JP5222410B1 - 25−ヒドロキシビタミンd2の製造方法 - Google Patents

25−ヒドロキシビタミンd2の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酵母のミクロソーム画分を用いることなく、高価な試薬であるNADPHを必要とせず、かつ効率的に25(OH)D2を製造できる方法を提供。
【解決手段】CYP2R1をコードするDNAを発現させた組み換え酵母(Saccharomyces cerevisiae)に紫外線照射する工程、紫外線照射後の組み換え酵母をインキュベートする工程、培養液中の25-ヒドロキシビタミンD2(以下、25(OH)D2と略記する)を回収する工程を含む25(OH)D2の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、25-ヒドロキシビタミンD2の製造方法に関する。
我が国や欧米諸国においては超高齢化社会を迎えようとしており、骨粗鬆症の予防と治療が大きな課題になっている。血中の25-ヒドロキシビタミンD3(25(OH)D3)濃度と骨密度には明らかに正の相関があり、血中の25(OH)D3の低下は骨密度の低下と骨折率の上昇を招く。さらに最近、25(OH)D3濃度と癌予防に正の相関があることがわかった。したがって、骨粗鬆症や癌を予防するために、血中の25(OH)D3を測定することがきわめて重要である。わが国においても近い将来、健康診断の項目に血中25(OH)D3濃度測定に加わると考えられる。
現在、血中の25(OH)D3を測定する方法としてLC-MSを用いた分析が主流である。血中の25(OH)D3のほとんどはビタミンD結合タンパク質(DBP)に結合しており、LC-MS分析のためには25(OH)D3をDBPから解離させる必要がある。そのためには有機溶媒を用いてDBPを変性させ、解離した25(OH)D3を有機層から回収して用いる。解離した25(OH)D3の抽出効率を測定するために25(OH)D3と構造が類似した25(OH)D2を内部標準として用いる。そのため、今後、25(OH)D2の需要が飛躍的に多くなると思われる。
しかし、有機合成法による25(OH)D2の製造は困難で、簡便な製造法が望まれていた。
有機合成法以外の方法で25(OH)D2を製造方法としては酵素法がある。非特許文献1には、ヒト由来CYP2R1cDNAをベクターに組み込み、酵母(Saccharomyces cerevisiae)内で発現させ、この組み換え酵母を破砕してミクロソーム画分を調製し、ビタミンD2を基質として添加し、NADPHを添加することにより25位を水酸化して25-ヒドロキシビタミンD2が生成することを記載する。尚、この酵素の生理的基質はビタミンD3であり、ビタミンD3を基質として添加し、NADPHを添加することにより25位を水酸化して25-ヒドロキシビタミンD3をつくることも記載する。
Shinkyo R, Sakaki T, Kamakura M, Ohta M, Inouye K. Biochem Biophys Res Commun. 324, 451-457 (2004) Hohman EE, Martin BR, Lachcik PJ, Gordon DT, Fleet JC, Weaver CM, J.Agric. Food.Chem. 59, 2341-2346 (2011) Sasaki J, Miyazaki A, Saito M, Adachi T, Mizoue K, Hanada K, Omura S., Appl Microbiol. Biotechnol. 38, 152-157 (1992)
非特許文献1に記載の方法では、ミクロソーム画分を用いて25(OH)D2をつくる方法は煩雑で、高価な試薬であるNADPHを必要とし、また、20分程度でCYP2R1が失活してしまう。そのため、非特許文献1に記載の方法は、25(OH)D2の製造方法としては不適切であった。非特許文献1は、CYP2R1の酵素学的性質を調べることを目的とする文献であり、25(OH)D2を目的物として製造する方法の提供を目的とするものではなかった。
本発明者らは、非特許文献1に記載の方法におけるミクロソーム画分を用いる代りに、CYP2R1発現酵母の菌体培養液に基質であるビタミンD2を添加して25(OH)D2の製造を試みた。しかし、ビタミンD2の25(OH)D2への変換率は低かった。その原因は、ビタミンD2はきわめて脂溶性が高く、培養液にわずかしか溶解できないことと、ビタミンD2の多くは細胞膜にとどまり、CYP2R1が局在する小胞体膜へ到達する割合が低いことに起因すると考えられた。
