JP5348118B2 - 可変動弁機構の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、バルブリフト量を変更する可変動弁機構を備えたエンジンに用いて好適の、可変動弁機構の制御装置に関する。
従来、車両の燃費節減や出力の向上,排気エミッションの低減等を目的として、吸気弁や排気弁の動作を変更するための可変動弁機構を備えたエンジンが開発されている。可変動弁機構に搭載される機能としては、主に二種類の機能が挙げられる。第一の機能はバルブの開閉のタイミングを可変とする可変バルブタイミング(VVT,Variable Valve Timing)機能であり、第二の機能はバルブの開放量(バルブリフト量)を可変とする可変バルブリフト(VVL,Variable Valve Lift)機能である。
可変バルブタイミング機能は、例えばクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相を変更する機構によって実現される。これによりバルブの開閉のタイミングが変更され、バルブの開放開始時期や開放終了時期に対応する位相が進角方向、又は遅角方向に制御される。
また、可変バルブリフト機能は、例えばカムシャフトに固定されたカムからロッカアームに伝達される揺動の大きさを変更する機構によって実現される。これによりバルブが往復移動する距離が変更され、シリンダ内に導入される空気量やインテークマニホールド内の圧力等が制御される。なお、可変動弁機構の機械的な構成に関しては、例えば特許文献1に記載されている。
特開2009−41467号公報
可変バルブリフト機能を備えたエンジンにおいて、シリンダ内に導入される空気量は、スロットルバルブの開度や吸気バルブのバルブリフト量の制御によって調整される。一方、スロットル開度及びバルブリフト量のそれぞれを変更することによる空気量の変化の度合いは、必ずしも同一ではない。
すなわち、スロットルバルブがインテークマニホールドの上流側に設けられるのに対して、吸気バルブはシリンダの入口に設けられるため、バルブリフト量の変更に伴う空気量の変化はスロットル開度の変更に伴う空気量の変化よりも急速となる。例えばバルブリフト量が急変すると、その直後に実際にシリンダ内に導入される空気量も急変する。このような空気量の急変がスロットル開度の制御で抑制できないほど大きければ、エンジンから出力されるトルクが急増してトルクショックが生じる。そのため、制御上でバルブリフト量の急変を抑制する必要がある。
しかし、例えばドライバの要求により車両を急加速させたい場合や、外部負荷の要求からエンジンの出力を急増させたい場合には、このようなバルブリフト量の変動を抑制する制御が足枷となって加速感が不足し、良好なドライブフィーリングが得られない。
このような課題に対し、急加速の要求がある状況下ではバルブリフト量の急変を許容し、それ以外の状況下ではバルブリフト量の急変を抑制する制御構成とすることも考えられる。しかしながらこの場合、バルブリフト量の急変を抑制するか否かを判定するための判定条件が非常に複雑となる。
例えば、アクセルペダルの踏み込み操作やエンジンの作動状態に基づく全ての運転パターンに対応した判定条件やバルブリフト量を設定しておこうとすると、予め記憶しておかなければならないデータ量が膨大となる。さらにこの場合、個々のデータがエンジンの種類やスペック,吸排気系の形状,エンジンに作用する外部負荷の状態等に応じて異なる値となるため、車種毎,車両毎,あるいは走行条件毎にキャリブレーションが必要になるという課題が生じる。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、トルクの急変を抑制することによる安定性の提供と急加速時における加速感の提供とを両立させることである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示する可変動弁機構の制御装置は、エンジンの吸気弁のリフト量を変更する可変動弁機構の制御装置であって、前記エンジンのシリンダに導入される空気量の目標値を目標空気量として設定する設定手段と、所定時間あたりの前記目標空気量の変化量を第一変化量として演算する演算手段とを備える。また、前記演算手段で演算された前記第一変化量に基づき、前記リフト量を制御する制御手段を備える。
ここでいう「空気量」には、前記エンジンのシリンダ内に導入される実際の空気量(空気の体積や空気の質量等)だけでなく、前記空気量に対応する種々のパラメータが含まれる。前記パラメータの具体例としては、充填効率や体積効率(充填効率に気温補正や圧力補正が加えられた値等)等が挙げられる。
したがって、前記制御装置には、例えば充填効率Ecに関連するパラメータ(dEcLIM,ΔEcVVL等)を用いてバルブリフト制御を実施するものが含まれる。
なお、第一変化量は、車両に要求される加速の緩急の度合いを判断するための指標となる。
た、所定の前記リフト量あたりの前記空気量の変化量を第二変化量として推定する推定手段を備え、前記制御手段が、前記演算手段で演算された前記第一変化量及び前記推定手段で推定された前記第二変化量に基づき、前記リフト量を制御する。
なお、第二変化量は、リフト量を変更した場合にその変更によってエンジン出力に与えられる影響の大きさを判断するための指標となる。
た、前記制御手段が、前記第一変化量及び前記第二変化量に基づき、前記リフト量の変化速度を制限する。
2)前記制御手段が、前記第一変化量の前記第二変化量に対する比を前記変化速度の上限値とすることが好ましい。
つまり、前記制御手段は、前記比以下の変化速度で前記リフト量を制御することが好ましい
