JP5349612B2 - 通信装置 - Google Patents
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Description
本発明は、人体を介して通信する通信装置に関する。
人体を介して2つの通信装置間で通信する通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
人体を介して通信を行う通信装置は、信号を送受信するための信号電極と、基準電位を有する基準電極を備える。信号電極は、人体に接触又は近接することで、通信相手の信号電極と静電結合する。基準電極は、空間を介して通信相手の基準電極と静電結合する。これにより通信装置の信号電極と基準電極間の電位差が通信相手に伝達することで、通信したいデータが通信装置から通信相手に伝達される。
携帯電話などアンテナを介して通信を行う無線端末に、人体を介して通信を行う通信装置を設けると、無線端末の同一基板上にアンテナと信号電極とが近接して実装されることになる。同一基板上に信号電極とアンテナとが近接して実装されると、アンテナに流れる電流の一部が信号電極に流れ込み、アンテナの性能が低下するという問題がある。
本発明は、無線端末にアンテナと信号電極を設けても、アンテナ性能の低下を抑制できる通信装置を提供することを目的とする。
本発明の一観点による通信装置は、基板と、前記基板に配置されたアンテナと、前記アンテナを介して第1信号を送信又は受信する第1通信部と、前記基板に配置された端子と、一端が前記端子に接続された信号線と、前記信号線の他端に接続された導体板と、前記導体板を介して第2信号を送信又は受信する第2通信部と、を備え、前記信号線の線路長と前記導体板の周囲長の1/2との和が、前記アンテナの共振周波数の1/2波長の整数倍であることを特徴とする。
本発明の通信装置によれば、無線端末にアンテナと信号電極を設けても、アンテナの性能劣化を抑制できる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例1に係る通信装置100の模式図である。
通信装置100は、基板103と、基板103に配置されたアンテナ105と、アンテナ105を介して第1信号を送信又は受信する第1通信部106と、基板103に配置された端子108と、一端が端子108に接続された信号線109と、信号線109の他端に接続された導体板110と、導体板110を介して第2信号を送信又は受信する第2通信部112と、を備えている。信号線109の線路長と、導体板110の周囲長の1/2との和は、アンテナ105の共振周波数f1の1/2波長の整数倍である。
基板103は、誘電体部101とグランド部102を有する。グランド部102は、基準電位を有する導電体、例えば、銅や金などの金属層などで構成される。
給電部104は、基板103の面上に配置される。また、アンテナ105は、給電部104に接続される。アンテナ105は、共振周波数f1のアンテナである。図1では一例として逆Lアンテナを示している。
第1通信部106は、基板103の給電部104が配置される面(以下、一面と称する。)に配置される。第1通信部106は、信号線107を介して給電部104に接続される。第1通信部106は、データに信号処理を施して無線信号を生成し、アンテナ105を介して図示しない通信相手に無線信号を送信する。また第1通信部106は、アンテナ105を介して受信した無線信号に信号処理を施して受信信号を生成する。以下、第1通信部106が送受信する無線信号を第1信号と称する。
導体板110は、基板103の一面に、該一面と略平行に配置される。導体板110は、銅や金などの金属で形成される長方形の板状素子である。導体板110は、基板103の一面に配置された支持基体上に銅箔が圧着され、かつ銅箔上に保護用の薄膜フィルムなどが貼り付けられている構成である。導体板110は、通信装置100の筐体(図示せず。)の天井面に貼り付ける構成としても良い。
第2通信部112は、基板103の一面に配置される。第2通信部112は、導体板110を介して、人体を通信経路として図示しない通信相手に信号を送信する。また、第2通信部112は、図示しない通信相手から信号を受信する。なお、通信相手は、第1通信部106の通信相手と同じであっても異なっていても良い。第2通信部112が通信相手から送受信する信号を第2信号と称する。
端子108は、基板103の一面に配置される。図1では、端子108は、基板103の角部に配置されている。信号線113は、第2通信部112と端子108とを接続する。信号線109は、導体板110と端子108とを接続する。信号線109は、周囲が絶縁性の部材に覆われている。あるいは信号線109は、誘電性シート上に導電性の線路がパターン印刷して形成したものでも良い。信号線109と導体板110は、電極111を構成する。
