以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明のタンデム型カラー画像形成装置の構成を示す概略図である。画像形成装置100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(イエロー、シアン、マゼンタ及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を順次形成する。
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)が形成される感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転しながら各画像形成部に隣接して移動する中間転写ベルト8上に順次転写(一次転写)された後、二次転写ローラ9において用紙P上に一度に転写(二次転写)され、さらに、定着部7において用紙P上に定着された後、画像形成装置100本体より排出される構成となっている。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
トナー像が転写される用紙Pは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12a及びレジストローラ対12bを介して二次転写ローラ9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。また、画像形成部Paの上流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのベルトクリーニング装置19が配置されている。
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光して静電潜像を形成する露光ユニット4と、感光体ドラム1a〜1d上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング装置5a、5b、5c及び5dが設けられている。
画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって感光体ドラム1a〜1dの表面に光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dは、感光体ドラム1a〜1dに対向配置された現像ローラ(現像剤担持体)を備え、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色のトナーが補給装置(図示せず)によって所定量充填されている。このトナーは、現像装置3a〜3dの現像ローラにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
そして、中間転写ベルト8を間に挟んで各感光体ドラム1a〜1dに対して圧接するように配置された一次転写ローラ6a〜6dにより、一次転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間(一次転写部)に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置5a〜5dにより除去される。
中間転写ベルト8は、従動ローラ10、駆動ローラ11及びテンションローラ20に掛け渡されており、ベルト駆動モータ(図示せず)による駆動ローラ11の回転に伴い中間転写ベルト8が図1において反時計回りに回転を開始すると、用紙Pがレジストローラ13bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に近接して設けられた二次転写ローラ9と中間転写ベルト8のニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、ニップ部において中間転写ベルト8から用紙P上にフルカラートナー像が二次転写される。以降、フルカラートナー像をトナー像と略称する。トナー像が転写された用紙Pは定着部7へと搬送される。
定着部7に搬送された用紙Pは、定着ローラ対13のニップ部(定着ニップ部)を通過する際に加熱及び加圧されてトナー像が用紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。用紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラ15によって排出トレイ17に排出される。
一方、用紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した用紙Pの一部を一旦排出ローラ15から装置外部にまで突出させる。その後、用紙Pは排出ローラ15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態で二次転写ローラ9に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラ9により用紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
