この発明は、支持体と感熱記録層との間に中空粒子を含有するアンダーコート層が設けられた感熱記録部材に係り、特に、支持体の表面に上記のアンダーコート層を形成した状態で送りローラ等により搬送させる際に、このアンダーコート層と送りローラ等との間の摩擦抵抗を低減させ、摩擦音が発生したり、感熱記録部材に皺が生じたりするのを防止すると共に、適切な感熱記録が行えるようにした点に特徴を有するものである。
従来より、計測用レコーダ、コンピューター等の端末プリンタ、ファクシミリ、自動券売機、バーコードラベルなどの様々な分野において、サーマルヘッドを用いた感熱記録装置により、感熱記録シートなどの感熱記録部材に対して、画像や文字などの情報を記録させることが行われている。
そして、上記のような感熱記録部材としては、一般に、紙やプラスチックフィルムなどの支持体上に、加熱によって発色する発色剤や顕色剤を含有する感熱記録層を設け、この感熱記録層の上にオーバーコート層などを設けたものが広く利用されている。
また、近年においては、上記のような感熱記録装置の高性能化が進められ、高速で、かすれなどの発生が少なく、印字部と非印字部との濃淡の差が明確な良好な記録が行えるようにすることが要望されている。
そして、従来においては、このような要望に対応させるため、支持体と感熱記録層との間にアンダーコート層を設けて感熱記録層の表面を平滑にし、サーマルヘッドとの密着性を高めて、感熱記録部材における感度を向上させるようにしたものや、また上記のアンダーコート層に中空粒子を含有させて断熱性を高め、感熱記録部材における感度をさらに向上させるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
しかし、このように支持体の表面に中空粒子を含有するアンダーコート層を形成した状態で、これを送りローラ等により搬送させて感熱記録層を形成するようにした場合、搬送時にアンダーコート層に含有された中空粒子が送りローラ等との接触によって変形し、このアンダーコート層と送りローラ等との間の摩擦抵抗が大きくなって摩擦音が発生したり、搬送時に支持体が変形して、製造された感熱記録部材に皺が入ったりして、適切な感熱記録が行えなくなるという問題があった。
特開昭59−5093号公報
特許第2530459号公報
特開2004−106435号公報
この発明は、支持体と感熱記録層との間に中空粒子を含有するアンダーコート層が設けられた感熱記録部材における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
すなわち、この発明においては、支持体の表面に中空粒子を含有するアンダーコート層を形成した後、このアンダーコート層の上に感熱記録層を形成する等のために、中空粒子を含有するアンダーコート層が形成された支持体を送りローラ等により搬送させる際に、このアンダーコート層と送りローラ等との間の摩擦抵抗を低減させ、摩擦音が発生したり、感熱記録部材に皺が生じたりするのを防止すると共に、適切な感熱記録が行えるようすることを課題とするものである。
この発明においては、上記のような課題を解決するため、支持体と感熱記録層との間に中空粒子を含有するアンダーコート層が設けられた感熱記録部材において、上記のアンダーコート層に上記の中空粒子の平均粒径および該アンダーコート層の平均厚みよりも平均粒径の大きいポリエチレンワックスが含有されて、このポリエチレンワックスの一部がアンダーコート層から突出させるようにしたのである。
そして、このように中空粒子を含有するアンダーコート層に中空粒子の平均粒径および該アンダーコート層の平均厚みよりも平均粒径の大きいポリエチレンワックスを含有させて、このポリエチレンワックスの一部をアンダーコート層から突出させるにあたっては、上記の中空粒子として、平均粒径が0.4〜2.5μmの範囲のものを用いると共に、上記のポリエチレンワックスとして、平均粒径が3.0〜16μmの範囲のものを用い、中空粒子とポリエチレンワックスとの合計量に対するポリエチレンワックスの割合を3〜20重量%の範囲にすることが好ましい。
この発明における感熱記録部材においては、支持体と感熱記録層との間に中空粒子を含有するアンダーコート層を設けるにあたり、このアンダーコート層に中空粒子の平均粒径および該アンダーコート層の平均厚みよりも平均粒径の大きいポリエチレンワックスを含有させて、このポリエチレンワックスの一部をアンダーコート層から突出させるようにしたため、このようなアンダーコート層を設けた支持体を送りローラ等により搬送させる場合に、アンダーコート層から突出したポリエチレンワックスの一部が送りローラ等と接触するようになり、従来のようにアンダーコート層に含有された中空粒子が送りローラ等との接触により変形して、アンダーコート層と送りローラ等との間の摩擦抵抗が大きくなるのが防止されるようになる。
この結果、アンダーコート層を設けた支持体を送りローラ等により搬送させる場合に、摩擦音が発生するのが抑制されると共に、搬送時に支持体が変形して製造された感熱記録部材に皺が入ったりするのが防止され、適切な感熱記録が行えるようになる。
そして、このように中空粒子を含有するアンダーコート層に中空粒子の平均粒径および該アンダーコート層の平均厚みよりも平均粒径の大きいポリエチレンワックスを含有させて、このポリエチレンワックスの一部をアンダーコート層から突出させるにあたり、上記の中空粒子として、平均粒径が0.4〜2.5μmの範囲のものを用いると共に、上記のポリエチレンワックスとして、平均粒径が3.0〜16μmの範囲のものを用い、中空粒子とポリエチレンワックスとの合計量に対するポリエチレンワックスの割合を3〜20重量%の範囲にすると、ポリエチレンワックスの一部がアンダーコート層から適切に突出されるようになり、アンダーコート層からのポリエチレンワックスの突出が少なくて、アンダーコート層と送りローラ等との間の摩擦抵抗が大きくなったり、ポリエチレンワックスがアンダーコート層から過剰に突出されて感熱記録層の厚みにムラが生じたりするのが防止される。
