JP5348368B2 - 磁性酸化鉄粒子粉末及びその製造方法 - Google Patents

磁性酸化鉄粒子粉末及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、トナー粒子からの脱落がなく、トナーとしての流動性が良好であって、且つ、トナー表面に露出する磁性体表面の面積が小さく、帯電したトナーの電荷のリークサイトが小さくなることから、トナーの帯電を阻害し難くなることによってトナーの帯電性能を向上させることができ、高画像濃度であって画像濃度維持性に優れたトナーが得られるとともに、所望の帯電量に到達する時間が短く、コピー機、プリンタ等の印刷機の省電力に寄与できる磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末及びその製造方法に関するものである。
静電潜像現像法の一つとして、キャリアを使用せずに結着樹脂中にマグネタイト粒子粉末等の磁性粒子粉末を混合分散させた複合体粒子を現像剤として用いる所謂「一成分系磁性トナー」による現像法が広く知られ、汎用されている。
近時、静電複写機器及び印刷機器の小型化、高速化等の高性能化に伴い、現像剤である磁性トナーの特性向上、即ち、ハードな条件下でも安定した現像性能が得られる耐久性に優れた磁性トナーが強く要求されている。
通常、磁性トナーは、磁性粒子と結着樹脂とからなり、磁性粒子はトナー粒子中に均一に分散されている。トナー粒子表面に露出している磁性粒子は摩擦などによってトナー粒子から脱落し易く、殊に、小粒径トナーにおいては表面に露出する磁性粒子の割合は多くなる傾向にある。トナー粒子表面から脱落した磁性粒子は微粉化して機器内の環境を悪化させたり、トナーの均一な帯電を妨げるだけでなく、脱落した磁性粒子が静電現像時に飛散し、現像性を低下させるなどの問題が生じてきた。また、トナー粒子表面に露出する磁性粒子の表面積が大きいほど高温高湿環境下ではトナー粒子の帯電性能が低下し、現像性を低下させるなど問題を生じてきた。そこで、トナー粒子表面に露出しても脱落しにくく、トナー粒子表面に露出する磁性体表面の面積が小さい耐久性に優れた磁性粒子粉末が強く求められている。
静電潜像現像時における解像度は、特開昭63−139367号公報中の「この様な乾式現像剤を使用する方法において、良好な画質の可視画像を形成するためには、現像剤が高い流動性を有し、かつ均一な帯電性を有することが必要であり、・・・」なる記載の通り、現像剤であるトナー粒子の流動性及び均一帯電性が大きく関与している。このため、高解像度の画像を得るためには高い流動性を有し、均一な帯電性を有するトナーが求められている。
磁性トナーの諸特性と磁性トナー中に混合分散されている磁性粒子粉末の諸特性とは密接な関係があり、磁性トナーの流動性は磁性トナー粒子表面に露出している磁性粒子の表面状態に大きく依存する。そこで、特開平5−72801号公報、特開平5−213620号公報並びに特開平7−101731号公報等に記載の通り、表面にSiを有する磁性粒子粉末を使用することが磁性トナーの流動性を向上させることに有効であることが知られている。
磁性トナー用磁性粒子粉末として用いられているマグネタイト粒子粉末は、八面体を呈したマグネタイト粒子粉末(特公昭44−668号公報)や、球状を呈したマグネタイト粒子(特公昭62−51208号公報)、さらには六面体を呈したマグネタイト粒子(特開平3−201509号公報)などが知られている。
また、特徴的な粒子形状のものとして、粒子表面に粒状の突起物がある磁性酸化鉄粒子(特許文献1:特開平5−345616号公報)、表面の面数が少なくとも10以上の多面体を有する磁性酸化鉄粒子(特許文献2:特開平5−43253号公報)、粒子形状が粒状を基本とする角の丸い金平糖状の磁性酸化鉄粒子(特許文献3:特開平9−211025号公報、特許文献4:特開平10−182163号公報又は特許文献5:特開2002−278146号公報)、六面体、八面体、複核粒子等の磁性酸化鉄粒子を用いたトナー(特許文献6:特開平11−153882号公報)が知られている。
特開平5−345616号公報 特開平5−43253号公報 特開平9−211025号公報 特開平10−182163号公報 特開2002−278146号公報 特開平11−153882号公報
トナー粒子からの脱落がなく、トナーにしたときの流動性が良好であって、トナー粒子表面に露出する磁性体表面の面積が小さいことによって均一な帯電性が得られることから静電潜像現像において高解像度の画質が得られる磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、このような磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末は未だ提供されていない。
即ち、前出特許文献1(特開平5−345616号公報)に記載の磁性酸化鉄粒子粉末は、粒子表面に粒状の突起物を有するものであるが、個々の突起物が微細であり、十分な脱落防止の効果に劣るものである。
前出特許文献2(特開平5−43253号公報)に記載の磁性酸化鉄粒子粉末は、10以上の面を有する粒子からなるが、凹凸を有しないものであるからトナー表面からの脱落防止効果を有しないものである。
また、前出特許文献3〜5(特開平9−211025号公報、特開平10−182163号公報又は特開2002−278146号公報)には、粒子形状が粒状を基本とする角の丸い金平糖状の磁性酸化鉄粒子が記載されているが、帯電量の立ち上がりが十分とは言い難いものである。
