JP5347282B2 - 吸着性積層体 - Google Patents

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本発明は、吸着性積層体に関するものであり、より詳細には、緩効性の吸着効果を発現可能な金属超微粒子含有積層体に関する。
粒子径が1000nm以下の金属超微粒子は、その特性が一般の金属粒子と大きく異なり、特にその表面活性及び表面積が大きいことから、触媒、吸着剤等、種々の分野でその利用が提案されている。
例えば、金属超微粒子を利用した消臭剤として、下記特許文献1には金属イオン含有液を還元して得られた金属超微粒子コロイド液を有効成分とする消臭剤が提案されている。
また、金属超微粒子を樹脂中に分散させてなる成形物も提案されており(特許文献2)、この成形物は、金属超微粒子によって樹脂が分解されることなく成形できることが記載されている。
本発明者等は、有機酸成分と金属間で結合を有する金属超微粒子(以下、単に「金属超微粒子」ということがある)が、メチルメルカプタン等の悪臭成分、或いはホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds 以下「VOC」という)を吸着可能であることを見出し、吸着性金属超微粒子(特願2006−237898)を提案した。
特開2006−109902号公報 特開2006−348213号公報
しかしながら、上述したような有機酸成分と金属との間に結合を有する金属超微粒子が分散した成形体においては、樹脂中に分散した金属超微粒子が悪臭成分やVOCの吸着成分を効率的に吸着し得るように、金属超微粒子を分散させる樹脂にガス透過性の高い樹脂を用いることが好ましいことから、金属超微粒子を含有する成形体は、成形と同時に吸着成分の吸着を開始し始め、実際の使用の際には、吸着効果が低減し、持続性に欠けるおそれがある。
また、金属超微粒子は非常に表面活性が高いことから、初期の吸着速度が速く、長期にわたって緩やかな効果を発現することを求める場合においては、充分満足するものではない。
更に、用途に応じて金属超微粒子の吸着速度を制御し得ることが望まれている。
従って、本発明の目的は、金属超微粒子が有する優れた吸着効果を長期にわたって緩やかに持続可能な吸着性積層体を提供することである。
本発明の他の目的は、金属超微粒子の吸着速度を所望の速度に制御可能な吸着性積層体を提供することである。
本発明によれば、有機酸成分と金属間で結合を有する平均粒径1乃至100nmの金属超微粒子を含有する熱可塑性樹脂から成る中間層の内外面に、保護層を積層して成り、該保護層の少なくとも一方が、中間層を構成する熱可塑性樹脂よりも酸素透過率の高い樹脂から成り、前記金属超微粒子が、熱可塑性樹脂に脂肪酸金属塩を配合し、これを加熱することにより熱可塑性樹脂中で生成されていることを特徴とする吸着性積層体が提供される。
本発明の吸着性積層体においては、
1.前記中間層及び保護層を構成する樹脂がポリエチレンであること、
2.保護層の一方が酸素透過率の高い樹脂から成り、他方がガスバリア層から成ること、
3.前記ガスバリア層がエチレン−ビニルアルコール共重合体であること、
が好適である。
本発明の吸着性積層体においては、金属超微粒子含有樹脂層の両面に保護層を形成することにより、金属超微粒子の吸着速度を制御することが可能となる。
また、従来の金属超微粒子含有成形体では即効性の吸着効果しか得られなかったが、本発明の吸着性積層体においては、緩効性の吸着効果を得ることが可能となり、優れた吸着効果を長期にわたって持続させることが可能となる。
また、本発明の吸着性積層体は、臭気成分、VOCを効果的に吸着することができる。
粒子径が1000nm以下の金属超微粒子は、通常の金属粒子とその特性が大きく異なり、特にその表面活性が高くしかも表面積が大きいことから、臭気成分又はVOCへの反応性に優れ、通常の粒子よりも大きな吸着速度及び吸着量を有し、優れた吸着効果を発現すると考えられるが、前述したように、このような金属超微粒子は表面活性が非常に高いことから、樹脂中にこれを配合すると樹脂の分解を促進し、樹脂の成形性を著しく阻害することになるのと共に、樹脂中に存在する金属超微粒子は成形と同時に吸着成分の吸着を開始し始め、実際の使用の際には、吸収効果が低減し、持続性に欠けるおそれがある。