そこで本発明の目的は、酵母のミクロソーム画分を用いることなく、高価な試薬であるNADPHを必要とせず、かつ効率的に25(OH)D2を製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、CYP2R1cDNAを発現させた組み換え酵母(Saccharomyces cerevisiae)に紫外線照射し、その後には培養することで、基質としてビタミンD2を添加することなしに25(OH)D2を製造することができることを見出して本発明を完成させた。
即ち、本発明はCYP2R1をコードするDNAを発現させた組み換え酵母(Saccharomyces cerevisiae)に紫外線照射する工程、
紫外線照射後の組み換え酵母をインキュベートする工程、
培養液中の25-ヒドロキシビタミンD2(以下、25(OH)D2と略記する)を回収する工程
を含む25(OH)D2の製造方法に関する。
野生型酵母はエルゴステロール生合成経路を有しており、野生型酵母に紫外線を照射することで、酵母内においてエルゴステロールがビタミンD2に変換され、蓄積することは知られている(非特許文献2)。但し、ビタミンD2を蓄積した酵母をパンに添加してビタミンD2豊富化食品を提供することを目的としている。
一方、微生物を用いて25(OH)D2を製造することを示唆する報告として、非特許文献3がある。非特許文献3では、ビタミンD3を基質として添加して、25(OH)D3を生成する活性を有する菌体をスクリーニングして、ビタミンD3を25(OH)D3に転換する放線菌を見出した。非特許文献3では、ビタミンD3と類似化合物であるビタミンD2についても同様に25(OH)D2に転換できるであろうと記載している。しかし、実験データは示していない。
非特許文献3に記載の方法は、基質であるビタミンD3を添加して、25(OH)D3を生成する方法であり、かつ基質としてビタミンD2を添加することで同様の反応が生じるかについてはデータをもって記載はしていない。少なくとも本発明のように基質を添加せずに、かつ酵母を用いる方法については記載していない。
本発明の方法では、ビタミンD2などの基質を添加することなく、25(OH)D2を製造することが可能である。CYP2R1が存在する小胞体膜において生成したビタミンD2を基質とすることに起因しているのではないかと本発明者らは推測している。
さらに前述したように、近い将来、血中25(OH)D3濃度測定が健康診断の項目に加わる可能性が高い。本発明の方法で製造した25(OH)D2をLC-MS分析における内部標準として用いることができる。また、25(OH)D2自身あるいはその誘導体は、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症、副甲状腺機能亢進症、乾癬などの治療薬になる可能性があり、本発明は医療分野に多大な貢献をすることが期待できる。
CYP2R1発現酵母におけるエルゴステロールから25-ヒドロキシビタミンD2への変換経路を示す。 酵母内発現プラスミドpGYRの構造を示す。 YR:S. cerevisiae由来NADPH-P450還元酵素遺伝子、 GAP-P、GAP-T : Z. rooxii由来グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素遺伝子プロモーター、ターミネーター、 Leu2:イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素遺伝子、 2μ ori + STB: S. cerevisiae由来2μ m DNA複製起点およびプラスミド安定化領域。 CYP2R1発現酵母のリン酸バッファー懸濁液にグルコース、シクロデキストリンおよびVD3(a)、VD2(b)を添加し、0時間後および48時間後の代謝物のHPLCチャートである。 CYP2R1発現酵母のリン酸バッファー懸濁液にUV-Bランプを0時間もしくは2時間照射した後、紫外線非存在下、37℃、24時間培養した場合のHPLCチャートである。 