また、前出特許文献6(特開平11−153882号公報)には、種々の形状の磁性酸化鉄粒子を磁性トナーに用いることが記載されているが、粒子形状が球状を基本として粒子表面に角張った突起を有する磁性酸化鉄粒子は一切記載されていない。
そこで、本発明は、トナー粒子からの脱落がなく、トナーにしたときの流動性が良好であって、均一な帯電性が得られることから静電潜像現像において高解像度の画質が得られる磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末並びに該磁性酸化鉄粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
粒子形状が球状を基本として粒子表面に角張った突起を有することを特徴とする磁性酸化鉄粒子粉末である。
また、本発明は、Si換算でFeに対して0.3〜3.0原子%のケイ素を含むことを特徴とする前記磁性酸化鉄粒子粉末である。
また、本発明は、投影図上において粒子表面上の凸状突起物の数が2〜30個の範囲であることを特徴とする前記磁性酸化鉄粒子粉末である。
また、本発明は、Al、Ti、Mg、Co、Zr、Mn、Zn、Ni、Cu、S、Na、P、Ca、Ce、Sr、Ba、Cr、Sn、Biから選ばれる1種又は2種以上の元素をFeに対して0〜10.0原子%含むことを特徴とする前記磁性酸化鉄粒子粉末である。
また、本発明は、第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中の第一鉄塩に対し0.80〜0.99当量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応水溶液を、pHが7.0〜8.5の範囲で、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気してマグネタイト種晶粒子を生成させる第一段反応と、該第一段反応終了後に前記第一段反応で用いたFeに対し1.0〜30.0原子%の第一鉄塩溶液を添加し、反応溶液中に存在するFe2+に対し1.00当量以上の水酸化アルカリ水溶液を添加して、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して前記マグネタイト種晶粒子を成長反応させる第二段反応との二段階反応からなる磁性酸化鉄粒子粉末の製造方法である。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、粒子形状が球状を基本とする角張った突起を有しているので、トナー粒子からの脱落がなく、また、トナーとしたときに露出する磁性体表面の面積が小さく、Siを粒子表面に多く含有することから、トナーにしたときの流動性が良好であって、均一な帯電性が得られることから静電潜像現像において高解像度の画質が得られる磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末として最適である。
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
先ず、本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末について述べる。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、組成的にはマグネタイト粒子((FeO)x・Fe、0<x≦1)からなる。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、球状を基本とする角張った突起を有する粒子である。粒子形状が球状である場合には、トナー粒子に用いた場合にトナー粒子からの脱落を抑制することができない。粒子表面の突起物が丸い突起物である場合には、トナー粒子に用いた場合にトナー表面に露出する磁性粒子表面の面積が大きくなり、帯電性能が低下する。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末を構成する粒子は、投影図上で粒子表面上に凸状突起物を2〜30個、好ましくは4〜20個有するものである。粒子形状が、従来よく知られている球状、八面体、六面体若しくは多面体等の場合には、トナー粒子表面に露出したときに脱落し易い。前記突起物の数が2未満の場合は、トナー粒子表面からの脱落防止の効果が少ないものとなる。30個を越える場合には、トナー粒子表面において樹脂との接触部分は多くなるが、一つ一つの突起物が小さくなり、十分な脱落防止の効果が得られない。
本発明における角張った突起物とは、以下の条件を満たすものである。即ち、磁性酸化鉄粒子の投影図(透過型電子顕微鏡写真等)上において、
(1)突起物の両端がともに凹状であること。
(2)凸部分(突起部分)が角張っていること。
(3)突起物の両辺の延長線上の交点でなす角(a)、突起物の両端を結ぶ延長線と突起物を成す辺との角(b)及び突起物の底辺(c)と高さ(d)について、以下を満足すること。
i)a<180°
ii)90°<b<180°
iii)d/c×100≧30
前記(1)及び(2)については、前記投影図(透過型電子顕微鏡写真等)上において目視により判定する。前記(3)については、前記投影図(透過型電子顕微鏡写真等)における磁性酸化鉄粒子の粒子表面上にある突起物のそれぞれについて角度及び突起物の底辺と高さの比を計測して適合するか否かを判定する。