本発明においては、金属超微粒子表面に有機酸成分を存在させることにより、金属表面と樹脂との直接接触を低減させることが可能となり、樹脂の分解を有効に抑制して、樹脂の分子量の低下等を低減することができ、成形性を阻害することがないと共に、有機酸成分と金属間で結合を有する金属超微粒子を含有する熱可塑性樹脂から成る層を中間層とし、その両面に保護層を形成することにより、該中間層に到達する吸着成分の透過速度を制御して、金属超微粒子の吸着速度を制御することが可能となるのである。
このことは、後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち、金属超微粒子を含有する樹脂から成る層のみから成る成形体においては、成形と同時に吸着成分を吸着し始め、成形開始直後から吸着速度がピークを迎え、10日後には吸着効果が消失し(比較例1)、或いは金属超微粒子を含有する層を中間層とし、その両面の保護層をガスバリア樹脂とした成形体においては、吸着成分の吸着が行われない (比較例2)。
これに対して、金属超微粒子を含有する層を中間層とし、その両面に保護層を設け、少なくとも一方をガス透過率の高い樹脂とした積層体においては、金属超微粒子含有層のみから成るものに比して、金属超微粒子自体の吸着量は同じであっても、一定の吸着効果が長期にわたって持続していることが明らかである(実施例1〜4)。
(金属超微粒子)
本発明の成形体に含有される金属超微粒子の金属成分は、Cu,Ag,Au,In,Pd,Pt,Fe,Ni,Co,Nb,Ru,Rh、Sn等を挙げることができ、中でもAu,Ag,Cuが好適である。これらの金属成分は、単体、混合物、合金等であってもよい。
前述したとおり、本発明においては、かかる金属が有機酸と結合を有していることが重要な特徴であり、1518cm−1付近に有機酸と金属間の結合に由来する赤外吸収ピークを有している。
有機酸としては、ミリスチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,パルミチン酸,n−デカン酸,パラトイル酸,コハク酸,マロン酸,酒石酸,リンゴ酸,グルタル酸,アジピン酸、酢酸等の脂肪族カルボン酸、フタル酸,マレイン酸,イソフタル酸,テレフタル酸,安息香酸、ナフテン酸等の芳香族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸等を挙げることができる。
本発明においては、用いる有機酸が、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸であることが好ましく、炭素数の多いものであることが特に好ましい。
金属超微粒子の好適な出発物質である有機酸金属塩としては、特にミリスチン酸銀、ステアリン酸銀等を挙げることができ、また平均粒子径が1乃至500μm、特に10乃至200μmの範囲にあることが好ましい。
本発明の有機酸と金属の間に結合を有する金属超微粒子は、金属超微粒子の出発物質である有機酸金属塩を不活性ガス雰囲気で熱処理することにより、金属超微粒子単体を生成することができるが、好適には、有機酸金属塩を熱可塑性樹脂と混合し、有機酸金属塩の樹脂中での熱分解温度、特に、有機酸金属塩の樹脂中で熱分解する温度以上、且つ熱可塑性樹脂の劣化温度未満の温度の熱処理を経ることによって、樹脂中で均一分散された金属超微粒子を形成することができる。
本発明に用いる金属超微粒子を得るために必要な加熱条件は、用いる有機酸金属塩によっても相違するので、一概には規定できないが、一般的には120乃至350℃、特に170乃至300℃の温度で、30乃至1800秒、特に120乃至600秒加熱されることが望ましい。
本発明の成形体中に含有される金属超微粒子は、その最大径が1μm以下で、その平均粒子径は特に1乃至100nmの範囲にあることが望ましい。
尚、かかる金属超微粒子が樹脂中で均一分散されていることは、金属超微粒子のプラズモン吸収の存在により確認することができる。
(樹脂組成物)
本発明の吸着性積層体を成形し得る樹脂組成物から成り、上述したように、不活性雰囲気下で有機酸金属塩を熱処理して得られた金属超微粒子を樹脂中に配合したものでもよいが、特に、上述した金属超微粒子の出発物質である有機酸金属塩を含有する樹脂組成物であることが好ましい。
すなわち前述した通り、本発明の吸着性金属超微粒子の出発物質である有機酸金属塩は、樹脂組成物の成形加工の際の熱処理によって、樹脂成形品中で金属超微粒子が均一分散して、樹脂成形品中に本発明の吸着性金属超微粒子が存在することが可能になる。
本発明の吸着性金属超微粒子が含有される中間層の樹脂としては、溶融成形が可能な熱可塑性樹脂であれば従来公知のものをすべて使用でき、例えば、低−,中−,高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタエート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