信号線109の線路の電気的な線路長L1と導体板110の電気的な周囲長L2の半分(L2/2)の和((L1+L2/2)。この和のことを電極111の電気長L3と称する)は、アンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2である。すなわち、電極111の電気長L3=L1+(L2/2)=λ1/2となる。これにより、給電部104からアンテナ105に流れる電流のうち基板に漏洩する漏洩電流が、電極111に流れ込みにくくなり、アンテナの性能劣化が抑制される。
(通信装置の動作)
次に、通信装置100の動作として、第2通信部112が通信相手と通信を行う原理を説明する。図2は、本実施例に係る通信装置100と、通信相手である通信装置200との間で行われる通信を説明する図である。図2に示す例では、ユーザ(以下、人体10と称する。)が通信装置100、200をそれぞれ手に保持することで人体10が通信経路となり、通信装置100と通信装置200とが通信を行う。
次に、通信装置100の動作として、第2通信部112が通信相手と通信を行う原理を説明する。図2は、本実施例に係る通信装置100と、通信相手である通信装置200との間で行われる通信を説明する図である。図2に示す例では、ユーザ(以下、人体10と称する。)が通信装置100、200をそれぞれ手に保持することで人体10が通信経路となり、通信装置100と通信装置200とが通信を行う。
ここでは通信装置200は、図1と同様の構成であるとし、詳細な説明を省略する。なお、通信装置100の導体板110と信号線109に相当する通信装置200の構成をそれぞれ導体板210、信号線209とし、導体板210、信号線209を合わせて信号電極と称する。図2では、導体板110,210、信号線109,209が通信装置100,200の外部に配置された図となっているが、実際には通信装置100,200の内部に設けてあってもよい。また、図2のように導体板110,210、信号線109,209は人体と直接接触していてもよい。また直接導体板110、210が人体と接触していなくても、服のポケットに通信装置100,200が入っているなど、導体板110,210が人体と近接していればよい。
通信装置100の導体板110と人体10の表面とが接触又は近接すると、導体板110と人体10との間に静電結合が発生する。同様に、通信装置200の導体板210と人体10の表面との間にも静電結合が発生するする。これにより、導体板110が導体板210と人体10を介して静電結合する。通信装置100のグランド部102と通信相手方の通信装置200のグランド部とが空間を介して静電結合する。この結果、導体板110とグランド部102の電位差が、通信装置200の導体板210とグランド部に伝達される。通信装置100の第2通信部112は、導体板110に供給する電圧値を変化させることで第2信号を通信装置200に送信する。また第2通信部112は、導体板110に生じる電位差の変化を検出することで通信装置200から第2信号を受信する。
続いて、電極111の電気長L3について説明する。
図3Aは、図1の信号線109を直線状に伸ばし、導体板110を基板103と同一平面に配置した展開図である。なお、図1では、端子108を基板103の角部に設けているが、図3Aのように基板103の辺に設けてもよい。アンテナ105と導体板110とを基板103の同一面上に設ける場合は、アンテナ105の給電部104と端子108はできるだけ離して配置したほうがよいため、図1では給電部104と端子108を基板103の角部に設けている。
図3Aは、図1の信号線109を直線状に伸ばし、導体板110を基板103と同一平面に配置した展開図である。なお、図1では、端子108を基板103の角部に設けているが、図3Aのように基板103の辺に設けてもよい。アンテナ105と導体板110とを基板103の同一面上に設ける場合は、アンテナ105の給電部104と端子108はできるだけ離して配置したほうがよいため、図1では給電部104と端子108を基板103の角部に設けている。
信号線109の線路長L1と導体板110の周囲長L2の半分の和L3(L1+(L2/2))は、アンテナ105の共振周波数f1の波長λ1の略1/2である。
図3Aでは、信号線109と端子108との接続位置をa、信号線109と導体板110との接続位置をb、導体板110の各頂点をc、d、f、gとする。導体板110の端辺上にありbからの距離が導体板の周囲長の半分の長さとなる位置をeとしている。図3Aでは説明の便宜上、bをcとfの中点とし、eをdとgの中点とする。従って信号線109の線路長L1は、位置aと位置bとの距離になり、導体板110の周囲長L2は位置b→c→d→e→g→f→bの経路長になる。
