマーセットを使用するPCR、第二のプライマーセットを使用するPCR、第三のプライマーセットを使用するPCRの順序は適宜変更できる。ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の取得方法の具体例は実施例に記載する。
さらに上記核酸は、例えば、配列表の配列番号1に記載したアミノ酸配列、又は配列番号2に記載の塩基配列の情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いてStreptomyces griseolus由来の染色体DNAライブラリーをスクリーニングすることにより上記核酸を単離することができる。染色体DNAライブラリーは、CYP105A1を発現しているStreptomyces griseolus由来のCYP105A1遺伝子に、通常知られる方法によって変異を導入して作製することができる。
上記したプライマー及びプローブの調製、PCR、染色体DNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニングなどの操作は当業者に知られており、例えば、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。
さらに、上記核酸は、CYP105A1遺伝子(配列表の配列番号3)から、例えば、配列表の配列番号2に記載の塩基配列の情報に基づいて化学合成法により得ることができ、さらにCYP105A1遺伝子あるいはCYP105A1遺伝子に変異を導入した遺伝子に対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法や紫外線を照射する方法により突然変異を誘発するなどの当業者に通常知られる任意の方法で作製することができる。
(C)組換えベクター
上記核酸は適当なベクターに挿入して使用することができる。ベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製することが可能なベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、又は宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれ、ゲノムDNAと共に複製されるものであってもよい。好ましくは、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて上記核酸は、転写に必要な要素(例えば、プロモータ等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
自立的に複製することが可能なベクターの具体例としては、pkk223−3、pRSETA、pCR8、pBR322、pBluescriptII SK(+)、pUC18、pCR2.1、pIJ6021、SCP2、pHJL190、pHJL191、pIJ101、pIJ702 、pSKN01、pSK04、pLR591、pULJA30等のプラスミドベクターやλgt11、λZAP等のファージベクターが挙げられるが、大腸菌で発現させるには、pkk223−3、pUC19、pRSETA、pCR8、pBR322、pBluescriptII SK(+)、pUC18、およびpCR2.1が好ましく、枯草菌で発現させるにはpIJ6021、pIJ6021、SCP2、pHJL190、pHJL191、pIJ101、pIJ702 、pSKN01、pSK04、pLR591、pULJA30が好ましい。上記組換えベクターに用いられるベクターは、後述する形質転換体の宿主細胞と相性がよく、安定して上記ビタミンD水酸化酵素を発現することができるものであれば、特に制限されるものではない。なお、細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、大腸菌のlac、trp、tacプロモータ、放線菌のtipA、ermEプロモータなどが挙げられる。
上記組換えベクターは選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)又はシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、又はアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ヒグロマイシンなどの薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。
上記組換えベクターは、放線菌を形質転換する場合、活性上昇を目的として、例えば、放線菌Streptomyces griseolus由来のFDX1(Omer, C.A. et al, (1990), J Bacteriol., 172, 3335-3345)及びStreptomyces coelicolor由来のFDR1遺伝子(Chun YJ et al., (2007), J Biol Chem. 282, 17486-17500)を上記核酸の下流に連結することができるが、これらに限定されるものではなく、上記した電子伝達系に関与する酵素の遺伝子を用いてもよい。したがって、上記核酸はプロモータ、ターミネータ、エンハンサー、分泌シグナル配列、電子伝達系酵素遺伝子などと連結されて適切なベクターに挿入されるが、これらの方法は当業者に通常知られる方法である。
(D)形質転換体
