JP2009133276A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】少ない制御マップにより、精度良くエンジントルクを推定し、また、目標トルクを実現するためのエンジン制御量を簡単なロジック構成で精度良く実現できる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】充填効率−点火時期−出力トルクの関係を2次関数にて近似しておき、充填効率と点火時期から実出力トルクを算出し、充填効率と実出力トルクの比を基に目標出力トルクから目標吸入空気量を算出する。また、瞬時的なトルクダウン要求には、目標トルクダウン要求と充填効率から前記関係式の逆算により目標点火時期を算出する。
【選択図】図5
【解決手段】充填効率−点火時期−出力トルクの関係を2次関数にて近似しておき、充填効率と点火時期から実出力トルクを算出し、充填効率と実出力トルクの比を基に目標出力トルクから目標吸入空気量を算出する。また、瞬時的なトルクダウン要求には、目標トルクダウン要求と充填効率から前記関係式の逆算により目標点火時期を算出する。
【選択図】図5
Description
本発明は内燃機関の制御装置に関し、特に、出力トルクを制御目標として内燃機関を制御する内燃機関の制御装置に関する。
近年、ドライバや各車両システム(自動変速機制御、ブレーキ制御、トラクション制御等)からの駆動力の要求値として車両の制御に直接作用する物理量であるエンジン出力軸トルクを用い、これをエンジン出力の目標値としてエンジン制御の制御量である空気量や燃料量や点火時期を決定し、また、実際のエンジンの運転状態から実出力トルクを推定して各車両システムへ送信することで協調制御を実現して良好な走行性能を得る技術、所謂トルクベース制御が提案されている。
このような制御においては、エンジンの実出力トルクを精度良く算出し、目標出力トルクを精度良く達成することが重要となる。例えば、あるエンジン回転数と充填効率におけるエンジントルクTは、点火時期IGの2次関数として近似することで推定している従来例がある(例えば、特許文献1参照)。より詳細にいえば、MBT(Minimum Advance for Best Torque)点火時期を頂点とする下記(1)式による2次関数により近似するもので、下記(1)式において、A,B,Cはエンジン回転速度と充填効率のマップとして予め設定されているもので、エンジンの運転状態に応じてA,B,Cをマップから算出し、下記(1)式によりエンジントルクを算出している。
そして、自動変速機の変速時に要求トルクを達成するよう、スロットル開度をフィードバック制御し、点火時期にてトルク差を吸収するという形の協調制御となっている。
また、別の従来例においては、ドライバの要求に応じた出力トルクの制御性を、マップ数を増やすことなく向上するための方法が示されている(例えば、特許文献2参照)。より詳細には、アクセル開度から算出されるドライバ要求軸トルクにロストルクとISCトルクとを加算し、点火時期効率補正と目標A/F効率補正の後、トルク−空気量変換処理が行われる。この点火時期効率補正における2次関数の係数を、少ないマップ数で算出することを特徴とするものである。
しかしながら、上記の特許文献1の方法では、要求トルクを達成するためのスロットル開度のフィードバック制御ゲインは一定量であるため、自動変速機の変速中のように瞬時的にトルクダウンが必要な場合以外の運転中に使用すると、応答性が悪くなることが考えられる。そのため、通常の運転時はアクセル操作量に応じたスロットル開度を用いてスロットルバルブを制御しているので、この場合は、目標出力トルクを精度良く達成するような構成とはなっていない。また、上記の特許文献2の方法では、通常運転時の目標出力トルクの達成方法については述べられているが、瞬時的にトルクダウンが必要な場合の点火リタード処理方法などについて述べられていない。
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、少ない制御マップにより精度良くエンジントルクを推定し、また、目標トルクを実現するためのエンジン制御量を算出することができ、さらに瞬時的なトルクダウンにも容易に対応できる内燃機関の制御装置を提供することを目的としている。