また、上記のアンダーコート層の厚みを適切に設定しながら、ポリエチレンワックスの一部がアンダーコート層から適切に突出されるようにするためには、上記の中空粒子に、好ましくは0.7〜1.8μmの範囲のものを、より好ましくは0.9〜1.4μmの範囲のものを用いるようにすると共に、上記のポリエチレンワックスに、好ましくは4.0〜13μmの範囲のものを、より好ましくは5.0〜12μmの範囲のものを用いるようにし、上記の中空粒子の粒径Dsに対するポリエチレンワックスの粒径Dbの比(Db/Ds)が3〜16の範囲、好ましくは4〜15の範囲、より好ましくは5〜13の範囲になるようにする。
以下、この発明の実施形態に係る感熱記録部材を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る感熱記録部材は、特に下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
この実施形態における感熱記録部材10は、図1に示すように、支持体11の上に、中空粒子12aとこの中空粒子12aよりも粒径の大きい潤滑性粒子12bとが含有されて、潤滑性粒子12bの一部が突出されたアンダーコート層12と、感熱記録層13と、第1及び第2のオーバーコート層14a,14bとが積層された構造になっている。
ここで、上記の支持体10としては、紙、不織布、プラスチックフィルム、金属箔及びこれらを組み合わせた複合シートなどを用いることができる。
そして、上記の感熱記録部材1を製造するにあたっては、上記の支持体11を送り装置(図示せず)により搬送させ、上記の中空粒子12aと潤滑性粒子12bとバインダとを含むアンダーコート層用塗液を、この支持体11の上にバーコータ、ロッドコータなどの塗布機を用いて塗布し、これを乾燥させて、支持体11の上に上記のアンダーコート層12を形成し、図2に示すように、このようにアンダーコート層12が形成された支持体11を送りローラ1等によって送り、このアンダーコート層12の上に、上記の感熱記録層13と、第1及び第2のオーバーコート層14a,14bとを形成するようにしている。
ここで、上記の中空粒子12aとしては、上記のように平均粒径が0.4〜2.5μmの範囲のものを用い、感熱記録時における熱やスーパーカレンダー処理時などにおける圧力によって、この中空粒子12aが変形したり、破壊されたりするのを防止するため、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体等のこれらの共重合体からなる熱可塑性樹脂で構成されたものを用いるようにする。
また、上記のアンダーコート層12における断熱性を高めるため、この中空粒子12aにおける中空率が35〜95%、好ましくは40〜90%、より好ましくは45〜80%のものを用いるようにする。なお、この中空率とは、中空粒子全体の容積に対する中空部分の容積の比率である。
そして、このような中空粒子12aとしては、例えば、ロームアンドハース社製のローペイクHP−91,HP−1055,AF−1353等を用いることができる。
また、上記の潤滑性粒子12bとしては、上記のように平均粒径が3.0〜16μmの範囲のものを用いるようにし、アンダーコート層12から突出したこの潤滑性粒子12bの一部が上記の送りローラ1等と接触した際における摩擦抵抗を少なくするため、潤滑性に優れたポリエチレンワックス等の材料を用いることが好ましい。なお、この潤滑性粒子12bは、中空粒子であっても、中実粒子であってもよい。
そして、このような潤滑性粒子12bとしては、例えば、三井化学社製のケミパールW300,W400,W410や、サンノプコ社製のSNダルアクト1001W等を用いることができる。
また、上記のアンダーコート層12に用いるバインダとしては、一般に使用されている公知の高分子エマルジョンや水溶性高分子等を用いることができる。
そして、上記の高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルジョンを用いることができる。
また、水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等を用いることができる。
また、上記のように支持体11の上にアンダーコート層用塗液を塗布してアンダーコート層12を形成するにあたり、アンダーコート層用塗液の塗布量が少ないと、アンダーコート層12が薄くなって上記の潤滑性粒子12bの突出量が大きくなり、上記の感熱記録層13における厚みのムラが大きくなる一方、塗布量が多くなりすぎると、アンダーコート層12が厚くなりすぎて、上記の潤滑性粒子12bがアンダーコート層12から適切に突出されなくなったりするため、好ましくは、アンダーコート層12の厚みが潤滑性粒子12bの粒径よりも若干小さくなるようにし、アンダーコート層用塗液の塗布量を好ましくは2〜20g/m2の範囲、より好ましくは2.5〜15g/m2の範囲、さらに好ましくは3〜6g/m2の範囲になるようにする。
次いで、このように支持体11の上に形成されたアンダーコート層12の上に、感熱記録層13を設けるようにする。
ここで、この感熱記録層13においては、加熱により発色する発色剤、顕色剤、バインダの他に、増感剤、滑剤などを含有させることができる。
そして、加熱により発色する発色剤としては、一般に使用されている公知のロイコ系染料を用いることができ、このロイコ系染料としては、例えば、3−(N−イソペンチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−o−クロロアニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジェチルアミノ−6−メチル−7−p−トルイジノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、3−(N−エチル−N−イソペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジェチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジェチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジェチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−5−メチル−7−メチルフルオラン、3−(N−メチル−N−n−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソブチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エトキシプロピル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−ジェチルアミノ−6−メチル−8−メチルフルオラン、3−ジェチルアミノ−7−クロロフルオラン等を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、上記の顕色剤としては、上記のようなロイコ系染料に対して加熱時に反応して、これを発色させる種々の電子受容性物質を用いることができ、例えば、一般に使用されているベントナイト、ゼオライト、酸性白土、活性白土、シリカゲル、酸化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化アルミニウム、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、ジ−m−トリフロロメチルフェニルチオ尿素、ジ−フェニルチオ尿素、サリチルアニリド、4,4’−イソプロピリデンジフエノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフエノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフエノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフエノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフエノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフエノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフエノール)、4,4’−sec−ブチリデンジフェシール、4,4’−シクロヘキシリデンビスフエノール、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−メチルフエノール)、4−tert−ブチルフエノール、4−フエニルフエノール、4−ヒドロキシジフエノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、5−ヒドロキシフタル酸ジメチル、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフエノン、ノボラツク型フエノール樹脂、2,2’−チオビス(4,6−ジクロロフエノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4−tert−オクチルカテコール、2,2’−メチレンビス(4−クロロフエノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフエノール)、2,2’−ジヒドロキシジフエニル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−クロルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−o−クロルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、4−ヒドロキシジフエニルスルホン、4,2’−ジフェノールスルホン、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフエニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソブチルオキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフエニル)スルフイド、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸錫、酒石酸、シユウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、ビイミダゾール、ヘキサフェニルビイミダゾール、4臭化炭素、メチレンビス−(オキシエチレンチオ)ジフェノール、エチレンビス−(オキシエチレンチオ)ジフェノール、ビス−(4−ヒドロキシフェニルチオエチル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニルチオエチル)エーテル、m−キシリレンビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)エーテル等を用いることができる。
また、感熱記録層13のバインダとしても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、メチルビニル−無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリルニトリル、メチルビニルエーテルなどの水系樹脂を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、この感熱記録層13に含有させる増感剤や滑剤なども、一般に使用されている公知のものを用いることができる。そして、増感剤としては、例えば、1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタン、ワックス類、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アニリド、ナフトール誘導体、ナフタレン誘導体、芳香族エーテル、芳香族カルボン酸誘導体、芳香族スルホン酸エステル誘導体、炭酸又はシュウ酸ジエステル誘導体、ビフェニル誘導体、ポリエーテル誘導体、ターフェニル誘導体、スルホン誘導体等、常温で固体、好ましくは約70℃以上の融点を有するものなどを用いることができる。また、滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、オレイン酸などの脂肪酸類、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックス類、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸類、カルナバワックスなどのエステルワックス類、シリコンオイル、鯨油などの油類を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