上記核酸又は上記組換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。すなわち、形質転換体は、ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸を導入してなる、又はビタミンD水酸化酵素をコードする核酸が挿入された組換えベクターを含有する形質転換体である。
上記核酸を導入してなる形質転換体は、バクテリオファージなどによって、上記核酸を宿主細胞へ導入された、好ましくは、上記核酸が宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれた形質転換体である。
上記核酸又は組換えベクターが導入される宿主細胞は、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。細菌細胞の例としては、放線菌、枯草菌等のグラム陽性菌または大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられ、好ましくは放線菌又は大腸菌である。この中で、放線菌として好ましいのは、Streptomyces lividans TK23株であり、大腸菌として好ましいのはJM109株であるが、これらに限定されるものではない。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、カルシウムイオンを用いる方法等により行うことができる。哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞、CHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換するためには、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞を挙げることができる。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、通常知られる方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
(E)1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法
上記形質転換体を常法にしたがって適当な培地に接種し、NADPHなどの還元型補酵素を加えることなく、25−ヒドロキシビタミンDの存在下、好ましくは25−ヒドロキシビタミンD及び包摂化合物の存在下、より好ましくは25−ヒドロキシビタミンD、包摂化合物及びビタミンD水酸化酵素の発現を誘導する薬剤の存在下で培養することにより、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる。本発明の1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法は、反応系に菌体を用いる方法であるため、反応系にNADPHを加えずに実施することができ、ビタミンD水酸化反応と同時に触媒である菌体を増殖することができ(生菌体法)、増殖した菌体に対して精製などの処理を施さなくてもよく、菌体の保存が容易であることから菌体を繰り返し反応に使用でき、反応時間を例えば、100時間以上としても実施可能であり、並びに通常用いられる培地を利用することにより安価に工業的規模で大量生産ができることから、酵素を用いる方法と比較して、圧倒的に簡便かつ効率よく、25−ヒドロキシビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造できる。
25−ヒドロキシビタミンDとしては25−ヒドロキシビタミンD又は25−ヒドロキシビタミンD含有物(例えば、シイタケ抽出液や魚類肝臓抽出液の水酸化体含有物)を用いることができる。休止菌体を用いる場合、反応に使用する水性媒体としては水、緩衝液等が挙げられる。緩衝液としては酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、EDTA緩衝液等を用いることができる。
1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造において使用する包摂化合物は、シクロデキストリン、ゼオライト(Na12・Al12Si1248)、フラーレン(C60、C70等)、クラウンエーテル又はカリックスアレーンが好ましく、シクロデキストリンがより好ましく、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが特に好ましい。包摂化合物の濃度は、形質転換体がビタミンDを1α,25−ジヒドロキシビタミンDに変換することができる濃度であれば特に制限されないが、例えば、包摂化合物が2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである場合、終濃度は10〜3000mg/lが好ましく、100〜2000mg/mlがより好ましい。生菌体法及び休止菌体法のいずれの場合もビタミンDの濃度は、包摂化合物の濃度に比例して高めることができ、例えば、20〜2000mg/lに設定することができる。Streptomyces griseolusのCYP105A1の電子伝達系は図6で示した通りである。