図3Bは、信号線109と導体板110の周囲上の位置a→b→c→d→eの経路を直線で表したものである。導体板110及び信号線109に、アンテナ105の共振周波数f1と同じ周波数の信号を入力した場合、図3Bに示すような定在波が発生する。図3Bには、経路a→b→c→d→e上に発生する定在波を示している。なお、位置a→b→f→g→eの経路上に発生する定在波の振幅も図3Bと同様になる。
図3Bに示すように、位置a→b→f→g→eの経路上には、位置a,eが節となる定在波が発生する。位置aおよびeはオープンとなり、位置aから導体板110をみた時のインピーダンス値が無限大となる。すなわち、端子108と信号線109は電気的に切断された状態になる。これにより、給電部104から基板103に漏洩する共振周波数f1の電流は電極111に流れにくくなる。
一般にアンテナの性能は、アンテナに流れる電流と基板に流れる漏洩電流によって決まる。漏洩電流が信号線109及び導体板110に流れ込むと、基板103に流れる漏洩電流が変化することとなり、アンテナ105の特性が劣化してしまう。本実施例に示すように、信号線109の線路長L1と導体板110の周囲長L2の半分の長さ(L2/2)との和(L1+(L2/2))をアンテナ105の共振周波数f1の2分の1波長とすることで、端子108から導体板110を見たインピーダンスを大きくすることができるので、信号線109に流れ込む漏洩電流が減少し、アンテナ105の特性劣化を抑制することができる。
図4は、図1の通信装置と比較例1及び比較例2の通信装置500,600それぞれのアンテナ105の反射係数VSWR(Voltage Standing Wave Ratio(電圧定在波比))を示す図である。一般に、VSWRが小さいほど、アンテナの特性が良いといえる。
比較例1の通信装置500を、図5に示す。図5に示すように、比較例1に係る通信装置500は、本実施例(図1)の通信装置100の導体板110と信号線109を有していない。その他の構成は図1の通信装置100と同様である。
比較例2の通信装置600を、図6に示す。通信装置600は、電極111の電気長L3を、アンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2でない点が図1に示す通信装置100と異なるが、その他の構成は通信装置100と同様である。
図4に示す通り、比較例1の通信装置500では、アンテナの共振周波数f1はVSWRが最小となる2.20GHzであり、2.14GHz〜2.27GHzにおいてVSWRが2以下となっている。
比較例2の通信装置600の場合、2.14GHz〜2.27GHzの範囲ではVSWRがいずれも2以上となっている。例えば、周波数が2.20 GHzの場合、比較例1の通信装置のVSWRは、1.28であるのに対して、比較例2の通信装置600のVSWRは、3.57である。つまり、通信装置600の場合、動作させたい周波数範囲2.14GHz〜2.27GHzでアンテナの効率が著しく劣化する。
一方、本実施例に係る通信装置100の場合、電極111を接続した場合であっても、電極111を接続しない比較例1と比べてVSWRの周波数特性は、ほとんど変化しない。例えば、周波数が2.20GHzの場合、比較例1の通信装置500のVSWRが1.28であるのに対して、実施例1の通信装置100のVSWRは1.54である。また、VSWRが2以下となる周波数は、2.15GHz〜2.24GHzであり、比較例1の通信装置のアンテナとほぼ同じである。
このように、電極111の電気長L3をアンテナの共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2とすることで、アンテナ105の特性劣化を抑制できることが分かる。
尚、本実施例の通信装置では、アンテナ105の共振周波数2.20GHzとしたが、共振周波数は、これに限られない。第1通信部106で使用される信号の周波数に応じてアンテナ105の共振周波数f1は変わる。
また、本実施例では、電極111の電気長L3は、アンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2としたが、電極111の電気長L3は、アンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2の整数倍であればよい。つまり、電極111(図3Aの位置a→b→f→g→eの経路上)に発生する定在波の節が位置aにくればよく、電極111の電気長L3がL3=L1+(L2/2)=A*λ1/2(Aは1以上の整数)であればよい。