図2は、図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。なお、画像形成部Pb〜Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。感光体ドラム1aの周囲には、ドラム回転方向(図2の反時計回り)に沿って帯電装置2a、現像装置3a、クリーニング装置5aが配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラ6aが配置されている。また、感光体ドラム1aに対し中間転写ベルト8の回転方向上流側には中間転写ベルト8を挟んで従動ローラ10に対向するベルトクリーニングローラ19aを備えたベルトクリーニング装置19が配置されている。
帯電装置2aは、感光体ドラム1aに接触してドラム表面に帯電バイアスを印加する帯電ローラ21と、帯電ローラ21をクリーニングするための帯電クリーニングローラ23とを有している。現像装置3aは、2本の攪拌搬送スクリュー25と、磁気ローラ27と、現像ローラ29とを有するタッチダウン現像式であり、現像ローラ29にトナーと同極性(正)の現像バイアスを印加してドラム表面にトナーを飛翔させる。
クリーニング装置5aは、摺擦ローラ30、クリーニングブレード31、及び回収スクリュー33を有している。摺擦ローラ30は感光体ドラム1aに所定の圧力で圧接されており、図示しない駆動手段により感光体ドラム1aとの当接面において同一方向に回転駆動されるが、その周速は感光体ドラム1aの周速よりも速く(ここでは1.2倍)制御されている。摺擦ローラ30としては、例えば金属シャフトの周囲にローラ体としてEPDMゴム製でアスカC硬度55°の発泡体層を形成した構造が挙げられる。ローラ体の材質としてはEPDMゴムに限定されず、他の材質のゴムや発泡ゴム体であっても良く、アスカC硬度が10〜90°の範囲のものが好適に使用される。
感光体ドラム1a表面の、摺擦ローラ30との当接面よりも回転方向下流側には、クリーニングブレード31が感光体ドラム1aに当接した状態で固定されている。クリーニングブレード31としては、例えばJIS硬度が78°のポリウレタンゴム製のブレードが用いられ、その当接点において感光体接線方向に対し所定の角度で取り付けられている。なお、クリーニングブレード31の材質及び硬度、寸法、感光体ドラム1aへの食い込み量及び圧接力等は、感光体ドラム1aの仕様に応じて適宜設定される。
摺擦ローラ30及びクリーニングブレード31によって感光体ドラム1a表面から除去された残留トナーは、回収スクリュー33の回転に伴ってクリーニング装置5a(図2参照)の外部に排出される。本発明に用いられるトナーとしては、トナー粒子表面に研磨剤としてシリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等が埋め込まれて表面に一部突出するように保持されたものや、研磨剤がトナー表面に静電的に付着しているものが用いられる。
このように摺擦ローラ30を感光体ドラム1aに対し速度差を持って回転させることで研磨剤を含む残留トナーによって感光体ドラム1aの表面を研磨し、摺擦ローラ30及びクリーニングブレード31によってドラム表面の水分や汚染物質を残留トナーと共に除去する。
次に、本発明の画像形成装置の制御経路について説明する。図3は、本発明の画像形成装置に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き自在の記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンタ95、画像形成装置100内の各装置に制御信号を送信したり操作部50からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、装置本体内部の任意の場所に配置可能である。
ROM92には、画像形成装置100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置100の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。カウンタ95は、印刷枚数を積算してカウントする。
また、制御部90は、画像形成装置100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部Pa〜Pd、露光ユニット4、一次転写ローラ6a〜6d、中間転写ベルト8、二次転写ローラ9、画像入力部40、バイアス制御回路41、操作部60等が挙げられる。
画像入力部40は、画像形成装置100にパソコン等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部40より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
バイアス制御回路41は、帯電バイアス電源42、現像バイアス電源43、第1直流電源44a〜44d、第2直流電源45、及びベルトクリーニングバイアス電源46と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させるものであり、これらの各電源は、バイアス制御回路41からの制御信号によって、帯電バイアス電源42は帯電器2a〜2d内の帯電ローラ21に、現像バイアス電源43は現像装置3a〜3d内の磁気ローラ27及び現像ローラ29に、第1直流電源44a〜44dは一次転写ローラ6a〜6dに、第2直流電源45は二次転写ローラ9に、ベルトクリーニングバイアス電源46はベルトクリーニングローラ19aに、それぞれ所定のバイアスを印加する。