この発明は、内燃機関の吸気通路に設けたスロットルの開度を制御することで吸気通路の開口面積が変化して吸入空気流量の可変制御を行うことができるスロットル開度制御手段と、前記内燃機関の運転状態と車両の走行速度とドライバのアクセル操作とに基づいて車両に対するドライバの要求出力を算出するドライバ要求出力算出手段と、前記ドライバの要求出力に基づいて前記内燃機関が発生するべき第1の目標出力トルクを算出する第1の目標出力トルク算出手段と、前記内燃機関の運転状態に基づいて基本目標点火時期を算出し、前記基本目標点火時期に対し、前記内燃機関の温度や吸入空気温度による補正、触媒を早期に活性化させるためのリタード補正、ノック制御によるリタード補正の少なくともいずれか1つを行った第1の目標点火時期を算出する第1の目標点火時期算出手段と、エンジン回転数、実充填効率及び第1の目標点火時期に基づいて、前記内燃機関の実出力トルクを算出する第1の実出力トルク算出手段と、前記充填効率と前記実出力トルクとに基づいて、前記充填効率と前記実出力トルクの比である充填効率−トルク変換係数を算出する変換係数算出手段と、前記第1の目標出力トルクと前記充填効率−トルク変換係数とに基づいて目標充填効率を算出する目標充填効率算出手段と、前記目標充填効率に基づいて内燃機関が吸入するべき目標吸入空気量を算出する目標吸入空気量算出手段とを備え、前記目標吸入空気量算出手段により算出された前記目標吸入空気量を実現するように前記スロットル開度制御手段により前記スロットル開度を制御する内燃機関の制御装置である。
この発明は、内燃機関の吸気通路に設けたスロットルの開度を制御することで吸気通路の開口面積が変化して吸入空気流量の可変制御を行うことができるスロットル開度制御手段と、前記内燃機関の運転状態と車両の走行速度とドライバのアクセル操作とに基づいて車両に対するドライバの要求出力を算出するドライバ要求出力算出手段と、前記ドライバの要求出力に基づいて前記内燃機関が発生するべき第1の目標出力トルクを算出する第1の目標出力トルク算出手段と、前記内燃機関の運転状態に基づいて基本目標点火時期を算出し、前記基本目標点火時期に対し、前記内燃機関の温度や吸入空気温度による補正、触媒を早期に活性化させるためのリタード補正、ノック制御によるリタード補正の少なくともいずれか1つを行った第1の目標点火時期を算出する第1の目標点火時期算出手段と、エンジン回転数、実充填効率及び第1の目標点火時期に基づいて、前記内燃機関の実出力トルクを算出する第1の実出力トルク算出手段と、前記充填効率と前記実出力トルクとに基づいて、前記充填効率と前記実出力トルクの比である充填効率−トルク変換係数を算出する変換係数算出手段と、前記第1の目標出力トルクと前記充填効率−トルク変換係数とに基づいて目標充填効率を算出する目標充填効率算出手段と、前記目標充填効率に基づいて内燃機関が吸入するべき目標吸入空気量を算出する目標吸入空気量算出手段とを備え、前記目標吸入空気量算出手段により算出された前記目標吸入空気量を実現するように前記スロットル開度制御手段により前記スロットル開度を制御する内燃機関の制御装置であるので、少ない制御マップにより精度良くエンジントルクを推定し、また、目標トルクを実現するためのエンジン制御量を算出することができ、さらに瞬時的なトルクダウンにも容易に対応することができる。
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置について詳細に説明する。図1および図2は、本発明の実施の形態1によるエンジンとエンジン制御部を概略的に示す構成図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置について詳細に説明する。図1および図2は、本発明の実施の形態1によるエンジンとエンジン制御部を概略的に示す構成図である。
図1および図2において、1はエンジン(内燃機関)、2は電子制御式スロットルバルブ、3はスロットル開度センサ、4はエアフロセンサ、5はサージタンク、6はインマニ圧センサ(インテークマニホルド圧力センサ)、7はEGRバルブ(排気ガス再循環バルブ、EGR:Exhaust Gas Recirculation)、8はインジェクタ、9は点火コイル、10は点火プラグ、11はクランク角センサである。また、図2において、12はアクセル開度センサ、13はECUである。内燃機関の制御装置には、この他にも、図2に示すように、各種センサ、各種アクチュエータ、および、他のコントローラ等が設けられている。