3)前記エンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記エンジンのインマニ圧(すなわち、インテークマニホールド圧)を検出するインマニ圧検出手段とを備えることが好ましい。
この場合、前記推定手段が、前記エンジン回転数検出手段で検出された前記エンジン回転数と前記インマニ圧検出手段で検出された前記インマニ圧とに基づいて、前記シリンダへの吸入空気の入りやすさの指標値を推定する第一推定手段と、前記エンジン回転数,前記インマニ圧及び前記第一推定手段で推定された前記指標値に基づいて、前記第二変化量を推定する第二推定手段とを有することが好ましい。
(4)また、ここで開示する可変動弁機構の制御装置は、エンジンの吸気弁のリフト量を変更する可変動弁機構の制御装置であって、前記エンジンのシリンダに導入される空気量の目標値を目標空気量として設定する設定手段と、所定時間あたりの前記目標空気量の変化量を第一変化量として演算する演算手段と、前記演算手段で演算された前記第一変化量に基づき、前記リフト量を制御する制御手段と、所定の前記リフト量あたりの前記空気量の変化量を第二変化量として推定する推定手段と、前記エンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記エンジンのインマニ圧を検出するインマニ圧検出手段とを備える。
前記制御手段は、前記演算手段で演算された前記第一変化量及び前記推定手段で推定された前記第二変化量に基づき、前記リフト量を制御する。
前記推定手段は、前記エンジン回転数検出手段で検出された前記エンジン回転数と前記インマニ圧検出手段で検出された前記インマニ圧とに基づいて、前記シリンダへの吸入空気の入りやすさの指標値を推定する第一推定手段と、前記エンジン回転数,前記インマニ圧及び前記第一推定手段で推定された前記指標値に基づいて、前記第二変化量を推定する第二推定手段とを有する。
開示の可変動弁機構の制御装置によれば、第一変化量に基づくリフト量の制御により、緩加速と急加速とを区別することができ、加速要求に応じた柔軟なバルブリフト制御が可能となり、加速性能を向上させつつ急激なトルク変動を抑制することができる。
一実施形態に係る可変動弁機構の制御装置の構成を模式的に示すブロック図である。 本制御装置での演算内容を説明するためのグラフである。 本制御装置での演算手順を例示するフローチャートである。 緩加速時における本制御装置の作用を説明するためのタイムチャートであり、(a)は目標トルク、(b)は目標充填効率、(c)は目標充填効率の変化量、(d)は体積効率係数及びその予測値、(e)は単位制御角あたりの充填効率変化量、(f)は制御角の変化量制限値、(g)は目標制御角を示すものである。 急加速時における本制御装置の作用を説明するためのタイムチャートであり、(a)は目標トルク、(b)は目標充填効率、(c)は目標充填効率の変化量、(d)は体積効率係数及びその予測値、(e)は単位制御角あたりの充填効率変化量、(f)は制御角の変化量制限値、(g)は目標制御角を示すものである。
図面を参照してエンジンの制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.構成]
[1−1.エンジン]
本実施形態の制御装置は、図1に示す車載のエンジン10に適用される。ここでは、多気筒四サイクル型のエンジン10に設けられた複数のシリンダのうち、一つのシリンダ11を示す。シリンダ11の頂部には点火プラグがその先端を燃焼室側に突出させた状態で設けられる。また、燃焼室のシリンダヘッド側の頂面には、吸気ポート12及び排気ポート13が設けられる。
燃焼室の頂面には、吸気ポート12の入口を開閉する吸気弁18と、排気ポート13の入口を開閉する排気弁19とが設けられる。吸気弁18の開閉駆動により吸気ポート12と燃焼室とが連通又は閉鎖され、排気弁19の開閉駆動により排気ポート13と燃焼室とが連通又は遮断される。
なお、吸気弁18の上端部は図示しない吸気用のロッカシャフトに接続されており、排気弁19の上端部は図示しない排気用のロッカシャフトに接続されている。吸気弁18及び排気弁19は、それぞれのロッカシャフトの揺動によって上下方向に往復駆動される。
吸気ポート12よりも吸気の上流側にはインテークマニホールド14(インマニ)が設けられ、さらにこれの上流側に吸気通路20が接続される。吸気通路20内には、ETV21(Electric Throttle Valve)及びAFS22(Air Flow Sensor)が介装される。ETV21は電子制御によりその開度を任意に変更することが可能な電子制御式スロットルバルブである。また、AFS22は、シリンダ11内への吸気量を検出するセンサであり、ここではETV21を通過する吸気流量Qが検出される。なお、インマニ14の内部には、EVT21よりも下流側における空気圧をインマニ圧力PIMとして検出するインマニ圧センサ7が設けられる。
シリンダ11内を往復摺動するピストン17は、コネクティングロッドを介してクランクシャフト15に接続される。クランクシャフト15には、その回転角θCRを検出するクランク角度センサ8(エンジン回転数検出手段)が設けられる。
エンジン10を搭載した車両の任意の位置には、アクセルペダルの踏み込み量に対応する操作量θACを検出するAPS9(Acceleration pedal Position Sensor)が設けられる。アクセルペダルの踏み込み操作量θACは運転者の加速要求に対応するパラメータであり、言い換えるとエンジン10の負荷に相関するパラメータである。