操作部60には、液晶表示部61、各種の状態を示すLED62が設けられており、ユーザは操作部60のストップ/クリアボタンを操作して画像形成を中止し、リセットボタンを操作して画像形成装置100の各種設定をデフォルト状態にする。液晶表示部61は、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印刷部数を表示したりするようになっている。画像形成装置100の各種設定はパソコンのプリンタドライバから行われる。
ところで、画像形成部Paにおいて中間転写ベルト8に一次転写されたイエローのトナー像が、中間転写ベルト8の進行方向下流側の画像形成部Pb〜Pdにおける一次転写電界を通過する際、トナー像への放電、電荷注入が発生してトナーの帯電状態が変化する。また、画像形成部Pbにおいて一次転写されたマゼンタのトナー像が下流側の画像形成部Pc、Pdにおける一次転写電界を通過する際、或いは画像形成部Pcにおいて一次転写されたシアンのトナー像が下流側の画像形成部Pdにおける一次転写電界を通過する際にも同様の現象が発生する。このトナーの帯電状態の変化により、二次転写されにくい高帯電トナーや、逆極性帯電トナーが発生し、二次転写ローラ9により用紙P上に二次転写する際に転写不良画像を発生させる要因となっている。
図4は、一次転写部における転写電流と転写印加電圧との関係を示すグラフである。図4に示すように、画像形成部Pa〜Pdの一次転写部において設定電流値(例えば−10μA)の一次転写電流を流す場合、ベルト上にトナー像が転写されていない状態(図4の細線)と1色目を転写する状態(図4の破線)において必要な転写印加電圧がほぼ等しく、2色目を転写する状態(図の一点鎖線)、1色目が一次転写電界を通過する状態(図4の中太線)、2色目が一次転写電界を通過する状態(図4の太線)の順に、必要な転写印加電圧が高くなっている。
この理由としては次のように考えられる。トナー像が順次転写され重畳されることによって中間転写ベルト8上のトナー層が厚くなり、トナーの抵抗及び静電容量が増加する。即ち、トナー層が重畳されるにつれ、同じ一次転写電流に対する転写抵抗(一次転写ローラ6a〜6d、中間転写ベルト8、トナー層、及び部材間のギャップ等の合成抵抗)が高くなり、必要な転写印加電圧も高くなる。
一方、中間転写ベルト8の進行方向下流側の一次転写部において、転写印加電圧を高くしてトナー像の転写に必要な一次転写電流を確保しようとすると、先に一次転写されたトナー像の通過時にトナー像への放電、電荷注入が発生し易くなり、特に低湿環境下において二次転写不良を発生させてしまう。
そこで、中間転写ベルト8上に既に一次転写されたトナー像にトナー像を重畳して一次転写する場合には必要十分な量の一次転写電流を流すことができ、且つ中間転写ベルト8上のトナー像が下流側の一次転写電界を通過する場合には一次転写電流を低下させてトナーの帯電状態の変化を抑制できる構成が必要となる。
転写印加電圧値を制御することにより、トナー像が下流側の一次転写電界を通過する時にベルト裏面に流れる一次転写電流を抑制することも可能であるが、中間転写ベルト8や一次転写ローラ6a〜6d等の部材の抵抗が温湿度や部材の耐久状態などにより変化するため、使用環境や使用期間に応じて適正値の設定を大きく補正する必要があり、安定した一次転写電流を得ることは困難である。
本発明の画像形成装置においては、一次転写ローラ6b〜6dに並列に抵抗を配置して一次転写電流の一部を分流することで、同じ設定電流値とした場合でも、トナー像が下流側の一次転写電界を通過する場合に中間転写ベルト8の裏面に流れる電流を、トナー像を一次転写する場合と比較して抑制できる構成とした。以下、本発明の特徴部分について詳細に説明する。
図5は、本発明の画像形成装置における中間転写ベルト周辺の構成を示す概略図である。図1及び図2と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。図5に示すように、一次転写ローラ6a〜6dには一次転写電圧を印加するための第1直流電源44a〜44dが接続されており、一次転写ローラ6b〜6dに接続される第1直流電源44b〜44dには、それぞれ第1抵抗47a、第2抵抗47b、及び第3抵抗47cが一次転写ローラ6b〜6dと並列に接続されている。また、二次転写ローラ9には二次転写電圧を印加するための第2直流電源45が接続されている。
この構成により、一次転写電流の一部が第1抵抗47a〜第3抵抗47c側の回路に分流されるため、転写抵抗が低い場合、即ち中間転写ベルト8上にトナー像を一次転写する場合には中間転写ベルト8の裏面に十分な一次転写電流が流れるが、転写抵抗が高い場合、即ち中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像が一次転写電界を通過する場合には第1抵抗47a〜第3抵抗47c側の回路により多くの電流が流れるため、中間転写ベルト8の裏面に流れる一次転写電流を低減することができる。