また、図1の通信装置100では、導体板110を、基板103の上方に基板面と略平行に配置される構成としたが、この配置に限られない。例えば、基板103の側面(一面と垂直な面)と平行になるように導体板110を配置しても良い。
また、電極111の電気長L3は、電極111の基板103からの距離や位置関係、電極を固定する部材等の影響で変化する。したがって、電気長を調整する際には、これらの影響に応じて信号線109や導体板110の物理長を調節する。
図7に、本発明の実施例2の通信装置700を示す。
実施例2の通信装置700は、信号線109を基板103の一面701に対して垂直に端子108と接続している。ここで、一面701とは、アンテナ105等が配置された基板103の面である。
信号線109は、一端が導体板110に接続され、一面701と平行に設けられた第1線路109Aと、一端が端子108に接続され他端が第1線路109Aの他端に接続された第2線路109Bとを有する。第2線路109Bは、線路長がhの線路であり、一面と垂直に設けられている。つまり、信号線109は、基板103の一面701との間の距離である高さhで、基板103の一面701に対して平行に折り曲がった形状となっている。なお、第2線路109Bの線路長hは、アンテナ105の共振周波数f1の波長をλ1とするとき、0.30λ1以下とする。なお、図7では、第2線路109Bの線路長をhとしているが、第1線路109Aと一面との間の距離がhであれば、第2線路109Bの線路長をhより長くしてもよい。この場合、第2線路109Bは、一面と垂直ではなく、一面に対して斜めに設けられることになる。
導体板110は、基板103の一面701と平行に配置されている。導体板110と一面701との間の距離は、第2線路109Bの線路長hとなる。その他の構成は、図1の通信装置100と同様であるため説明は省略する。
通信装置700の電極111の電気長は、アンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2とすることで、共振周波数f1の漏洩電流は、電極111には流れない。
しかしながら、基板103には、その他の周波数の電流が流れる場合がある。例えば、基板103に、アンテナ105の共振周波数f1の約1/2の周波数f2の電流が流れる場合を考える。このとき、電極111の電気長L3は、周波数f2の波長をλ2とすると、λ2/4となるため、電極111は周波数f2で動作するモノポールアンテナとなる。電極111から周波数f2の電波が放射されることになり、通信装置の内部および外部へのノイズ源になってしまう。
図8に、電極111に周波数f2(波長λ2)の電流を流した場合であって、図7の第2線路109Bの線路長hを変化させた場合の放射抵抗値を計算した結果を示す。図8のグラフの横軸は、線路長hであり、縦軸は放射抵抗値(Ω)である。尚、放射抵抗値が50Ωであるとき、電波の放射量が最も大きい。50Ωより小さくなればなるほど、電波の放射量は少ない。また、50Ωより大きくなればなるほど、電波の放射量は少ない。
図8からわかるように、放射抵抗値は、高さhが0.15λ2以下になると、急激に低下していることがわかる。したがって、高さhを0.15λ2以下とすると、電極111(信号線109および導体板110)からの放射量を少なくすることができる。
以上より、本実施例の通信装置は、実施例1と同様の効果が得られるとともに、第1線路109Aと基板103の一面701との距離hを0.30λ1(0.15λ2)以下にすることで、信号線109と導体板110からの電波の放射量を低減することができる。
図9に、本発明の実施例3の通信装置900を示す。実施例3の通信装置900は、導体板110に切り込み901を設けている。
例えば、実装上の問題で、導体板110の大きさや、信号線109の長さが十分にとれないと、電極111の電気長がアンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2より短くなってしまう。そのような場合に、導体板110に切り込み901を設けることにより、導体板110の周囲長を長くし、電極111の電気長を波長λ1の略1/2とすることが可能になる。
また、実施例3の通信装置によれば、実施例1の通信装置と同様の効果を達成することができる。