なお、図1は、前記(1)〜(3)の条件を満たす磁性酸化鉄粒子の形態を拡大して模型的に示した概念説明図であり、前記(1)における「両端がともに凹状」とは矢印Aで示した部分を指し、前記(2)における「凸部分が角張っている」とは矢印Bで示した部分を指し、前記(3)における「突起物の両辺の延長線上の交点でなす角(a)、突起物の両端を結ぶ延長線と突起物を成す辺との角(b)」は、同図中のa、bである。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、球状を基本とし粒子表面に角張った突起物を2〜30個有する磁性酸化鉄粒子を、個数割合で60%以上、好ましくは70%以上含んでいる粒子粉末である。個数割合が60%未満の場合には、トナーとしたときにトナー粒子表面からの脱落防止の効果が少ないものとなる。なお、ここで角張った突起物とは、前記(1)乃至(3)の条件を満たすものをいう。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、平均粒子径が0.05〜0.50μmが好ましい。平均粒子径が0.05μm未満の場合には、単位容積中の粒子が多くなり過ぎ、粒子間の接点数が増えるために、粉体層間の付着力が大きくなり、磁性トナーとする場合に、結着樹脂中への分散性が悪くなる。0.50μmを越える場合には、一個のトナー粒子中に含まれる磁性酸化鉄粒子の個数が少なくなり、各トナー粒子について磁性酸化鉄粒子の分布に偏りが生じ、その結果、トナーの帯電の均一性が損なわれる。磁性酸化鉄粒子粉末の平均粒子径はより好ましくは0.10〜0.30μmである。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、BET比表面積が3〜30m/gが好ましく、より好ましくは5〜20m/gである。BET比表面積が3m/g未満の場合、平均粒子径が0.50μmを超えることとなり、上述したとおり、トナー粒子とした場合にトナーの帯電の均一性が損なわれるとともに、着色力が小さくなり高解像度のトナーを得られない。BET比表面積が30m/gを超える場合、磁性酸化鉄粒子の吸湿性が高くなり、トナー粒子とした場合にトナーの帯電性能を悪化させる。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、Fe2+含有量が磁性酸化鉄粒子全重量に対して12.0〜25.0重量%が好ましく、より好ましくは17.0〜25.0重量%である。12.0重量%未満の場合には、十分な黒色度が得られない。25.0重量%を越える場合には、酸化されやすく環境不安定なものとなる。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、SiをFeに対し0.3〜3.0原子%含有することが好ましく、より好ましくは0.6〜2.7原子%含有している。Siの含有量が0.3原子%未満の場合には、磁性酸化鉄粒子の粒子表面に含有するSiが少なくなるため流動性に劣るものとなる。3.0原子%を超える場合には、含有するケイ素の量が増加するため、吸湿性が高くなり、トナーとした場合、トナーの環境安定性に影響を及ぼす場合がある。また、磁性酸化鉄粒子粉末とは別に単独で存在するSiが、均一な帯電を阻害し、帯電安定性を劣化させる場合がある。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に存在するSi含有量は、Feに対して0.05〜1.0原子%が好ましく、より好ましくは0.08〜0.80原子%である。0.05原子%未満の場合には、トナーとしたときに良好な流動性が得られない。1.0原子%を越える場合には、吸湿性が高くなり、トナーとした場合、トナーの環境安定性に影響を及ぼす場合がある。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、Al、Ti、Mg、Co、Zr、Mn、Zn、Ni、Cu、S、Na、P、Ca、Ce、Sr、Ba、Cr、Sn、Biから選ばれる1種又は2種以上の元素を、Feに対して0〜10.0原子%含有してもよい。前記元素を含有することで、耐熱性が向上する。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、飽和磁化値が80〜92Am/kg(80〜92emu/g)が好ましく、より好ましくは82〜90Am/kg(82〜90emu/g)である。92emu/gの値はマグネタイトの理論値であり、これを越える場合はない。80emu/g未満の場合には、粒子中のFe2+量が減少するため赤色味を帯びてくるので磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末として好ましくない。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、流動性の指数である圧縮度が50以下、好ましくは45以下であり、流動性の良好なものである。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、帯電量が0〜−60μC/g、好ましくは−2〜−50μC/gである。
次に、本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末の製造法について述べる。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中の第一鉄塩に対し0.80〜0.99当量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応水溶液を、pHが7.0〜8.5の範囲で、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気してマグネタイト種晶粒子を生成させる第一段反応と、該第一段反応終了後に前記第一段反応で用いたFeに対し1.0〜30.0原子%の第一鉄塩溶液を添加し、反応溶液中に存在するFe2+に対し1.00当量以上の水酸化アルカリ水溶液を添加して、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して前記マグネタイト種晶粒子を成長反応させる第二段反応との二段階反応を行って得ることができる。