休止菌体法の場合、一般的にグルコースを含む緩衝液を用いて菌体内でNADPHを生産するが、菌体内にNADPHが生産され、電子伝達系が正常に機能するのであればよく、グルコース以外の化合物を使用することもできる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地としては、炭素源、窒素源、無機物、および必要に応じ使用菌株の必要とする微量栄養素を程よく含有するものであれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の炭素源としては、該形質転換体が資化しうる物であればよく、例えば、グルコース、マルトース、フラクトース、マンノース、トレハロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、デキストリン、糖蜜などの糖質、またはクエン酸、コハク酸などの有機酸、またはグリセリンや脂肪酸も使用することができる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の窒素源としては、各種有機および無機の窒素化合物、さらに培地は各種の無機塩を含むことができる。たとえば、コーンスティープリカー、大豆粕、あるいは各種ペプトン類等の有機窒素源、及び塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機窒素源などの化合物が使用可能である。また、グルタミン酸などのアミノ酸および尿素などの有機窒素源が炭素源にもなることはいうまでもない。さらに、ペプトン、ポリペプトン、バクトペプトン、バクトソイトン、オキソイドマルトエキス、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆粉、大豆粕、乾燥酵母、カザミノ酸、ソリュブルベジタブルプロテイン等の窒素含有天然物も窒素源として使用できる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の無機物としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、モリブデン塩、コバルト塩などが適宜用いられる。具体的には、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等が用いられる。上記形質転換体の培養に用いる栄養培地のタンパク質成分としては、例えば、NZ−caseやNZ−amineなどのカゼイン分解物が挙げられる。さらに、必要に応じて、アミノ酸ならびにビオチンおよびチアミンなどの微量栄養素ビタミンなども適宜用いられる。
培養法としては液体培養法(振とう培養法もしくは通気攪拌培養法)がよく、工業的には通気攪拌培養法が好ましい。培養温度とpHは、使用する形質転換体の増殖に適し、かつビタミンD水酸化酵素の活性が高くかつ安定した条件を選べばよい。たとえば、上記形質転換体が微生物の場合の培養は、通常、20〜40℃、好ましくは25〜35℃、より好ましくは30℃であり、pHは5〜9、好ましくは6〜8から選ばれる条件で好気的に行われる。培養時間は微生物が増殖し始める時間以上の時間であればよく、好ましくは8〜120時間であり、さらに好ましくは上記ビタミンD水酸化酵素が最大に生成している時間帯である。微生物の増殖を確認する方法は特に制限はないが、たとえば、培養物を採取して顕微鏡で観察してもよいし、吸光度で観察してもよい。また、培養液の溶存酸素濃度には特に制限はないが、通常は、0.5〜20ppmが好ましい。そのために、通気量を調節したり、撹拌したり、通気に酸素を追加したりすればよい。培養方式は、回分培養、流加培養、連続培養または灌流培養のいずれでもよい。
上記形質転換体の培養において、組換えベクターに選択マーカーを含有させている場合などでは、選択マーカーに対応した抗生物質を栄養培地とともに加える。たとえば、選択マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子を含有する場合は、適当な濃度に調製したカナマイシン溶液を加える。
上記形質転換体を培養した後、培養物(液体分と形質転換体や不溶成分等の固形分とが混合したもの)に上記ビタミンD水酸化酵素の発現を誘導する薬剤を加える。発現を誘導する薬剤とは、例えば、チオストレプトンやイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)などを用いる。
上記ビタミンD水酸化酵素は、上記形質転換体の細胞内に蓄積される。上記形質転換体を培養して得た培養物をビタミンD水酸化酵素の粗酵素として用いることができる。さらに、該培養物を遠心分離法、ろ過法等の操作によって固形分と培養上清に分離して得られた固形分をビタミンD水酸化酵素の粗酵素とすることもできる。さらに、上記固形分や固形分中の菌体を適当な担体に包括、吸着あるいは化学的に結合させた菌体固定化担体などを1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造に使用することができる。