ここで、第1抵抗47a〜第3抵抗47cの抵抗値が一次転写ローラ6b〜6dを含む一次転写部の転写抵抗に比べて高すぎると、第1抵抗47a〜第3抵抗47c側の回路に流れる電流が小さくなり、トナー像の転写時とトナー像の通過時とで一次転写電流に十分な差を設けることができない。一方、第1抵抗47a〜第3抵抗47cの抵抗値が一次転写ローラ6b〜6dを含む一次転写部の転写抵抗に比べて低すぎると、一次転写を行うために第1直流電源44b〜44dの出力電圧を大きくする必要があり、電源基板の高コスト化や安全性が問題となる。
そこで、第1抵抗47a〜第3抵抗47cの抵抗値は、低湿環境における一次転写部の転写抵抗と同程度の抵抗値に設定することが好ましい。前述したように、一次転写電流の電流設定値が同じであってもトナー層が重畳されていくにつれて転写抵抗は高くなる。また、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像が一次転写電界を通過して帯電が上昇すると、トナー層の分圧が上昇するため転写抵抗は高くなる。従って、第1抵抗47a〜第3抵抗47cは、第1抵抗47a、第2抵抗47b、第3抵抗47cと下流側にいくほど抵抗値を高くしておく必要がある。
次に、第1抵抗47a〜第3抵抗47cの抵抗値を設定する方法について具体的に説明する。例えば、図5に示したような構成のカラー画像形成装置100において、一次転写ローラ6a〜6dは、直径8mmの金属製シャフトの周囲にアスカC硬度40°、電圧1kV印加時の抵抗値が107Ωの発泡ゴム層を形成して成る直径16mm、長さ300mmの発泡ゴムローラとし、感光体ドラム1a〜1dは、直径30mmのアモルファスシリコン感光体とする。そして、感光体ドラム1a〜1d及び中間転写ベルト8を線速150mm/secで駆動すると同時に第1直流電源44a〜44dから一次転写ローラ6a〜6dに一次転写電圧を印加し、感光体ドラム1a〜1d上に形成された正帯電のトナー像を中間転写ベルト8上に一次転写する。
また、低湿環境下(15%RH)に中間転写ベルト8の幅方向全域に100%(ベタ)画像を一次転写する場合、第1抵抗47a〜〜第3抵抗47cを設けない場合の一次転写部の転写抵抗を表1に示す抵抗値とする。また、一次転写に必要とされる一次転写電流(図4の縦線)が−10μAであるとする。
そして、抵抗値が120MΩの第1抵抗47a、抵抗値が130MΩの第2抵抗47b、抵抗値が135MΩの第3抵抗47cを、それぞれ一次転写ローラ6b〜6dに並列に接続するとともに、第1直流電源44aには一次転写電流として−10μAが流れるように電圧を印加し、第1直流電源44b〜44dには一次転写電流として−20μAが流れるように電圧を印加する。このとき、実際に一次転写ローラ6a〜6d側に流れる一次転写電流について考える。
なお、イエロー、マゼンタ、シアンの3色を重ねた色(グレー〜ブラック)は、イエロー、マゼンタにブラックを重ねた色で置き換えたほうがトータルのトナー積層量が少なくて済む。そのため、通常はイエロー、マゼンタ、シアンの3色を重ねるような転写や、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色を重ねるような転写は行われない。従って、以下の説明では、画像形成部Pb、Pcでシアン、マゼンタのトナー像を2色目として一次転写し、画像形成部Pdでブラックのトナー像を3色目として一次転写することとしている。
画像形成部Paにおいてイエロー(1色目)のトナー像を一次転写する場合、一次転写ローラ6aには並列抵抗が接続されていないため、−10μAの電流は全て一次転写ローラ6aに流れてイエローのトナー像の一次転写に用いられる。
また、画像形成部Pb、Pcでシアン、マゼンタ(2色目)のトナー像を一次転写する場合、表1から2色目のトナー像を転写する際の転写抵抗は120MΩに上昇しているが、一次転写ローラ6bには120MΩの第1抵抗47aが並列に接続されているため、第1抵抗47a側に逃げずに一次転写ローラ6b側に流れる電流値は、−20×120/(120+120)=−10μAとなり、−10μAがシアンのトナー像の一次転写に用いられる。
同様に、一次転写ローラ6cには130MΩの第2抵抗47bが並列に接続されているため、第2抵抗47b側に逃げずに一次転写ローラ6c側に流れる電流値は、−20×130/(120+130)≒−10.4μAとなり、−10.4μAがマゼンタのトナー像の一次転写に用いられる。
さらに、画像形成部Pdでブラック(3色目)のトナー像を一次転写する場合、表1から3色目のトナー像を転写する際の転写抵抗は130MΩに上昇しているが、一次転写ローラ6dには135MΩの第3抵抗47cが並列に接続されているため、第3抵抗47c側に逃げずに一次転写ローラ6d側に流れる電流値は、−20×135/(135+130)≒−10.2μAとなり、−10.2μAがブラックのトナー像の一次転写に用いられる。
なお、ハーフトーン画像や文字画像を一次転写する場合は100%(ベタ)画像を一次転写する場合に比べてトナーの転写量が少ないため、転写抵抗は表1の値に比べて低くなる。従って、一次転写ローラ6a〜6d側に流れて一次転写に用いられる電流値は常に−10μA以上を確保することができる。
