JP5517118B2 - 1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造方法に関する。
ビタミンD水酸化体およびその誘導体は、くる病、骨粗鬆症、乾癬の治療薬として使われている。さらにこれらの化合物は、近年、癌の治療薬としても注目を浴びており、きわめて有用性の高い物質である。しかし、所望のビタミンD水酸化体を得るために、有機合成法により位置特異的および立体特異的にビタミンDを水酸化することは、極めて困難であった。
生物学的にビタミンDを水酸化する方法の一つとして、微生物変換による方法が知られている。本方法によれば、ビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造することができる(特許文献1並びに非特許文献1及び2を参照)。しかし、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの生産性が悪いことから、本方法によって1α,25−ジヒドロキシビタミンDを工業的規模で効率よく生産することができなかった。
生物学的にビタミンDを水酸化する他の方法として、ビタミンDを水酸化するビタミンD水酸化酵素を用いる酵素変換による方法がある。ビタミンD水酸化酵素として、哺乳動物内で生理的に重要なものは4種類存在する:肝臓に存在するCYP27A1(25位水酸化酵素;非特許文献3及び4を参照)、腎臓に存在するCYP27B1(1α位水酸化酵素;非特許文献5及び6を参照)、腎臓に存在するCYP24A1(24位水酸化酵素;非特許文献7及び8を参照);及び、ミクロソーム型CYP2R1(25位水酸化酵素;非特許文献9及び10を参照)。
本発明者らは、近年、これらの哺乳動物由来のビタミンD水酸化酵素を、大腸菌又は酵母内で発現させ、構造と機能に関する研究を重ねてきた(非特許文献11及び12を参照)。さらに本発明者らは、ビタミンDの1α位及び25位をともに水酸化する活性を有する酵素である、放線菌由来のCYP105A1を取得することに成功した(非特許文献13及び14を参照)。本発明者らは、25位水酸化活性を有し、かつ高度な1α位水酸化活性を有するビタミンD水酸化酵素を正常に発現する形質転換体を用いた1α,25−ジヒドロキシビタミンDの製造方法について特許出願した(特願2008−150935号)。
1α,25−ジヒドロキシビタミンD3をさらに水酸化した、1、25、26−トリヒドロキシビタミンD3は、ビタミンD受容体(VDR)に対する結合能を保持しながらもカルシウム作用が弱いこと(非特許文献15及び16を参照)、及び癌細胞の増殖を抑制する作用が強いこと(非特許文献17を参照)が知られている。
特許出願公告平4−64678号公報
Sasaki, J., Mikami, A., Mizoue, K., and Omura, S., (1991), Appl Environ Microbiol. 57, 2841-2846 Sasaki, J., Miyazaki, A., Saito, M., Adachi, T., Mizoue, K., Hanada, K., and Omura, S., (1992), Appl Microbiol Biotechnol. 38, 152-157 Usui E, Noshiro M, Okuda K, (1990), FEBS Lett., 262, 135-138 Sawada N, Sakaki T, Ohta M, et al, (2000), Biochem Biophys Res Commun 273: 977-984 Takeyama, K., Kitanaka, S., Sato, T., Kobori, M., Yanagisawa, J., and Kato, S., (1997), Science 277, 1827-1830 Sakaki T, Sawada N, Takeyama K, et al., (1999), Eur J Biochem, 259: 731-738 Ohyama Y, Noshiro M, Okuda K., (1991), FEBS Lett. 1991 278, 195-198 Akiyoshi-Shibata M, Sakaki T, Ohyama Y, Noshiro M, Okuda K,Yabusaki Y., (1994), Eur J Biochem. , 224(2):335-343 Cheng, J. B., Levine, M. A., Bell, N. H., Mangelsdorf, D. J., and Russell, D. W., (2004), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101, 7711-7715 Shinkyo R, Sakaki, T, Kamakura M, Ohta, M., Inouye, K., (2004), Biochem Biophys Res Commun 324: 451-457 Sakaki, T., Kagawa, N., Yamamoto, K., and Inouye, K., (2005), Frontiesr in Bioscience 10, 119-134 (2005) Kawauchi, H., Sasaki, J., Adachi, T., Hanada, K., Beppu, T., and Horinouchi, S., (1994), Biochim Biophys Acta. 1219, 179-183 Sawada, N., Sakaki, T., Yoneda, S., Kusudo, T., Shinkyo, R., Ohta, M., and Inouye, K., (2004), Biochem Biophys Res Commun. 320, 156-164 林恵子, 杉本宏, 新京楽, 山田雅人, 生城真一, 鎌倉昌樹, 城宜嗣, 榊利之, (2007), 放線菌学会要旨集、P-23 Tanaka Y, Schnones HK, Smith CM, DeLuka HF., (1981), Arch. Biochem. Biophys. 210, 104-109 Zhou LX, Nemere I, Norman AW., (1992), J Bone Miner Res. 7, 457-463. Richard J. Frampton et al., (1983), Cancer Research, 43, 4443-4447
上記の通り、ビタミンDを1α,25−ジヒドロキシビタミンDへと変換する反応を触媒するビタミンD水酸化酵素があり、該ビタミンD水酸化酵素を発現する形質転換体を用いてビタミンDから1α,25−ジヒドロキシビタミンDを製造する試みは成功している。
しかし、ビタミンDを1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDへと変換する反応を触媒する酵素及びこのような酵素を発現する微生物の存在はこれまでに知られておらず、酵素変換又は微生物変換によってビタミンDから1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを製造する方法もまた知られていない。
そこで、本発明は、酵素変換又は微生物変換により、ビタミンDから1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを製造する方法を提供することを、発明が解決しようとする課題とした。
本発明者らは、鋭意研究を積み重ねた結果、ビタミンD水酸化酵素を構成する配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における73位及び84位のアルギニンを所定のアミノ酸に置換した変異体又は該変異体を発現する形質転換体を用いることにより、ビタミンDから1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを製造することに成功し、本発明を完成させた。
したがって、本発明によれば、ビタミンD及びビタミンD水酸化体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む基質溶液に、下記(a)〜(c)のいずれか1種のアミノ酸配列を有し、かつ下記(d)の活性を有するビタミンD水酸化酵素を作用させて、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを主成分として含む1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD分離物を得ることを特徴とする、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造方法が提供される。
(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、