製造された1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、例えば、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを溶解することができる溶媒を用いて回収することができるが、活性炭処理、イオン交換樹脂処理等の単離・精製手段を適宜組み合わせても回収することができる。具体例として、1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、培養液に2〜6倍容、好ましくは4倍容のクロロホルム−メタノール混合液を添加し、激しく攪拌することにより回収することができる。クロロホルム−メタノール混合液におけるクロロホルムとメタノールの混合比は、例えば、3:1に設定することができる。回収された1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、例えば、下記条件により高速液体クロマトグラフィーにより分析できる:カラム:YMC社製 YMC−Pack ODS−AM (内径4.6mm×長さ300mm);検出波長:265nm;流速:1.0ml/min;カラム温度:40C、溶出条件:水/アセトニトリル系;70−100% アセトニトリル直線濃度勾配(15分間)の後、100%アセトニトリル(25分間)。
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.CYP105A1三重変異体発現プラスミドの構築
CYP105A1二重変異体(R73A/R73A)を大腸菌内で発現させるためのプラスミド(pKSNdl−R73A/R73A)は、後述する参考文献(1)及びに記載した方法にしたがって構築した。三重変異体をコードする遺伝子は、pKSNdl−R73A/R73Aを鋳型に表1に示したプライマーを利用し作製した。それぞれの変異体作製に使用したプライマーの塩基配列を表1に示した。構築したプラスミドを大腸菌JM109株に導入した。発現系におけるベクターと大腸菌宿主については特に限定されるものではない。
2.組換え大腸菌の培養及び細胞質画分の調製
それぞれの変異体を発現する組換え大腸菌は50μg/mlアンピシリンを含むTB培地(非特許文献1)において37℃で培養し、菌体濃度(O.D.660nm) が0.5に達した時点でイソプロピル−チオーβ−D−ガラクトピラノシドを終濃度1mMになるまで、及びδ−アミノレブリン酸を終濃度5mMになるまで添加した。その後、40〜50時間13℃で培養し、遠心分離により菌体を回収し、超音波破砕装置を用いて菌体を破砕し、遠心分離により細胞質画分を調製 した。
3.変異体の定量
野生型および変異体の定量は吸収スペクトルを測定し417nmにおける吸光度を求め、モル分子吸光係数110mM-1cm-1を用いて算出した。
4.活性測定
活性は100mM Tris−HCl(pH7.4)、1mM EDTA緩衝液中で、以下のものを含む再構成系を用いて測定した。10μM 25―ヒドロキシビタミンD2(25(OH)D2);0.25μM シトクロムP450(二重変異体あるいは三重変異体を含む組換え大腸菌細胞質画分);0.1mg/ml ホウレン草由来フェレドキシン(Fdx)、0.1U/ml ホウレン草由来フェレドキシン還元酵素(Fdr)、1U/ml グルコース脱水素酵素;1% グルコース;0.1mg/ml カタラーゼ (活性測定条件A)。
反応は終濃度1mMになるまでNADPHを添加して30oCで反応を開始し、20〜120分反応させた。反応液の四倍容のクロロホルム:メタノール=3:1を添加し、激しく攪拌した後、代謝物を高速液体クロマトグラフィーにより分析 した。分析条件はHPLC分析条件Aに示したとおりである。
HPLC分析条件A
カラム:YMC社製 YMC−Pack ODS−AM (内径4.6mm×長さ300mm);検出波長:265nm;流速:1.0ml/min;カラム温度:40oC、溶出条件:水/アセトニトリル系;20−100% アセトニトリル直線濃度勾配(25分間)の後、100%アセトニトリル(10分間)
5.三重変異体(R73A/R84A/M239A)と二重変異体(R73A/R84A)との活性比較
三重変異体(R73A/R84A/M239A)および二重変異体(R73A/R84A)について、上記の活性測定法(活性測定条件A)により、反応0分、および120分間反応させ、得られた代謝物のHPLCクロマトグラムを図1aおよびbに示す。
三重変異体(R73A/R84A/M239A)では、二重変異体(R73A/R84A)の場合と異なり、多数の代謝物が確認された。両変異体ともに、検出時間25.0〜25.9分に主要代謝物と考えられるピークが検出された。1α,25(OH)標品は同条件で、検出時間25.2分にピークが検出された。
各変異体の主要代謝物(M1およびM2)を分取し、順相HPLCにより分析を行った。分析条件を下記のHPLC分析条件Bに示す。
HPLC分析条件B
カラム:Finepak SLL−5 (日本分光);検出波長:265nm;流速:1.0ml/min;カラム温度:40℃、溶出条件:ヘキサン/イソプロパノール;80:20
その結果、M1、M2ともに、検出時間12.2分のピーク(M1−a)と16.4分のピーク(M1−b)が検出された。1α,25(OH)標品は同条件で、検出時間16.4分にピークが検出された。M1−aとM1−bの面積値の比は三重変異体(R73A/R84A/M239A)と二重変異体(R73A/R84A)とで大きく異なり、M1−a:M1−bは、R73A/R84A/M239Aの場合 2.7:1、R73A/R84Aの場合91:1となった。
M1−bのピークを分取し、LC−MS分析を行った。得られた結果を1α,25(OH)標品と比較したところ、図3aおよびbに示すとおり、両者は同じマススペクトルパターンを示した。