本発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置においては、図1に示すように、エンジン1の吸気系の上流に吸入空気流量を調整するために電子的に制御される電子制御式スロットルバルブ2が設けられている。電子制御式スロットルバルブ2は、スロットルの開度を制御することで、吸気通路の開口面積を変化させ、吸入空気流量の可変制御を行う。電子制御式スロットルバルブ2の開度を測定するために、スロットル開度センサ3が設けられている。さらに、電子制御式スロットルバルブ2の上流には吸入空気流量を測定するエアフロセンサ4が設けられており、電子制御式スロットルバルブ2の下流のエンジン1側には、サージタンク5内の圧力を測定するインマニ圧センサ6が設けられている。なお、エアフロセンサ4とインマニ圧センサ6に関しては、両方とも設けてもよいし、いずれか一方のみが設けられていてもよい。さらに、サージタンク5には、電子制御式EGRバルブ7が接続されており、サージタンク5の下流の吸気通路には、燃料を噴射するインジェクタ8が設けられている。なお、インジェクタ8はエンジン1のシリンダに直接噴射できるように設けられてもよい。さらに、エンジン1のシリンダ内の混合気に点火するための点火コイル9及び点火プラグ10や、エンジンの回転速度やクランク角度を検出するために、クランク軸に設けられたプレートのエッジを検出するためのクランク角センサ11がエンジン1に設けられている。
図2おいて、エアフロセンサ4で測定された吸入空気流量と、インマニ圧センサ6で測定されたインマニ圧と、スロットル開度センサ3で測定された電子制御式スロットルバルブ2の開度と、クランク角センサ11より出力されるクランク軸に設けられたプレートのエッジに同期したパルスとが、電子制御ユニット(以下、「ECU」と称す)13に入力される。また、前記以外のアクセル開度センサ12やその他の各種センサからもECU13に測定値が入力され、さらに、他のコントローラ(例えば、自動変速機制御、ブレーキ制御、トラクション制御等の制御システム)からのトルク要求値も入力される。ECU13では、入力された各種データより後述する方法を用いて実トルクが算出され、また、アクセル開度やエンジンの運転状態、さらに、他のコントローラからのトルク要求値などを基にして目標トルクが設定される。設定された目標トルクを達成するよう後述する方法で目標吸入空気流量及び目標点火時期が算出され、目標吸入空気流量を達成するように電子制御式スロットルバルブ2は制御され、目標点火時期を達成するように点火コイル9への通電が行われる。また、運転状態に応じて電子制御式EGRバルブ7の開度は制御され、目標空燃比を達成するようにインジェクタ8は駆動される。さらに、前記以外の各種アクチュエータへの指示値も算出される。
次に、図3を参照しながら、ECU13内で行うトルクベース制御の概要について説明する。図3は、トルクベース制御全体の構成を示した概略図である。図3に示すように、ECU13には、トルク制御部14と、トルクI/F部(トルクインターフェース部)15と、エンジン制御部16とが設けられている。トルク制御部14ではアクセル開度や他のコントローラからのトルク要求から目標トルクを算出して、トルクI/F部15へ送出する。トルクI/F部15では、トルクと充填効率の相互変換や、トルクと点火時期の相互変換を実施して、実出力トルクを算出するとともに、目標充填効率や目標点火時期を算出する。算出された実出力トルクはトルク制御部14に送出され、目標充填効率や目標点火時期はエンジン制御部16に送られる。エンジン制御部16には、図3に示すように、吸気量制御部と、燃料制御部と、点火時期制御部と、その他制御部とが設けられている。エンジン制御部16の吸気量制御部では、目標充填効率に基づいて目標シリンダ吸気量を算出し、さらにエンジン1が吸入するべき目標吸入空気量を算出する。この目標吸入空気量に精度良く達成するよう、エアフロセンサ4やインマニ圧センサ6を用いて電子制御式スロットルバルブ2をフィードバック制御する。また、エンジン制御部16の吸気量制御部では、エアフロセンサ4にて検出した吸気量からシリンダ吸気量を推定し、充填効率の算出も行う。エンジン制御部16の燃料制御部では、吸気量制御部で算出した充填効率を用いて目標空燃比を達成するための燃料噴射量を算出し、インジェクタ8を駆動する。エンジン制御部16の点火時期制御部では吸気量制御部で算出した充填効率を用いて基本目標点火時期を算出し、トルクI/F部15へ送られる。トルクI/F部15で最終的な目標点火時期を算出したのち、それを、再度、エンジン制御部16の点火時期制御部に送出して、点火コイル9への通電が行われる。これら以外にも、EGRバルブ開度の制御や、OBDや通信などの処理も合わせて行われる。この様な構成とすることで、ドライバの要求出力や他制御からのトルク要求に精度良く対応することが可能となる。
次に、図4を参照しながら、トルク制御部14について詳しく説明する。