AFS22で検出された吸気流量Q,APS9で検出された操作量θAC,クランク角度センサ8で検出されたクランクシャフト15の回転角θCR及びインマニ圧センサ7で検出されたインマニ圧力PIMは、後述するエンジンECU1に伝達される。なお、単位時間あたりの回転角θCRの変化量からエンジン回転数Neを把握することができる。したがって、クランク角度センサ8はエンジン10のエンジン回転数Neを検出する手段としての機能を持つ。エンジン回転数Neは、クランク角度センサ8で検出されたクランクシャフトの角度θCRに基づいてエンジンECU1が演算する構成としてもよいし、クランク角度センサ8の内部で演算する構成としてもよい。
[1−2.可変動弁機構]
吸気弁18及び排気弁19のそれぞれには、可変動弁機構6が接続されている。可変動弁機構6は吸気弁18及び排気弁19のそれぞれについて、最大バルブリフト量及びバルブタイミングを個別に、又は、連動させつつ変更する機構である。図1に示すように、可変動弁機構6は、可変バルブリフト機構6aと可変バルブタイミング機構6bとを備える。
可変バルブリフト機構6aは、吸気弁18や排気弁19の最大バルブリフト量を連続的に変更する機構である。この可変バルブリフト機構6aは、カムシャフトに固定されたカムからロッカアームに伝達される揺動の大きさを変更する機能を有する。ロッカアームの揺動の大きさを変更するための具体的な構造は任意であり、例えば特許文献1に記載されたような公知の構造を適用可能である。
本実施形態では、カムシャフトに固定されたカムとロッカアームとの間に揺動部材を別途介装させ、揺動部材を介してカムシャフトの回転運動をロッカアームの揺動運動に変換する構造としている。この場合、揺動部材の位置を移動させてカムとの接触位置を変更することで、揺動部材の揺動量が変化する。カムと揺動部材との接触点が揺動部材の揺動中心点に近づくほど、揺動部材の揺動量が増大する。また、カムと揺動部材との接触点を固定した場合、揺動部材の揺動量が最大となる接触点の位置は、カムの回転中心点,カムと揺動部材との接触点及び揺動部材の揺動中心点を結ぶ直線が垂直になる位置である。
これらの特性を利用して、ロッカアームの揺動量を揺動部材の位置に応じて連続的に変化させる。また、揺動部材の移動方向は、ロッカシャフトを中心とした円周方向とする。揺動部材を駆動するアクチュエータとしては、例えば電動モータや油圧モータ等を用いればよい。
可変バルブリフト機構6aには、バルブリフト量に対応するパラメータである制御角θVVLを検出(又は演算)する制御角検出部16aが設けられる。ここでいう制御角θVVLとは、ロッカシャフトに対する揺動部材の基準位置からの角度変化量である。なお、制御角θVVLが大きいほどバルブリフト量が増大するように、揺動部材の基準位置が設定されているものとする。制御角検出部16aで検出された制御角θVVLは、エンジンECU1に伝達される。
可変バルブタイミング機構6bは、吸気弁18や排気弁19の開閉のタイミング(バルブタイミング)を変更する機構である。この可変バルブタイミング機構6bは、ロッカアームに揺動を生じさせるカム又はカムシャフトの回転位相を変更する機能を有する。カム又はカムシャフトの回転位相を変更するための具体的な構造は任意であり、例えば特許文献1に記載されたような公知の構造を適用可能である。
また、可変バルブタイミング機構6bには、バルブタイミングに対応するパラメータである位相角θVVTを検出(又は演算)する位相検出部16bが設けられる。ここでいう位相角θVVTとは、基準となるカムシャフトの位相角から実際のカムシャフトの位相角がどの程度進角又は遅角しているかを示す、位相角の変化量である。位相検出部16bで得られた位相角θVVTは、エンジンECU1に伝達される。
[1−3.エンジンECU]
この車両には電子制御装置として、エンジンECU1(Engine - Electronic Control Unit,エンジン電子制御装置)が設けられる。このエンジンECU1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される。エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを制御する。
エンジンECU1は、トルクベース制御によってエンジン10のトルク挙動を制御する。トルクベース制御とは、エンジン10に要求されるトルクの大きさを基準として吸気量や燃料噴射量,点火時期等を調節する制御である。この制御では、例えば運転者からの出力要求や外部制御システムからの出力要求がトルクに換算され、それらのトルクが総合的に判断されてエンジントルクの目標値が演算され、この目標値のトルクが得られるように吸気量や燃料噴射量,点火時期等が制御される。また、エンジンECU1は、可変バルブリフト機構6aを駆動することで吸気弁18の開度を調節し、シリンダ11内に導入される空気量を制御するバルブリフト制御を実施する。
このバルブリフト制御では、シリンダ11の充填効率Ecの目標値である目標充填効率EcTGTの単位時間あたりの変化量(第一変化量)に基づいて、吸気弁18のバルブリフト量の目標値に対応する目標制御角θVVL_TGTが制御される。目標充填効率EcTGTの変化速度は、車両に要求される加速の緩急の度合いを判断するための指標となる。
また、バルブリフト制御では、所定のバルブリフト量あたりの充填効率Ecの変化量(第二変化量)に基づいて、目標制御角θVVL_TGTが制御される。所定のバルブリフト量あたりの充填効率Ecの変化量は、仮に吸気弁18のバルブリフト量を所定量だけ変化させた場合に実際の充填効率Ecがどの程度変動するかを意味する値であり、バルブリフト量の変更によってエンジン10の出力に与えられる影響の大きさを判断するための指標となる。
[2.制御内容]