本発明の第一段反応における第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄水溶液や、塩化第一鉄水溶液等がある。
本発明の第一段反応における水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、また、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸アルカリ水溶液及びアンモニア水等を使用することができる。
前記第一段反応においてpH調整前に使用する水酸化アルカリ水溶液の量は、第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して0.80〜0.99当量である。好ましくは0.85〜0.99当量の範囲である。0.80当量未満の場合には、生成物中にゲータイトが混入し、目的のマグネタイト粒子を単一相として得ることができない。0.99当量を越える場合には、粒度分布が大きくなり、均一な粒子径のものが得られない。
本発明の第一段反応における反応温度は70〜100℃である。70℃未満である場合には、針状晶ゲータイト粒子が混在してくる。100℃を越える場合もマグネタイト粒子は生成するが、オートクレーブ等の装置を必要とするため工業的に容易ではない。
本発明の第一段反応における酸化手段は酸素含有ガス(例えば、空気)を液中に通気することにより行う。
本発明の第一段反応において使用される水可溶性ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が使用できる。前記水可溶性ケイ酸塩の添加量は、Feに対してSi換算で0.3〜3.0原子%、好ましくは0.6〜3.0原子%である。0.3原子%未満の場合には、六面体粒子となり、トナー表面からの脱落防止の効果に劣るものとなる。一方、3.0原子%を越える場合には、針状ゲータイト粒子が混在してくる。また、含有するケイ素の量が増加するため、吸着水分量が増加し、トナーとした場合、トナーの環境安定性に影響を及ぼす場合がある。また、磁性酸化鉄粒子粉末とは別に単独で析出するSiが、均一な帯電を阻害し、帯電安定性を劣るものとなる。
前記第一段反応における水可溶性ケイ酸塩の添加時期は、第一段反応において、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応水溶液中に添加する。
本発明の第一段反応においては、第一鉄Fe2+の酸化度(Fe3+/全Fe)が10%以上の範囲において、懸濁液のpHを7.0〜8.5の範囲に制御する。懸濁液のpHが前記範囲外の場合には、硫酸などの酸あるいは水酸化アルカリ水溶液などのアルカリにより懸濁液のpHを7.0〜8.5の範囲に調整する。懸濁液のpHが7.0未満の場合には、粒子表面に凹凸が少なくなり、球状に近いものとなって、トナー表面からの脱落防止の効果が十分なものでない。懸濁液のpHが8.5を越える場合には、粒子形状が六面体若しくは八面体となり、トナー表面からの脱落防止の効果が十分なものでない。
第一段反応は、酸化反応が終了して酸化還元電位が上昇したときを終点とする。
本発明の第二段反応において、反応開始前に第一段反応のFeに対し1.0〜30.0原子%、好ましくは5.0〜25.0原子%の第一鉄塩溶液を反応溶液に添加する。このときの第一鉄塩溶液の添加量が1.0原子%未満の場合、得られる磁性酸化鉄粒子は角張った突起を有しないものとなる。30.0原子%を超える場合、当該磁性酸化鉄粒子とは別に八面体形状の磁性酸化鉄粒子ができ、トナー表面からの脱落防止の効果が十分なものでない。
本発明の第二段反応において使用する水酸化アルカリ水溶液の量は、第二段反応開始時において、第一鉄塩溶液を添加し、懸濁液中に存在するFe2+に対して1.00当量以上である。1.00当量未満では、懸濁液中に存在するFe2+が全量沈殿しない。実用上、1.00当量以上の工業性を考慮した量が好ましい。
本発明の第二段反応における反応温度は70〜100℃である。70℃未満である場合には、針状晶ゲータイト粒子が混在してくる。100℃を越える場合もマグネタイト粒子は生成するが、オートクレーブ等の装置を必要とするため工業的に容易ではない。
本発明の第二段反応における反応温度は第一段反応と同様の条件から選択して行なうことができる。また、酸化手段も第一段反応と同様の条件から選択して行なうことができる。
本発明の第一段反応、第二段反応において、Al、Ti、Mg、Co、Zr、Mn、Zn、Ni、Cu、S、Na、P、Ca、Ce、Sr、Ba、Cr、Sn、Biから選ばれる1種又は2種以上の元素をFeに対して0〜10.0原子%を添加して行うことができる。
尚、原料添加後と第一段反応との間、及び、第一段反応と第二段反応との間において、必要により、所要の時間にわたって十分な攪拌を行ってもよい。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末を用いた磁性トナーについて述べる。
本発明における磁性トナーは、体積平均粒径が3〜20μm、好ましくは5〜15μmである。
本発明における磁性トナーは、前記磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末及び結着樹脂とからなり、必要に応じて離型剤、着色剤、荷電制御剤、その他の添加剤等を含有してもよい。前記結着樹脂と前記磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末との割合は、前記結着樹脂100重量部に対して前記磁性酸化鉄粒子粉末20〜150重量部、好ましくは30〜120重量部である。
本発明における磁性トナーは、トナー表面からの磁性酸化鉄粒子の脱落がほとんどないものである。
本発明における磁性トナーは、流動性が良好なことにより高解像度の画質が得られるものである。
前記磁性トナーに使用する結着樹脂としては、スチレン、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル等のビニル系単量体を重合又は共重合したビニル系重合体が使用できる。この結着樹脂を構成する単量体のスチレンとして、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン及びその置換体があり、アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸ヘキシルがあり、また、メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ヘキシル等の二重結合を有するモノカルボン酸及びその置換体等がある。前記共重合体には、スチレン系成分を50〜95重量%含むことが好ましい。
前記共重合体の製造には、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合法が用いられる。また、結着樹脂にはこのような成分以外にも必要に応じてポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂等、公知の重合体あるいは共重合体を使用することができる。
磁性トナーを作成するにあたって、結着樹脂100重量部に対して、本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、20〜150重量部、好ましくは30〜120重量部使用するのがよい。
離型剤として、炭素数8以上のパラフィン、ポリオレフィン等が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィンワックス、パラフィンラテックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス等を使用することができる。これらのポリオレフィンの配合量は、一般に1〜10重量%の範囲であることが好ましい。
着色剤としては、必要に応じて任意の適当な顔料や染料が使用できる。例えば、カーボンブラック、クロームイエロー、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、群青、キナクリドン、ベンジジンイエローなどが使用できる。
荷電制御剤としては、フッ素系界面活性剤、アゾ系金属錯塩、サリチル酸クロム錯体、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸の金属錯塩、ニグロシン等のアジン系染料、四級アンモニウム塩、カーボンブラックなどが使用できる。
また、他の添加剤として、研磨剤として、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、タングステンカーバイドなどが使用でき、帯電補助剤、導電性付与剤、ケーキング防止剤、流動性付与剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子を添加してもよい。
本発明における磁性トナーを作成する方法としては、混合、混練、粉砕による公知の方法によって行うことができ、具体的には、前記磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末及び前記結着樹脂、必要に応じて着色剤、離型剤、荷電制御剤、その他の添加剤等をまず混合機により十分に混合した後、加熱混練機によって樹脂等を溶融、混練して相溶化させた中に磁性酸化鉄粒子等を分散させ、冷却固化後、得られた樹脂混練物について粉砕及び分級を行って磁性トナーを得ることができる。
前記混合機としては、ヘンシェルミキサー、ボールミルなどの混合機を使用することができる。前記加熱混練機としては、ロールミル、ニーダー、二軸スクリュ−型、エクストルーダー等の加熱混練機を使用することができる。前記粉砕はカッターミル、ジェットミル等の粉砕機によって行うことができ、前記分級も公知の方法により行うことができる。
本発明における磁性トナーを得る他の方法として、懸濁重合法又は乳化重合法があり、懸濁重合法においては、重合性単量体及び磁性酸化鉄粒子粉末、着色剤、必要に応じて、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒し、重合させてトナー粒子を形成することができる。
乳化重合法においては、単量体、磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末、着色剤、重合開始剤などを水中に分散させて重合を行う過程に乳化剤を添加することによって適度な粒度のトナー粒子を形成することができる。
<作用>