尚、図9の通信装置900は更にスイッチを備え、切り込み901の開放端部をスイッチによる短絡開放状態の切り替えを行えるようにしてもよい。また、通信装置900は、更に切り込み901に可変容量素子を装荷してもよい。スイッチによる切り込み901の開放端部の短絡開放状態の切り替え、又は可変容量素子の容量の切り替えにより、切り込み部901の電気長を調節することにより、電極111の電気長を調節することができる。例えば、アンテナ105が複数の共振周波数を有する多共振アンテナの場合に、アンテナ105から放射される電波の周波数に応じて電極111の電気長を調節することができる。
図10Aは、本発明の実施例4の通信装置1000を示す模式図である。図10Bは、図10Aの通信装置1000の基板103と導体板110と信号線109を同一平面に配置した図である。
図10Aと図10Bに示すように、実施例4の通信装置1000の導体板110には、切り込み1001が設けられている。切り込み1001と、切り込み1001によって分断された導体板110の一辺とが接続する部分を開放端部と称する。信号線109の一端は端子108に、他端は開放端部に接続される。切り込み1001の辺1001Aと導体板110の一辺とが接続する部分と、辺1001Bと導体板110の一辺とが接続する部分との2箇所が開放端部であるが、信号線109と接続される開放端部はどちらであってもよい。
また、図10Aの通信装置1000のアンテナ105は、f1>2×f3の関係となる2つの異なる共振周波数f1とf3で動作する多共振アンテナである。また、図10Bに示すように、切り込み1001は、所定の幅を有する直線のスリットであり、アンテナ105の共振周波数f3の波長をλ3とすると、切り込みの一辺1001A ,1001Bの長さは、λ3/4とする。
信号線109の線路長は、λ3/2とする。その他の構成は、実施例1の通信装置と同様であるため説明を省略する。図10Aの通信装置1000の電極111の電気長は、共振周波数f1に対する波長λ1の1/2であるため、実施例1と同様に、アンテナ105が共振周波数f1で動作する場合は、アンテナ105の特性劣化を低減することができる。
さらに、アンテナ105が共振周波数f3で動作した場合も、アンテナ105の特性劣化を低減させることができる。以下では、その理由を説明する。
図10Cに、は、アンテナが共振周波数f3で動作する場合に、切り込み1001及び信号線109に流れる電流の分布を示す図である。
切り込み1001の一辺001A、1001Bの長さは、λ3/4である。したがって、辺1001Aと辺1001Bの長さの和はλ3/2となる。辺1001A,1001Bには、図10Cに示すように開放端部が節となる定在波が発生する。導体板110と信号線109との接続部はオープンとなる。さらに、信号線109の線路の電気長がλ3/2であるため、信号線109上には信号線109の両端が節となる定在波が発生し、信号線109の両端はオープンとなる。
その結果、アンテナ105の共振周波数がf3の場合、導体板110と信号線109、信号線109と端子108は電気的に切断された状態となる。これにより、電極111に周波数f3の電流が流れこみにくくなる。
以上のように、本実施例の通信装置は、第1実施例と同様の効果が得られるとともに、導体板110に切り込み1001を入れ、信号線109及び切り込み1001の長さ、導体板110の周囲の電気長の大きさを調節することで、アンテナ105が2つの周波数で多共振する場合も、アンテナ105の特性劣化を低減することが可能である。
なお、本実施例では、アンテナ105が多共振アンテナであるとしたが、通信装置1000が2つのアンテナを有し、一方のアンテナが共振周波数f1で動作し、他方のアンテナが共振周波数f3で動作する場合にも、2つのアンテナの特性劣化を低減することができる。
また、実施例3と同様に通信装置1000の切り込み1001にスイッチを設けてもよい。アンテナ105の共振周波数に応じてスイッチのオン・オフを切り替えることで、アンテナ105が3つ以上の周波数で動作する場合もアンテナ105の特性劣化を低減することができる。スイッチの代わりに切り込み1001に可変容量素子を設け、可変容量素子の容量を切り替えることで、3つ以上の周波数で動作するアンテナの特性劣化を低減してもよい。
図11は、本発明の実施例5の通信装置1100を示す模式図である。図11の通信装置1100は、実施例1の通信装置の構成に加え、更に第2の端子1101、第2の導体板1102、第2の信号線1103を有している。