上記のバルブリフト制御を実施するための機能について詳述する。図1に示すように、エンジンECU1には、目標充填効率設定部2,演算部3,推定部4及び制御部5が設けられる。これらの目標充填効率設定部2,演算部3,推定部4及び制御部5の各機能は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、あるいはソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
目標充填効率設定部2(設定手段)は、シリンダ11の充填効率Ecの目標値である目標充填効率EcTGTを設定するものである。ここでは、クランクシャフトの角度θCRに基づいて得られるエンジン回転数Neやアクセルペダルの操作量θAC,図示しないエンジンECU1以外の電子制御装置(例えば、CVT-ECUやESC-ECU,エアコンECU等)から要求される外部要求,パワーステアリング装置から要求される要求等に基づき、エンジン10の出力トルクの目標値としての目標トルクPiTGTが演算される。ここで演算された目標トルクPiTGTは制御部5に伝達される。
なお、ここでいうPiとは、正確には図示平均有効圧Piを意味する。このエンジンECU1の内部では、図示平均有効圧Piを用いてトルクの大きさが表現される。以下、エンジン10で生じる力のモーメントのことだけでなく、ピストン17の上面に作用する平均有効圧(例えば、図示平均有効圧Piや正味平均有効圧Pe)で表現されたトルク相当量(トルクに相当する圧力)のことも便宜的にトルクと呼ぶ。
また、目標充填効率設定部2は、上記の目標トルクPiTGTをエンジン10で発生させるために必要な目標充填効率EcTGTを設定する。目標充填効率EcTGTは所定の演算サイクル毎(例えば、数ミリ秒毎)に繰り返し設定される。ここで設定された目標充填効率EcTGTは、演算部3に伝達される。以下、前回の演算サイクルで得られた目標充填効率EcTGTのことをEcTGT(n-1)と表記し、今回の演算サイクルで得られたもののことをEcTGT(n)と表記する。
演算部3(演算手段)は、所定時間あたりの目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIM(第一変化量)を演算するものである。ここでは、以下の式1に従って演算周期あたりの変化量dEcLIMが演算される。また、変化量dEcLIMには所定の下限値C(最小値)が設定されている。例えば、式1で得られた変化量dEcLIMが所定の下限値C未満である場合には、演算部3が変化量dEcLIMを下限値Cに設定する。変化量dEcLIMの値は、制御部5に伝達される。この変化量dEcLIMは、エンジン10を搭載する車両に要求される加速の緩急の度合いを判断するための指標となる。
Figure 0005348118
推定部4(推定手段)は、所定のバルブリフト量あたりの実際の充填効率Ecの変化量ΔEcVVLを推定するものである。この推定部4には、第一推定部4a(第一推定手段)及び第二推定部4b(第二推定手段)が設けられる。
第一推定部4aは、シリンダ11への吸入空気の入りやすさの指標として体積効率係数KMAPを演算する。体積効率係数KMAPは、例えばエンジン回転数Ne及びインマニ圧力PIMに基づいて演算される。本実施形態では、エンジン回転数Ne,インマニ圧力PIM,制御角θVVL及び位相角θVVTに基づき、予めエンジンECU1内に保存されているマップを用いて体積効率係数KMAPを演算する。
また第一推定部4aは、その時点の制御角θVVLを仮に所定角dθVVLだけ変化させた場合の体積効率係数KMAPの推定値を推定体積効率係数KMAP_ETMとして演算する。推定体積効率係数KMAP_ETMの演算に際し、他の条件は上記の体積効率係数KMAPを推定演算時と同一とする。例えば、上述のマップを用いてエンジン回転数Ne,インマニ圧力PIM及び位相角θVVTを変化させずに、制御角θVVLを(θVVL+dθVVL)に置換した場合の値を推定する。
また、図2に示すように、エンジン回転数Ne,インマニ圧力PIM及び位相角θVVTが同一の場合、制御角θVVLと体積効率係数KMAPとの間には所定の関数関係が認められ、おおむね制御角θVVLが増大するほど体積効率係数KMAPも増大する。したがって、このような関数関係を予めエンジンECU1に記憶させておき、推定体積効率係数KMAP_ETMの演算に利用してもよい。なお、制御角θVVLを変化させる所定量dθVVLの符号は任意である。第一推定部4aで演算,推定された体積効率係数KMAP及び推定体積効率係数KMAP_ETMは、第二推定部4bに伝達される。
第二推定部4bは、第一推定部4aで推定された体積効率係数KMAP及び推定体積効率係数KMAP_ETMを用いて、以下の式2に従って単位制御角(例えば、制御角1[deg])あたりの体積効率係数の変化量dKMAPを演算する。この変化量dKMAPは、吸気弁18のバルブリフト量を単位制御角分だけ変化させたときの、シリンダ11への空気の入りやすさがどの程度変化するかを意味する。
Figure 0005348118
また、第二推定部4bは、上記の変化量dKMAPとインマニ圧力PIMとに基づき、以下の式3に従って単位制御角(例えば、制御角1[deg])あたりの充填効率の変化量ΔEcVVL(第二変化量)を演算する。この変化量ΔEcVVLは、吸気弁18のバルブリフト量を単位制御角分だけ変化させたときに、シリンダ11に導入される空気量の変動分(増分又は減少分)に対応する値である。ここで演算された変化量ΔEcVVLは、制御部5に伝達される。
Figure 0005348118
制御部5(制御手段)は、演算部3で演算された変化量dEcLIMと、推定部4での演算により推定された変化量ΔEcVVLとに基づき、吸気弁18のバルブリフト量に対応する制御角θVVLを制御するものである。ここでは、式4に示すように、変化量dEcLIMを変化量ΔEcVVLで除した値が演算され、これがバルブリフトの変化量制限値dθVVL_LIMとして設定される。