73位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン、システイン、グルタミン、アスパラギン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換された、改変アミノ酸配列
(b)前記改変アミノ酸配列において、前記73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに、1から9個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列
(c)前記改変アミノ酸配列と70%以上の相同性を有する、前記73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換を含むアミノ酸配列
(d)0.2μM ビタミンD水酸化酵素を、0.1mg/ml フェレドキシン、0.1U/ml フェレドキシン還元酵素、1U/ml グルコース脱水素酵素、1% グルコース、0.1mg/ml カタラーゼ及び1mM NADPHを含む100mM Tris−HCl(pH7.4)−1mM EDTA緩衝液中の10μM 1α,25−ジヒドロキシビタミンD3に、30℃、30分間作用させた場合の1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3への変換率は0.1%以上である
好ましくは、前記1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD分離物が、クロロホルム−メタノール混合液に溶解された後、下記条件のHPLCに供して、リテンションタイム5.5〜5.9分の溶出分画に含まれる化合物として得られる。
カラム:ODSカラム;
検出波長:265nm;
流速:1.0ml/min;
カラム温度:40℃;
溶出条件:70%(v/v)アセトニトリル水溶液からアセトニトリルまでのアセトニトリル直線濃度勾配(15分間)
好ましくは、前記ビタミンD水酸化酵素が、形質転換体内で発現するビタミンD水酸化酵素である。
好ましくは、前記形質転換体の宿主が、大腸菌又は放線菌である。
好ましくは、前記基質溶液が、電子供与体及び該電子供与体を還元するための酵素をさらに含む。
好ましくは、前記電子供与体及び前記電子供与体を還元するための酵素が、それぞれ、フェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素、又はプチダレドキシン及びプチダレドキシン還元酵素である。
好ましくは、前記改変アミノ酸配列が、
73位のアルギニンがバリン、ロイシン又はイソロイシンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン又はシステインに置換された配列である。
好ましくは、前記ビタミンDがビタミンD2又はビタミンD3であり、かつ前記ビタミンD水酸化体がビタミンD2水酸化体又はビタミンD3水酸化体である。
好ましくは、前記ビタミンD水酸化体が、1α,25−ジヒドロキシビタミンDである。
好ましくは、前記ビタミンD水酸化体が、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3である。
好ましくは、前記基質溶液が、包摂化合物をさらに含む。
好ましくは、前記包摂化合物が、シクロデキストリン、ゼオライト、フラーレン、クラウンエーテル又はカリックスアレーンである。
本発明の製造方法によれば、酵素変換又は微生物変換によって、ビタミンDから1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを製造することができる。微生物変換による方法は、酵素を精製する工程を要しないという点において、酵素変換による方法と比べて有利である。さらに、微生物変換に用いる微生物がフェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素を発現する場合は、これらのタンパク質を加えることを要しないため、この点においても、酵素変換による方法と比べて有利である。ただし、酵素変換による方法は、ビタミンD水酸化酵素、フェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素が得られれば、微生物変換による方法に比べて、微生物制御固有のパラメーター(溶存酸素、炭素源濃度など)を設定する必要がなく、より短時間で反応を終了させることができるという有利な点を有する。
本発明の製造方法によって製造された1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを用いることによって、骨粗鬆症、くる病などのビタミンD代謝異常による諸症状だけでなく、癌や乾癬などを治療するための副作用の小さい新規な治療薬若しくは医薬中間体、又はこれらの症状を緩和するための食品添加物の生産及び開発が可能となる。
R73V/R84A発現放線菌培養24時間後のビタミンD3代謝物のHPLC分析結果を示した図である。 代謝物M3の質量分析結果を示した図である。 基質添加後の3種の代謝物:25(OH)D3、1α,25(OH)23、及び1α,25,26(OH)33の経時変化を示した図である。 CYP105A1変異体R73V/R84Aによる1α,25(OH)23代謝物のHPLC分析結果を示した図である。
以下、本発明の詳細について説明する。
(A)ビタミンD水酸化酵素
本発明の製造方法において使用するビタミンD水酸化酵素は、改変アミノ酸配列を有し、かつ該ビタミンD水酸化酵素 0.2μMを、0.1mg/ml フェレドキシン、0.1U/ml フェレドキシン還元酵素、1U/ml グルコース脱水素酵素、1% グルコース、0.1mg/ml カタラーゼ及び1mM NADPHを含む100mM Tris−HCl(pH7.4)−1mM EDTA緩衝液中の10μM 1α,25−ジヒドロキシビタミンD3に、30℃、30分間作用させた場合の1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3への変換率は0.1%以上である活性(以下、この活性を「ビタミンD水酸化活性」とよぶ)を有する。ビタミンD水酸化酵素は、ビタミンD水酸化活性を有する限り、改変アミノ酸配列そのものであってもよく、または改変アミノ酸配列を一部として含むものであってもよい。
本明細書にいう「ビタミンD」には、天然型ビタミンであるビタミンD2、D3、D4、D5、D6及びD7だけでなく、人工的に作られたこれらの誘導体が包含される。したがって、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDには、1α位、25位及び26位が水酸化されたビタミンD2、D3、D4、D5、D6及びD7、並びにこれらの誘導体が包含される。
改変アミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、73位のアルギニンおよび84位のアルギニンがそれぞれ別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列である。配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列は、Streptomyces griseolus由来のCYP105A1のアミノ酸配列である。すなわち、上記ビタミンD水酸化酵素は、CYP105A1のアミノ酸配列において2以上のアミノ酸の修飾が加わったCYP105A1変異体である。
改変アミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、73位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンに置換されており、かつ84位のアルギニンが非極性側鎖を有するアミノ酸、酸性側鎖を有するアミノ酸、又は電荷を持たない極性側鎖を有するアミノ酸に置換されたものである。改変アミノ酸配列の好ましい態様は、73位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンに置換されており、かつ84位のアルギニンが非極性側鎖を有するアミノ酸に置換されたものである。
非極性側鎖を有するアミノ酸とは、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン、システインなどが挙げられる。酸性側鎖を有するアミノ酸とは、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。電荷を持たない極性側鎖を有するアミノ酸とは、例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシンなどが挙げられる。