ヒト-アカゲザル間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 ヒト-アカゲザル間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 ヒト-イヌ間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 ヒト-イヌ間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 ヒト-マウス間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 ヒト-マウス間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 アカゲザル-イヌ間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 アカゲザル-イヌ間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 アカゲザル-マウス間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 アカゲザル-マウス間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 イヌ-マウス間のcDNAの同一性の検証結果を示す。 イヌ-マウス間のcDNAの同一性の検証結果を示す。
本発明の25(OH)D2の製造方法は以下の(1)〜(3)の工程を含む。
(1)CYP2R1をコードするDNAを発現させた組み換え酵母(Saccharomyces cerevisiae)に紫外線照射する工程、
(2)紫外線照射後の組み換え酵母をインキュベートする工程、
(3)培養液中の25(OH)D2を回収する工程
工程(1)
CYP2R1は、例えば、哺乳類由来のCYP2R1であることができ、より具体的にはヒト由来CYP2R1であることができる。ヒト由来CYP2R1(AY323817)以外に、例えば、マウス由来CYP2R1(AY323818)、イヌ由来CYP2R1(XM849440)、アカゲザル由来CYP2R1(NM001193958)を挙げることもできる。各CYP2R1のDNAの配列番号と各CYP2R1のDNA配列の同一性(%)を以下の表に示す。尚、由来が異なるcDNAの間の同一性の検証結果は、図5〜10に示す。
Figure 0005222410
CYP2R1をコードするDNAは、例えば、(a)配列表の配列番号1〜4のいずれかに記載のCYP2R1をコードする核酸配列を有するDNA、または(b)配列表の配列番号1〜4のいずれかに記載の核酸配列において1から200個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する核酸配列を有し、CYP2R1活性を有するタンパク質をコードするDNAであることができる。(a)配列表の配列番号1〜4のいずれかに記載の核酸配列を有するDNAは、ヒト、アカゲザル、イヌ、またはマウス由来CYP2R1をコードするcDNAである。これらの遺伝子配列はそのまま用いることもできるが、上記(b)に記載のように、CYP2R1活性を有するタンパク質をコードするDNAである限りは、一部改変して用いることもできる。
あるいは、CYP2R1をコードするDNAは、例えば、(c)配列表の配列番号5〜8のいずれかに記載のCYP2R1のアミノ酸配列をコードするDNA、または(d)配列表の配列番号5〜8のいずれかに記載のアミノ酸配列において1から50個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、CYP2R1活性を有するタンパク質をコードするDNAであることができる。(c)配列表の配列番号5〜8のいずれかに記載のアミノ酸配列は、それぞれヒト、アカゲザル、イヌ、またはマウス由来CYP2R1のアミノ酸配列である。これらのアミノ酸配列をコードするDNAはそのまま用いることもできるが、上記(d)に記載のように、CYP2R1活性を有するタンパク質をコードするDNAである限りは、一部改変して用いることもできる。
上記(b)における「1から200個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列」における「1から200個」は、例えば、1から150個、好ましくは1から100個、より好ましくは1から50個、より好ましくは1から20個、さらに好ましくは1から10個、特に好ましくは3個を意味する。これら欠失、置換及び/又は付加を有する核酸配列を有するDNAは、配列番号1〜4に記載の核酸配列を有するDNAを基礎として、常法により調製できる。上記表に記載のように、ヒト、アカゲザル、イヌ、及びマウス由来CYP2R1をコードするcDNAは、85%〜97%の同一性を有し、何れも、CYP2R1活性を有するタンパク質をコードするDNAである。CYP2R1をコードするcDNAは、約1600塩基からなることから、同一性85%の場合、約240(1600×0.15=240)の塩基が相違することを意味する。従って、「1から200個」の塩基が、配列表の配列番号1〜4のいずれかに記載のCYP2R1をコードする核酸配列を有するDNAと相違するDNAでコードされるタンパク質は、CYP2R1活性を有するタンパク質である蓋然性が高い。