通信装置1100の端子108は、基板103の短辺1106であって、長辺1107寄りに設けられる。なお、端子108は、長辺1107であって短辺1106寄りに設けられると称してもよい。基板103の一辺1106であって長辺1107寄り、あるいは長辺1107であって一辺1106寄りの部分を一辺1106あるいは長辺1107の角部と称する。第2の端子1101は、基板103の一面上に実装され、図11には図示していないが、スルーホールによってグランド部102に短絡している。第2の端子1101は、短辺1106と対向する短辺1105の長辺1107寄りに設けられる。第2の端子1101は、長辺1107であって短辺1105寄りに設けられてもよく、短辺1105であって長辺1107と対向する辺寄りに設けられてもよい。つまり、第2の端子1101は、端子108が設けられる短辺とは異なる短辺の角部に設けられる。
第2の信号線1103は、第2の端子1101に接続され、第2の端子1101を介してグランド部102に電気的に接続している。第2の導体板1102は、第2の信号線1103と接続されている。
第2の信号線1103と第2の導体板1102は、第2の電極1104を構成する。第2の電極1104は、グランド部102に接続されている点を除き電極111と同じ構造である。グランド部102と接続された第2の電極1104を設けることで、グランド部102の面積を拡大することができ、安定した基準電位を得ることが可能となる。例えば、携帯機器など、グランド部の面積が小さい場合に、第2の電極1104を設けることにより、基準電位を安定化させることができる。
また、前述したように、端子108は、基板103の短辺1106側に設けられ、第2の端子1101は、基板103の短辺1106と対向する短辺1105側に設けられる。すなわち、電極111と第2の電極1104は、基板103の長手方向(図11ではXの方向)に対抗する辺側にそれぞれ配置しており、電極111と第2の電極1104間の距離を大きくするように配置している。電極111と第2の電極1104の距離を大きくすることで、両電極間の結合を抑制し、電極111の電位と基準電位間の電位差が減少するのを抑制することが可能になる。
第2の電極1104は、電極111と同じ構造である。したがって、第2の電極1104の電気長の長さを、第2の信号線1103の線路の電気長と第2の導体板1102の周囲の電気長の1/2であるとすると、第2の電極1104の電気長は、アンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2の整数倍となる。
実施例5の通信装置1100によれば、実施例1で説明したことと同様の理由により、アンテナ105に流れる電流のうち基板に漏洩する漏洩電流が、第1の電極111、第2の電極1104いずれにも流れにくくなるため、アンテナ105の性能を劣化される。
また、第2の電極1104は、電極111と同じ構造であるとしたが、必ずしも同じ構造でなくても良い。第2の電極1104の電極の電気長が、アンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2の整数倍である条件を満たす構造であれば良い。
図12は、本発明の実施例6の通信装置1200を示す模式図である。図12の通信装置1200は、2つの導体板1202、1203を設けている点、信号線109を導体板1202又は導体板1203いずれか一方に接続するスイッチ1201を備える点が、実施例1の通信装置と異なる。図12に示すように、導体板1203は、導体板1202とは異なる周囲長を持つ。スイッチ1201は、図示しない制御部により制御されるものとする。その他の構成は、実施例1の通信装置と同様である。
アンテナ105は2つの共振周波数f1,f4で動作する多共振アンテナである。
導体板1202は、基板103と平行に配置され、スイッチ1201と信号線109を介して端子108に接続されている。ここで、導体板1202と信号線109とを合わせて第3の電極とする。また、導体板1202の周囲の電気長の1/2と信号線109の線路の電気長との和を第3の電極の電気長とする。導体板1202は、第3の電極の電気長が、アンテナ105の共振周波数f1に対する波長λ1の略1/2の整数倍となるように設計される。
導体板1203は、基板103の一面と垂直となるように配置され、スイッチ1201と信号線109を介して端子108に接続されている。ここで、導体板1203と信号線109とを合わせて第4の電極とする。また、導体板1203の周囲の電気長の1/2と信号線109の線路の電気長との和を第4の電極の電気長とする。導体板1203は、第4の電極の電気長が、アンテナ105の共振周波数f4に対する波長λ4略1/2の整数倍となるように設計される。
第1通信部106が通信すると、第1通信部106が送受信する第1信号の周波数f1,f4に応じて制御部(図示せず)がスイッチ1201を制御する。