従来、トナー粒子表面からの磁性粒子粉末が脱落することによる微粉化を抑制しようとするためには、磁性粒子の粒子表面と樹脂との結合を強固に結着させるために表面処理が行われてきた。しかし、本発明者は粒子表面と樹脂との結着性という点に着目した場合、接触面積をより多くすることがトナー表面からの脱落防止に有効であると考えた。さらに、トナーの帯電性能を向上させるためには、トナー粒子表面に露出する磁性粒子表面の面積を小さくすることが有効であると本発明者は推定した。そこで、磁性粒子の形状について凹凸のある形状のものであって、且つ、その突起物の形状が角張っているものが得られないかという点について鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。
本発明においては、二段階反応からなるマグネタイト粒子粉末の製造方法において、第一段反応中にFeに対しSi換算で0.3〜3.0原子%の水可溶性ケイ酸塩水溶液を添加し、且つ、前記第一段反応中のFe2+の酸化度(Fe3+/全Fe)が10%以上の範囲においてpHを7.0〜8.5の範囲とし、第二段反応において第一段反応のFeに対し1.0〜30.0原子%の第一鉄塩水溶液を添加することによって、球状を基本とし角張った突起を有する磁性酸化鉄粒子が得られるものである。
得られる磁性酸化鉄粒子粉末を用いてトナーを製造した場合には、トナー表面からの磁性酸化鉄粒子の脱落がなく耐久性に優れ、トナー粒子表面に露出する磁性体表面の面積が小さくなり、しかも、磁性粒子の粒子表面にSiが存在するのでトナーとしたときの流動性が良好であって、均一な帯電性が得られることから静電潜像現像において高解像度の画質が得られるものである。
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
磁性酸化鉄粒子粉末の平均粒子径は、電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。また、比表面積はBET法により測定した値で示した。
磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用し、外部磁場796kA/m(10KOe)までかけて測定した。
磁性酸化鉄粒子粉末の粒子形状は、走査型電子顕微鏡(日立S−800)により観察した。また、磁性酸化鉄粒子の粒子表面にある突起物について、以下の条件を満たすものを凸状突起物として認定した。即ち、磁性酸化鉄粒子の投影図(透過型電子顕微鏡写真)上において、
(1)突起物の両端がともに凹状であること。
(2)凸部分(突起部分)が角張っていること。
(3)突起物の両辺の延長線上の交点でなす角(a)、突起物の両端を結ぶ延長線と突起物を成す辺との角(b)及び突起物の底辺(c)と高さ(d)について、以下を満足すること。
i)a<180°
ii)90°<b<180°
iii)d/c×100≧30
前記(1)及び(2)については、前記投影図(透過型電子顕微鏡写真等)上において目視により判定する。前記(3)については、前記投影図(透過型電子顕微鏡写真等)における磁性酸化鉄粒子の粒子表面上にある突起物のそれぞれについて角度及び突起物の底辺と高さの比を計測して適合するか否かを判定した。
前記投影図において前記条件(1)乃至(3)を満足する凸状突起物が粒子表面に2〜30個の範囲にあるかどうかによって本発明に係る磁性酸化鉄粒子であるか否かの判定を行った。
磁性酸化鉄粒子のSi量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業(株)製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した値で示した。
磁性酸化鉄粒子の粒子表面のSi量については、下記の方法で測定した。
即ち、磁性酸化鉄粒子粉末とイオン交換水とを混合した後、分散させて懸濁液としたものを水酸化アルカリ水溶液と混合して30分間以上攪拌した後、懸濁液を濾過、乾燥して得られた磁性酸化鉄粒子粉末のSi量を測定し、前記アルカリによる処理前の全Si量との差をもって粒子表面のSi量とした。
Fe2+含有量は、下記の化学分析法により求めた値で示した。即ち、不活性ガス雰囲気下において、磁性酸化鉄粒子粉末0.5gに対しリン酸と硫酸とを2:1の割合で含む混合溶液25ccを添加し、上記磁性酸化鉄粒子を溶解する。この溶解水溶液の希釈液に指示薬としてジフェニルアミンスルホン酸を数滴加えた後、重クロム酸カリウム水溶液を用いた酸化還元滴定を行った。上記希釈液が紫色を呈した時を終点とし、該終点に至るまでに使用した重クロム酸カリウム水溶液の量から計算して求めた。
磁性酸化鉄粒子粉末の帯電量は、「ブローオフ帯電量測定装置TB−200」(東芝ケミカル社製)を用い、キャリアはTFV−200/300(パウダーッテック社製)を用いて磁性酸化鉄粒子粉末の濃度を5%とし、混合時間を30分として測定した。
磁性酸化鉄粒子粉末の圧縮度は、カサ密度(ρa)とタップ密度(ρt)とをそれぞれ測定し、これらの値を下記式に代入して算出した値に基づいて、下記3段階で評価した。
圧縮度=〔(ρt−ρa)/ρt〕×100
尚、圧縮度が小さくなるほど流動性がより優れたものとなる。
○:圧縮度が40未満
△:圧縮度が40以上〜50未満
×:圧縮度が50以上
なお、カサ密度(ρa)は、JIS K5101の顔料試験法により測定し、タップ密度(ρt)はカサ密度測定後の磁性酸化鉄粒子粉末10gを20ccのメスシリンダー中にロートを用いて静かに充填させ、次いで、25mmの高さから自然落下させる操作を600回繰り返した後、充填している磁性酸化鉄粒子粉末の量(cc)をメスシリンダーの目盛りから読み取り、この値を下記式に代入して算出した値で示した。
タップ密度(g/cc)=10(g)/容量(cc)