図4は、トルク制御部14の構成を示す図である。トルク制御部14には、エンジン1の運転状態と車両の走行速度とドライバのアクセル操作とに基づいて車両に対するドライバの要求出力を算出するドライバ要求出力演算部101と、エンジン回転数とエンジン水温とエンジン補機負荷のスイッチ情報等に基づいてISC要求トルクを算出するISC要求トルク演算部102と、ブレーキペダル開度、各車輪の速度差、変速機のギア比切換、オルタネータ等の発電量変化等の車両側からのトルク要求と、実際にエンジン1が出力しているトルクに相当する第3の実出力トルクとに基づいて、瞬時的に変化が必要な車両側の要求出力を算出する車両要求トルク演算部103と、ドライバの要求出力に基づいてエンジン1が発生するべき第1の目標出力トルクを算出する第1の目標出力トルク演算部105と、車両側の要求出力からエンジンが発生するべき第2の目標出力トルクを算出する第2の目標出力トルク演算部106とが設けられている。なお、図4においては、トルクI/F部15等の構成については、トルク制御部14の説明に必要な部分のみを示している。
当該構成において、トルク制御部14では、ドライバ要求出力演算部101において、アクセル開度センサ12で測定されたアクセル開度(すなわち、ドライバのアクセル操作)、エンジン回転数等のエンジンの運転状態、及び/又は、車速等の車両の走行状態から、ドライバの車両に対する要求出力(以下、ドライバ要求トルクとする。)を算出する。次に、ISC要求トルク演算部102において、エンジン回転数とエンジン水温とエンジン補機負荷のスイッチ情報等に基づいてISC要求トルクを算出する。ISC要求トルクにはエンジンのフリクションロス、ポンピングロス及びエンジン補機負荷トルクが含まれ、ISC目標エンジン回転数を維持するために必要なトルクである。車両要求トルク演算部103では、ブレーキ制御、スタビリティ制御、自動変速機制御等の他のコントローラからのトルク要求と、後述するトルクI/F部15に設けられている第3の実出力トルク演算部116にて演算される、実際にエンジン1が出力しているトルクに相当する第3の実出力トルクを基に、車両要求トルクを算出する。また、複数のコントローラからのトルク要求が重複した場合には、ブレーキ制御等の車両の安全性確保により重要となるトルク要求を優先するトルク調停を実施して車両要求トルクを算出する。
また、第1の目標出力トルク演算部105では、ドライバ要求出力演算部101で算出された要求トルクと、ISC要求トルク演算部102で算出された要求トルクのうち、吸気量により制御されるトルクを、第1の目標出力トルクとして算出する。第2の目標出力トルク演算部106では、車両要求トルク演算部103で算出された要求トルクと、ISC要求トルク演算部102で算出された要求トルクのうち、点火時期により制御されるトルクを、第2の目標出力トルクとして算出する。第2の目標出力トルクは、車両要求トルクやエンジン補機負荷トルク等、瞬時にトルク変化を行う必要がある要求トルクであるのに対し、第1の目標出力トルクは、ドライバ要求トルクやエンジンのフリクショントルク等、トルクの変化幅が大きい要求トルクや、変化速度が遅くても差し支えない要求トルクである。また、第1の目標出力トルクと第2の目標出力トルクはお互いに監視しており、基準値以上に急激なトルク変化を行わないよう、トルク制限を設けている。なお、車両側からのトルク要求がない場合には、第2の目標出力トルクは第1の目標出力トルクと同じ値とする。なお、ゼロ又は最大トルク値などの所定値を入れるようにしてもよい。
次に、図5を参照しながら、トルクI/F部15について詳しく説明する。
図5は、トルクI/F部15の構成を示す図である。トルクI/F部15には、第1の実出力トルク演算部104と、充填効率−トルク変換係数算出部107と、目標充填効率演算部108と、第2の目標点火時期演算部109と、第2の実出力トルク演算部114と、第1の目標出力トルク補正演算部115と、第3の実出力トルク演算部116とが設けられている。なお、図5においては、トルク制御部14およびエンジン制御部16等の構成については、トルクI/F部15の説明に必要な部分のみを示している。エンジン制御部16の吸気量制御部内には、目標スロットル開度演算部110と、実充填効率演算部111とが設けられている。また、エンジン制御部16の点火時期制御部内には、第1の目標点火時期演算部112と、最終目標点火時期演算部113とが設けられている。
上記の構成において、トルクI/F部15では、まず、第1の実出力トルク演算部104において、エンジン制御部16の吸気量制御部内の実充填効率演算部111にて演算される実充填効率と、エンジン制御部16の点火時期制御部の第1の目標点火時期演算部112にて演算される第1の目標点火時期と、エンジン回転数とを用いて、第1の実出力トルクが演算される。この実出力トルクの演算方法については後述する。
次に、充填効率−トルク変換係数演算部107では、第1の実出力トルク演算部104にて演算された第1の実出力トルクと、エンジン制御部16の吸気量制御部内の実充填効率演算部111にて演算された実充填効率との比である、充填効率−トルク変換係数EcTrqを算出し、平滑化のためのフィルタ処理を下式(2)により実施する。なお、フィルタ処理に用いるフィルタ定数Kは、アイドル運転時とオフアイドル運転で切換えることにより、アイドル時の安定性とオフアイドル時の応答性が両立できる。