改変アミノ酸配列の具体例として、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、73位のアルギニンがアラニン又はバリンに置換されており、かつ84位のアルギニンがアラニン又はフェニルアラニンに置換されているアミノ酸配列が挙げられる。これらの改変アミノ酸配列の一部は、配列表の配列番号5及び6に記載されている。
ビタミンD水酸化酵素は、例えば、改変アミノ酸配列において、73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに、1から数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列を有してもよい。この場合、タミンD水酸化酵素のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列おける73位のアルギニン及び84位のアルギニンがそれぞれ別のアミノ酸に置換されており、さらにこれら以外に1から数個のアミノ酸の欠失等の修飾を1個以上有する。
ビタミンD水酸化酵素において、73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに生じた修飾の個数は、ビタミンD水酸化活性を有するのであれば特に限定されないが、1から20個が好ましく、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個がより好ましい。
アミノ酸の修飾について、アミノ酸の欠失は配列中のアミノ酸残基の欠落もしくは消失を、アミノ酸の置換は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていることを、アミノ酸の逆位は隣り合う2個以上のアミノ酸残基の位置が逆になっていることを、アミノ酸の付加はアミノ酸残基が付け加えられていることを、アミノ酸の挿入は配列中のアミノ酸残基の間に別のアミノ酸残基が挿し入れられていることをそれぞれ意味する。アミノ酸の修飾は、同じ修飾態様が1個又は2個以上生じる場合もあるし、異なる修飾態様がそれぞれ2個以上生じる場合もある。
ビタミンD水酸化酵素は、例えば、改変アミノ酸配列との相同性(アミノ酸配列の同一性)が高く、改変アミノ酸配列における73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換を含むアミノ酸配列を有し、かつビタミンD水酸化活性を有するビタミンD水酸化酵素であってもよい。この場合、改変アミノ酸配列との相同性は、ビタミンD水酸化活性を示すタンパク質を構成するものであれば特に制限されないが、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。ただし、この場合のビタミンD水酸化酵素のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列おける73位のアルギニン及び84位のアルギニンが改変アミノ酸配列と同様に置換されている。
ビタミンD水酸化酵素の水酸化活性は、該ビタミンD水酸化酵素 0.2μMを、0.1mg/ml フェレドキシン、0.1U/ml フェレドキシン還元酵素、1U/ml グルコース脱水素酵素、1% グルコース、0.1mg/ml カタラーゼ及び1mM NADPHを含む100mM Tris−HCl(pH7.4)−1mM EDTA緩衝液中の10μM 1α,25−ジヒドロキシビタミンD3に、30℃、30分間作用させた場合の1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3への変換率が0.1%以上であればよく、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは1.5%以上である。実施例において実証されているように、ビタミンD水酸化酵素の水酸化活性における上記変換率は、特に好ましくは2.0%以上である。
(B)ビタミンD水酸化酵素の取得方法
ビタミンD水酸化酵素は、特に制限されるものではなく、物理化学的に合成してもよいし、改変アミノ酸配列をコードする核酸に基づいて生物学的に作製してもよいし、通常知られる手段を用いた各種スクリーニング法により取得してもよい。ビタミンD水酸化酵素は、その取得を容易にするなどのために、ヒスタグ(His-tag)やシグナルペプチド等をN末端側又はC末端側に適宜付加することができる。ビタミンD水酸化酵素の取得方法の一つの態様として、改変アミノ酸配列をコードする核酸に基づいて生物学的にビタミンD水酸化酵素を作製する方法について説明する。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸は、例えば、改変アミノ酸配列をコードする核酸;改変アミノ酸配列において、73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに、1から数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配列をコードする核酸;並びに、改変アミノ酸配列との相同性が高く、改変配列における73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換を含むアミノ酸配列をコードする核酸などが挙げられる。ただし、いずれの核酸であっても、発現産物であるビタミンD水酸化酵素は、ビタミンD水酸化活性を有する。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の取得方法は特に限定されない。例えば、配列番号2又は3に記載の塩基配列の情報に基づいて、CYP105A1遺伝子(配列表の配列番号1)から部位特異的変異誘発法によって得ることができる。より詳細には、以下の方法により、ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸を取得できる。
217〜219塩基付近の塩基配列を含むプライマーであって217〜219塩基が改変アミノ酸配列の73位のアミノ酸をコードする塩基に置換したプライマーと該プライマーに相補的なプライマーとの第一のプライマーセットを用いて、CYP105A1をコードする塩基配列を含む核酸をPCRによって増幅して第一のPCR産物を得る。次いで、250〜252塩基付近の塩基配列を含むプライマーであって250〜252塩基を改変アミノ酸配列の84位のアミノ酸をコードする塩基に置換したプライマーと該プライマーに相補的なプライマーとの第二のプライマーセットを用いて、第二のPCR産物をPCRによって増幅することにより、ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸を取得することができる。ここで、第一のプライマーセットと第二のプライマーセットとの使用の順序は逆であってもかまわない。ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の取得方法の具体例は実施例に記載されている。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸は、例えば、配列表の配列番号1に記載したアミノ酸配列、又は配列番号2若しくは3に記載の塩基配列の情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いてStreptomyces griseolus由来の染色体DNAライブラリーをスクリーニングすることにより単離することもできる。染色体DNAライブラリーは、CYP105A1を発現しているStreptomyces griseolus由来のCYP105A1遺伝子に、通常知られる方法によって変異を導入して作製することができる。
上記したプライマー及びプローブの調製、PCR、染色体DNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニングなどの操作は当業者に知られており、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と呼ぶ)、又はCurrent Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと呼ぶ)等に記載の方法に準じて実施することができる。
さらに、ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸は、CYP105A1遺伝子(配列表の配列番号4)から、配列表の配列番号2又は3に記載の塩基配列の情報に基づいて化学合成法により得ることができ、さらにCYP105A1遺伝子に対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法や紫外線を照射する方法により突然変異を誘発するなどの当業者に通常知られる任意の方法で作製することができる。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸を適当なベクターに挿入して組換えベクターを得て、次いで該組換えベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を得て、次いで該形質転換体をビタミンD水酸化酵素が発現する条件下で培養することにより、ビタミンD水酸化体を得ることができる。
ベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製することが可能なベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、又は宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれ、ゲノムDNAと共に複製されるものであってもよい。好ましくは、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいてビタミンD水酸化酵素をコードする核酸は、転写に必要な要素(例えば、プロモータ等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主細胞の種類に応じて適宜選択することができる。
自立的に複製することが可能なベクターの具体例としては、pkk223−3、pRSETA、pCR8、pBR322、pBluescriptII SK(+)、pUC18、pCR2.1、pIJ6021、SCP2、pHJL190、pHJL191、pIJ101、pIJ702 、pSKN01、pSK04、pLR591、pULJA30等のプラスミドベクターやλgt11、λZAP等のファージベクターが挙げられるが、大腸菌で発現させるには、pkk223−3、pUC19、pRSETA、pCR8、pBR322、pBluescriptII SK(+)、pUC18、およびpCR2.1が好ましく、枯草菌で発現させるにはpIJ6021、pIJ6021、SCP2、pHJL190、pHJL191、pIJ101、pIJ702 、pSKN01、pSK04、pLR591、pULJA30が好ましい。細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、大腸菌のlac、trp、tacプロモータ、放線菌のtipA、ermEプロモータなどが挙げられる。
ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸が組み込まれた組換えベクター(以下、単に「組換えベクター」とよぶ)は、選択マーカーを含有してもいてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)又はシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、又はアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ヒグロマイシンなどの薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。
組換えベクターは、宿主細胞である放線菌を形質転換する場合、形質転換体内で発現するビタミンD水酸化酵素を活性化するために、例えば、電子供与体および電子供与体還元酵素のそれぞれをコードする遺伝子である、放線菌Streptomyces griseolus由来のFDX1遺伝子(Omer, C.A. et al, (1990), J Bacteriol., 172, 3335-3345)及びStreptomyces coelicolor由来のFDR1遺伝子(Chun YJ et al., (2007), J Biol Chem. 282, 17486-17500)をビタミンD水酸化酵素をコードする核酸の周辺、好ましくは下流に連結してあってもよい。FDX1遺伝子およびFDR1遺伝子以外にも、種々の電子供与体および電子供与体還元酵素のそれぞれをコードする遺伝子を用いることができる。したがって、ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸は、プロモータ、ターミネータ、エンハンサー、分泌シグナル配列、電子伝達系酵素遺伝子などと機能的に連結されてベクターに挿入される。組換えベクターの作製は、モレキュラークローニング第2版やカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーの記載を参照するなどして、当業者に通常知られる方法で実施される。
組換えベクターを宿主細胞に導入して、形質転換体を作製することができる。このようにして作製された形質転換体は、ビタミンD水酸化酵素をコードする核酸が挿入された組換えベクターを含有する形質転換体である。
組換えベクターが導入される宿主細胞は、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。細菌細胞の例としては、放線菌、枯草菌等のグラム陽性菌または大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられ、好ましくは放線菌又は大腸菌である。この中で、放線菌として好ましいのは、Streptomyces lividans TK23株であり、大腸菌として好ましいのはJM109株であるが、これらに限定されるものではない。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、カルシウムイオンを用いる方法等により行うことができる。哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞、CHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換するためには、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞を挙げることができる。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、通常知られる方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
ビタミンD水酸化酵素は、ビタミンD水酸化酵素を発現する形質転換体を、ビタミンD水酸化酵素が発現する条件下で培養した後の、培養物及び/又は培養上清から得られる。ビタミンD水酸化酵素が形質転換体の細胞外に生成蓄積される場合は、例えば、通常知られる手段によって細胞を除いた後に培養上清を粗酵素として用いることができる。ビタミンD水酸化酵素が形質転換体の細胞内に生成蓄積される場合は、例えば、培養して得られた培養物を固液分離操作によって細胞と培養上清に分離し、得られた細胞を破砕したものを、粗酵素として用いることができる。固液分離には、通常知られる方法を制限なく利用することができ、例えば、培養物そのものをそのまま遠心分離する方法、培養物に濾過助剤を加えることや濾過助剤をプレコートしたプレコートフィルターなどにより濾過分離する方法、平膜、中空糸膜などを用いる膜濾過分離する方法などが採用される。細胞の破砕は、通常知られる方法を制限なく利用することができ、例えば、有機溶剤やリゾチームなどの酵素によって細胞を溶解する方法、超音波破砕法、凍結融解法、フレンチプレス法、ガラスビーズ破砕法、ダイノミル破砕法などを採用することができる。細胞破砕物を固液分離して得た分離液を、粗酵素として用いることもできる。さらに、固液分離した細胞は、破砕することなく、そのまま粗酵素として用いられ得る。
ビタミンD水酸化酵素の粗酵素は、そのままで使用することもできるが、精製して使用することもできる。例えば、ここに挙げるものに限定されるものではないが、得られた粗酵素を、熱処理の如く耐熱性の差を利用する方法、透析、限外ろ過、レジンカラム、ゲルろ過、ゲルろ過クロマトグラフィー及びSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の如く分子量の差を利用する方法、塩沈澱、硫安沈殿、アルコール沈殿及びその他の溶媒沈澱の如く溶解性の差を利用する方法、DEAE−トヨパール樹脂などを用いるイオン交換クロマトグラフィーの如く電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーの如く特異的親和性を利用する方法、ブチルトヨパール樹脂などを用いる疎水クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーの如く疎水性の差を利用する方法、吸着クロマトグラフィーの如く物理化学的な吸着性の差を利用する方法、等電点電気泳動及び等電点クロマトグラフィーなどの如く等電点の差を利用する方法などの通常知られる方法を単独または組み合わせて供することにより、工業用途の精製酵素を調製できる。