M1−a、M1−bのピークを分取し、ビタミンDレセプター(VDR)結合能を測定した。VDR結合能は、EnBio RCAS for VDRキット(コスモバイオ社製)を用いた。図4に代謝物M1−a、M1−bもしくは活性型ビタミンD(1α,25(OH))各濃度におけるVDR結合能を示した。縦軸の値は、活性型ビタミンD 100nM存在下における値を1.0とした場合の結合能を示す。
M1−aは、VDR結合能が非常に弱かったのに対し、M1−bは活性型ビタミンDと呼ばれている1α,25(OH)と同程度のVDR結合能を示した。1α,25(OH)は1α,25(OH)とほぼ同程度のVDR結合能を持つことが知られている。
以上、図1〜4に示す結果から、M1−bは1α,25(OH)であると推定される。
二重変異体(R73A/R84A)では1α,25(OH)(M1−b)はほとんど生成されなかったことから、239番目のMetをAlaにすることによって、25(OH)Dに対して1α位水酸化活性が著しく上昇したと考えられる。
6.各変異体の活性測定比較
各変異体を用いて、活性測定条件Aにて反応を行った。反応20分後の代謝物を前述の方法により逆相HPLCにアプライし、M1(M1−aとM1−bの混合物)を分取後、さらに順相HPLC分析を行うことによって、M1−aとM1−bの面積値を算出した。得られた面積値から、M1中におけるM1−b(1α,25(OH))の割合を算出した(表2)。また、20分後の1α,25(OH)への変換率と1分あたりの酵素活性(代謝回転数)を表2に示した。
これらの結果から、Met239をAla、Gly、Serのようなかさの小さいアミノ酸へ変えることによって、1α位水酸化に対する部位特異性が上昇すると考えられる。Met239をAlaへ置換された変異体では、酵素当たりの1α,25(OH)変換活性が、Met239の場合の20倍以上高く、25(OH)Dから1α,25(OH)をより効率よく生成することがわかった。
7.CYP105A1変異体の放線菌内での発現
三重変異体R73A/R84A/M239Aを放線菌内で発現させ、組換え菌体を用いて、25(OH)Dの1α位水酸化体を製造することを試みた。大腸菌発現用のプラスミドであるpKSNdl−R73A/R73A/M239AのNdeI−HindIII断片を切り出すことによって、CYP105A1変異体およびその下流にフェレドキシン(FDX1)遺伝子を含む断片を得た。得られた断片を、NdeI−HindIII処理を行ったロドコッカス属放線菌用プラスミドpTipQT2ベクター(後述参考文献(2)) に連結した(pTipQT2−R73A/R73A/M239A)。得られたプラスミドをロドコッカス・エリスロポリス JCM3201株に導入した。形質転換の方法は以下のとおりである。
コンピテントセルセルを次のとおり作製した。100mLのLB培地にて30℃、200rpmでロドコッカス・エリスロポリス JCM3201株を培養し、菌体濃度(O.D.600nm)が0.6−0.8程度になるまで培養し、得られた菌体懸濁液を遠心した。上清を除去した後、100mLの15%グリセロール溶液に懸濁、さらに遠心し、同じ操作を2回繰り返した。遠心後に得られた菌体を4mLの15%グリセロール溶液で懸濁することによりコンピテントセルを得た。得られたコンピテントセル100μLに、プラスミド0.3−1μgを添加し、遺伝子導入装置ジーンパルサーIIを用いて、1.95kV 200オーム 25μFDにて電気パルスを与えた。回復培養液としてISP−1培地(0.5% trypton、0.3% yeast Extract、0.2% MgSO4・7H2O)を1mL加え、30℃で2−4時間培養した。その後、遠心して得られた菌体を10μg/mLテトラサイクリン含有ISP−2寒天培地(0.4% yeast extract、1% malto extract、0.4% glucose、2% Agar)に塗布、30℃で3日間培養し、得られたコロニーを用いて以下の実験を行った。
尚、発現系におけるベクターと宿主については特に限定されるものではない。
8.CYP105A1変異体発現放線菌を用いた1α,25(OH) の製造
pTipQT2−R73A/R84A/M239Aをロドコッカス・エリスロポリス JCM3201株に導入、生えてきたコロニーを10 μg/mLテトラサイクリン含有LB培地植菌し、30℃で24時間培養した。得られた培養液を同濃度のテトラサイクリンを含むLB培地に初期菌体濃度(O.D.600nm) が0.05になるように添加し、菌体濃度(O.D.600nm)が0.6−0.8になるまで30℃で培養した。その後、終濃度が1μg/mLになるようにチオストレプトンを添加し、30℃で24時間誘導した。その後、菌体懸濁液に、25―ヒドロキシビタミンD2(25(OH)D2)(終濃度 50μM)および3−ヒドロキシプロピル−β-シクロデキストリン(終濃度 0.2%)を添加し、200μLずつ96穴ディープウェルに移して0−24時間反応させた。反応させた培養液にそれぞれ800μLのクロロホルム:メタノール=3:1混合液を加え、激しく攪拌した後、クロロホルム層を回収、減圧乾固し、アセトニトリルに溶解した。この溶液を逆相HPLCにより分析条件Aで分析した。基質添加6時間後の菌体懸濁液から得られた代謝物のHPLCクロマトグラムを図5に示す。
図1の大腸菌発現酵素液を用いた場合と同様に代謝物が検出され、M1が変換率26.6%で検出された。上述したとおり、M1のうち、33%が1α,25(OH)であることから、生成された1α,25(OH)量は4.4μM(1.8mg/L)と算出される。R73A/R84A/M239Aを発現させたロドコッカス菌体を用いて、簡便に1α,25(OH)を生成されることが明らかになった。