次いで、この実施形態においては、上記の感熱記録層13の上に、第1オーバーコート層14aと第2オーバーコート層14bとを設けるようにしている。但し、感熱記録層13の上に形成するオーバーコート層は、このように第1オーバーコート層14aと第2オーバーコート層14bとを積層させた構造のものに限られず、単層のものであってもよい。
ここで、上記の第1オーバーコート層14aは、主として、感熱記録層13の耐水性、耐薬品性、耐可塑剤性等を向上させるためのものであり、バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、メチルビニル−無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メチルビニルエーテルなどの水系樹脂を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、上記の第2オーバーコート層14bは、主として、サーマルヘッドに対する感熱記録層13のマッチング性を向上させて、感熱記録層13における発色が適切に行われるようにするためのものであり、バインダに充填剤を添加させるようにし、必要に応じて、滑剤、架橋剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤などの添加剤を添加させるようにする。
ここで、この第2オーバーコート層14bのバインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン;ポリビニルカルバゾール;デンプン類;セルロース誘導体;アルギン酸塩;アクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル樹脂;アルキッド樹脂;マレイン酸樹脂;アクリロニトリル樹脂;エポキシ樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;スチレン樹脂;ウレタン樹脂;ビニリデン樹脂などを単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、上記の充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリナイト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ポリスチレン樹脂粒子、尿素−ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子などを単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、上記の感熱記録部材10をラベルとして使用する場合には、例えば、図3に示すように、上記の支持体11の裏面に、通常は障壁層15を介して粘着剤層16を設け、この粘着剤層16に剥離紙17を剥離可能に貼着させるようにする。なお、上記の障壁層15を設けないようにすることも可能である。
ここで、障壁層15は、粘着剤層16の成分が支持体11及びアンダーコート層12を通して感熱記録層13に拡散するのを防止すると共に、この感熱記録部材10がカールするのを防止するためのものである。
そして、この障壁層20の材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、メチルビニル−無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メチルビニルエーテルなどの水系樹脂を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
次に、この発明の具体的な実施例における感熱記録部材について説明すると共に、この実施例においては、感熱記録部材を製造するにあたり、アンダーコート層が形成された支持体を送りローラ等によって送る際に、摩擦音が発生したり、支持体が変形して感熱記録部材に皺が生じたりするのが防止されると共に、適切な感熱記録が行えることを、比較例を挙げて明らかにする。
(実施例1)
実施例1においては、坪量50g/m2の上質紙からなる支持体を用い、この支持体を送りローラを用いた搬送装置によって搬送させながら、この支持体の表面に、アンダーコート層と、感熱記録層と、第1及び第2のオーバーコート層とが積層された感熱記録部材を製造するようにした。
ここで、アンダーコート層の形成に用いるアンダーコート層用塗液を調製するにあたっては、スチレン−ブタジエン共重合体で構成された中空率55%,平均粒径1μmの中空粒子のエマルジョン(固形分濃度:27重量%)と、ポリエチレンワックスで構成されて平均粒径が9.5μmになった中実粒子からなる潤滑性粒子のエマルジョン(固形分濃度:40重量%)と、スチレン−ブタジエン共重合体からなる結着剤のエマルジョン(固形分濃度:50重量%)とを、上記の中空粒子と潤滑性粒子と結着剤とが77.2:2.8:20の重量比になるように混合させた。
そして、このアンダーコート層用塗液を上記の支持体の表面に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が4g/m2で、平均厚みが約8μmになったアンダーコート層を形成した。なお、このアンダーコート層においては、上記の潤滑性粒子の一部がアンダーコート層から突出した構造になっており、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合が3.50重量%になっていた。