この充填効率−トルク変換係数は、現時点での運転条件における熱効率と相関する係数であり、極端に点火時期がリタード側に設定されるような場合を除き、全域においてほぼ一定の値となる。
目標充填効率演算部108では、この充填効率−トルク変換係数と第1の目標出力トルクとから目標充填効率を演算する。このように、充填効率−トルク変換係数を用いることで、非常に簡単な演算で目標充填効率を算出することができる。エンジン制御部16では、目標スロットル開度演算部110で、この目標充填効率とエンジン回転数(アイドル時は目標エンジン回転数)とから目標シリンダ内空気量を算出し、さらに、目標シリンダ内空気量からエンジンが吸入するべき空気量である、目標吸入空気量を算出することにより、この目標吸入空気量を精度良く達成できる目標スロットル開度を算出し、電子制御式スロットルバルブ2を実際に駆動する。その結果として、エアフロセンサ4又はインマニ圧センサ6での検出結果を基に、実充填効率演算部111では、サージタンクの充填遅れを1次フィルタ処理等で模擬して実充填効率が算出される。この実充填効率を用いて、第1の目標点火時期演算部112では、エンジンの運転状態に基づいて基本目標点火時期が算出され、当該基本目標点火時期に対し、エンジン水温および/または吸入空気温度等による補正、触媒を早期に活性化させる場合のリタード補正、および/または、ノック制御によるリタード補正などの補正を少なくとも1つ行った、第1の目標点火時期が算出される。この後、再度、第1の実出力トルク演算部104の処理に戻り、上記の演算が繰り返し実行される。このような構成とすることで、定常運転時には、第1の目標出力トルクと第1の実出力トルクとを一致させることができ、実際のエンジンの挙動は図9Aのようになる。
また、第2の目標出力トルク演算部106で、車両側からのトルク要求を受け、第2の目標出力トルクが演算された場合、第2の目標点火時期演算部109では、第2の目標出力トルクと、エンジン回転数と、充填効率とに基づいて、第2の目標点火時期が算出される。この第2の目標点火時期演算方法については後述する。最終目標点火時期演算部113では、第1の目標点火時期演算部112で算出された第1の目標点火時期と第2の目標点火時期演算部109で算出された第2の目標点火時期のうち、第2の目標出力トルクが第1の目標出力トルクより小さい場合や、あるいは、大きい場合でかつ進角可能な運転状態と判断された場合は第2の目標点火時期を選択し、それ以外の場合は第1の目標点火時期を選択して、最終目標点火時期を決定する。こうして、決定した最終目標点火時期による点火時期制御を行いながら、第1の目標トルクと第1の目標点火時期に基づいて算出された目標吸入空気量とに基づいて、スロットル開度を制御する。この場合の実際のエンジンの挙動は図9Bのようになる。
第2の実出力トルク演算部114では、第2の目標点火時期が点火時期のリタード側制限値よりさらにリタード側にあった場合、第2の目標点火時期はリタード側制限値で制限され、少なくとも、エンジン回転数と、第2の目標点火時期演算部109で算出された第2の目標点火時期と、実充填効率演算部111で算出された実充填効率とを基に、第2の実出力トルクが算出される。なお、第2の実出力トルク演算部114における第2の実出力トルク演算方法は、第1の実出力トルク演算部104における第1の実出力トルク演算方法と同様である。続いて、第1の目標出力トルク補正演算部115では、第2の目標出力トルクと第2の実出力トルクとの差に基づく、第1の目標出力トルク補正量の演算が行われる。これは第2の目標出力トルクが演算された時点で演算された第2の実出力トルクが第2の目標出力トルクより大きい場合、点火リタードだけでは第2の目標出力トルクが達成できないと判断し、第1の目標出力トルクを補正することで吸気量をも制御して第2の目標出力トルクを達成するための補正であり、第2の実出力トルクと第2の目標出力トルクの差に対し、さらに所定量を加算するか、所定の係数を乗算して第1の目標出力トルク補正量を演算し、第1の目標出力トルク演算部105の処理で反映される。この第1の目標出力トルク補正量は、第2の目標出力トルクによる点火リタード中は保持される。なお、第2の目標出力トルクによるリタード制御中でも、吸気量制御は第1の目標出力トルクに応じて行われる。このような構成とすることで、第2の目標出力トルクと第2の実出力トルクは一致することができ、実際のエンジンの挙動は図9Cのようになる。第3の実出力トルク演算部116では、実際にエンジンが出力しているトルクに相当する第3の実出力トルクを基に車両要求トルクを算出する。なお、第3の実出力トルク演算部116の第3の実出力トルク演算方法は第1の実出力トルク演算部104の第1の実出力トルク演算方法と同様である。