次に、一次転写されたトナー像が下流側の一次転写部を通過する場合について考える。例えば、シアンの画像形成部Pbをイエロー(1色)のトナー像が通過する場合、表1から1色のトナー像が通過する際の転写抵抗は125MΩに上昇しているが、一次転写ローラ6bには120MΩの第1抵抗47aが並列に接続されているため、第2抵抗47b側に逃げずに一次転写ローラ6b側に流れる電流値は、−20×120/(120+125)≒−9.8μAとなる。
同様に、マゼンタの画像形成部Pcをイエロー、シアン(2色)のトナー像が通過する場合、表1から2色のトナー像が通過する際の転写抵抗は140MΩに上昇しているが、一次転写ローラ6cには130MΩの第2抵抗47bが並列に接続されているため、第2抵抗47b側に逃げずに一次転写ローラ6c側に流れる電流値は、−20×130/(130+140)≒−9.6μAとなる。
さらに、ブラックの画像形成部Pdをイエロー、シアン(2色)のトナー像が通過する場合、表1から2色のトナー像が通過する際の転写抵抗は140MΩに上昇しているが、一次転写ローラ6dには135MΩの第3抵抗47cが並列に接続されているため、第3抵抗47c側に逃げずに一次転写ローラ6d側に流れる電流値は、−20×135/(135+140)≒−9.8μAとなる。従って、第1抵抗47a〜第3抵抗47cに逃げずにトナー像の帯電状態の変化を引き起こす電流値を常に−10μA以下に抑えることができる。
このように、本発明の画像形成装置によれば、トナー像を中間転写ベルト8に転写する場合に必要となる一次転写電流を安定して確保することができ、且つ、既にベルト進行方向上流側の一次転写部において中間転写ベルト8に一次転写されたトナー層が下流側の一次転写電界を通過する際には、トナー像を中間転写ベルト8に転写する場合と比較して中間転写ベルト8の裏面に流れる電流を減少できる。従って、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナーの帯電状態の変化を抑制することができ、特に部材及びトナーの抵抗が上昇する低湿環境において発生し易い二次転写不良を効果的に抑制することができる。
図6は、本発明のカラー画像形成装置に用いられる中間転写ベルト8の一構成例を示す部分断面図である。中間転写ベルト8は、基材層81、及びコート層82から成る2層構造の導電性ベルトであり、基材層81が一次転写ローラ6a〜6dと、コート層82が感光体ドラム1a〜1dとそれぞれ接触する。
基材層81は中間転写ベルト8を構成する基本素材となって所定の剛性を付与するとともに、コート層82を積層する際の加工条件に耐え、更に、中間転写ベルト8の製造に際し、加工作業性、耐熱性、滑り性、その他の諸物性において優れたものであることが好ましい。このような基材層81の材質としては、例えば伸縮しにくいPI(ポリイミド)、PAI(ポリアクリルイミド)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の樹脂が用いられる。また、樹脂中に導電剤としてカーボンブラックを分散させて、500V印加時の体積抵抗率が109〜1012Ω・cm程度に調整される。
コート層82は基材層81を保護するとともに離型性を付与するものである。コート層82の材質としてはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が用いられる。その他、基材層81、コート層82以外に弾性層等の他の層を含む3層以上の構成であっても良い。
図6に示したような中間転写ベルト8では、コート層82は500V印加時の体積抵抗率が1012Ω・cm以上の高抵抗となる。この原因としては、コート層82に離型性の良い材料を用いる場合、ヤング率の高い材料になりがちであり、コート層82の割れ等を抑制するために10μm以下の薄層にすることが好ましい。このような薄層に導電剤を均一に分散させることは困難であるため、コート層82の抵抗調整は難しく、高抵抗のまま用いることが多い。
そして、コート層82の抵抗が高い場合、中間転写ベルト8表面のコート層82が電荷を保持して局部的な放電やトナーの帯電上昇が発生し易くなり、上述したような二次転写不良も起こりやすくなる。
しかし、図5に示したように、一次転写ローラ6b〜6dと並列に第1抵抗47a〜第3抵抗47cを接続する本発明の構成とすることで、図6のような表面が高抵抗の中間転写ベルト8を用いた場合においても下流側の一次転写電界を通過することによるトナーの帯電状態の変化を抑制して二次転写不良の発生を防止することができる。
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では、一次転写ローラ6a〜6dのうち、最上流側の一次転写ローラ6aを除く一次転写ローラ6b〜6dに第1〜第3抵抗47a〜47cを並列に接続しているが、例えば一次転写ローラ6c、6dのみに並列抵抗を接続しても良いし、最下流側の一次転写ローラ6dのみに並列抵抗を接続しても良い。
また、上述した第1抵抗47a〜第3抵抗47cの抵抗値や一次転写電流の設定電流値は一例にすぎず、画像形成装置の仕様や使用環境等に応じて適宜設定すれば良い。