また、このように支持体の表面にアンダーコート層を形成した状態で、JISP8147に準拠し、ステンレスに対する動摩擦係数を測定した結果、動摩擦計数は0.52になっていた。
次いで、このアンダーコート層の表面に感熱記録層を形成するにあたっては、下記のように調製した感熱記録層用塗液を用いるようにした。
先ず、ロイコ系染料である3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランが30重量部、メチルセルロースの10重量%水溶液が35重量部、水が35重量部の割合で含まれる混合物を、サンドミルで平均粒径が0.8μm以下になるまで分散させて第1分散液を得た。
また、顕色剤である3,3´−ジアリル−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホンが15重量部、増感剤である1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタンが15重量部、メチルセルロース10重量%水溶液が35重量部、水が35重量部の割合で含まれる混合物を、サンドミルで平均粒径が0.8μm以下になるまで分散させて第2分散液を得た。
そして、上記の第1分散液を8重量部、上記の第2分散液を12重量部、軟質炭酸カルシウムを9重量部、ポリアクリル酸エステルエマルジョン(固形分濃度:45重量%)を7重量部、水を37重量部の割合にし、これを混合攪拌させて感熱記録層用塗液を得た。
そして、この感熱記録層用塗液を上記のアンダーコート層の上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が4g/m2になった感熱記録層を形成した。
次いで、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分濃度:30重量%)からなる第1オーバーコート層用塗液をこの感熱記録層の上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.5g/m2になった第1オーバーコート層を形成した。
さらに、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分濃度:30重量%)が75重量部、軟質炭酸カルシウムが5重量部、ポリエチレンワックス(固形分濃度:40重量%)が10重量部、水が10重量部の割合になったものを混合攪拌させて得た第2オーバーコート層用塗液を、上記の第1オーバーコート層の上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1g/m2になった第2オーバーコート層を形成した。
(実施例2)
実施例2においては、上記の実施例1におけるアンダーコート層用塗液において、上記の中空粒子と潤滑性粒子と結着剤とが80:3.43:20の重量比になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例2の感熱記録部材を製造した。
ここで、この実施例2のアンダーコート層においては、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合が4.11重量%になっており、またアンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.48になっていた。
(実施例3)
実施例3においては、上記の実施例1におけるアンダーコート層用塗液において、上記の中空粒子と潤滑性粒子と結着剤とが80:3.95:20の重量比になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例3の感熱記録部材を製造した。
ここで、この実施例3のアンダーコート層においては、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合が4.71重量%になっており、またアンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.48になっていた。
(実施例4)
実施例4においては、上記の実施例1におけるアンダーコート層用塗液において、上記の中空粒子と潤滑性粒子と結着剤とが80:5.00:20の重量比になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例4の感熱記録部材を製造した。
ここで、この実施例4のアンダーコート層においては、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合が5.88重量%になっており、またアンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.48になっていた。
(実施例5)
実施例5においては、上記の実施例1におけるアンダーコート層用塗液において、上記の中空粒子と潤滑性粒子と結着剤とが72:8:20の重量比になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例5の感熱記録部材を製造した。
ここで、この実施例5のアンダーコート層においては、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合が10重量%になっており、またアンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.38になっていた。
(参考例1)
参考例1においては、上記の実施例1におけるアンダーコート層用塗液において、潤滑性粒子として、ポリエチレンワックスで構成されて平均粒径が4.0μmになった中実の潤滑性粒子を用い、上記の中空粒子とこの潤滑性粒子と結着剤とが72:8:20の重量比になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、参考例6の感熱記録部材を製造した。