第1信号の周波数がf1の場合、スイッチ1201は、信号線109と導体板1202とを接続する。第3の電極の電気長がアンテナ105の共振周波数f1の半波長の整数倍となる。実施例1と同様の理由により、アンテナ105から基板に漏洩する漏洩電流が第3の電極に流れにくくなるため、アンテナ105の特性劣化を低減することができる。
第1信号の周波数がf4の場合、スイッチ1201は、信号線109と導体板1203とを接続する。第4の電極の電気長(信号線109の線路の電気長と導体板1203の周囲の電気長との和)がアンテナ105の共振周波数f4の半波長の整数倍となる。実施例1と同様の理由により、アンテナ105から基板に漏洩する漏洩電流が第4の電極に流れにくくなるため、アンテナ105の特性劣化を低減することができる。
以上説明したとおり、本実施例の通信装置1200によれば、アンテナが2つの異なる共振周波数で動作する場合であっても、アンテナの共振周波数に応じて、信号線を周囲長の異なる導体板に接続することにより、共振周波数に対する波長の1/2の整数倍と電極の電気長と一致するようにすることができる。この結果、実施例1と同様の効果が得られる。このように導体板を複数用いることで、アンテナの共振周波数が複数あった場合も、導体板の影響を受けずにアンテナから信号を放射することができる。
尚、本実施例の通信装置では、導体板1203の面と基板103の上面とが垂直となるように配置したが、導体板1203はこの配置に限られない。
また、本実施例の通信装置では、アンテナ105は2つの共振周波数で動作するとしたが、3つ以上の共振周波数で動作するものであってもよい。この場合、共振周波数の数に応じて、導体板を設けても良い。
なお、本発明は上記実施例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
10・・・人体、100、200、500、600、700、900、1000、1100、1200・・・通信装置、101・・・誘電体部、102・・・グランド部、103・・・基板、104・・・給電部、105・・・アンテナ、106・・・第1通信部、107・・・信号線、108・・・端子、1101・・・第2の端子、209・・・信号線109A・・・第1線路、109B・・・第2線路、110、210、1202、1203・・・導体板、1102・・・第2の導体板、111・・・電極、211・・・信号電極、112・・・第2通信部、113・・・信号線、1103・・・第2の信号線、201、1002、1003・・・電流の振幅、701・・・一面、1001、1101・・・切り込み、1104・・第2の電極、1001A、1001B、1105、1106・・・辺、1201・・・スイッチ。
Claims (5)
- 基板と、
前記基板に配置されたアンテナと、
前記アンテナを介して第1信号を送信又は受信する第1通信部と、
前記基板に配置された端子と、
一端が前記端子に接続された信号線と、
前記信号線の他端に接続された導体板と、
前記導体板を介して第2信号を送信又は受信する第2通信部と、を備え、
前記信号線の線路長と前記導体板の周囲長の1/2との和が、前記アンテナの共振周波数の1/2波長の整数倍であることを特徴とする通信装置。 - 前記信号線は、前記アンテナが配置された前記基板の面と平行であり、かつ前記面との間の距離が前記アンテナの共振周波数の0.30波長以下である第1線路を備え、
前記導体板は、前記面と平行に配置され、かつ前記面との間の距離が前記アンテナの共振周波数の0.30波長以下であることを特徴とする請求項1記載の通信装置。 - 前記アンテナは、前記共振周波数及び前記共振周波数とは異なる第2の共振周波数で動作し、
前記導体板には、一辺の長さが前記第2の共振周波数の略1/4波長である切り込みが設けられ、
前記信号線の他端は、前記切り込みの開放端部に接続され、
前記信号線の線路長が前記第2の共振周波数に対する波長の略1/2であることを特徴とする
請求項2記載の通信装置。 - 前記基板は、基準電位を有するグランド部を備え、
前記端子は、前記基板の一辺に設けられ、
通信装置は、さらに
前記グランド部の前記一辺と対向する辺に接続された第2の信号線と、
前記第2の信号線に接続された第2の導体板とを備え、
前記第2の信号線の線路長と前記第2の導体板の周囲長の1/2との和が、前記アンテナの共振周波数の1/2波長の整数倍であることを特徴とする
請求項3記載の通信装置。 - 前記導体板とは異なる周囲長を持つ第3の導体板と、
前記第1信号の周波数に応じて、前記信号線を前記導体板、又は前記第3の導体板いずれか一方に電気的に接続するスイッチとを備えることを特徴とする
請求項4記載の通信装置。
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