Figure 0005348118
また、制御部5は、エンジン回転数Ne,目標充填効率設定部2で演算された目標トルクPiTGT及びその他の吸気条件に基づき、予め設定されたマップ等を用いて、可変バルブリフト機構6aにおける制御角θVVLの仮の目標値である制限前目標制御角θVVL_TGT0を演算する。その後、制御部5は以下の条件に従って実際の目標制御角θVVL_TGTを設定する。ここで設定された目標制御角θVVL_TGTは可変バルブリフト機構6aに伝達され、実際の制御角θVVLを目標制御角θVVL_TGTに近づける(あるいは一致させる)ように、揺動部材の角度が制御される。
なお、以下の条件中のθVVL_TGT(n-1)は、前回の演算周期で得られた目標制御角θVVL_TGTである。これにより、前回の目標制御角θVVL_TGTを基準として、制御角θVVLの変化が最大でも変化量制限値dθVVL_LIMとなり、すなわち、変化量制限値dθVVL_LIMで許容される変動範囲内で吸気弁18のバルブリフト量が変動させる制御が実施される。
Figure 0005348118
制限前目標制御角θVVL_TGT0の演算に関して、上述したその他の吸気条件とは、例えば制動制御に係るインマニ圧力PIM(負圧)の増強制御やETV21の開度制御と協調して吸気量を適正化するための協調制御,燃費向上制御等の要求に基づく条件である。たとえ目標トルクPiTGTが一定であったとしても、上記のような吸気条件の変動により吸気弁18のバルブリフト量を変更したい場合が存在する。つまり、制限前目標制御角θVVL_TGT0は、エンジン10の運転状態や吸気条件等に応じて急変する場合がある。
例えば、上述の燃費向上制御として、エンジン10の出力トルクが所定値以上の運転領域で、吸気弁18や排気弁19に高リフト(遅閉じ)傾向を与える制御がある。このような燃費向上制御では、仮に目標充填効率設定部2で演算された目標トルクPiTGTが緩やかに変化していたとしても、エンジン10の出力トルクが所定値以上になった時点でバルブリフト量が高リフトへと変更され、制限前目標制御角θVVL_TGT0が大きく変化する場合がある。
一方、本実施形態の制御部5は、このような制限前目標制御角θVVL_TGT0の急変に対して、実際の目標制御角θVVL_TGTをそのまま設定するのではなく、変化量制限値dθVVL_LIMで許容される変動範囲内で実際の目標制御角θVVL_TGTを設定する。
[3.フローチャート]
図3は、エンジンECU1で実行される制御手順を例示するフローチャートである。
ステップA10では、バルブリフト制御に係る各種パラメータがエンジンECU1に入力される。例えば、エンジン回転数Ne,インマニ圧力PIM,可変バルブリフト機構6aの制御角θVVL,可変バルブタイミング機構6bの位相角θVVT等がエンジンECU1に読み込まれる。
続くステップA20では、推定部4の第一推定部4aにおいて、ステップA10で読み込まれた情報に基づいて体積効率係数KMAPが演算される。また、ステップA30では現在の制御角θVVLに所定角dθVVLが加算され、ステップA40では図2に示すようなマップに基づいて推定体積効率係数KMAP_ETMが推定される。第一推定部4aで演算,推定されたこれらの体積効率係数KMAP及び推定体積効率係数KMAP_ETMは、第二推定部4bに伝達される。
ステップA50では、第二推定部4bにおいて、単位制御角(例えば、制御角1[deg])あたりの体積効率係数の変化量dKMAPが式2に従って演算される。また、ステップA60では、変化量dKMAPとインマニ圧力PIMとに基づき、単位制御角(例えば、制御角1[deg])あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLが式3に従って演算される。つまりここでは演算上、体積効率係数の変化量dKMAPが充填効率の変化量ΔEcVVLに変換される。
ステップA70では、目標充填効率設定部2において目標トルクPiTGTが演算されるとともに、目標トルクPiTGTをエンジン10で発生させるために必要な目標充填効率EcTGTが設定される。また、ステップA80では、演算部3において、演算周期あたりの目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMが式1に従って演算される。
続くステップA90では、前ステップで演算された変化量dEcLIMが下限値C以上であるか否かが判定される。ここで、dEcLIM≧Cである場合には、そのままステップA110へ進む。一方、dEcLIM<Cである場合にはステップA100へ進み、変化量dEcLIMの値が下限値Cに再設定される。これにより、たとえ実際の変化量dEcLIMが極めて小さい場合であっても、変化量dEcLIMは少なくとも下限値C以上の値を持つ。
ステップA110では、制御部5において、変化量dEcLIMを変化量ΔEcVVLで除した値が演算され、バルブリフトの変化量制限値dθVVL_LIMとして設定される。また、ステップA120では、ステップA70で演算された目標トルクPiTGTに基づき、制限前目標制御角θVVL_TGT0が演算される。その後ステップA130では、前回の演算周期で得られた目標制御角θVVL_TGT(n-1)に変化量制限値dθVVL_LIMを加算した値と制限前目標制御角θVVL_TGT0とが比較され、何れか小さい一方が選択される。さらに、ここで選択された値と目標制御角θVVL_TGT(n-1)から変化量制限値dθVVL_LIMを減算した値とが比較され、何れか大きい一方が最終的な目標制御角θVVL_TGTとして設定される。