得られたビタミンD水酸化酵素の粗酵素及び精製酵素は、固定化することもできる。例えば、イオン交換体への結合法、樹脂及び膜などとの共有結合・吸着法、高分子物質を用いた包括法などを採用することができる。
(C)ビタミンD水酸化酵素によるビタミンDから1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDへの水酸化
ビタミンD水酸化酵素は、下記式の通りに、ビタミンD3から1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3へ水酸化する触媒作用を有する。
Figure 0005517118
化1で示した通り、ビタミンD水酸化酵素による水酸化は、ビタミンD3→1α−ヒドロキシビタミンD3→1α,25−ジヒドロキシビタミンD3→1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3という過程と、ビタミンD3→25−ヒドロキシビタミンD3→1α,25−ジヒドロキシビタミンD3→1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3という過程の二通りが想定される。ただし、73位のアルギニンがバリンに置換されており、かつ84位のアルギニンがアラニン又はフェニルアラニンに置換されているアミノ酸配列を有するビタミンD水酸化酵素は、活性の強さが25位水酸化活性>1α位水酸化活性であるので、ビタミンD3→25−ヒドロキシビタミンD3→1α,25−ジヒドロキシビタミンD3という過程を経由して、ビタミンD3を1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3へ変換すると考えられる。
ビタミンD水酸化酵素の活性は、後述する実施例に記載の方法により測定する。実施例に記載のビタミンD水酸化酵素の活性測定法では、ビタミンD水酸化酵素へ電子を供与する電子供与体及び該電子供与体を還元するための酵素として、ホウレン草由来のフェレドキシンおよびフェレドキシン還元酵素を用いる。例えば、放線菌由来のフェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素、シュードモナスプチダ由来のプチダレドキシン及びプチダレドキシン還元酵素などもまた、ビタミンD水酸化酵素へ電子を供与する電子供与体となり得る。さらに、上記測定法では、反応の持続を意図して、反応が進むにつれて消費されるNADPHを再生するために、グルコース脱水素酵素およびグルコースを添加する。上記測定法におけるカタラーゼは、反応の持続を意図して、反応の副産物として生じる過酸化水素を分解し、及びNADPHを再生させるために添加している。したがって、カタラーゼの添加は、NDAPH再生系の長時間反応を持続させることができる。ビタミンD水酸化酵素によるビタミンDからの1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの変換率は、反応後の高速液体クロマトグラフィーによる分析結果を基に、反応液に加えたビタミンDのモル数当たりの1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDのモル数により求めることができる。
ビタミンD水酸化酵素によるビタミンDの水酸化は、例えば、ビタミンD水酸化酵素を含む粗酵素やビタミンD水酸化酵素を主成分とする精製酵素を用いて生化学的にビタミンDを水酸化する酵素変換による方法によって実施できる。また、ビタミンD水酸化酵素によるビタミンDの水酸化は、例えば、菌体を用いる微生物変換による方法として実施できる。微生物変換による方法では、培養液の組成は限定されないが、増殖中の菌体培養液に直接基質を添加して培養を続ける方法(生菌体法)と、菌体を緩衝液に懸濁し、増殖させずにグルコースを添加して反応を進行させる方法(休止菌体法)がある。休止菌体法では、グルコースが菌体内に取り込まれるとNADPHが生成され、菌体内でビタミンDの水酸化反応が進行する。
(D)酵素変換による1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造方法
ビタミンD、ビタミンD水酸化体又はビタミンD及びビタミンD水酸化体を含む基質溶液に、粗酵素又は精製酵素としてのビタミンD水酸化酵素を作用させて、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを主成分として含む1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD分離物を得ることにより、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを製造することができる。
1α,25、26−トリヒドロキシビタミンD分離物は、例えば、1α,25、26−トリヒドロキシビタミンDを溶媒に溶解した後、各種クロマトグラフィー、イオン交換樹脂処理などの分離・精製手段を単独または適宜組み合わせて得ることができる。具体的には、1α,25、26−トリヒドロキシビタミンD分離物は、培養液に2〜6倍容、好ましくは4倍容のクロロホルム−メタノール混合液を添加し、激しく攪拌することにより回収した後、下記条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供して、リテンションタイム5.5〜5.9分の溶出画分として得られる。カラム:ODSカラム、好ましくはYMC社製 YMC−Pack ODS−AM (内径4.6mm×長さ300mm);検出波長:265nm;流速:1.0ml/min;カラム温度:40℃、溶出条件:水/アセトニトリル系;70−100% アセトニトリル直線濃度勾配(15分間)の後、100%アセトニトリル(25分間)。クロロホルム−メタノール混合液に溶解させた1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、上記条件のHPLCに供すことにより、リテンションタイム9.3〜9.8分の溶出画分として得られる。したがって、上記条件のHPLCでは、1α,25、26−トリヒドロキシビタミンD分離物のリテンションタイムと1α,25−ジヒドロキシビタミンDのリテンションタイムとの間に3.4分の間隔があり、さらに1α,25、26−トリヒドロキシビタミンD分離物を含む溶出画分のテーリングの影響も小さいことから、上記条件のHPLCによって、1α,25、26−トリヒドロキシビタミンD分離物は、1α,25−ジヒドロキシビタミンDを実質的に排除して分離することができる。クロロホルム−メタノール混合液におけるクロロホルム:メタノールの混合比は、例えば、3:1に設定することができる。1α,25、26−トリヒドロキシビタミンD分離物は、1α,25、26−トリヒドロキシビタミンDを95w/v%以上含んでおり、1α,25−ジヒドロキシビタミンDが1w/v%以下であるものが好ましい。
基質溶液に含めるビタミンDは、ビタミンDそのものを用いてもよいし、ビタミンD含有物(例えば、シイタケ抽出液や魚類肝臓抽出液)を用いてもよい。基質溶液に含めるビタミンDとして好ましいのはビタミンD3であり、これらを用いた場合に製造されるのは1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3である。
ビタミンD水酸化体としては、上記ビタミンDを水酸化したものであれば特に制限されないが、例えば、1α−ヒドロキシビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD、1α,25−ジヒドロキシビタミンDなどが挙げられ、好ましくは1α,25−ジヒドロキシビタミンD、より好ましくは1α,25−ジヒドロキシビタミンD3である。
基質溶液には、ビタミンD水酸化酵素へ電子を供与する電子供与体及び電子供与体を還元するための酵素を含めることが好ましい。電子供与体及び電子供与体を還元するための酵素は、それぞれ、例えば、ホウレン草由来のフェレドキシンおよびフェレドキシン還元酵素、放線菌由来のフェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素、シュードモナスプチダ由来のプチダレドキシン及びプチダレドキシン還元酵素などを用いることができ、好ましくはホウレン草由来のフェレドキシンおよびフェレドキシン還元酵素を用いる。さらに、基質溶液には、NADPH、グルコース脱水素酵素、グルコース、カタラーゼなどを含めることがより好ましい。