本発明の吸着性樹脂成形体を成形し得る樹脂組成物においては、特に酸素透過係数が1.0×10−4cc・m/m・day・atm以上の樹脂であることが好ましい。これにより、臭気成分或いはVOCの樹脂中への透過が大きくなり、樹脂中の吸着性金属超微粒子への臭気成分或いはVOCの吸着を容易にすることができ、吸着性をより向上することができる。
本発明の吸着性積層体においては、特にポリエチレンを用いることが好適である。
また本発明の吸着性積層体においては、その用途に応じて、それ自体公知の各種配合剤、例えば、充填剤、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って配合することができる。
本発明の吸着性樹脂組成物においては、樹脂100重量部当り有機酸金属塩を0.01乃至5重量部の量で配合することが好ましく、上記範囲よりも少ないと十分な吸着効果を得ることができず、一方上記範囲よりも多いと金属超微粒子が凝集し、均一分散が困難になるおそれがあるので好ましくない。
(保護層)
上述した金属超微粒子を含有する熱可塑性樹脂から成る中間層の両面に形成される保護層としては、用途に応じて金属超微粒子の吸着速度を所望の速度にコントロールするように、上述した熱可塑性樹脂の中からガス透過率を考慮して選択することができる。
すなわち、保護層の両面にガス透過率の高い樹脂を採用した場合には、金属超微粒子に吸着成分が到達する速度が比較的遅くなるので、金属超微粒子の吸着効果は緩やかに発現され、吸着成分と金属超微粒子の反応が飽和に達するまでに時間がかかるため、吸着効果は長期にわたって持続することになる。
また、一方の保護層にガス透過率の低い樹脂を採用した場合には、金属超微粒子含有樹脂層のみから成る場合、或いは上述した保護層の両面にガス透過率の高い樹脂を採用した場合に比して、さらに吸着効果が低減し、その効果の開始及び終了は遅くはなるが、より一層、長期に亘ってその効果が持続する。
尚、保護層の両面にガス透過率の低い樹脂を採用した場合は、金属超微粒子による吸着効果は殆ど発現されない。
また保護層の厚みも吸着速度を制御する上で重要であり、採用する樹脂のガス透過率に応じて保護層の厚みを決定することにより、所望の吸着速度を得ることが可能となる。
好適には、保護層は、金属超微粒子を含有させる中間層の熱可塑性樹脂よりもガス透過率の高いものであることが、吸着効果を効率的に発現する上で望ましい。
保護層を構成する熱可塑性樹脂は、中間層を構成する熱可塑性樹脂と同じものであってもよく、また中間層を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂を選択することにより、層間接着性を向上させることもできる。
保護層を構成する樹脂としては、これに限定されないが、線状低密度ポリエチレン、脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂等を好適に使用することができる。
また、保護層の両面を上述した熱可塑性樹脂から選択してもよいが、一方の面をガスバリア性樹脂或いは金属箔等のガスバリア性を有する基体とすることもでき、この場合には、吸着性積層体の一方の面のみから吸着成分を吸着する。
ガスバリア性層としては、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂、ガスバリア性ポリエステル樹脂等のガスバリア性樹脂のほか、アルミニウム箔、鋼箔等の金属箔、或いは熱可塑性樹脂に無機蒸着膜等を施したもの等を使用することができる。
(吸着性積層体)
本発明の吸着性積層体において、金属超微粒子を含有する中間層の厚みは、得ようとする吸着効果及び用途に応じて適宜決定され、一概には規定できないが、1乃至500μm、特に10乃至300μmの範囲にあることが好ましい。また保護層の厚みは、用いる樹脂のガス透過率によって適宜決定され、やはり一概には規定できないが、1乃至100μm、特に2乃至50μmの範囲にあることが好ましい。
吸着性積層体の層構成としては、これに限定されないが、以下のものを挙げることができる。
線状低密度ポリエチレン/ポリエチレン/線状低密度ポリエチレン、ポリエチレン/ポポリプロピレン/ポリエチレン、
等を挙げることができる。
吸着性積層体の成形方法としては、予め各層を別途形成し、熱接着などの方法により積層することもできるし、また中間層を構成する熱可塑性樹脂と接着性のない場合には、従来公知の接着剤を用いて積層することも勿論できる。また共射出、共押出等の従来公知の積層体の方法により成形することもできる。