上記(d)における「1から50個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列」における「1から50個」は、例えば、1から40個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、さらに好ましくは1から6個、特に好ましくは3個を意味する。これら欠失、置換及び/又は付加を有する核酸配列を有するDNAは、配列番号5〜8に記載のアミノ酸配列を基礎として、常法により調製できる。上記塩基配列の場合と同様に、「1から50個」のアミノ酸が、配列表の配列番号5〜8のいずれかに記載のCYP2R1のアミノ酸配列と相違するタンパク質は、CYP2R1活性を有するタンパク質である蓋然性が高い。
さらに、これら欠失、置換及び/又は付加を有する核酸配列を有するDNAまたは欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAを発現させた組み換え酵母は、CYP2R1活性を有するタンパク質を発現するものである。組み換え酵母が、CYP2R1活性を有するタンパク質を発現するか否かは、例えば、非特許文献1に記載のように、この組み換え酵母を破砕してミクロソーム画分を調製し、ビタミンD2を基質として添加し、NADPHを添加することにより25位を水酸化して25-ヒドロキシビタミンD2が生成することを確認することで実施できる。例えば、実施例1に従い所定のDNAをクローニングした後、pGYRに挿入し、酵母AH22株に導入し、CYP2R1発現株を得る。次いで、実施例2に従って、基質VD3またはVD2に対する水酸化活性を測定することで、CYP2R1活性を有することを評価できる。あるいは、この組み換え酵母を用いて、本発明の方法(実施例3)を実施して、25(OH)D2が得られることを確認することでもCYP2R1活性を有することを評価できる。
CYP2R1をコードするDNAとして(a)の配列表の配列番号1に記載の核酸配列を有するDNAを用いる場合には、ヒト由来CYP2R1をコードするcDNAをクローニングし、酵母発現ベクターに導入し、酵母をこの酵母発現ベクターで形質転換することで、組み換え酵母を得ることができる。酵母発現ベクターとしては、例えば、小胞体膜酵素であるシトクロムP450の発現で実績のあるpGYR (図2)を用いることができる。但し、このベクターに限定される意図ではなく、例えば、pAAH5、pAUR101、pAUR102、 pESC-LEU等のベクターも利用できる。酵母菌体内においてベクター内の遺伝子を発現し得るベクターであればよい。発現ベクター形質転換する酵母としては、特に制限はないが、例えば、サッカロマイセス・セレビシエAH22株を用いることができる。AH22株以外に、例えば、HY3株、NA87-11A株等も利用できる。但し、この酵母に限定される意図ではない。これらの方法は、非特許文献1に記載の方法を参照して実施できる。
上記組み換え酵母に対して、紫外線照射する。紫外線照射は、組み換え酵母を例えば、緩衝液中に懸濁した状態で実施することができる。緩衝液の種類は特に制限はなく、組み換え酵母の生育状態に悪影響を与えないものであれば、よく、例えば、pHが5〜8の範囲であればよい。緩衝液には、緩衝成分以外の成分を含有させることもでき、例えば、グルコース等を添加できる。緩衝液にグルコースを添加するとCYP2R1の活性に必要なNADPHを酵母内で十分量、生産することが可能になるという効果がある。
照射する紫外線は、例えば、UV-B(波長280 nm〜315 nm)を含むものであることが、エルゴステロールのプレビタミンD2への変換を促進するという観点から好ましい。また、照射する紫外線以外に可視光線等を含む光を照射することもできる。紫外線照射時間は、使用する組み換え酵母の種類、照射する紫外線の種類、組み換え酵母の緩衝液への懸濁状態(濃度等)、紫外線光源から懸濁液までの距離等を考慮して適宜決定される。この範囲に制限される意図ではないが、例えば、1分〜24時間の範囲とすることができる。紫外線照射時の温度は、特に制限はなく、例えば、20〜40℃の範囲とすることができる。
上記組み換え酵母は、紫外線照射する前に、菌体内にエルゴステロールが蓄積されていることが、紫外線照射によるエルゴステロールからのプレビタミンD2の生成の前提となる。よって、紫外線照射する前に、菌体内にエルゴステロールが蓄積される状態で適宜育成されることが適当である。菌体内にエルゴステロールが蓄積される状態での育成は、通常の酵母の培養条件において、対数増殖期にある酵母菌体を集菌して用いることにより実施でき、例えば、10〜24時間培養することで実施できる。