次に、図6乃至図8を参照しながら、第1の実出力トルク演算部104(及び、第2、第3の実出力トルク演算部114、116)の実出力トルク演算方法と、第2の目標点火時期演算部109の第2の目標点火時期演算方法について詳しく説明する。なお、上述したように、第1の実出力トルク演算部104における演算方法と、第2、第3の実出力トルク演算部114、116における演算方法とは同じであるため、以下の説明においては、第1の実出力トルク演算部104を例に挙げて説明する。
図6は実出力トルクと点火時期の関係を示す概念図を、図7は、第1の実出力トルク演算部104の構成を示す図である。図6は、あるエンジン回転数と充填効率の運転条件下において、エンジントルク(図示平均有効圧)yと上死点TDCを基準として進角側を正に取った点火時期xとを2次関数で近似した場合を示しており、これらの関係は次式(3)で表される。
ここで、この2次関数は常時上に凸となるので、aは負の値をとる。このとき、a,b,cをマップにて与えることで、点火時期に応じたエンジントルクの算出が可能となる。ところで、点火時期が基本点火時期マップ値xaにて運転されている場合のエンジントルク(基本実トルク)yaをマップ化しておけば、次式(4)により、cが算出できるので、cはマップ化する必要はない。
以上を基に、図7に示す、第1の実出力トルク演算部104について説明する。基本実トルク算出部201では、実充填効率演算部111で算出された実充填効率と別途算出されたエンジン回転数(アイドル時は目標エンジン回転数)とをもとに、基本実トルクyaが算出される。同様に、係数aマップ算出部202および係数bマップ算出部203において係数a,bが算出される。続いて、係数c演算部204では、第1の目標点火時期演算部112で算出される基本点火時期xaと基本実トルクyaから、上式(4)に従って、係数cが算出される。実出力トルク演算部205では、これまでに算出した、係数a,b,cと実際の点火時期である第1の目標点火時期x1から式(3)により実出力トルクy1が算出される。
なお、第2の実出力トルク演算部114にて第2の実出力トルクを演算する場合は、実出力トルク演算部205にて、係数a,b,cと第2の目標点火時期x2とから同様に式(3)により第2の実出力トルクy2が算出される。また、第3の実出力トルク演算部116にて第3の実出力トルクを演算する場合は、実出力トルク演算部205にて、係数a,b,cと最終目標点火時期xfとから同様に式(3)により第3の実出力トルクyfが算出される。
図8は、第2の目標点火時期演算部109の構成を示す図である。図6において、目標出力トルクytが与えられた場合の目標点火時期xtは、下記の式(5)に示すように、式(3)を点火時期xについて解くことで得ることができる。
なお、図6に示した2次関数は上に凸であり、目標点火時期としては常にMBTよりリタード側しかとらないので、±の+側の値を用いることになり、目標点火時期xtは次式(6)で表される。
以上説明した、第2の目標点火時期演算の概念を基に、図8に示す第2の目標点火時期演算部109について説明する。第2の目標点火時期演算部206では、第1の実出力トルク演算部104にて演算された係数a,b,cと第2の目標出力トルクyt2とから式(6)を用いて第2の目標点火時期xt2が算出される。続いて、リタード限界クリップ部207では、別途算出された点火時期のリタード限界と比較されることで、第2の目標点火時期x2はリタード限界で制限される。このような構成とすることで、実出力トルク演算と第2の目標点火時期演算が実現できる。また、以上のような構成とすることで、吸入空気量によりトルク制御されるドライバ要求出力と、点火時期によりトルク制御される車両側のトルク要求とを、簡単なロジック構成で実現できる。
これまでの説明には、現在一般的となったEGR、VVT(可変バルブタイミング)、リーンバーン、更に今後普及が見込まれるVVL(可変バルブリフト)の付いたエンジンへの適用については述べていない。以下で、これらの機構や制御が付いたエンジンへの適用方法について述べる。これらの機構や制御が付くことによる影響は、図6の実出力トルクと点火時期の関係が変わるのみである。すなわち、図7に示した係数a,b,cをこれらの機構や制御の制御状態に応じて補正することで、適切な実出力トルクと点火時期を得ることができる。前述の通り、係数cは基本実トルクから計算されるため、図7に示した、基本実トルク算出部201、係数aマップ算出部202、および、係数bマップ算出部203について補正する方法を説明する。ここでは一例として、基本実トルク算出部201の基本実トルクに対し、EGRとVVTの補正を行う場合について説明するが、係数a,bに対する補正や、空燃比やVVLによる補正についても全く同様の方法で差し支えない。