参考文献
(1) Sugimoto, H.et al., (2008), Biochemistry 47, 4017-4027
(2) Nakashima, et al., (2004), Applied and Environmental Microbiology 70, 5557-5567
本発明の1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法によれば、精製酵素を用いず、NADPHを加えることなく、高効率に、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを生産することができる。1α,25−ジヒドロキシビタミンDはカルシウムの吸収促進や代謝促進、細胞分化誘導、免疫調節作用などの多岐にわたる生理作用を有し、骨粗鬆症、くる病などのビタミンD代謝異常による諸症状、副甲状腺機能亢進症、乾癬などを治療するための治療薬若しくは医薬中間体、又はこれらの症状を緩和するための食品添加物として使用される。骨粗鬆症の患者数は予備軍を含めると国内で約2000万人、乾癬の患者数は世界で約1億2500万人いると言われている。したがって、本発明によれば簡易かつ高効率に上記症状を治療又は緩和させる1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができることから、本発明は医薬分野及び食品分野に多大な貢献をすることができる。

Claims (8)

  1. 下記(a)若しくは(b)のアミノ酸配列からなるか、または下記(c)若しくは(d)のアミノ酸配列からなり、かつ下記(e)の活性を有するビタミンD2水酸化酵素。
    (a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、
    239位のメチオニンがアラニン、セリン、グリシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、又はロイシンに置換された、改変アミノ酸配列
    (b)前記(a)の改変アミノ酸配列において、73位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び/又は84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、又はグルタミンに置換された、改変アミノ酸配列
    (c)前記(a)または(b)の改変アミノ酸配列において、(a)に記載の239位のメチオニンのアラニン、セリン、グリシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、又はロイシンへの置換、(b)に記載の73位のアルギニンのアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンへの置換及び(b)に記載の84位のアルギニンのアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、又はグルタミンへの置換に加えて、1から9個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列
    (d)前記(a)または(b)の改変アミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、かつ(a)に記載の239位のメチオニンのアラニンへの置換、又は(a)に記載の239位のメチオニンのアラニンへの置換、(b)に記載の73位のアルギニンのアラニンへの置換及び/若しくは(b)に記載の84位のアルギニンのアラニンへの置換を含むアミノ酸配列
    (e)0.25μMのビタミンD2水酸化酵素の存在下で、10μM 25−ヒドロキシビタミンD2と1mM NADPHとを30℃、20分間反応させた場合の1α,25−ジヒドロキシビタミンD2への変換率は0.30%以上である。
  2. 前記(a)の改変アミノ酸配列が、239位のメチオニンがアラニン、セリン、又はグリシンに置換された配列である、請求項1に記載の酵素。
  3. 前記(b)の改変アミノ酸配列が、73位のアルギニンがバリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、又はフェニルアラニンに置換された配列である、請求項1または2に記載の酵素。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のビタミンD2水酸化酵素を発現する形質転換体。
  5. 前記形質転換体の宿主が、大腸菌又は放線菌である、請求項4に記載の形質転換体。
  6. 請求項4または5に記載の形質転換体を、25−ヒドロキシビタミンD2の存在下で培養して、1α,25−ジヒドロキシビタミンD2を調製することを含む、1α,25−ジヒドロキシビタミンD2の製造方法。
  7. 前記培養が、25−ヒドロキシビタミンD2及び包摂化合物の存在下で実施される、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記包摂化合物が、シクロデキストリン、ゼオライト、フラーレン、クラウンエーテル又はカリックスアレーンである、請求項7に記載の製造方法。
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