工程(2)
工程(2)においては、紫外線照射後の組み換え酵母を同じ緩衝液中(例えば、グルコースを含む)でインキュベートする。
紫外線照射により図1に示すように、組み換え酵母内においてエルゴステロールがプレビタミンD2に変換され、さらに、プレビタミンD2のビタミンD2への変換を促進するため、及び酵母に導入されたCYP2R1によるビタミンD2の25(OH)D2への変換を促進するために、上記培養は実施される。従って、工程(2)における培養は、プレビタミンD2のビタミンD2への変換及びビタミンD2の25(OH)D2への変換を促進し得る条件で実施すればよい。そのような組み換え酵母のインキュベートは、組み換え酵母で発現しているCYP2R1が安定に高い活性を維持する条件を考慮して適宜決定することができる。温度条件としては、例えば、25〜40℃の範囲とすることができる。インキュベート時間は、プレビタミンD2のビタミンD2への変換及びビタミンD2の25(OH)D2への変換の進捗状況を考慮して適宜選択できる。
工程(3)
工程(3)においては、培養液中の25(OH)D2を回収する。組み換え酵母工程内で生成した25(OH)D2は、菌体内から菌体外にほとんど分泌されない。従って、25(OH)D2の回収は、例えば、実施例に記載のように、酵母菌体を培養液中から有機溶媒を用いて抽出することで行うことができる。溶媒抽出により回収された25(OH)D2は、さらに公知の方法で、適宜精製することもできる。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
1.ヒトCYP2R1発現酵母の作製
非特許文献1に記載の方法に従って、ヒト由来CYP2R1をコードするcDNAをクローニングし、酵母発現ベクターに導入した。酵母発現ベクターとしては小胞体膜酵素であるシトクロムP450の発現で実績のあるpGYR (図2)を用いた。得られたプラスミドをpGYR-2R1と命名した。塩化リチウム法によりサッカロマイセス・セレビシエAH22株を形質転換し、ヒトCYP2R1発現酵母を得た。
2.ヒトCYP2R1発現酵母を利用したビタミンD水酸化体の生産
ヒトCYP2R1発現酵母を5mLのSD液体培地(2% グルコース、0.67% 窒素源 アミノ酸不含、20μg/ml L-ヒスチジン)に植菌し、30℃、200rpmで振盪培養を行った。得られた培養液を初期OD610値が0.1になるように50mLのSD液体培地に添加し、30℃、200rpmで振盪培養を行った。OD610値が2.5に到達した時点で、培養液全量を5000rpm、10分間遠心し、集菌した菌体を、5mLの100mMリン酸カリウムバッファー(pH 7.4)で懸濁した。懸濁液に、グルコース(終濃度4%)、3-ヒドロキシプロピル-β‐シクロデキストリン(終濃度 0%もしくは0.2%)、および各基質ビタミンD3(VD3)もしくはビタミンD2(VD2);終濃度 50μM)を添加し、37℃、200rpmで振盪培養を行った。基質添加後、24時間後にグルコース(終濃度4%)を再添加し、さらに培養を続けた。48時間後の培養液500μLを回収し、この培養液(菌体懸濁液)に3倍容のクロロホルム:メタノール=3:1を加え、室温で20分間攪拌し、有機層を遠心エバポレーターで乾固した後、残渣をアセトニトリルに溶解し、HPLCにより、25(OH)D2を回収した。さらに、下記に示した方法により、回収した代謝物のHPLC分析を行った。
図3にシクロデキストリン存在下、各基質を添加した場合の代謝物のHPLCチャートを示す。VD3、VD2を基質とした場合、それぞれ検出時間15.2分、17.8分の位置に代謝物が検出され、それらは、25-ヒドロキシビタミンD3(25D3)、25-ヒドロキシビタミンD2(25D2)標品と一致した。また、これらの代謝物のピークはpGYRベクターのみを導入したコントロール株では全くみられなかった。
次に各代謝物のLC-MSによる解析を行った。LC-MSはFinnigan LCQ ADVANTAGE MIX(ThermoFisher SCIENTIFIC,Waltham,MA,USA)を用い、APCI法、positive modeで行った。LC条件は以下のとおりである。カラム;ODS(2mm×150mm Develosil ODS-HG-3,Nomura Chemical Co.Ltd.,Aichi,Japan);移動相、アセトニトリル:メタノール:水=3:4:3;流速、0.2mL・min;UV検出波長、265nm.