また吸着性積層体は、フィルム、シート、容器、建材、壁紙等の吸着性(消臭性)樹脂成形品を成形することができる。
[実施例]
(消臭評価)
1.未消臭時メチルメルカプタン濃度の測定
口部をゴム栓で密封した窒素ガス置換した500mLガラス製瓶内に、前記瓶内の濃度が4ppmになるように調整された悪臭物質メチルメルカプタン5μLをマイクロシリンジにて注入し、その濃度が4ppmになるように調整し、室温(25℃)で1日放置した。1日放置後、瓶中へガステック社製検知管を挿入し残存メチルメルカプタン濃度を測定し、未消臭時メチルメルカプタン濃度(A)とした。
2.消臭後メチルメルカプタン濃度の測定
実施例及び比較例から得られたフィルムを50mm四方に切り出し、窒素ガス置換した500mLガラス製瓶内に入れてゴム栓で密封した後、前記瓶内の濃度が4ppmになるように調整された悪臭物質メチルメルカプタン5μLをマイクロシリンジにて注入し、室温(25℃)で1日放置した。1日放置後、前記瓶中へガステック社製検知管を挿入し残存メチルメルカプタン濃度を測定し、消臭後メチルメルカプタン濃度(B)とした。次いで、濃度測定後に取り出したフィルムを新たに準備したガラス製瓶内に挿入し、同様に注入、室温(25℃)1日放置後(2日目)、濃度測定を行った。この工程を繰り返し、合計10日目まで継続して行った。
3.メチルメルカプタン消臭率の算出
前記未消臭時メチルメルカプタン濃度(A)から消臭後メチルメルカプタン濃度(B)を引いた値を未消臭時メチルメルカプタン濃度(A)で割り百分率で表した値を消臭率とし、1日後から10日後までの消臭率を算出した。
[実施例1]
第1層(保護層)が低密度ポリエチレン樹脂、第2層(中間層)が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂にステアリン酸銀を0.5wt%の含有率になるように配合し、第3層(保護層)が低密度ポリエチレン樹脂になるように押出成形温度200℃で共押出して、それぞれの層が5μm、30μm、5μmからなる3層フィルムを作製した。得られたフィルムについて、1日後から10日後における未消臭時メチルメルカプタン濃度測定、消臭後メチルメルカプタン濃度測定、消臭率の算出を行った。
測定、算出の結果を表1に示す。
[実施例2]
第1層と第2層(保護層)の厚みが10μmになるようにした以外は実施例1と同様に3層フィルムを作製し、測定と算出を行った。
[実施例3]
第1層(保護層)を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、第3層(保護層)をエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂にした以外は実施例1と同様に3層フィルムを作製し、測定と算出を行った。
[比較例1]
低密度ポリエチレン樹脂にステアリン酸銀が0.5wt%になるように配合して、押出成形温度200℃で押出して単層フィルムを作製した。
[比較例2]
第1層と第3層(保護層)をエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂にした以外は実施例1と同様にして単層フィルムを作製し、測定と算出を行った。
Figure 0005347282
前記実施例および比較例から、金属超微粒子を含有する中間層を、ガス透過率の高い樹脂からなる保護層で構成された積層体とすることにより、消臭量を制御することが可能となり、吸着持続性、吸着緩行性を持たせることが可能となる。

Claims (4)

  1. 有機酸成分と金属間で結合を有する平均粒径1乃至100nmの金属超微粒子を含有する熱可塑性樹脂から成る中間層の内外面に、保護層を積層して成り、該保護層の少なくとも一方が、中間層を構成する熱可塑性樹脂よりも酸素透過率の高い樹脂から成り、前記金属超微粒子が、熱可塑性樹脂に脂肪酸金属塩を配合し、これを加熱することにより熱可塑性樹脂中で生成されていることを特徴とする吸着性積層体。
  2. 前記中間層及び保護層を構成する樹脂がポリエチレンである請求項1記載の吸着性積層体。
  3. 前記保護層の一方が酸素透過率の高い樹脂から成り、他方がガスバリア層から成る請求項1記載の吸着性積層体。
  4. 前記ガスバリア層がエチレン−ビニルアルコール共重合体である請求項記載の吸着性積層体。
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