ビタミンD水酸化酵素の使用量は特に制限はないが、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの収率及び経済性の観点から、基質1gに対して、好ましくは0.1から50単位であり、より好ましくは0.5から20単位であり、さらに好ましくは0.8から5単位が好適である。基質量は、例えば、0.01μM〜100mM、好ましくは0.1μM〜100μMの間に設定することができる。電子供与体及び電子供与体を還元するための酵素の濃度は、ビタミンD水酸化酵素の活性が維持できる濃度であれば特に制限されないが、例えば、それぞれ0.1μg/ml〜100mg/ml及び0.001U/ml〜100U/mlの範囲の濃度を挙げることができるが、これらに限定されない。基質溶液に含めるNADPH、グルコース脱水素酵素、グルコース、カタラーゼなどの濃度は、ビタミンD水酸化活性の際に用いるこれらの濃度を参照して、当業者により適宜選択可能である。
基質溶液の調製に用いる水性媒体としては、ビタミンD水酸化酵素による酵素触媒反応を妨げるものでなければ特に制限されないが、例えば、水、緩衝液などが挙げられる。緩衝液としては、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などが採用され、好ましくはトリス塩酸緩衝液、より好ましくはTris−HCl(pH7.4)、EDTA緩衝液である。
前記反応はビタミンD水酸化酵素の水酸化活性がみられる温度で実施すれば特に制限はなく、例えば、20〜40℃が好ましく、25〜35℃がより好ましい。pHはビタミンD水酸化酵素の最適条件下で行うことが好ましく、例えば、6.0〜8.0で行うのが適当である。上記条件で十分な1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD生成が見られた時点で反応を終了するが、反応は通常数十分〜数十時間、好ましくは20分〜10時間程度で終了する。1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの生成率は、酵素反応液の基質濃度、反応条件などによって異なる。
(E)微生物変換による1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造方法
上記形質転換体を常法にしたがって適当な培地に接種し、NADPHなどの還元型補酵素を加えることなく、ビタミンD及び/又はビタミンD水酸化体の存在下、好ましくはビタミンD及び/又はビタミンD水酸化体並びに包摂化合物の存在下、より好ましくはビタミンD及び/又はビタミンD水酸化体、包摂化合物並びにビタミンD水酸化酵素の発現を誘導する薬剤の存在下で培養することにより、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを製造することができる。微生物変換による1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造方法は、以下の特徴がある:NADPHを加えなくてもよい、ビタミンD水酸化反応と同時に触媒である菌体を増殖することができる(生菌体法)、増殖した菌体に対して精製などの処理を施さなくてもよい、菌体の保存が容易であることから菌体を繰り返し反応に使用できる、反応時間を100時間以上とることができる、通常用いられる培地を利用することにより安価に工業的規模で大量生産ができる。
休止菌体を用いる場合、反応に使用する水性媒体としては水、緩衝液等が挙げられる。緩衝液としては酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、EDTA緩衝液等を用いることができる。
1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造において使用する包摂化合物は、シクロデキストリン、ゼオライト(Na12・Al12Si1248)、フラーレン(C60、C70等)、クラウンエーテル又はカリックスアレーンが好ましく、シクロデキストリンがより好ましく、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが特に好ましい。包摂化合物の濃度は、形質転換体がビタミンDを1α,25−ジヒドロキシビタミンDに変換することができる濃度であれば特に制限されないが、例えば、包摂化合物が2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである場合、終濃度は10〜3000mg/lが好ましく、100〜2000mg/mlがより好ましい。生菌体法及び休止菌体法のいずれの場合もビタミンDの濃度は、包摂化合物の濃度に比例して高めることができ、例えば、20〜2000mg/lに設定することができる。休止菌体法の場合、一般的にグルコースを含む緩衝液を用いて菌体内でNADPHを生産するが、菌体内にNADPHが生産され、電子伝達系が正常に機能するのであればよく、グルコース以外の化合物を使用することもできる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地としては、炭素源、窒素源、無機物、および必要に応じ使用菌株の必要とする微量栄養素を程よく含有するものであれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の炭素源としては、該形質転換体が資化しうる物であればよく、例えば、グルコース、マルトース、フラクトース、マンノース、トレハロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、デキストリン、糖蜜などの糖質、またはクエン酸、コハク酸などの有機酸、またはグリセリンや脂肪酸も使用することができる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の窒素源としては、各種有機および無機の窒素化合物、さらに培地は各種の無機塩を含むことができる。たとえば、コーンスティープリカー、大豆粕、あるいは各種ペプトン類等の有機窒素源、及び塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等の無機窒素源などの化合物が使用可能である。また、グルタミン酸などのアミノ酸および尿素などの有機窒素源が炭素源にもなることはいうまでもない。さらに、ペプトン、ポリペプトン、バクトペプトン、バクトソイトン、オキソイドマルトエキス、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆粉、大豆粕、乾燥酵母、カザミノ酸、ソリュブルベジタブルプロテイン等の窒素含有天然物も窒素源として使用できる。
上記形質転換体の培養に用いる栄養培地の無機物としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、モリブデン塩、コバルト塩などが適宜用いられる。具体的には、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等が用いられる。上記形質転換体の培養に用いる栄養培地のタンパク質成分としては、例えば、NZ−caseやNZ−amineなどのカゼイン分解物が挙げられる。さらに、必要に応じて、アミノ酸ならびにビオチンおよびチアミンなどの微量栄養素ビタミンなども適宜用いられる。
培養法としては液体培養法(振とう培養法もしくは通気攪拌培養法)がよく、工業的には通気攪拌培養法が好ましい。培養温度とpHは、使用する形質転換体の増殖に適し、かつビタミンD水酸化酵素の活性が高くかつ安定した条件を選べばよい。たとえば、上記形質転換体が微生物の場合の培養は、通常、20〜40℃、好ましくは25〜35℃、より好ましくは30℃であり、pHは5〜9、好ましくは6〜8から選ばれる条件で好気的に行われる。培養時間は微生物が増殖し始める時間以上であればよく、好ましくは8〜150時間であり、さらに好ましくは上記ビタミンD水酸化酵素が最大に生成している時間帯である。培養時には、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDが生成していることを、培養上清をHPLCで分析するなどしてモニタリングすることが好ましい。ビタミンDを基質とする培養において、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの生成量が最大に達する時間は、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの生成量が最大に達する時間の後に見られる(図3を参照)。図3を参照すると、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを得るための培養時間は、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの生成量が最大に達する時間の後24時間以上あることが好ましい。
微生物の増殖を確認する方法は特に制限はないが、たとえば、培養物を採取して顕微鏡で観察してもよいし、吸光度で観察してもよい。また、培養液の溶存酸素濃度には特に制限はないが、通常は、0.5〜20ppmが好ましい。そのために、通気量を調節したり、撹拌したり、通気に酸素を追加したりすればよい。培養方式は、回分培養、流加培養、連続培養または灌流培養のいずれでもよい。