各代謝物のLC-MS分析結果を以下に示す。
VD3代謝物;m/z 365 (M+H-2H2O), 12%; m/z 383 (M+H-H2O), 50%; m/z 401 (M+H),100%
VD2代謝物;m/z 395 (M+H-H2O), 40%; m/z 413 (M+H), 100%
以上の結果から、各基質の代謝物は、それぞれ25位が水酸化された構造であることが示唆された。
すなわち、ヒトCYP2R1発現酵母にシクロデキストリン存在下、基質(VD3もしくはVD2;終濃度50μM)を添加する方法により、25D3が6μM(変換率12%)、25D2が2.8μM(変換率 5.6%)生産がみられた。一方、シクロデキストリン非存在下においては、シクロデキストリン存在下における代謝物と同じ溶出時間での代謝物がみられたものの、その変換率は1%以下であり、シクロデキストリン存在下と比較してはるかに低い値を示した。基質であるVD3やVD2は疎水性がきわめて高いため、培養液中に溶解せず、シクロデキストリン等によって基質を包接した後、培養液に添加する必要がある。しかし、シクロデキストリン濃度を0.2%よりもさらに高い濃度にすると逆に変換率は低下する。これは酵母細胞内への移行効率が低下することに起因すると考えられる。
3.紫外線照射時におけるヒトCYP2R1発現酵母代謝物(本発明)
ヒトCYP2R1発現酵母を20mLのSD液体培地に植菌し、30℃、200rpmで振盪培養を行った。得られた培養液を初期OD610値が0.1になるように200mLのSD液体培地に添加し、30℃、200rpmで振盪培養を行った。OD610値が2.5に到達した時点で、培養液全量を5000rpm、10分間遠心し、集菌した菌体を、20mLの100mMリン酸バッファー(pH 7.4)で懸濁し、グルコース(終濃度4%)を添加した。
得られた懸濁液を撹拌しながら、UV-Bランプ(15W, 280〜315nm)を懸濁液表面まで20cmの位置に設置し、22℃において2時間照射した。各時間UV-Bランプにより紫外線照射した菌体懸濁液を、さらに紫外線非存在下、37℃、200rpmで振盪した。24時間後の菌体懸濁液を上記2に示した方法によって代謝物の抽出を行った。即ち、HPLC分析の条件で溶出されてきた25-ヒドロキシビタミンD2をUVでモニターしながら直接分取した。
紫外線照射0時間もしくは2時間後に、紫外線非存在下37℃で24時間インキュベートした場合の代謝物のHPLCチャートを図4に示す。どちらの場合にも41分の位置にエルゴステロールのピークが確認できた。このピークは、pGYRベクターのみを導入したコントロール株においても検出された。紫外線照射を行った場合には、VD2および代謝物25D2が検出された。pGYRベクターのみを導入したコントロール株ではVD2のみが検出されたことから(詳細データは省く)、酵母に内在するエルゴステロールが紫外線照射によりVD2へと変換され、ヒトCYP2R1発現酵母では、そのVD2がさらに25D2へと変換されたものと考えられる。
CYP2R1発現酵母の菌体懸濁液にUV-Bランプ(15W, 280〜315nm)を1.5〜2時間照射し、さらに紫外線非存在下、37℃、200rpmで24時間振盪培養を行うことで、全く基質を加えることなく、25D2を3.3μM生成することができた。これは、50μMのVD2を添加させて反応させた2.8μMを上回る生産能であり、菌体乾燥重量1gで約1.3mgの25D2を生産することが可能であった。
本発明は、25(OH)D2が関連する医療分野に有用である。
配列番号1:ヒトCYP2R1のcDNA配列
配列番号2:アカゲザルCYP2R1のcDNA配列
配列番号3:イヌCYP2R1のcDNA配列
配列番号4:マウスCYP2R1のcDNA配列
配列番号5:ヒトCYP2R1のアミノ酸配列
配列番号6:アカゲザルCYP2R1のアミノ酸配列
配列番号7:イヌCYP2R1のアミノ酸配列
配列番号8:マウスCYP2R1のアミノ酸配列

Claims (4)

  1. ビタミンD2の25位水酸化活性を有するタンパク質であるCYP2R1をコードするDNAを発現させた組み換え酵母(Saccharomyces cerevisiae)に紫外線照射する工程、
    紫外線照射後の組み換え酵母をインキュベートする工程、
    培養液中の25-ヒドロキシビタミンD2(以下、25(OH)D2と略記する)を回収する工程
    を含む25(OH)D2の製造方法。
  2. CYP2R1は、哺乳類由来である請求項1に記載の製造方法。
  3. CYP2R1をコードするDNAは、(a)配列表の配列番号1〜4のいずれかに記載の核酸配列を有するDNA、(b) 配列表の配列番号1に記載の核酸配列において1から150個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する核酸配列を有し、かつビタミンD2の25位水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNA、(c)配列表の配列番号5〜8のいずれかに記載のCYP2R1のアミノ酸配列をコードするDNA、または(d) 配列表の配列番号5に記載のアミノ酸配列において1から50個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、かつビタミンD2の25位水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAである請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 紫外線は、UV-Bを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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