図10は、基本実トルク算出部201の基本実トルクに対し、EGRとVVTの補正を行う場合の実施の形態を示す図である。基本実トルク(基準値)算出部301では、基本実トルク(基準値)を算出する。基本実トルク(基準値)とは、例えば、EGRはカットされ、VVT位相角は基準位置に固定された場合の基本実トルクを意味している。次に、EGR補正係数算出部302ではEGR補正係数を算出する。EGR補正係数は、所定量のEGRを導入した時の基本実トルクと基本実トルク(基準値)の比又は差であり、これがマップに格納されている。VVT補正係数303ではVVT補正係数を算出する。VVT補正係数は、VVT位相角が所定の位相角となったときの基本実トルクと基本実トルク(基準値)の比又は差であり、これがマップに格納されている。
次に、EGR補正部304でEGR補正を実施する。ここでは、EGRが非導入であれば、EGR補正は実施せず、EGRが導入されていれば、EGR補正係数を乗算又は加算することでEGR補正を実施する。この際、目標EGR開度と実EGR開度の比を基に、EGR補正係数の反映量を補正してもよい。また、VVT補正部305でVVT補正を実施する。ここでは、VVT位相角が基準位置であれば、VVT補正は実施せず、VVT位相角が所定の位相角となっていれば、VVT補正係数を乗算又は加算することでVVT補正を実施する。この際、目標VVT位相角と実VVT位相角の比を基に、VVT補正係数の反映量を補正してもよい。以上のような構成とすることで、現在一般的となったEGR、VVT(可変バルブタイミング)、リーンバーン、更に、今後普及が見込まれるVVL(可変バルブリフト)の付いたエンジンへの適用を、簡単なロジック構成で実現できる。
以上のように、本発明の上記で説明した実施の形態によれば、充填効率−点火時期−出力トルクの関係を2次関数にて近似しておき、充填効率と点火時期とから実出力トルクを算出するとともに、充填効率と実出力トルクとの比を基に目標出力トルクから目標吸入空気量を算出し、また、瞬時的なトルクダウン要求には、目標トルクダウン要求と充填効率から前記関係式の逆算により目標点火時期を算出するようにしたので、少ない制御マップで精度良くエンジントルクを推定し、また、目標トルクを実現するための目標充填効率を単純な演算方法で算出することができ、さらに瞬時的なトルクダウン要求にも第2の目標点火時期を単純な演算方法で算出することができるという優れた効果を得ることができる。
なお、上述の説明においては、第1の実出力トルク演算部104から第1の実出力トルクを出力し、第1の目標出力トルク演算部105から第1の目標出力トルクを出力するする例について説明したが、その場合に限らず、その代わりに、実平均有効圧および目標平均有効圧を出力して、充填効率と実平均有効圧の比である充填効率−トルク変換係数を算出し、目標平均有効圧と充填効率−トルク変換係数に基づいて、目標充填効率を算出するようにしてもよい。
また、第2の実出力トルク演算部114および第2の目標出力トルク演算部106についても同様であり、それらから、実平均有効圧および目標平均有効圧を出力して、それを制御に用いるようにしてもよい。
なお、これらの場合にも、同様の効果が得られることはいうまでもない。
また、第2の実出力トルク演算部114および第2の目標出力トルク演算部106についても同様であり、それらから、実平均有効圧および目標平均有効圧を出力して、それを制御に用いるようにしてもよい。
なお、これらの場合にも、同様の効果が得られることはいうまでもない。
1 エンジン(内燃機関)、2 電子制御式スロットルバルブ、3 スロットル開度センサ、4 エアフロセンサ、5 サージタンク、6 インマニ圧センサ、7 EGRバルブ、8 インジェクタ、9 点火コイル、10 点火プラグ、11 クランク角センサ、12 アクセル開度センサ、13 ECU、101 ドライバ要求出力演算部、102 ISC要求トルク演算部、103 車両要求トルク演算部、104 第1の実出力トルク演算部、105 第1の目標出力トルク演算部、106 第2の目標出力トルク演算部、107 充填効率−トルク変換係数演算部、108 目標充填効率演算部、109 第2の目標点火時期演算部、110 目標スロットル開度演算部、111 実充填効率演算部、112 第1の目標点火時期演算部、113 最終目標点火時期演算部、114 第2の実出力トルク演算部、115 第1の目標出力トルク補正演算部、116 第3の実出力トルク演算部、201 基本実トルク算出部、202 係数aマップ算出部、203 係数bマップ算出部、204 係数c演算部、205 実出力トルク演算部、206 第2の目標点火時期演算部、207 リタード限界クリップ部、301 基本実トルク(基準値)算出部、302 EGR補正係数算出部、303 VVT補正係数算出部、304 EGR補正部、305 VVT補正部。