帯電量の立ち上がりは、「ブローオフ帯電量測定装置TB−200」(東芝ケミカル社製)を用い、キャリアはTFV−200/300(パウダーッテック社製)を用いて樹脂混練物の濃度を5%とし、混合時間を30分として測定値が一定となるまでの時間を測定し、下記3段階で評価した。
○:10秒で一定となった。
△:20秒で一定となった。
×:30秒で一定となった。
磁性酸化鉄粒子粉末のトナー粒子表面からの脱落性についての評価は、以下の手法にて行なった。即ち、磁性酸化鉄粒子粉末とスチレンアクリル樹脂とを混練して得られる樹脂混練物を粉砕して樹脂混練物粒子粉末を作成し、該樹脂混練物粒子粉末をペイントシェーカーで60分間振盪させて生じる磁性酸化鉄粒子粉末の微粉の量を電子顕微鏡により観察して、従来の球状マグネタイト粒子粉末((比較例3)粒子形状:球状、平均粒子径0.21μm、BET比表面積8.9m/g、Si含有量1.1原子%、飽和磁化値84.7Am/kg)を用いた場合と比較し、下記3段階で評価した。
○:磁性酸化鉄粒子粉末の微粉が殆んど無い。
△:従来の球状マグネタイト粒子粉末よりは少ない。
×:従来の球状マグネタイト粒子粉末と同程度以上。
実施例1
Fe2+1.6mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液25.0lを、あらかじめ反応器中に準備された3.1Nの水酸化ナトリウム水溶液24.5lに加え(Fe2+に対し0.95当量に該当する。)、pH6.7、温度90℃において水酸化第一鉄塩コロイドを含む第一鉄塩懸濁液の生成を行った後、毎分80lの空気を通気して第一段反応を開始し、同時にケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)123.4g(Feに対しSi換算で1.7原子%に該当する。)を水で希釈して0.3lとしたものを添加した。上記水ガラス溶液の添加後、攪拌しながら酸化反応を続け、第一段反応を終了させマグネタイト核晶粒子を含む第一鉄懸濁液を得た。このとき、酸化反応開始後、Fe2+の酸化度が10%を越えて以降のpHは7.0〜8.5の範囲内であった。
第一段反応終了後の上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に9Nの水酸化ナトリウム水溶液1.6l、Fe2+ 1.6mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液3.4lを添加して懸濁液のpHを9.5に調整した後、温度90℃において毎分100lの空気を30分間通気して第二段反応を行ってマグネタイト粒子を生成させた。生成粒子は、常法により、水洗、濾別、乾燥、粉砕した。第二段反応において、硫酸第一鉄水溶液の添加量は第一段反応で添加した第一鉄塩水溶液に対して13.8原子%であり、水酸化ナトリウム水溶液の添加量は反応溶液中に存在するFe2+に対して1.1当量比であった。
得られたマグネタイト粒子は図2に示す透過型電子顕微鏡写真(×50000)から明らかな通り、その粒子形状は、球状を基本とし角張った突起を有していた。また、粒度が均斉なものであり、平均粒子径が0.21μm、BET比表面積の値が9.2m/gであった。
粒子表面の突起物について凸状突起物についての前記検査方法(1)乃至(3)について検査を行った結果、一つの突起は、a=118°、b=148°及び150°、d/c×100=40であって角張った突起を有していることを確認した。他の突起についても同様に確認して角張った突起であることを確認した。
また、このマグネタイト粒子粉末は、蛍光X線分析の結果、Feに対しSiを1.5原子%含有したものであり、粒子表面のSi量は0.13原子%であった。また、酸化還元滴定の結果、Fe2+量は18.8重量%であり、十分な黒色度を有するものであった。磁気特性は、飽和磁化値が87.3Am/kg(87.3emu/g)であった。圧縮度の測定結果から流動性に優れるものであった。帯電量は、−10.0μC/gであった。
前記得られたマグネタイト粒子粉末とスチレンアクリル樹脂とを混練して得られる樹脂混練物の粉砕物である樹脂混練物粒子粉末を作成し、磁性酸化鉄粒子粉末の脱落性について前記評価方法によって評価を行った結果、十分な脱落防止効果を有するものであった。
実施例2
Fe2+ 1.6mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液21.0lを、あらかじめ反応器中に準備された3.1Nの水酸化ナトリウム水溶液20.7lに加え(Fe2+に対し0.95当量に該当する。)、pH6.7、温度90℃において水酸化第一鉄塩コロイドを含む第一鉄塩懸濁液の生成を行った後、毎分80lの空気を通気して第一段反応を開始し、同時にケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)123.4g(Feに対しSi換算で1.7原子%に該当する。)を水で希釈して0.3lとしたものを添加した。上記水ガラス溶液の添加後、攪拌しながら酸化反応を続け、第一段反応を終了させマグネタイト核晶粒子を含む第一鉄懸濁液を得た。このとき、酸化反応開始後、Fe2+の酸化度が10%を越えて以降のpHは7.0〜8.5の範囲内であった。
第一段反応終了後の上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に9Nの水酸化ナトリウム水溶液2.5l、Fe2+ 1.6mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液3.4l、0.1mol/l硫酸亜鉛水溶液を2.4l添加して懸濁液のpHを9.5に調整した後、温度90℃において毎分100lの空気を30分間通気して第二段反応を行ってマグネタイト粒子を生成させた。生成粒子は、常法により、水洗、濾別、乾燥、粉砕した。