ステップA140では、実際の制御角θVVLが目標制御角θVVL_TGTになるように揺動部材の角度が制御され、シリンダ11に導入される空気量が調整される。
[4.作用]
[4−1.緩加速時]
図4(a)〜(g)を用いて車両の緩加速時の制御作用を説明する。車両の緩加速時にはアクセルペダルの踏み込みが比較的小さく、目標充填効率設定部2で設定される目標トルクPiTGTの変動は、図4(a)に示すように緩慢である。これにより、演算部3で演算される目標充填効率EcTGTの変化も、図4(b)に示すように緩慢となり、その時間変化勾配である変化量dEcLIMは、図4(c)に示すようにほぼ下限値C付近を推移する。
ここで、例えば制動装置からの要求により、時刻t1に制限前目標制御角θVVL_TGT0が急増したとする。この制限前目標制御角θVVL_TGT0の変動を図4(g)中に破線で示す。目標充填効率EcTGTが比較的小さく、実際の充填効率Ecも比較的小さい時刻t1〜t2の時間領域では、第一推定部4aで演算される体積効率係数KMAPが比較的小さい値となる。また、その時点の制御角θVVLに正の所定角dθVVLを加算した場合の推定体積効率係数KMAP_ETMは、図4(d)中に破線で示すように、体積効率係数KMAPよりも大きい値となる。
したがって、第二推定部4bで演算される制御角1[deg]あたりの体積効率係数の変化量dKMAPの値〔図4(d)中の実線と破線との間の幅に対応する値〕は比較的大きい値として演算され、その結果、図4(e)に示すように、制御角1[deg]あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLも比較的大きい値となる。
一方、吸気弁18のバルブリフト量に対応する制御角θVVLの変化量制限値dθVVL_LIMを図4(f)に示す。この変化量制限値dθVVL_LIMは、図4(c)に示す変化量dEcLIMを図4(e)に示す充填効率の変化量ΔEcVVLで除算した値であるから、時刻t1〜t2の時間領域では極めて小さい値をとる。すなわち、時刻t1〜t2の時間領域では、制御角θVVLの変動が強く抑制され、吸気弁18のバルブリフト量の変化が小さくなる。これにより、図4(g)中に実線で示すように、実際の目標制御角θVVL_TGTは緩やかに増加し、トルクショックが抑制される。
このように、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMが小さく、かつ、制御角1[deg]あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLが大きい状態では、制御角θVVLが変化しにくくなるようにバルブリフト制御が実施される。
目標制御角θVVL_TGTの増大に伴って吸気量が増大すると、体積効率係数KMAP及び推定体積効率係数KMAP_ETMは、図4(d)中に実線及び破線で示すように緩やかに増加する。また、推定体積効率係数KMAP_ETMは、体積効率係数KMAPの変動に倣って推移するが、体積効率係数KMAPが増大するほどこれらの差が小さくなる。これにより、制御角1[deg]あたりの体積効率係数の変化量dKMAPが時間の経過とともに減少し、制御角1[deg]あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLも減少する。これにより、図4(e)に示すように、例えば時刻t3〜t4の時間領域では充填効率の変化量ΔEcVVLが小さい値となる。これは、バルブリフト量を変化させたときの空気量の変動分が小さいことを意味する。
したがって、変化量制限値dθVVL_LIMは図4(f)に示すように大きい値をとるようになり、実際の目標制御角θVVL_TGTの変化速度が増大する。時刻t4以降の時間領域では、目標制御角θVVL_TGTは速やかに制限前目標制御角θVVL_TGT0に近づくように変動する。
このように、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMが小さく、かつ、制御角1[deg]あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLが小さい状態になると、制御角θVVLが変化しやすくなるようにバルブリフト制御が実施される。
[4−2.急加速時]
図5(a)〜(g)を用いて車両の急加速時の制御作用を説明する。時刻t5にアクセルペダルが強く踏み込まれると、図5(g)中に破線で示すように、アクセルペダルの操作量θACに応じて制限前目標制御角θVVL_TGT0が急増する。これに対応して、図5(a),(b)に示すように、目標トルクPiTGT及び目標充填効率EcTGTがともに急激に増大する。
これにより、図5(c)に示すように、時刻t5〜t6の時間領域での目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMは増大する。変化量dEcLIMは、例えば運転者からの出力要求や外部制御システムからの出力要求といったエンジン10に要求されるトルクの増加速度が大きいほど急激に増大する。
アクセルペダルが踏み込まれた時刻t5の前後においては、図5(d)に示すように、体積効率係数KMAPと推定体積効率係数KMAP_ETMとの差がまだ大きい。そのため、図5(e)に示すように、制御角1[deg]あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLも比較的大きい値となる。
しかし、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMの急増により、図5(f)に示すように、変化量制限値dθVVL_LIMが急激に増大する。これにより、制御角θVVLの大きな変動が許容され、図5(g)中に実線で示すように、実際の目標制御角θVVL_TGTが速やかに増加する。