ここで、この参考例1のアンダーコート層においては、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合が10重量%になっており、またアンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.42になっていた。
(参考例2)
参考例2においては、上記の実施例1におけるアンダーコート層用塗液において、潤滑性粒子として、ポリエチレンワックスで構成されて平均粒径が3.0μmになった中実の潤滑性粒子を用い、上記の中空粒子とこの潤滑性粒子と結着剤とが72:8:20の重量比になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、参考例2の感熱記録部材を製造した。
ここで、この参考例2のアンダーコート層においては、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合が10重量%になっており、またアンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.48になっていた。
(参考例3)
参考例3においては、上記の実施例1におけるアンダーコート層用塗液において、潤滑性粒子として、参考例2と同じポリエチレンワックスで構成されて平均粒径が3.0μmになった中実の潤滑性粒子を用い、上記の中空粒子とこの潤滑性粒子と結着剤とが68:12:20の重量比になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、参考例3の感熱記録部材を製造した。
ここで、この参考例3のアンダーコート層においては、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合が15重量%になっており、またアンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.46になっていた。
(比較例1)
比較例1においては、上記の実施例1におけるアンダーコート層用塗液において、潤滑性粒子を添加させないようにし、上記の中空粒子と結着剤とが80:20の重量比になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例1の感熱記録部材を製造した。
ここで、この比較例1のアンダーコート層においては、上記の中空粒子と潤滑性粒子との合計量に対する潤滑性粒子の割合は0であり、アンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.59になっていた。
(比較例2)
比較例2においては、アンダーコート層用塗液として、平均粒径が1.8μmの焼成カオリンと、スチレン−ブタジエン共重合体からなる結着剤のエマルジョン(固形分濃度:50重量%)とを、焼成カオリンと結着剤とが80:20の重量比になるように混合させたものを用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例2の感熱記録部材を製造した。
ここで、この比較例2においては、アンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数は0.36になっていた。
そして、上記の実施例1〜8及び比較例1,2の各感熱記録部材を製造する場合において、アンダーコート層が形成された支持体を搬送させる途中において摩擦音の発生の有無を調べると共に、各感熱記録部材における皺の発生の有無を調べ、その結果を下記の表1に示した。
また、上記のようにして製造した実施例1〜8及び比較例1,2の各感熱記録部材に対して、それぞれ市販の感熱プリンタ(寺岡精工(株)製;TERAOKA MP−1)によりバーコードパターンを印字して、印字部における白抜けを目視により評価し、白抜けが発生していなかった場合を○、白抜けが多く発生していた場合を×で、下記の表1に示した。
この結果、アンダーコート層に中空粒子だけを含有させて粒径の大きい潤滑性粒子を含有させていない比較例1のものは、アンダーコート層に中空粒子よりも粒径の大きい潤滑性粒子を含有させて、この潤滑性粒子の一部をアンダーコート層から突出させるようにした実施例1〜8のものに比べて、アンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数が高くなっており、アンダーコート層が形成された支持体を搬送させる途中において摩擦音が発生すると共に、感熱記録部材に皺が発生していた。
また、アンダーコート層に焼成カオリンを含有させた比較例2のものにおいては、アンダーコート層を形成した状態での動摩擦計数が低下していたが、アンダーコート層における断熱性が、アンダーコート層に中空粒子を含有させた実施例1〜8及び比較例1のものに比べて低いため、印字部に白抜けが発生し、感熱記録特性が悪くなっていた。
これに対して、アンダーコート層に中空粒子よりも粒径の大きい潤滑性粒子を含有させて、この潤滑性粒子の一部をアンダーコート層から突出させるようにした実施例1〜8のものは、動摩擦計数が比較例1のものに比べて低くなっており、アンダーコート層が形成された支持体を搬送させる途中において摩擦音が発生したり、感熱記録部材に皺が発生したりするのが防止されると共に、比較例2のもののように印字部に白抜けが発生するのも防止され、感熱記録特性が向上していた。
この発明の一実施形態に係る感熱記録部材の層構成を示した断面説明図である。
同実施形態の感熱記録部材において、アンダーコート層が形成された支持体を、送りローラによって搬送させる状態を示した断面説明図である。
同実施形態の感熱記録部材をラベルに使用する場合の層構成を示した断面説明図である。
符号の説明
1 送りローラ
10 感熱記録部材
11 支持体
12 アンダーコート層
12a 中空粒子
12b 潤滑性粒子
13 感熱記録層
14a 第1オーバーコート層
14b 第2オーバーコート層
15 障壁層
16 粘着剤層
17 剥離紙