上記形質転換体の培養において、組換えベクターに選択マーカーを含有させている場合などでは、選択マーカーに対応した抗生物質を栄養培地とともに加える。たとえば、選択マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子を含有する場合は、適当な濃度に調製したカナマイシン溶液を加える。
上記形質転換体を培養した後、培養物(液体分と形質転換体や不溶成分等の固形分とが混合したもの)に上記ビタミンD水酸化酵素の発現を誘導する薬剤を加える。発現を誘導する薬剤とは、例えば、チオストレプトンやイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)などを用いる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
1.CYP105A1変異体発現プラスミドの構築
野生型CYP105A1を大腸菌内で発現させるためのプラスミドは非特許文献12及び13に記載した方法にしたがって構築した。変異体をコードする遺伝子は変異体作成キットQuick ChangeTM(ストラタジェン社)を使用し、それぞれの変異体に応じてプライマーDNA(20mer程度)を用いた。プライマーの塩基配列を配列表の配列番号7〜24に示した(表1を参照)。構築したプラスミドを大腸菌JM109株に導入した。発現系におけるベクターと大腸菌宿主については特に限定されるものではない。
Figure 0005517118
2.組換え大腸菌の培養及び細胞質画分の調製
それぞれの変異体を発現する組換え大腸菌は50μg/mlアンピシリンを含むTB培地(Sugimoto, H.et al., (2008), Biochemistry 47, 4017-4027)において37℃で培養し、菌体濃度(O.D.660nm)が0.5に達した時点でイソプロピル−チオーβ−D−ガラクトピラノシドを終濃度1mMになるまで、及びδ−アミノレブリン酸を終濃度0.5mMになるまで添加した。その後、40〜50時間25℃で培養し、遠心分離により菌体を回収し、超音波破砕装置を用いて菌体を破砕し、遠心分離により細胞質画分を調製した。
3.変異体の定量
野生型および変異体の定量は吸収スペクトルを測定し417nmにおける吸光度を求め、モル分子吸光係数110mM-1cm-1を用いて算出した。変異体の種類により発現量に違いが見られたが、培養液1Lあたりの発現量は1〜5μmolであった。
4.CYP105A1変異体の放線菌内での発現
変異体R73V/R84Aを放線菌内で発現させ、組換え菌体を用いてビタミンD水酸化体を製造することを試みた。CYP105A1遺伝子の下流にはフェレドキシン(FDX1)遺伝子を含んでいるが、フェレドキシン還元酵素遺伝子を含んでいないため、既存の放線菌内発現ベクターpIJ6021のクローニング部位にStreptomyces coelicolor A3株由来のFDR1遺伝子を挿入し、その上流にR73V/R84A+FDX1遺伝子を連結することを試みた。
CYP105A1+FDX1+FDR1遺伝子の取得は以下の方法で行なった。クローニングしやすいようにCYP105A1+FDX1のN末端にHindIII部位を、C末端にPstI部位を付加した配列表の配列番号25及び26に記載のプライマー(表2の105A1 N−HindIII、105A1 C−PstI)を設計し、pkk223−3にクローニングされているCYP105A1+FDX1を鋳型として増幅した。またFDR1遺伝子はN末端にPstI部位を、C末端にEcoRI部位を付加した配列表の配列番号27及び28に記載のプライマー(表4 FDR1 N−PstI、FDR1 C−EcoRI)を用いてStreptomyces coelicolor A3(非特許文献2を参照)よりPCRで取得し、PstI部位で両者を連結してCYP105A1+FDX1+FDR1遺伝子を取得し、pUC19ベクターに結合した。
Figure 0005517118
PCRはKOD plus(東洋紡社製)を使用し、94℃で15秒間、61℃で30秒間、68℃で1分30秒間からなる反応工程を1サイクルとして30サイクル行なった後、68℃で7分間反応させる条件で行なった。さらに放線菌の制限修飾系を避けるためにメチル化欠損株大腸菌SCS110株を形質転換してプラスミドを構築した。前記した通り、pUC19のHindII、EcoRIサイトにいったんクローニングし、そこからHindII−EcoRI断片を切り出してpIJ6021のHindIII、EcoRIサイトに連結した。次に、CYP105A1+FDX1+FDR1遺伝子を含むDNA断片を放線菌用ベクターpIJ6021のHindIII、EcoRIサイトに連結し、Practical Streptomyces Genetics(ISBN 0−7084−0623−8)に記載の方法を用いてStreptomyces lividans TK23株のプロトプラストに導入し、R5再生培地に塗布した。16時間後に、カナマイシン(最終濃度10μg/mL)を含む軟寒天培地を重層した後、30℃で3日間培養し、カナマイシン耐性株を取得した。
5.組換え放線菌の培養
1% soluble starch、0.5% glucose、0.3% NZ−case、0.2% Difco yeast extract、0.5% Difco Bacto−peptone、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4・7H2O、0.3% CaCO3よりなる培地(滅菌前pH 7.0)を10mLずつ100mL容の試験管に分注し、121℃、20分間滅菌した。この培地にBennett’s寒天培地(0.1% Difco yeast extract、0.1% Meat extract、0.2% NZ−amine、1% maltose、2% agar)に生育させた形質転換体をかき取って接種し、30℃で2日間振盪培養し、種培養液とした。本培養は3種類の培地のいずれかを用いて行なった:(1)種培養液と同様の組成の培地;(2)1.5% glucose、1.5% Difco bacto Soytone、0.5% Corn steep liquor、0.5% NaCl、0.2% CaCO3よりなる培地(滅菌前のpH 7.0);(3)YEME培地(0.3% Difco yeast extract、0.5% Difco Bacto−peptone、0.3% oxoid malt extract、1% glucose、34% sucrose、5mM MgCl2・6H2O。これらの培地をK型フラスコ(500mL容)に100mLずつ分注し、121℃で20分間滅菌し、種培養液をそれぞれ1%接種し、30℃、200回転/分で培養した。
6.R73V/R84Aを発現する放線菌を用いたビタミンD 3 の変換と各代謝物の経時変化
変異体R73V/R84A+FDX1+FDR1遺伝子をpIJ6021ベクターに連結し、放線菌Streptomyces lividans TK23株に組込んだ形質転換体を前記(2)の培地を用いて24時間培養した後、100ml培養液中にチオストレプトンを1mg添加し、さらに24時間培養を続けた後、0.2g/mLの2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン水溶液を1ml添加し、また、4mg/mLのビタミンD3エタノール溶液を0.5ml添加し、96時間培養を続けた。次に、培養液に2倍容のクロロホルム:メタノール=3:1を添加し、激しく攪拌した後、クロロホルム層を回収し、減圧乾固し、アセトニトリルに溶解した。培養24時間後の代謝物をHPLC分析(条件:カラム:YMC社製 YMC−Pack ODS−AM (内径4.6mm×長さ300mm);検出波長:265nm;流速:1.0ml/min;カラム温度:40℃、溶出条件:水/アセトニトリル系;70−100% アセトニトリル直線濃度勾配(15分間)の後、100%アセトニトリル(25分間))した結果を図1に示す。RT5.7min付近に見られたピークを代謝物M3由来のピークとした。
7.代謝物M3の構造の推定
代謝物M3の構造を決定するために、LC−MS分析とNMR分析を行った。LC−MSについてはFinnigan LCQ ADVANTAGE MIX (ThermoFisher SCIENTIFIC,Waltham,MA,USA)を用い、APCI法、positive modeで行った。LC条件は以下のとおりである。カラム;ODS(2mm×150mm,Develosil ODS−HG−3,Nomura Chemical Co.Ltd.,Aichi,Japan);移動相,アセトニトリル:メタノール:水=3:4:3;流速,0.2mL/min;UV検出,265nm.