このように、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMが大きい場合には、たとえ制御角1[deg]あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLが大きい状態であっても、制御角θVVLが変化しやすくなるようにバルブリフト制御が実施される。
[5.効果]
このように、上述の可変動弁機構の制御装置によれば、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMに着目することで、図5及び図6に示すように、緩加速と急加速とを区別したうえでバルブリフト制御を実施することができる。例えば、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMの大小で緩加速と急加速とを判別可能である。これにより、緩加速の場合にはバルブリフト量の変動を強く抑制し、急加速の場合にその抑制を小さくするといったように、加速要求(あるいは、車両の加速の度合い)に応じた柔軟なバルブリフト制御が可能となり、加速性能を向上させつつ急激なトルク変動を抑制することができる。
また、単位制御角(例えば、制御角1[deg])あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLに基づくバルブリフト量の制御により、実制御に先立って充填効率Ecが実際にどの程度変化するかを正確に推定することができる。つまり、エンジン10の出力を正確に予測しながら制御角θVVLをコントロールすることができ、良好な加速感を確保しつつトルクショックの発生を防止することができる。
また、上記の制御では、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMと単位リフト量あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLとを組み合わせた制御が実施されている。これにより、リフト量の実制御に先立って、充填効率Ecが実際にどの程度変化するのかを正確に推定することができ、正確なリフト量のコントロールが可能となる。
さらに、上述の制御装置では、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMや単位制御角あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLといったエンジンECU1内で演算可能なエンジン10の運転状態に係る物理量を用いてバルブリフト量を制御しているため、例えば、アクセルペダルの踏み込み操作やエンジンの作動状態に基づく全ての運転パターンに対応した判定条件やバルブリフト量等を予め設定しておく必要がなく、記憶容量を削減することができる。これにより、車種毎,車両毎,あるいは走行条件毎のキャリブレーションが不要となり、簡素な構成で正確な制御が実現できる。
また、上述の制御装置では、吸気弁18のバルブリフト量に対応する制御角θVVLの変化量制限値dθVVL_LIMが演算され、すなわちバルブリフト量の変化速度に制限が加えられる。これにより、例えばバルブリフト量(位置)に制限を加えるような制御と比較して、急激なトルク変動を効果的に抑制することができる。あるいは、バルブリフト量の変化速度(バルブの加速度)を制限する場合と比較すると、簡素な構成で迅速かつリアルタイムの制御が可能となり、制御性を向上させることができる。
さらに、上述の制御装置では、目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMを単位制御角(例えば、制御角1[deg])あたりの充填効率の変化量ΔEcVVLで除した値を制御角θVVLの変化量制限値dθVVL_LIMとしている。これにより、少なくとも目標充填効率EcTGTが得られるリフト量を変化上限値とすることができ、エンジン10の目標トルクを満足する空気量を確保することができる。
特に、上述の制御装置の推定部4では、第一推定部4aでシリンダ11への空気の入りやすさの指標として体積効率係数KMAPを演算し、吸気弁18のバルブリフト量を単位制御角分だけ変化させたときにシリンダ11に導入される空気量の変動分がどの程度であるかを把握した上で可変バルブリフト機構6aの制御角θVVLを制御している。これにより、インテークマニホールド14内の圧力変動や空気の流れの慣性を考慮した正確な変化量ΔEcVVLを推定することができるというメリットがある。
[6.変形例等]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上記の実施形態では、目標充填効率設定部2,演算部3,推定部4及び制御部5の各機能を備えたエンジンECU1を例示したが、エンジンECU1の具体的な制御構成はこれに限定されない。少なくとも、目標充填効率EcTGTを設定する手段と、その目標充填効率EcTGTの変化量dEcLIMを演算する手段と、その変化量dEcLIMに基づいてバルブリフト量を制御する手段とを備えた電子制御装置であれば、上記の技術効果を奏するものとなる。したがって、具体的な制御構成については適宜追加、あるいは簡素化することが可能である。
また、上述の実施形態では、バルブリフト量の変化速度(演算周期あたりの変化量)を制限する制御が実施されているが、制限の対象はバルブリフト量の変化速度のみに限定されない。例えば、バルブリフトの位置を制限してもよいし、バルブリフトの加速度を制限してもよく、あるいはこれらの複数種類の制限を組み合わせた制御としてもよい。