得られたマグネタイト粒子は、その粒子形状は、球状を基本とし角張った突起を有していた。また、粒度が均斉なものであり、平均粒子径が0.20μm、BET比表面積の値が9.0m/gであった。
粒子表面の突起物について凸状突起物についての前記検査方法(1)乃至(3)について検査を行った結果、角張った突起を有していることを確認した。
また、このマグネタイト粒子粉末は、蛍光X線分析の結果、Feに対しSiを1.6原子%含有したものであり、粒子表面のSi量は0.10原子%であった。また、酸化還元滴定の結果、Fe2+量は18.8重量%であり、十分な黒色度を有するものであった。磁気特性は、飽和磁化値が88.0emu/gであった。圧縮度の測定結果から流動性に優れるものであった。帯電量は、−9.0μC/gであった。
前記得られたマグネタイト粒子粉末とスチレンアクリル樹脂とを混練して得られる樹脂混練物の粉砕物である樹脂混練物粒子粉末を作成し、磁性酸化鉄粒子粉末の脱落性について前記評価方法によって評価を行った結果、十分な脱落防止効果を有するものであった。
実施例2〜9、比較例1〜5
第一段反応における第一鉄塩水溶液の種類、濃度並びに使用量、水酸化アルカリ水溶液の種類、濃度並びに使用量、第一段反応中の調整pH、反応温度、第二段反応における水酸化アルカリ水溶液の種類並びに第二段反応における硫酸第一鉄溶液の種類、濃度、並びに使用量、第二段反応における反応温度を種々変化させた以外は前記実施例1又は2と同様にして磁性酸化鉄粒子粉末を得た。このときの製造条件を表1に、得られた磁性酸化鉄粒子粉末の諸特性を表2に示す。
比較例1で得られたマグネタイト粒子粉末は図3に示す電子顕微鏡写真(×50000)から明らかな通り、六面体形状を有しているものであり、実施例1のマグネタイト粒子粉末に比べて樹脂混練物粒子表面からの脱落防止効果が十分ではなく、粒子表面に含有するSiが少ないため、流動性に劣るものである。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、粒子形状が球状を基本とする角張った突起を有しているので、トナー粒子からの脱落がなく、また、トナーとしたときに露出する磁性体表面の面積が小さくトナーの帯電を阻害し難くなることによってトナーの帯電性能を向上させることができ、高温高湿環境下においても画像濃度が高く、Siを粒子表面に多く含有することから、トナーにしたときの流動性が良好であって、均一な帯電性が得られることから静電潜像現像において高解像度の画質が得られる磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末として最適である。
本発明に係る磁性酸化鉄粒子の形態を拡大して模型的にした概念説明図である。 実施例1で得られた磁性酸化鉄粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×50000)である。 比較例1で得られた磁性酸化鉄粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×50000)である。 比較例3で得られた磁性酸化鉄粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×50000)である。 比較例5で得られた磁性酸化鉄粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×50000)である。
符号の説明
a 突起物の両辺の延長線上の交点でなす角
b 突起物の両端を結ぶ延長線と突起物を成す辺との角
c 突起物の底辺
d 突起物の高さ

Claims (5)

  1. 粒子形状が球状を基本として粒子表面に角張った突起を有することを特徴とする磁性酸化鉄粒子粉末。
  2. Si換算でFeに対して0.3〜3.0原子%のケイ素を含む請求項1記載の磁性酸化鉄粒子粉末。
  3. 投影図上において粒子表面上の突起物の数が2〜30個の範囲である請求項1又は2に記載の磁性酸化鉄粒子粉末。
  4. Al、Ti、Mg、Co、Zr、Mn、Zn、Ni、Cu、S、Na、P、Ca、Ce、Sr、Ba、Cr、Sn、Biから選ばれる1種又は2種以上の元素をFeに対して0〜10.0原子%含む請求項1乃至3のいずれかに記載の磁性酸化鉄粒子粉末。
  5. 第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中の第一鉄塩に対し0.80〜0.99当量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応水溶液に、Feに対してSi換算で0.3〜3.0原子%の水可溶性ケイ酸塩を存在させて、pHが7.0〜8.5の範囲で、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気してマグネタイト種晶粒子を生成させる第一段反応と、該第一段反応終了後に前記第一段反応で用いたFeに対し1.0〜30.0原子%の第一鉄塩溶液を添加し、反応溶液中に存在するFe2+に対し1.00当量以上の水酸化アルカリ水溶液を添加して、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して前記マグネタイト種晶粒子を成長反応させる第二段反応との二段階反応からなる請求項1〜4のいずれかに記載の磁性酸化鉄粒子粉末の製造方法。
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