図2にLC−MS分析の結果を示す。分子イオンピーク(M+H)はm/z=433であり、代謝物M3の分子量は432であることがわかった。1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(1α,25(OH)23)の分子量416と比較すると、16マス大きいことがわかった。すなわち、M3は1α,25(OH)23にさらに水酸基が付加した構造であることが示唆された。
次に、1H−NMRを行い、1α,25(OH)23のチャートと比較した。その結果、1α,25(OH)23では、1.2ppmに、26位、27位のCH3基帰属のシングルピークが6H存在したのに対し、M3で同じ位置のピークが消滅していたことから、M3は1α,25(OH)23の26位(27位)に水酸基が付加した構造、すなわち1α,25,26(OH)33であると推定した。
基質添加後の各代謝物の経時変化を図3に示す。25(OH)D3は24時間における濃度が7.8mg/L(変換率39%)と最高値を示し、48時間において減少し(変換率23%)それ以降、濃度はほとんど変化しなかった。一方、1α,25(OH)23は72時間まで増え続け、96時間では若干減少した。1α,25,26(OH)33については96時間まで直線的に増加した。96時間後の濃度は、25(OH)D3が4.7mg/L(変換率24%)、1α,25(OH)23は3.0mg/L(変換率15%)、1α,25,26(OH)33は2.0mg/L(変換率10%)であった。
8.1α,25−ジヒドロキシビタミンD 3 水酸化活性測定
活性は100mM Tris−HCl(pH7.4)、1mM EDTA緩衝液中で、以下のものを含む再構成系を用いて1α,25−ジヒドロキシビタミンD3に対する活性を測定した。基質:1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(終濃度0.5〜10μM);0.2μM シトクロムP450(CYP105変異体を含む組み換え大腸菌細胞質画分);0.1mg/ml ホウレン草由来フェレドキシン(Fdx)、0.1U/ml ホウレン草由来フェレドキシン還元酵素(Fdr)、1U/ml グルコース脱水素酵素;1% グルコース;0.1mg/ml カタラーゼ。
反応は終濃度1mMになるまでNADPHを添加して30℃で反応を開始し、30℃で10〜60分反応させ、反応液の四倍容のクロロホルム:メタノール=3:1を添加し、激しく攪拌した後、代謝物を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。条件は以下のとおりである:カラム:YMC社製 YMC−Pack ODS−AM (内径4.6mm×長さ300mm);検出波長:265nm;流速:1.0ml/min;カラム温度:40℃、溶出条件:水/アセトニトリル系;70−100% アセトニトリル直線濃度勾配(15分間)の後、100%アセトニトリル(25分間)
その結果、CYP105A1変異体R73V/R84A及びR73A/R84Aにおいて1α,25,26(OH)33と考えられる代謝物が検出された。図4は、上記の条件のもと、基質1α,25−ジヒドロキシビタミンD3濃度10μMで30分反応させた後、代謝物をHPLCで分析した結果であり、変換率は2.5%であった。したがって、R73V/R84Aを発現する組み換え放線菌において見られた1α,25,26(OH)33はR73V/R84Aによって生産されたと考えられ、CYP105A1変異体は図5に示すような経路でビタミンD3を1α,25,26(OH)33に変換することがわかった。
1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDは、1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比べて、カルシウム作用が弱く、かつ癌細胞の増殖を抑制する作用が強いことから、副作用の少ない、癌や乾癬などの治療及び/又は予防のための医薬の有効成分としての利用が期待できる。

Claims (12)

  1. ビタミンD及びビタミンD水酸化体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む基質溶液に、下記(a)〜()のいずれか1種のアミノ酸配列を有し、かつ下記(d)の活性を有するビタミンD水酸化酵素を作用させて、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDを主成分として含む1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD分離物を得ることを特徴とする、1α,25,26−トリヒドロキシビタミンDの製造方法。
    (a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、
    73位のアルギニンがアラニン、バリン又はロイシンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、又はグルタミンに置換された、改変アミノ酸配列
    (b)前記改変アミノ酸配列において、前記73位のアルギニン及び84位のアルギニンの置換の他さらに、1から9個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の修飾を有するアミノ酸配
    (d)0.2μM ビタミンD水酸化酵素を、0.1mg/ml フェレドキシン、0.1U/ml フェレドキシン還元酵素、1U/ml グルコース脱水素酵素、1% グルコース、0.1mg/ml カタラーゼ及び1mM NADPHを含む100mM Tris−HCl(pH7.4)−1mM EDTA緩衝液中の10μM 1,25−ジヒドロキシビタミンD3に、30℃、30分間作用させた場合の1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD3への変換率は0.1%以上である
  2. 前記1α,25,26−トリヒドロキシビタミンD分離物が、クロロホルム−メタノール混合液に溶解された後、下記条件のHPLCに供して、リテンションタイム5.5〜5.9分の溶出分画に含まれる化合物として得られる、請求項1に記載の製造方法。
    カラム:ODSカラム;
    検出波長:265nm;
    流速:1.0ml/min;
    カラム温度:40℃;
    溶出条件:70%(v/v)アセトニトリル水溶液からアセトニトリルまでのアセトニトリル直線濃度勾配(15分間)
  3. 前記ビタミンD水酸化酵素が、形質転換体内で発現するビタミンD水酸化酵素である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記形質転換体の宿主が、大腸菌又は放線菌である、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記基質溶液が、電子供与体及び該電子供与体を還元するための酵素をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記電子供与体及び前記電子供与体を還元するための酵素が、それぞれ、フェレドキシン及びフェレドキシン還元酵素、又はプチダレドキシン及びプチダレドキシン還元酵素である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記改変アミノ酸配列が、
    73位のアルギニンがアラニン又はバリンに、及び84位のアルギニンがアラニン、バリン、又はフェニルアラニンに置換された配列である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記ビタミンDがビタミンD2又はビタミンD3であり、かつ前記ビタミンD水酸化体がビタミンD2水酸化体又はビタミンD3水酸化体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記ビタミンD水酸化体が、1α,25−ジヒドロキシビタミンDである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記ビタミンD水酸化体が、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記基質溶液が、包摂化合物をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 前記包摂化合物が、シクロデキストリン、ゼオライト、フラーレン、クラウンエーテル又はカリックスアレーンである、請求項11に記載の製造方法。
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