バルブリフトの位置を制限する場合、例えば絶対的なバルブリフト位置の上限値,下限値を設けることで、トルク変動の抑制効果を高めることが可能となる。また、二つ先,三つ先の演算周期での位置にも制限を加えることで、トルク変動の抑制パターンを多様化させることができ、エンジン10の運転状態に応じたバルブリフト制御が可能となる。
また、バルブリフトの加速度を制限する場合、バルブリフトの位置の変化量を制限するのに加えて、速度の変化量にも制限を設けることが考えられる。例えば、図5(f)に示す変化量制限値dθVVL_LIMの時間変化勾配が所定値以下になるように制限する。これにより、図5(a)〜(g)に示すものよりも極めて急激にアクセルペダルが強く踏み込まれたような場合に生じうるトルクショックを緩和することが可能となり、すなわち、急加速の度合いに応じたバルブリフト制御が可能となる。
また、上述の実施形態では、充填効率Ecに関連するパラメータ(dEcLIM,ΔEcVVL等)を用いてバルブリフト制御を実施するものを例示したが、充填効率Ecの代わりに体積効率(例えば、充填効率Ecに気温補正や圧力補正が加えられた値等)や空気量(空気の体積や空気の質量等)を用いて演算してもよい。少なくとも、シリンダ11内に導入される空気量に対応するパラメータを用いれば、上述の実施形態と同様に、シリンダ11内への空気の入りやすさやエンジン10の出力に与えられる影響の大きさを判断することが可能であり、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
また、上述の実施形態では吸気弁18のバルブリフト量を制御するものを例示したが、これに代えて、あるいは加えて、排気弁19のバルブリフト量を制御してもよい。なお、上述の実施形態のエンジン10の燃焼形式は任意である。例えば、可変バルブタイミング機構6bを持たないエンジンであってもよく、少なくとも可変バルブリフト機構6aを備えたエンジンであれば適用可能である。
1 エンジンECU
2 目標充填効率設定部(設定手段)
3 演算部(演算手段)
4 推定部(推定手段)
4a 第一推定部(第二推定手段)
4b 第二推定部(第一推定手段)
5 制御部(制御手段)
6 可変動弁機構
6a 可変バルブリフト機構
6b 可変バルブタイミング機構
7 インマニ圧センサ
8 クランク角度センサ
10 エンジン
14 インテークマニホールド(インマニ)
18 吸気弁

Claims (4)

  1. エンジンの吸気弁のリフト量を変更する可変動弁機構の制御装置であって、
    前記エンジンのシリンダに導入される空気量の目標値を目標空気量として設定する設定手段と、
    所定時間あたりの前記目標空気量の変化量を第一変化量として演算する演算手段と、
    前記演算手段で演算された前記第一変化量に基づき、前記リフト量を制御する制御手段と
    所定の前記リフト量あたりの前記空気量の変化量を第二変化量として推定する推定手段とを備え、
    前記制御手段が、前記演算手段で演算された前記第一変化量及び前記推定手段で推定された前記第二変化量に基づき、前記リフト量を制御するとともに、前記第一変化量及び前記第二変化量に基づき、前記リフト量の変化速度を制限する
    ことを特徴とする、可変動弁機構の制御装置。
  2. 前記制御手段が、前記第一変化量の前記第二変化量に対する比を前記変化速度の上限値とする
    ことを特徴とする、請求項記載の可変動弁機構の制御装置。
  3. 前記エンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
    前記エンジンのインマニ圧を検出するインマニ圧検出手段とを備え、
    前記推定手段が、
    前記エンジン回転数検出手段で検出された前記エンジン回転数と前記インマニ圧検出手段で検出された前記インマニ圧とに基づいて、前記シリンダへの吸入空気の入りやすさの指標値を推定する第一推定手段と、
    前記エンジン回転数,前記インマニ圧及び前記第一推定手段で推定された前記指標値に基づいて、前記第二変化量を推定する第二推定手段とを有する
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の可変動弁機構の制御装置。
  4. エンジンの吸気弁のリフト量を変更する可変動弁機構の制御装置であって、
    前記エンジンのシリンダに導入される空気量の目標値を目標空気量として設定する設定手段と、
    所定時間あたりの前記目標空気量の変化量を第一変化量として演算する演算手段と、
    前記演算手段で演算された前記第一変化量に基づき、前記リフト量を制御する制御手段と
    所定の前記リフト量あたりの前記空気量の変化量を第二変化量として推定する推定手段と、
    前記エンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
    前記エンジンのインマニ圧を検出するインマニ圧検出手段とを備え、
    前記制御手段が、前記演算手段で演算された前記第一変化量及び前記推定手段で推定された前記第二変化量に基づき、前記リフト量を制御するとともに、
    前記推定手段が、
    前記エンジン回転数検出手段で検出された前記エンジン回転数と前記インマニ圧検出手段で検出された前記インマニ圧とに基づいて、前記シリンダへの吸入空気の入りやすさの指標値を推定する第一推定手段と、
    前記エンジン回転数,前記インマニ圧及び前記第一推定手段で推定された前記指標値に基づいて、前記第二変化量を推定する第二推定手段とを有する
    ことを特徴とする、可変動弁機構の制御装置。
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