Claims (6)
- 内燃機関の吸気通路に設けたスロットルの開度を制御することで吸気通路の開口面積が変化して吸入空気流量の可変制御を行うことができるスロットル開度制御手段と、
前記内燃機関の運転状態と車両の走行速度とドライバのアクセル操作とに基づいて車両に対するドライバの要求出力を算出するドライバ要求出力算出手段と、
前記ドライバの要求出力に基づいて前記内燃機関が発生するべき第1の目標出力トルクを算出する第1の目標出力トルク算出手段と、
前記内燃機関の運転状態に基づいて基本目標点火時期を算出し、前記基本目標点火時期に対し、前記内燃機関の温度や吸入空気温度による補正、触媒を早期に活性化させるためのリタード補正、ノック制御によるリタード補正の少なくともいずれか1つを行った第1の目標点火時期を算出する第1の目標点火時期算出手段と、
エンジン回転数、実充填効率及び第1の目標点火時期に基づいて、前記内燃機関の実出力トルクを算出する第1の実出力トルク算出手段と、
前記充填効率と前記実出力トルクとに基づいて、前記充填効率と前記実出力トルクの比である充填効率−トルク変換係数を算出する変換係数算出手段と、
前記第1の目標出力トルクと前記充填効率−トルク変換係数とに基づいて目標充填効率を算出する目標充填効率算出手段と、
前記目標充填効率に基づいて内燃機関が吸入するべき目標吸入空気量を算出する目標吸入空気量算出手段と
を備え、
前記目標吸入空気量算出手段により算出された前記目標吸入空気量を実現するように前記スロットル開度制御手段により前記スロットル開度を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - ブレーキペダル開度、各車輪の速度差、変速機のギア比切換、オルタネータ等の発電量変化に基づいて、瞬時的に変化が必要な車両側の要求出力を算出する車両要求出力算出手段と、
前記車両側の要求出力から前記内燃機関が発生するべき第2の目標出力トルクを算出する第2の目標出力トルク算出手段と、
前記第2の目標出力トルクと、エンジン回転数と、充填効率とに基づいて、目標点火時期を算出する第2の目標点火時期算出手段と
をさらに備え、
前記第1の目標点火時期と前記第2の目標点火時期のうち、
前記第2の目標出力トルクが前記第1の目標出力トルクより小さい場合、又は、大きい場合でかつ進角可能な運転状態と判断された場合は、第2の目標点火時期に基づいて、
それ以外の場合は、前記第1の目標点火時期に基づいて、
点火時期制御を行いながら、前記第1の目標トルクと前記第1の目標点火時期に基づいて算出された目標吸入空気量とに基づいて、スロットル開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記第2の目標点火時期が点火時期のリタード側制限値より更にリタード側にあった場合、前記第2の目標点火時期はリタード側制限値で制限され、少なくともエンジン回転数、充填効率及び第2の目標点火時期に基づいて、内燃機関の実出力トルクを算出する第2の実出力トルク算出手段
をさらに備え、
前記第2の目標出力トルクと前記第2の実出力トルクとの差に基づいて、第1の目標出力トルクを補正することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記充填効率−トルク変換係数はフィルタ処理により平滑化され、そのフィルタ定数はアイドル時とオフアイドル時で切換えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
- アイドル時のエンジン回転数を目標エンジン回転数に制御する運転条件下において、参照するエンジン回転数として目標エンジン回転数を用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記第1の実出力トルク算出手段、前記第2の実出力トルク算出手段、及び、前記第2の目標点火時期算出手段は、EGRバルブ開度又はEGR率、バルブタイミング、バルブリフト量、空燃比に基づいて、実出力トルクと目標点火時期とを補正することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
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